アルバムレビュー(洋楽)2025年

2025年12月20日 (土)

大人の雰囲気を漂わせる王道のハウスチューン

Title:Through the Wall
Musician:Rochelle Jordan

ジャマイカ移民の両親のもとでロンドンに生まれ、現在はカナダのトロントで活動するシンガーソングライター。本作は約4年ぶりとなる、オリジナルフルアルバムとしては3枚目のアルバム。前作「Play with the Changes」も比較的好評のうちに受け入れられたようですが、今回のアルバムはより高い評価を受け、注目を集めているようです。

まずこのアルバムについて感想を書くとすると、聴いていてすっと心に入ってくる、非常に心地よいアルバムでした。まずその理由として考えられるのが、2つあって、まず一つ目が、このアルバム、全体的にエレクトロポップの作品が並んでいるのですが、ハウス、UKガレージなどの王道を行くような曲が並んでいるという点があげられます。

オープニングを挟んで事実上の1曲目となる「Ladida」はハウル/UKガラージのナンバーなのですが、サウンドは90年代を彷彿とさせるものであり、非常に耳なじみやすい楽曲になっていますし、「Doint It Too」もリズミカルでダンサナブルなトラックがクラブ向けの、比較的スタンダードなハウスチューン。後半の「Crave」などもシンプルな4つ打ちのビートを刻んでおり、アルバム全体として比較的シンプルで、かつ聴きやすいエレクトロ/ハウスのナンバーが並んでいます。

もうひとつの魅力は、彼女のムーディーなボーカルと、それとピッタリマッチしたサウンドでしょう。「夜の雰囲気」と称されることが多いようですが、メロウなR&Bの要素を積極的に取り入れた作品は、まさに「夜」「大人」というキーワードがピッタリ来そうな作風に。クラブ系のナンバーが並んでいますが、ちょっと上品な大人な雰囲気の漂うフロアにピッタリはまりそうな作品が並びます。

例えば序盤の「The Boy」などは、リズミカルなハウスのナンバーですが、ファルセットボーカルを生かしてちょっとセクシーに聴かせる彼女のボーカルが実に魅力的。「Never Enough」でも、大人な雰囲気の漂うメロウなボーカルを魅力的に聴かせてくれています。また、終盤のチルアウト気味なナンバー「I'm Your Muse」でも抑え気味のボーカルがセクシーで実に魅力的。終始、大人な雰囲気を漂わせるボーカルが、このアルバムの大きな魅力となっていました。

もっとも、王道なハウス、エレクトロの楽曲が並ぶだけに決して目新しさはありません。正直、彼女の大人のボーカルも大きな魅力ではあるのですが、決して目新しい、他を圧倒するようなものではないでしょう。ただ、そういった点を差し引いても、いい意味で聴きやすく、すんなりと耳に入ってきて、身体が自然に動き出すエレクトロのサウンドと、セクシーさも感じられる彼女のボーカルはやはり大きな魅力。クラブユースそていももちろん、家で聴いても十二分に楽しめる傑作アルバムでした。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

STAR LINE/Chance The Rapper

一時期はミックステープのみをストリーミングやダウンロードのみで無料でリリースし、音源を全く販売しないスタイルながらもヒットチャートを賑わせ、ついにはグラミー賞を受賞するなど、一躍時の人となったラッパー、Chance The Rapper。ただ、前作「The Big Day」が不評だった影響で、一時期に比べて人気面はグッと落ち着いてしまいました。そんな中リリースされた約6年ぶりのニューアルバム。正直、前作がそこまで悪いアルバムとは思わないのですが・・・。今回のアルバムはメランコリックな歌モノが多いアルバム。基本的にChance The Rapperらしい作品とは思う反面、インパクトの面でちょっと薄かったような印象が。17曲1時間強という長さも、ちょっと長すぎるような感じも。悪い作品ではないものの、もうちょっとコンパクトにまとめた方が良かったような印象も受けるアルバムでした。

評価:★★★★

Chance The Rapper 過去の作品
Coloring Book
The Big Day

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2025年12月19日 (金)

ジャズ、クラシックとレトロなポップスのバランスが絶妙

Title:A Matter of Time
Musician:Laufey

現在、人気上昇中で注目を集めているアイスランド出身のシンガーソングライターLaufey。ちなみに生まれも育ちもアイスランドの彼女ですが、母親は中国人だそうで、ルックス的には東洋系な感じです。2023年にリリースした前作「Bewitched」は見事、グラミー賞を受賞。本作では、イギリスのナショナルチャートで3位を獲得したほか、アメリカビルボードでも4位を獲得。その人気を確固たるものとしています。

今回、はじめて彼女のアルバムを聴いたのですが、まず感想としてとても懐かしさを感じさせるレトロでキュートなポップスが、素直に心地よい作品となっていました。バークリー音楽院出身の彼女は、もともとジャズやクラシックの影響を受けた音楽性が大きな特徴だったそうですが、今回のアルバムはグッとポップスに寄った作品となったそうで、その結果、ジャズやクラシックがポップと融合した音楽性が、どこか懐かしく、かつキュートさを感じさせる絶妙なバランス感覚に仕上がったようです。

まず心地よいのが1曲目の「Clockwork」で、ジャズやレトロポップ風の作品。ムーディーで軽快な作風が、レトロなポップを彷彿とさせるようなナンバーとなっています。続く「Lover Girl」もジャズの要素を入れた軽快なポップスで、日本だと渋谷系やラウンジを思い起こさせるような心地よいポップチューンとなっています。

