アルバムレビュー(邦楽)2023年

2023年12月29日 (金)

徐々に全貌があきらかに・・・

Title:BAUS'93
Musician:裸のラリーズ

Baus93

1960年代から90年代にかけて活動し、耳をつんざくようなフィードバックノイズの嵐で独自の音楽性を築いたものの、音源がほぼ世に出ていなかったため「伝説のバンド」として知られていた裸のラリーズ。中心メンバーだった水谷孝の逝去後、過去の音源が再発された他、新たにライブ音源もリリースされ、徐々にその実態が明らかにされてきています。今回紹介するのは、7月にリリースされたライブ盤「CITTA'93」に続くライブ音源。その「CITTA'93」の演奏が行われた4日前に、吉祥寺バウスシアターで行われたライブ音源を収録したライブ盤。本作も「CITTA'93」と同様、久保田真琴によるミキシング&マスタリングが行われ、その圧巻のライブパフォーマンスが姿をあらわしています。

収録されている音源は「夜、暗殺者の夜」「黒い悲しみのロマンセ」「夜の収穫者たち」「Drakness Returns」の4曲で、全1時間10分のパフォーマンス。2枚組2時間強に及んだ「CITTA'93」に比べると、ちょっと短い収録内容となっています。ただ、そのライブパフォーマンスは、圧巻の一言。2時間以上に及びパフォーマンスだったためか、フォークロックの側面も押し出していた「CITTA'93」に比べると、本作では1時間強、ほぼ全編に及んで強烈なフィードバックノイズの洪水が襲い掛かるような、彼らのサイケの側面を押し出した構成になっていました。

1曲目「夜、暗殺者の夜」では、いきなり耳をつんざくかのような強烈なギターノイズが飛び込んできますし、10分にも及ぶパフォーマンスでは、ミニマルなリズムもリスナーをトリップに誘います。続く「黒い悲しみのロマンセ」もタイトル通り、どこかメランコリックな雰囲気の漂い楽曲。哀愁ただよう歌も印象的ですが、バックに流れるギターノイズの迫力も強い印象に残ります。「夜の収穫者たち」は、まさに疾走感あるリズムに、これでもかというほどフィードバックノイズをたたきつける強烈なギターサウンドが印象的。ラストの「Darkness Returns」もメランコリックな歌を聴かせつつ、ダイナミックなバンドサウンドで、終始、強烈なフィードバックノイズが展開される構成となっています。

「CITTA'93」と同様、哀愁感のあるメロディーラインは、いかにも70年代然した部分があり、1993年というタイミングで聴くには、少々「時代遅れ」的な感は否めません。ただ、それを差し引いても狂気を帯びたようなフィードバックノイズの洪水は、時代を超えて圧巻されるのは間違いないでしょう。「CITTA'93」以上に、その強烈なバンドサウンドが前に押し出された音源になっていました。

また、この「BAUS'93」、大きな魅力だったのが、その日のパフォーマンスを収録したDVDが同封されている点・・・だったのですが、率直に言うと、このDVDがちょっと期待はずれの厳しい内容でした。

映像は、バックに激しい光のフラッシュが終始、続いている状況で、ハレーションも起こしているような状況。例の「ポケモンショック」を引き起こしそうな映像で、自分ですら直視すると危険にすら感じるような映像になっていました。これ、当時のライブも、こんな激しいフラッシュが終始起こるような状況で、それをそのまま収録した、ということなのでしょうか。パフォーマンスの状況もよくわからず、ライブ映像に期待すると、期待外れな内容かもしれません・・・。

こういう映像しか残っていなかったのかもしれませんし、それでもあえて収録しているという点、貴重な映像なのかもしれませんが・・・裸のラリーズの貴重なパフォーマンス映像をしっかりと味わえると期待していただけに、この点はちょっと残念でした。

ただ、このDVDのマイナス点を差し引いても、圧巻のパフォーマンスの貴重な音源である点は間違いないでしょう。このような音源がまだまだ残っているということなのでしょうか。徐々にその全貌をあらわしだした裸のラリーズ。これからの新たな音源にも期待できそうです。

評価:★★★★★

裸のラリーズ 過去の作品
67-’69 STUDIO et LIVE
MIZUTANI / Les Rallizes Dénudés
'77 LIVE
CITTA'93


ほかに聴いたアルバム

式日散花/ドレスコーズ

ドレスコーズ約1年ぶりとなるニューアルバムは、前作「戀愛大全」の続編的なアルバム。前作同様、ヘヴィーなバンドサウンドをベースにしつつ、レトロな要素も含む、これでもかというほどキュートでポップなメロが魅力的な1枚。そのメロディーラインはいかにもドレスコーズらしい切ないメロが印象的。ただ、前作に比べると曲のバリエーションが少々乏しかった点は気になりましたが、その分、こってりとしたメロディーラインを前に押し出した曲が目立った感じに。ドレスコーズの美メロにじっくりと浸れる1枚でした。

評価:★★★★★

ドレスコーズ 過去の作品
the dresscodes
バンド・デ・シネ
Hippies.E.P.

オーディション
平凡
ジャズ
バイエル(Ⅰ.)
バイエル(Ⅱ.)
バイエル
ドレスコーズの音楽劇《海王星》
戀愛大全

replica/Vaundy

「怪獣の花唄」が驚異的なヒットを見せているシンガーソングライターVaundyの2枚目のフルアルバム。同曲以外にもコンスタントに配信シングルのリリースを続けており、本作では前作「strobo」リリース後の配信シングルをすべて収録した結果、全35曲入り2枚組というボリュームながらも、うち21曲が既配信曲という内容になっています。

そのため、純然たるアルバムというよりもプレイリスト感のある作品に。YOASOBIのアルバムもそうだったのですが、ここらへん、どうも「今時のミュージシャン」といった感じなのでしょうか。その結果、アルバム全体として統一感はなく、基本的にはギターロックを主体とした楽曲で、1曲1曲取ると悪くはないのですが、アルバム通しての印象はかなり薄くなってしまっています。楽曲自体もギターサウンドのオルタナ系ロックを志向しているかと思いつつも、全体的にはルーツレスなJ-POPといった感じ。全体的にミュージシャンとしての「主軸」のなさが気になってしまったアルバムでした。

評価:★★★

Vaundy 過去の作品
strobo

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2023年12月23日 (土)

