アルバムレビュー(洋楽)2026年

2026年5月12日 (火)

クラブ系寄りだが、ポップスセンスは健在

Title:Kiss All The Time.Disco,Occasionally
Musician:Harry Styles

もともとはイギリスの男性アイドルグループ、ワン・ダイレクションのメンバーとして活動し、解散後はソロとして、俳優活動に音楽活動に、積極的な活動をみせるハリー・スタイルズ。特に音楽活動においては、シンガーソングライターとして積極的に活動を進め、前作「Harry's House」が各種音楽メディアなどでも高い評価を受けるなど、その評価を確固たるものとしています。

そんな彼の約4年ぶりとなるニューアルバム。今回のアルバムは、タイトルからしてもわかりやすいのですが、エレクトロサウンドを全面的に取り入れた、クラブ寄りのディスコテイストの強い作品になっています。作品はいきなりビルボードのHot100で1位を獲得した「Aperture」からスタートしますが、エレクトロサウンドを聴かせるミニマルテイストの強い作品。続く「American Girls」も先行シングルで、こちらは比較的、いままでの彼の作風を引き継ぐようなメロディアスでメランコリックなポップチューンとなっていますが、続く「Ready,Steady,Go!」が、まさにこのアルバムの方向性を決めるとも言える、ファンキーでリズミカルなディスコチューン。徐々に力強いサウンドで盛り上がっていき、ライブでも盛り上がりそうな作品となっています。

その後も郷愁感あふれるエレクトロポップの「Taste Back」や、80年代風のエレクトロポップチューンでもある、その名もそのまま「Pop」という作品、さらにタイトルそのまま「Dance No More」は、こちらもいい意味でベタさもあるディスコナンバーに。ただただ音楽にゆだねて踊ろうというストレートな音楽に対するメッセージ性ある歌詞も印象的なナンバーになっています。

そしてラストの「Carla's Song」は最初、抑え気味なバラード風の作風からスタート。後半になるにつれて徐々にハイテンポになり、最後は軽快なエレクトロダンスチューンになって締めくくりと、このアルバムのラストを飾るにふさわしい、大団円的な作品で締めくくられています。

まず、アルバム全体を聴いて感じるのは、とにかくポップで聴きやすい、という点。メロディアスでインパクト十分なポップチューンの連続で、すんなりリスナーの耳に入り、素直に楽しませてくれるような楽曲が並びます。ここらへん、高いエンタメ性を求められるアイドル時代に彼に身に付いた実力なのかもしれません。一方でポップとはいえ単純に流行を追うようなサウンドを追求するのではなく、ハリーならではの個性もしっかり感じられる点も魅力的。ここらへんのメロディーセンスは彼の才能と言えるでしょう。

また、基本的にエレクトロなダンスチューンがメインとなっているアルバムですが、オーケストラアレンジを入れて、スケール感のあるサウンドを聴かせる「Coming Up Roses」や、アコギでしんみりフォーキーに聴かせる「Paint By Numbers」など、ある意味、エレクトロ主体のアルバムの中で、ちょうどよい隠し味のようなポップチューンも入れて、アルバムにインパクトを与えています。ここらへんのアルバム全体の統一感を崩さない程度で入っている、アルバムにとってのスパイスのようなバリエーションのバランス感覚の良さも彼の才能と言えるのかもしれません。

いろいろなタイプの方にとって素直に楽しませてくれる、前作同様、非常に魅力的なポップのアルバムに仕上がっていました。日本でももっと人気が出てもよいタイプのシンガーのようにも思います。幅広いリスナー層にお勧めできる、聴いていて素直に楽しめる、そんなポップな傑作アルバムでした。

評価:★★★★★

Harry Styles 過去の作品
Harry's House


ほかに聴いたアルバム

TRON Ares:DIvergence/NINE INCH NAILS

昨年リリースされた映画「TRON Ares」のサントラ盤をリミックス、再構築したアルバム。文字通り、映画のスコアだったサントラ盤に比べると、ここにNINE INCH NAILSらしい解釈を加えて、雰囲気もグッと変化。特にインダストリアル色が強い作品となり、いい意味でNINE INCH NAILSらしい作品となっています。さらにArca、Boys Noizeなどといった豪華ミュージシャンがリミキサーとして参加し、NINE INCH NAILSらしいインダストリアル的な作品を軸としつつも、新たな音楽性を広げた作風。サントラ盤のリミックス、というよりもサントラ盤を素材として使ったNINE INCH NAILSの新作、といっていい傑作アルバムに仕上がっていました。

評価:★★★★★

NINE INCH NAILS 過去の作品
GhostI-IV
THE SLIP
Hesitation Marks
Not The Actual Events
Add Violence
Bad Witch
Ghosts V:Together
Ghosts VI:Locusts
TRON:Ares(Original Motion Picture Soundtrack)

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2026年5月 9日 (土)

ちょっと意外な約10年ぶりの新作

Title:The Romantic
Musician:Bruno Mars

前作「24K Magic」以来、実に約9年3か月ぶりとなるブルーノ・マーズのニューアルバム・・・と書くと、意外に感じる方も多いでしょう。2021年にシルク・ソニックとしてのアルバムをリリースしているほか、2024年にはLady Gagaと組んだ「Die With a Smile」が大ヒットを記録。さらにおなじ2024年には、ROSEと組んだ「APT.」が日本でも大ヒット。ここ数年、ブルーノ・マーズの名前を聴く機会が多かっただけに、彼のオリジナルアルバムが10年近いスパンが空いているというのは、ちょっと意外に感じてしまいます。

さて、そんなヒット曲が続いてブルーノ・マーズの新作ですが、久々のリリースながらも、全9曲入り31分という比較的コンパクトな内容に。さらに彼らしいレトロなソウルやラテンの要素を取り入れた、比較的シンプルな作品に仕上がっています。

アルバムはいきなりバラードナンバー「Risk It All」からスタート。ラテンフレーバーなバラードナンバーからスタートという展開はちょっと意外性もありますし、ちょっと地味目な楽曲からのスタートというのは、彼のアルバムに対する自信のあらわれかもしれません。続く「Cha Cha Cha」はタイトルそのまま、キューバ発祥のラテンダンスナンバーチャ・チャ・チャのナンバー。メランコリックながらも軽快なラテンらしい楽曲となっています。

そして、全米1位も記録した先行シングル「I Just Might」へ。70年代風のディスコナンバーで、軽快なインパクト十分なナンバー。間違いなくアルバムの核となっています。その後もラテンのリズムも加えたソウルバラードの「God Was Showing Off」や、70年代風の軽快なソウルチューン「On My Soul」などが続き、ラストはメロウなソウルバラード「Dance With Me」へ。切なさを感じられる胸キュンのメロが耳に残ります。

