アルバムレビュー(邦楽)2020年

2020年11月24日 (火)

コロナ禍で中止になったツアーのライブ音源

Title:ザ・クロマニヨンズ ツアー PUNCH 2019-2020
Musician:ザ・クロマニヨンズ

コロナ禍の中、ライブの先行きが全く見えません。緊急事態宣言解除後は徐々にライブも再開。恐る恐るという状況ながらも、ライブは復活しつつあります。ただ、とはいえまだまだその開催は限定的。さらにここ最近の「第三波」到来により、今後の行く末も見渡せない状況となってしまっています。誰にも気兼ねなく、満員のライブ会場で、大きな声を出しながらライブを出来る日がいつになるのか・・・ともすれば悲観的な状況になってしまいます。

そんな状況の中リリースされたのが今回のザ・クロマニヨンズのライブアルバム。昨年リリースされたアルバム「PUNCH」からのライブツアーの模様を収録したライブ盤なのですが、ご多分に漏れず、このツアーも途中にコロナ禍によって中止という憂き目にあってしまいました。そんな「幻のツアー」(といううたい文句なのですが、中止になったとはいえ、ある程度は実施されているライブなだけに「幻」とはちょっと違う感じもするのですが)の模様を収録したライブアルバムとなっています。

結成から14年目。気が付いたらヒロト&マーシーのバンドとしてはもっとも長く活動しているバンドとなったクロマニヨンズ。もちろんそのライブにも定評のある彼らですが、ライブ盤は2013年にリリースされた「ザ・クロマニヨンズ ツアー 2013 イエティ 対 クロマニヨン」以来2作目ということになります。そう考えると、ライブバンドの彼らにしてみれば、決してライブ盤の数は多くありません。それにも関わらず、あえてライブアルバムをリリースするというのは、このコロナ禍の中で、ライブの実施もままならない中、少しでもライブの熱狂をファンに伝えたい、そんなクロマニヨンズの想いがあるのでしょう。

そしてその想いを反映するかのように、ライブの雰囲気をそのままパッケージしたライブアルバムに仕上がっていました。「PUNCH」直後のツアーということもあり、最初は「PUNCH」の曲をそのまま曲順に沿って演奏。A面曲を終了後、「旅立ちはネアンデルタール」などを挟んで、その後はB面曲に。こちらもアルバムのラスト曲「ロケッティア」こそ最後の方にまわされているものの、基本的に曲順に沿ってライブはすすんでいきます。そしてアルバム曲を一通り演奏した後は「エイトビート」「エルビス(仮)」「ナンバーワン野郎!」などが並び、さらには終盤は「タリホー」で盛り上がる・・・全23曲。アルバムの曲を中心に、しかし盛り上がる代表曲はしっかりと演奏して会場を盛り上げる、典型的といえば典型的な展開ながらも、理想的な構成のライブになっていました。

ライブ音源にはしっかりと観客からの歓声も入っています。基本的にMCは入っていないのですが、ファンの歓声を含め、その場の「音」をすべて収めるような録音になっていることもあり、ライブの臨場感がしっかりと伝わってきます。そして、あらためて感じるのですが、ザ・クロマニヨンズの曲は本当にライブ向きだな、ということを強く感じます。楽曲は非常にシンプル。もともとヒロト&マーシーのバンドの曲はシンプルなパンクロックがメインなのですが、このシンプルさがザ・クロマニヨンズの曲ではさらに拍車がかかっています。しかし、シンプルであるからこそバンドとしての実力が試されているのは間違いなく、そしてザ・クロマニヨンズはライブにおいて、そのバンドとしての実力をいかんなく発揮する演奏を聴かせてくれています。

そんな彼らのライブの魅力をしっかりと伝えてくれる、そんなライブアルバムになっていました。あらためて、素晴らしいライブを1日も早く聴きたい!そう感じる内容になっていました。満員のライブハウスでのザ・クロマニヨンズのライブが、次、いつになるかはわからないのですが・・・その日が1日でも早くくることを願って、今はこのライブアルバムで、疑似ライブを楽しみたいところです。

評価:★★★★★

ザ・クロマニヨンズ 過去の作品
CAVE PARTY
ファイヤーエイジ
MONDO ROCCIA
Oi! Um bobo
ACE ROCKER
YETI vs CROMAGNON
ザ・クロマニヨンズ ツアー2013 イエティ対クロマニヨン
13 PEBBLES~Single Collection~
20 FLAKES~Coupling Collection~
GUMBO INFERNO
JUNGLE9
BIMBOROLL
ラッキー&ヘブン
レインボーサンダー
PUNCH


ほかに聴いたアルバム

Bedroom Joule/[Alexandros]

[Alexandros]のニューアルバムは、「新型コロナウイルス「COVID-19」感染拡大の状況下、最前線で働く人や自宅で過ごす人が眠る前にベッドルームでリラックスして聴き、楽しんでもらえるように」という思いから作られたコンセプトアルバム。各メンバーの自宅からリモートで制作されたアルバムで、基本的に過去の作品のリアレンジが主となっています。6月に配信でリリースされた後、数曲加えた8月にCDでもリリースされました。アレンジは、本作のコンセプトに沿った、ゆっくりと聴かせるようなアレンジがメイン。そのため率直に言って「地味」な点は否めず、当初、配信で聴いた時はさほどピンと来ない作品でした。ただ、CDリリースに合わせてインスト曲などが入ることにより、アルバム全体として起伏が生じて、アルバム全体としてのインパクトもグッと増した印象が。エレクトロサウンドとアコースティックな音のバランスも絶妙で、コンセプト通り、ゆっくりと味わえるアルバムになっていました。

評価:★★★★★

[Alexandros] 過去の作品
Schwarzenegger([Champagne])
ALXD
EXIST!
Sleepless in Brooklyn

FRAGILE/LAMP IN TERREN

これがメジャー5作目となるギターロックバンドの約1年10ヶ月ぶりの新作。序盤はドリーミーでスケール感のあるミディアムテンポの楽曲で、正直、BUMP OF CHICKENからの影響…というか、そのままといった楽曲。ただ、基本的にはメロディーラインには聴かせる曲が少なくなく、アコギで切ないメロをしんみり聴かせる「チョコレート」は絶品。中盤あたりまでは彼ららしさも出ている傑作の様相を呈していたのですが、後半はどこにでもいるような平凡なギターロック路線に戻ってしまい、最後はちょっとダレてしまいました。バンプに似ているという点も含めて、それなりの良作ながらもどこか物足りない…というのは以前の彼らのアルバムと同様。ある意味、非常に惜しいバンドに感じます。ここらへん、あとひとつ壁を乗り越えたらブレイクしそうなのですが。

評価:★★★★

LAMP IN TERREN 過去の作品
silver lining
LIFE PROBE
fantasia
The Naked Blues

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2020年11月22日 (日)

18歳未満お断り?

