アルバムレビュー(洋楽)2025年

2025年1月28日 (火)

圧倒的にポップ

Title:The Singles-The First Fifty Years
Musician:ABBA

日本でも高い人気を誇るポップミュージシャンABBA。2018年に再結成し、約40年ぶりとなるアルバムをリリースし、大きな話題となったことも記憶に新しいのではないでしょうか。本作は、このたびリリースされた、ABBAのシングルコレクション。1982年にリリースされたシングル集「The Singles - The First Ten Years」の拡張版的な作品で、CDでは2枚組全38曲が収録。楽曲はほぼリリース順となっており、ABBAの歩みも知ることのできるアルバムとなっています。

まずなかなか興味深いのが彼女たちの初期の作品。後のヒット曲のような突き抜けるような爽快さと、都会的なサウンドはなく、最初期の作品については、むしろカントリーやフォークの色合いが強いポップス。女性のツインボーカルについても生かし切れておらず、どこか田舎っぽい野暮ったさも感じさせます。

そして、リリース順という流れで彼女たちのシングル曲を聴くと、彼女たちの代表曲であり、ブレイクのきっかけとなった「Waterloo」のあまりの変化に驚かされます。確かに、それ以前のシングルにも、ABBAらしいポップセンスを感じることは可能です。ただ、この曲で楽曲の雰囲気が大きく変化。例えるならば、田舎から都会に引っ越してきた、野暮ったい田舎の女の子が、化粧を覚えて一気にあか抜け、都会的な美少女にいきなり変身したような・・・そんな大きな変化を感じさせます。

その後の名曲の数々は言うまでもないでしょう。「Mamma Mia」「Dancing Queen」「Gimme!Gimme!Gimme!(A Man After Midnight)」など、私は特にABBAのファンでもなければ、リアルタイムで彼女たちの音楽を聴いていた訳でもないですが、容易に口ずさめる、どこかで確実に聴いたことのあるポップソングが並びます。この「聞いたことのある楽曲」の多さに、今回のシングス集を聴いてあらためて驚かされます。それだけABBAの曲が多くの人たちに親しまれていた、ということなのでしょう。

また、今回のABBAのシングル集を聴いてあらためて感じたのは、ABBAの曲の、ポップスとしての強度の強さでした。今回のシングル集は、全38曲2時間半弱という、かなりのボリュームの内容です。特にABBAのファンでもない私にとっては、代表曲以外や、直近アルバム「Voyage」収録曲以外ははじめて聴く曲ばかりでした。しかし、はじめて聴いたにも関わらず、飽きずにしっかりと楽しめる曲ばかり。かなりボリューミーな内容ながらも、最後までほとんどダレることなく、アルバムを楽しむことが出来ました。

このインパクトのあるポップなメロは、80年代になってABBAの人気が下火になっても健在で、例えば「The Day Before You Came」などは、全英チャートで32位に留まったのですが、爽やかながらも切ないメロは健在。続く「Under Attack」も、全英チャートで26位に留まったものの、こちらも、ちょっと切ないメロが耳を惹き、しっかりと聴き終わった後に印象に残るポップスとなっています。

このシングル集を聴いてあらためて感じたのがABBAの楽曲が圧倒的にポップであるという点。ABBAの楽曲については、人気の面でも評価の面でも時代を通じて紆余曲折があったようですが、この圧倒的なポップスさの前には、どんな音楽リスナーもひれ伏すしかないのではないでしょうか。だかこそ時代を超えて、今の時代はようやくABBAがポップスミュージシャンとして高く評価されるようになったのでしょう。あらためてポップミュージシャンとしてのABBAのすごみを感じたシングル集でした。

評価:★★★★★

ABBA 過去の作品
Voyage

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2025年1月19日 (日)

新メンバー加入でゼロからの出発

Title:From Zero
Musician:Linkin Park

日本でも高い人気を誇っているアメリカのロックバンド、Linkin Park。2017年にリリースしたアルバム「One More Light」でも全米チャートで1位を記録するなど、圧倒的な人気を誇ってきました。しかし、そんなバンドが悲劇に襲われたのがその2017年。マイク・シノダと並び、バンドのボーカルを担ってきたチェスター・ベニントンが自殺というショッキングな出来事に襲われ、バンドはそのまま活動休止状況となってしまいました。