全体的にはブルーノ・マーズらしい、ルーツ志向のソウルナンバーがメインながらも、ラテンの要素を取り入れた楽曲も目立つ作品。正直、目新しい作品はないですし、そういう意味では賛否はわかれる作品になっているようです。ただ一方で、先行シングルとなった「I Just Might」のような、アルバムの核となるようなインパクトある曲もありますし、ラストのバラード「Dance With Me」もインパクト十分。ブルーノ・マーズの魅力をしっかりと感じられる作品だったと思いますし、いい意味で、ブルーノ・マーズがちゃんと彼の求められる魅力をしっかり提示した作品になっていたと思います。

ちなみに、「Die With a Smile」も「APT.」も未収録。ここらへん、昔だったら、国内盤のボーナストラックに収録されそうなんですけどね。ここらへんを目当てに聴いてみるとガッカリするかも・・・って、サブスクだから、今の時代、難なく楽曲は聴けるのですが。「APT.」ではじめてブルーノ・マーズを知った方が最初に聴くにもピッタリな、ブルーノ・マーズらしい傑作でした。

評価:★★★★★

Bruno Mars 過去の作品
Doo-Wops & Hooligans
Unorthodox Jukebox
24K Magic
An Evening With Silk Sonic(Bruno Mars, Anderson .Paak, Silk Sonic)


ほかに聴いたアルバム

Prizefighter/Mumford&Sons

前作からわずか11ヶ月というスパンでリリースされたMumford&Sonsの新作は、ニューヨークのスタジオでわずか10日という短さで完成させたという作品。前作はアコースティックな作品とバンドサウンドを取り入れた曲を共存させた作風でしたが、今回のアルバムではフォークに回帰させた、アコースティックメインのシンプルな作風の構成に。短期間で制作された内容だからこそ、よりシンプルな内容になったのでしょうか。原点回帰的な作品で目新しさはありませんが、Mumford&Sonsらしさが強調された、そんな作品になっていました。

評価:★★★★

Mumford&Sons 過去の作品
Sigh No More
Babel
Wilder Mind
Delta
Delta Tour EP
Rushmore

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2026年5月 5日 (火)

隠遁生活している女性が主人公

Title:Nothing's About to Happen to Me
Musician:Mitski

三重県出身の日系アメリカ人のシンガーソングライター、Mitskiの、約2年5ヶ月ぶりとなるニューアルバム。2022年にリリースされたアルバム「Laurel Hell」はビルボードチャートで最高位5位を記録するなど大ヒットを記録。一方、それに続く前作「The Land Is Inhospitable」は最高位12位と残念ながらベスト10落ちしてしまっていましたが、今回のアルバムでは最高位10位と、再びベスト10ヒットを記録しています。

今回のアルバムに関して、まず感じてしまうのは全体的に地味なアルバム、という点でした。この点に関しては前作「The Land Is Inhospitable and So Are We」も同じようなことを感じたので、基本的にその路線を引き継いだ作品と言えるのかもしれません。アルバムの冒頭を飾る「In a Lake」から、いきなりバンジョーの音色からスタートする、カントリーテイストの強いナンバーになっていますし、「Cats」もストリングスでフォーキーに聴かせるナンバー。中盤の先行シングルになった「I'll Change for You」も、ストリングスとホーンセッションで、優雅に聴かせるような楽曲に。終盤の「Charon's Obol」もフォーキーに聴かせる楽曲に仕上げているなど、全体的におとなしいサウンドでメロを聴かせるタイプの曲が並んでいます。

ここらへん、全体的に聴かせるタイプの曲が並ぶのは、アルバムのコンセプトに依る部分も大きいでしょう。今回のアルバムのコンセプトとして、「荒れた家に住む隠遁生活を送る女性の主人公」がテーマだそうで、「家の外では彼女は異端者だが、家の中では自由」というテーマ性の下でのアルバムとなっているそうです。今回、しっかりと聴かせるナンバーが多いのは、主人公の内面を描いたような曲が多いから、という理由なのでしょう。

もちろん、これらの作品についても全体的におとなしく、地味な作風とはいえ、美しく聴かせるメロディーラインは、ソングライターとしてのミツキの実力を存分に感じられるもの。前述の先行シングル「I'll Change for You」も伸びやかな彼女のボーカルを生かしたメロウなメロディーラインが魅力的ですし、軽快なカントリー調の「Rules」も、楽しげなポップなメロが印象的。「Charon's Obol」もシンフォニックなサウンドも取り入れて、美しく聴かせるメロも強いインパクトを持った曲となっています。

一方で、初期の彼女を彷彿とさせるようなギターサウンドを前に押し出したような曲も少なくなく、例えば「Where's My Phone?」もヘヴィーでノイジーなギターを前に押し出した楽曲。「That White Cat」も力強いバンドサウンドを聴かせるロックチューンとなっていますし、最後を締めくくる「Lightning」もバンドサウンドを中心に分厚いサウンドを構成しており、最後にふさわしいダイナミックな曲調とサウンドに仕上げています。

そんな訳で、全体的に地味な印象はぬぐえないアルバムなのですが、カントリーやフォークを取り入れたサウンドやメロディーは美しく、心に残り、また、時折聴かせてくれるバンドサウンドのダイナミックなロックチューンは、アルバムの中でちょうどよいインパクトとなっているように感じました。今回も申し分ない傑作アルバム。シンガーソングライターとしていい意味で安定感も覚える作品でした。

評価:★★★★★

Mitski 過去の作品
Be the Cowboy
LAUREL HILL
The Land Is Inhospitable and So Are We


ほかに聴いたアルバム

Days of Ash/U2

Days_of_ash

U2が急遽リリースした6曲入りのEP盤。「急遽リリース」というのは理由があって、いずれの曲も社会派な曲で構成されており、非常に強い政治的メッセージが込められた曲が並びます。「American Obituary」は、アメリカICEによって射殺されたレネー・グッドに捧げる曲ですし、「Song Of The Future」は、マフサ・アマニ抗議運動に参加し、当局に殴打されて死亡した、16歳のイラン人女子学生に捧げた曲。ラストの「Yours Eternally」は、かのエド・シーランが参加したことでも話題ですが、ウクライナの歌手から兵士になったタラス・トポリアがゲストボーカルとして参加。ウクライナの戦争について歌った歌となっています。

メロディーラインやアレンジは、ある意味シンプルなギターロックとなっており、いつものU2といった感じで目新しさは覚えません。ここらへん、楽曲の完成度よりも、その伝えたいメッセージの適時性を優先させたのでしょう。ある意味U2らしいですし、こういう行動をすぐに行えるあたりもミュージシャンとしての頼もしさを感じます。純粋に楽曲としての出来ならば4つですが、そのメッセージに敬意を表して、1つ追加で。

評価:★★★★★

U2 過去の作品
No Line on the Horizon
Songs of Innocence
Songs Of Experience
The Virtual Road – U2 Go Home: Live From Slane Castle Ireland EP
Live At Red Rocks: Under A Blood Red Sky EP
The Virtual Road – PopMart Live From Mexico City EP
The Virtual Road – iNNOCENCE + eXPERIENCE Live In Paris EP
Songs Of Surrender
ZOO TV Live In Dublin 1993 EP
How To Dismantle An Atomic Bomb(Re-Assemble Edition)

Green Mind (Expanded Edition)/Dinosaur Jr.

