DVD・Blu-ray

2023年12月 9日 (土)

あれからもう20年・・・。

今回は最近見た映像作品の紹介です。

2003年に、エピックレコードの創立25周年を記念して行われたライブイベント「LIVE EPIC 25」の模様を収録したBlu-ray。もともと公演直後にDVDとして映像化されたのですが、このたび「LIVE EPIC 25(20th Anniversary Edition)」として、Blu-rayで再発売されました。

エピックレコードといえば、1978年に設立。特に80年代から90年代にかけて、特に当時の日本のポップスシーンの中では「尖った」ミュージシャンを多くデビューさせ、注目を集めました。私自身も、「レーベル」という単位で注目したのはこのエピックレコードー当時は「エピックソニー」という名前でしたので、そちらの方がなじみがあるのですがーがはじめて。大ファンの渡辺美里の所属レーベルであり、他にもTM NETWORKや大江千里、もうちょっと時代は下りますが、JUDY AND MARYや久宝留理子など、個人的に好きだったミュージシャンが多く所属していたということもあり、エピックソニーという名前はまだ高校生だった当時から気になるレーベルでした。

それだけにこの「LIVE EPIC 25」というイベント、リアルタイムで足を運んでいます。今回のBlu-rayに収録されているのは2003年2月23日に行われた最終公演でしたが、私が足を運んだのは1日前の2月22日。当時のライブレポは既にサイトから消えているので、今回、あらためてアップしました。

LIVE EPIC ライブレポート(@代々木第一体育館 2003年2月22日)

まず、今回、20周年記念盤がリリースされるということで強く感じたことは、エピックレコード創立から25年目のイベントから、既に20年という月日が経過した、という驚き。このライブイベントの時点で、ここに出演していたミュージシャンの全盛期は「かなり昔」ということを感じていたのですが、その時点から既に20年も経ったとは・・・。月日の経過の早さをあらためて感じます。まあ、ただこの「20年間」に自分に起こった出来事を振り返ると、確かにそのくらいたったなぁ、とは思うのですが。

もうひとつ感じるのは、ここから20年を経過しているのですが、ここにいるミュージシャンたちの日本の音楽シーンにおける立ち位置に、おそらくほとんど変化がない、という驚きです。あえて言えば大江千里はニューヨークに移住し、ジャズミュージシャンになってしまいましたが、他のミュージシャンたちは、復活したBARBEE BOYSを含めてバリバリの現役ですし、おそらく人気の程度も当時とあまり変化はないのでは?おそらく今、「LIVE EPIC 45」として同じミュージシャンを集めても、同じように代々木第一あたりは十分埋まりそうな気がします。それだけ、参加ミュージシャンたちの実力があると感じる反面、20年間の日本の音楽市場にドラスティックな変化が起きておらず、停滞気味という事実も感じてしまうのですが。

また、今回久しぶりに20年前に書いたライブレポートを見たのですが、その当時感じたことと、今、映像を見て感じたことにほとんど変わりがないことに気が付きました。確かに懐メロ的な雰囲気は強く、大江千里なんて全然声が出ていませんし、TM NETWORKも、小室哲哉もまだglobeとしての活躍がメインだった時期で、TMとしての活動は限定的。どこか「懐かしのヒット曲」的な雰囲気が漂っている点は否めません。

一方、その日も感じたのですが、ベストアクトはBARBEE BOYS。今でこそ、その後、何度か再結成を行い、現在は復活している状況を知っているのですが、これが1999年の解散後、初となる再結成。それにも関わらず、往年と変わらないようなアグレッシブで、なおかつ緊張感のあるステージを見せてくれており、その実力が健在であることを感じました。特にBARBEE BOYSといえば、ボーカルのKONTAと杏子の緊迫感ある男女の掛け合いが魅力的なのですが、ひょっとして一度距離を置いて久々のステージだったからこそ、より緊迫感あるステージを見せてくれたのかもしれません。

ちなみに余談ですが、この「LIVE EPIC 25」、岡村靖幸が当初、参加を予定していたのですが、直前で急遽、参加が取りやめになった、ということがありました。ステージで、松岡英明がその旨を詫びて、自分の曲の中に岡村靖幸の「だいすき」のフレーズを取り入れていたりしていたのですが・・・今となってはよく知られているとおり、この時の参加中止は、覚せい剤所持で逮捕されていた影響。ちなみに鈴木雅之のステージでも、暗にMCで田代まさしの話をしており、覚せい剤の逮捕者が妙にイベントに関わっているのが印象的(苦笑)。ただ、20年を経った今、岡村ちゃんは何度も逮捕されて一時期、再起が危ぶまれていたものの、見事復活したのに対して、田代まさしは・・・。

ちなみに本作、映像特典として事前のリハーサルでの模様をおさめたドキュメンタリーが収録されています。7分程度の短い内容ながらも、参加者の人となりも知れる感じの映像で、こちらもなかなか見ごたえがあります。ただこちら、ジャケットに全く記載がなく、わざわざメニュー画面まで戻って選択しないと見れないような、「隠し映像」・・・ではないのですが、気が付かない人もいるかも・・・。なんでジャケットに何も記載がないのだろう?