AIを使った挑戦的な作品も

Title:クロスロード
Musician:UNICORN

メンバー全員、アラ還に近づきながらも積極的な活動を続けるUNICORN。特に再結成後は、自由度の高い音楽性のアルバムが魅力的で、そんな「おじさんの遊び心」は年を取れば取りほど顕著になっている感はあります。今回、約2年ぶりとなるニューアルバムとなりますが、いつに増して好き勝手に音楽で遊んだような、肩の力の抜けた自由度の増したアルバムに仕上がっていました。

今回のアルバムもまた、メンバー全員がほぼ平等に作詞作曲を担当し、それぞれボーカルを担当しているのですが、それぞれが好き勝手にいろいろなジャンルの音楽に手をつけている作風となっています。レトロなアメリカンポップのタイトルチューン「クロスロード」からスタートし、オールドスタイルのロックンロールチューン「米米夢」に、スカパンク風の「オカゲサマ」、最後を締めくくるのは、全員でコーラスに参加して、メンバー全員の仲の良さも感じさせる「100年ぶる~す」で締めくくり。最後まで自由度の高い楽しいポップスが詰め込まれた作品となっています。

ただ、彼ら、さらにすごいのが、メンバーそれぞれ好き勝手に音楽を楽しんだアルバムでありながらも、彼らなりの「挑戦」を行っている点。今回、このアルバムリリースに先駆けて、過去のUNICORNの楽曲のオマージュ曲を、AIボーカルによって歌わせるEP盤を配信限定でリリースしています。

Title:ええ愛のメモリ
Musician:UNICORN

Eeai

「Maybe Blue」のオマージュ「ネイビーオレンジ」からスタートし、「WAO!」そのままの「OAW!」まで、どこかで聴いたことあるような曲が並んでいます。それがAIによって歌われている訳ですが、「かつての若い頃」をイメージしたボーカルスタイルとなっており、その点でも、「昔聴いたことあるような、ないような・・・」といった不思議な感覚を受けるユニークなアルバムになっていました。

ある意味、このAIによる技術にしても、賛否があって、抵抗感を覚えるようなミュージシャンもいる中、むしろ積極的に活用し、かつ、大上段に構えるでもなく、その技術を楽しむようなスタイルは、いかにも彼ららしさを感じます。ちなみに、AIではなく、「今のボーカル」によって歌われたバージョンはアルバム「クロスロード」に収録。両者の聴き比べも楽しいでしょう。ちなみに、奥田民生が一番違いがあったように感じます。粋がっていて、いかにも「ロック」然としてかつてのスタイルと、渋みのある脱力スタイルの今のボーカルはかなり雰囲気が異なりました。

年を取ってもなお、今の技術を抵抗感なく受け入れ、全力で楽しむスタイルと、一方で年齢を経たからこそ感じる「余裕」さを併せ持った、UNICORNの魅力あふれるアルバム。前作「ツイス島&シャウ島」はロックンロールという一本の軸があり、統一感のあるアルバムでしたが、今回は自由度が増しただけにアルバム全体はバラバラといった印象はありますが、それはそれで彼ららしい大きな魅力になっていました。さすがの「貫禄」すら感じさせる傑作アルバム。彼らにしか出来ない1枚だと言えるでしょう。

評価:どちらも★★★★★

ユニコーン 過去の作品
シャンブル
I LOVE UNICORN~FAN BEST
URMX
Z
ZII
Quarter Century Single Best
Quarter Century Live Best

イーガジャケジョロ
ゅ13-14
半世紀No.5
D3P.LIVE CD
UC100V
UC100W
ツイス島&シャウ島

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2023年12月19日 (火)

SHISHAMOの魅力がより鮮明に

Title:ACOUSTIC SHISHAMO
Musician:SHISHAMO

先日紹介したヤバイTシャツ屋さんも、10周年記念のベスト盤をリリースしていましたが、こちらもCDデビューから10周年目を迎えるバンド、SHISHAMO。ご存じ、スリーピースのガールズバンドで、ポストチャットモンチー的な立ち位置で出てきたガールズバンドの中でも、サウンド的にはロックな方向性が強く、なおかつメロディーラインはポップという、ある意味、チャットモンチーの後釜の最右翼的バンドという印象を受けているバンドです。

そんな彼女たちが10周年を記念してリリースするのは、ベスト盤、ではなく、自分たちの代表曲をアコースティックアレンジにカバーした、アコースティックアルバム。ベスト盤は2019年にリリースしたばかり、という影響もあるのでしょう。ただ、率直にいうと、最初、かなり地味な印象も受けた企画になっていました。ただ、ここでわざわざ大枠で取り上げらたことからもわかる通り、これが予想外の傑作アルバムに仕上がっていました。

まずアコースティックアレンジを施すことによって楽曲の印象がかなり異なります。もともとバンドサウンドによるアレンジの段階でも比較的シンプルなアレンジの多い彼女たちですが、アコースティックアレンジにより、その印象も大きく変化します。聴いていてロックバンドというよりも、「アコギ女子」みたいな名前の与えられそうな、アコギを抱えて弾き語る、女性シンガーソングライターの曲を聴いているような印象を受けます。

逆に、それだけ彼女たちの曲が、アコースティックアレンジとマッチしていた、ということも言えるかもしれません。彼女たちの書くメロディーはシンプルでなおかつメロディアス。いわばロック系によくありがちな、リズムやバンドサウンドの勢いに頼ることなく、しっかりとメロディーを聴かせる曲ばかり。歌詞についても同様。シンプルなラブソングが多いのですが、女の子の感情を素直に吐露した、聴いていてキュンとなるようなラブソングが多く、アコースティックアレンジにもピッタリとマッチしています。

そしてアコースティックアレンジにしてあらためて感じるのは、メロディーにしろ歌詞にしろ非常に優れたバンドなんだな、ということをあらためて感じました。バンドサウンドにすると、どうしてもサウンドの方が目立ってしまってしまうのですが、アコースティックアレンジでは、このメロと歌詞の良さが、よりはっきりと前に出てきた結果、SHISHAMOの持つ、メロディーと歌詞の良さがより際立ったアルバムになっていました。

SHISHAMOの持つ魅力、特にそのメロディーラインと歌詞の魅力をより伝わる傑作アルバムになっていたと思います。アコースティックアレンジが、これほどSHISHAMOにピッタリくるとは思いませんでした。普段のSHISHAMOにさほどピンと来なくても、このアルバムで彼女たちの実力を感じることが出来るかもしれません。彼女たちがどんなバンドを知るためにも最適な1枚でした。