アメリカのロックバンド、ダイナソーJr.が1991年にリリースし、オルタナティヴ・ロックを代表する名盤とされる作品。2019年に、B面集&シングル集と、ライブ音源を加えた2CDのデラックス拡張盤がリリースされましたが、本作は、同作にリマスターを加えた再発盤となります。オルタナティヴ・ロックの、ある意味「手本」的なオリジナルの傑作ぶりはもちろんなのですが、本作の聴きどころはやはりDisc2のライブ音源。1991年6月14日に、ハリウッドのパラディウムでのライブの模様を収録しているのですが、かなり荒々しい音源となっており、ダイナソーJr.のコアな部分が如実にあらわれた音源になっています。彼らの「本質」に触れるにはうってつけの音源になっていました。

評価:★★★★★

Dinosaur Jr. 過去の作品
beyond
Farm
Give a Glimpse of What Yer Not
SWEEP IT INTO SPACE

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2026年5月 4日 (月)

「死」をテーマとしたコンセプチュアルな作品

Title:The Moutain
Musician:Gorillaz

約3年ぶりとなるGorillazのニューアルバム。いまやすっかりデーモン・アルバーンにとってのメインプロジェクトとなってしまっていますが、今回のアルバムも、全英チャートで1位を獲得した他、アメリカのビルボードチャートでも7位となるなど、人気面でも相変わらず高い評価を維持しています。

さて、Gorillazといえば、毎回、主にデーモンの幅広い音楽的な興味が反映されたようなアルバムとなっていますが、今回のアルバムについてもその特徴は顕著。まず目立つのは全体的にシタールやタブラなどといったインド古典音楽からの影響。オープニングを飾るタイトルチューンでもある「The Mountain」では、シタールの響きでスピリチュアルな雰囲気を醸し出していますし、「The Empty Dream Machine」でもイントロではシタールの音色が。「The Shadowy Light」では、インドの古典音楽で使われる弦楽器、サロードの奏者であるAyaan Ali Bangashがゲストで参加しています。

もちろん取り入れている音楽はインド音楽に限定されず、エレクトロサウンドを取り入れてポップに仕上げた「Orange County」、IDLESが参加した「The God of Lying」はポストパンク的な作品となっていますし、もちろん今回のアルバムでもHIP HOP的な要素が随所に見られます。相変わらずデーモンの幅広い音楽的な興味が反映された自由な音楽性を聴かせてくれる作品となっています。また、使われている言語も英語だけではなく、アラビア語や

そして今回のアルバムで一番大きなポイントとなっているのは本作のコンセプト。今回のアルバムでは「死、悲しみ、そして死後の世界」がテーマとなっており、これは制作中にデーモン・アルバーンやジェイミー・ヒューレットの近親者の死を経験したことが大きなインスピレーションになっているそうです。

そのコンセプトがわかりやすいのが、まず、故人のミュージシャンによる音源を多く用いていること。「The Hardest Thing」では2020年に亡くなったトニー・アレンが参加しているほか、「The Manifesto」では2006年に亡くなった、HIP HOPグループD12のメンバーでもあったProofの音源が用いられていたり、「Delirium」では2018年に亡くなった、ポストパンクバンドThe Fallのメンバー、Mark E.Smithが参加していたりと、まさに死後の世界と現世をつなぐような参加ミュージシャンとなっています。

楽曲的にもアルバムの冒頭を飾る「The Mountain」は死後の世界を彷彿とさせるような幽玄な雰囲気を醸し出していますし、続く「The Moon Cave」でも"If You're Leaving/Don't make it harder than it is/Let me Know"(もし君が去る時は、これ以上複雑にしないでください。ただ私に知らせてください。)と、死を彷彿させるようなフレーズが登場します。またラストを飾る「The Sad God」も荘厳な曲調に仕上がっており、"Even if they let me into heave/I would prolly just move back soon"(もし彼らが天国に私を受け入れても、すぐに戻るつもりです)と、死と、その先にある再生を示唆するような歌詞を聴かせてくれています。

そもそもインド音楽の要素を多く取り入れているのも、特にデーモンのようなイギリス人にとっては、インド音楽でイメージされる幽玄な音楽性が死や死後の世界をイメージさせるのでしょう。日本人にとっても同じようなイメージはありますが、特に西洋的な価値観と、インドのような東洋的な価値観のギャップは、おそらく私たち日本人がイメージするよりも大きく作用しているのではないでしょうか。

全体的には様々な音楽性を取り入れた作品となっており、決して派手でわかりやすいポップなナンバーはありません。いままでの作品以上に音楽面ではデーモンのパーソナルな作品になっているようにも感じました。ただ一方、「死」をテーマとしたコンセプトがあった影響で、アルバム全体の統一感が生まれたようにも感じました。

そんな訳で、デーモンのパーソナルな作品という意味でちょっと地味な印象も受ける一方、アルバム全体としての流れもしっかりと感じられ、その多彩な音楽性を合わせて、文句なしの傑作アルバムに仕上がっていたと思います。デーモンの幅広い音楽的な興味もあわせて楽しめる作品でした。

評価:★★★★★

GORILLAZ 過去の作品
D-Sides
Plastic Beach
THE FALL
The Singles Collection 2001-2011
Humanz
The Now Now
Song Machine: Season One – Strange Timez
Cracker Island


ほかに聴いたアルバム

Xavier/xaviersobased

Xavier

アンダーグラウンドHIP HOPの中で、今、最も注目を集めるミュージシャンのひとり、xaviersobasedの最新アルバム。終始、エレクトロをベースとしたサウンドが流れ、全体的に浮遊感を覚えるビートも特徴的。そこにxaviersobasedのオフビート気味のラップがのり、独特の雰囲気を醸し出しているアルバム。前作「keep it goin xav」ではラップのメランコリックなフロウが特徴的で、本作でもそんなフロウを聴かせてくれる曲はあるものの、全体的には1曲あたり2、3分と短いものの、次から次へと繰り広げられるトラックメイキングの妙がおもしろい作品になっていました。