Title:ブルーフィルム-Revival-
Musician:cali≠gari

いや~いきなりドギツイ18禁的なジャケットで申し訳ありません。今回紹介するアルバムは、もともとcali≠gariが2000年にリリースしていた通称「エロアルバム」というアルバム。もともと、現在のボーカリスト石井秀仁が加入直後にリリースされたアルバムで、インディーズでの当初リリース時に完売。翌年には2ndプレスもリリースされたものの、こちらも現在では廃盤となり入手困難。そんな中、今回は新曲に新たなカバー曲を追加した全10曲入りのアルバムとしてリニューアル。すべて新録という、かなりの力の入れようの新作となっています。

オリジナル盤リリース時はオリジナルコンドームが購入特典として付いてきたという、とことん「エロ」路線を突き進んだ本作。楽曲もここで堂々と書くのもはばかられるような(笑)エロエロの楽曲が続きます。そんな未成年お断りの下ネタ満載のアルバムなのですが、これがビックリするほどカッコいい楽曲の連続になっています。まず1曲目は今回あらたに収録されたカバー曲。イタリアのDJユニットSPANKERSが2000年にリリースして大ヒットを記録した「Sex On The Beach」のカバーなのですが、原曲のおバカなパーティーチューンの雰囲気が一転。ヘヴィーなギターサウンドでゴリゴリと攻めてくる、ヘヴィーなパンクナンバーに早変わり。これ、原曲よりカッコよくない?と思ってしまう、cali≠gari流の名カバーに仕上がっています。

オリジナル版では冒頭を飾っていた「エロトピア」もヘヴィーなギターリフをバックに、妖艶でエロチックな雰囲気を醸し出しつつ、ヘヴィーなロックナンバーになっています。さらに続く「ミルクセヰキ」は軽快なスカ調のナンバー。タイトルは間違いなくダブルミーニングなんでしょう。ミルクを男性のあれに例える手法は、戦前のブルースナンバーでもよく見られる手法なのである意味、お決まりともいえる歌詞。ただリズミカルなスカのリズムが楽しいロックナンバーに仕上がっています。

その後もジャジーなアレンジを加えて妖艶に聴かせる「真空回廊」、バンドサウンドにシンセの音色を加えてメランコリックに聴かせる「原色エレガント」、ノイジーでサイケなアレンジでドリーミーに聴かせる「さかしま」など、それぞれバリエーションある作風ながらもcali≠gariの音楽性の広さを感じさせる楽曲に仕上がっており、「エロアルバム」というギミックを用いつつ、その実、アルバムの内容としては彼らのバンドとしての実力を存分に発揮した楽曲が並んでいます。

今回、新曲として収録された「デリヘルボーイズ!デリヘルガールズ!」もかなりインパクトの強いポップなナンバーに。ポップで軽快なギターロックのナンバーになっており、絶妙に加わるファンキーなリズムも楽しいナンバー。90年代のJ-POPの雰囲気も感じられる楽曲になっており、岡村靖幸あたりが好きなら気にいるかも?ある種のなつかしさも感じました。タイトル通りの爽やかに仕上げつつも、エロい歌詞も非常にユニークです。

ラストを飾るタイトルチューン「ブルーフィルム」もまた、パンキッシュで賑やかなバンドサウンドも楽しい、メロディーは至ってポップなギターロックナンバー。メロディーラインは爽やかにまとめつつ、どこか切なく、メランコリックさを歌詞も妙に耳に残る楽曲に仕上がっています。

また、実験的で非常にユニークだったのがインストナンバー「音セックス2020」で、様々な音をサンプリングし、それを絡み合わせることで音でセックスを表現したようなナンバー。これもまたエロネタながらも、かなりサウンドとして挑戦的な楽曲となっており、非常に楽しくも、同時に彼らの挑戦にうならせるような楽曲になっていました。

「エロ」というある種の飛び道具を用いつつ、楽曲としてはかなり凝った名曲がそろっている非常にカッコいいアルバムになっていた本作。cali≠gariのバンドとしての実力を存分に発揮したアルバムになっています。「エロ」というギミックを用いたからこそ、バンドとしての自由度が高まった結果、より傑作がリリースされ、ということかもしれません。ジャケット写真で引いてしまった方でも是非聴いてほしい傑作アルバム。ロックのアルバムとして文句なしにカッコいい1枚でした。

評価:★★★★★

cali≠gari 過去の作品
10
cali≠gariの世界

11
12
13
この雨に撃たれて


ほかに聴いたアルバム

はじまっていく たかまっていく E.P./サンボマスター

サンボマスターの新作は、タイアップ付の新曲2曲とライブ音源3曲からなる5曲入りのEP盤。タイトルチューンである「はじまっていく たかまっていく」はラップ的な要素も入れて意欲的な部分もあったりするものの、全体的にシャウトもサウンドも抑えめ。2曲ともタイアップを意識したようなポップ寄りの曲になっており、サンボマスターとしての魅力は薄め。ライブ音源の方も、パンクな彼らを前面に押し出した、といった感じではなく、全体的に「売り」を意識したようなアルバムになっていたのはちょっと残念でした。

評価:★★★

サンボマスター 過去の作品
音楽の子供はみな歌う
きみのためにつよくなりたい
サンボマスター究極ベスト
ロックンロール イズ ノット デッド
終わらないミラクルの予感アルバム
サンボマスターとキミ
YES

Walking On Fire/GLIM SPANKY

GLIM SPANKYの最新作は、ギターサウンドといよりもバンド全体としてダイナミックな作風に聴かせている点が特徴的。デビュー当初の60年代的なルーツ志向から、前作で感じたもうちょっと時代が下ったハードロック色という方向性は今回のアルバムもそのまま。非常に力強いサウンドがインパクトになっています。同じルーツロック志向ながらも微妙にスタンスを変えつつ活動を続ける彼女たち。このハードロック路線をさらに先鋭化していくのでしょうか?

評価:★★★★

GLIM SPANKY 過去の作品
ワイルド・サイドを行け
Next One
I STAND ALONE
BIZARRE CARNIVAL
LOOKING FOR THE MAGIC

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2020年11月17日 (火)

非常に「器用な」ユニット

Title:かつて天才だった俺たちへ
Musician:Creepy Nuts

MCのR-指定とDJのDJ松永によるユニット、Creepy Nutsのミニアルバム。Creepy Nutsの2人といえば、以前から非常に高い評判で知られていたユニット。R-指定は「ULTIMATE MC BATTLE」で3年連続グランドチャンピオンに輝いたほか、テレビ朝日系バラエティー「フリースタイルダンジョン」で、般若の後をついで「ラスボス」に就任するなど、高いスキルで知られていますし、一方、DJ松永の方も「DMC WORLD DJ CHAMPIONSHIPS 2019」で優勝するなど、非常に高いスキルを持つメンバー同士のユニットとなっています。

私も以前から彼らのことは知っていましたが、いままでアルバムを聴く機会がなく、音源を聴くのがこれが初。ただ今回のアルバム、ミニアルバムということなのですが、「ラジオ盤」ということで楽曲の間に彼らのトークが入り、全70分近い長さのボリューミーな内容に。タイトル通り、彼らのラジオ番組を聴いているような、そんなユニークな構成になっています。