しかし、その後の過去のアルバムの〇〇周年記念盤などのリリースにより、バンドの看板を守り続け、今年はシングルコレクションを発表。さらに新ボーカルとして女性ボーカリストのエミリー・アームストロング、さらに新ドラマーとしてコリン・ブリテンを迎えて活動を始動。実に前作から約7年ぶりとなる待望のオリジナルアルバムのリリースとなりました。

そんな待望のニューアルバムの大きな特徴は、ゴリゴリにヘヴィーなサウンドを前に押し出した、Linkin Parkらしいヘヴィーロックな作品になっている点でしょう。イントロからスタートし、序盤は比較的、彼ららしいメランコリックなメロを聴かせるようなナンバーが続きますが、「Heavy Is the Crown」ではまずヘヴィーなバンドサウンドを前に押し、エミリーのシャフト気味のボーカルが楽曲となっています。

バンドとしての原点回帰的なヘヴィーロック路線は後半に行くほど顕著で、「Casualty」も最初、エミリーのデス声からスタートしつつ、ヘヴィーなギターリフを前に押し出したメタリックな作品に。「Two Faced」もヘヴィーなギターリフ主導の典型的なラップメタルな作品に。「IGYEIH」も比較的ポップなメロを聴かせてくれつつ、エミリーのシャウトと、それに合わせるようなヘヴィーなバンドサウンドが印象的なダイナミックなナンバー。前作となる2017年「One More Light」ではポップな作風にシフトしており、バンドとして賛否両論(というより否定的な論調の多い)作品となっていましたが、今回は完全にラップメタル回帰の、Linkin Parkらしい作品に仕上がっており、初期からのファンにとっても大きな満足のいく作品だったのではないでしょうか。

そしてなんといっても大きいのは、今回、女性ボーカルのエミリー・アームストロングが加わった点でしょう。「女性だから」ということは関係ない、とばかりのシャウトやデス声、そして力強いボーカルも大きな魅力なのですが、とはいってもやはり女性らしいハイトーンの柔らかい、マイク・シノダとは明らかに異質である声質がバンドにとって大きなインパクトになっています。今回のアルバム、純粋に楽曲部分だけを切り取れば、原点回帰的とはいえ目新しいものは全くありません。ただそれでもこのアルバムに惹きつけられるのは、やはりエミリーのボーカルが大きなインパクトになっているからでしょう。

また、「Over Each Other」ではエミリーがゆっくりと歌い上げるボーカルがソウルフルで、大きな魅力となっている作品。この曲は、まさにエミリーがボーカルだったこそ成り立ったような楽曲になっていたと思います。もともとバンドとしては前作でも「Heavy」で女性ボーカリストをゲストとして迎えており、女性ボーカルとのからみというのをバンドとしての新たな可能性として模索していたのでしょう。そして今回のアルバムでは、その方向性がピッタリとマッチしていました。

正直、サウンド的に新機軸を打ち立てた訳ではないため、これが2作3作と続けば、マンネリ化しそうな印象も否めません。ただ、それを差し引いても、新体制の出発にふさわしい傑作アルバムに仕上がったアルバムと思います。「From Zero」というアルバムタイトル通り、まさにバンドとしてゼロからの始動となった彼ら。ただ、今後の活躍に期待したいところです。

評価:★★★★★

LINKIN PARK 過去の作品
A THOUSAND SUNS
LIVING THINGS
The Hunting Party
One More Light
Papercuts:Singles Collection(2000-2023)

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2025年1月14日 (火)

