圧倒的にポップ
Title:The Singles-The First Fifty Years
Musician:ABBA
日本でも高い人気を誇るポップミュージシャンABBA。2018年に再結成し、約40年ぶりとなるアルバムをリリースし、大きな話題となったことも記憶に新しいのではないでしょうか。本作は、このたびリリースされた、ABBAのシングルコレクション。1982年にリリースされたシングル集「The Singles - The First Ten Years」の拡張版的な作品で、CDでは2枚組全38曲が収録。楽曲はほぼリリース順となっており、ABBAの歩みも知ることのできるアルバムとなっています。
まずなかなか興味深いのが彼女たちの初期の作品。後のヒット曲のような突き抜けるような爽快さと、都会的なサウンドはなく、最初期の作品については、むしろカントリーやフォークの色合いが強いポップス。女性のツインボーカルについても生かし切れておらず、どこか田舎っぽい野暮ったさも感じさせます。
そして、リリース順という流れで彼女たちのシングル曲を聴くと、彼女たちの代表曲であり、ブレイクのきっかけとなった「Waterloo」のあまりの変化に驚かされます。確かに、それ以前のシングルにも、ABBAらしいポップセンスを感じることは可能です。ただ、この曲で楽曲の雰囲気が大きく変化。例えるならば、田舎から都会に引っ越してきた、野暮ったい田舎の女の子が、化粧を覚えて一気にあか抜け、都会的な美少女にいきなり変身したような・・・そんな大きな変化を感じさせます。
その後の名曲の数々は言うまでもないでしょう。「Mamma Mia」「Dancing Queen」「Gimme!Gimme!Gimme!(A Man After Midnight)」など、私は特にABBAのファンでもなければ、リアルタイムで彼女たちの音楽を聴いていた訳でもないですが、容易に口ずさめる、どこかで確実に聴いたことのあるポップソングが並びます。この「聞いたことのある楽曲」の多さに、今回のシングス集を聴いてあらためて驚かされます。それだけABBAの曲が多くの人たちに親しまれていた、ということなのでしょう。
また、今回のABBAのシングル集を聴いてあらためて感じたのは、ABBAの曲の、ポップスとしての強度の強さでした。今回のシングル集は、全38曲2時間半弱という、かなりのボリュームの内容です。特にABBAのファンでもない私にとっては、代表曲以外や、直近アルバム「Voyage」収録曲以外ははじめて聴く曲ばかりでした。しかし、はじめて聴いたにも関わらず、飽きずにしっかりと楽しめる曲ばかり。かなりボリューミーな内容ながらも、最後までほとんどダレることなく、アルバムを楽しむことが出来ました。
このインパクトのあるポップなメロは、80年代になってABBAの人気が下火になっても健在で、例えば「The Day Before You Came」などは、全英チャートで32位に留まったのですが、爽やかながらも切ないメロは健在。続く「Under Attack」も、全英チャートで26位に留まったものの、こちらも、ちょっと切ないメロが耳を惹き、しっかりと聴き終わった後に印象に残るポップスとなっています。
このシングル集を聴いてあらためて感じたのがABBAの楽曲が圧倒的にポップであるという点。ABBAの楽曲については、人気の面でも評価の面でも時代を通じて紆余曲折があったようですが、この圧倒的なポップスさの前には、どんな音楽リスナーもひれ伏すしかないのではないでしょうか。だかこそ時代を超えて、今の時代はようやくABBAがポップスミュージシャンとして高く評価されるようになったのでしょう。あらためてポップミュージシャンとしてのABBAのすごみを感じたシングル集でした。
評価:★★★★★
ABBA 過去の作品
Voyage
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