そんなはじめて聴いた彼らの楽曲なのですが、まずは聴いてみて、彼らが非常に器用なユニットだな、ということを感じました。というのも、今回収録されている全7曲、ある意味バラバラな音楽性のユニークな内容に仕上がっていたからです。まず「ヘルレイザー」はホーンセッションの入ってムーディーな雰囲気の曲からスタートしたかと思えば、「耳無し芳一style」はトラップのサウンドを取り入れた、今風のサウンドが耳に残る楽曲に。かと思えば「オトナ」はメランコリックな歌モノになっていますし、「日曜日よりの使者」は、なんと菅田将暉と組んでハイロウズのカバーに挑戦。同じく菅田将暉と組んだ「サントラ」はむしろ青春パンク路線か?と思わせるようなロックな楽曲になっていますし、メロディアスな「Dr.フランケンシュタイン」から、ラストを飾るタイトルチューン「かつて天才だった俺たちへ」は軽快なHIP HOPチューンながらも、ジャジーな雰囲気のベースラインやドラムスが印象的な楽曲に仕上がっています。

全体的にはゴリゴリとラップを聴かせるスタイルというよりは、ほどよく歌も入ってメロディアスなポップに仕上げており聴きやすい内容に。ただ、最初にも書いた通り、R-指定もDJ松永も共に高いスキルの持ち主、ということもあって、これらバリエーションある楽曲を卒なくこなしちゃっている、という印象を受けました。ある意味、楽曲のスタイルがバラバラなだけに、Creepy Nutsらしさというのがちょっと見えにくいかも?と思わないこともないのですが、どの曲も軽快なポップにまとめている点が彼ららしさ、と言えるのかもしれません。

今回は「ラジオ盤」ということに曲間にトークが入る点も特徴的。正直言ってしまうと、彼らのトークは決して凝った上手いものではなく、何度も聴くような内容ではないかもしれません。ただ、それぞれ楽曲がどのようなコンセプトで作成されているのかを、軽快なトークの中でちゃんと語っており、そういう意味でははじめて彼らの楽曲を聴く人にとっても、彼らのことをよく知ることが出来る構成になっている、と言えるかもしれません。また、楽曲のタイプがバラバラなだけに、曲間のトークがちょうど楽曲同士の連結環の役割を果たしている部分もありました。そういう意味ではよく出来た構成と言えるのかもしれません。

ちなみに「ラジオ盤」のトークの中ではなぜか語られていなかったのですが、配信音源はトーク部分がカットされているため、楽曲部分だけまとめて聴けます。とりあえず彼らの曲を聴いてみたいから、トークは・・・という方にはこちらが良いのかも。ただ、彼らがどのようなミュージシャンか知るためには「ラジオ盤」のトーク部分は最適なので、一度はチェックしてみて損はないかも。個人的にはちょっと器用すぎるかも?という印象を受けた部分もあったのですが、次回作も聴いてみたいと思わせる、そんなユニットでした。

評価:★★★★


ほかに聴いたアルバム

ABRACADABRA/BUCK-TICK

前々作「アトム 未来派 No.9」、前作「No.0」とここに来てバンドとしての勢いを感じさせる傑作が続いたBUCK-TICK。それだけにそれに続く最新作である本作も期待しながら聴いたのですが、正直言って前半に関しては、それなりの良作ではあるものの、正直言うと、比較的無難にまとめているかな…という印象を受けてしまいました。ただ、それでも彼ららしいメランコリックなメロディーラインはインパクト十分。ベテランらしい底力を感じます。また中盤以降はエレクトロサウンドを全面的に押し出しているのですが、こちらも力強いビートでインパクトがあり、バンドとしての実力を感じます。前々作、前作ほどではないものの、BUCK-TICKというバンドの衰えを知らない勢いも感じさせる良作に仕上がっていました。

評価:★★★★

BUCK-TICK 過去の作品
memento mori
RAZZLE DAZZLE
夢見る宇宙
或るいはアナーキー
アトム 未来派 No.9
CATALOGUE 1987-2016
No.0

2020/eastern youth

このコロナ禍に襲われた2020年という年をあえてタイトルとしたエモコアバンドeastern youthの新作。非常にヘヴィーでエモーショナルなバンドサウンドとボーカルは相変わらず。比較的前向きなメッセージも多く込められており、コロナ禍で世間全般が暗くなってしまっている今の状況の中だからこその作品という感じもしますし、だからこそ「2020」というアルバムタイトルにしたのかもしれません。ただ、一方では良くも悪くもいつも通りのeastern youthといった感じ。正直言えば目新しさはなかったし、若干「大いなるマンネリ」な気配も。その点は前作「SONGentoJIYU」でも感じたのですが、今回のアルバムではその感覚がより強くなってしまっていました。

評価:★★★★

eastern youth 過去の作品
地球の裏から風が吹く
1996-2001
2001-2006

歩幅と太陽
心ノ底ニ灯火トモセ
叙景ゼロ番地
ボトムオブザワールド
SONGentoJIYU

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2020年11月10日 (火)

あえて「今」をパッケージ

Title:NOW
Musician:クレイジーケンバンド

ほぼ毎年、オリジナルアルバムをリリースし続けるクレイジーケンバンド。結成から23年目で20枚目という昨今では珍しいハイペースでアルバムをリリースし続けていますが、このコロナ禍の中でも当然のようにニューアルバムがリリースされました。前作「PACIFIC」から約1年2ヶ月ぶりとなる新譜です。

今回のアルバムは、そんな新型コロナ感染症が蔓延する中で作成された作品となっており、ほとんどが「Stay Home」の環境の中で作成された曲だそうです。おそらく、この2020年という1年は、多くの人たちにとっては早く過ぎ去ってほしい1年ではなかったでしょうか。しかし、今回のアルバム、タイトルからしてあえて「今」という時代をパッケージした作品になっています。クレイジーケンバンドの横山剣はこのアルバムに対して「数年後に『2020年ってこんなだったんだよね』となれば本望」と語っていますが、「混沌とした時代の"夜"と"朝"の間」という表現も用いており、「Stay Home」の環境下で作成したアルバムだったからこそ、この時代の空気感が反映されたアルバムになっていた、ということなのかもしれません。

アルバムの冒頭を飾る「サムライ・ボルサリーノ」などは、まさにそんなコロナ禍を反映したワードが歌詞にも登場しており、「Go toかStayか」「禍が明けたら ハグしような」なんてフレーズが登場しています。楽曲もファンキーなリズムながらもミディアムチューンでどこか気だるさを感じさせる点も、コロナ禍での今の空気を反映させたような曲調に仕上がっています。