方向性が異なりつつ、微妙にリンク

今回、紹介するのはニューヨーク生まれチリ育ちのエレクトロミュージシャン、Nicolas Jaarが2枚同時にリリースしたアルバムです。

Title:Piedras 1
Musician:Nicolas Jaar

Piedras1

Title:Piedras 2
Musician:Nicolas Jaar

Piedras2

2枚同時リリースとなった本作ですが、両作で楽曲の方向性は異なります。まず「Piedras 1」の方はラテンの要素も強い哀愁たっぷりのメロディーラインが軸となっている点。「Aqui」がまさにそんな哀愁たっぷりの「歌」を聴かせてくれる楽曲となっていますし、続く「Agua pa fantasmas」は哀愁感あるメロにラテンやトライバルな要素の加わったエレクトロビートが加わります。特に、アルバム中盤では、ラテンやトライバルなビートをより前に押し出したリズミカルなナンバーが強くなります。

特にラテンの要素という点では、彼がチリ育ちということで、やはり中南米系の影響が大きいのでしょう。アルバムでも後半「Mi viejita」などは、まさにラテンの要素を前に出したメランコリックなナンバーとなっています。アルバム全体としてはダウナーな雰囲気の曲が多いのですが、そこにラテン特有の哀愁感のあるメロやサウンド、さらにはトライバルなビートも加わり、独特の味わいのあるサウンドを聴かせてくれます。

一方、「Piedras 2」は全体的にアンビエントの要素の強いアルバムに。特にアルバム前半は「Rio radio correspondecia anfibia」にはじまり、「3eee」「F Collect」など、静かで美しいサウンドを聴かせてくれるアンビエントの曲が続いていきます。「Piedras 1」で感じられたラテン的な要素は薄め。ただ、ダウナーな楽曲という意味では「Piedras 1」に通じるものがありますし、なによりもアンビエントの美しいサウンドが耳を惹く作品となっています。

ただ、この作品、後半になると雰囲気が異なり、「Heterodia」では強いエレクトロビートの、ドリルンベース的な楽曲に。さらにラストの「SSS1」「SSS2」「SSS3」はメタリックなエレクトロビートが疾走感のある楽曲になっており、アンビエントの雰囲気からグッと変化してアルバムが幕を下ろすのもまた、ユニークです。

そんな訳で、2枚同時リリースのアルバム。方向性が異なりつつ、共通項も感じられるのもユニーク。特に「Piedras 1」の1曲目「Cangilon」はアンビエントの作品となっており、「Piedras 2」との結びつきも感じられます。2枚のアルバムが、微妙に異なりつつも、実は微妙にリンクしている、そんな構成もまたおもしろく感じ、どちらのアルバムも楽しめる、そんな作品だったと思います。

今回、はじめて彼の作品を聴いたのですが、もともとデビューアルバム「Space Is Only Noise」から高い評価を受けていたようです。ただ、その理由も納得の、彼の実力をしっかりと感じられた2枚のアルバムでした。

評価:★★★★★

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2025年1月 5日 (日)

アルバムとして非常に惜しい作品

Title:Night Palace
Musician:Mount Eerie

アメリカのシンガーソングライター、Phil Elverumの音楽プロジェクト、Mount Eerie。Mount Eerieとしては2003年から活動を続け、本作でアルバムは11作目となる中堅ミュージシャンですが、アルバムを聴くのは今回がはじめてとなります。

まずアルバムとしては非常にバリエーション豊富な構成となっている作品でした。冒頭を飾るタイトルチューン「Night Palace」はノイズを前面に押し出したサイケな楽曲からスタート。続く「Huge Fire」はミディアムテンポに聴かせるギターロックのナンバーなのですが、続く「Breaths」は、歌こそフォーキーな雰囲気ながらも、サウンドはインダストリアル的な作品。さらに「Swallowed Alive」はわずあ52秒という短い曲ながらも、シャウトが鳴り響く、ハードコア的な楽曲となったかと思えば、「My Canopy」も一転、アコースティックな雰囲気で聴かせるネオアコ風の作品となっています。

その後は、基本的にハードコア的な曲やメタリックな曲はなくなり、メロディアスなギターロックの作品が主軸となります。「Empty Paper Towel Roll」のような、オルタナ系ギターロックの王道を行くような、ポップなギターロックチューンがあったり、「Blurred World」のようなアコギを入れてフォーキーにしんみり聴かせる作品があったり、「Myths Come True」のようなサイケ気味なアレンジにポエトリーリーディングを入れたような曲もあったり、ローファイなギターロックを軸としてバラエティーある作品を聴かせてくれます。