評価:★★★★

xaviersobased 過去の作品
keep it goin xav

As Of Now/LORD JAH-MONTE OGBON

Asofnow

アメリカ・ノールカロライナ州はシャーロット出身のラッパーによる新作。最近、アンダーグラウンド・ヒップホップでは注目を集めているラッパーだそうで、本作も高い評価を得ています。サウンド的にはいわゆるブーンバップ系で、暖かみのあるソウルやジャズの要素を入れたトラックが魅力的。トラップ的な、今時のリズムを取り入れつつも、ムーディーに聴かせるトラックにローファイ気味の独特のラップが楽しめる作品になっています。高い注目も納得の、そのソウルなトラックが強い印象に残る作品でした。

評価:★★★★★

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2026年5月 2日 (土)

カントリールーツの郷愁感あるメロが魅力のパンクバンド

Title:Blame The Clown
Musician:Twisted Teens

Blametheclown  

アメリカはニューオリーンズ出身のボーカルCaspian Hollywellと、ペダルスティールのRJ Santosの2人組によるパンクロックバンド、Twisted Teensの2枚目となるアルバム。この2人のメンバーに、流動的なメンバーを加えてバンド形態となるそうですが、ちょっとユニークなのは、そのメンバーにペダルスティールの奏者がいるという点。ペダルスティールはカントリー音楽に典型的に用いられる楽器となりますが、その楽器が示す通り、ガレージパンクにカントリー的を融合したという点が大きな特徴のバンドだそうです。

ただ、そのパンク+カントリーという要素、パンクロックの破壊的な音楽に、カントリーという郷愁感という、ある意味、真逆の要素が加わることにより生じる独特な音楽性が、実に魅力的に感じさせてくれます。まず惹きつけられたのが1曲目「Is It Real?」のイントロ。ガレージパンク風のノイジーなギターリフのバックに流れてくるギターのフレーズが非常にメランコリック。なんか、このイントロ、聴いたことあるな・・・と思ったんですが、これ、すごくthe pillowsっぽいんです!確かにthe pillowsも、ガレージロックにどこか郷愁感のあるメロが特徴的でしたが・・・全く関係ないバンド同士に偶然の一致を感じさせます。

そんなパンク+カントリー的要素が魅力的なのが2曲目「Wild Connection」で、ノイジーなギターが鳴り響く中、どこか暖かみのある郷愁感あるボーカルとメロ、そしてそのバックに流れるペダルスティールの郷愁感あるメロがこれがまたいいんです・・・。続く「I Operate」は軽快なリズムで、こちらはパンク色は薄く、カントリーの色合いが強いナンバーに。カントリーという彼らのルーツが前に押し出された曲になっています。

その後も「Little Seed」「100 Bill Is Gone!」のような、パンク色が強いナンバーながらも、カントリールーツのような、郷愁感ある切ないメロが魅力的な曲が続いたり、逆に「Peekaboo Hand」のような、ペダルスティールを前に押し出したカントリー色の強い曲があったり、後半には逆に「Circus Clown」のようなパンクの色合いが強い曲があったりと、パンクロックとカントリーを上手く融合させたような曲が続きます。

バリエーション的には、パンクを前に押し出してメランコリックなメロを聴かせるか、カントリーを前に押し出すか、という2パターンであり、シンプルな形態であるものの、全12曲入り30分という短さもあって、あっという間に聴けてしまうため、中だるみ感もありません。パキッシュな勢いが最後まで保たれた作品となっています。

ただ、例えば最近注目のバンドWedesdayなどもシューゲイザーにカントリーの要素を入れたバンドだったり、どちらかというとオールドファッションというイメージのあったカントリーを積極的に取り入れるオルタナ系のバンドが増えているような印象があります。日本人にとって、歌謡曲的なメロが、ある種の郷愁感を誘い、最近では、以前は忌避されていた歌謡曲的な要素を肯定的に取り入れるミュージシャンが増えてきたように、アメリカ人にとってもカントリーがある種の郷愁感を誘い、そのため積極的に取り入れるバンドが増えてきたのでしょうか。

カントリーというと、決して日本では人気のあるジャンルではありません。しかし、これが不思議なことに、彼らの曲については、カントリー的な要素がちょうどよい郷愁感となって、日本人にとってもどこか心の琴線に触れるようなメロディーが流れてきます。純粋なカントリーミュージシャンは日本人にとって「受け」はよくないのですが、こうやってパンクロックといった要素を混ぜると、カントリーミュージックの中にある、日本人受けしない「癖」みたいなものが薄れるのかもしれないですね。

個人的にはこのメロも含めて、かなりツボにはまった1枚。年間ベスト候補の1枚にあげさせてもらえる作品だったと思います。とても心地よく最後まで楽しめた傑作でした。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

Wuthering Hights/Charli XCX

前作「BRAT」が各種メディアで軒並み年間チャート上位にランクインし、大きな話題となったCharil XCXの新譜。ただ、今回のアルバムは純粋なオリジナルアルバムではなく、同タイトルの映画のサントラ盤。正直、そのため、前作のイメージで聴くとかなり拍子抜けする作品になっています。全体的にストリングスとエレクトロサウンドで荘厳さ、ダイナミックさを表現した曲が並んでおり、ある意味、いかにも映画音楽といった感じの作品に。日本のサントラ盤によくありがちな、ワンアイディアの断片の羅列、といった感じではないため、1つのアルバムとしても楽しめますが、残念ながら印象はかなり薄いアルバムでした。

評価:★★★

Charli XCX 過去の作品
BRAT

Peanut/Otto Benson

Peanut_ottobenson

アメリカはニューヨーク、ブルックリンを拠点として活動するインディーミュージシャンによる新作。いままで、エレクトロサウンドを中心とした音楽づくりを続けてきたそうですが、本作ははじめて本格的にボーカルを導入したアルバム。全体的にローファイ気味の作風で、ギターでダウナーにしんみり聴かせるフォークや、あるいはアンビエント的な作風の多い作品。ただ、所々にエレクトロサウンドも取り入れているのですが、今回はじめて彼の作品を聴いたのですが、本来の彼の路線はこちらだったのでしょうか?かなり地味な感じで渋い作風の楽曲。DIYテイストも強く、派手さはないものの、しっかりと、その歌を聴かせてくれる作品でした。

評価:★★★★

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2026年4月24日 (金)

10年を経て完成したジル・スコットの集大成

Title:To Whom This May Concern
Musician:Jill Scott

アメリカのネオ・ソウルのシンガー、ジル・スコットによる、実に約10年7ヶ月ぶりとなるニューアルバム。前作「Woman」以来、実に10年以上の月日を経てしまったのですが、本人曰く、「インスピレーションが湧くのも待った」ということで、まさにそれに10年かかったということでしょう。しかし、そんな待ちに待った作品なだけに、まさにその期待に違わない、傑作アルバムに仕上がっていました。