評価:★★★★★

SHISHAMO 過去の作品
SHISHAMO 3
SHISHAMO 4
SHISHAMO 5
SHISHAMO BEST
SHISHAMO 6
SHISHAMO 7
ブーツを鳴らして-EP
恋を知っているすべてのあなたへ


ほかに聴いたアルバム

聖なる交差点/神聖かまってちゃん

こちらは結成15周年。神聖かまってちゃんの2枚目となるベストアルバム。2015年にベストアルバム「ベストかまってちゃん」をリリースしており、それ以来のベストアルバムとなるため、比較的、最近の曲が多く収録されています。ちょっとゴチャゴチャした感のある、シンセも取り入れたサウンドや、エフェクトを使って、あえてハイトーンとしているの子のボーカルなど、癖のある点が強いバンドなのですが、よくよくメロディーや歌詞を聴くと、実は非常に優れたメロや歌詞を書けるバンドということはよくわかります。今回、「フロントメモリー」でずっと真夜中でいいのに。のACAね、「僕は頑張るよっ」ではanoをボーカルとして起用。の子のハイトーンボイスを女性ボーカルに入れ替えることにより、いい意味でのわかりやすさが増した感じがします。全体的にはエキセントリックな方向性ばかりが目立ってしまっている点がマイナスなのですが、まだまだこれからへの期待も感じさせるベストアルバムでした。

評価:★★★★

神聖かまってちゃん 過去の作品
友だちを殺してまで。
つまんね
みんな死ね

8月32日へ
楽しいね
英雄syndrome
ベストかまってちゃん
夏.インストール
幼さを入院させて
ツン×デレ
児童カルテ

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2023年12月18日 (月)

あえてCDで出す

Title:BEST of the Tank-top
Musician:ヤバイTシャツ屋さん

ロックバンド、ヤバイTシャツ屋さんが、結成10周年を記念してリリースした初となるベストアルバム。彼らの代表曲19曲に、このベスト盤リリースに合わせて作られた、そのものズバリ「BEST」、さらには未発表曲や別バージョンの曲などが収録されたボーナストラックがついて、全27曲入りというフルボリュームでのアルバムとなっています。

ヤバTの印象としては、私のような、そろそろアラフィフに手が届くような世代からすると、「感覚が非常に若いバンドだな」という印象を受けています。コミカルな歌詞が大きな特徴なのですが、そのノリが非常に軽い。代表曲である「ハッピーウェディング前ソング」「ノリで入籍してみたらええやん」という、ある種の「キラーフレーズ」をはじめ、とにかく明るくインパクトあるサビをつくって、それについて歌っただけの「鬼POP激キャッチー最強ハイパーウルトラミュージック」、無線LANの便利さについて歌っただけの「無線LANばり便利」、肩幅と「肩 have a」の語感を合わせただけの「肩 have a good day」など、歌詞の意味よりも、その場の楽しさを追及したような楽曲が並んでいます。

ある意味、徹底的に「深い意味の歌詞」や「熱いラブソング」を排除する「軽いノリ」には、ちょっと偏見が入るのかもしれませんが、おじさん世代から見ると、いかにも「若い世代」と感じてしまいます。もっともメンバー、既にアラサーで、決して非常に若いバンド、という訳ではないのですが・・・。ただ一方で、ある種の「雑音」的な部分を徹底的に排除して、楽曲自体の楽しさや曲を聴くことの気持ちよさを追及する姿勢には、一周回って彼らなりのこだわりを感じさせますし、ちょっとふざけたような企画やらパフォーマンスやらを含めて、彼らなりのある種の「信念」も感じられます。

いかにもな「若いバンド」なスタンスを感じさせる一方で、逆に、自分たちと同じような感覚を覚えたのが、今回、あえてベストアルバムを出した彼らのスタンス。そのスタンスが、そのまま新曲「BEST」で歌われているのですが、サブスク全盛期で、プレイリストでも事足りるのに(事務所も乗り気じゃないのに)あえて「形に残す」ためにベストアルバムをリリースする、という彼らのスタンスがそのまま語られています。ここらへんは、CDというフィジカルアイテムを聴き続けてきた、私くらいの世代に非常によくわかる感覚。なんだかんだいっても30歳前後のメンバーも、CDというアイテムになじみのある最後の世代なのでしょう。ここらへんは逆に「若いバンド」らしからぬこだわりに、おじさんとしてはうれしくもなってきます。

ハードコアやパンク、ギターロックに、曲によってはスカやらソウルやらも取り入れている、難しいこと抜きにとにかくリスナーを楽しませよう、それ以上に自分たちも楽しもうというスタイルのポップな楽曲もとにかく楽しく、80分近いフルボリュームのアルバムながらも、一気に楽しめる作品でした。今どきの若者、といっても、そろそろ「若い」世代ではなくなってきている彼ら。このベスト盤がそんな彼らにとってのひとつの区切りになりそう。これからの彼らの活躍にも注目したい、そう感じさせるベストアルバムでした。

評価:★★★★★

ヤバイTシャツ屋さん 過去の作品
We love Tank-top
Galaxy of the Tank-top
Tank-top Festival in JAPAN
You need the Tank-top
Tank-top Flower for Friends


ほかに聴いたアルバム

The Goldmine/GLIM SPANKY

前作から約1年3ヶ月ぶりとなるGLIM SPANKYのニューアルバム。前作「Into The Time Hole」ではルーツロックやブルースロックの強い影響を受けつつ、一方、歌謡曲的な雰囲気を感じさせるメランコリックな要素も大きな特徴でしたが、今回のアルバムに関しては、いわばこの方向をさらに推し進めたもの。特に、この「歌謡曲的な哀愁メロ」という方向については、薄めることなく逆に推し進めた結果、ルーツロックやブルースロックとの見事融合を果たし、GLIM SPANKY独自のサウンドを形成しています。個人的には、これが彼女たちのひとつの到達点とすら感じられた、そんなアルバムでした。

評価:★★★★★

GLIM SPANKY 過去の作品
ワイルド・サイドを行け
Next One
I STAND ALONE
BIZARRE CARNIVAL
LOOKING FOR THE MAGIC
Walking On Fire
Into The Time Hole

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2023年12月16日 (土)

6年半のシングルが収録!