序盤では続く「Snow White」も印象的。アコギで静かにスタートし、途中からストリングスも加わる、静かながらも盛り上がりのある構成になっているのですが、静かに聴かせる彼女の歌が、暖かく、そして切なく、胸に響いてきます。中盤の先行シングルともなっている「Silver Lining」も、ゆっくりと聴かせるジャジーなバラードナンバー。こちらも静かなバンドサウンドとストリングスバックにしんみり歌い上げる彼女の歌が心に響いてきます。

「Forget-Me-Not」はオーケストラアレンジでドラマチックに聴かせるナンバー。もともとクラシックからの影響が強いということですが、そんな彼女の側面がもっとも押し出されている曲と言っていいかもしれません。そんなクラシカルなナンバーがあったかと思えば、「Tough Luck」は、ポップスさを押し出したナンバー。特に後半からはバンドサウンドをバックに軽快なポップスを聴かせてくれており、今回のアルバム、このジャズ/クラシックからポップへの振れ幅も楽しいところでしょう。

さらに後半ではボッサ風にアレンジされた「Mr.Eclectic」があったり、さらに「Sabotage」では映画音楽的な構成でありつつ、後半ではいきなりサイケなノイズや不協和音が登場。いままでのナンバーとはグッと雰囲気の異なる構成となり、終盤にはこのような実験性を感じさせる楽曲も並びます。

そんな感じで、ジャズやクラシックの影響を受けつつ、さらには映画音楽、ラテンやさらにはサイケロックなどの要素も顔を覗かせる幅広い音楽性を垣間見せつつ、でもベースとなっているのはレトロでキュートなポップスというバランス感覚が見事な作品。前述の通り、日本で言えばちょっと懐かしの渋谷系的な要素も感じられ、いい意味でアラフィフ世代あたりの琴線にも触れそう。広い層におすすめできそうなポップスミュージシャンの傑作です。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

Alive in the Catacombs/Queens of the Stone Age

Queens Of the Stone Ageの5曲入りとなるEP。今回のアルバムは、2024年7月8日に、パリの地下墓地、Catacombs of Parisで撮影されたライブの模様を収録したアルバム。いつもの彼らの作品とは異なり、アコギとストリングスを用いたアコースティックな編成でのステージ。なぜ、そんな場所でわざわざライブを・・・とも思うのですが、閉鎖的な地下空間は音の響きが独特でしょうし、独特な空気感の中で、どのような音を出せるのか、試したくなった、という感じでしょうか。アコースティックなサウンドでしんみり歌われる楽曲がメインで、どこか厳かな雰囲気も漂っています。しっかりと歌を聴かせている感も強く、QOTSAの本質を追求しているという一方、デモ音源みたいにも取れる作風に若干の物足りなさも感じます。ただ、なかなか興味深い音源であることは間違いなく、ファンならチェックしておきたい作品でしょう。

評価:★★★★

Queens Of The Stone Age 過去の作品
ERA VULGARIS
...Like Clockwork
Villains
In Times New Roman...

That Wasn't A Dream/Pino Palladino&Blake Mills

ウェールズ出身のミュージシャンでベーシスト、さらにはプロデューサーとしても活躍しているPino Palladinoと、アメリカ出身のシンガーソングライターで、こちらもプロデューサーとしても活躍しているBlake Millsのコラボの2作目。全編インストルメンタルのアルバムで、アコースティックでメランコリックなサウンドをメインに、ジャズやアンビエントの要素を取り込んだ作品を聴かせてくれます。ただ、ところどころに歪んだノイズやメロディーが流れ出す「毒」の部分を感じられ、その点がユニークな作品に。しんみり聴かせる曲ながらも、一癖あるひっかかりのある作品に仕上がっていました。

評価:★★★★★

Blake Mills 過去の作品
Muntable Set
Notes With Attachments(Pino Palladino&Blake Mill)
Jelly Road

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2025年12月14日 (日)

再結成で大盛り上がり中のリリース

Title:(What's the Story)Morning Glory? 30th Anniversary Deluxe Edition
Musician:oasis

今年、まさかの再結成が実現。先日は日本公演も大盛況のうちに終えたoasis。再結成の熱狂の中、様々な関連アイテムが販売されているのは、ここでも何度か紹介した通りです。そんな中リリースされたのが本作。ご存じの通り、1995年にリリースされ、全正解で2,500万枚いじょうを売り上げたという、oasisの代表作であり、ロック史に燦然と輝く名盤「(What's the Story)Morning Glory?」の30周年記念盤。昨年、デビューアルバム「オアシス」の30周年記念盤もリリースされていますので、それに続く記念盤ということになります。

oasisの本作の再発自体はこれが初めてではありません。2014年には、彼らの1993年から1997年における活動を振り替えるプロジェクトとして「チェイシング・ザ・サン」シリーズとしてリマスター版がリリース。今回が再度の再発となります。昔、誰かが雑誌で「ビートルズのアルバムはリマスター版が何度も発売されるので、同じアルバムを何枚も持っている」という話をしていたことが記憶にありますが、私も同作を買うのはオリジナルを含めて3度目。ファンとしての宿命的なもの(?)を感じてしまいます。

今回の注目は、Disc2に収録されているアンプラグドバージョン。「Cast No Shadow」「Morning Glory」「Wonderwall」「Acquiesce」「Champagne Supernova」の5曲が、アンプラグドで収録されています。バンドサウンドが前に押し出された原曲の一方、本作ではアンプラグドということでリアムの歌が前に押し出されたアレンジとなっており、oasisの曲の本来持つ、歌の良さが強調されたバージョンとなっており、ノエルの書くメロディーライン自体の魅力を強く感じさせる作品となっています。