そんな訳で、20年前のイベントを懐かしく思いつつ、今なお感じる魅力的なメンツに、3時間強というボリュームながらもまったくダレることなく一気に楽しめた映像作品になっていました。イベントに参加した方はもちろん、イベントに足を運び損ねた方、その後、エピックの魅力に触れた方、アラフィフ世代感涙の、お勧めの映像作品です。

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2023年8月 5日 (土)

解散ライブの映像をフル収録

1999年から2002年という実質わずか3年の活動だったにも関わらず、多くの音楽ファンを魅了し、多くのロックバンドにも影響を与えた「伝説のバンド」NUMBER GIRL。そのバンドが2019年に再結成を果たして大きな話題となりました。先日、そのNUMBER GIRLのラストライブの模様を収録したライブアルバムを紹介しましたが、ライブアルバムと同時にリリースされたBlu-rayも購入したので、今回はその感想です。

Blu-rayは2枚組。本編の方は、先日のライブアルバムと同様、2022年12月11日に、横浜にあるぴあアリーナMMで行われたラストライブの模様を完全収録したもの。ライブアルバムの方もほぼ完全収録だったのですが、ライブアルバムの方で若干カットされていたMCや曲間の部分も収録されています。

まず映像を見てちょっとビックリしたのは、会場が広い!人が多い!!前回の活動の時は、ラストライブでもZeppクラス。ワンマンライブで一番大きいキャパでも日比谷野音クラスだっただけに、広い会場にギッシリと入った人の多さにはビックリしました。解散から20年という月日を経て、むしろ注目度があがったというのも驚いてしまいます。

また、映像作品でクローズアップで見ると、みんな老けた大人になったなぁ、ということを感じます。向井秀徳自体はもともとあのルックスなので、あまり変わらない・・・と思って昔の写真を見ると、むしろ昔は若かったなぁ、と感じてしまいますが。以前の活動していたころから、もう20年近くの月日が経つのか、あっという間だったな、と自分も感慨深くなってしまいますが、逆に自分のこの20年間に起きた出来事を考えると、確かにそれだけの月日は過ごしてきたんだよなぁ、とナンバガの活動に自分を照らし合わせてしまいました。

演奏自体は、ライブ音源と同様なので、あらためてコメントすることはあまりありませんが、ただ、バンドの演奏する映像を見ると、そのテクニックのすごさ、バンドとしての一体感をあらためて強く印象付けられます。やはりNUMBER GIRLは唯一無二のすごいバンドだったということを再認識しました。

そしてもう1枚のBlu-rayの方は「ライジングでのNUMBER GIRL」と「NUMBER GIRL 再結成ドキュメント映像」が収録。「ライジングでのNUMBER GIRL」は再結成の目的だった「RISING SUN ROCK FESTIVAL」の2022年での映像を収めたもの。オフショット映像も含まれており、(意外と)和気あいあいとしたメンバーの姿も垣間見れます。オフショット映像を見ると、このメンバー4人が並んでいる姿に胸が熱くなってきます。ただ「RISING SUN」でのライブ映像は一部のピックアップだったのも残念。こちらもフルでのライブ映像を見たかったなぁ。

もう1つの再結成ドキュメントは、再結成直後のミーティングの模様から、その後のライブツアーやコロナ禍になって無観客となったライブの映像、ライジングやラストライブの模様や日テレの「スッキリ!」に出演した時の映像もおさめられており、再結成後、再度の解散までの映像が駆け足的にではありますが、収録されています。こちらは貴重な記録映像といった感じですが、正直、わずか30分強の内容だとちょっと物足りなかったかも。もうちょっと長い時間、見たかったかも、と感じてしまいました。

とはいえ、Disc2の特典映像も加えて、NUMBER GIRLの魅力をドップリと感じられた映像作品。ライブアルバムと共に、全ロックファン必見の作品だと思います。これを最後に再度解散してしまった彼らですが、なんとなくまた10年後くらいに再々結成しそうな感じもしますし、ライブ音源や映像を多くリリースしている彼らなので、ライブツアーの音源や映像もまたリリースしそうな予感も。そちらの方も期待したいところです!

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2022年3月20日 (日)

今回もボリューム満点で

今回は、最近見た、音楽系のDVD/Blu-ray作品の紹介です。あのマキシマム ザ ホルモンが約6年2ヶ月ぶりに映像作品をリリースしてきました!

それがこの「Dhurha Vs Dhurha~ヅラ対ヅラ」。前作「Deka Vs Deka 〜デカ対デカ〜」はDVD3枚、Blu-ray1枚、CD1枚の計5枚組というとんでもないボリュームのアルバムになっており、なおかつ映像を見るのにはDVDによるゲームをクリアする必要がある、というとんでもない内容になっていました。今回の映像作品はBlu-ray1枚とDVD1枚の2枚組という内容。前作と比較してしまうと、見劣りしてしまうかもしれませんが、それでも2枚共、3時間に迫る内容で、合計6時間に迫るというとんでもないフルボリュームの作品に仕上がっています。ちなみに今回は前作のような「ゲームを見ないとコンテンツを見れない」ということはなく・・・と言いたいのですが、DVDの方に若干、コンテンツを見るためにゲームをクリアしないといけないものがあります。まあ、もっともゲームをクリアするのは容易なのですが。

肝心の内容ですがBlu-rayの方は、昨年6月に行われた配信ライブ「全席・顔面指定席ライブ『面面面~フメツノフェイス~』」に未公開映像が加わったフルバージョンで収録されているほか、ホルモンが抽選で選ばれた「腹ペコ(=ファン)」3組の前だけで行われたライブの模様を「個別・対面独占ライブドキュメント『TOKYO NEO SOCIAL DISTANCE〜潮吹〜』」を収録。さらにMVを2曲収録という内容になっています。

