アルバムレビュー(洋楽)2024年

2024年4月15日 (月)

夢のタッグ

Title:Liam Gallagher & John Squire
Musician:Liam Gallagher & John Squire

最近ではソロミュージシャンとしても人気を獲得し、2022年にはoasis以来となるネプワースでのライブも成功させたリアム・ギャラガー。そんな彼の新作は、なんと、元ザ・ストーン・ローゼズのジョン・スクワイアとタッグ。マッドチェスターの中心的な存在で、もちろん、oasisにも大きな影響を与えたバンド、ザ・ストーン・ローゼズとタッグは、まさに文字通り「夢のコラボ」といって良いでしょう。ネプワースでのライブにジョン・スクワイアが飛び入りで参加するなど、両者は交流を深め、今回のタッグに至ったそうです。

そんな大物同士のタッグとなった本作。ともすればこういう大物同士のタッグはお互いの個性がぶつかりあった結果、チグハグな結果を出すことが多いのですが、これがジョン・スクワイアの書く曲にリアム・ギャラガーがピッタリとマッチ。もともとリアム自体、ローゼズに影響を受けていたこともあったのでしょうが、両者の相性の良さを感じさせる名曲が並んでいました。

冒頭を飾る「Raise Your Hands」は、まず王道とも言えるギターロックの作品。軽快で疾走感あるバンドサウンドとポップなメロディーが心地よく、ある意味、非常に素直さを感じます。続く「Mars To Liverpool」は美メロと称してもよいようなメロディアスでポップなメロディーラインが心地よいナンバーに。さらに「I'm A Wheel」は非常に力強いブルースギターを聴かせるブルースロックのナンバー。oasisでもソロでもここまでブルースに寄った作品は珍しいのですが、それでもリアムのボーカルはしっかりとマッチしています。

そして中盤に位置するのが先行シングルともなっている「Just Another Rainbow」。ミディアムテンポのグルーヴィーでサイケな作風は、まさにザ・ストーン・ローゼズを彷彿とさせるようなナンバーで、こちらもリアム・ギャラガーのちょっと気だるいボーカルにもマッチしています。いかにもoasis+THE STONE ROSESといった感じの曲で、この曲を先行シングルとして理由がよくわかります。

続く「Love You Forever」は力強いギターリフが、70年代を彷彿とさせるようなハードロックナンバー。かと思えば次の「Make It Up As You Go Along」はメランコリックで爽やかな、ポップなメロを聴かせる楽曲に。ここらへんのバラエティー富んだ展開も楽しいところ。そしてラストを飾る「Mother Nature's Song」も、ちょっとビートルズを彷彿とさせる懐かしくもメランコリックなメロを聴かせるギターロックのナンバー。ある意味、こちらはoasis以降のリアムの嗜好を感じさせる楽曲で締めくくられています。

個人的に、oasis解散後のリアムソロ作の中で、本作が一番ピンと来た作品になっていました。確かに、ここ最近のリアムソロ作は高い評価を受けて、それに従って人気の面も復活してきています。ただ、個人的にはoasis時代についたリアムのイメージに沿ったような「いかにも」な楽曲が多く、またそれゆえにやはりノエル曲と比べてしまうと・・・と感じてしまっていました。しかし今回の作品は、ジョン・スクワイアという、見方によってはノエル以上の伝説を持つソングライターを抱えています。その結果として、変にoasis時代のリアムに寄せようとすることなく、自然体でリアムのボーカルにもマッチした曲が聴けたように思います。またリアムについても、変に気負うことなく、ジョン・スクワイアの書いた曲に身をゆだねるように、自然体なボーカルスタイルで聴くことが出来ました。

個人的には年間ベストクラスの傑作にも思う本作。リアムのボーカルをしっかり堪能しつつ、ポップでグルーヴィーな楽曲を楽しむことが出来た傑作になっていました。oasisやローゼズのファンなら間違いなく要チェックの作品です。

評価:★★★★★

Liam Gallagher 過去の作品
AS YOU WERE
Why Me?Why not.
Acoustic Sessions
MTV Unplugged(Live At Hull City Hall)
Down by the River Thames
C'MON YOU KNOW
Knebworth 22

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2024年4月 6日 (土)

懐かしさを感じさせる音楽

Title:The Past Is Still Alive
Musician:Hurray for The Riff Raff

アメリカ・ニューオリンズを拠点として活動を続ける女性シンガーソングライターAlynda Segarraによるソロプロジェクト、Hurray for The Riff Raffの約2年ぶりとなるアルバム。彼女のアルバムを聴くのは前作「LIFE ON EARTH」に続く2作目となります。前作でも書いたのですが、彼女はこのプロジェクトをアメリカーナ(=アメリカのルーツ音楽)のプロジェクトと位置付けているとか。前回のアルバムでも比較的シンプルなサウンドの楽曲が並んでいましたが、今回のアルバムは前作以上にシンプル。さらに言えばフォーキーな楽曲が並ぶ作品となっています。