Title:ラブ&ピース!マスターピース!
Musician:サンボマスター

今年に入り、以前リリースしたベスト盤を拡張した「“超”究極ベスト全員優勝Edition」をリリースしたり、EP盤である「はじまっていく たかまっていく E.P.」のリリースはあったりしたものの、オリジナルアルバムとしては「YES」以来、実に約6年半ぶりとなるサンボマスターのオリジナルアルバムとなります。

前作からかなりスパンがあったものの、その間、決して彼らの活動がストップしていた訳ではありません。むしろこの6年半の間も積極的に活動を続けており、EP盤1枚にシングル2枚、さらに配信シングル4枚をリリースしており、シングルのリリースで言えば積極的な活動が目立ったように思います。

またバンドとしてもここ最近、比較的脂ののった活動が続いており、個人的には前々作「サンボマスターとキミ」はバンドの最高傑作とも言えるほどの充実作でしたし、前作「YES」も同じく傑作アルバムに仕上がっていました。今回のアルバムに関しても、特にバンドサウンドについては、前々作、前作同様、ロックバンドとしての初期衝動をダイレクトに感じさせる作品が目立ちました。「忘れないで 忘れないで」などはかなり力強いバンドサウンドが魅力的。また、今回YouTubeチャンネル「THE FIRST TAKE」で録音したバージョンの「できっこないを やらなくちゃ」「Future Is Yours」も収録されているのですが、こちらもサンボマスターのバンドとしての実力を感じさせるパワフルなパフォーマンスが収録されています。

一方、そんなロックバンドの初期衝動を感じさせる曲のみならず、「はじまっていく たかまっていく」「その景色を」ではHIP HOP的な要素を取り入れていたり、「花束」ではモータウンビートを取り入れていたり、様々な音楽性を取り入れているあたり、バンドとしての「偏差値の高さ」も垣間見れる作品ともなっていました。

そして今回のアルバムのもうひとつ大きな特徴はシングル曲の多さ。前述の通り、前作「YES」以降、多くのシングルをリリースしてきましたが、本作ではそのすべてを収録。結果、このアルバムでの新曲は、先行配信曲の「笑っておくれ」「その景色を」の2曲のみ。さらにTHE FIRST TAKEからの曲、2曲を除き、全曲にタイアップがつくという内容に。さらに今回、2010年にリリースした「できっこないを やらなくちゃ」の再録音も収録されており、シングル曲が並ぶという、ある種のベスト盤的な内容となっていました。

ただ、そのシングル曲に関して、メロディーラインやバンドサウンドが比較的ポップ寄りとなってしまっています。いや、ポップ寄りといっても、サウンドに関しては前述の通り、バンドとしての初期衝動をしっかりと押し出しており、むしろタイアップがついたシングルで、これだけしっかり「ロック」しているという点、感心してしまいます。

しかし一方、かなり気になってしまったのがその歌詞。もともと彼らは前向き応援歌的な歌詞が目立つバンドなのですが、特にシングル曲に関してはその傾向が顕著。今回、その点を差し引いても、さすがにこれだけ前向き応援歌な歌詞が並ぶと、ちょっと歌詞が陳腐すぎないか?と気になってしまいました。

サンボマスターの歌詞は、いい意味での熱さがあって、かつストレート。それが良い方向に作用する場合もあるのですが、前向き応援歌的な作品になると、あまりにストレートな歌詞が悪い意味でのチープさを感じてしまいます。アルバムの中の1、2曲程度ならば気にならないのですが、さすがに今回、シングル曲が並んでかなりの割合、そのような前向き応援歌的な歌詞となってしまっていると、聴いていて、はっきり言うと「うんざり」してしまいました。

さすがシングルをすべて収録せずに、もうちょっとアルバムのみの曲の割合を増やした方がよかったんじゃないかなぁ。バンドとしての勢いはあるだけに、ちょっと残念。それとも、シングルはこういう形でリリースし、近いうちにもう1枚アルバムをリリースするとか?バンドサウンドにカッコよさを感じる反面、チープな歌詞が気になってしまったアルバムでした。

評価:★★★★

サンボマスター 過去の作品
音楽の子供はみな歌う
きみのためにつよくなりたい
サンボマスター究極ベスト
ロックンロール イズ ノット デッド
終わらないミラクルの予感アルバム
サンボマスターとキミ
YES
はじまっていく たかまっていく E.P.
"超"究極ベスト-全員優勝Edition-

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2023年12月10日 (日)

大黒ミサの模様を完全収録

Title:聖飢魔II 期間再延長再集結「35++執念の大黒ミサツアー -東京FINAL-」
Musician:聖飢魔Ⅱ

1980年代後半から1990年代にかけて人気を博し、当時、日本では「マイナー」な分野だったヘヴィー・メタルというジャンルを一気にメジャーなものに引き上げたロックバンド、聖飢魔Ⅱ。自らを「悪魔」と名乗り、バンドを音楽を媒体として「悪魔教」を布教する教団と名乗っている彼ら。その徹底したコンセプト作りは、おそらく熱心な信者じゃなくてもご存じのことでしょう。1999年に地球制服が完了した、としてバンドは解散したものの、2005年に地球デビュー20周年を記念して再集結。その後もほぼ5年毎に再集結しており、地球デビュー35周年を記念して2020年も再集結を予定していました。

ただ、2020年といえば、新型コロナが世界に蔓延し、ライブが一切できなくなった時期。「悪魔」とはいえ例外ではなく、大黒ミサツアー(=ライブツアー)は中止。ただ、ライブが徐々に再開できる状況になった後、まさに「執念」とも言える再結成ツアーを実施。この大教典(=アルバム)は、そんな彼らの大黒ミサツアーのファイナル、2023年2月15日に東京、代々木第一体育館で行われた黒ミサの模様を収録したものとなります。

こちらはその日の模様をおさめたアルバムなのですが、最大の特徴としてはオープニングからエンディングまで、大黒ミサの模様をほぼ全て納めているという点。途中のMCはもちろん、オープニングや途中の休憩時間に会場に流れたトーク、さらには客だしのエンディングまで収録されているという徹底ぶり。MCを含めて全体的な演出で楽しませてくれる聖飢魔Ⅱの大黒ミサの雰囲気が、CD音源であってもしっかり伝わってくる作品に仕上がっています。