配信ライブの方はリアルタイムでも見ていたのですが、その迫力あるパフォーマンスは2度見ても全く飽きません。何より今回うれしかったのは、「TOKYO NEO SOCIAL DISTANCE」も含めて、フル演奏でのパフォーマンスが見れたという点。前作「Deka Vs Deka~デカ対デカ~」では、あれだけフルボリュームながら、ライブ演奏がフルで見れたのはBlu-rayに収録されたZepp Tokyoでのライブの模様とMVのみで、DVDに収録されたライブイベントのパフォーマンスについてはフル収録となっていなかった点、また映像作品のボリュームの割りには、フルパフォーマンスの映像が比率的に少なかった点、若干の不満が残りました。ただ今回に関しては、2枚組のうち1枚はまるごとフル演奏でのパフォーマンスとなっており、ホルモンのライブが十分堪能できた点、非常に満足することが出来ました。

一方、DVDの方は、You Tubeで配信された企画「ホルモンの新曲俺ならこう歌う選手権!!」の返答企画「俺ならこう歌うをホルモンがそう歌う!!」を収録。これはホルモンの新曲「KAMIGAMI-神噛-」のサビのバックトラックをミスチル桜井和寿や奥田民生という豪華なミュージシャンたちに提供し、それをもとに原曲を推理してもらい歌ってもらうという企画「ホルモンの新曲俺ならこう歌う選手権!!」。この時にそれぞれのミュージシャンたちが推測した曲調でホルモンがあらためて歌うという企画が収録されています。

また「腹ペコ」たちにホルモン愛をテーマとした創作物を製作してもらう「腹ペコアワーズ」の優勝賞品として実施された、ダイスケはんの実家へのお泊り会の模様を撮影したドキュメンタリー「20代女子2人と行くダイスケはん実家お泊り会」。そして、「メンバー3人に初めて『面面面〜フメツノフェイス〜』を観せてみた時の貴重映像!!」といった、どちらかというとバラエティータッチのコンテンツが収録。その他にもオフショット映像なども収録されており、かなり豪華で盛りだくさんなコンテンツとなっています。

この中で一番印象深かったのが「メンバー3人に初めて『面面面〜フメツノフェイス〜』を観せてみた時の貴重映像!!」でした。これは「面面面」を亮君を除くメンバー3人が初めて見てその反応を楽しむ・・・ということもあるのですが、それ以上に主眼となっているのが、映像にほどこした亮君のこだわりを彼自ら解説しているという点。この配信ライブを実施した後に亮君自身「お金がかかりすぎて、もう出来ない」と話していました。その時は正直、どこにそんなにお金がかかったんだろう?とちょっと不思議にも感じていたのですが、ただこの「貴重映像」を見てはじめて、細かい点を含めて亮君の映像に対するこだわりがつまっていたんだということを感じました。正直なところ、若干過剰演出気味なこだわりよりも、その分、もう1回、配信ライブを見たかった・・・と思わないこともないことはないのですが、ただ、このこだわりが、亮君が亮君たる所以であり、かつ、彼の、ひいてはホルモンの大きな魅力の要因なんだろうなぁ、とは強く感じます。そんな亮君のこだわりを強く実感できた、まさに「貴重映像」でした。

隠しコンテンツ含めてボリューム満点の映像作品。個人的には亮君のこだわり部分がちょっと強すぎる感もあった「Deka Vs Deka」よりも、ライブの部分やバラエティー的な部分のバランスもちょうどよく、よく出来た映像コンテンツになっているように感じました。なによりも6時間に迫る内容ながらも、全く見ていて飽きることなく最後まで一気に楽しめた作品になっており、ホルモンの魅力をあらためて実感した作品でもありました。個人的には次はアルバムを・・・なんてことも思ったりするんですが、それもまたこだわりたっぷりの内容になりそうだなぁ。ともかく、次のホルモンのコンテンツがどういう形になるにしろ、非常に楽しみ。まだまだ彼らからは目が離せないようです。

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2022年1月24日 (月)

伝説のネプワースライブ

1990年代半ば、全世界で圧倒的な人気を誇ったロックバンドoasis。特に1995年にリリースされた2枚目のアルバム「(What's The Story)Morning Glory」は全世界で2,500万枚というとんでもない売上を記録。まさに世界の頂点に立った瞬間でした。そのoasisが1996年に実施した伝説のライブとして語り継がれるのが、1996年8月10日、11日にイギリスはネプワースで実施した野外ライブ。25万人というとんでもない人数を集めて実施されたこの野外ライブでは、イギリスの全人口の2%に及ぶ250万人がチケットを申し込んだとも言われています。

昨年、ネプワースから25周年を記念して、この伝説のライブが映画化。伝説のステージながらもいままで、その全編の映像が世に出ることがなかっただけに大きな話題となりました。もちろん私も、その映画を観るために映画館に足を運び、当サイトでも紹介しています。

そして、その映画がDVD化された、ということであらためて購入しました。今回、映画の映像に加えて、なんと2日間のライブ映像がフルで収録されたDVD、さらには2枚組のライブCDまでリリース。リリース形態としては「映画のDVDのみ」「映画+当日のフルライブ映像」「映画のDVD+ライブCD2枚組」「ライブCD2枚組」という様々な形態でのリリースに。もちろん、「映画+当日のフルライブ映像」のDVD3枚組に、2枚組のライブCDというフルセットで購入してきました。

まずはDVD3枚組となる「ネプワース1996」。映画のDVD化というのももちろん大きな魅力ですが、なんといっても大きな目玉になっているのは、8月10日、11日の2日にわたるネプワース公演の模様がフルで映像化されて収録されている点でしょう。特に映画では、ライブチケット争奪戦を巡るファンの動向をはじめ、ライブに関するファンの言動にスポットをあてた構成が多く、結果としてライブの演奏がブツ切れでの収録となっており、その点、ちょっと物足りなさを感じていただけに、ライブの模様をフル収録という内容は、非常にうれしく感じつつ、映像を見てみました。