ただ、歌詞というよりも、この「今」の空気を包み込んだのは楽曲全体の雰囲気でしょう。基本的に楽曲はいつも通りのクレイジーケンバンドといった感じで目新しさはないのですが、ミディアムチューンのメロウでアンニュイな雰囲気の楽曲が多く並んでいます。ミディアムチューンでねっとりとした雰囲気を醸し出す「IVORY」、ボッサ風の「だから言ったでしょ」、しんみりメロウにムーディーに聴かせる「月夜のステラ」、タイトル通り、どこかドリーミーで気だるさを感じる「夢の夢」など、しっとりと聴かせるタイプの曲が目立つように感じます。

そしてラストを締めくくるのが「Hello,Old New World」という、これもアンニュイな雰囲気が漂うインストチューン。この「古く新しい世界」というのは、まさにコロナ禍で、それに対応した生活様式を強制される、今の状況に当てはまっている、と言えるかもしれません。まさに、2020年という時代にふさわしいアルバムになっていました。

目新しさはないものの、ベテランらしい安定感はしっかりと感じられたアルバム。しんみり聴かせるナンバーが多かっただけにちょっと地味かな?という印象もあるのですが、逆に統一感があり、今の時代へのメッセージ性もしっかりしており、そういう意味でもアルバム全体として実によく出来た作品になっていたと思います。次はまた来年、新譜がリリースされるのでしょうか。その時までには、このコロナ禍から抜け出して、生活様式も以前のスタイルを取り戻していればよいのですが・・・。

評価:★★★★★

クレイジーケンバンド 過去の作品
ZERO
ガール!ガール!ガール!
CRAZY KEN BAND BEST 鶴
CRAZY KEN BAND BEST 亀

MINT CONDITION
Single Collection/P-VINE YEARS
ITALIAN GARDEN
FLYING SAUCER
フリー・ソウル・クレイジー・ケン・バンド
Spark Plug
もうすっかりあれなんだよね
香港的士-Hong Kong Taxi-
CRAZY KEN BAND ALL TIME BEST 愛の世界
GOING TO A GO-GO
PACIFIC


ほかに聴いたアルバム

CHAOSMOLOGY

ロックバンド9mm Parabellum Bulletに対するトリビュートアルバム。全2枚組からなる内容で、Disc1は「歌盤」、Disc2は「instrumental盤」として、それぞれ歌あり曲を収録したロックバンド中心のトリビュートと、インストバンドによるトリビュートから構成されています。

Disc1の「歌盤」に関しては、正直、いまひとつ面白味はありませんでした。もともと9mm Parabellum Bulletは癖の強いバンドなのですが、各バンド、その9mmの作風をそのままなぞっただけのカバーといった感じでバンドとしての個性を出せておらず、面白味はゼロ。唯一、チャランポランタンだけが、自らの土俵に9mmの曲を引きずり込み、彼女たちらしいカバーに仕上げていたユニークな内容になっていました。一方で非常におもしろかったのがインスト盤。バンドそれぞれ自らの解釈により9mmの曲をカバーしており、個性あふれるバリエーションあるカバーになっていました。

正直、「歌盤」は参加バンドの力不足が目立ってしまった感も・・・。一方、「instrumental盤」は各々のバンドの実力がはっきりと感じられた良カバーでした。評価は両者合わせてといった感じで。

評価:★★★★

LIVE IN HEAVEN/曽我部恵一

コロナ禍の中の7月14日に、渋谷WWW Xで行われたラップセットでの曽我部恵一のライブ音源をおさめたライブアルバム。HIP HOPイベントの一環として行われたステージだったらしく、アルバム「ヘブン」をベースとした全編ラップによるステージとなっています。これはこれで貴重なステージで聴きごたえがあったのですが、バンドによる演奏だったこともあり、若干HIP HOPにもロックにもどっちつかずだったような印象を受けてしまう点が気になりました。元となったアルバム「ヘブン」でも、どこかHIP HOPに慣れていない素人っぽさが感じられて、それがひとつの魅力ではあったのですが、ライブではそういうHIP HOPに慣れていない部分がチグハグさとして出てしまった感もありました。

ただ今回のアルバム、コロナ流行後のライブをおさめたアルバムとしては、私が聴いた中で(配信などをのぞいて)はじめて・・・かも??少しずつライブイベントも戻って来たみたいで、このまま以前みたいにライブが普通に行われる状況に1日も早く戻ってくれればいいのですが・・・。

評価:★★★★

曽我部恵一 過去の作品
キラキラ!(曽我部恵一BAND)
ハピネス!(曽我部恵一BAND)
ソカバンのみんなのロック!(曽我部恵一BAND)
Sings
けいちゃん
LIVE LOVE
トーキョー・コーリング(曽我部恵一BAND)
曽我部恵一 BEST 2001-2013
My Friend Keiichi
ヘブン
There is no place like Tokyo today!
The Best Of Keiichi Sokabe -The Rose Years 2004-2019-
純情LIVE(曽我部恵一と真黒毛ぼっくす)

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2020年11月 9日 (月)

愛すること

Title:ねえみんな大好きだよ
Musician:銀杏BOYZ

実に前作から約6年半ぶりとなる銀杏BOYZのニューアルバム。ご存じの通り、GOING STEADY解散後、峯田和伸が2003年に結成した銀杏BOYZ。2005年には2枚のアルバムを同時リリースした後、ライブを中心に活動を続け、それからちょうど9年という間隔をあけて、まだ2枚同時にアルバムをリリース。そこからさらに約6年半という月日をあげて、ようやくリリースされたニューアルバムが本作です。これが5枚目のアルバムとなるのですが、2005年のリリースも2014年のリリースもいずれも2作同時リリースとなっていますので、事実上、3作目のアルバムと言えるかもしれません。

結成から既に17年が経過している銀杏BOYZ。その間にメンバーも脱退し、現在は峯田和伸のソロプロジェクトとなっていますが、非常に寡作なミュージシャンであることがわかります。逆に言えば、それだけ1作1作への力の入れようがすごい、とも言えるわけで、実際、今回のアルバムも、峯田和伸のあふれだしそうな思いがそのままつまったようなアルバムになっています。

彼の「思い」がまずはサウンド面であふれ出しているのはアルバムの冒頭。「DO YOU LIKE ME」のスタートは強烈なノイズからスタート。2014年にリリースされたアルバム「BEACH」は全編、ノイズで埋め尽くされたアルバムになっていましたが、それを彷彿とさせる出だしになっています。ただハードコアパンクなこの曲、「ねえみんな大好きだよ」というアルバムタイトルとは裏腹な「DO YOU LIKE ME」と問いかける内容に、「愛されたい」という彼の感情がストレートにこもっており、峯田らしい赤裸々な歌詞も大きなインパクトとなっています。

続く「SKOOL PILL」も「DO YOU LIKE ME」同様のハードコアパンクが続き、GOING STEADY時代の「DON'T TRUST OVER THIRTY」をセルフカバーした「大人全滅」もヘヴィーなギターサウンドをバックに歌い上げるパンキッシュなナンバー。まさに序盤は峯田のあふれる思いが、そのままハードコアパンクという形に体現化されたような楽曲が並びます。