とはいえ、このうち「Cast No Shadow」「Wonderwall」「Champagne Supernova」はもともと歌が目立つ楽曲だったので、このアンプラグドバージョンでも大きな変化はなく。一方、原曲から雰囲気がかなり変わったのが「Morning Glory」で、もともとかなりパンキッシュな原曲に対して、リズムにパーカッションも入り、オーガニックなテイストが強い作風に。より、原曲の持つメロディーの魅力を強く感じさせます。同様に「Acquiesce」のアンプラグドも印象的。特にこの曲、Aメロをリアムが歌い、一方、サビをノエルが歌うという、珍しく兄弟が共演する楽曲なのですが、アコースティックなアレンジがゆえに、兄弟の距離がより近く感じられる作風に。ある意味、今回の再結成にピッタリと言えるかもしれません。

ちなみにこのアンプラグドバージョン、いつ録音されたものなのかは公表されていないようで、最初、アルバム制作にあたってのデモ的な音源かと思っていたのですが、どうもそうでもなく。リアムのボーカルについては過去の音源を流用し、それに最近録音されたサウンドを重ねた、というのが有力な見方のようです。

また、肝心な本編の方ですが、こちらも2014年のリマスター音源をそのまま収録した内容ということで、当時の音源を所有していれば、アンプラグドバージョン以外、特に追加で購入する必要性は薄いといったことになります。まあ、それでも買ってしまうんですけどね。アンプラグドバージョンも、これはこれで聴きどころのある音源ではあると思うのですが、2014年リマスター版を所有している方は、再購入する必要性は薄いかも。ただ、2014年リマスター版を所有していない方や、今回の来日ではじめてoasisについて聴いてみようと思った方には最適なアルバムだと思います。もちろん、楽曲自体は文句なしの名曲揃いです。

評価:★★★★★

oasis 過去の作品
DIG OUT YOUR SOUL
Time Flies 1994-2009
Original 1993 Demos
Definitely Maybe (Remastered) (Deluxe)
(WHAT'S THE STORY)MORNING GLORY?(Remasterd)(Deluxe)
BE HERE NOW(Deluxe)
KNEBWORTH 1996
The Masterplan - 25th Anniversary Remastered Edition
Definitely Maybe (30th Anniversary Deluxe Edition)(「オアシス」30周年記念デラックス・エディション)
Times Flies...1994-2009(Remaster)

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2025年12月13日 (土)

今、最も人気のあるSSW

Title:The Art Of Loving
Musician:Olivia Dean

今回紹介するのはオリヴィア・ディーンというイギリスのシンガーソングライターによる2枚目のアルバム。日本では、まだその名前はほとんど知られていませんが、おそらく現時点において、もっとも人気のあるシンガーの一人で、本国イギリスでは本作に収録されている「MAN I NEED」がチャート1位を獲得しているほか、複数の楽曲がシングルチャートに同時ランクイン。「MAN I NEED」はアメリカビルボードのHot100でも最高位4位を記録しています。もちろん、本作も、イギリスのナショナルチャートで1位を獲得。アメリカビルボードでもベスト10入りを果たすなど高い人気を誇っています。

彼女の歌う楽曲は基本的にちょっとレトロな雰囲気を漂わせるソウル/R&Bの楽曲。前述の大ヒットした「MAN I NEED」はエレピのサウンドも暖かく聴かせる、ゴスペル風のコーラスも爽やかな効果を醸し出す、軽快なR&B風のポップチューン。同じく大ヒット中の「So Easy(To Fall In Love)」もボッサやジャズ風のアレンジが入り、ちょっとレトロな懐かしさのある暖かい作品に仕上がっています。

その他にも、スモーキーなボーカルで、ムーディーでファンキーなレトロポップを聴かせる「Lady Lady」や感情たっぷりに聴かせる、ある意味、王道とも言えるバラードナンバー「Let Alone The One You Love」、アコギアルペジオで哀愁たっぷりに聴かせる「Loud」などが続き、最後はフォーキーな雰囲気で暖かい余韻を残しつつアルバムを締めくくる「I've Seen It」へと続いていきます。

懐かしさも感じられるポップは耳なじみやすく、確かに絶大な支持を得ている理由もわかるように思います。ただ一方、賛否がわかれる部分もあるようで、確かに彼女の歌は、懐かしいという感覚の裏返しなのかもしれませんが、一方では「どこかで聴いたことある」ような曲が少なくありません。前述の「So Easy(To Fall In Love)」も、レトロなポップは70年代あたりの曲で、どこか似たような曲があったような・・・(思い出せませんが。ただ、ちょっとカーディガンズっぽい部分も・・・)。目新しさという部分では乏しい感は否めません。

とはいえ、そんな部分を差し引いても、ノスタルジーを彷彿とさせるメロやサウンド、彼女の時にはスモーキーに、時にはチャイルディッシュですらあるボーカル、そしてポップなメロは非常に魅力的であり、「どこかで聴いたことある」というマイナス点を補って余りある作品に仕上がっていると思います。

日本では残念ながら知名度は低く、楽曲もほとんど知られていません。正直、どうしても目新しさがない、という部分は洋楽を聴くインセンティブとして低くなってしまうため、日本では広まりにくいのかもしれません。ただ、それでもこの暖かく懐かしいポップな楽曲は非常に魅力的で、日本人の琴線にも触れそう。興味がある方は一度是非チェックしてみてください。