この2日間のライブ、セットチェンジは2日とも全く同じ。つまり、同じ曲の演奏を2回見ることになるのですが、これが見ていて全く飽きが来ることがありませんでした。とにかく全盛期とも言える彼らのパフォーマンス。その素晴らしさは映画でも感じていたのですが、このフルライブ映像でも否応なく惹きつけられます。

ライブパフォーマンスとしては、あらためてフルでの映像を見ても決して凝った演出があるわけではなく、正直、リアムにしても派手に踊りまくる、といった感じではありませんし、比較的淡々としたロックバンドのライブパフォーマンスが繰り広げられています。それにも関わらず、1日につき2時間、トータル4時間に及ぶライブパフォーマンスを最後まで目が離せないまま、一気に見ることができました。もちろん、全盛期の彼らの楽曲自体の良さもありますが、脂ののったリアムのボーカルにグルーヴィーなライブパフォーマンスが、もっとも勢いのあった時期だったからこそ、非常に魅力的だった、というのも大きな理由でしょう。

Title:KNEBWORTH 1996
Musician:oasis

そしてこちらがそのライブCD。2枚組になるのですが、こちらの大きな特徴は2日間のライブパフォーマンスがフルに入っているわけではなく、この2日間共通のセットリストに基づく曲順で、2日間のパフォーマンスのうちどちらか1日の音源が収録されているという内容。2日間のライブパフォーマンスがフル収録という、貴重な記録映像という意味もあったDVDに対して、こちらは音源で、その日のライブを疑似的に追体験できる構成となっています。

この「ネプワース」が行われたころのoasisというと、大傑作「(What's The Story)Morning Glory」リリース直後で、その次の「BE HERE NOW」リリース前という時期。1stアルバム、2ndアルバムからの曲を中心として、「BE HERE NOW」に収録されることになった曲も披露されたセットリストは、間違いなくoasisのベストアルバム的な構成といっていい内容。ライブ音源ですが、ライブにあたって元曲のイメージを大きく崩す演奏はありませんし、oasis初心者にとっても最適な入門盤としての役割も果たせうる作品となっています。

全4時間というフルボリュームのDVDに対して、CDではDisc1が45分、Disc2が54分というちょうどよい長さという点もポイントが高いところ。また、この日の演奏はオリジナル音源に比べると、よりサウンドの分厚さが目立ち、よりグルーヴィーに聴かせてくれます。そういう意味では下手したら原曲よりも出来が良いのでは?と思うようなパフォーマンスも少なくなく、そういう意味でもoasis初心者にお勧めですし、またファンとしても聴き逃せないアルバムになっています。

しかしこのDVDにしろCDにしろ、その収録時間に関わらず、中だるみなく一気に聴き切れてしまうあたりに、oasisのすごさをあらためて感じます。oasisが解散して早くも12年が経過しましたが、その魅力は全く衰えていません。是非、今の若い世代にもこのDVDもしくはCDで彼らの魅力に触れてほしいところ。あらためてすごいバンドだったなぁ、ということを感じる作品でした。

評価:★★★★★

oasis 過去の作品
DIG OUT YOUR SOUL
Time Flies 1994-2009
Original 1993 Demos
Definitely Maybe (Remastered) (Deluxe)
(WHAT'S THE STORY)MORNING GLORY?(Remasterd)(Deluxe)
BE HERE NOW(Deluxe)

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2020年8月16日 (日)

兵士Aの物語

今回は映像作品の紹介。本作はシンガーソングライター七尾旅人の初となる映像作品「兵士A」。もともと2015年に行われた舞台公演が、翌年に映画上映され、その後、DVD/ブルーレイでリリースされました。それが今年の5月、配信でもリリース。以前から気になる作品ではあったものの、なかなか手が出せなかった作品なのですが、今回の配信によって、はじめて実際に見ることが出来ました。

本作では自衛官の扮装をした七尾が「近い将来この国に数十年ぶりに現れるかもしれない」1人目の戦死兵・兵士Aを演じており、100年というスパンで物語を描くという壮大な試みを行った舞台。物語は4部構成となっており、最初はプロローグ、その後は「Aくんが生まれ、そして死ぬまで」ということで、兵士Aの生い立ちが、戦後日本の歩みと重なるようにして語られます。3部は「Aくんが殺したひとびと」で、戦争を語られるパート。最後の「再会」は、先の大戦を経験した、亡き祖父と(おそらくあの世で)再会するという展開となっています。

ステージは、基本的には七尾旅人ひとりで、それもアコースティックギター1本で、時にはとぎれとぎれになりそうな切ない声で語りかけるように歌われるのが印象的。また、歌の間には物語を語るようなシーンもあり、朗読劇的な要素も見て取れます。そして後半にはサックス奏者の梅津和時がステージ上に登場。激しいサックスのインプロビゼーションにより、七尾旅人のアコギと対峙するという、緊迫する演奏シーンも見せてくれます。

率直に言うと、この作品を見る前に想像していた内容とは少々異なる部分がありました。というのは、見る前は本作は、比較的社会派的な要素の強い作品と想像していました。先の大戦の後、平和になった日本が徐々におかしくなり、戦争に至るまでの、徐々に社会がゆがんでいく道のりが描かれている、そう思っていました。しかし実際には、なぜ日本が再び戦争をはじめ、その中で戦死者が出たのか、という描写はありません。ただ、現在社会の中に平凡に生きてきた一般人であるはずの「Aくん」が、戦争に巻き込まれ、そして戦士した、という事実のみが描かれています。

