アルバムレビュー(洋楽)2026年

2026年10月12日 (月)

多幸感あふれるポップス

Title:Hazel Eyes
Musician:Sam Smith

イギリスを代表するシンガーソングライターSam Smithの約3年ぶりとなるニューアルバム。2019年にノンバイナリーであることを公言した彼。前作「Gloria」は全米ビルボードチャートで1位を獲得したのですが、ノンバイナリーとトランスジェンダーを公言したミュージシャンが同チャートで1位を獲得するのは初となる快挙だったそうです。

さて、そんなSam Smith、性的マイノリティーだった影響でしょうか、いままでの楽曲の特徴として失恋や孤独をテーマとした曲が目立っていました。しかしそんな彼ですが、前述の通り、ノンバイナリーであることを公言。さらに今年、恋人でありファッションデザイナーであるクリスチャン・コーワンとの婚約を発表。まさに幸せの絶頂にいる彼ですが、今回のアルバムもそんな彼の心境を反映したような、全体的にいままでの彼の作品に比べて明るい雰囲気の作品となっています。

まず序盤のタイトルチューンの「Hazel Eyes」。ゴスペル風の分厚いコーラスも入ってゆっくり歌い上げるナンバーですが、分厚いサウンドやコーラスの影響で、全体的に多幸感あふれる作品になっています。ちなみにこの「Hazel Eyes=緑褐色の瞳」とは恋人のクリスチャン・コーワンを指すそうです。あらあら。

そしてラストを飾る「To Be Free」。こちらもシンプルなギターと分厚いゴスペルのコーラスをバックにゆっくり歌い上げる楽曲。まさにタイトル通り、自由になることを意味する楽曲で、彼が彼らしく生きることを意味していますし、また、その結果、非常に幸福感あふれる作品に仕上がっています。まさにこのアルバムの最後を締めくくるにふさわしい作品と言えるでしょう。

そしてもうひとつ本作の特徴として、全体的に比較的シンプルなアレンジで、あくまでも「歌」を聴かせる作品であるということでしょう。前作「Gloria」は様々なサウンドを取り入れたバリエーションがあふれる作品になっていましたが、本作はシンプルなアレンジで聴かせる構成に仕上がっています。

例えばアルバムの冒頭を飾る「Everlasting Love」も、アコースティックな楽器主体のアレンジとなっていますし、哀愁たっぷりに聴かせる「My Guy」も、ピアノと静かなドラムがメインの比較的シンプルなアレンジ。「Love Is A Stillness」もピアノの弾き語りでシンプルに聴かせるナンバー。Sam Smithがしんみりと歌い上げる泣きメロの歌が耳を惹きます。

レトロソウル風の「Sugar Rush」のような曲がありつつも、全体的にはソウルやフォークの要素を取り入れた、Sam Smithらしいシンプルなポップスがメインの構成。あくまでも彼の歌を聴かせるアルバムとなっており、前作に比べるとバリエーションには欠ける部分がありますが、それを上回る、純粋に歌のすばらしさが目立つアルバムになっていました。

ちなみに本作、いままでイギリスのチャートでは1位もしくは2位を必ず確保していた彼ですが、最高位21位と全く奮いませんでした。ただ、アルバムの出来としてはいままでの作品に比べて決して劣るものではなく、シンプルな作品ゆえに、Sam Smithの良さが出ていた、彼の作品としてはかなり上位の部類に入る傑作だったと思います。派手さがなかったのがいまひとつ売れなかった原因でしょうか。ひょっとしたらノンバイナリーとしての彼を前面に出しすぎたのも、好き嫌いがわかれる要因だったのかもしれません。ただ、そんなこと関係なく、ポップスアルバムとしては理想的な、幸福感あふれる傑作になっていました。ポップス好きなら文句なしにお勧めの作品です。

評価:★★★★★

Sam Smith 過去の作品
IN THE LONELY HOUR
Thrill It All
Love Goes
Love Goes: Live at Abbey Road Studios
Gloria


ほかに聴いたアルバム

fata morgana/L'Rain

ニューヨーク・ブルックリンを拠点に活動するマルチ・インストゥルメンタリストで作曲家、ミュージシャンとしても活躍するTaja Cheekのソロプロジェクト、L'Rainによる新作。彼女のアルバムを聴くのは「Fatigue」以来2作目なのですが、同作同様、39分という短さに13曲という曲数が入り、さらに楽曲もソウル、R&Bを軸としつつ、アンビエントやゴスペル、ポストロック的な要素が次々と展開される作品。ハイトーンに聴かせるボーカルは意外とポップで、全体的にはドリーミーな味付けがほどこされており、独特な世界に没入できるような作品に。実験的な作風ながらも、その展開に最後まで飽きさせない、そんな作品でした。

評価:★★★★★

L'Rain 過去の作品
Fatigue

Destroys Anaheim '76(Live At Anaheim Stadium,Anaheim,California-August 20,1976)/KISS

1976年8月20日にカリフォルニア州アナハイム・スタジアムで行われた、アメリカのハードロックバンドKISSのライブを完全収録したライブアルバム。1976年の頃のKISSと言えば、まさにスタジアムバンドとして大きく飛躍していくという、まさにもっとも勢いがあったころ。この前年のライブの模様を収録した「地獄の狂獣 キッス・ライヴ」は、ライブアルバムの名盤として知られる作品で、本作もそんなまさに脂ののりまくっているころのKISSのステージを収録した作品。力強いバンドサウンドが臨場感たっぷりに収録されており、KISSのライブバンドとしての魅力をしっかりと感じられる作品になっています。まさに偉大なロックバンドの貴重な記録と言えるライブ盤です。

評価:★★★★★

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2026年10月10日 (土)

久々の「色」アルバム

Title:Weezer(The Gold Album)
Musician:Weezer

日本人の琴線にも触れるその泣きメロで、日本でも高い人気を誇るロックバンド、Weezer。直近作は「SZNZ」と名付けられた4作のEPシリーズだったので、純粋なオリジナルアルバムとしては2021年の「Van Weezer」以来、約5年ぶり。ご存知、「色」シリーズとしては2019年の通称Black Album以来、6作目のアルバムとなります。

まず今回のアルバム、久々にセルフタイトルの「色」シリーズに戻ったということもあるのですが、本作は原点回帰の色合いの強い作品に仕上がっています。まずは1曲目の「Say Yes」。日本人だと違う楽曲を想像しちゃうのですが(というか、作詞作曲を担当したリヴァース・クオモは奥さんが日本人で日本好きなので、意識している可能性も高いのですが)、まさにWeezerの王道を行くような泣きメロのギターロック。Weezer好きならワクワクするようなスタートではないでしょうか。

続く「Shine Again」も、これでもかというほど分厚いギターサウンドを聴かせてくれるWeezerらしいパワーポップ。ちなみに本作、作詞作曲をパトリック・ウィルソンが手掛けています。彼はデビュー作の中でも数曲、作詞作曲を手掛けたことがあるのですが、今回は久々の楽曲提供となるそうで、こちらもこれでもかというほどの分厚いサウンドにポップなメロの組み合わせというのが実にWeezerらしい作品となっています。