さて、彼女の音楽は上にも書いた通り、アメリカのルーツ音楽をたどるような作品となっています。特にアメリカ人にとって、心のふるさとを感じさせるような楽曲が多いのでしょう。ただ同時に、私たち日本人にとっても、聴いていてどこか懐かしく、ホッとできるような作品が多かったように印象を受けました。

そんなことを感じた第一の理由が、アルバムを聴き始めてすぐに訪れます。1曲目「Alibi」のイントロのギターの音色から、聴いていてどこか懐かしさを感じますし、直ぐにはじまる彼女の歌も、暖かく懐かしさを感じさせます。続く「Buffalo」はアコギでしんみり聴かせるフォークの楽曲なのですが、こちらもメランコリックなメロディーラインが郷愁感を覚える作品となっています。

基本的にはその後も、アコースティック色の強いシンプルなアレンジの、フォーキーな楽曲が続きます。3曲目「Hawkmoon」以降の中盤はバンドサウンドを押し出した、比較的「ロック」な作品が並ぶのですが、7曲目「Hourglass」以降の後半は、再びアコースティックなサウンドをバックにメランコリックに聴かせるフォーキーな作品が並び、その優しさにあふれる歌にしんみりと聴き入るような楽曲が並んでいます。

率直に言ってバラエティーという観点で言えば、前作以上にシンプルで似たようなタイプの曲が並ぶアルバムになっていました。ただ、メロディーラインはどこか懐かしく、暖かさを感じる歌声がとても魅力的。そのため最後まで全く飽きることなく、その歌に魅了されるアルバムになっていました。「古き良きアメリカ」が彼女のひとつのテーマなのでしょうが、私たちにとっても懐かしさを感じさせる本作。もちろん、同じ人間として、同じような音やメロに同じような郷愁感を抱くというのもあるのですが、ただ、昔からこういうアメリカ由来の音楽に慣れ親しんでいるから、というのも大きな理由な感じもします。それはともかく、広い層の方が楽しめるアルバムだと思います。素直なポップソングが聴きたい方、フォークロックが好きな方には是非ともお勧めしたいアルバムです。

評価:★★★★★

Hurray for The Riff Raff 過去の作品
LIFE ON EARTH

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2024年4月 5日 (金)

懐かしさを感じられるシンプルなメロディーが魅力的

Title:Loss of Life
Musician:MGMT

アメリカはブルックリン出身のロックバンドMGMT。2007年にリリースされたアルバム「Oracular Spectacular」が高い評価を受け、続くアルバム「Congratulations」がビルボードチャートで2位を獲得する大ヒットを記録。ただ、その後は徐々に人気も落ち着き、バンドも一時、活動休止に。その後、活動再開を経て、本作や約6年ぶり。少々久々となるニューアルバムのリリースとなりました。

インディーロックバンドとして高い評価を受ける彼ら。そのバラエティー富んだ、凝ったサウンドが大きな特徴であり魅力。ただ、加えて彼らの最大の魅力なのは、シンプルで、どこか懐かしさも感じられるポップなメロディーラインでしょう。今回のアルバムも、まず先行シングルにもなっている「Mother Nature」がまず素晴らしい。ちょっと切なさを感じさせる美しいメロディーラインが耳を惹くナンバー。イントロ的な1曲目「Loss of Life(part2)」に続き、この曲がはじまると、グッとアルバムに耳が惹きつけられ、そしてその美しいメロディーに強く魅了されます。

続く「Dancing In Babylon」はフランスの女性シンガーソングライター、エロイーズ・ルティシエによるソロプロジェクトChristine and the Queensをヒューチャーした作品。こちらも男女デゥオのボーカルを上手くいかしたポップなメロディーラインが耳を惹きます。「Nothing To Declare」も、胸がキュンとなるようなフォーキーなメロディーラインが大きな魅力。そのほかの曲も全体的に、美メロと称されるようなポップなメロが魅力的な楽曲が並んでいました。

その美しいメロディーラインを彩るのが、ドリーミーさを感じられるサイケな要素も加わったバンドサウンド。前述の「Mother Nature」も、中盤からノイジーなギターサウンドでダイナミックに聴かせてくれますし、カントリーロック風の「Bubblegum Dog」もダイナミックなメロディーラインをベースとしつつ、様々な音をサンプリングし、分厚いサウンドが魅力的。「Phradie's Song」もフォーキーなメロを彩るサイケでドリーミーなエレクトロサウンドが魅力的ですし、終盤の「I Wish I Was Joking」もドリーミーなエレクトロサウンドに彩られたメランコリックなポップチューンに仕上がっています。

基本的にメロディアスでポップなメロディーとダイナミックさも感じさせるバンドサウンドという組み合わせで、シンプルなギターロック、かと思いきや、ところどころに覗かせるドリーミーでサイケなサウンドが彼らの個性となっており、大きな魅力ともなっている本作。一時期はかなりサイケ寄りにシフトしたものの、活動再開後の前作「Little Dark Age」はポップ寄りに再びシフト。今回のアルバムも、前作同様、比較的ポップ寄りで、いい意味で聴きやすいアルバムに仕上がっていたと思います。前作に引き続き、ポピュラーミュージシャンとしての彼らの魅力を感じさせる傑作でした。