それだけに変な「想像」が語られない分だけ逆にリアリティすら感じました。集団的自衛権が容認されるようになり、米中関係の悪化はもちろん、コロナの影響もあり「自国第一主義」がまかり通りはじめた現在においては、何かのきっかけで日本が戦争に巻き込まれる可能性は決して少なくはありません。そんな今を生きている私たちだからこそ、「Aくん」の存在は容易に想像できるのではないでしょうか。

この「兵士A」では決して多くの物語が語られている訳ではありませんが、七尾旅人により語られ、歌われた「物語」の隙間を想像するのは比較的容易ではないでしょうか。さらに印象的だったのは、やはり七尾旅人の歌自体でしょう。兵士Aの叫びをそのまま体現化するようなボーカルや、シンプルながらも力強いアコースティックギターの音色、さらにそんな中、戦争の不気味さを表現するようなノイズを入れてきているのも強い印象に残ります。

音楽的にはやはり終盤の七尾旅人と梅津和時のインプロビゼーションのやり取りが印象的。自衛官に扮した七尾旅人に対して、梅津和時は、おそらく兵士Aの祖父を彷彿とさせる、戦前の軍服を着ており、再び起きてしまった戦争の中で命を落としてしまった無念さ、怒りを表現しているようにも感じました。

最初の想像と異なり、声高に平和を叫ぶような作品ではありません。ただそれだけに、逆にある種のリアリティがあり、兵士Aの叫びが、言葉だけではなく音楽を通じても胸に突き刺さるような作品だったように思います。3時間に及ぶ作品でかなりボリューム感がありますが、かなり力の入った作品であることは間違いありません。3日間限定という形ですが、配信でも比較的容易に見ることが出来ますし、コロナ禍の中で、世界情勢がおかしなことになる中で、一度見てほしい作品です。

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2018年12月28日 (金)

大物然としたステージセットだけども

Title:Voodoo Lounge Uncut
Musician:The Rolling Stones

今回紹介するのはThe Rolling Stonesのライブ映像作品+ライブ盤。1994年7月にリリースされたアルバム「Voodoo Lounge」に伴い行われたツアー「Voodoo Lounge World Tour」から1994年11月25日、アメリカ・フロリダ州マイアミのジョー・ロビー・スタジアムで行われたライブ映像を、タイトル通りMCなどを含めてフル収録した映像作品。DVD/Blu-rayに、全く同じ音源をCDに収録した2枚組のライブアルバムが付属する内容になっています。

このライブでは数多くの彼らの代表曲、あるいは当時の最新アルバム「Voodoo Lounge」からの曲も数多く披露されたのですが、その一方で比較的「知る人ぞ知る」的な曲もセットリストに織り込んだ内容になっており、1曲目にいきなり1964年のシングル曲「Not Fade Away」からスタートするという意外な展開に。ほかにもバラード曲の「Beast of Burden」や初のライブ披露となった「Monkey Man」など、ライブでは珍しい曲を含んだセットリストとなっています。

さてそんな彼らのステージは、当時デビュー30周年を迎えて押しも押されぬ大スターとなっていた彼ららしい、スタジアムライブらしい大型のセットが目立つ、いかにも大物感満載のステージになっています。

また、このステージでは数多くのゲストを迎えているのも特徴的で、オープニングではいきなりウーピー・ゴールドバーグによるオープニングのアナウンスからスタートという豪華なステージ。その後もシェリル・クロウを迎えて「Live With Me」を披露。ただ、その後に登場するのがロバート・クレイと、ボ・ディドリーというのがいかにもストーンズらしい感じ。特にボ・ディドリーは今となっては貴重な映像に。おなじみボ・ディドリー・ビートで軽快に「Who Do You Love?」を披露しているのですが、ストーンズに全く負けずとも劣らない貫録を醸し出しており、その実力のほどは今回の映像を通じてもしっかりと伝わってきます。

ただ、そんな大物然とした舞台設定である一方、ライブパフォーマンス自体のストーンズらしさはいつも通りといった感じ。演奏自体はもちろんシンプルなロックンロールをしっかりと奏でていますし、今となっては20年も前の映像となってしまいましたが、当時はおそらく50歳を超えた彼らが、いまだにロックンロールを変わらず奏で続けている姿にある種の驚きを感じた方も多かったのではないでしょうか。ステージパフォーマンスは躍動感があふれる一方、ベテランらしい安定感も同時に感じられたパフォーマンスになっていました。

ただ、オーバーフィフティーという年齢を全く感じさせないパフォーマンスも要所要所で感じられ、特に「Brown Sugar」ではミック・ジャガーがステージ狭しと走りまくっており、歳をとっても変わらない「若さ」を感じさせるステージに。言うまでもないことですが、ライブ全般を通じて、ミックは実にいろっぽい、見る者を惹きつけるパフォーマンスを繰り広げており、ストーンズのライブの魅力が映像を通じてしっかりと伝わってきました。

言うまでもないかもしれませんが、ファンならばとりあえずは見ておきたいライブ映像。ノーカット版ということでライブの魅力がより伝わってくる傑作になっていました。

評価:★★★★★

The Rolling Stones 過去の作品
Shine a Light: Original Soundtrack
Some Girls LIVE IN TEXAS '78
CHECKERBOAD LOUNGE LIVE CHICAGO 1981(邦題 ライヴ・アット・ザ・チェッカーボード・ラウンジ・シカゴ1981)
(MUDDY WATERS&THE ROLLING STONES
GRRR!
HYDE PARK LIVE
Sweet Summer Sun-Hyde Park Live
Sticky Fingers Live
Blue&Lonesome
Ladies & Gentlemen
ON AIR