ちなみに本作はデビューアルバムの「The World Has Turned And Left Me Here」を彷彿とさせるナンバー。こちらもパトリックが作曲に参加しており、そういう意味では彼らしい作品と言えるでしょうし、こういう曲を再び収録してくるあたりも「原点回帰」を意識した、と言えるかもしれません。

また「We Might as Well Be Strangers」はアメリカのインディーロックバンドWednesdayのKarly Hartzmanが参加。女性ボーカルの参加で、楽曲に幅を持たせており、中盤のハイライトに。楽曲的にはWednesdayらしいというよりは、完全にWeezerらしい力強いパワーポップの作品となっています。

中盤の「C.E.O.」も魅力的。ちょっとメランコリックな語りとしんみり聴かせるメロディーラインという組み合わせは、こちらもデビューアルバムの「Undone(The Sweater Song)」を彷彿とさせる楽曲。こちらも先ほどの「Shine Again」と「The World Has~」との関係と同様、原点回帰という側面を意識したのかもしれません。

後半も、軽快でポップなパーティーチューン「The Show Must Go On」や、アコースティックなサウンドからスタートし、後半になるにつれスケール感あるサウンドへと変化していく「Up In the Clouds」など、最後まで分厚いバンドサウンドとポップなメロのWeezerらしいパワーポップを楽しませてくれます。ある意味、非常に彼ららしい作品となっていました。

そんな原点回帰の意図も込めた本作。ポップなメロといい、分厚いサウンドといい、間違いなくWeezerが好きならば気に入りそうな傑作だったと思います。ただ一方、過去の作品と比べるとどうか、と言われると、いまなお現役感あふれて若々しさすら感じられるロックバンドとしての彼らの演奏は魅力的であったのですが、初期のような勢いはちょっと欠け、メロディーラインのインパクトに関しても、初期の作品と比べると物足りなさは感じてしまいます。そういう意味では、初期の勢いを取り戻したかのような、彼らの最高傑作・・・という訳にはいかなかったかな、というのは正直な感想。とはいえ、さきほども書いた通り、Weezerが好きなら気に入りそうなアルバムなのは間違いありません。若干一本調子で「大いなるマンネリ」感は否めませんが、そういう意味を含めて、安心して楽しめる作品でした。

評価:★★★★★

WEEZER 過去の作品
WEEZER(Red Album)
RADITUDE
HURLEY
DEATH TO FALSE METAL
Everything Will Be Alright in the End
WEEZER(White Album)
Pacific Daydream
Weezer(Teal Album)
Weezer(Black Album)
OK HUMAN
Van Weezer
SZNZ:SPRING
SZNZ:SUMMER
SZNZ:Autumn
SZNZ:Winter
Weezer 30


ほかに聴いたアルバム

Somewhere Over The Rainbow/Nino Paid

Somewhereovertharainbow_ninopaid

アメリカ・メリーランド州出身のラッパーによる3枚目となるアルバム。内省的で自伝的なリリックが特徴的なラッパーらしく、それに沿ったようなメロディアスなフロウと、トラックの方もトラップベースのリズムながらも、暖かみのあるトラックが魅力的。曲により、女性ボーカルが入ったり、ダウナーなトラックになったりバリエーションもあり、全19曲40分強という比較的短めな構成なだけに、いい意味でポップスさも感じられる、そのサウンドが心にしみてくるようなそんなアルバムでした。

評価:★★★★★

petal/Ariana Grande

約2年ぶりとなるニューアルバム。アリアナ・グランデと言えば、その力強いボーカルとポップなメロが魅力でしたが、本作は、その力強いボーカルはちょっと抑えめ。UKガラージ的なリズムを取り入れた、クラブ志向のエレクトロサウンドを多く用いて、全体的には「歌」というよりもサウンドを含めて自身を表現した作品になっていました。もちろん、メロウなボーカルやメランコリックなメロディーラインなど、アリアナらしい魅力は健在だったのですが、ミュージシャンとして「歌」だけに頼らないあらたな一歩を模索した感のある作品に。この挑戦が次回作以降、どのようにつながるのか、注目です。

評価:★★★★

Ariana Grande 過去の作品
My Everything
The Best
Sweetener
thank u,next
Positions
eternal sunshine
eternal sunshine deluxe:brighter days ahead

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2026年10月 9日 (金)

前作よりアメリカーナ/フォーク寄りに

Title:Big World
Musician:Hovvdy

アメリカはオースティン出身のシンガーソングライターデゥオによるニューアルバム。セルフタイトルだった前作「Hovvdy」が個人的にはかなり壺にはまり、2024年の年間私的ベストアルバムの2位に並ぶなど、かなりお気に入りの1枚となりました。本作は、それに続く、約2年ぶりのニューアルバムとなります。

さて、そんな彼らのニューアルバムですが一番特徴的だったのは前作に比べてフォークやアメリカーナ寄りの作風にシフトしたという点でしょう。もちろん、前作においてもフォークやアメリカーナな曲も見受けられました。特にメンバーのWill Taylorの書く曲はアメリカーナの色合いが強く、郷愁感を帯びた暖かみのあるメロディーラインが、彼らの魅力のひとつともなっていました。

今回のアルバムに関しても、特にTaylorの書く曲に関しては、アメリカーナ的な色合いを強く感じさせます。まず序盤、2曲目の「Way Down」はまさに、カントリーの色合いの強い作風。おなじく前半に配された「What I Had」も郷愁感を帯びたカントリーな作品になっていますし、終盤の「Give It Away」についても、日本人にとってもどこか懐かしさを感じさせる、カントリー的な要素の強い作品に仕上げています。

一方、今回の本作に関してはCharlie Martinの書く楽曲も、シンプルなアコースティックのアレンジが施されたフォーキーな作風の曲が目立ちます。アルバム冒頭を飾る「Life So Wide」も、アコギで聴かせるフォーキーな作風となっていますし、中盤の「Starry」も、ピアノをバックに哀愁感たっぷりに聴かせるフォーキーな作品に仕上げています。

とはいえ本作でも美メロは健在で、特に前回のアルバムでも書いたように、どこかTeenage Fanclubを彷彿とさせるようなMartinの曲は個人的に、心の琴線に触れてきます。前半の「JJ」は、まさにそんな美しいメロディーラインが耳を惹く作品になっていますし、今回のアルバムでは珍しい、バンドサウンドを入れてきた「Blast」も、メランコリックなメロが耳を惹きます。また、2人の共作である「Try Try Try」も、このアルバムの中では分厚いサウンドが特徴的なロック寄りの作品で、軽快でポップなメロが魅力的でした。

正直言ってしまって、今回のアルバムは前作に比べるとかなり地味な印象は否めません。前作でもインパクトになっていたような電子音はほとんどなく、基本的にシンプルなアコースティックのサウンドがメイン。メロディーラインを含めて、フックが弱くなってしまった感は否めません。ただ、それでも美しいメロディーラインは本作でも健在ですし、聴き進めていく中で、地味だと思っていたメロディーも徐々に魅力的に響いてきます。そういう意味で今回のアルバムも文句なしに傑作と言えるでしょう。今回も、この魅力的なメロディーラインにはまってしまいそうです。