特に印象的なのが「I Spoke With A Fish」のような、コーラスラインを入れて美メロとも言えるメロディーラインの歌を聴かせてくれる曲や、「I Saw Another Bird」のようなメランコリックなメロが切ないナンバー。全体的に派手さはなく、曲によってはバンドサウンドの後ろで細々と歌われるだけというケースもあるものの、美しいメロディーラインをしっかりと聴かせてくれる点、彼の大きな魅力でしょう。

しかし、1つ1つの楽曲だけ取ると、非常に素晴らしい作品だったのですが、一方でそれだけのプラス評価を覆すぐらいの厳しい部分がありました。それはアルバムとして長すぎるという点。今回のアルバム、全26曲1時間20分にも及ぶ内容。これはさすがに長すぎます・・・。

確かにバリエーションに富んだ内容ではあるものの、全体的にローファイで地味な作風の曲が多く、その点、後半はダレてくる点は否めません。さらに前半はメタリックな作品があったりと、明確に違う雰囲気の楽曲が紛れ込んできて大きなインパクトになっているのですが、後半は徐々にメロディアスなギターロック路線に収縮していきます。結果、後半は比較的似たタイプの曲が並んでしまい、聴いていて、飽きてきてしまいました。

さらに、さすがにダレて来たな・・・と感じる頃に、いきなり12分にも及ぶポエトリーリーディングの「Demolition」という曲をぶちこんできます。ここに来て、この展開はさすがにちょっと辛い・・・。

このアルバム、もし曲数を絞って1時間弱の長さとなれば、文句なしの傑作どころか、年間ベストクラスの作品にすらなっていたように思います。また、後半に、もっとぶっ飛んだ曲調の楽曲をアクセントとして入れてこれば、また印象は異なっていたと思います。ただ、さすがに楽曲が詰め込みすぎだし、構成ももうちょっと工夫した方がよかったのでは?楽曲としては優れていても、ただ優れた楽曲を集めただけで傑作のアルバムが出来上がる訳ではないということを、実感できた作品でした。

評価:★★★★


ほかに聴いたアルバム

JAPANESE SINGLES COLLECTION-GREATEST HITS-/HOWARD JONES

日本でリリースされたシングルをまとめた国内独自企画のベスト盤シリーズ。今回は、主に80年代に、シンセポップのミュージシャンとして日本でも高い人気を誇ったイギリスのミュージシャン、ハワード・ジョーンズのシングル集。正直、名前くらいしか聞いたことないミュージシャンなのですが・・・。前半は実に80年代っぽい明るいシンセポップが並んでいます。ただ後半になるに従い、ギターを前に押し出した作品が多くなり、徐々に方向性が変わったことが伺わせます。ただ、結果、あまり特色のないような楽曲になってしまっている点、90年代以降の失速の原因なのでしょう。ただ、特に前半、80年代らしさを楽しめるポップアルバムに仕上がっていました。

評価:★★★★

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2025年1月 3日 (金)

感情が高まっていく

Title:Songs Of A Lost World
Musician:The Cure

実に約16年ぶりとなるイギリスのロックバンド、The Cureのニューアルバム。The Cureはボーカル、ロバート・スミスを中心に1978年に結成され、1979年にデビュー。現在、結成45年目を迎えたベテランバンド。メンバーは入れ替わりながらも、断続的に活動を続けていました。ゴシックロックをベースとしつつ、ポップなメロを加味したサウンドが特徴的で、数々のミュージシャンに影響を与えているそうです。そんな彼らの久々となったニューアルバムは、現在、各種メディア等で大絶賛を受け、年間ベストアルバムの上位にランクインし、大きな話題となっています。

今回のアルバム、楽曲の構成については似たようなタイプの曲が多く、力強いバンドサウンドにストリングスも入ってメランコリックに美しく聴かせるインストからスタート。感情たっぷりのサウンドをこれでもかというほど聴かせて、中盤あたりからようやく歌がスタート。こちらもそんな美しく聴かせるインストに重なるような、ロバート・スミスが哀愁たっぷりに歌い上げる美しいミディアムテンポの歌を聴かせてくれます。