ほかに聴いたアルバム

SIMULATION THEORY/MUSE

どこかの映画を彷彿とさせるようなジャケットもインパクトの強いMUSEの最新作。なぜか登場する「三难困境」という漢字も日本人にとっては目を惹きます。そんな彼らの新作はいつも以上にこってり風味。彼ららしい、これでもかというようなダイナミックなバンドサウンドの曲が並んでおり、実に「MUSE」らしいアルバムになっています。MUSEが好きな人はかなりはまりそうなアルバム。個人的にはこってりすぎて一度聴いただけでお腹いっぱいになってしまうのですが・・・。

評価:★★★★

MUSE 過去の作品
The Resistance
The 2nd Law(邦題 ザ・セカンド・ロウ~熱力学第二法則)
Live at the Rome Olympic Stadium
Drones

Origins/Imagine Dragons

アメリカで人気のロックバンドの新作。彼らのアルバムを聴くのはこれが2作目なのですが、基本的な印象としては前作と変わらず。全体的に打ち込みを取り入れたダイナミックなサウンドなのですが、同時にいなたさも強く感じられるのがアメリカのロックバンドならではといった感じ。サウンド的にはちょっと大味な印象が否めず、最後の方は聴いていて飽きが来てしまいました。

評価:★★★

Imagine Dragons 過去の作品
Night Visions

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2017年9月 9日 (土)

オールタイムベスト的にも楽しめる

今日は先日購入したDVDの紹介です。

90年代に中高生を中心に絶大な人気を誇ったロックバンドLINDBERGのすべてのMVをまとめたクリップ集。2002年に解散後、2009年に1年限定で再結成し、さらに2014年から活動を再開していますが、その2009年の再結成時のMVや、新曲のMVも収録しています。

ここのサイトでも何度か書いていますが、LINDBERGは私個人が中学生から高校生の頃に大ハマリしていたバンド。その頃のMVはリアルタイムで何度も見ていました。それだけに、その一番はまっていた時期、具体的に言うと「BELIEVE IN LOVE」から「だってそうじゃない!?」の頃のMVに関してはまさに感涙モノ。自分が中高生の頃を思い出して、とても懐かしい気分になりました。

ただ今回のMV集でちょっと意外だったのは彼らがもっとも人気を博していた90年代前半でも、意外とMVが作成されていないシングル曲があるのね、ということ。「OH!ANGEL」や「胸騒ぎのAfter School」なんかはヒットしたシングル曲にも関わらずMVが作成されていなかったというのは意外に感じました。

また当時は愚直に「音楽が好き」というスタンスで聴いていたのであまり感じなかったのですが、あらためてMVで見ると・・・渡瀬マキ、かわいい(笑)。さすが元アイドル(笑)。一方、渡瀬マキ以外のメンバー3人の華のなさ、最後まであか抜けないのも目立っていました(失礼!)。あれだけの人気バンドのメンバーなのに、最後まで「普通のおっさん」みたいな感じだし・・・(重ね重ね失礼!!)。

さて今回のMV集は「今すぐKiss Me」からはじまり彼女たちの代表曲を網羅しているという意味でも、彼女たちがまだリリースしていないオールタイムベスト的な感覚でも楽しめることが出来た作品でした。またリリース順になっているため彼女たちの音楽的変遷も楽しめることが出来るアルバム。当初のロック路線からスタートし、「I MISS YOU」あたりから徐々にポップ路線にシフトし、それが決定的になったのが「もっと愛しあいましょ」、というのは以前から認識していたのですが、その後の作品を聴くと、2001年にメジャー契約がなくなりインディーズになった後の作品は、意外と初期に戻ったような作風になっているということに今回のMV集ではじめて気が付きました。90年代後半のようなポップス路線が一段落して、より「バンド」であることが強調されたような作品になっており、あらためて聴くと、最後の最後は原点回帰した、90年代初頭にファンだった私にも楽しめるような作品を書いていたんだな、ということに今回、あらためて気が付きました。

また2009年の再結成の時にリリースされた「LIVE your LIFE」も今回はじめて聴いたのですが、こちらも90年代初頭の雰囲気を感じさせる前向きで元気のあるロックチューン。一時期のような大ヒットにはつながりませんでしたが、まだまだミュージシャンとして十分初期の頃に負けない曲を書くことが出来るんだ、というバンドの実力を再認識しました。

ただ今回の新曲「Fresh」はまた良くも悪くも大人になったような落ち着いたような曲になってしまって、今のLINDBERGの姿をそのまま表現したともいえるかもしれませんが、彼女たちのパブリックイメージからすると少々いまひとつの出来だったように感じます。また、MVを見ると、これまた非常に失礼ながらメンバー全員老けたなぁ・・・。まあ、メンバーの平均年齢が50才を超えていますからね。もっとも中学生の頃に彼らに出会った私もうアラフォー。お互い、歳をとりました・・・。

そんな訳で、懐かしいという感情にひたりつつ楽しむことが出来たDVDでした。amazonで購入すれば3,000円代と比較的お得な内容なだけにリアルタイムでファンだった方は手にとってみては?おそらく、あの頃のことを思いだしてしまうと思いますよ。

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2017年4月29日 (土)

映画を見たけどDVDも購入!

今年はじめ、映画も見てきたのですがDVDも買ってしまいました!