ただ一方、ここからグッと変わるのが中盤以降。続く「アーメン・ザーメン・メリーチェイン」は、ギターノイズが前面に流れているものの、主軸となっているのはメランコリックなメロでしんみりと歌われる「歌」。あのYUKIと共演した「恋は永遠」に至っては、大滝詠一を彷彿させるような分厚いサウンドでキュートなポップチューンに。「GOD SAVE THE わーるど」も軽快なエレクトロアレンジのポップチューンとなっており、アルバム全体を聴き終わると、むしろそのメロディアスな歌が印象に残り、ポップなアルバムという印象を受けます。

しかしそんな中でも強烈に響いてくるのは、「愛すること」をストレートに、時にはその本質部分をえぐりだすように描いた、峯田和伸の歌詞。例えば「骨」では

「愛しちゃいたい
愛しちゃいたい
愛しちゃいたい
きもいね。しゃあないね。
骨までしゃぶらせて」
(「骨」より 作詞 峯田和伸)

と、かなり赤裸々な歌詞が強いインパクトを残します。そしてなにより歌詞で強い印象を受けるのが「生きたい」でしょう。12分に及ぶ長いこの楽曲では、峯田和伸の思いが滔々と語られています。なによりもタイトル通り「生きたい」と歌い上げるこの曲ですが、同時に愛し愛されることを綴っています。そしてこの曲を聴くと、アルバムタイトルにもなり、アルバム全体で歌われている「愛すること」「愛されること」というのは、すなわち、「生きること」につながっている・・・そう強く感じられる楽曲になっており、まさにこのアルバムの集大成的な1曲と言えるでしょう。

ノイズを前面に押し出した曲調や峯田和伸の思いを詰め込んだ歌詞の世界といい、聴き終わってかなり重く心に響いてくるアルバム。確かに、これだけの思いを詰め込んだアルバムを作り上げるのだから、寡作にならざるを得ないよなぁ・・・と思ってしまうアルバムでした。いろいろな意味でズッシリと重たい、すごいアルバムだったと思います。次のアルバムもまた、5、6年後になるのでしょうか。でも、これだけの作品を作り上げるのだから、仕方ないのかなぁ。

評価:★★★★★

銀杏BOYZ 過去の作品
SEX CITY~セックスしたい(銀杏BOYZと壊れたバイブレーターズ)
光のなかに立っていてね
BEACH


ほかに聴いたアルバム

Patrick Vegee/UNISON SQUARE GARDEN

途中、B面ベストのリリースを挟みつつ、オリジナルアルバムとしては前作「MODE MOOD MODE」以来、約2年8ヶ月ぶりとなるニューアルバム。その前作は、バンドとしての勢いがそのままアルバムに反映されたような、まさに脂ののったバンドが、もっとも脂ののった時期にのみリリースできるような傑作アルバムに仕上がっていました。そこから3年近くが経過した本作も、その勢いはまだ止まっていません。ただ、正確に言うと、楽曲のセレクトや構成により勢いを持続させようとしているようなアルバムで、特にアップテンポな楽曲の連続、かつ曲間のあえて狭められたような構成になっており、アルバム全体として疾走感のある内容になっていました。そういう意味でアルバム構成や選曲に頼っているという意味では前作に比べると、という側面があるものの、まだまだやはりバンドとしての勢いは感じられるアルバム。まだまだ彼らの勢いは止まらなさそうです。

評価:★★★★★

UNISON SQUARE GARDEN 過去の作品
CIDER ROAD
Catcher In The Sky
DUGOUT ACCIDENT
Dr.Izzy
MODE MOOD MODE
Bee-Side Sea-Side 〜B-side Collection Album〜

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2020年11月 8日 (日)

バラエティー豊富な作風に音楽的素養を感じる

Title:SUPERMARKET
Musician:藤原さくら

2016年に月9ドラマ「ラヴソング」のヒロイン役に抜擢され、主題歌「Soup」も大ヒットを記録し、一躍話題を呼んだシンガーソングライター藤原さくら。このように書くと、いかにも大手芸能事務所がゴリ押しでプッシュした、典型的なJ-POP系の売れ線シンガー…というイメージを持ってしまうのですが、実はアルバム単位で聴くと、深い音楽的素養と洋楽からの強い影響を感じる実力派シンガーソングライターだった、ということは以前、何度か紹介した彼女のアルバムのレビューでも記載済かと思います。今回のアルバムは、その大ヒットしたシングル「Soup」を収録した「PLAY」から約3年5ヶ月ぶり。途中、ミニアルバムのリリースを挟みつつ、フルアルバムとしては久々となるニューアルバムとなります。

そんな久々となる今回のアルバムなのですが、まず大きな特徴としては、様々なミュージシャンがプロデューサーとして加わり、楽曲の幅がグッと広がった点ではないでしょうか。途中リリースされたミニアルバム「red」「green」ではOvallのmabanuaがプロデューサーとして参加。それはそれでアルバム全体に統一感をもたらす結果となりました。今回のアルバムはmabanuaのほかに、Ovallのメンバーである関口シンゴやSPECIAL OTHERSのYAGI&RYOTAなど、前作「PLAY」で参加していたメンバーに加えて、冨田恵一やスカートの澤部渡などもプロデューサー勢で参加。前作「PLAY」でも多彩なプロデューサーが参加していたのですが、さらにバリエーションが広がっている印象を受けます。

アルバムのスタートは爽快なポップチューン「Super good」からスタート。全英語詞のナンバーで洋楽テイストの強いリズミカルなポップチューンになっています。さらに2曲目「Ami」は彼女自ら編曲を手掛けた楽曲なのですが、こちらはバンドサウンドでロック色も強い、ちょっとメランコリックさも感じるメロディーラインが魅力の楽曲に。メロウなソウルテイストのミディアムチューン「生活」「Right and light」も魅力的。ムーディーな雰囲気の漂う大人なポップに仕上がっています。

その後もホーンセッションも入って軽快なポップスに仕上げている「Monster」や軽快なカントリー風の明るいポップス「BPM」、最後はギターでしんみり聴かせるブルージーな「楽園」など、洋楽テイストも強い魅力的なポップナンバーが続いていきます。一方で「コンクール」などは、ストリングスも入ってムーディーな雰囲気の歌謡曲テイストの強い楽曲になっており、そういう点でもバラエティー豊富な作風を感じさせます。

ロックやポップス、カントリー、ソウル、ブルース、さらには歌謡曲まで、まさに非常に音楽性の幅広さを感じさせる藤原さくらの実力を感じさせるアルバム。作風がバラバラなゆえに、若干アルバム全体としての統一感には欠け、また核になるような楽曲がなかったという点では、インパクトの不足を感じる点、正直、マイナスポイントも感じてしまいます。ただ、もっともっと高い評価を受けてもいいシンガーソングライターであることには間違いありません。幅広いポップス愛好家に是非とも聴いてほしいと感じる、そんな1枚でした。