本作で大きな要素としては、70年代ソウルやネオソウル、HIP HOPやジャズ、ゴスペルなどの要素を取り混ぜ、さらにエレクトロの要素も取り入れたジャンル横断的な作品に仕上がっていること。それを、ジル・スコットの力強く感情たっぷりのボーカルで歌い上げている点が大きな特徴であり、魅力となっています。

オープニングを挟んで、事実上の1曲目となる「Be Great」は、まさにアルバムのオープニングを飾るにふさわしいパワフルな作品。トロンボーン・ショーティも参加した本作は、彼のトロンボーンも加わり、ソウルフルでファンキーな作品になっています。続く「Beautiful People」もメロウに聴かせるファンキーでメロディアスな作品に。ただ、その中から徐々に彼女の力強いボーカルが前に押し出され、楽曲は盛り上がっていき、最後はパワフルなボーカルを聴かせる、高揚感ある作品に仕上がっています。

他にも感情たっぷりのボーカルをメロウに聴かせる「Pressha」や、力強くソウルフルなボーカルが特徴的な、ネオソウルナンバー「Don't Play」、さらにアルバムの最後を締めくくる「Sincerely Do」などは、ピアノをバックにソウルフルで感情たっぷりに歌い上げるボーカルが心に響きます。このように、彼女のソウルフルで感情たっぷりなボーカルをしっかり聴かせるナンバーが並びます。前作から10年以上の月日が経ち、様々な経験を経たからこそ、その感情表現にもより深みが増したのではないでしょうか。

一方で、「Norf Side」はラッパーのTierra Whackが参加した作品。70年代ソウル寄りの異なり、こちらはHIP HOP曲の強いナンバーに仕上がっています。他にもラッパーのAb-Soulが参加した「Ode to Nikki」や同じくラッパーのJIDが参加した「To B Honest」など、HIP HOP色の強いナンバーも目立ちます。特に「To B Honest」はジル・スコットの力強いボーカルとJIDのラップが対比する構成となっており、ソウルフルな曲調の中に、ラップを上手く溶け込ませている作品に仕上がっています。

他にも「Offadaback」「Pressha」のような、ジャジーな要素を取り入れた楽曲もあったり、「Right Here Right Now」のような、エレクトロサウンドを取り入れた、ダンスチューンがあったりと、様々な音楽的要素を取り入れたジャンル横断的な作風が魅力的。そんな様々な音楽性を彼女のソウルフルなボーカルでひとつにまとめ上げた作品、といった印象を受けました。

そして、もうひとつ大きな特徴と感じたのが、トライバルな要素を取り入れた、という点でしょう。ジャケットの写真も、いかにもアフリカ的な画風になっていますし、そんな「アフリカ」的な要素がアルバムの中で様々に感じさせます。

前述の「Beautiful People」にもトライバルなリズムが入ってきていますし、「BPOTY」もファンキーなボーカルの中、リズムはトライバルに。「Liftin' Me Up」もトライバルなパーカッションが鳴り響きます。さらにハイライトとも言えるのがラスト1曲目の「Àse」というナンバー。楽曲自体はメロウに聴かせるソウルなナンバーなのですが、このタイトル自体、アフリカ系のスピリチュアルな概念の意味を持つそうで、まさに「アフリカ」的な要素を作品に取り入れた曲となっています。

そんな彼女のブラックアメリカンとしてのルーツを追求した上で、70年代ソウルやファンク、ジャズといった彼女の音楽性ルーツ、そして一方ではHIP HOPという「今」も取り入れた今回のアルバム。まさに前作から10年という月日を経て出来上がった、様々な面からのジル・スコットの集大成とも言えるべき作品と言えるかもしれません。それを彼女の、年齢や経験を経て出来上がった、よりソウルフルで感情たっぷりのボーカルをまとめあげた傑作。その実力と魅力をあらためて実感した作品でした。

評価:★★★★★

Jill Scott 過去の作品
The Light Of The Sun


ほかに聴いたアルバム

Wormslayer/Kula Shaker

昨年のoasis再結成ライブの影響もあって、90年代のブリットポップが再び注目を集めていますが、まだまだ現役で活動するバンドも少なくありません。Kula Shakerもそんなバンドのひとつで、本作も前作から約2年ぶりという作品となって、その活動の活発さが目立ちます。そんな彼らの最新作は、これぞKula Shakerらしい、エキゾチックな要素を取り入れたギターサウンドで、グルーヴィーに聴かせるロックチューンが魅力的な作品。原点回帰的な作品となっており、初期のファンにとってはうれしいアルバムかも。一方、その分、目新しさに欠ける部分は否めないのですが。とはいえ、Kula Shakerもまだまだ現役で元気、ということを実感できる作品でした。

評価:★★★★★

Kula Shaker 過去の作品
Revenge of the king
STRANGE FOLK
Pilgrim's Progress
K2.0
1st Congregational Church Of Eternal Love And Free Hugs
Natural Magick

We Gotta Groove: The Brother Studio Years/The Beach Boys

1960年代後半に、精神状態の悪化で活動休止状態だったビーチ・ボーイズのブライアン・ウィルソン。彼が一時期落ち着き、バンド活動に復帰した1976年~77年頃の音源をまとめた3枚組のコンピレーション。同時期のアルバム「Love You」のリマスターの他、同時期のセッション音源やアウトテイクをまとめて収録した作品となります。ただ、ブライアンのコンディションもあまり良好とは思えず、「Love You」自体の出来も、彼らしい美しいメロは聴けるものの、どこかまとまりの欠いた内容。セッション音源も、いまひとつ中途半端な出来に仕上がっています。貴重な音源ですし、この時期の彼らの状況を知るには重要な音源ではあるのですが、熱心なファン向けのアイテムかと。

評価:★★★

THE BEACH BOYS 過去の作品
SMILE
THAT'S WHY GOD MADE THE RADIO(ゴッド・メイド・ザ・ラジオ~神の創りしラジオ~)

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2026年4月14日 (火)

爽やかさとヘヴィネスさが絶妙にブレンド

Title:Singin'to an Empty Chair
Musician:Ratboys

今回紹介するのはアメリカはシカゴ出身のインディーロックバンド。ギターボーカルのジュリア・スタイナーと、彼女のパートナーのギタリスト、デイヴ・サガンによって結成され、現在は4人組バンドとして活動しているRatboysの6枚目となるアルバム。デビューが2015年なので、そろそろ中堅のバンドなのですが、今回、はじめてアルバムを聴きました。