評価:★★★★★

Hovvdy 過去の作品
Hovvdy


ほかに聴いたアルバム

One Assassination Under God – Chapter 2/Marilyn Manson

2024年にリリースされた「One Assassination Under God -Chapter 1」の続編的となるアルバム。ただ、比較的攻撃性の強かった前作と比べると、ミディアムチューンで聴かせるタイプの曲が多く、全体的に抑制的な印象も。基本的にはいままでのマリリン・マンソンの音楽の延長線上といった感じで目新しさもありませんし、攻撃性も低いためインパクト面も弱いのは残念な感じ。悪いアルバムではないのですが、いまひとつ印象に残らない作品でした。

評価:★★★

Marilyn Manson 過去の作品
THE HIGH END OF LOW
Heaven Upside Down
WE ARE CHAOS
One Assassination Under God -Chapter 1

XXXXX/Arca

実験的な作風が特徴的で、Bjorkやマドンナなど数多くのミュージシャンとのコラボでも知られる、ベネズエラ出身のミュージシャンにより約5年ぶりのフルアルバム。インダストリアル的な要素も詰め込んだ、実験的なエレクトロサウンドが大きな特徴となっていますが、前作「KICK」シリーズでは、その中でも比較的「ポップ」さを前面に押し出した作品になっていました。それに対して本作は、グッと実験性を前に出してきた作品に。メタリックなエレクトロサウンドがアバンギャルドに来る広げられる作品。かなり刺激的に感じられる一方で、ただ、とはいってもさすがに最初に聴いたころの作品と比べると、慣れてきたのか、そこまでのアバンギャルドさは感じられる、どこかメランコリックさも感じるエレクトロトラックには、メロディーセンスすら感じさせる部分も。とはいえ、今回も傑作なのは間違いない作品。その音世界に圧巻される作品です。

評価:★★★★★

Arca 過去の作品
Xen
Sheep(Hood By Air FW15)
Mutant
Arca
KiCk
Madre
KICK ⅱ
KicK ⅲ
kick iiii
kiCK iiiii

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2026年10月 5日 (月)

3人の男性との別れと出会い

Title:Lost Weekend
Musician:Phoebe Bridgers

アメリカ・ロサンジェルス出身の女性シンガーソングライターによる、実に約6年ぶりとなるニューアルバム。ただ、彼女自身、boygeniusのメンバーとしても活躍しており、boygeniusとしては2023年にアルバム「the record」をリリース。グラミー賞も獲得するなど、大きな成功をおさめ、活躍を続けています。

さて、そんなソロとしては久々となる新作ですが、個人的に特徴と感じるのが2点あって。まずは全体的にメランコリックな美しいメロが特徴的という点。例えば「Lost Boys」などもメランコリックな美メロが印象に残る作品ですし、カントリー風の「Liberty Tree」もメランコリックなメロが耳を惹きます。もともとメランコリックな美しいメロディーラインが特徴的だった彼女でしたが、今回の作品も、そんな彼女の魅力が存分に発揮されていました。

特にこの6年間、彼女にも様々な出来事がおそいかかったそうで、父親の死や婚約の破断なども楽曲に大きな影響を与えています。特に父親の死に関しては「Never Going Back!」では楽曲の中で父親のボイスメールを用いているなど、その想いを強く感じます。ただ一方、新たな恋人との出会いもあったようで、この3人の男性を軸に作品は展開していっているということ。メランコリックな中でも清涼感もあり、どこか明るさも感じられる点は、やはり新しい恋人の存在が大きいのでしょうか。

もうひとつ大きな特徴である点は、全体的にフォーキーな色合いが強いという点。例えば序盤の「Lost Boys」も、それに続く「Kill Me」「The Governor's Waltz」も、アコギを静かに奏でるフォーキーなサウンドからスタートします。その後も「Haunted」や「Still Standing」など、アコギを用いたフォーキーなサウンドに、メランコリックなメロを美しく聴かせるような曲が目立ちます。

ただ一方おもしろいのは、特に最初はフォーキーなサウンドでスタートしつつも、途中から音数を増やして、徐々に変化していく曲も多く、アルバム全体としては、むしろ前作以上のバラエティーに富んだ内容になっていたという点でした。例えばさきほど紹介した「Kill Me」も後半はバンドサウンドが入ってサイケな雰囲気に曲調が変化していきますし、「Liberty Tree」も前半はカントリー風のサウンドながらも、終盤にはシンセの音色が加わり、幻想的な雰囲気の中、楽曲は幕を下ろします。

そういう意味ではアルバムを象徴するとも言えるのが、アルバムのタイトルチューンでもある「Lost Weekend」。序盤は静かなシンセのサウンドの中、清涼感のある美しいメロディーラインで静かに淡々と歌う彼女の歌声が魅力的な、フォーキーな雰囲気でのスタートとなっています。ただ、終盤は徐々に音数を増やし、ストリングスやエレクトロサウンドでダイナミックかつドリーミーな曲調に展開。壮大なスケールすら感じられる展開となり作品は幕を下ろしています。この曲、歌詞も別れた恋人を思って歌った曲であり、アルバムを象徴しているのと同時に、メランコリックなメロディーやダイナミックな楽曲展開も、このアルバムを象徴するような作品となっていました。

そんな訳で、メランコリックで美しいメロディーラインで、清涼感ある彼女の歌を主軸として置きつつ、フォーキーでありつつもバラエティー富んだ展開が楽しめる傑作アルバム。boygeniusとしての作品を含め、毎回外れのない彼女ですが、今回も申し分ない、年間ベストクラスの傑作です。

評価:★★★★★

Phoebe Bridgers 過去の作品
Punisher


ほかに聴いたアルバム

(The Best Of & The Rest Of) New Order/New Order

1980年代から、途中活動休止期間を挟みつつ活動を続けるロックバンド、New Orderが、1994年にリリースしたベストアルバム「The Best Of New Order」と、リミックス盤「The Rest Of New Order」をまとめ、かつ未発表音源やリミックス曲を追加した4枚組のコンピレーションアルバム。全47曲、実に約5時間にわたる、かなりボリューミーな作品ながらも、ニューウェーブ的な楽曲からその後のエレクトロ、ハウス、ディスコなど様々な音楽性を取り込んでいくNew Orderの歩みがわかるアルバムで、ある意味、New Orderというバンドを網羅的に捉えた作品といっていいかもしれません。さすがにかなりボリューミーなだけに、これがはじめてのNew Orderという方には手を出しずらいかもしれませんが、基本的にポップなメロを聴かせてくれるバンドなので、5時間もあっという間かと。New Orderがどんなバンドなのか、よく理解できるアルバムでした。

評価:★★★★★

New Order 過去の作品
Music Complete

Vol.Ⅱ/Angine de Poitrine

カナダ・ケベック州出身の2人組バンド。本人たちは匿名性を保っており、巨大な鼻のついた紙製マスクと水玉模様の衣装という奇抜なスタイルで演奏しています。また、楽曲自体もかなり奇抜で、変拍子のリズムや、マイクロトーナリティ(微分音)と呼ばれる、12音階の間にあるような音を使った、かなりアバンギャルドな作風が特徴的。一方で、ファンキーでリズミカルなビートは、ストレートに身体を揺らされる魅力がありますし、この外見からわかるようなコミカルさもポピュラリティーに手を貸している感じ。基本的に楽曲に流れるメロはポップであるため、比較的聴きやすさも感じられます。アバンギャルドさとポップスさを両立させようとした結果、若干、どちらも中途半端的に終わってしまっている感も否めませんが、非常に個性的で、これからの活躍も楽しみになるグループです。

