大人気レジェンド同士の組み合わせ
「玉響(たまゆら)」さだまさし・立川談春二人会
会場 Niterra日本特殊陶業市民会館 フォレストホール 日時 2025年1月22日(水) 18:00~
今回のライブレポートは、いつもとはちょっと異なる感じのイベントです。こちらのイベントは、落語家の立川談春の落語会に、ゲストとして彼と親交のあるさだまさしを呼んだもの。「玉響」と題されたこのイベントは、もともと東京で行われ、この時は斉藤和義やaikoらのミュージシャンとのコラボが行われたそうですが、今回はさだまさしとコラボして全国ツアー。名古屋でも開催されたため、足を運びました。
個人的にはお目当てはどちらかというと立川談春。個人的な趣味で落語会や寄席にもちょくちょく足を運んでいて、彼もその中で、一度落語会を見てみたい落語家の一人でした。立川談春は、「今、もっともチケットが取れない落語家」の一人と言われるほど人気のある落語家で、この日もさだまさしの人気はあるものの、市民会館のフォレストフォールというキャパ2,000人クラスの会場がほぼ満員となっていました。
一方、さだまさしも実は一度くらいは見てみたいなぁ、と思っていたミュージシャン。彼に限らず、邦洋問わず、レジェンドクラスのミュージシャンは見れるうちにライブを見たい、という気持ちもありました。今回、いい機会なのでさだまさしのライブを見てみたい、ということで足を運びました。
さて、18時になりスタート。基本的に落語会ということで、太鼓の音が開幕を知らせます。ちなみに開演前にはさだまさしが、湯飲みを準備しにステージ上にあらわれて、ちょっと会場も沸いたりして・・・。まずは立川談春の登場。立ったままトークを軽く行った後に、ステージ上にセットされた縁台の上の差布団に座り、落語がスタートとなります。この日は事前に古典落語の「芝浜」を演じるということは公表されていたのですが、その「芝浜」に関する、彼の師匠、立川談志との出会いの話。中学生の頃、立川談志の落語会を聴いて、好き嫌い、いい悪いの感情以前にとにかく圧倒され、立川談志への弟子入りを決めたというエピソード。さらに同じ会場に兄弟子の立川志の輔も観客として落語を聴いており、彼もまた、談志の「芝浜」を聴いて落語家になる決心をした、という話。落語のすごさ(というか、談志のすごさ)を物語るエピソードでした。
その後は「芝浜」をスタート。いきなりの大ネタでちょっとビックリしました。最初は1本、違う演目を演ってから、中入り後に「芝浜」だと思っていたので・・・。ただ、こちらは魚屋の勝五郎が拾ってきた財布を、女房が夢としたところでいったん終了。30分程度で談春は一度、ステージを下ります。
そしてここからはさだまさしのステージ。この日のセットリストは家族をテーマに談春からの要望により決めたセットリストだそうで、最初は「案山子」からスタート。1曲終わると、さだまさしのMCに。トークに定評があることは以前から知っていたのですが、このMCが長い(笑)。最初は主に落語論の話で、彼がいかに落語が好きか、また、昭和の名人の話になり、昭和の名人に関するエピソードを延々と語っていました。
さらに続いては「秋桜」に。アコギをつま弾きつつ、有名な名曲をしんみりと歌い上げ、聴いていてこちらも思わず目頭が熱くなります。しかし、曲が終わると、余韻もなく再びトークへ(笑)。このギャップが彼のライブの人気の秘密なのでしょうか。そして3曲目は「北の国から」!いろいろとパロで使われることも多いこの曲なので、思わず「本物の、本人歌唱だ!!」と思ってしまいました。ただ、かなり意外だったのは「みんなも歌ってください」と会場全体で合唱となったこと。この曲、そんな使われ方するんだ!!とかなりビックリしました。
その後は「関白宣言」を歌うのか・・・と見せかけ、「今の時代、こういう曲はやりにくくなった」という話からコントみたいな展開に突入し、結果、「関白宣言」の後日談的な「関白失脚」へ。最後の「がんばれ」の部分で再度の合唱となります。さらに後半は、能登大地震の支援活動の話を挟みつつ、「命の別名」。さらにここで談春が登場し、二人で軽くトークした後、談春からのリクエストということで「最期の夢」で締めくくり。約1時間半弱のステージでした。
中入り15分の休憩の後は、再び立川談春へ。「芝浜」の後半部分をじっくりと聴かせます。まずはおなじみの「また夢になるといけない」というオチで一度落とした後、場面を少し戻して、談春が創作したオリジナルなアナザーストーリーへ展開。最後はさだまさしの「最期の夢」にからめたオチをつけて、幕を下ろします。
談春の「芝浜」は、風景描写などは比較的あっさりとしている反面、登場人物の心理描写、特に主人公の勝五郎と女房の関係性により焦点をあててじっくりと話を聴かせるスタイル。談春は見た目かなりゴッツイおじさんなのですが(笑)、繊細さも感じられ、女房を演じる時には色っぽさも感じるからさすがです。
オチの後はそのまま緞帳が下りずに、軽くトークに入るのが談春のスタイルらしく、最後は写真撮影の許可も出て、みんなで撮ってください、という話に。
舞台上から観客席全体を写す記念撮影を行い、この日の落語会は幕を下ろしました。ちょうど3時間のステージでした。
立川談春の落語ははじめて聴いたのですが、笑いを取りに行くというよりも人情噺をじっくりと聴かせるスタイル。特に心理描写をしっかりと語っており、非常に聴かせる内容でした。個人的にはもう一話、軽い滑稽話とかも聴いてみたかったのですが、それはまた次の機会に、ということで。
さだまさしのステージ、今回はじめて見たのですが、やはり歌が上手いなぁ、と感心しましたし、何よりも泣かせます。その歌とユニークなトークのギャップがまた面白く、その点、多くのファンが惹きつけられるのはわかるような感じはします。ただ一方、ステージ全体の雰囲気というかノリは、自分たちの親世代(60歳後半~70歳程度)に向けられた感があり、若干、居心地の悪さを感じる部分も否めませんでした。
そんな訳でボリュームたっぷりの3時間。非常に楽しめたステージでした。落語と音楽の組み合わせって、時々あるのですが、「異種格闘技戦」のような組み合わせながらも、そこに違和感もなく、非常にマッチしていたステージでした。
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