評価:★★★★★

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2025年12月12日 (金)

よりポップにシフト

Title:The Life of a Showgirl
Musician:Taylor Swift

相変わらず絶大な人気を誇るポップミュージシャン、テイラー・スウィフト。本作は、アメリカで初週に400万枚以上を売り上げ、アデルの「25」が所持していた初動アルバム売上記録を更新するという結果を記録。さらにHot100でも同作収録曲が軒並み上位にランクインするなど、他のミュージシャンを寄せ付けない圧倒的な人気を誇っています。また、リリース間隔としても前作「The Tortured Poets Department」から、わずか1年半というインターバルでのリリース。積極的なリリースに、彼女の止まらない勢いも感じさせます。

テイラーというと、もともとカントリーのミュージシャンとしてデビューし人気を確保。その後、2020年代以降、インディーポップ寄りにシフトし、旧来のカントリー寄りのファンからはともかく、一般的には非常に高い評価を受けました。ただその後は再びポップ寄りにシフト。前作も、その方向性が明確になったアルバムとなっていましたが、今回のアルバムもさらにその傾向が顕著な、非常にポップなアルバムに仕上がっています。

例えば冒頭を飾る「The Fate of Ophelia」は、様々に展開していく構成もユニークな、インパクトあるポップチューンになっていますし、「Opalite」も、軽快でリズミカルな、透明感のあるサビはインパクト十分なポップチューンに。後半の「Wood」も、軽快なギターサウンドが心地よい、インパクトあるギターポップのナンバーに仕上がっています。

さらに特に今回のアルバムでは、比較的初期のアルバムを彷彿させるような作品も収録されており、序盤の「Elizabeth Taylor」や甘い雰囲気のメロディーラインが特徴的な「Honey」などは、まさに2010年代前半あたりのテイラーの楽曲を彷彿とさせる楽曲となっています。一方ではエレクトロサウンドを入れてきたり、「Wi$h Li$t」のような、トラップ的な要素も感じさせる曲もあったりと、決して初期のような「カントリーミュージシャン」の枠組みには収まらないような音楽性もしっかりと感じられ、その点、様々な時期を経た今だからこそリリースできる、2025年のテイラー・スウィフトの音楽性もしっかりと感じさせます。

ただ一方で、全体的にポップなメロを前面に押し出したような音楽性は、インパクトもあって聴きやすい反面、ポップであるが故の作品としての「軽さ」も感じてしまいました。その点、実際に同作の評価として賛否両論があるようで、確かに、例えば「folklore」や「evermore」あたりの作品と比べると、物足りなさも感じてしまった点は否定できません。

とはいえ、その点を差し引いても、一度聴いたら忘れられず、また、ついつい引き寄せられアルバムを聴き進めてしまうポップなメロディーラインは実に魅力的で、やはり勢いもあります。なによりもインパクトあるメロディーラインには、トップミュージシャンとしての実力を感じざるをえません。前作は、完全版が収録時間が長すぎたためちょっとダレてしまったのですが、今回は全12曲41分とちょうどよい塩梅。傑作アルバムであることは間違いないかと思います。ポップミュージシャンとしての彼女の魅力により触れることのできたポップアルバムでした。

評価:★★★★★

TAYLOR SWIFT 過去の作品
FEARLESS
RED
1989
REPUTATION
Lover
folklore
evermore
Fearless (Taylor's Version)
RED(Taylor's Version)
Midnights
Speak Now(Taylor's Version)
1989(Taylor's Version)
THE TORTURED POETS DEPARTMENT:THE ANTHOLOGY


ほかに聴いたアルバム

Here For It All/Mariah Carey

実に約7年ぶり、かなり久しぶりとなるマライア・キャリーのニューアルバム。ソウルやR&Bを軸に、楽曲によってはHIP HOPの要素も取り入れてポップにまとめあげた作風なのですが、その中で今回は80年代風を感じさせるような曲がチラホラあり、全体的にはちょっと懐かしさを感じさせるようなアルバムになっています。一方、タイトルチューンであるラスト「Here For It All」はいかにもマライアらしいバラードナンバーで締めくくり。ベテランの彼女らしい、しっかりとリスナーの壺をついた作品に仕上がっていました。

評価:★★★★

Mariah Carey 過去の作品
Memories Of An Imperfect Angel
Merry Christmas II You
Me.I Am Mariah...
Caution

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2025年12月 2日 (火)

貴重なRAGEのライブ音源

Title:Live On Tour 1993
Musician:RAGE AGAINST THE MACHINE

Ragelive1993

様々な言動が問題を呼び起こしているアメリカのトランプ大統領。人々が長い期間をかけて築いてきた自由、平等、公正の概念が崩れ落ちそうな危機的状況となっており、問題視されていますが、そんな中、音楽業界でその不在を残念に感じるのがRAGE AGAINST THE MACHINEの存在でしょう。その強い政治的メッセージが話題となり、ラップメタルのヘヴィーな音楽性と合わせて、特に90年代初頭に高い人気を誇りました。2000年に解散し、その後、2007年と2022年に再結成を果たすものの、2022年のライブ以降、解散状況となっており、トランプの大統領就任後も特に活動を再開させていません。

今回紹介するのは、そんなRAGE AGAINST THE MACHINEが1993年に行われたライブツアーの模様を収録したライブアルバム。4月のレコード・ストア・デイでアナログ盤がリリースされ、その後、9月に配信リリースされています。1993年というと、彼らのデビューアルバム「Rage Against The Machine」をリリースした直後のツアー。バンドとしてまだ若々しく、そして勢いのある時期のライブ音源がつめこまれています。