楽曲としてはオルタナ系のギターロックにカントリーの要素を加えた楽曲で、カントリーらしい爽やかでサウンドに、ノイジーで、ちょっとヘヴィネスさもあるギターサウンドのバランスがちょうどよい感じ。さらにボーカルのジュリア・スタイナーのボーカルと歌が清涼感あって、ポップで心地よいメロディーラインを楽しむことが出来ます。アルバムの冒頭を飾る「Open Up」はまさにそんなタイプの曲で、最初は爽やかなカントリー風の曲調からスタートし、後半はここにノイジーなギターサウンドが加わる展開。比較的シンプルでポップなギターロックに仕上がっており、非常にポピュラリティーのある作風となっています。

全体的にとてもポップで聴きやすいアルバムという印象。ジュリア・スタイナーのボーカルはキュートでインパクトもあって、メロディーラインは至ってポップ。爽やかなサウンドをベースとしつつ、ノイジーなギターサウンドがほどよいヘヴィーさがスパイスとなっています。特に「Anywhere」など疾走感あるポップでキュートなメロがインパクトがあって、ともすればJ-POP的にすら感じてしまいます。

ミディアムポップの「The World,So Madly」もメロディアスでキュートな印象が強い作品ですし、「What's Right?」も軽快なポップチューンでメロディーにインパクトも。いい意味で広いリスナー層に聴きやすいポップロックなナンバーに仕上がっているような印象を受けます。一方、ミディアムチューンの「Strange Love」などはよりカントリー色の強い印象。「Burn It Down」もブルージーなギターをしっかりと聴かせて、泥臭さのあるカントリーロックになっており、バンドとしての音楽性の広さを感じさせます。

一方、ポップなイメージのサウンドやメロディーと異なり、歌詞は人間関係の断絶や誤解がテーマとなっているそうで、意外とヘヴィーさがある点も特徴のひとつ。「Open Up」は歌詞を直訳すると「心を開いて」となるのですが、タイトル通り、「心を開くには何が必要?」と問いかけるような内容。「Always」などでは歌詞に適用障害という単語まで登場する、かなりヘヴィーなラブソングとなっています。ポップで爽やかなメロとサウンドとは裏腹な、意外とヘヴィーな歌詞も、このバンドの魅力であると言えるでしょう。

ただ、ここらへんの英語詞は、日本人である私たちにはストレートにわからないという点はマイナスであり、かつ、純粋にポップなメロを楽しむためにはプラスの要素にもなるかもしれません。とにかく、ポップでキュートなメロと、爽やかながらもヘヴィネスさもあるサウンドの組み合わせが絶妙かつ非常に魅力的。個人的には今年のベスト盤候補の1枚と言っていいかも。インディーロック好きやオルタナロック好きはもちろん、広いリスナー層にお勧めできる傑作でした。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

Marty Supreme(Original Soundtrack)/Daniel Lopatin

普段はOneohtrix Point Neverの名前で活躍しているミュージシャンが、本名名義でリリースした作品は、3月より日本でも公開している映画「マーティ・シュプリーム 世界をつかめ」のサントラ盤。彼らしいちょっとドリーミーで、80年代っぽさも感じるエレクトロの楽曲が並びます。映画は見ていないのですが、1950年代を舞台とした映画だそうで、そこにこういう、50年代基準では近未来的なサウンドを取り入れるというアンバランスなユニークさを感じます。映画のサントラということで、1曲あたりは短く、ワンアイディアで曲を構成されている感じですが、彼らしさはしっかりと感じられるため、Oneohtric Point Neverが好きならばチェックしておきたい作品でしょう。

評価:★★★★

Oneohtrix Point Never 過去の作品
Age of
Magic Oneohtrix Point Never
Again
Tranquilizer

Everybody's Gotta Learn Sometime/BECK

BECKのアルバムは8曲入りのコンピレーション。基本的に8曲中7曲はカバーで、オリジナル曲は「Ramona」1曲のみ。カバー曲も既発表の曲が多く、どちらかというと企画盤的な内容となっています。カバーの方はエルヴィス・プレスリーやジョン・レノンから、ブラジル音楽の巨匠Caetano Velosoまで幅広い内容なのですが、全体的にフォーキー、ブルージーにメランコリックに聴かせる作風が多く、統一感ある内容に。派手なカバーはありませんが、これはこれでBECKのひとつの魅力を感じさせるアルバムになっていました。

評価:★★★★

BECK 過去の作品
The Information
Mordern Guilt
Morning Phase
COLORS
Hyperspace

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2026年4月13日 (月)

ヘヴィーなノイズを展開するが、リズミカルなエレクトロに聴きやすさも

Title:URGH
Musician:Mandy,Indiana

イギリスのマンチェスターで結成し、マンチェスターとベルリンを拠点とする4人組のエクスペリメンタル・ロックのよる2作目のバンド。ボーカルのバレンタイン・コールフィールドはパリ出身のため、使われている言語はフランス語。イギリス、フランス、そしてドイツと、ある意味、ヨーロッパをまたにかけているバンドということになります。グローバルな・・・と言ってしまうにはヨーロッパだけ、なのですが。

基本的にノイズやインダストリアルを前に押し出しているバンドなので、決して取っつきやすい訳ではありません。このアルバムも、冒頭を飾る「Sevastopol」はヘヴィーなノイズミュージックであり、決して万人受けするようなタイプの音ではありません。ただ、まずは聴きやすさを感じ、楽曲としてのインパクトを感じるのは続く「Magazine」。中盤からリズミカルなエレクトロビートが入ってきており、テクノやある意味、ビッグビートの色合いが強いナンバーに。Prodigyあたりが好きな人なら楽しめそうな感じで、いい意味での聴きやすさを感じる人も多いのではないでしょうか。

そして、一度、彼らのノイズ混じりのダイナミックでロッキンなビートに慣れると、そこからは非常に心地よい世界が待っています。ポエトリーリーディング気味のボーカルが力強い「try saying」、ダイナミックでヘヴィーなノイズを聴かせる「Life Hex」も、後半にはテンポよいエレクトロビートが楽しめます。

後半の「ist halt so」はヘヴィーなバンドサウンドをバックにラップが展開されるHIP HOP色の強いナンバー。さらに続く「Sicko!」では最近話題のラッパーbilly woodsが参加。ここらへんはHIP HOPのテイストの強い楽曲が続きます。かと思えば終盤の「Cursive」はリズミカルなエレクトロトラックが主導となるテクノ色の強いナンバーに。比較的、軽快な楽曲となっており、「ポップス」さも感じさせる曲になっています。

ちなみに前述の通り、ボーカルのバレンタイン・コールフィールドはフランス語が母語のため、歌は基本的にフランス語によるもの。海外のレビューコメントでは「フランス語であることが壁に感じる」とネガティブなコメントもついているようですが、それは我々日本人がいつも洋楽に関して感じることだよ・・・と思いつつ、ただ、フランス語の独特の響きもまた、バンドの味になっているような感じがします。ヘヴィーでとげとげしさを感じるバンドサウンドに対して、まろやかで丸みを帯びた印象を受けるフランス語とのバランスがユニークに感じました。