楽曲は往年の代表曲に、2022年にリリースされた最新アルバム「BLOODIEST」の作品が間に挟まったような構成。「BLOODIEST」からの曲に関しては、かつての代表曲から20年以上のインターバルを持ってのリリースなだけに、若干、いかにも80年メタルの影響を感じるかつての曲に比べると、今風なヘヴィーロックの色合いが強い点も印象的。ただ、かつての代表曲も最新アルバムからの曲も並列に聴いてもさほど違和感のない点、しっかりと聖飢魔Ⅱとしての個性が楽曲に反映されているからでしょうし、また、20年以上たった今でも、その実力に衰えのない証拠とも言えるでしょう。また、最近の音にアップデートされた「BLOODIEST」からの楽曲が加わることによって、黒ミサ全体に新鮮味が加わり、彼らがいまでもしっかり現役のバンドなんだということが、はっきりと認識できるように感じました。

一方、10万歳を超える悪魔の彼らですが、「世を忍ぶ仮の身体」は老化は否めず、特にデーモン閣下のボーカルについては、かつてほどの声量が出ていない旨の指摘をレビューなどでも見かけました。確かに全盛期に比べれば衰えは否めませんが、それても今なおしっかり艶のある伸びやかなボーカルを聴かせてくれており、その歌唱力は天下一品。バンドの演奏についてももちろん衰えもなく、高い演奏力、高い歌唱力というバンドの実力は、しっかりその健在ぶりをうかがせます。

あえていえば3時間超えという時間にも関わらず休憩やトークも多く、全19曲という曲数はちょっと少なめで、その点、やはり体力の面で・・・という感は否めないのですが、MC自体、非常に楽しませてくれますし、そのステージのすばらしさはこの音源からもしっかりと伝わってきます。

コロナ禍による延長という自体もあって、既に再来年が結成40周年となってしまうそうで、MCでは結成40周年での再集結も(ほぼ)約束していました。ほぼ5年毎に集結するのって、もうバンドとして解散していないのでは??と思わなくもないのですが(笑)、この「代々木第一体育館」はバンドとして過去最大の動員数だったそうで、ここに来て人気が高まっている点は驚き。ただ、その理由も納得の、CDで聴いているだけでも楽しさ、すばらしさのわかる大教典でした。40周年の時は、是非とも足を運びたいなぁ。

評価:★★★★★

聖飢魔Ⅱ 過去の作品
XXX-THE ULTIMATE WORST-
BLOODIEST
聖飢魔Ⅱ 期間再延長再集結「35++執念の大黒ミサツアー -大阪-」


ほかに聴いたアルバム

Rest In Punk/HEY-SMITH

パンクロックバンドHEY-SMITHの実に約5年ぶりとなるニューアルバム。分厚いバンドサウンドにホーンセッションを入れたパンクロックが軽快で楽しく、ライブだととにかく盛り上がりそうな予感も。スカの要素も入ったリズムもとても軽快で楽しい感じに。長さも全11曲25分とあっという間に聴き切れる長さなだけに、ポップパンクらしい、難しいことを考えずにまずは楽しめる、そんなアルバムになっていました。

評価:★★★★

HEY-SMITH 過去の作品
STOP THE WAR

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2023年12月 5日 (火)

架空のラジオ番組を楽しめる、良質なシティポップコンピ盤

今回は、話題のシティポップのコンピレーションアルバムの紹介です。

Title:FM STATION 8090~GOOD OLD RADIO DAYS~ DAYTIME CITYPOP by Kamasami Kong

Title:FM STATION 8090~GENIUS CLUB~ NIGHTTIME CITYPOP by Katsuya Kobayashi

架空のFMラジオ局「FM STATION 8090」から流れるラジオ番組をイメージしたコンピレーションアルバム。ラジオ番組そのままに、曲の間にMCのコメントや簡単な曲紹介が入るスタイル。曲間のMCも全て英語となっており、FM局でも、特にInter FM系、もしくは(90年代あたりの?)JFL系を彷彿とさせる雰囲気となっています。

そして参加しているMC勢も豪華。「DAYTIME CITYPOP」の方はカミサマ・コング、「NIGHTTIME CITYPOP」は小林克也と、FMのMCとしてはおなじみの大御所が参加しています。その名前を知らなくても、声を聴けば、おそらく「ああ、あの人」と誰もが思うような声だと思います。

「架空のラジオ番組」という点ではかなりこだわりがあるようで、特に「DAYTIME CITYPOP」の方では、曲間になんとゲストとして早見優が登場し、曲をリクエストする、なんていう、いかにもラジオ番組らしいコーナーもあったりして。聴いていて本当にラジオ番組を聴いているかのように錯覚してしまいそうな、凝った構成になっています。

楽曲は、最近では海外からも高い評価を受けているシティポップの楽曲が並びます。「DAYTIME CITYPOP」はタイトル通り、昼間に聴くのにピッタリな明るく爽やかなポップス、「NIGHTTIME CITYPOP」はムーディーな雰囲気漂う、夜に聴くのにピッタリな曲が並んでいます。どちらも「8090」というタイトル通り、80年代90年代の楽曲がメイン。聴いていて懐かしさを醸し出すような構成になっていました。

「懐かしさ」という点では、非常に印象的なのはそのジャケット写真ではないでしょうか。かつてFM専門誌として発売されていた「FM STATION」をイメージした構成。当時、「FM STATION」の表紙を手掛けていたイラストレーターの鈴木英人が手掛けています。このジャケットを眺めながら、当時の曲を聴くと、その時代を思い起こして懐かしさを彷彿させるのではないでしょうか・・・

・・・と言っておいて、若干、この「懐かしさ」という点では疑問もあります。まず第一に、「懐かしい」といってもこの英語MCのトークを挟んだスタイルって、Inter FMとかだと今も変わらないですよね?最近はFMもあまり聞かなくなってしまったので、今のスタイルは詳しくはわからないのですが・・・。もうひとつ、どちらかというとこちらの方が疑問点なのですが、ここで流れていたようなポップスって、洋楽中心だった80年代90年代にはあまりFMで流れなかったのでは?という疑問。特に「NIGHTTIME CITYPOP」に収録されている大橋純子の「シルエットロマンス」や寺尾聰の「出航 SASURAI」あたりは、今でこそ「シティポップ」的な評価をされるようになりましたが、80年代は完全に「歌謡曲」の枠組みで、Inter FMはもちろん、JFL系でもまず流れなかった曲なのでは?なんとなく、本当に80年代90年代のFMラジオ番組を再現した、というよりは、懐かしいというイメージだけをピックアップしたフェイクなのでは?と感じました。