評価:★★★★★

MGMT 過去の作品
Oracular Spectacular
CONGRATULATIONS
MGMT
Little Dark Age

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2024年3月31日 (日)

バンドのさらなる成長を感じさせる1枚

Title:TANGK
Musician:IDLES

イギリスのポストパンクバンドIDLESの約2年3ヶ月ぶりのニューアルバム。前作「Crawl」はグラミー賞にノミネート。日本でも徐々に知名度が上がってくるなど、世界的な注目も高まってきています。本作は本国イギリスの公式チャートで2作ぶりの1位を獲得するなど、現在、最も勢いのあるロックバンドのひとつと言えるでしょう。

IDLESの魅力と言えば、まずはダイナミックなバンドサウンド。今回のアルバムでも「Gift Horse」「Jungle」など、分厚く力強いバンドサウンドが耳に押し寄せるような彼ららしい楽曲も目立ちます。先行シングルでもある「Dancer」でもLCDサウンドシステムのジェームス・マーフィーとナンシー・ワンが参加。かなり賑やかなボーカルラインが加わった勢いのある楽曲となっています。

一方、前々作「Ultra Mono」までは、楽曲の方向性については若干一本調子。勢いで最後まで押し切るようなアルバムになっていました。もちろん、その勢いだけで十分楽しめる傑作ではあったものの、前作「Crawer」では音楽的なバリエーションが一気に増え、グッと奥行きの増したアルバムに仕上がっていました。

そして今回のアルバム。前作にも増してバリエーションに富んだアルバムとなっており、バンドとしてのさらなる成長を感じさせる作品となっています。1曲目「IDEA 01」はピアノでフリーキーな曲風に、ハイトーン気味でメロウに聴かせるボーカルの曲からスタートし、正直、ちょっとビックリさせられます。「POP POP POP」もヘヴィーなサウンドが流れつつも、リズムは軽快でリズミカルなビートになっており、一風変わったIDLESを聴かせてくれますし、折り返し地点である「A Gospel」も、エレピとサイケなサウンドで荘厳に聴かせるような、ポストパンクというイメージからはちょっと離れるような曲調になっています。

後半も「Hall&Oates」などは、タイトルからはちょっとイメージし難い、ガレージ色の強い作風に。ラストを締めくくる「Monolith」もゆっくりとヘヴィーなギターが入りつつ、ゆっくりと静かに聴かせるナンバーに仕上がっています。最後はジャジーなサックスで締めくくり。いままでのIDLESとは一風異なった終わり方となっています。

いままでと比べると、一気に楽曲のバリエーションが増して、バンドとしての成長を感じさせるアルバム。それと同時に、いままでのIDLESらしい楽曲もきちんと多く収録されており、いままでのIDLESを期待するような層も十分満足させることが出来る、ある意味、理想的とも言える作品だったと思います。文句なしの傑作アルバムでした。

評価:★★★★★

IDLES 過去の作品
Joy as an Act of Resistance
Ultra Mono
CRAWLER

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2024年3月30日 (土)

さらに自由になったソロ2枚目

Title:What Now
Musician:Brittany Howard

現在、活動休止中のロックバンド、Alabama Shakesのボーカリストとして高い評価を集めたBrittany Howardの2作目となるニューアルバム。2021年のグラミー賞では、ソロとしてベスト・ロック・ソング部門を受賞。ソロとしても着実にキャリアを伸ばしている彼女ですが、最新アルバムも前作に引き続きの傑作アルバムとなっていました。

前作「Jaime」ではキーボードに、かのロバート・クラスパーが参加。ロックバンドであるAlabama Shakesと比べると、若干ジャズ寄りのサウンドになっている点が大きな特徴でした。今回のアルバムでも、ドラムにはもともとジャズミュージシャン畑であるネイト・スミスを起用。数多くのミュージシャンのセッション・ミュージシャンとして名を高めている彼ですが、ジャズをベースに様々なジャンルのミュージシャンとコラボを行っています。

実際、今回のアルバムは前作のようなジャズ寄りというひとつの方向性を示すものではなく、ソウルやロックなど、比較的Alabama Shakesを含め、いままでの彼女の活動で顔を覗かしていたような音楽を詰め込んだようなアルバムに仕上がっています。例えば「Earth Sign」「To Be Still」のようなメロウなボーカルを聴かせるソウル風の楽曲もあったり、「Samson」のようにムーディーでジャジーな楽曲があったりします。さらにタイトルチューンとなっている「What Now」はバンドサウンドでファンキーに聴かせてくれるロックテイストの強いナンバーですし、「Power To Undo」も同じくファンキーなビートに彼女の力強いシャウトも印象的な、ロッキンなナンバーとなっています。

特に異色的とも言えるのが「Prove It To You」で、四つ打ちのビートで疾走感あるダンスチューンとなっており、アルバムの中でもひとつのインパクトとなっています。またラスト「Every Color In Blue」はフリーキーなサックスが流れるナンバーに。ダイナミックなサウンドでアルバムは締めくくられています。