アルバムに先立って発表された「Alone」はまさにそんな楽曲となっており、オープニングにふさわしく、なおかつアルバムを代表するかのようなナンバー。続く「And Nothing Is Forever」も同じく、ストリングスにピアノも重なるような透明感のある美しいインストが長く続き、中盤あたりからようやくメランコリックな歌がスタートします。

ここ最近の曲は、特にストリーミングでいかに聴かせるかというナンバーが多く、特に日本での話になるのですが、イントロが短くなってきている、ということがひとつの話題となっています。一方、そういう流れからすると、このThe Cureの楽曲はまさに真逆。ゆっくりと哀愁たっぷりのイントロを、これでもかというほど聴かせてくれます。ただ、この長いイントロによって、聴くものの感情が徐々に高ぶっていき、中盤からようやく歌が流れ始めたころには、その高ぶった感情を、ロバート・スミスの歌でより盛り上げていく、そんな感情の高ぶりによって聴く者を魅了するアルバムになっていました。

後半は、「Drone:Nodrone」「All I Ever Am」など、前半のストリングスとは代わって、ノイジーなギターサウンドを前に出している楽曲も。ただ、これらの曲も長い哀愁たっぷりのイントロで感情たっぷりに聴かせるというスタイルには大きな変化はありません。そしてそんなアルバムの締めくくりのような楽曲がラストのタイトル通り「Endsong」。最初はストリングスにピアノやバンドサウンドも入って、メランコリックなサウンドでスケール感をもって徐々に盛り上げていきます。10分にも及ぶ楽曲で、歌がスタートするのはようやく6分を過ぎたあたり。メランコリックでノイジーなサウンドに埋まるように感情込めてうたわれるロバート・スミスの歌がこれまた魅力的。最後を締めくくるにふさわしいスケール感あふれる楽曲に仕上がっていました。

確かに、各種メディアで絶賛されているのも納得。ゴシックな部分とポップな部分がほどよく融合し、これでもかというほど感情のたかぶりを感じさせるThe Cureの傑作アルバムでした。デビューから45年を迎えつつ、これだけのアルバムをまだリリースしてくるあたりも驚きを感じる1枚。ゴシックなサウンドは良くも悪くも癖はありますが、ポップなメロはいい意味で聴きやすいので、広い層が楽しめそうな、特にロック好きにはお勧めできる1枚です。

評価:★★★★★

The Cure 過去の作品
4:13 Dream

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2025年1月 2日 (木)

「名盤」が「名盤」たる所以

Title:Weezer 30
Musician:Weezer

日本でも高い人気を誇るアメリカのパワーポップバンド、Weezer。その彼らのデビューアルバムであり、今でも絶大な人気を誇るのが1994年にリリースされた「Weezer」、通称ザ・ブルーアルバム。名盤の誉れ高い本作ですが、今回、そのリリース30周年を記念して記念盤がリリースされました。アルバム「Weezer」本編の2024年版リマスターが収録されているほか、BBCでのライブ音源に各種デモ音源、また「アーリー・ライブ・レコーディングス」として、本作リリース前の1992年や1993年のライブ音源が収録。全50曲入りというボリュームたっぷりの作品となっています。

今回、あらためて「名盤」と呼ばれるこの作品を聴いてみたのですが、本作が名盤と呼ばれる所以があらためてよくわかりました。簡単に言ってしまえば、メロディーラインの強度が半端ない!私もWeezerは大好きなバンドの一組なので、このアルバムも何度か聴いています。ただ、今回本作を聴いたのは久しぶり。それでもここに収録されている楽曲のメロディーラインが耳に焼き付いており、アルバムを聴きながら、すぐにでも口ずさめてしまいます。

力強いバンドサウンドの「My Name Is Jonas」からスタートし、続く「No One Else」も、ポップなサビのメロは曲を聴きながら思わず口ずさんでしまいましたし、そしてなによりメロディーのインパクトが強いのが「Buddy Holly」。サビは歌詞も含めて普通に歌えてしまいます。その後のミディアムテンポの「Undone」「Say It Ain't So」も、決して派手な曲ではないのにしっかりとメロが耳に残っていますし、ラストの「Only In Dreams」まで、どの曲もシングルカット可能では?というほどのインパクトの強いナンバーが並んでいます。