今回のライブ音源の特徴的な点は、ツアーの時の音源に全く手を加えられておらず、音源のミックス処理も行われていない、まさにそのままの状況で収録されているという点でしょう。楽曲がはじまる前の短いMCもそのまま収録。ライブ会場の音をそのまま詰め込んだ音となっており、当時のライブの模様がそのままパッケージされた音源となっています。

ちなみに収録曲は、デビューアルバムの曲を全曲、アルバムの曲順に収録した内容。音源も、1か所で収録されたものではなく、ワシントンやアトランタ、パリやミラノなど、このライブツアーで行われた音源をピックアップしたものとなっています。音源はそのまま収録している一方、ライブ会場については様々な場所のつまみ食いしているあたり、リアリティーという観点からはどうなのか、という点は気になるのですが、ただ、デビューアルバムの楽曲を、当時の演奏で聴けるという点では、貴重な音源と言えるでしょう。

そんな音源であるからこそ、迫力満点の演奏が実に魅力的。オリジナルと比べると、良くも悪くも荒々しさを感じますが、そんな荒々しさを含めてRAGE AGAINS THE MACHINEの、この頃のライブの魅力と言えるのでしょう。「Settle for Nothing」の焦燥感のあるザックのシャウトも、オリジナル以上に胸に響いてくるものがありますし、「Bullet In the Head」の冒頭に観客をアジるよるな短いMCもあるのもライブ音源ならではの魅力。アレンジ的にはオリジナルから大きく変化しているものはありませんが、ライブならではのRAGEの演奏を楽しめるライブアルバムとなっています。

ただ、ちょっと残念だったのが前述の通り、デビューアルバムの楽曲をデビューアルバムの曲順に並べたライブ盤であり、ある1か所のステージをそのまま収録した内容ではない、という点。個人的にはやはり、1つのステージを最初から最後までそのまま収録したライブ盤の方が、当日のライブの空気感もよくわかりますし、より、当時のRAGEのライブがどのようなものであったのか、理解できたような気がします。次は、是非、どこか1つのステージをそのまま収録したライブアルバムを聴いてみたいです。

RAGE AGAINST THE MACHINEの不在が非常に残念に感じる今の時代。是非、トランプ政権への抗議として、RAGEの歌を聴きたいところなのですが・・・。ただ、ザックは移民摘発を批判するTシャツなどの販売を手掛けているようですし、トム・モレロもロサンゼルスでのアメリカ移民関税執行局への抗議運動を展開している模様。ここらへんの活動はさすがだな、とも思いつつ、やはり音楽での活動も期待したいところです。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

Sysivalo/Ø

Sysivalo

2017年に急逝したフィンランドの電子音楽家MIKA VAINIOが、生前に制作途中だった作品をまとめて関係者により完成させた作品。私は彼の作品を聴くのがはじめてなのですが、Øとしての作品はいままでインダストリアルやノイズ的なヘヴィーな作品が多かったとか。しかし、遺作となったこの作品は、終始静かなアンビエント的な作品となっており、これが最期となることを悟っていたかのような作風となっています。ただ、所々でノイズやインダストリアルの要素が垣間見れるところがおもしろいところ。全体的に静かなアンビエントとなっているので、賛否はわかれそうな感じですが・・・。

評価:★★★★

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2025年12月 1日 (月)

アバンギャルドでありつつ、ポップスさも

Title:Getting Killed
Musician:Geese

Geese_getting_killed

アメリカのインディーロックバンド、Geeseの4枚目となるアルバム。以前、バンドのフロントマン、Cameron Winterのアルバム「Heavy Metal」が注目を集めて、本サイトでも取り上げたことがありますが、Geeseのアルバムを聴くのは今回が初めて。本作は各メディアでも高い評価を受け絶賛されていますが、そんな評判もあり、今回はじめてGeeseのアルバムを聴いてみました。

Geese自体はアートロックやエクスペリメンタルロックにカテゴライズされるように、基本的には実験性の高い音楽性が特徴的のバンド。実際、このアルバムでも実験的な要素は随所に見受けられます。まず冒頭の「Trinidad」から、最初、落ち着いた出だしから、途中、いきなりシャウトするボーカルや、ホーンも入ったアバンギャルドなサウンドに変化。複雑に展開する実験的な作品となっています。また、タイトルチューンである「Getting Killed」でも、ウクライナの合唱団の歌声がループしてサンプリングされているほか、トライバルなリズムが加えられていたり、ポストロック的なダイナミックなロックサウンドを聴かせてくれていたりと、かなり実験的な作風が特徴的となっています。

ただ、そんな挑戦的な作風を垣間見せつつ、アルバム全体としては、むしろどこか懐かしさや暖かみを感じさせる、広いリスナー層が楽しめるようなポップスさを兼ね備えた作品になっていたように感じました。

そんな暖かみを感じさせる大きな要素としては、分厚いバンドサウンドに加えて、トロンボーンやバイオリン、パーカッションのリズムを加えることにより、サウンドに暖かみを感じさせる点ではないでしょうか。例えば「100 Horses」では、分厚いバンドサウンドにアバンギャルドさを感じる一方、ピアノやトロンボーンの音色が加わることによって、どこか郷愁感も感じさせます。歌詞は戦争による死の恐怖をテーマとしたかなり重い題材のようですが、そんなテーマ性でありつつも聴きやすさも同時に感じさせる楽曲になっています。