前作であえてジャズ寄りにシフトした、という点はおそらくAlabama Shakesとしての活動と差別化するためだったと思われます。今回のアルバムに関しては、Alabama Shakesの活動休止が長くなってしまっている中、あえてAlabama Shakesとの差を意識しないで、なおかつ彼女の演りたい音楽を演りたいように演っていた、そんなアルバムにも感じました。

もちろん今回のアルバムでもBrittany Howardのボーカルは大きな魅力。前作と同じくパワフルなボーカルをこれでもかと聴かせる、というよりもやさしく包容力あるボーカルで歌い上げているという印象を受けるボーカルで、彼女の表現力がより魅力的に感じられる曲が並んでいました。

前作に引き続き、年間ベストクラスの傑作アルバムだったと思います。次はそろそろAlabama Shakesとしての活動を再開してほしい、とも感じてしまうのですが・・・。ただ、ソロ作はソロ作で魅力あふれる作品だと思います。彼女の魅力を存分に感じられる1枚でした。

評価:★★★★★

Brittany Howard 過去の作品
Jaime


ほかに聴いたアルバム

What Do We Do Now/J Mascis

Dinosaur Jr.のボーカリスト、J Mascisによるソロアルバム。楽曲はかなりシンプルかつストレートなオルタナ系ギターロック。分厚いバンドサウンドをバックに、ミディアムチューンでメランコリックな曲調の曲が多く、彼も既に58歳。すっかりベテランのシンガーなだけに、勢いよりも聴かせるタイプの曲が多いように感じる反面、ノイジーなギターロックは、オルタナ系の王道といった感じなれど、若々しさも感じさせます。目新しさはないのですが、安心して聴けるギターロックのアルバムです。

評価:★★★★

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2024年3月26日 (火)

あえてブラジル音楽から距離を置いた2作

今回紹介するのは、ブラジルのリオデジャネイロ出身ながら、現在はロサンゼルスを中心に活動をしているギタリスト、Fabiano do Nascimento。ブラジル出身の彼ながら、ブラジル音楽の枠組みに捕らわれない幅広い音楽性で注目を集めるミュージシャンだとか。その彼が、昨年から今年にかけて2枚のアルバムをリリースしています。

Title:The Room
Musician:Fabiano do Nascimento&Sam Gendel

まずこちらは、Fabiano do Nascimentoと、サックス奏者でプロデューサーとしても有名なSam Gendelのコラボによる新作。ってか、またSam Gendelかよ!当サイトでも何度か取り上げていますが、気が付くとニューアルバムをリリースしており、そのワーカホリックぶりが目立ちます。調べると、2023年はソロ名義のオリジナルを2作、2022年はソロ名義のオリジナル3作+コラボ1作、2021年はオリジナル2作+コラボ4作・・・。3月時点ではまだリリースしているのがこのコラボ1作のみのようですが、今年は何枚のアルバムをリリースするのでしょうか・・・。

ただ、作品としては非常にシンプル。使われているのはFabiano do Nascimentoの奏でるギターと、Sam Gendelの奏でる楽器のみ。このSam Gendelの奏でる楽器は、パッと聴いた感じ、フルートに聴こえるのですが、ソプラノサックスらしいです。そういわれると、フルートよりも木管楽器独特の暖かみを感じられるように思います。

アルバムは最初から最後まで徹底してこの2つの楽器でシンプルな音色を奏でている点がおもしろいところ。ただ、哀愁感たっぷりのメロディーラインは非常に胸をうたれ、インパクトがあります。まず印象的なのは「Astral Flowers」。最初のアコギのアルペジオも印象的ですが、サックスの音色には郷愁感あふれて思わず聴き入ってしまいます。

そして中盤の「Txera」も印象的。前半のサックスのメロディーとリズムは、どこか日本の民謡を彷彿とさせますし、その後あらわれるメロディーラインも、どこか懐かしさと暖かみが感じられます。日本人にとって非常に琴線に触れるような楽曲となっています。

シンプルだからこそ、その音色とメロディーラインに聴き入ってしまう傑作。Fabiano do Nascimentoのギターの音色も素晴らしかったですし、あれだけハードワーカーにも関わらず、このクオリティーを維持し続けるSam Gendelにも驚かされます・・・。郷愁感あるギターの音色は、どこかブラジル音楽からの影響を感じさせつつ、単純なブラジル音楽とも異なる点が魅力的な作品でした。

評価:★★★★★

Title:Mundo Solo
Musician:Fabiano do Nascimento

で、こちらはFabiano do Nascimentoのソロ名義での作品。で、こちら非常にユニークなのはソロといいつつ、ギターのソロインストではなく、コラボ作の「The Room」よりもずっと音数が多い点。1曲目「Abertura」ではギターのみではなくストリングスの音色が入っていますし、続く「Curumim 2」ではいきなりエレクトロのナンバーとなっています。