評価:★★★★★

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2026年10月 4日 (日)

ポップス職人の軌跡を追ったコンピ

Title:あの音にこの職人②:キャロル・ケイ編 60'sポップスを支えたセッションの女王

今回紹介するアルバムは、オールディーズ・レコードからリリースされたコンピレーションアルバム。ロサンゼルスのスタジオミュージシャンとして活躍し、ビーチボーイズやフィル・スペクターの周辺のシンガー、さらにはレイ・チャールズからフランク・シナトラまで様々なミュージシャンたちのレコーディングに参加した、表題通り、まさに「60年代ポップスを支えたセッションの女王」、ベーシストのキャロル・ケイの参加曲を集めたコンピレーションアルバムとなっています。

オールディーズ・レコードは、老舗のインディーズレコードショップ芽瑠璃堂の創業者、長野和夫がスタートさせたインディー・レーベル「クリンク・レコード」が流通・販売を手掛けるレーベルで、タイトル通り、1950年代から70年代の洋楽の名盤やレア音源の復刻を手掛けるレーベル。以前から、このようなコンピ盤を多くリリースしてきているようですが、「CD+BOOK」形式となっており、コンピレーションアルバムに、内容を説明する書籍がセットになった企画盤となっています。

まず正直言ってしまって、「BOOK」の方に関しては期待していたほどではありませんでした。確かに、キャロル・ケイがどのようなミュージシャンなのか、という紹介や、収録曲各曲の説明が載っており、それなりに読ませる内容になっています。ただ、冊子としてはかなり薄っぺらく、また、対象とするリスナーが老眼の人たちばかりのためか(苦笑)、文字の大きさはかなり大きく、記載量は少な目。正直、文字を小さくすれば、普通のCDのライナーツノートレベルの内容となっており、これを「BOOK」として売り出すのはかなり無理があるような・・・。

ただ、コンピレーションアルバムの方はかなり充実の内容。The Beach Boysの「Sloop John B」やThe Supremesの「Love Is Here and Now You're Gone」(邦題「恋ははかなく」)、ロネッツ、レイチャールズ、アイク&ティナ・ターナ、モンキーズなど60年代を彩る大物がズラリ。特に大物ミュージシャンたちの曲は、この手のコンピ盤になかなか収録されなかったりするので、そんなメジャーどころまでしっかりと抑えている内容には驚かされます(ちゃんと許可は取っている・・・・・・・んだよね???)。

さて、そんな彼女の奏でるベースは、今回のコンピレーションに収録されている曲でもしっかりと目立って聴こえます。まず特徴として感じられるのは、一度聴いて彼女のベースだ、とわかるような、リズムの取り方などに変な癖はありません。ある意味、淡々と、曲に沿ったベースラインを演奏していく、そんなスタイルでしょうか。おそらく、ベーシストとして、その演奏に変な癖がなく、様々なミュージシャンのスタイルに合わせられるからこそ、多くのミュージシャンたちにセッションミュージシャンとして重宝されたのでしょう。

一方、それとは逆に、彼女のベースの音は、楽曲の中でクリアに聴こえてきます。通常、ベースの音は楽曲の中で必ずしも目立つ訳ではありません。もちろん、ベースが前面に押し出されている曲もありますが、よくよく聴かないとベースの音がわかりにくいという曲も少なくありません。そんな中で彼女のベースは、曲の中ではっきりと聴こえてくるような、しっかりとした輪郭を持ったベースの音を聴かせてくれています。だからこそ、曲によってはベースのリズムが楽曲の推進力になったりもしています。また、そういうベースだからこそ、多くのミュージシャンたちに求められたのでしょう。

最近は、サブスクの普及で過去の曲も容易に聴けるようになったため、このようなコンピが少なくなってきているように感じます。ただ、楽曲の説明もついた、こういうアルバムとしてのテーマを持ったコンピをもっと聴きたいところ。なにより本作、税抜1,000円という安さも魅力的。今後も同じような企画のコンピ盤がリリースされるようなので、また是非とも聴いてみたいです。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

The Real Me/Future

トラップの第一人者でもあるアメリカのラッパー、Futureによる約4年ぶりの新作。HIP HOPもトラップも、一時期に比べると落ち着いた感はあるのですが、本作は見事ビルボードチャートで1位を獲得し、なんだかんだいってもまだまだ強い人気を感じさせる結果となりました。さて、そんな本作の大きな特徴は、客演ゼロですべてFuture1人のみで作りあげた作品ということ。「The Real Me」というアルバムタイトル通り、「本当の自分」を見せようとするアルバムとなっています。ただ、結果としては新しいアルバムというよりは、いままでのFutureらしさの集大成的なアルバムといった感じに。正直、目新しさは感じませんでしたし、無難にまとまっているという印象も。こういう作品も、次の一歩のために必要な1枚・・・だったということでしょうか。

評価:★★★★

Future 過去の作品
WE DON'T TRUST YOU(Future&Metro Boomin)
WE STILL DON'T TRUST YOU(Future&Metro Boomin)

Vanishing Point(Extended Edition)/Primal Scream

イギリスのロックバンド、Primal Screamが1997年にリリースした彼ら5枚目のアルバム。本作と次回作「XTRMNTR」、次々回作「Evil Heat」は、ロンドンに制作した自前のスタジオ「The Bunker」で制作され、革新的なスタイルが高い評価を受けたため、今回、この3作が「The Bunker Trilogy」としてリマスターされ再発。その第1弾アルバムとなります。

4枚目「Give Out But Don't Give Up」はブルースやロック寄りにシフトした作品だったのですが、正直、評価は芳しくなく、本作は名盤の誉れ高い3枚目「Screamadelica」の作風に戻しつつ、エレクトロサウンドの要素を取り入れた、次作「XTRMNTR」との橋渡し的ともなっている作品。「Screamadelica」で聴かせてくれたグルーヴ感と、「XTRMNTR」の高揚感を兼ね備えたような作品。その結果、ちょっと中途半端な部分もあり、「Screamadelica」「XTRMNTR」ほどの傑作とまでは言っていませんが、これはこれで、ある種、過渡期の作品として聴きごたえのある傑作に仕上がっています。

今回はB面曲やレア音源を加えたバージョンとなるのですが・・・ただ、当初配信リリースされた「Extended Edition」の一部の曲は配信中止となり、現在、配信されているバージョンはちょっと異なった内容になっています。なぜだ?配信スタートさせたはいいけど、権利の関係で問題になって差し替えたのか?今ひとつ、ここらへんのはっきりした情報がなく不明なのですが、ここらへん、勝手に曲を入れ替えられて、配信停止になってしまうあたりがストリーミングの大きな問題点。せめて、アナウンスが欲しいのですが・・・。

評価:★★★★★

primal scream 過去の作品
Beautiful Future
Screamadelica 20th Anniversary Edition
More Light
Chaosmosis
Give Out But Don't Give Up:The Original Memphis Recordings
MAXIMUM ROCK ‘N’ ROLL: THE SINGLES
Demodelica
Live at Levitation
Come Ahead
Come Ahead: The Remixes Vol 1 (Vocals)
Come Ahead:The Remixes Vol.2(Dubs)