ラストを飾る「Long Island City Here I Come」も印象的。バンドサウンドの構成の複雑さは、彼らのサウンドの実験的な側面を感じさせつつ、力強いトライバルなドラムのビートを前に押し出して、サウンドのにぎやかさとダンサナブルなビートによって、楽曲がその複雑さと反して、聴きやすさを感じさせる内容となっています。

また、楽曲の軸となる「歌」についてもポップでメランコリック。郷愁感ただようメロディーもまた、アルバムに聴きやすさを与えています。例えば「Half Real」もフォーキーな歌が印象的。ピアノを軸に置いたサウンドもあって、暖かみある聴きやすい作品と仕上がっています。まあ、歌詞の内容は自己の精神の不安定さを表現した内容ということなので、歌詞がわかる人にとっては、歌詞とメロのアンバランスさもユニークな要素なのでしょうが・・・。「Au Pays du Cocaine」も、フランス語で「コカインの国から」というタイトル通り、ちょっと幻想的な作風となっているのですが、こちらもメロディーラインについては、フォーキーで聴きやすいポップな曲調に仕上がっています。

このように、実験的な音楽性を構築しつつ、一方では賑やかなサウンドや郷愁感ただようメロディーラインでポップスさも確立しているバランス感覚は見事。歌詞の世界観も、死や精神世界などダークなものを題材としつつ、一方ではメロやサウンドは比較的明るさを感じさせる、このバランスの妙もまた魅力的に感じます。来年には来日公演も予定されていますが、チケットは売り切れ、追加公演も決定。日本でも徐々に注目を集めてきています。高い評価も納得の傑作アルバムで、年間ベストクラスの傑作です。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

TRON:Ares(Original Motion Picture Soundtrack)/NINE INCH NAILS

いままでNINのメンバーであるトレント・レズナーとアティカス・ロスの連名名義では映画のサントラ盤をリリースしてきましたが、NIN名義では初となるサントラ盤。映画のサントラということで、あくまでも劇伴らしい、ワンアイディア的な短い曲も収められている一方、アルバム全体としては、楽曲単独でも楽しめるような作品が目立ち、特にNINらしいインダストリアルの作品もありつつ、全体的には彼らとしては軽く、ただしっかりしたビートで楽しめるエレクトロチューンが並ぶアルバムとなっています。NINの新作としても十分楽しめる1枚でした。

評価:★★★★★

NINE INCH NAILS 過去の作品
GhostI-IV
THE SLIP
Hesitation Marks
Not The Actual Events
Add Violence
Bad Witch
Ghosts V:Together
Ghosts VI:Locusts

Takk...20the Anniversary Remaster/Sigur Rós

日本でも高い人気を誇るアイスランドのポストロックバンド、シガー・ロス。本作は、その彼らが2005年にリリースしたアルバム「Takk...」の20周年記念盤。同作のリマスターに、LP版と配信版では2005年にリリースされたEP「Sæglópur」収録曲と未発表曲を加えた、LPでは全3枚組というボリューミーな内容に仕上がっています。

同作はリアルタイムでも大きな評判を呼び、私もリアルタイムで聴いた1枚ですが、あらためて聴くと、独特の世界が今なお魅力的。ピアノやストリングスにバンドサウンドなどを加えた分厚いサウンドがドリーミーに展開し、静動メリハリのあるダイナミックなサウンドが大きな魅力。メランコリックなメロディーラインは郷愁感もあり胸をうつものもあります。20年前の作品ですが、今なお色あせない傑作。是非ともチェックしてほしい名盤です。

評価:★★★★★

Sigur Ros 過去の作品
Með Suð Í Eyrum Við Spilum Endalaust(残響)
valtari(ヴァルタリ~遠い鼓動)
KVEIKUR
Átta

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2025年11月29日 (土)

シンプルながらも奥行きのある作品

Title:Blurrr
Musician:Joanne Robertson

Blurrr

イギリス・グラスゴーを拠点に活動を行っているシンガーソングライターの新作。カルト的な人気を誇るシンガーだそうで、本作も各種メディアに非常に高い評価をもって受け入れられているそうです。音楽活動のほかに絵画制作も行っているそうで、本作も、そんな絵画制作と、また、子育ての合間に作成された作品だとか。ママさん、お疲れ様です・・・。

アルバムは、全体的にアコギ中心のフォーキーな作風で、ローファイ気味な曲調が特徴的。「Why Me」など、まさにアコースティックギターを聴かせつつ、フォーキーに聴かせるスタイルが印象的。中盤の「Peaceful」やラストを飾る「Last Hay」など、アコギで静かにつま弾きつつ、清涼感ある歌声を聴かせてくれる楽曲が並びます。

また、おなじくシンプルでフォーキーな作風でも、リバーブを使ってよりドリーミーな楽曲も目立ち、冒頭を飾る「Ghost」など、まさにシンプルなサウンドながらもドリーミーな雰囲気に仕上げていますし、「Friendly」なども同様。ダウナーなサウンドと合わせて、独特の世界観が構築されています。

さらに本作のもうひとつ大きな特徴が後半。後半ではチェロでOliver Coastsが参加。前半、アコギと歌だけだった本作に、チェロにより彩りを加えています。「Alwayes Were」は、まさにそんなチェロの音色により、スケール感あるサウンドが構築されていますし、「Grown」も、かなりラフな雰囲気でのギターのサウンドになっていますが、チェロの音色でエキゾチックな雰囲気の作風に。Oliver Coastsが参加したもう1曲「Doubt」も、フォーキーなギターに、チェロの音色を取り込んで、スケール感ある作品に仕上げています。