なんでも、基本的に一部、ゲスト奏者が参加しつつ、全ての楽器を自らの手で奏でる作品となっているそうで、あえて様々な楽器が入っているのが特徴的。「Agua de Estellas」ではマラカス的な音が入っていて、ちょっとトライバルな雰囲気が入っていたり、「Bari」ではドリーミーなギターやシンセの音色でスペーシーな雰囲気に仕上げていたりとユニーク。全体的にギターの音色にエレクトロサウンドを組み入れてドリーミーにまとめあげる楽曲が多く、メランコリックなギターの音色は上記「The Room」と共通項はあるものの、サウンドの面では、かなり異なる構成のアルバムになっています。

おそらくレコード会社からの宣伝文句だと思うのですが、このアルバムの紹介文として「国家主義的な傾向を拒否しすることで特定の音楽言語に偏ることを避け、自身の音楽的ルーツのすべてを表現するというエルメート・パスコアルが提唱する"ユニバーサル・ミュージック"のコンセプトを継承しつつ、ありとあらゆる楽器をマスターすることによって真の自由を獲得している」と書かれた紹介サイトが多く見受けられます。確かに「The Room」以上にブラジル音楽の影響は薄く、また、いい意味で様々なジャンルの影響が垣間見れるサウンドとなっています。ここらへんは、あえてルーツレスにすることで、特定の国の音楽に偏向することを避けているということなのでしょう。彼しか奏でられない独特の音色が楽しめるアルバムになっていたと思います。

「The Room」もそうですが、リオデジャネイロ出身であり、ブラジル音楽の影響を感じさせつつも、あえてブラジルから距離を置いたような音楽性が特徴的でもあり、かつ魅力的でもありました。ルーツレスな彼の音楽なだけに、様々なルーツを持つ人たちが楽しめそうな、そんなアルバムだったと思います。どちらも傑作です。

評価:★★★★★

Sam Gendel 過去の作品
Satin Doll
AE-30
Superstore
blueblueblue
AUDIOBOOK


ほかに聴いたアルバム

PHASOR/Helado Negro

アメリカ・フロリダ出身のシンガーソングライター、Helado Negroのニューアルバム。メロウなソウルベースのポップミュージックで、美メロとも言える聴かせる歌が魅力的。その一方、ソウルをベースにボッサやフレンチ、ロックやエレクトロ、サイケやフリーキーな要素まで加味したバラエティー富んだ自由な音楽性が大きな魅力。ただ、雑多な音楽性を持ちながらも、フォーキーさも感じさせる暖かい歌が軸となっているため、アルバムには不思議と統一感も覚えます。癖は感じつつも非常に魅力的なポップソングでした。

評価:★★★★★

Helado Negro 過去の作品
This Is How You Smile

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2024年3月25日 (月)

バラエティー富んだサウンドを聴かせるWarp初のHIP HOPミュージシャン

Title:Quaranta
Musician:Danny Brown

昨年リリースしたJPEGMAFIAとのコラボ作「SCARING THE HOES」も高い評価を得た、アメリカはデトロイト出身のラッパー、Danny Brown。その話題となったコラボ作からわずか8ヶ月のインターバルで、今度はDanny Brown単独名義でのアルバムをリリースしてきました。コラボ作「SCARING THE HOES」も傑作アルバムでしたが、今回のアルバムも、そのコラボ作に勝るとも劣らない傑作アルバムに仕上がっていました。

全体的に重低音を効かせるようなトラックに、メランコリックなフロウがのっかかるようなスタイル。メランコリックさを感じるサウンドは、ムーディーでもあり、どこかくすんだ感じが、大人な雰囲気を醸し出しています。なにげに彼自身、既に42歳というキャリアのあるラッパーで、それゆえに大人な落ち着きのある雰囲気が楽曲にも反映されているのでしょうか。そのスタイル自体、非常に聴きやすい印象を受けるのですが、それに加えて様々なサウンドを用いて、バリエーションあるサウンドを聴かせてくれる点が特徴的でもありました。

特に前半に関しては、哀愁感たっぷりのトラックを前面に押し出したタイトルチューン「Quaranta」からスタートし、ダイナミックなギターリフが展開されるロッキンな「Tantor」、重低音のビートを押し出した「Ain't My Concern」、ハイトーンのラップがどこかコミカルな「Dark Sword Angel」と、特にアルバム前半にはバリエーションの富んだ曲が並びます。

後半は、MVが先行公開された「Jenn's Teriffic Vacation」からスタート。メランコリックなトラックに、ハイトーン気味のラップがどこかコミカルなのですが、故郷にあらたに立ち並ぶコーヒーショップや、家賃の高騰などの富裕化、それに伴う格差に苦言を呈しているリリックも印象的。なんとなく今の日本でも起きつつある社会問題には、日本人にとっても共感を呼びそう。

その後の後半に関しては、メランコリックなトラックでゆっくり聴かせる楽曲が続きます。全体的に統一感のある構成となっており、バリエーションのあった前半とはちょっと異なる雰囲気の展開に。この展開については、レコードのA面B面を意識した構成になっているそうで、2部構成のような展開にもユニークさを感じます。