ヘヴィーでインダストリアル、ノイズも混じった楽曲は最初、聴きにくさもありますが、テクノ、ビッグビートの影響も感じるリズミカルなエレクトロサウンドはポップで聴きやすく、ダイナミックなロックサウンドも加えて、慣れていくと非常に癖になるような、完全にはまってしまうバンドだと思います。NINE INCH NAILSあたりのインダストリアル好きはもちろん、Prodigyあたりが好きな方でもお勧めできそうなアルバム。私もついついはまってしまった傑作でした。

評価:★★★★★

Mandy,Indiana 過去の作品
i've seen a way


ほかに聴いたアルバム

private music/Deftones

こちらは2025年ベストアルバムを後追いで聴いた1枚。こちらは「rockin'on」誌のベストアルバムで第〇位に入ったアルバム。アメリカのオルタナティヴ・メタル・バンドによる約5年ぶり10作目となるアルバム。「メタルバンド」というイメージが強かったので、いままでDeftonesについてはあまり聴いてきておらず、今回はじめて聴いた作品となるのですが、メタリックなサウンドを取り入れつつも、ノイジーなギターサウンドはオルタナ系の影響も色濃く感じられ、個人的には思ったよりも楽しめたアルバムになっていました。メランコリックなメロディーラインも耳なじみやすく、良い意味で聴きやすさも感じさせるアルバムとなっています。

評価:★★★★

hickey/Royel Otis

こちらも2025年ベストアルバムを後追いで聴いた1枚。こちらも「rockin'on」誌のベストアルバムで第〇位に入ったアルバム。てっきり男性ソロシンガー・・・かと思っていたのですが、オーストリア出身のロイエル・マッデルとオーティス・パブロビックによるデゥオだそうです。シンセも入りつつ、メランコリックでメロディアスなオルタナ系のギターロックな作品。いい意味で王道のストレートな感じのポップチューンになっており、気持ちよく楽しむことが出来ました。2月に初の単独来日公演が行われましたが、今後、日本での人気も高まりそう。

評価:★★★★★

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2026年4月11日 (土)

10代兄妹のバンドによる注目のデビューアルバム

Title:Wasted On Youth
Musician:The Molotovs

基本的にヒットチャートは、日米英のチャートを毎週チェックしているのですが、イギリスのヒットチャートはアメリカのビルボードと比べ市場が小さいため、アメリカに比べてバラエティー富んだミュージシャンたちがチャート上位に顔をのぞかせることが少なくありません。特に、ロックバンドについてはアメリカに比べて、まだまだロックの人気が高いため、おもしろいバンドがいきなりチャート上位にランクインしてくることも少なくありません。

今回紹介するバンドThe Molotovsも、そうやってイギリスのアルバムチャートをチェックしている中で見つけたバンドのひとつ。10代の兄妹、マシュー・カードリッジとイッセイ・カードリッジによる2人組バンドとなっています。異性の兄弟による2人組バンドと言えば、ご存じThe White Stripesを思い起こさせますが、こちらはおそらく本当の兄弟ではないかと思われます、多分。もともと2020年に結成。ただこの時は、例のCOVID-19によるパンデミックが起こり、イギリスでもライブハウスが軒並み閉鎖されたそうで、その影響で当初は路上や公園などでライブを行い、徐々に腕を磨き、The LibertinesやIggy Popのオープニングアクトに起用されるなど大きな話題を呼びました。そして2025年にマーシャル・レコードと契約。このレーベル、あの伝統的なアンプメーカーのマーシャルが2016年に立ち上げたレコードレーベルだとか。そして、デビューアルバムである本作が今年の1月にリリース。イギリスの公式チャートでいきなり3位を記録するなど、大ヒットとなっています。

そんな彼らの奏でるロックは、一言で言えば非常にストレートなパンクロック。アルバムの1曲目「Get A Life」は、いきなり「OK」というキューの音がそのまま入っているあたり、音源の一発録りのライブ感を意識したような感じになっていますし(本当に一発録りなのかはわかりませんが)、The JAMあたりを彷彿とさせる、イギリスの伝統的な、とも言えるストレートなパンクロックが展開するような作品となっています。

デビューシングルともなっていた「More More More」も3曲目に収録。こちらもかなりストレートで心地よい、ガレージロックの色合いも感じさせるストレートなロックチューン。メロディーラインもポップな感があり、デビューシングルだからこそ、The Molotovsらしさを表現した作品となっています。

そんな感じでストレートなロックナンバーが11曲つまったこのアルバム。それで全32分、1曲あたり3分弱という長さもまた、シンプルなパンクロックらしい好印象を受ける構成で、最後まで一気に聴ける内容となっています。ただ、おもしろいのは前述の通りのパンクロック、あるいはガレージロックをストレートに表現するロックチューンだけではなく、微妙に雑食性も感じさせる部分が顔をのぞかせている点。例えば2曲目の「Daydreaming」など、イントロのギターから完全にoasisの影響も感じられます。出だしの歌い方や、その後の節回しも完全にoasisって感じで、ちょっとストレートすぎない?と思ってしまう点も。

また、中盤の「Come On Now」のヘヴィーなギターリフも、パンクロックというよりはむしろハードロックからの影響を感じさせますし、中盤から後半にかけてのナンバー、例えば「Newsflash」あたりはむしろGREEN DAYあたりを彷彿とさせるメロパンク系の楽曲になっています。一方、中盤に配置された「Nothing Keeps Her Away」などはアコギでメランコリックに聴かせるナンバーとなっており、アルバムの中のチルアウト的なナンバーとしてちょうどよいインパクトも。また、ラストの「Today's Gonna Be Our Day」は軽快なロックンロールの色合いも強いナンバーとなっており、彼らの雑食性を感じさせる構成となっています。

ただ、全体的には軽快なパンクロックバンドで統一されており、勢いもあって最後まで一気に楽しめる楽曲。正直言うと、シーンを切り開くような圧倒的な目新しさ、みたいなのはちょっと欠ける部分はありますし、メロディーラインのインパクトという点でもちょっと物足りなさを感じる部分もありました。この手のロックバンドはいかにも日本人好み・・・というよりは、日本のロック系メディア好みなのに、さほど大きく盛り上がっていないのは、国内盤がリリースされていないから、というビジネス上の事情もありつつ、もろ手あげて大絶賛するには躊躇するような要素もあるからかもしれません。