シンプルな作風ながらも、チェロを取り入れることでバラエティーを持たせた今回のアルバム。ただアルバム全体に共通するのは、あくまでもシンプルなサウンドがゆえに、ボーカルと近接感がある点が特徴的。要するに、プライベイトな部屋の中で、彼女がすぐ近くで歌っているような、そんな親密さが大きな魅力となっているように感じました。

シンプルなのに、いや、シンプルが故に、その歌声も含めて奥行きを感じさせるアルバム。正直、派手なメロディーはありませんし、ちょっととっつきにくい部分もあるかもしれませんが、聴けば聴くほどその魅力にはまっていってしまうタイプの作品だと思います。彼女の歌声に聴きほれた1枚でした。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

No Rain,No Flowers/The Black Keys

毎作、ルーツ志向のロックの作品をリリースし、特にオールドスタイルのロックが好きなリスナーからは多大な支持を集めるThe Black Keys。かなり活発な活動が目立ちますが、本作も前作からわずか1年4ヶ月というインターバルとなるニューアルバム。ただ、前作もオルタナ色の強いアルバムでしたが、今回のアルバムもルーツ志向のブルースロックを基調としながらも、ディスコやファンクも取り入れ、さらに全体的にポップの色合いが強いアルバムに。ロック好きとしては素直に気持ちよく感じる部分もある一方で、全体的には薄味になってしまった印象も強い作品。もうちょっとゴリゴリのルーツ志向のブルースロックに回帰してほしい印象も・・・。

評価:★★★★

The Black Keys 過去の作品
EL CAMINO
"Let's Rock"
Delta Kream
Dropout Boogie
Ohio Players

Tedeschi Trucks Band and Leon Russell Present:Mad Dogs&Englishmen Revisited Live at LOCKIN'/Tedeschi Trucks Band&Leon Russell

2015年にアメリカ・バージニア州で行われた、LOCKIN'フェスティバルの模様を収録したライブアルバム。1970年に行われた、ジョー・コッカ&レオン・ラッセルによるツアー「マッド・ドッグス&イングリッシュメン」の45周年を記念して行われたトリビュートライブ。10年前のライブ音源となりますが、レオン・ラッセルが2016年に鬼籍に入ったため、今となっては非常に貴重なライブ音源に。基本的にはブルージーなライブなのですが、ゴスペル風のコーラスが入ったり、ホーンセッションやピアノでアップテンポなセッションが繰り広げられたり、様々なサウンドで賑やかなステージを見せてくれています。会場全体が楽しそうな雰囲気につつまれているライブ音源でした。

評価:★★★★

TEDESCHI TRUCKS BAND 過去の作品
Revelator
MADE UP MIND
Let Me Get By
Signs
I Am The Moon:Ⅰ.Cresent
I Am The Moon:Ⅱ.Ascension
I Am The Moon: III. The Fall
I Am The Moon:Ⅳ.Farewell 

Leon Russell 過去の作品
The Union(Elton John&Leon Russell)
On a Distant Shore(ラスト・レコーディング~彼方の岸辺で)

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2025年11月22日 (土)

前作以上にバラエティー豊富に

Title:Bleeds
Musician:Wednesday

アメリカ・ノースキャロライナを拠点とするインディーロックバンドによる6枚目のアルバム。ギタリストのMJ Lendermanのソロアルバムが注目を集め、さらにバンドとしても前作「Rat Saw God」が高い評価を受け、大きな注目を集めるなど、現在、最も注目されているロックバンドの一組となっています。特に、シューゲイザーにカントリーを合わせた音楽性は、今のアメリカのロックシーンの一つの流れとなっているようで、注目を集めているようです。

今回のアルバムも1曲目「Reality TV Argument Bleeds」では、いかにもシューゲイザー直系の歪んだギターサウンドが鳴り響き、ダイナミックな楽曲を聴かせる、いかにもWednesdayらしい作品からスタート。続く「Townies」も、カントリーの影響を受けたような郷愁感を覚えるメロディーラインに、シューゲイザー直系のノイジーなギターサウンドが特徴的。こちらも、いかにもWednesdayらしい作品と言えるでしょう。先行シングルともなっている3曲目の「Wound Up here(By Holdin On)」も、歪んだギターノイズの洪水の中、メランコリックな歌が流れる、ポップながらもバンドのダイナミズムを感じる作品となっています。

そんないかにもシューゲイザー直系の彼ららしい作品が冒頭に並びつつ、今回のアルバムはいままで以上にバラエティーが豊富な点が特徴的。特に、この3曲に続く「Elderberry Wine」はフォーキーな作風が特徴的で、これまでの3曲とはガラッと雰囲気が変わります。続く「Phish Pepsi」というユニークなタイトルなこの曲も、マーチ的なリズムが特徴的の、軽快な楽曲に。逆に「Wasp」はボーカルがシャウトする、パンキッシュな作風に仕上げていますし、「Carolina Murder Suicide」も、ピアノとギターノイズをバックに静かに聴かせる、ゴシックテイストの楽曲に。いままで以上にバラエティーの富んだ作風が展開されていきます。

ただ、バラエティー富んだ、といってもギターノイズを中心としたダイナミックなバンドサウンドや、フォークやカントリーの影響を受けた郷愁感のあるメロという主軸は変わらず。そのため、バリエーションがあってもアルバムとしてはしっかりとした統一感も覚えます。カントリーパートとグランジパートが交錯するような「Pick Up That Knife」などは、まさに彼ららしい作風と言えますし、オルタナ色が強いポップなギターロックを聴かせる「Bitter Everyday」など、バラエティー富んだ作風の中でもしっかりWednesdayらしい作品も多く収録されています。