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2026年9月19日 (土)

新たな一歩を模索中

Title:Reality Awaits
Musician:The Strokes

今年のサマソニに来日して、そのパフォーマンスも大きな話題となったThe Strokes。ただ、この来日に関して、先日放送されたNHKの番組がちょっと話題となりました。円安を特集した番組だったのですが、その中でミュージシャンの来日公演の来日費用について話題となり、The Strokesを呼ぶために2億円以上というCreative Manの清水氏のインタビューが大きな話題となりました。

正直、The Strokesといえばガレージロックリバイバルの中で出てきたバンドなだけに、どちらかというとライブセットについてもシンプルという印象。また、サマソニで取るを取れるバンド・・・とはいえ、正直なところ「超大物」といったイメージはありません。そんなミュージシャンでありながら、2億円以上・・・。どちらかというと問題となるのは円安の影響なのですが、その多額な金額に衝撃が走り、大きな話題となりました。

そんなThe Strokesの約6年ぶりとなるニューアルバム。今回の作品も比較的メロディアスに仕上がっているという印象を受けます。若干不穏な感じの幕開けとなる「Psycho Shit」からはじまるのですが、中盤の「Falling out of Love」はハイトーンボーカルも入った哀愁感漂うメロディーが印象的。さらに、「Going to Babble On」では、浮遊感あるリズミカルでポップなメロが印象的。「Going Shopping」も、彼らとしてはかなりポップな作品となっており、メロディアスな曲調が印象に残ります。

一方、今回の作品で大きな特徴としてあげられるのがAuto-Tuneを使用したボーカル処理を施されている作品が目立つという点。「Lonely in the Future」など、ボーカル処理が行われおり、4つ打ち的なビートとあわせて、スペーシーな感覚を覚える作風となっています。生々しさを感じるデビュー直後の作品から、徐々に最近の作品ではエレクトロサウンドを取り入れていますが、今回の作品に関しても、より楽曲の幅を広げてきている、とも言えるでしょう。

また、変化という意味では、今回のアルバムでは「老い」や「孤独」をテーマとした作風が目立つこと。例えば「Going Shopping」などでは歌詞で明確に「But I'm an old man now」と歌詞で述べており、老いた自分と、その中での孤独をテーマとしています。デビュー当初のロックンロールリバイバルの頃から知っている身としては、ちょっとビックリするのですが、彼らも既にデビュー25年目のベテラン。ボーカルのジュリアン・カサブランカスももう48歳ということで、月日の経過の早さに驚かされます。

「Dine N'Dash」のように、ヘヴィーなギターサウンドを前に押し出して、比較的初期の彼ららしさを彷彿としたナンバーもあったりして、ギターロックバンドとしてのThe Strokesも維持しつつ、新たな方向性も模索している彼らの姿が感じられます。メロディーもポップで耳なじみやすく、ほどよくギターサウンドも入っており、魅力的にも感じられる一方、メランコリックなメロディーラインやサウンドは若干地味な印象も否めず、新しいサウンドもボーカル処理程度で中途半端な印象もあります。ギターロックのアルバムとしてはよく出来ていると感じる一方、The Strokesの今後を考えると、ちょっと物足りなさも。ただ、個人的にはここ数作の中で一番気に入った作品にはなっていましたが。

評価:★★★★

THE STROKES 過去の作品
ANGELS
The New Abnormal


ほかに聴いたアルバム

MY SKYSCRAPER/Nirosta Steel

My-skyscraper_nirosta-steel

ニューヨークのアンダーグラウンドシーンで長らく活動を続けてきたニロスタ・スティールことスティヴン・ホールのアルバム。彼がいままで40年間で作成してきた楽曲を再構成したコンピレーション的なアルバム。アンダーグラウンドシーンで活躍してきたミュージシャンのため、一般的な知名度は高くなく、「知る人ぞ知る」的なミュージシャンだったとか。今回のアルバムで一気に注目を集めています。ジャズやエレクトロ、フォーク、ハウス、ロック、R&Bなど、実に様々なジャンルの作品が並んでおり、彼の多才ぶりを感じさせる一方、アルバムとしてはちょっと一貫性はない感じも。若干、マニアックさを感じるコンピ盤となっています。

評価:★★★★

Cupid&Psyche85(Deluxe Edition Remastered)/Scritti Politti

イングランド出身のロックユニットにより1985年にリリースされた「名盤」の名高い1枚のリマスター盤。オリジナルのリマスター音源に加えて、長尺ミックスによる別バージョン4曲やリミックス音源2曲が追加されています。オリジナルの方は、ポストロック的な作風にソウルやファンクなどの要素を加えた独自の音楽性がユニーク。打ち込みメインのサウンドは80年代っぽさを感じるものの、今聴いても独特のリズム感は非常に魅力的です。追加音源についてはコアなファン向けといった感じですが、「名盤」として知られる傑作アルバムなだけに、これを機に、こちらのバージョンでチェックしておいて損のない作品です。

評価:★★★★★

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2026年9月12日 (土)

今の時代ともリンクさせた現役感あふれる新作

Title:Foreign Tongues
Musician:The Rolling Stones

オリジナルアルバムとしては実に約18年ぶりの新譜となり大いに話題となった前作「Hackney Diamonds」からわずか3年。早くもローリング・ストーンズの新譜がリリースとなりました。もうミックもキースも80歳を越えた「おじいちゃん」。その年齢を感じさせない精力的な活動ぶりには驚かされます。ポール・マッカートニーもいまだに精力的に活動を続けているし、その子供くらいの世代の私たちにとっても、このおじいちゃんたちの頑張りぶりは見習いたいものです。

ただし、基本的に前作制作時に多くの楽曲を録音しており、今回のアルバムにもその時に楽曲が収録されている模様。そのため、実質的に「Hackney Diamonds」との姉妹盤とも言える作品となっています。また、基本的には前作と同様、いつものローリング・ストーンズといった感じのスタイル。新たな挑戦というよりは、ファンが求める彼ららしさを忠実に再現した、実にローリング・ストーンズらしい作品となっています。

まずアルバムの冒頭を飾るのが「Rough And Twisted」。タイトルからしてもそのままですが、ローリング・ストーンズの王道を行くようなブルースロックのナンバー。ただ、ゴリゴリにヘヴィーなギターサウンドを含め、かなりヘヴィーなサウンドをダイナミックに聴かせてくれる楽曲になっており、若々しい現役感あふれる作品にアルバムへの期待も高まります。一方、続く「In The Stars」は爽やかでメロディアスなロックチューン。ブルージーなギターに彼ららしさを感じさせますが、どこかオルタナ以降のギターロックの路線も感じさせ、こちらも若々しさを感じさせるナンバーになっています。

さらに「Jealous Lover」ではミックがファルセットボーカルに挑戦。メロウでファンキーなミディアムソウルの楽曲なのですが、まだまだボーカリストとしてのミックの若さを感じさせる楽曲に。「Rigining Hollow」のような、いなたいカントリー色の曲があったかと思えば、「Never Wanna Lose You」のような、80年代の彼らを彷彿とさせるような、ディスコテイストのダンサナブルなビートを聴かせる曲もあったりします。