ちなみにDanny Brown、エレクトロミュージシャンのレーベルとして有名なWarpレコード初のHIP HOPミュージシャンだそうで、ただ、バラエティーのある自由度の高いトラックは、ある意味、Warpレコードの他のミュージシャンとも共通する要素も感じられます。また、そのためもあってか、HIP HOPというジャンルに限らず、広いリスナー層が楽しめそうな作品にもなっていたようにも感じます。サウンドに垣間見れる幅広い音楽性も魅力的な1枚でした。

評価:★★★★★

Danny Brown 過去の作品
SCARING THE HOES(JPEGMAFIA&Danny Brown)


ほかに聴いたアルバム

Natural Magick/Kula Shaker

90年代ブリットポップの代表的なロックバンド、クーラ・シェイカー。当初はわずか4年で解散してしまったのですが、2004年の再結成後は、休止期間もありつつバンド活動は続け、本作は約2年ぶりのアルバムに。さらに2022年にはオリジナルメンバーで再結成後は不参加だったオルガンのジェイ・ダーリントンがバンドに復帰し、本作はオリジナルの体制では実に約25年ぶりとなるアルバムとなっています。

それだけに、基本的にはクーラ・シェイカーらしいアルバムといったイメージ。軽快なギターロックを主軸としつつ、エキゾチックな要素も感じさせる音楽性が大きな魅力。ジャケットからして、彼らの音楽の影響としてよく語られるインドをモチーフとしたものとなっています。インド音楽的な要素はあくまでも隠し味のスパイス的な感じに留まっているのですが、どこかエキゾチックでサイケな雰囲気の楽曲はいかにもクーラ・シェイカーならでは。前作同様、目新しさは薄いのですが、良い意味で安心して楽しめるアルバムに仕上がっていました。

評価:★★★★★

Kula Shaker 過去の作品
Revenge of the king
STRANGE FOLK
Pilgrim's Progress
K2.0
1st Congregational Church Of Eternal Love And Free Hugs

Coming Home/Usher

実に約8年ぶりとなるUsherのニューアルバム。今となっては逆に珍しいとすら感じる「正統派」なR&Bシンガー。ただ、約8年のインターバルがありつつもビルボードチャートでしっかり2位に入ってくるあたり、その高い人気ぶりを感じますし、なんだかんだいっても、こういうR&Bの曲が好きなのね、と思ってしまいます。「Good Good」のように今風のサウンドメイキングを感じさせる部分もあるのですが、基本的にはしっかりとメロウな歌を聴かせる、90年代から2000年代初頭あたりのR&Bをそのまま継承しているような感じで、良くも悪くもUsherらしい感じ。個人的には「A-Town Girl」でBilly Joelの「Uptown Girl」をサンプリングしている点はうれしく感じました。いい意味で安心して聴けるアルバムです。

評価:★★★★★

Usher 過去の作品
HERE I STAND
RAYMOND V RAYMOND

Looking 4 Myself
HARDⅡLOVE

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2024年3月17日 (日)

往年を彷彿させる陽気なパンクアルバム

Title:SAVIORS
Musician:GREEN DAY

約4年ぶりとなるGREEN DAYのニューアルバム。今回のアルバムの大きな特徴が、プロデューサーのロブ・カヴァロと再びタッグを組んだ作品であるということ。GREEN DAYの名前を世に知らしめた1994年の「DOOKIE」と、ロック史に残る名盤としてその名も高い「American Idiot」のプロデューサーとしてその名前を知られる彼。バンドとタッグを組むのは2012年にリリースされた「¡Uno!」「¡Dos!」「¡Tré!」の3部作以来、久々のタッグとなります。

そんな彼らのニューアルバムは端的に言ってしまうと、これぞGREEN DAY!!とうれしくなってしまうアルバムという点でした。前作「Father of All Motherfuckers」があまりGREEN DAYらしくない楽曲の多い作品となっていましたので、その反動とも言えるかもしれません。1曲目「The American Dream Is Killing Me」も軽快でポップなパンクチューンで、いきなりGREEN DAYの王道を行くようなナンバーからスタート。続く「Look Ma,No Brains!」も同じく、疾走感あってパンキッシュな楽曲。「Bobby Sox」はミディアムチューンなのですが、力強いバンドサウンドとポップなメロも、これまたGREEN DAYらしいナンバーとなっています。

その後も「Coma City」「Strange Days Are Here to Stay」などの疾走感あるパンキッシュなナンバーが目立ちます。ここらへんのパンキッシュな楽曲に関しては、むしろここ最近のGREEN DAYというよりも、「DOOKIE」あたりの最初期のGREEN DAYの作風を彷彿とさせるほど。サウンドも、ともすればビリーのボーカルも、ともすれば若々しさすら感じられ、90年代のGREEN DAYに戻ったかのような錯覚すら陥らせます。

そのほかも「Dilemma」のような、ヘヴィーなギターサウンドを聴かせつつ、メロは至ってポップな作品を聴かせてくれたり、まさにタイトルそのもの、オールドスタイルなガレージパンクに仕上げた「Living in the '20s」のような曲があったり、全体的に陽気なロックンロールナンバーを聴かせてくれるような作品になっています。一方では「Father to a Son」のようなストリングスを取り入れて分厚いサウンドを優雅に聴かせるミディアムチューンもあったりして、しっかりとベテランバンドとしての音楽的な幅を感じさせる部分も垣間見れます。