今年はじめに公開されて話題となったoasisのドキュメンタリー映画「oasis:supersonic」。oasisの結成前夜から、それこそギャラガー兄弟の幼少期の話にまで遡り、最後は1996年のネブワースでのライブまでを描いたドキュメンタリー。よくこんな映像が残っていたな、という貴重な映像の連続に思わず目をみはる内容になっていました。また構成としてもインタビューや当時の貴重な映像などをつなぎつつ、足らない部分にはアニメーションを積極的に用いるなど見ていて飽きさせない映像になっており、非常におもしろい映画となっていました。

今回、DVDを購入しあらためて映画を見なおしたのですが・・・まあ、見直した感想としても基本的に以前、映画のレビューとして書いていた内容と大きくは変わりません。

映画を見た直後のレビューはこちら

ただ映画であらためて感じてしまったのは初期に解雇されたオリジナルドラマーのトニー・マッキャロルがかわいそう・・・ということ。デビュー時にすでに妻子がいて、子供を食わせていくために活動しなければいけなかった点、他のメンバーと違っていたという証言もおなじ妻子持ちには身につまされる発言だし、その後のメンバーからのある種のいじめもかわいそうに感じてしまいます。もっともドラムに対する向上心がないなど、彼自身も問題が大きかったようですが・・・。

映画の方はもちろん2度見ても十分すぎるほど楽しめる内容。特にノエル加入前の楽曲が流れてくるのですが、この曲はフルで聴きたいなぁ・・・と改めて思ってしまいます。ただ、DVDであらためて聴くと、短いフレーズでしたがやはりoasisの曲と比べるとかなり拙さを感じてしまうのですが。

ちなみに特典映像としてはこの映画に関して、リアム・ギャラガーと監督のマット・ホワイトクロスをまじえてのQ&Aセッション。20分以上に及ぶ長さになっていて、この映画に関しての裏話もいろいろと飛び出してなかなか興味深い内容になっています。途中、なんと観客席にいたボーンヘッドも飛び入り参加!リアムとボーンヘッドが並んでいるというのはやはりなんかうれしいものがあります。

このQ&Aセッションではリアムがノエルのことについて聴かれて「あの野郎、いまごろ豆腐食っている」なんて発言が飛び出したりしています。なんかの雑誌で見かけたんですが、イギリスでは「豆腐」というと「セレブが食べている気取った食べ物」みたいなイメージらしいんですよね(このQ&Aセッションに関しての紹介記事で書いてあったような記憶が)。日本人にとっては庶民の食べ物の代表のような「豆腐」の使われ方に違和感を覚えたりします。

特典セッションのもう1つはリアム・ギャラガーの日本独占インタビュー。こちらはたった2分程度の内容で、中身的にもあまり実のある内容ではなく期待はずれな感じが。ちょっと残念です。

全体的にはQ&Aセッションに関しては興味深かったものの、DVD特典についてはもうちょっと充実させてほしかったかな、といった印象もあります。Q&Aセッションの中で使われなかった映像もいろいろあるような話をしていたのですが、そういう未収録映像などをまとめたディレクターズカット版を見たかったな。

そんな訳で、映画を見ていないoasisのファンの方にとってはこのDVD、必見の1枚だと思います。映画を見た方ももちろん何度見ても楽しめること受けあい。ただ、特典だけはちょっと残念。Q&Aセッションはなかなか興味深かったのですが。

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2016年6月13日 (月)

ストーンズの原点回帰

年内のニューアルバムリリースにむけて楽曲制作中というニュースが大きな話題となったTHE ROLLING STONES。主だったメンバーが既に70歳を超えていながらも積極的な活動が目立つ彼らですが、今回、新たに映像作品がリリースされて話題となっています。

それが本作、「TOTALLY STRIPPED」。「Stripped」とは、94年から95年にかけて日本のスタジオでのセッションやパリやアムステルダム、ロンドン、リスボンで行われたアコースティックセットでのライブの模様をおさめたライブアルバム。もともとこのプロジェクトの試みを追ったテレビのドキュメンタリー番組が制作されたのですが、本作はそのドキュメンタリー番組に映像を追加、再編集した作品だそうです。

この「Stripped」というアルバム、決してストーンズを代表するようなライブアルバム、という訳ではなく実は私も今回の作品がリリースされるまで聴いたことありませんでした。それなので今回、本作を見るにあたって「Stripped」を購入し、聴いてみました。

映像作品の方は、その「Stripped」収録作品も含めたライブ映像とメンバーのインタビューがほぼ交互に収録されています。「Stripped」のプロジェクトで行われたライブは、いずれも非常に小さいライブ会場でのライブだったようで、そのチケット獲得を巡る競争の模様もチラッとドキュメンタリーの中では触れられています。また「Stripped」のライブについては多くのメンバーがストーンズにとっても原点回帰と語っていて、キースも「俺たちはクラブバンドだ」と語っていたのが印象的。スタジアムバンドとなって久しい彼らにとって、狭い会場でのライブは昔を思い起こさせるものだったのかもしれません。

実際、間に挟まれるライブ音源は狭い会場でも全くものともしないイキイキとしたメンバーの姿が収録されています。インタビューでミックは「狭い会場は動けないことが難点だ」と言っていましたが、キースは「狭い会場でもミックにかなうやつはいない」と語っており、確かにライブ映像を見る限り、狭い会場でもミックのパフォーマンスは人を確実に惹きつけるものを感じます。