もっとも、エンタテイメントにとって、ある種の「フェイク」というのは重要で、そういう意味では「フェイク」だからといってこのコンピレーションの価値が下がるものではありません。最近では、むしろ海外で高い評価を受けている松原みきの「真夜中のドア~Stay With Me」をはじめ、おなじみ杏里「オリビアを聴きながら」や杉山清貴、来生たかお、EPOなど、豪華なメンバーがズラリと並んでおり、最近評価の高い、「シティポップ」とは何か、ということを知るには最適なコンピレーションアルバムだったと思います。

ちょっと残念だったのは、松任谷由実の「ルージュの伝言」「やさしさに包まれたなら」「CHINESE SOUP」が権利の関係か、ユーミン歌唱ではなく、絢香と土岐麻子によるカバーだった点。このカバーももちろんよかったのですが(純粋な歌唱力という意味ではユーミンよる上かも?)、他がオリジナルだっただけにちょっと残念。他にもシティポップの名曲はいろいろとあるのだから、無理にユーミンを入れなくてもよかったとは思うのですが。それとも、若手(というよりももうキャリア的にはベテランなのですが)のシンガーを入れることによって、もっと下の世代を呼び込みたかったのでしょうか?

個人的には「NIGHTTIME」の方は、ちょっとムーディーな曲が多くて、悪い意味で「歌謡曲」すぎないか?という疑問もあったのですが、その点を差し引いても、全体的にラジオ番組を聴いているように楽しめたコンピレーションアルバムでした。80年代90年代にリアルタイムで聴いていた方はもちろん、最近、評価が高くなっているシティポップを知りたい若い世代の方にもおすすめのコンピです。

評価:DAYTIME CITYPOP ★★★★★
NIGHTTIME CITYPOP ★★★★


ほかに聴いたアルバム

カラタチの夢/大橋トリオ

大橋トリオの新譜は5曲入りのEP盤。ただ、この収録曲のタイアップがかなり豪華。5曲中3曲がドラマ主題歌。あと1曲もテレビ番組のテーマソングと、5曲中4曲までがタイアップ付きという内容となっています。確かにアコースティックアレンジにメランコリックに聴かせるポップソングは、いい意味で癖のなく、万人受けしそうな「良質なポップソング」。テレビのタイアップ曲としてはピッタリなんだろうなぁ、とは思います。ただ、良質なポップソングはポップソングなのですが、もうちょっとある種の「毒」は欲しい感じはしてしまうのですが。

評価:★★★★

大橋トリオ 過去の作品
A BIRD
I Got Rhythm?
NEWOLD
FACEBOOKII
L
R

FAKE BOOK III
White
plugged
MAGIC
大橋トリオ
PARODY
10(TEN)
Blue
STEREO
植物男子ベランダー ENDING SONGS
植物男子ベランダーSEASON2 ENDING SONGS
THUNDERBIRD
This is music too
NEW WORLD
ohashiTrio best Too
ohashiTrio collaboration best -off White-

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2023年12月 1日 (金)

実にラッパ我リヤらしい作品

Title:CHALLENGER
Musician:ラッパ我リヤ

1990年代前半という、HIP HOP黎明期から活動を続け、日本のHIP HOPシーンのレジェンドの一組とも言えるグループ、ラッパ我リヤ。2009年以降、一時期活動休止状態になるものの、2017年には久々のアルバム「ULTRA HARD」をリリース。本作は同作に続く、約6年ぶりのニューアルバムとなります。

今回のアルバムタイトル、「CHALLENGER」というタイトルになるのですが、公式サイトの案内によると「『ベテランアーティストである自分達の様な年代でも、常にチャレンジャー精神が必要だ!』と言う彼らの自身に対する戒めの想いと、今作が『最後のアルバム』になるかも知れない、と言う決意が込められている。」ということ。25年以上のキャリアを誇るベテランの彼らですが、今なお、前向きに進んでいこうという強いスタンスを感じます。

・・・・・・なのですが、ただアルバム自体については、実にラッパ我リヤらしい内容に仕上がっていたと思います。ラッパ我リヤのスタイルというと、非常に硬いライムと、暑苦しさも感じさせる自己主張の強いリリック。今回の作品については、そんなラッパ我リヤらしさが貫かれた作品になっていました。

「飛んでいくぜお前のとこへ」と彼ららしい押しつけがましさ(笑)を感じる「CODE NAME」からスタートし、「俺らが達人」と、ある意味、非常に強い自己主張が特徴的な「TATSUJIN」、自分たちの歩みを振り返る「この道ひとすじ」に、タイトルからして暑苦しい「情熱だけが燃料の蒸気機関車」と、まさにラッパ我リヤらしい、自己主張の強いリリックを、ヘヴィーなトラックにのせて力強くラップするスタイルの楽曲が続きます。

ちなみにゲスト陣もかなり豪華で、かの般若やR-指定をはじめ、梅田サイファーのKZ、KBDに、異色なところではドラえもんのジャイアン役としてもおなじみの木村昴も参加。こちらもかなり暑いラップを聴かせてくれています。

前作「ULTRA HARD」は彼ららしいヘヴィーな楽曲と、ポップな作品がほどよくバランスされており、音楽的な幅も広がった傑作と感じました。ただ正直なところ本作に関しては、良くも悪くもラッパ我リヤらしい作品が並んでおり、音楽的な広がりという点では前作と比べると、物足りなさを感じました。また、「CHALLENGER」というタイトルとは裏腹に、作風としては「いつものラッパ我リヤ」といった感じで、挑戦的な作品はあまりありません。ラッパ我リヤのファンにとっては、おそらく「待ってました」といった感じのする彼らの王道とも言えるアルバムだったのですが、挑戦という観点では、むしろ前作の方が「CHALLENGER」な内容だったように感じました。