また、1曲目「The American Dream Is Killing Me」などタイトルそのままですが、アメリカの現状を皮肉ったような社会派な曲もチラホラ見受けられるもも、「Amecian Idiot」以降のGREEN DAYの路線もしっかりと引き継がれているように感じます。

往年のGREEN DAYらしさを引き継ぎつつ、一方ではしっかりと「今」のGREEN DAYらしさを感じさせる作品。ただ、90年代を彷彿とさせるパンキッシュな楽曲は、間違いなくGREEN DAYが好きなら壺に入りそうなナンバーですし、その他も、歌詞の内容はともかく、サウンド的には基本的には陽気なロックンロールナンバーに仕上げているあたり、GREEN DAYの魅力がしっかりと伝わってくるアルバムに仕上がっていました。申し分ない傑作アルバム。とてもワクワクした彼ららしい素敵なロックンロールアルバムでした。

評価:★★★★★

GREEN DAY 過去の作品
STOP DROP AND FALL!!!(FOXBORO HOTTUBS)
21st Century Breakdown
AWESOME AS F**K(邦題:最強ライヴ!)
UNO!
DOS!

TRE!
爆発ライブ~渋谷編
DEMOLICIOUS
Revolution Radio
Greatest Hits:God's Favorite Band
Father of All Motherfuckers
BBC SESSIONS


ほかに聴いたアルバム

keep it goin xav/xaviersobased

Xaviersobased-keep-it-goin-xav

まだ日本ではほとんど知名度はないようですが・・・現在、若干20歳の、ニューヨーク出身のラッパーによる作品。メロウさを感じさせるエレクトロ主体のトラックにメランコリックなフロウが印象的。エレクトロサウンドは、それなりに音を詰め込みつつも、必要最低限の音を使っているからでしょうか、どこかシンプルさも感じさせます。ラップにもメロディアスさを感じさせ、全体的にはどこかドリーミーな印象も。心地よく聴くことが出来るHIP HOPの良作でした。

評価:★★★★★

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2024年3月16日 (土)

トム・ヨークが今、演りたい音楽

Title:Wall Of Eyes
Musician:The Smile

ご存じ、2020年に立ち上げたRADIOHEADのトム・ヨークによる新バンド、The Smile。トム・ヨークと、同じくRADIOHEADのギタリスト、ジョニー・グリーンウッド、そしてSons of Kemetというバンドのドラマーであるトム・スキナーを加えたの3人組。2022年にデビューアルバム「A Light for Attraction Attention」をリリースしていますが、そこからわずか2年。早くもニューアルバムをリリースしてきました。

アルバムは静かなアコースティックギターの音色からスタート。1曲目のタイトルチューン「Wall Of Eyes」はRADIOHEADらしい、というよりもトム・ヨークらしいといってよいメランコリックなメロディーに、後半に展開するにつれ、ストリングスや様々な音が加わり、ドリーミーな雰囲気になるナンバー。RADIOHEAD的に言えば「OKコンピューター」前夜といったイメージでしょうか。続く「Teleharmonic」は、エレクトロなアレンジの中、トム・ヨークの切ない歌が繰り広げられる楽曲で、こちらは「OKコンピューター」と「KID A」の間といった感じでしょうか。さらに「Road The Room」は同じくメランコリックな歌を聴かせつつ、ダイナミックなバンドサウンドも展開されるナンバーで、こちらも「OKコンピューター」期のRADIOHEADを彷彿とさせます。

中盤で印象的なのは「Friend Of A Freind」で、序盤はピアノのみ、中盤からストリングスも入りつつ、ともすればビートルズを彷彿とさせるようなシンプルでポップなメロが印象的。ただ後半では分厚いストリングスからサイケな様相へ展開していくドリーミーな雰囲気が大きな魅力であり、かつThe Smileらしいといった感じでしょう。さらに「Bending Hectic」も伸びやかなトム・ヨークの曲はどこかAOR的。ただ、後半、いきなりメタリックでサイケなバンドサウンドが加わります。前半の優雅な雰囲気が、後半、一気に崩れ去る構図が非常にユニーク。ここらへんもThe Smileらしい、というかトム・ヨークらしさを感じます。

ただ、こうやってアルバムを聴き進めていた感じるのですが、前作も実にRADIOHEADらしいアルバムと感じた作品でしたが、今回の作品はもっと言えば、RADIOHEADとして「OKコンピューター」の次にリリースされてもよかったかもしれないアルバム、と感じました。メランコリックなメロディーライン、ストリングスやピアノで美しく彩りながらも、バンドサウンドも加わりサイケに構成されるサウンド、さらにその中に垣間見れるエレクトロサウンドの要素。「OKコンピューター」の次はご存じの通り、エレクトロニカの要素を大々的に取り入れた結果、賛否両論を巻き起こしたアルバム「KID A」がリリースされたのですが、「OKコンピューター」の路線をそのまま突き進んだ場合に、今回のようなアルバムがリリースされたのではないのか、本作を聴いていてそう感じました。