そして「Some Of Us」はキースボーカル曲。かなりの渋さを感じさせるバラードナンバーを聴かせてくれます。終盤の「Back In Your Life」は本作最長の6分強のナンバーになっており、力強いブルージーなギターにスケール感を覚える楽曲。さらにラストを締めくくる「Beautiful Deliah」はチャック・ベリーのカバー。シンプルな演奏の軽快なロックンロールナンバー。彼らのルーツをあらためて振り替える作品で締めくくられています。

勢いのあるロックチューンからスタートし、途中、バラードナンバーやダンスナンバーを入れ、ラストはカバーで締めくくりというスタイルは前作と共通しており、途中、キースボーカルの曲を加えているところも含めて、ローリング・ストーンズの王道のような構成の作品になっています。そういう意味で目新しさはない一方、ファンとしては安心して聴ける作品にもなっていました。また、目新しさはないものの、ゴリゴリに聴かせてくれる勢いのあるバンドサウンドは現役感にあふれており、決して「懐メロ」的になっていない点は大きな魅力と言えるでしょう。

また、今回のアルバムの中で注目のナンバーのひとつと言えるのが「You Know I'm No Good」で、こちらなんとかのAmy Winehouseのカバー。ムード感たっぷりにカバーしているのですが、ストーンズと比べてグッと下の世代となる彼女の曲を取り上げるあたり、しっかりと今の世代とリンクさせています。今の世代と言えば、今回のアルバムではかのブルーノ・マーズがゲストに参加。「Never Wanna Lose You」のカウベルで参加しているようですが、こういう今の世代にしっかりとリンクしている点も、アルバムの現役感につながっているのでしょう。

ちなみに本作でも豪華ゲストが参加しており、「Covered in You」でポール・マッカートニーがベースに参加しているほか、The Cureのロバートスミスもギターやバックボーカルで参加しています。さらにファンにとってうれしいのは、(これは「ゲスト」ではありませんが)チャーリー・ワッツのドラムが「Hit Me in the Head」で使われている点。やはりストーンズのドラムはチャーリー・ワッツじゃなくては・・・と思っているだけに、彼のドラムがまだ新曲として聴けたのは非常にうれしかったです。

まだまだ現役感あふれるストーンズの新作・・・どころか、前作からわずか3年というインターバルでバンドとしての勢いが増しているのではないかとも思えるような作品に仕上がっていました。彼らの王道を行くスタイルを貫いている一方、ちゃんと今の世代ともリンクさせている作品になっており、彼らの活動がまだまだ続いていくということを強く感じさせます。ラストでカバーしたチャック・ベリーは90歳になってからも新作をリリースしていましたので、まだまだストーンズの次の作品にも期待できそうです。

評価:★★★★★

The Rolling Stones 過去の作品
Shine a Light: Original Soundtrack
Some Girls LIVE IN TEXAS '78
CHECKERBOAD LOUNGE LIVE CHICAGO 1981(邦題 ライヴ・アット・ザ・チェッカーボード・ラウンジ・シカゴ1981)
(MUDDY WATERS&THE ROLLING STONES)
GRRR!
HYDE PARK LIVE
Sweet Summer Sun-Hyde Park Live
Sticky Fingers Live
Blue&Lonesome
Ladies & Gentlemen
ON AIR
Voodoo Lounge Uncut
Honk
The Rolling Stones Rock and Roll Circus
A Little Bang (Bigger Bang Tour EP)
GRRR Live!
Licked Live In NYC
Hackney Diamonds
Hackney Diamonds(Live Edition)
Live At The Wiltern
Welcome To Shepherds Bush
Black And Blue Super Deluxe Edition


ほかに聴いたアルバム

CONFESSIONSⅡ/MADONNA

MADONNAの最新作は、2005年のアルバム「Confessions on a Dance Floor」で組んだスチュアート・プライスと再度タッグを組んだアルバムで、タイトル通り、同作の続編的なアルバム。全面的にエレクトロサウンドを導入したダンスチューンとなっており、特に曲と曲がシームレスにつなががれたDJミックス的な作品となっており、クラブミュージックをかなり意識したアルバムになっています。全編、ダンサナブルな作風は聴いていて難しいこと抜きに楽しめる作品。また、今時のサウンドというよりは、90年代や2000年代あたりのサウンドを今風にアップデートした感じの曲となっており、そういう意味でも聴きやすい作品に。また、90年代的といっても決して懐古趣味といった印象は受けず、ちゃんと「今の音」として鳴り響いているあたり、バリバリの現役感を覚える作品になっています。80年代のスターたちは、既にマイケルジャクソンもプリンスも鬼籍に入り、シンディーローパーも事実上の引退状態の中、マドンナだけはバリバリの現役として、「懐かしのミュージシャン」枠に入るどころか、最先端で活動を続けることに驚いてしまいます。彼女、もう68歳だよ・・・。

評価:★★★★★

MADONNA 過去の作品
Hard Candy
Celebration
MDNA
Rebel Heart
Madame X
Veronica Electronica

Florida Water Blues/Twisted Teens

Floridawaterblues

2月にアルバム「Blame The Clown」をリリースした、ニューオリンズのパンクロックデゥオが、わずか5ヶ月のインターバルではやくも新譜をリリース。ガレージパンクにパンクロックを融合した独特な音楽性が特徴的。基本的には短いスパンでのリリースということもあって、前作の延長線上の作品となっており、スタイル的にはほとんど変化はありません。前作が気に入った方なら間違いなく気に入る作品。とはいえ、目新しいスタイルに新鮮味があった前作と比べると、そういった点での驚きには欠けるのですが・・・ただ、今回もカントリーの色合いが強い独特なパンクが楽しい、そんな作品でした。

評価:★★★★★

Twisted Teens 過去の作品
Blame The Crown

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2026年9月 5日 (土)

バンドサウンドを加えて深化

Title:Frozen Charlotte
Musician:Jack White

約2年ぶりとなるJack Whiteのニューアルバム。前作「No Name」ではレコードショップの紙袋の中に、こっそり新作のLPを挿入するという、ユニークかつ奇抜な方法でのリリースが話題となりましたが、今回はそんなギミックはなし。ただし、今回のアルバムは、前作と同じく、ベースにドミニク・デイヴィス、ドラマーにパトリック・キーラーというメンバーでの構成となっており、そういう意味で前作「No Name」からつながる形での新作と言えるかもしれません。

そのため、アルバム全体としては基本的に前作「No Name」からの延長線上にあるようなスタイル。まずアルバムの1曲目を飾る「G.O.D.And The Broken Ribs」がカッコいい!!ヘヴィーなギターリフからスタートする、これぞハードロックなナンバーといった作品で、ヘヴィーなバンドサウンドはレッドツェッペリンあたりを彷彿とさせてくれそう。続く「Derecho Demonico」も同じく、ヘヴィーなギターリフで聴かせるハードロックなナンバーとなっており、ガツンとくるサウンドに、ロック好きならば心踊らされるのは間違いありません。

その後も、先行シングルとなった「Dollar Bill」のようにギターリフを主導に、シャウト気味なボーカルで盛り上がりそうなナンバーや、荒々しいバンドサウンドでどこか不穏な雰囲気も漂う「I Can't Believe What I'm Hearing」、同じくギターリフを軸にしつつ、疾走感のあるハードロックナンバーとなっている「She's In A Frenzy」など、ヘヴィーなギターリフとバンドサウンド主体に、これぞハードロックといった感じの楽曲が並びます。