しかし、気になる点はありつつも、やはりこのシンプルでストレート、なによりも勢いのあるパンクロックは実に魅力的。ライブもかなり盛り上がりそうだし、ロック好き、特にパンクロックやガレージロックが好きな層にはストレートにぶっささりそうなアルバムだと思います。ちなみにバンド名の「Molotov」とは、ソ連の政治家から名前をとった火炎瓶のことで、ここらへんのロックらしい、でも微妙にベタな命名センスもまたいい感じ。間違いなく、これからに期待したいロックバンドです。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

Janji/Dayang Nurfaizah

Janji

2025年ベストアルバムで聴き逃していたアルバムを後追いで聴いた作品。本作は「Music Magazine誌」の「ワールドミュージック」部門で8位にランクインした1枚。1999年にデビューしたマレー語のポップスシーンを代表する女性シンガーによるアルバム。バラードを中心にしんみりと歌い上げるスタイルが特徴的で、楽曲的にはむしろ日本のムード歌謡曲にすら近い感じの哀愁たっぷりに聴かせるスタイル。ただし、途中、今風のR&Bな楽曲も聴かせてくれており、ベテランらしい、包容力あるボーカルにバリエーションの富んだ作品を聴かせてくれています。

評価:★★★★

Dayang Nurfaizah 過去の作品
BelaguⅡ

ESPERANSA(邦題 エスペランサ~希望~)/Nancy Vieira&Fred Martins

こちらも2025年ベストアルバムで聴き逃したアルバムを後追いで聴いた作品。本作も同じく「Music Magazine誌」の「ワールドミュージック」部門で10位を獲得したアルバム。カーボ・ヴェルデ出身の歌手、Nancy VieiraとブラジルのシンガーでギタリストでもあるFred Martinsによるデゥオ。カーボ・ヴェルデとブラジルの音楽性を取り入れつつ、他にもキューバやポルトガルなど様々な国の音楽を取り入れた作品。また「Saiko Dayo」という作品は、1970年代に日本のマグロ漁船がカーボ・ヴェルデに寄港した時に日本人が口にした言葉を元にしているなど、まさにワールドワイドな作品となっています。全体的にはブラジルのボサノヴァなどの影響を感じさせる、メロウで優しい雰囲気のポップが流れる作品で、いい意味で広い層に聴きやすい、暖かいポップチューンが流れる作品となっています。世界には素晴らしい音楽があふれていることを感じさせる1枚です。

評価:★★★★★

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2026年3月30日 (月)

SAULTらしい作品

Title:Chapter 1
Musician:SAULT

ほぼ毎回、突如アルバムをリリースし、さらにそのジャケットはほぼ無地というスタイル。「謎のグループ」というスタンスを貫くファンクグループ、SAULT。メンバーはInfloとCleo Solということで徐々にその実態は明らかになってきているのですが、毎作、ジャケットにしろ内容にしろ、最低限の情報しかリリースされず、「謎」という形態は保ちつつ、突如、ニューアルバムをリリースするというスタイルに大きな変化はありません。

そんな中、リリースされた約1年ぶりとなるニューアルバム。アルバムによってそのスタイルも様々に変化させている彼らですが、今回のアルバムは特にCleo Solのボーカルを前に押し出しつつ、ファンキーでメロウなグルーヴを聴かせる、というある意味、シンプルにSAULTらしい、ソウルでファンキーな作品に仕上がっています。

重心の低いベースラインとミニマルなドラムでファンキーなグルーヴを作りあげている「God,Protect Me from Enemies」からスタートし、Cleo Solの清涼感あるボーカルとストリングスに、ファンキーなグルーヴで美しく聴かせるメロディアスな「Fulfil Your Spirit」、メロウな女性ボーカルをメランコリックに聴かせるソウルナンバー「Good Things Will Come After the Pressure」など、Cleo Solのボーカルを聴かせつつ、SAULTらしいグルーヴ感あるナンバーが続きます。

その後もちょっと70年代あたりを彷彿とさせるレトロなソウルチューン「Love Does Not Equal Pain」やストリングスが入り、こちらも懐かしいシネマチックな雰囲気が漂う「Lord Have Mercy」、さらにはちょっと怪しげなストリングスがレトロでメランコリックな雰囲気を醸し出す、こちらもレトロソウル風な「Don't Worry About What You Can't Control」でもキュートなCleo Solのボーカルが効果的に用いられています。

全体的には、懐かしさを感じるレトロなソウル基調に、Cleo Solの清涼感ありキュートさも感じるボーカルを上手く使いつつ、終始鳴っている重低音のベースラインがグルーヴ感を醸し出している作品。かつてのSAULTのアルバムのように「圧巻なグルーヴ感」といった感じではありませんし、ある意味、目新しくもないのですが、SAULTらしい魅力をしっかりと感じられるアルバムに仕上がっていたと思います。今回も文句なしの傑作アルバムでした。

評価:★★★★★

SAULT 過去の作品
Untilted(Black is)
Untitled(Rise)
NINE
AIR
11
AⅡR
Earth
Today&Tomorrow
UNTITLED(God)
10
Acts of Faith


ほかに聴いたアルバム

Abundância/Maria João

2025年のベストアルバムを後追いで聴いた1枚。こちらは「Music Magazine誌」の「ロック(ヨーロッパほか)」部門で1位を獲得したアルバム。ポルトガルのリスボンと、モザンビークのマプトを行き来してつくられた作品だそうで、西洋のジャズと、モザンビークの音楽、さらにはエレクトロを融合させたという、独自の音楽性を追求した作品。ポルトガルとアフリカの文化的架け橋をテーマとしたそうで、ジャジーにしんみり歌い上げる曲があったかと思えば、トライバルなビートを前面に押し出した曲があったりとかなりユニーク。また、さらにユニークなのは彼女のボーカルで、ハイトーンでチャイルディッシュなボーカルが強いインパクトに。ある意味、ジャズ、アフリカ音楽、エレクトロ、さらにはチャイルディッシュなボーカルと、ベクトルがバラバラな要素をごった煮してしまっているような感じなのですが、これがユニークなことにしっかりと融合しているのが見事な感じ。独特なサウンドを楽しめる傑作でした。

評価:★★★★★

云与万花筒/周士爵&Fishdoll

Fishdoll_

こちらも2025年ベストアルバムを後追いで聴いた1枚。同じく「Music Magazine誌」の「ロック(アジア)」部門で1位を獲得したアルバム。中国出身のラッパーとトラックメイカーによるコンビによる作品。テンポよい男性のラップに、メロウなソウルやエレクトロなトラックが加わり、また、所々に女性ボーカルによるメロウな歌が加わるスタイル。ラップは比較的ポエトリーリーディングのスタイルに近く、全体的にメロウな作風が楽しめる曲調に。確かに1位という結果も納得の、しっかりと聴かせる傑作でした。

評価:★★★★★

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