実にラッパ我リヤらしいアルバムになっていた本作。正直、この「暑苦しさ」「自己主張の強さ」は好き嫌いがありそうですし、個人的にも正直、ちょっと苦手に感じてしまう部分も否定できません。そういう意味でも前作の方がよかったと思うのですが・・・。ただ逆に、この「暑苦しさ」「自己主張の強さ」が壺にはまるのならば、かなり気に入る傑作になっていたのではないでしょうか。そういう意味では彼ららしい作品ですが、若干人を選ぶアルバムかな、とも感じた1枚でした。

評価:★★★★

ラッパ我リヤ 過去の作品
ULTRA HARD


ほかに聴いたアルバム

Neo Standard/Night Tempo

主に80年代の日本の歌謡曲を取り上げ、再構築したアルバムで注目を集める韓国人DJのNight Tempo。特に、今、海外でも注目を集めているシティポップというジャンルを広めた功績でも注目を集めています。本作はそんな彼の「新作」をあつめたアルバム。小泉今日子や中山美穂、渡辺満里奈や早見優といった往年の80年代アイドルがズラリと参加者に名前を並べている点でも注目を集めています。ただ・・・内容的には残念ながらいささか中途半端。リズミカルなエレクトロチューンがメインなのですが、特に80年代っぽさも感じませんし、シティポップ的な要素も薄い感じ。Night Tempoの追い求めているジャンルのイメージはあまり反映されていません。本人がつくる楽曲は、DJとして取り上げる楽曲とは別といった感じでしょうか。これはこれで悪いアルバムではないかもしれませんが、期待はずれだったかも・・・。

評価:★★★

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2023年11月27日 (月)

ジブリソングを素直に楽しめる

Title:スタジオジブリトリビュートアルバム「ジブリをうたう」

何月号か忘れたのですが、「rockin'on」で、サマソニで来日するblurデーモン・アルバーンのインタビュー記事が載っていたのですが、そこで、来日した際に足を運びたい場所として「ジブリパーク」の名前があげられていました。以前なら、観光地的にはほとんど無視されがちだった名古屋近辺でしたが、「ジブリパーク」が世界的な観光地として名前があがることになった点、地元民としては非常にうれしかったのですが、それ以上に「ジブリ」というブランドが世界的に浸透している点をあらためて感じたインタビュー記事でした。

本作は、そんなスタジオジブリの作品を彩る楽曲を、様々なミュージシャンたちがカバーしたトリビュートアルバム。武部聡志プロデュースによる作品だそうですが、豪華なメンバーがジブリの楽曲をカバーしています。ただ、参加しているミュージシャンは、家入レオやYOASOBIの幾田りら、ももクロの玉井詩織や木村カエラといった、どちらかというと「ポップ寄り」のミュージシャンが占める中、ちょっと目を惹いたのがくるり岸田繁。それもカバーした楽曲が「となりのトトロ」と、ともすればジブリ楽曲の人気No.1を誇りそうな曲なだけに、特に目立ちました。

ただ、「ポップ寄り」のミュージシャンが並んでいることからも予想は出来るのですが、基本的には原曲に沿ったカバーとなっており、このカバーで雰囲気がガラリと変わったような目新しいカバーはありません。あえて言えば、前述の「となりのトトロ」は、原曲の女性ボーカルが、男性ボーカルにガラリと変わった点くらいでしょうか。もっとも岸田繁はシンプルにポップにまとめあげており、「となりのトトロ」のイメージを大きく変わるものではありませんでした。

その他に目立ったカバーとしてはLittle Glee Monster「テルーの唄」で、もともと原曲から伸びやかなボーカルを聴かせる、ボーカリストの力量が試される曲なのですが、その点はさすが彼女たちがしっかりと原曲の魅力を伝えています。またWakanaの「もののけ姫」も、原曲の幽玄な雰囲気をしっかり伝えるカバーに。Wakanaというミュージシャンははじめて知ったのですが、Kalafinaの元メンバーなんですね。その実力がしっかりと伝わるカバーでした。

幾田りらの「いのちの名前」も清涼感あるボーカルが魅力的ですし、家入レオの「君をのせて」もエキゾチックな雰囲気のカバーは彼女のイメージにもピッタリとマッチ。玉井詩織の「風の谷のナウシカ」も、アイドルっぽい雰囲気となっているのですが、もともとからアイドルっぽさを感じる楽曲だっただけに彼女のボーカルにもピッタリとマッチ。また、木村カエラの「ルージュの伝言」もカエラらしい明るいカバーに仕上がっています。

「テルーの唄」「もののけ姫」のようなボーカルの力量が問われる曲は、しっかりと力のあるボーカリストを配しており、さらに他の曲に関しても、ボーカルのタイプと曲の雰囲気がピッタリとマッチ。ここらへんの差配に関しては、プロデューサーの武部聡志の力を感じさせますし、だからこそ聴いていて全く違和感なく楽しめるカバーアルバムに仕上がっていました。

ただ逆に、そういった意味では意外性がない、という点はマイナスだったようにも感じます。1曲2曲は、例えば原曲の雰囲気をガラリと変えるようなロックやパンクなカバーだったり、原曲をバラバラに解体するようなエレクトロやポストロック系のカバーがあったらおもしろかったなぁ、とは強く感じました。

もっとも、おそらくこのトリビュートアルバムの趣旨としては、音楽的なおもしろさを求める音楽ファン向けというよりは、素直に聴いてみて無難に楽しめるような、ライトリスナー層向けだからこそ、このようなプロダクションとなったのでしょう。そういう意味では私の感じたマイナス点については、企画の趣旨からすると的外れなのかもしれませんが・・・ただ、それでもやはり1、2曲は冒険してほしかったなぁ、とは感じました。

もちろん、もっともそれだけからこそ、原曲の雰囲気を崩すことなく、素直に聴いていて楽しめるポップアルバムに仕上がっていたと思います。参加ミュージシャンに興味がある方はお勧めのアルバム。またジブリソングが好きなら素直に楽しめるトリビュートアルバムでした。

評価:★★★★


ほかに聴いたアルバム

Journey/SPECIAL OTHERS

スペアザの9枚目となるオリジナルアルバム。毎月25日に「ニコニコの日」と題してリリースしてきた配信シングルをすべて含む作品。スペアザといえば、陽気で明るいインストバンドというイメージがあるのですが、今回はやはり「ニコニコの日」にリリースした作品が中心だからでしょうか。いつも以上に陽気で明るいインストポップが並んだ作品となっていました。気軽に楽しめる1枚です。