基本的にはシンプルな構成で、バリエーションという面では若干乏しい感もあるのですが、最後を締めくくるアルバムで最長の5分の楽曲となっている「Neighbors Blues」ではハードロック的なギターリフを主導としつつ、ボーカルパートに強いリバーブをかけて、ちょっとサイケな雰囲気も醸し出しているブルースロックのナンバーに。最後の最後でじっくりと聴かせる作品で締めくくっています。

前作「No Name」の延長線上となる本作ですが、ただ前作と変わった点がひとつあり、それがバンドサウンドを前面に押し出しているという点。ギターサウンドを前面に押し出して、バンドサウンドとしては比較的シンプルだった前作と比べると、本作ではサウンドの厚みが格段に増して、ロックバンドとしての一体感を覚えるサウンド構成になっていました。前作と変わらないバンドメンバーを擁している点、メンバーとの相性もよかったのでしょうし、それゆえにJack Whiteのソロ以上に「バンド」としての要素を押し出した作品となったのでしょう。

今回のアルバムも文句なしの傑作アルバム。前作「No Name」で示したスタイルを、バンド寄りに深化させた作品といった感じでしょうか。前作同様、かなりルーツ志向なロックなのですが、音の分厚さやどこか感じるオルタナ的な要素の影響か、古臭さを感じさせないのも大きなポイント。前作同様、ロックの魅力をこれでもかというほど感じられる作品でした。

評価:★★★★★

Jack White 過去の作品
BLUNDERBUSS
Lazaretto
Boarding House Reach
Fear of the Dawn
Entering Heaven Alive
No Name


ほかに聴いたアルバム

Spontaneous Music Live/SML

ロサンゼルスを拠点とする5人組インプロヴィゼーション・バンドの作品。本作は、長尺のライブ演奏をそのまま収録した内容になっており、即興演奏がそのまま収録。全50分弱のアルバムですが、20分以上の長尺曲が2曲のみ収録されているアルバムとなっています。広くジャンルとしては「ジャズ」ということになるのでしょうが、ファンク、アフロビート、ロック、サイケ、ノイズなど自由な演奏がダイナミックに続いていくスタイルで、スリリングな演奏が最後まで釘付けとなる作品となっています。ライブも体験したくなる、そんな臨場感あふれる作品でした。

評価:★★★★★

The Wow!Signal/MUSE

イギリスのロックバンドMUSEの約4年ぶりとなるニューアルバム。The Wow!Signalとは、1977年に地球外生命体探査プロジェクトの観測を行っていた中、ビックイヤー電波望遠鏡が受診した電波信号で、強度の強い信号が観測され、そのため、観察者がそのシグナルを赤ペンで囲って「Wow!」と記載したことに由来します。現時点においても、その信号が受信された理由は不明で、天文学における未解決案件の一つとされています。

そんな天文学的事項をタイトルとした本作は「宇宙」をテーマとした作品。いままで、ハードロックやエレクトロなどの要素を取り入れつつ、全体的にダイナミックな作風を体現化してきたMUSEですが、まさに「宇宙」というイメージにもピッタリ。今回はハードなバンドサウンドとエレクトロを融合させた、これでもかというほどスケール感のある、悪く言えば仰々しいサウンドを繰り広げられます。ある意味、非常にMUSEらしいといえる作品で、良くも悪くも圧巻といった感じ。仰々しさは感じられ、サウンド的にちょっとのべっとした印象を受ける反面、これでもかというほどのスケール感は素直に気持ちよさを感じる部分も。

評価:★★★★

MUSE 過去の作品
The Resistance
The 2nd Law(邦題 ザ・セカンド・ロウ~熱力学第二法則)
Live at the Rome Olympic Stadium
Drones
SIMULATION THEORY
Will Of The People

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2026年9月 1日 (火)

「多様性」を感じるコンピレーション

Title:Official FIFA World Cup 2026™ Album

Fifa_album

今年最大級のスポーツイベントとして、大きな話題となったサッカーワールドカップ。日本も3大会連続決勝リーグ進出を決め、残念ながら決勝リーグでは1回戦敗退だったものの、大いに盛り上がった大会となりました。今回紹介するのは、そんな2026年FIFAワールドカップの公式アルバム。ワールドカップ同様、世界の様々な地域やジャンルのミュージシャンたちを集めた作品となっています

内容的にかなり豪華なメンバーが集まったアルバムとなっており、アメリカ出身のutureや南アフリカ出身のTyla、プエルトリコ出身のDaddy Yankee、ナイジェリア出身のBurna Boy、コロンビア出身のShakiraなど豪華なミュージシャンたちが参加。さらには韓国の女性アイドルグループBlack PinkのLisaも参加し、K-POP勢からの参加となっています。まさに全世界からあつまるサッカーワールドカップの公式アルバムらしいラインナップとなっています。

その中でも特に注目なのはThe Rolling Stonesが「In The Star」で参加している点。原曲をベースにリミックスされた作品となっており、打ち込みベースのスペーシーなアレンジで今風な雰囲気の曲となっており、ストーンズよりずっと下の世代の他のミュージシャンたちの曲ともマッチ。もちろん、ミックジャガーのボーカルやキースのギターもそんなアレンジに負けておらず、年齢を感じさせない勢いを感じる作品になっています。

またユニークなのはBlack PinkのLISAが参加した「Goals」。この曲は、ブラジリアンポップのミュージシャン、Anitta、ナイジェリア出身のミュージシャンRemaとのコラボとなっており、K-POPとブラジリアンポップ、アフロビートが融合した独特の楽曲となっており、冒頭に配置されているように、世界各国のミュージシャンが集合したこのアルバムを象徴するような作品となっています。

さらに興味深いのは「Champions」を歌っているIShowSpeedというミュージシャン。日本ではほとんど知名度がありませんが、こちらアメリカでは著名なYouTuberらしく、こういう「ミュージシャン」が参加している点、現代的に感じますし、そんなYouTuberとストーンズが並んで曲を提供している点にもユニークさを感じます。

そんな世界各国の音楽を取り入れたアルバムではあるものの、全体的にはメキシコも開催国のひとつであり、またアメリカでもヒスパニックの比率が高いため、ラテン系の曲が目立ちます。「Mi Mexico Lindo」ではメキシコを代表するシンガーのAlejandro Fernándezが参加。郷愁感たっぷりの歌声を聴かせてくれますし、「Partidazo」でもベネズエラ出身のDanny Oceanがリズミカルなラテンポップを聴かせてくれます。最後を締めくくる「Dai Dai」では、ラテンを代表する歌姫ShakiraがナイジェリアのBurna Boyとタッグを組み、ラテンとアフロポップを融合させたリズミカルなポップを聴かせてくれています。

このような世界各国のミュージシャンたちが参加し、様々なジャンルの音楽を詰め込んだ、まさに「多様性」を感じさせるコンピレーション。ただ、今、この「多様性」というキーワードに逆風が吹いています。特に今回のワールドカップの開催国、アメリカにおいては、トランプ大統領がこの「多様性」を否定するような方針を次々と打ち出しています。さらに、このトランプとFIFAの癒着が問題となっており、今回の大会ではアメリカ代表選手の処分にトランプが介入し、FIFAがそれに応じるという事態が生じ、猛反発や批判の声があがりました。それだけに、このような多様性の魅力を感じさせるコンピレーションをFIFAが、アメリカが開催国が加わっている大会においてリリースすることに、非常に皮肉を感じました。