評価:★★★★★

藤原さくら 過去の作品
PLAY
green
red


ほかに聴いたアルバム

THE ARTIFACTS,UNPLUGGED MUSIC/オサム&ヒロノリ from MOON CHILD

1997年にシングル「ESCAPE」がドラマ主題歌にも起用され大ヒットを記録したバンドMOON CHILD。残念ながら大ヒットはこの1曲のみに終わり、1999年にバンドも解散してしまいます。その後も散発的な再結成が何度か行われたのですが、新たな音源はリリースされず今日に至っています。そんな中、リリースされたのがギターボーカルの佐々木収とギターの秋山浩徳が組んで結成されたこのユニット。楽曲としてはMOON CHILDの代表曲をアコースティックギターでカバーした作品。久しぶりにMOON CHILDの曲を聴いたのですが「ESCAPE」に限らず、ファンキーなサウンドとメロディアスなポップはインパクトがあり、ヒットがほとんど続かなかったのが不思議に感じるほど。売り方が悪かったのかなぁ。アコギのソロも魅力的でしたが、久しぶりにMOON CHILDの原曲も聴きたくなった、そんなカバーアルバムでした。

評価:★★★★★

シングルコレクション+アチコチ/坂本真綾

デビュー25周年を記念してリリースされた坂本真綾のタイトル通りのシングルコレクション。2012年にリリースされたシングルコレクション「シングルコレクション+ミツバチ」以降にリリースされたシングル曲を網羅しているほか、未発表曲や初CD化となるレアトラックも収録した2枚組となるアルバム。とにかく清涼感ある歌声が魅力的で、いままでの作品以上に楽曲のバリエーションが増しているのですが、アコースティックな作風やサウンドの間を聴かせるような隙間のあるアレンジの方が彼女にはマッチしているような感じも。ユーミンの「卒業写真」のカバーも絶品で、彼女のボーカリストとしての魅力も感じさせます。「シングルコレクション+ミツバチ」に収録されていた「やさしさに包まれたなら」のカバーも素晴らしかったので、なにげにユーミンと彼女、相性よいのでは?次は書き下ろし作を依頼してみてもよいのかも??とにかく、これからのさらなる活躍も楽しみです。

評価:★★★★★

坂本真綾 過去の作品
かぜよみ
everywhere
You can't catch me
Driving in the silence
シングルクレクション+ ミツバチ
シンガーソングライター
FOLLOW ME UP
今日だけの音楽

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2020年11月 7日 (土)

ネタの切れ味は抜群

Title:パペピプペロペロ
Musician:ブリーフ&トランクス

毎回、日常の些細な出来事をユニークな視点から歌にしつつ、学生時代からの友人であるメンバー2人のハーモニーが大きな特徴のフォークデゥオ、ブリーフ&トランクス。公式サイトの紹介では「ブリトラサウンドの代名詞でもあるコンピュータープログラミングをあえて封印し、初の試みであるアコースティックギターにとことんこだわったアンプラグド的なアルバム!」と記載があるのですが・・・あれ?打ち込みってブリトラの代名詞だったっけ??むしろアコギメインのギターデゥオって印象が強いのですが・・・(確かに、リズムに打ち込みを用いた曲が多いのは事実ですが)。

そんな訳で今回のアルバム、特徴としては2人のアコギの音だけに拘ったアコースティックなアルバムになっています・・・という感じなのですが、確かに打ち込みのリズムはなくなったものの、基本的にいままでも2人のアコギの音色や2人のハーモニーワークに軸足が置かれていたユニットでしたので、そんなに大きな印象の違いはありません。もちろん、それは悪い意味ではなく、(今回の曲のネタになっている表現になってしまうのですが)「いい意味で」

最終的にはブリトラのアルバムの良しあしは、彼らの歌のネタの切れ味に左右されるところが多いのですが、前作「ブリトラ埋蔵金」ではメンバーの伊藤多賀之のソロ時代の曲をリメイクするなど、若干ネタ切れ気味か?と思われる部分もありました。ただ、今回の作品に関しては、再びネタの切れ味が戻ってきたように感じます。まずインパクトがあったのが冒頭を飾る「ガテン系リズム」。タイトル通り、ガテン系、いわば肉体労働者の日常を、建設現場の工事のリズムにのせて歌う楽曲で、そのアイディアもユニークですし、2人が交互に歌うスタイルも、その2人の息の合ったコンビネーションを感じる、ブリトラらしい作品になっています。

上でも私が使ってしまいましたが、日常会話でよく用いられがちなフレーズ「いい意味で」をユニークにネタにした「いい意味で」や、彼ららしい学校ネタの「多目的室」、さらにユニークなエロ歌詞が爆笑モノの「SM相対性理論」も非常にユニーク。ラストを締めくくるのは、2014年のシングル曲「メラメラスクリーム」の第2弾「メラメラスクリーム2」。ファルセットボイス中心に構成され、日常で思わず叫びたくなるようなネタを繰り広げるのですが、ネタ的にはむしろ第1弾よりもユーモラスさを増した感じもします。

ただ今回のアルバムで一番インパクトがあったのは、「旦那アレルギー」だったのではないでしょうか。冷め切った夫婦間を辛辣な視点で描くこの曲は、ネタ的にはかなりハード。最後のオチもかなりヘヴィーな展開となっており、もし歌詞を見ただけならば、よくこれだけ重い内容を曲にできたな、と思うのですが、それを意外と違和感なくアルバムの中で歌ってしまうあたり、日ごろから日常ネタを曲にしているブリトラだからこそ、といった感じなのでしょうか。ただ、こういう重いネタをさらっと歌えてしまうあたりに、何気に彼らの実力を感じたりもしました。

ネタ的には「よくこんなネタ、見つけてきたな」と思うような感心するような題材も多く、ブリトラの切れ味が完全に戻った感のある今回のアルバム。クスっと笑いながら、時にはその視点にドキッとしながら、最後まで一気に聴くことが出来たアルバムでした。

評価:★★★★★

ブリーフ&トランクス 過去の作品
グッジョブベイベー
ブリトラ道中膝栗毛
ブリトラ依存症
手のひらを満月に
ブリトラBESTバイブルⅠ~家族で聴いても恥ずかしくない曲集~
ブリトラBESTバイブルⅡ~ひとりでこっそり聴いた方がいい曲集~
ブリトラ埋蔵金


ほかに聴いたアルバム

ASOVIVA/フレデリック

フレデリックの新作は全6曲(初回盤は全7曲+DVD)入りのEP盤。シンセを全面的に用いた軽快なエレクトロダンスチューンに、メランコリックなメロディーラインというスタイルはいつも通り。先行配信リリースされた「されどBGM」など、ちょっと洒落たシティポップ風の作品が魅力的。基本的にはいつもの彼らのスタイルといった感じではあるのですが、タイトル通りの軽快な「遊び場」を提供してくれるような、そんな作品でした。