サウンド的にはシンプルなギターサウンドを前に押し出したパワーポップ。サウンド的には決してバリエーションが多いわけではありません。それにも関わらず、このアルバムがこれだけ名盤足りえているのは、そのヘヴィーなサウンドと相反するような、いわゆる「いけてない連中」視点の歌詞が共感を呼んだ・・・という点も大きいのでしょうが、それ以上にやはりこの、一度聴いたら忘れられない、すぐ口ずさめるようなインパクトあるメロディーラインというのが大きいのでしょう。今回、久しぶりに本作を聴いて、名盤が名盤足りうる理由を、嫌というほど実感しました。

一方、今回、特典として収録された音源は、いずれも1994年のアルバムリリース前の音源がメイン。特にデモ音源は1992年というから、おそらく最初期の音源となるのでしょうが、この時期の作品から楽曲としてはある程度完成されており、同時期のライブ音源が収録されていることからも、デビュー前から繰り返し、演奏されていたということを実感できます。バンドのデビューアルバムというと、アマチュア時代の楽曲の「ベスト盤」的な収録曲になることが多いのですが、彼らについてもそうだったのでしょう。それを差し引いてもとんでもない名曲揃いは、このころの彼らのバンドとしての充実ぶりを感じさせます。

ただ、全体的にはどちらかというと「貴重な音源」という側面が強く、ライブ音源については特に初期の作品については音もあまりよくありませんし、全体的にはファン向けの作品かな、とは思います。もっとも、ライブ音源もデモ音源も、彼らの名曲が繰り返し聴けるだけに、そこまで熱心なファンでなくても、3時間50分に及ぶこのアルバム、文句なしに飽きることなく楽しめる内容だったと思います。あらためてWeezerの魅力とすごさ、そしてこのアルバムの名盤ぶりを実感できた記念盤でした。

評価:★★★★★

WEEZER 過去の作品
WEEZER(Red Album)
RADITUDE
HURLEY
DEATH TO FALSE METAL
Everything Will Be Alright in the End
WEEZER(White Album)
Pacific Daydream
Weezer(Teal Album)
Weezer(Black Album)
OK HUMAN
Van Weezer
SZNZ:SPRING
SZNZ:SUMMER
SZNZ:Autumn
SZNZ:Winter


ほかに聴いたアルバム

Mid Spiral/BADBADNOTGOOD

カナダはトロント出身の3人組のインストバンド。Kendrick LamarやThundercatのアルバムにプロデューサーとして参加したり、数多くのミュージシャンたちに高い評価を得ているバンドで、ミュージシャンズミュージシャンといった感じでしょうか。楽曲は、主にサックスとピアノ、フルートを取り入れて軽快にメロディアスに聴かせるシンプルなインストナンバー。時折、トライバルなパーカッションが加わるのも特徴的。日本だとYOUR SONG IS GOODとかSPECIAL OTHERSとか好きなら気に入るかも。Kendrick LamarやThundercatのプロデューサー、というイメージに惹かれて聴いてみると、シンプルなサウンドにちょっと拍子抜けするかもしれませんが、いい意味で万人向けにシンプルに楽しめる軽快なインストを聴かせてくれるアルバムです。

評価:★★★★

Songs About You Specifically/MICHELLE

てっきり、写真中央の女性がMICHELLEさんで、女性ソロシンガーソングライターによる作品、だと思っていたのですが、6人組の音楽グループのようです。「バンド」ではなく「コレクティブ」とあまり聴きなれない表現を用いていましたので、音楽集団といった感じなのでしょうか。楽曲はシンセの入った軽快なポップ。全体的にメランコリックな曲調のナンバーが多く、テンポよく耳なじみの良い楽曲が特徴的。いい意味で聴きやすさはありますが、独自性という観点ではよくありがちなシンセポップというイメージも?素直に楽しめるポップアルバムではありましたが。

評価:★★★★

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