もうひとつ今回のコンピレーションで気になったこととして、日本のミュージシャンが参加していないがあげられます。今回、日本はワールドカップに出場しており、一方でK-POPのミュージシャンも参加しているにも関わらず、残念ながら日本のミュージシャンは一切、参加していません。

ここ最近、特に日本のメディアにおいて「J-POPが海外でうけている」という話題をよく取り上げたりします。ただ、実際、アメリカのチャートでもイギリスのチャートでもBABYMETALをのぞいて、J-POPがチャートにあがってくることはほとんどなく、このニュースには以前から眉唾的な疑問を感じていました。そんな中、このコンピレーションで、これだけ世界のミュージシャンが参加していながら日本のミュージシャンが選ばれていない、という事実こそが、今のJ-POPの立ち位置なんだろうな、という現実を実感させられます。このコンピ盤ではそんなJ-POPがどうみられているのか、という事実を強く感じました。

そんな気になる点はあるとはいえ、豪華なミュージシャンが参加し、様々な音楽性を取り込んだ本作は、前述の通り、まさに人間が多様であり、その多様性が音楽に対して、いかにプラスの要素を与えるのか、ということを実感できるコンピレーションアルバム。ロック、HIP HOP、EDM、ラテン、アフロビートなどなどの要素をごった煮にしたような作風がとても楽しく、ワールドカップやサッカーに興味がなくても是非とも聴いてほしいアルバムです。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

Magazine/YHWH Nailgun

実験的な音楽性で注目を集めるニューヨークの4人組ロックバンドによる新作。前作「45 Pounds」は非常に挑戦的かつ実験的な作風が大きな魅力となっていましたが、今回もその路線を引き継ぎ、アイディア豊富、パンクやファンク、ノイズ、エレクトロなどを融合させたアグレッシブな作品が並びます。ただ、前作も10曲21分という短い作品でしたが、10曲入りわずか11分という短さ。どんどんと新しい曲が展開していくような内容ですが、さすがにここまで行くと短すぎるという感触は否めず、ただ、アイディアを並べているだけ、という感じになっていました。さすがに、もうちょっと曲としての体裁を保ってほしい感じも。惜しい感じもする新作でした。

評価:★★★★

YHWH Nailgun 過去の作品
45 Pounds

EXIT 2B/BOYG1RL&NOVAGANG

Exit2b

マイアミ出身のデゥオ、BOYG1RLと、アメリカのHIP HOPグループNOVAGANGによるコラボアルバム。強いビートのハイパーポップを軸に、ハイチのダンスミュージックやブラジリアンファンクなどワールドワイドな要素を入れた楽曲。ただ、基本的には攻撃的なビートのリズミカルなポップが終始流れるアルバム。若干、勢い重視な感もあるのですが、全11曲入りながらも24分という短い時間もあり、最後まで一気に楽しめるアルバムに仕上がっていました。

評価:★★★★★

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2026年8月22日 (土)

独特なビート感が耳を惹く

Title:The Classic Guinean Guitar Group(邦題:ギニアのギターグループ)
Musician:Arfican Virtuoses

今回紹介するのは、タイトル通り、西アフリカはギニアの音楽。もともと1960年代から70年代にかけての音源を収録した作品。その当時、独立直後のギニアでは、時のセク・トゥーレ政権による文化推進制作により多くのオーケストラやバンドが結成されたそうです。本作で紹介するAfrican Virtuosesもそんなバンドのひとつだそうで、ギニアのジャバテ兄弟を中心としたギターアンサンブルだそうです。オリジナル音源は2007年にリリースされたようですが、今年に入り、国内盤がリリースとなったため、今回、はじめてチェックしてみました。

さて、この音楽の特徴としてあげられるのは、全体的に非常にモダンで、かつ爽やかなギターの音色を聴かせてくれる点。正直、匿名でアルバムを聴くと、本作がアフリカはギニアの音楽である、ということに気が付く人は少ないように思います。アルバム冒頭を飾る「Nanibali」も爽やかでメロディアスなアコースティックギターのフレーズが前面に押し出されるインストナンバーですし、続く「Kankan diarabi」も哀愁たっぷりのメロディーラインは、アフリカというよりも、むしろ南米ラテン地方の音楽を彷彿とさせるような内容となっています。

もともと作品としては、ギニアの伝統的な楽器、コラやバラフォンのフレーズをそのままギターに置き換えたスタイルを取っているそうで、アフリカ的な音楽の音色を、そのままモダンなギターサウンドに置き換えたスタイルなのでしょう。これはあくまで勝手な憶測ですが、ギニアが植民地から独立国家として生まれ変わる中、独自の文化を守ろうとする一方で、西洋の先進国を模倣して発展しよう、という中で、このような伝統音楽を西洋の楽器に置き換えた、というスタイルが生み出されたのでしょうか。

ただ、この無国籍な感じが非常に楽しく、例えば「Madame nana」などはサーフミュージックのイメージを感じさせ、真夏のリゾート地の海辺が非常に似合いそうなイメージがありますし、「Toubaka」では、ギターサウンドにどこかブラジル音楽的な部分を彷彿とさせます。意識したのかどうかは不明なのですが、前述の通り、ラテン音楽を彷彿とさせる曲もあり、ギニアから様々な音楽的要素が各地に伝播した影響も感じさせます。

一方ではある意味、「アフリカらしい」とも言えるトライバルな要素も随所に感じられ、前述の「Nanibali」でも爽やかなギターフレーズが鳴り響くバックには、トライバルなパーカッションの音が響いていますし、終盤の「Ballade sur la lagune」でも、爽やかなギターの音色が前面に鳴り響いているものの、背後ではしっかりとトライバルなリズムがインパクトあるビートを作り上げています。

このあたりの独特なビート感はアルバム全体に感じることが出来、前述の無国籍的な音楽性に合わせて、本作を単なる爽やかなBGMから一線を画させている大きな要素になっているように感じます。そのため、最初はある種、BGM的なイージーリスニングのイメージで聴き始めても、徐々にその音楽性にはまっていく大きな要因となっているように感じました。爽やかなギターの音色にアフリカ音楽の広がりと奥の深さも感じさせる1枚。ワールドミュージックに興味がある方ならば、要チェックの傑作です。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

Peaches!/The Black Keys

The Black Keysとしては2021年の「Delta Kream」に続くカバーアルバム。Dr.FeelgoodやR.L.バーンサイドの曲などもカバーしていますが、全体的には知る人ぞ知る的なブルース系の作品がメインで、このマニアックな方向性に彼ららしさを感じます。ゴツゴツとしたノイジーなギターサウンドを前面に押し出した作風が特徴的で、ある意味、バンドとしての「初期衝動」をあえて押し出したような、原点回帰的な作品となっています。かなり粗削りな作品でしたが、それだけにThe Black Keysらしさを全面的に感じられる作品でした。

評価:★★★★★

The Black Keys 過去の作品
EL CAMINO
"Let's Rock"
Delta Kream
Dropout Boogie
Ohio Players
No Rain,No Flowers

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