評価:★★★★

フレデリック 過去の作品
フレデリズム
TOGENKYO
フレデリズム2

SKY-HI's THE BEST/SKY-HI

SKY-HI名義でのソロ活動が話題となっている、avexのダンスグループAAAのメンバー、日高光啓のソロベスト。3枚組となっており、Disc1は「POPS BEST」として、タイトル通りのポップスの曲を並べた作品、Disc2は「RAP BEST」としてHIP HOPの曲を並べた作品、Disc3は「COLLABORATION BEST」として様々なミュージシャンとのコラボ作を集めた作品となっています。

内容の出来栄えとしては、明らかにDisc3>Disc2>Disc1といった感じ。「POPS BEST」もHIP HOP的な作品もあり決して悪くはないのですが、今どきよくありそうなJ-POPという印象。「RAP BEST」はラッパーとしての評価の高い彼の本領発揮といった感じなのですが、それ以上に良かったのが「COLLABORATION BEST」。彼みたいなラップスキルがあって、ある意味アイドル的な端正なボーカルの持ち主は珍しいのでしょうか。それなりに個性的でありつつも癖がありすぎるわけではなく、かつラップスキルもあるという彼の存在はコラボ相手としてかなり貴重かつどのようなラッパーともうまくマッチしています。「POPS BEST」が3つ、「RAP BEST」が4つ、「COLLABORATION BEST」が5つ。そのため合計の評価は・・・

評価:★★★★

SKY-HI 過去の作品
FREE TOKYO
JAPRISON
Say Hello to My Minions 2(SKY-HI×SALU)

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2020年10月31日 (土)

30年の時代を経てよみがえる80年代の名盤

Title:HOT LIPS
Musician:ZIGGY

本作は、もともと1988年にリリースされたZIGGYのメジャー2ndアルバム。彼らの最大のヒット曲「GLORIA」も収録されており、彼らの代表的なアルバムとも言える作品。もっとも、「GLORIA」がヒットしたのは、このアルバムがリリースされた後、1989年にドラマ主題歌に起用され、2度目のシングルカットされた時点であり、そのため本作はオリコンで最高位12位と、「GLORIA」が収録されたアルバムの割りには、さほど大ヒットを記録していません。

さて、今回その30年以上前のアルバムを取り上げたのは、本作が、このたび現在のZIGGYのメンバー、といっても現在、ZIGGYの正式メンバーは森重樹一ひとりのみであることから、ツアーメンバーを起用しての再録音がリリースされました。そのため今回、紹介するのはその再録版。もっとも私自身、このアルバムはリアルタイムでは聴いていませんし、その後も一度も聴いたことなく今回、はじめて聴いてみたアルバムとなるため、再録版の、というよりは純粋にアルバム「HOT LIPS」の感想、といった感じなのですが。

前にZIGGYを取り上げた時にも書いたのですが、彼らの代表曲「GLORIA」というと、いかにもJ-POP的なビートロック。そのため以前はZIGGYというと典型的なJ-POPバンド…といったイメージが強く、少々敬遠していた感もありました。しかし、以前はじめて聴いたベスト盤でそのイメージは大きく変化。彼らが実は、かなり本格的な、洋楽志向も強いロックバンドということをはじめて知りました。

そしてこの「GLORIA」が収録された本作も、かなりハードロックやグラムロック志向の強い、本格的なロックのアルバムに仕上がっています。もともとジャケット写真も、パンクロックに大きな影響を与えたというNew York Dollsのデビューアルバム「New York Dolls」のパロディーですし、(再録版では不明ですが)オリジナル版では「PLAYING ROCKS」にそのNew York Dollsのジョニー・サンダーズがレコーディングに参加していたそうです。

タイトルチューンである「HOT LIPS」もエッジの効いたギターとヘヴィーなバンドサウンドがカッコいい、疾走感あるハードロックナンバーになっていますし、「WHAT DO YOU WANT?」もリズミカルなギターとドラムスのサウンドが耳に残ります。「HIGHWAY DRIVING NIGHT」もラストはヘヴィーなブルース風のギターリフで締めくくるなど、彼らの本格的なルーツ志向を感じさせます。

「PLAYGIN ROCKS」も森重樹一のシャウトが前面に押し出され、疾走感あって、パンキッシュなナンバーとなっていますし、「LAST DANCEはお前に」もブギウギ調のピアノのリズムが軽快なロックンロールな楽曲に仕上がっています。

そんな本格的なロックのアルバムである一方、意外とメロはポップで、ある種「歌謡曲」的な部分も少なくありません。例えば「TOKYO CITY NIGHT」なども、かなり哀愁感ただようナンバーとなっており、メロディーラインはかなり歌謡曲的。そのほかの曲にしても意外と歌謡曲テイストの強いナンバーも強く、J-POP的な「GLORIA」がアルバムの中でさほど浮いていないのは、他の曲もなにげに歌謡曲的な要素が強いから、という点もあるのでしょう。ただ、その歌謡曲的なメロディーラインという、ある種のベタさがアルバムの聴きやすさにつながっており、ひとつの魅力になっているように感じました。

さて今回は再録版ということなのですが、実は前述の通りオリジナルアルバムは聴いておらず、オリジナルとの比較はできません。ただサウンド的には80年代的なサウンドに仕上がっており、おそらくオリジナルから大きな変更はないのではないでしょうか。一方、音圧としてはかなり強くなっており、今風。そういう意味で今の耳で聴いて、より迫力を感じ、聴きやすくなっています。また、森重樹一のボーカルを含めて、時代による衰えは皆無。むしろ、彼のボーカルは年齢を経て、さらに迫力を増しているようにも感じました。

非常にカッコいい疾走感あるバンドサウンドを前面に押し出したロックなアルバム。ほどよく歌謡曲的なメロディーラインとのバランスも絶妙で、間違いなく80年代の名盤といって言いでしょう。時代を経て、今聴いても全く衰えていない魅力があります。ロックリスナーなら必聴の1枚です。

評価:★★★★★

ZIGGY 過去の作品
SINGLE COLLECTION
2017
ROCK SHOW


ほかに聴いたアルバム

森川美穂 VERY BEST SONGS 35/森川美穂

デビュー35周年を迎えるシンガー森川美穂のオールタイムベスト。森川美穂といえば本作にも収録されている「ブルーウォーター」のイメージが強く、イメージ的には90年代に活躍した谷村有美や永井真理子などのガールズポップ勢の先駆け、というイメージがあったのですが、もともとは完全にアイドルでデビューしたんですね。実際、今回のアルバムのデビュー直後の作品、特にDisc1の楽曲はかなりアイドルテイストが強い楽曲が多く、確かにアイドルだったんだな、ということを強く感じました。

ただ、Disc2、特にその「ブルーウォーター」のあたりから、その歌唱力を生かしたボーカルスタイルの曲が多くなってきており、アイドルという色合いが完全に消えていきます。アイドルとしてどういう売られ方をしたのかわからないのですが、楽曲的にはアイドルシンガーというよりもボーカリストとしてのスタイルの方が彼女にピッタリマッチしていたように感じました。最近の作品になるとバラード曲ばかりになり、良くも悪くも「大人のシンガー」としての側面を前面に出している感があり、若干、バラードばかり続く終盤は退屈な感じもしたのですが、ただボーカリストとしてはいい意味で歳を重ねている感もあります。一時期ほど名前を聞く機会は減ってしまいましたが、彼女はこれからもボーカリストとしてそのキャリアを順調に伸ばしていきそうです。