今回聴いたアルバム「Stripped」は聴きなれたストーンズのアルバムのアコースティックバージョンが収録されています。最初聴く前に、ストーンズといえばミックのボーカルと共に、あの独特のグルーヴ感あるキースのギターが大きな特徴なだけにアコースティックアレンジになるとどうなるんだろう、と思っていたのですが、アルバムを聴いてみるとアコースティックアレンジでもしっかりストーンズの曲になっていました。

この映像作品には初回限定盤としてライブCDがついてきています。こちらに収録されている曲は「Stripped」と重複を避けた選曲がなされていました。そのため、アコースティックな作品はあまり収録されておらず、このライブCDだけだとアコースティックセットというイメージはありません。ただ狭い会場でのライブなだけにスタジアムライブの音源とはまた異なる迫力が感じられます。全体的に引き締まったようなタイトな演奏といった感じでしょうか。スケール感とか派手さとかはありませんが、ストーンズの魅力が凝縮されたようなライブパフォーマンスを楽しむことが出来ました。

正直、「全盛期のパフォーマンス」ではありませんし、アコースティックセットなだけに派手さはありませんが、一方で円熟されたストーンズのパフォーマンスが実に魅力的な作品。「Stripped」が未聴でも十分楽しめる作品でした。

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2016年5月13日 (金)

映画を見た人でも必見

以前、映画も見たのですが、DVDも買ってしまいました。今年はじめに公開されて話題となった電気グルーヴのドキュメンタリー映画「DENKI GROOVE THE MOVIE?-石野卓球とピエール瀧-」です。

とりあえず映画本編の方の感想はこちらをご参照のこと。今回、わざわざDVDを購入したのは、もちろん映画本編がよかったこともありますし、また初回盤特典としてついてきたライブ映像集も目当てだったりするのですが、最大のお目当ては副音声としてついているコメンタリー。これが非常におもしろいと評判だったがために、ついついDVDを購入してしまいました。

そしてこのコメンタリーが予想していた以上によかった!コメンタリーでは電気グルーヴの2人と監督の大根仁が映画をみながらいろいろとコメントしていくのですが、映画の内容に沿ったコメントがゆえに、電気グルーヴが自らの活動を振り返るような形になっていてとても興味深いコメントが多く収録されていました。

特に映画では電気グルーヴの2人があえて全くコメントをしていなかっただけに、このコメンタリーは非常に貴重。ノリとしてはまるでラジオを聴いているかのような自由なトークで、P音も入りまくりという、ある意味電気グルーヴらしいトークなのですが、音楽に関しては真剣な物言いだったのも印象に残ります。

映画では、ある意味「映画である」がゆえの少々演出がかった構成も電気グルーヴにより突っ込みを入れられていたりして、彼らの自らの作品に対する本音が語られているのもおもしろかったです。例えば「VITAMIN」では「N.O.」を入れるかどうかについて、セールスのために「N.O.」を入れようとするレコード会社側と、それを拒絶する電気グルーヴ側という対立構造を強調していましたが、コメンタリーでは「今となっては入れてよかったと思っている」と卓球が語っていたり、「ORANGE」では「評判も悪ければセールスも奮わなかった」という映画の説明に対して、「そんなに悪かったか?そこそこ売れたぜ」と卓球が突っ込んでいたり(それに対して「映画の演出なので・・・」と大根監督がちょっとタジタジしていましたが)、電気グルーヴ側から見た視点が語られたのもとてもおもしろく聴くことが出来ました。

映画の内容を補完してあまりあるような内容で、映画を見たから十分・・・というにはあまりにもったいないコメンタリーになっていました。そういう意味でも映画を見た方にこそ要チェックなDVD。むしろこのコメンタリーを含めて電気グルーヴのドキュメンタリーとして完成形なのでは?とまで思えるほどの充実した内容になっていました。

初回盤は特典映像として、映画でつかわれた貴重なライブ映像を未公開部分を含めて収録したDVDがついてきています。それも88分という、これだけで別の商品として成り立つのでは?とすら思うほどの豪華な内容に。特に89年から90年あたりの活動最初期の映像は、かなり時代を感じさせるもので、今とはかなり異なる初期の電気グルーヴの様子を実に興味深く見ることが出来ました。

また、デビューライブから昨年実施されたライブまで時系列順に並んでいるだけに、電気グルーヴの歩みをライブという側面から知ることもできるという意味でも貴重な映像集になっています。映画のコメンタリーで、1997年の第1回フジロックでのライブを「瀧の立ち位置が決まったステージ」と言っていましたが、この映像集を見ると、この頃、電気グルーヴのライブのスタイルもかなり変わったことに気が付きました。

第1回フジロック以前のステージは、基本的にまりんの前に機材が配置され、卓球と瀧はステージでラップ(あるいは歌)を歌っているようなスタイルだったのに対し、フジロック以降は卓球とまりんが機材をいじりつつ、瀧はステージの前で曲にあわせて踊るという、今に続く電気グルーヴのライブのスタイルになっていました。

ドキュメンタリーでは電気グルーヴの音楽的な分岐点として「VITAMIN」をあげていましたが、ライブ的には、この第1回フジロックのあたりに大きな分岐点があったんだな、ということを感じた映像集となっており、そういう意味では「ライブ」という側面から電気グルーヴの歴史を感じることの出来た映像集となっていました。

さらにおもしろかったのがDVDについていたブックレット。こちらは最初期から最近までの電気グルーヴのアーティスト写真が掲載されており、これもまたユニークかつ興味深い内容になっていました。

そんな訳で映画を見た方も、むしろ映画を見た方にこそ必見なDVD。予想以上に充実しており、大満足な内容でした。

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