評価:★★★★

SPECIAL OTHERS 過去の作品
QUEST
PB
THE GUIDE
SPECIAL OTHERS
Have a Nice Day
Live at 日本武道館 130629~SPE SUMMIT 2013~
LIGHT(SPECIAL OTHERS ACOUSTIC)
WINDOW
SPECIAL OTHERS II
Telepathy(SPECIAL OTHERS ACOUSTIC)
WAVE
Anniversary

Blue Birds/SING LIKE TALKING

SING LIKE TALKING約2年ぶりの新作は、表題曲を含む新曲3曲+ライブ音源3曲の計6曲入りのEP盤。実質的なシングルのような作品ですが。ただ、新曲に関しては、悪くはないけども微妙・・・といった感じ。彼ららしいメランコリックでメロディアスな作品なのですが、楽曲のインパクトという面では平凡。聴いた後、いまひとつ印象に残らなかった・・・。ただ、良かったのは初回限定盤についてくるDisc2で、こちらは架空のラジオ局"radio JAOR"による、SING LIKE TALKINGの代表曲をFMラジオ風でノンストップでつなげたアルバム。よくあるDJ Mix盤のように、途中でブツ切りになっている感じではなく、基本的に全曲ほぼフルで収録されており、ベスト盤的な感覚で楽しめるアルバムになっていました。こちらは素直にSING LIKE TALKINGの曲の良さを楽しめるアルバムでした。

評価:★★★★

SING LIKE TALKING 過去の作品
Empowerment
Befriend
Anthology
Heart of Gold
3rd REUNION

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2023年11月26日 (日)

TOWA TEI 3作。ちょっと遅くなったものも含みます。

今回は、先日、2枚同時にアルバムをリリースしたTOWA TEIの新作の紹介です。

Title:TOUCH
Musician:TOWA TEI

まず全12曲入りのアルバム「TOUCH」。全編軽快なエレクトロのインストアルバムなのですが、全曲、バラエティー富んだ作風で様々なサウンドを取り入れた、TOWA TEIの広い音楽的嗜好を感じさせる作品でした。「EAR CANDY」ではファンキーなリズムにキュートな女性ボーカルの入ったキュートなポップチューン。「HAND HABBIT」ではトランペットが哀愁感あるフレーズを奏でながらも、どこか和風なサウンドが魅力的。「SEA CHANGE」は、タイトル通り、海の中にいるかのようなドリーミーなサウンドが特徴的ですし、「SNOW SLOW」では軽快なピコピコサウンドが楽しい楽曲に。「AKASAKA」も様々なサウンドをサンプリングして、どこかユーモラスなポップに仕上がっています。

ちなみにゲスト陣もなかなか豪華で、「HOLD ON!」でタイトルを叫んでいるのはかの細野晴臣。「EAR CANDY」でキュートなボーカルを聴かせてくれるのはクラムボンの原田郁子。さらに本作唯一の歌モノとなっている「RADIO(DJ)」でボーカルを取っているのは、今年、残念ながら鬼籍に入ってしまった高橋幸宏。豪華なゲスト陣が参加している点も大きな魅力でした。

全体的にどこかユーモラスで、ちょっとひねくれて、でもとてもポップで楽しいラウンジ風のインストアルバムに仕上がっていた本作。実にTOWA TEIらしいアルバムと言える作品だったと思います。聴いていて、素直に楽しくなる、そんな1枚でした。

評価:★★★★★

Title:ZOUNDTRACKS
Musician:TOWA TEI

そして本作は、その「TOUCH」と同時リリースとなったもう1枚のアルバム。こちらも「TOUCH」同様、TOWA TEIの幅広い音楽性が楽しめるアルバムに。ちょっとスペーシーな「MUSE」からスタートし、「FRESH!」は様々な音をサンプリングした楽しくコミカルな曲に。不気味でちょっとトライバルな要素のある「2BAD」は、どこかゲームソング風。「OPEN」の後半ではチップチューン的なサウンドも取り入れています。

ただ「TOUCH」と大きく異なる点は、「TOUCH」が多彩なゲストが参加したのに対して、本作ではすべてテイ・トウワ一人の手によってつくられたという点。彼一人のみによって作成されるという点も、これはこれで非常に挑戦的、と言えるかもしれません。

また、「ZOUNDTRACKS」というタイトルの通り、アルバム全体として、どこか映画やゲームのサントラ盤のような、そんな楽曲が目立ったような感じがします。しっかりとしたフレーズを持ったポップな歌を聴かせるというよりも、ワンアイディアを具体化した作品に仕上がっている、そんな印象でしょうか。テイ・トウワ一人の手によるものだからこそ、その点はより「挑戦的」になった作風だったのではないでしょうか。

そのため、ポピュラリティーという点では「TOUCH」よりも薄かったかもしれませんが、それはそれとしてTOWA TEIらしさがしっかりと発揮されたアルバムだったと思います。こちらも聴いていて素直に楽しくなる1枚でした。

評価:★★★★

で、実はもう1枚、2021年にリリースしたアルバムが聴き漏れていたので、いまさらながら聴いてみたのですが・・・

Title:LP
Musician:TOWA TEI

今年リリースされた「TOUCH」は、基本的にこの2021年にリリースされた「LP」の続編的な扱いだそうで、確かに方向性としてはこの2枚、とても近いアルバムだったと思います。どちらも様々な音楽や様々な音を取り込んでポップにまとめあげていますし、また、豪華なゲスト陣の参加も特徴となっています。

こちらもラテンのリズムを取り入れた「BIRTHDAY」からスタートし、キュートでメロウな女性ボーカルが特徴的な「FABULOUS」。音数を減らしてダイナミックに聴かせる「EMEZ」に、哀愁感あるトランペットを加えてドリーミーにまとめあげている「NOMADOLOGIE」とバラエティー富んだエレクトロチューンを楽しめます。

ゲスト陣も「BIRTHDAY」では細野晴臣、「CONSUMER ELECTRONICS」では高橋幸宏と、こちらも「TOUCH」と同様にYMOの2人が参加。その特徴的な歌声を聴かせてくれています。全体的には「TOUCH」と同様、どこかコミカルさも感じる軽快なエレクトロチューンがメインの作品。そして「TOUCH」と同じく、聴いていて素直に楽しくなるような1枚でした。

評価:★★★★★

TOWA TEI 過去の作品
BIG FUN
MACH2012
LUCKY
CUTE
EMO
ARBEIT

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