確かに、そういう観点から今回のアルバムは目新しさという側面は薄いように感じます。ただ、トム・ヨークはRADIOHEADとして、いつもシーンの最先端を行くような目新しさを求められていました。そんな中、やはりRADIOHEAD的に言ってしまうと後戻りに感じてしまうものの、トム・ヨークが演りたかった音楽を、この新バンドThe Smileで演っているのではないでしょうか。実際、RADIOHEADのアルバムは2016年からリリースされておらず、その間にThe Smileのアルバムが2枚もリリースされていることを考えると、彼の興味はあきらかにThe Smileに移っているように感じます。

そういう意味では、まだこれからもしばらくはThe Smileとしての活動が続くのかもしれませんし、ひょっとしてトム・ヨークの興味が全く新しい音楽に移れば、再びRADIOHEADとしての活動が再開されるのかもしれません。ただ、トム・ヨークの音楽という意味ではThe SmileでもRADIOHEADとしてでも、ひょっとしてそう大差はないのかもしれません。そういう意味では、The Smileの、というよりもトム・ヨークの今後は、まだまだやはり要注目だな、ということを感じるアルバムでした。

評価:★★★★★

The Smile 過去の作品
A Light For Attraction Attention

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2024年3月15日 (金)

貴重な音源がてんこもり!

Title:PLYING FOR THE MAN AT THE DOOR-FIELD RECORDING FROM THE COLLECTION OF MACK McCORMICK 1958-1971

ここ最近、一時期に比べてブルースの驚くような再発音楽のリリースが減っているそうです。ここ何年も貴重な音源が様々な形でリリースされ、結果、優れた音源が概ね出尽くした、という側面があるのでしょう。そんな中で、昨年、大きな話題となった数少ないブルースの貴重な音源リリースが本作。2015年に85歳でその生涯を終えた、著名なブルース研究家であり、リサーチャーであるマック・マコーミック。彼が生前収集した590リールにも及ぶ音源やその他、貴重な資料の数々が彼の死後、娘のスザンナ・ニックスによってアメリカのスミソニアン博物館に寄贈されたそうですが、その貴重な音源の一部が5枚組のCD/LPとしてリリース。大きな話題を呼びました。

全3枚組66曲に及ぶこの作品には、30人以上のミュージシャンが登場。そのほとんどが本作が初公開という非常に貴重な内容となっています。そのような中でも特に耳に残るのが、ご存じLightnin'Hopkinsの演奏でしょう。本作では9曲が収録されていますが、かなり肩の力が抜けた自然体の演奏を聴かせてくれており、その歌声はもちろん、ゆったりとした雰囲気ながらも力強いアコギのサウンドの演奏が耳を惹きます。本作のスタートは、彼の代表曲でもある「Mojo Hand」からスタートするのですが、非常にリアルな感触のある録音となっており、まずは耳を惹かれます。

全体的に録音は荒々しい感じの録音状態なのが印象的。決して優れた録音状態という訳ではないのですが(ただ、ノイズが強くて聴きとりにくいような音源はないのですが)、逆にこの荒々しい録音状態ゆえに、ミュージシャンのいるその場の空気感をそのまま録音しているようにも感じます。また、ライブ音源をそのまま収録しているため、曲紹介や簡単なMCも収録されており、それもまた、その場所の空気感をそのまま収録しているような感覚に陥らせます。ある意味、聴いていてスピーカーのすぐ向こう側でミュージシャンが居て、演奏しているような、そんな雰囲気を感じさせる、そんな音源が並んでいます。

また、このアルバムでユニークなのは、正統派のギターやピアノをつかったブルースだけではなく、ブルースを起因とした様々なタイプの音源も収録されている点でいた。例えばJoe Pattersonの「Quills」は一生懸命ふいているオカリナの演奏と、その間の短い歌のみという異色的な曲。さらに続くLightnin'Hopkinsの「Ma Pa Cut the Cake」はなんとギターはほとんど登場せずに、タップダンス(?)の音と、その間に彼の語りが収録されているという曲(?)に。同じく彼の「Mr.Charlie」は、ギターをバックに、語りと観客の笑い声が収録されており、いわばギター漫談のような感じなのでしょうか?またMurl"Doc"Websterの「Medicine Show Pitch」はハイテンポの語りで、まるでラップの走りのよう。貴重なブルース音源以上に、当時の貴重な黒人社会での音楽に関するエンタテイメントの状況が垣間見れる音源も、今となっては非常に貴重のように感じます。

もちろん、そのほか収録されているブルースの音源についても力強いギターやピアノのパフォーマンス、そして魅力的な歌を聴かせてくれる音源は数多く。驚くほど充実した音源が収録されている3枚組のアルバム。かなり素晴らしいブルースの再発版となっていました。もうネタ切れかと思いつつ、まだまだこんな音源が世に出てくるあたり、まだまだ貴重な音源が世界には眠っているような予感も。また、マック・マコーミックが収録した音源についても、これはまだまだ一部ということなので、続編にも期待できそう。ブルースファン必聴の作品です。

評価:★★★★★

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