また、歌詞も特徴的で、彼らの出身地であるアメリカ南部を舞台として、物語性・寓話性ある歌詞となっているそうです。ただ、日本語の訳詞を読んでも、寓話的な内容なゆえに、正直、わかりにくかったのですが・・・。ただ、例えば「Townies」では、郊外での閉塞感を歌っていたりするそうで、ここらへん、日本もアメリカも、田舎の状況はあまり変わらないんだな、ということを感じたりします。

前作も申し分ない傑作だったのですが、今回も前作に引き続き、年間ベストクラスの傑作アルバムだったと思います。シューゲイザー好き、グランジロック好きからカントリーやフォークが好きな方まで楽しめる作品です。

評価:★★★★★

Wednesday 過去の作品
Rat Saw God


ほかに聴いたアルバム

Who Is The Sky?/David Byrne

元トーキング・ヘッズのデヴィット・バーンによる約7年ぶりのニューアルバム。ソウル、キューバ風なリズムやオーケストラ風なサウンドなど、多彩なサウンドを用いてポップにまとめあげているアルバムで、ある意味、トーキング・ヘッズから変わらない挑戦心も感じさせる作風に。ただ、このバラエティー富んだ作風が若干雑多にも感じられ、上手くまとめあげられていない印象も。楽しくポップなアルバムであることは間違いないと思うのですが。

評価:★★★★

David Byrne 過去の作品
Here Lies Love(David Byrne&Fatboy Slim)
American Utopia

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2025年11月21日 (金)

ヴィンテージなソウルサウンドに多文化なミュージシャンが参加

Title:24 Hr Sports
Musician:El Michels Affair

音楽プロデューサーとして活躍し、数多くの良質なソウルミュージシャンを要するレーベルBIG CROWN RECORDSの中心人物として注目されるレオン・ミッチェルズ率いるソウルバンドEl Michels Affairの5枚目のアルバム。レオン・ミッチェルズは、数多くのグラミー賞作品にも関与するなど、現在、最も注目されるプロデューサーの一人で、彼が率いるEl Michels Affairも大きな注目を集めるバンドとなっています。

このBIG CROWN RECORDSというレーベル自体、レトロなソウルミュージシャンを擁するレーベルのようですが、El Michelas Affairも、60年代70年代のソウルやファンクの影響をストレートに反映された、いわばヴィンテージ・ソウルのサウンドを奏でるバンド。力強いドラムとホーンセッションでマーチ風な「Drumline」からスタート。トランペット奏者Dave Guyを迎えた「Oakley's Car Wash」では、懐かしいソウル風のメロウなナンバーを聴かせてくれていますし、アメリカの女性シンガーClairoを迎えた「Anticipate」も清涼感あるメロウなボーカルが魅力的な歌モノのR&Bチューン。さらに「Carry Me Away」ではノラ・ジョーンズがゲストボーカルとして参加。メロウな歌声を聴かせてくれる、レトロなソウルナンバーを展開しています。

このノラ・ジョーンズをはじめ、El Michels Affairはいままでインスト曲がメインだったのですが、今回は歌モノの楽曲が多く収録されている点が大きな特徴となっています。そして、今回のアルバムでもうひとつ大きなポイントとなっているのが、アメリカのソウルミュージックの影響をダイレクトに反映させたアルバムながらも、アメリカ以外のミュージシャンが数多く参加した多文化的な作品という点。「Mágica」で参加しているRogêはロサンジェルス在住のブラジル人ミュージシャン。基本的にメロウなソウルチューンながらもブラジル音楽の要素も。また、「Say Goodbye」に参加しているFlorence Adooniはガーナ人の女性シンガー。こちらもトライバルな要素が加わっています。

さらに今回のアルバム、日本人も関与しており、まず「Clean The Line」では杉並児童合唱団が参加。メロウでソウルなトラックをバックに、清涼感ある日本語の歌を聴かせてくれています。さらに「Indifference」では坂本慎太郎が参加。彼のボーカルをしっかり聴かせてくれる上、メロウながらも浮遊感あるサウンドは、坂本慎太郎色も強く感じさせる曲になっています。いずれの曲も日本語を前面に押し出している曲になっているので、聴き進める中、いきなり日本語の曲があらわれてビックリするのですが、おそらくアメリカ人などにとっては、日本語の曲がエキゾチックに感じるんでしょうね・・・。

そんな多文化の要素を入れつつ、全体的にヴィンテージなソウルを聴かせてくれる本作なのですが、一方で1曲1曲をピックアップすると、ちょっとインパクトが薄く感じられてしまう点がマイナス要素にも感じられました。El Micheals Affairは、楽曲にストリングスやバンドサウンドを取り入れた作風が特徴で、シネマティックソウルバンドという呼ばれ方もしているそうです。そのため、このアルバムもどこか映画のサントラのような、あくまでも映画で使われることを前提として、楽曲単体のインパクトはちょっと薄い、そんな印象を感じる部分がありました。

そういう点が気になったため、正直4つと迷ったのですが・・・それでもやはりグルーヴィーなソウルサウンドが非常に心地よく、下記のような評価に。また、坂本慎太郎参加曲は、間違いなく彼のファンなら必聴の1曲。60年代70年代ソウルが好きなら、間違いなく気に入る1枚だと思います。

評価:★★★★★

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