多幸感あふれるポップス
Title:Hazel Eyes
Musician:Sam Smith
イギリスを代表するシンガーソングライターSam Smithの約3年ぶりとなるニューアルバム。2019年にノンバイナリーであることを公言した彼。前作「Gloria」は全米ビルボードチャートで1位を獲得したのですが、ノンバイナリーとトランスジェンダーを公言したミュージシャンが同チャートで1位を獲得するのは初となる快挙だったそうです。
さて、そんなSam Smith、性的マイノリティーだった影響でしょうか、いままでの楽曲の特徴として失恋や孤独をテーマとした曲が目立っていました。しかしそんな彼ですが、前述の通り、ノンバイナリーであることを公言。さらに今年、恋人でありファッションデザイナーであるクリスチャン・コーワンとの婚約を発表。まさに幸せの絶頂にいる彼ですが、今回のアルバムもそんな彼の心境を反映したような、全体的にいままでの彼の作品に比べて明るい雰囲気の作品となっています。
まず序盤のタイトルチューンの「Hazel Eyes」。ゴスペル風の分厚いコーラスも入ってゆっくり歌い上げるナンバーですが、分厚いサウンドやコーラスの影響で、全体的に多幸感あふれる作品になっています。ちなみにこの「Hazel Eyes=緑褐色の瞳」とは恋人のクリスチャン・コーワンを指すそうです。あらあら。
そしてラストを飾る「To Be Free」。こちらもシンプルなギターと分厚いゴスペルのコーラスをバックにゆっくり歌い上げる楽曲。まさにタイトル通り、自由になることを意味する楽曲で、彼が彼らしく生きることを意味していますし、また、その結果、非常に幸福感あふれる作品に仕上がっています。まさにこのアルバムの最後を締めくくるにふさわしい作品と言えるでしょう。
そしてもうひとつ本作の特徴として、全体的に比較的シンプルなアレンジで、あくまでも「歌」を聴かせる作品であるということでしょう。前作「Gloria」は様々なサウンドを取り入れたバリエーションがあふれる作品になっていましたが、本作はシンプルなアレンジで聴かせる構成に仕上がっています。
例えばアルバムの冒頭を飾る「Everlasting Love」も、アコースティックな楽器主体のアレンジとなっていますし、哀愁たっぷりに聴かせる「My Guy」も、ピアノと静かなドラムがメインの比較的シンプルなアレンジ。「Love Is A Stillness」もピアノの弾き語りでシンプルに聴かせるナンバー。Sam Smithがしんみりと歌い上げる泣きメロの歌が耳を惹きます。
レトロソウル風の「Sugar Rush」のような曲がありつつも、全体的にはソウルやフォークの要素を取り入れた、Sam Smithらしいシンプルなポップスがメインの構成。あくまでも彼の歌を聴かせるアルバムとなっており、前作に比べるとバリエーションには欠ける部分がありますが、それを上回る、純粋に歌のすばらしさが目立つアルバムになっていました。
ちなみに本作、いままでイギリスのチャートでは1位もしくは2位を必ず確保していた彼ですが、最高位21位と全く奮いませんでした。ただ、アルバムの出来としてはいままでの作品に比べて決して劣るものではなく、シンプルな作品ゆえに、Sam Smithの良さが出ていた、彼の作品としてはかなり上位の部類に入る傑作だったと思います。派手さがなかったのがいまひとつ売れなかった原因でしょうか。ひょっとしたらノンバイナリーとしての彼を前面に出しすぎたのも、好き嫌いがわかれる要因だったのかもしれません。ただ、そんなこと関係なく、ポップスアルバムとしては理想的な、幸福感あふれる傑作になっていました。ポップス好きなら文句なしにお勧めの作品です。
評価:★★★★★
Sam Smith 過去の作品
IN THE LONELY HOUR
Thrill It All
Love Goes
Love Goes: Live at Abbey Road Studios
Gloria
ほかに聴いたアルバム
fata morgana/L'Rain
ニューヨーク・ブルックリンを拠点に活動するマルチ・インストゥルメンタリストで作曲家、ミュージシャンとしても活躍するTaja Cheekのソロプロジェクト、L'Rainによる新作。彼女のアルバムを聴くのは「Fatigue」以来2作目なのですが、同作同様、39分という短さに13曲という曲数が入り、さらに楽曲もソウル、R&Bを軸としつつ、アンビエントやゴスペル、ポストロック的な要素が次々と展開される作品。ハイトーンに聴かせるボーカルは意外とポップで、全体的にはドリーミーな味付けがほどこされており、独特な世界に没入できるような作品に。実験的な作風ながらも、その展開に最後まで飽きさせない、そんな作品でした。
評価:★★★★★
L'Rain 過去の作品
Fatigue
Destroys Anaheim '76(Live At Anaheim Stadium,Anaheim,California-August 20,1976)/KISS
1976年8月20日にカリフォルニア州アナハイム・スタジアムで行われた、アメリカのハードロックバンドKISSのライブを完全収録したライブアルバム。1976年の頃のKISSと言えば、まさにスタジアムバンドとして大きく飛躍していくという、まさにもっとも勢いがあったころ。この前年のライブの模様を収録した「地獄の狂獣 キッス・ライヴ」は、ライブアルバムの名盤として知られる作品で、本作もそんなまさに脂ののりまくっているころのKISSのステージを収録した作品。力強いバンドサウンドが臨場感たっぷりに収録されており、KISSのライブバンドとしての魅力をしっかりと感じられる作品になっています。まさに偉大なロックバンドの貴重な記録と言えるライブ盤です。
評価:★★★★★







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