評価:★★★★

Between the Black and Gray/MONOEYES

細美武士率いるロックバンドによる約3年2ヶ月ぶりのニューアルバム。ELLEGARDENも活動を再開し、the HIATUSも活動を続ける中、3バンド並行の活動は大変だとは思うのですが、その中でもニューアルバムをリリースしてくるあたり、細美武士の創作意欲の強さを感じます。ただ、ノイジーなギターサウンドを中心としたバンドサウンドに主軸に置かれたロックなアルバムになっている一方、メロディーラインについては平凡な印象を受けてしまう作品も少なくなく、ちょっと練り込みが足りなかったような。前作もメロのインパクト不足が気になったのですが、今回はその印象がさらに強くなってしまいました。概して疾走感あるギターロックは非常に心地よく楽しめたのですが・・・。

評価:★★★★

MONOEYES 過去の作品
A Mirage In The Sun
Dim the Lights

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2020年10月24日 (土)

バンドとしての安定感も覚える新作

Title:You need the Tank-top
Musician:ヤバイTシャツ屋さん

相変わらず人気上昇中のロックバンド、ヤバTことヤバイTシャツ屋さんの、約2年10ヶ月ぶりとなるニューアルバム。この間、サンリオピューロランドでのワンマンライブを実施したり、コロナの影響で中止になってしまったのですが、志摩スペイン村でのライブが計画されたりと、相変わらず、ユーモラスかつ奇抜なアイディアでの活動が続いています。さらに本作では見事、自身初となるチャート1位を記録。その人気っぷりを見せつける結果となりました。

ヤバTは、もともとギターボーカルのこやまたくやがマキシマム ザ ホルモンを好きになったことからギターを独学ではじめたところからスタートしているのですが、そのこともありデス声も入れたハードコア風なサウンドながらも、ハードコアな部分以外は意外とポップなメロディーラインという、ホルモンの系統を引き継いだような音楽性が大きな特徴でした。ただ、前作「Tank-top Festival in JAPAN」ではそんなハードコア路線がちょっと後ろに下がり、パンクやギターロック路線がより前面に出てきた作風になっていました。

今回のアルバムに関してもハードコア色は後ろに下がり、パンクロック、ギターロック路線が目立つような構成になっています。「泡Our Music」のAメロの部分や「はやく返してDVD」のデス声のようなハードコア路線もしっかり残っているものの、全体的にはパンクロック路線がメイン。「NO MONEY DANCE」など、ダンサナブルなメロディーラインは、マキシマム ザ ホルモンの影響を強く感じるものの、サビの部分でハードコア路線にシフトすることなく、最後までリズミカルなギターロック路線に終始しています。

楽曲的にはどちらかというと10-FEETからの影響を強く感じるメロディアスパンクチューンの「sweet memories」やトランスのサウンドを入れた「日本の首都、そこは東京」など、バリエーションはさらに広がった感じ。基本的にはシンプルで疾走感あるギターロック路線がメインなのですが、ポップなメロとこの楽曲のバリエーション、さらには40分弱というアルバムの長さもあって、最後まで一気に聴いてしまうような構成になっていました。

歌詞も以前のような内輪受けや学生ノリのような作品が消えて、いい意味で広い層に支持されるように練られてきた感もあります。「珪藻土マットが僕に教えてくれたこと」やメンバーのもりもりもとをいじった「げんきもりもり!モーリーファンタジー」のような、正直、どーでもいいようなネタでユーモラスに聴かせる曲は相変わらずですが、これはこれで彼ららしいユーモアセンスが楽しい感じ。「NO MONEY DANCE」のような歌詞は、ちょっと今の若い世代の哀しい現実を垣間見れる感じもしました。

前作の路線を維持しつつ、いい意味でバンドとしての安定感も感じられる作品になっていたと思います。バンドとして、今後、この路線を維持していくのか、新たな一歩を踏み出すのか、そろそろちょっと分岐点のような感じもするのですが、ファンにとっては間違いなく、安心して楽しめる傑作アルバムだったと思います。今後も彼らの人気はまだ続きそうです。

評価:★★★★★

ヤバイTシャツ屋さん 過去の作品
We love Tank-top
Galaxy of the Tank-top
Tank-top Festival in JAPAN


ほかに聴いたアルバム

夏のせいep/RADWIMPS

全6曲入りのEP盤となったRADWIMPSの新作。伸びやかな歌声で愛を歌う、タイトルチューンである「夏のせい」をはじめとして、スケール感のあるミディアムチューンがメイン。コロナ禍の中で苦しむ人への応援歌として作成された「Light The Light」など、非常に特殊な状況となってしまった、この2020年だからこそリリースされたEP盤といった感のある作品に。基本的にはゆっくりと歌を聴かせるアルバムになっており、サウンド的には目新しさはなかったもののRADWIMPSらしいアルバムには仕上がっていました。

評価:★★★★

RADWIMPS 過去の作品
アルトコロニーの定理
絶対絶命
×と○と罰と
ME SO SHE LOOSE(味噌汁's)
君の名は。
人間開花
Human Bloom Tour 2017
ANTI ANTI GENERATION
天気の子
天気の子 complete version

Contrast/STUTS

前作「Eutopia」がMusic Magazine誌の「日本のラップ/HIP HOP」部門で年間1位を獲得するなど、高い評価を受けたトラックメイカーによるミニアルバム。ラップ・・・というよりも基本的にはトラックメイカーとしての活動がメインの彼。本作も前作同様、ラップの作品も収録されていますが、基本的にはメロウなトラックを聴かせるような作品が並ぶアルバムに。メロウで温度感の低い、比較的静かなトラックに惹かれるような作品が並びます。様々な音楽的な要素を取り込んだ前作と比べると、本作は比較的シンプルな作風になっているのですが、しっかりと聴かせるアルバムになっていました。

評価:★★★★★

STUTS 過去の作品
Eutopia

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2020年10月19日 (月)

初のセルフタイトル

Title:ROVO
Musician:ROVO

ご存じ勝井祐二、山本精一ら、いずれもそれぞれがソロとしても目覚ましい活躍を続けるミュージシャンたちが結成し、活動を続けるバンド、ROVO。特にその圧巻のライブパフォーマンスには定評があり、フジロックをはじめとする数々のロックフェスへも参加。さらに毎年ゴールデンウイークには「MDT FESTIVAL」と名付けたイベントを開催し、多くの音楽ファンを魅了しています。

そんな彼らもさすがにこの新型コロナの影響で数多くのライブは中止に。「MDT FESTIVAL」も残念ながら中止となってしまいました。しかし、そんなコロナ禍の中で届けられたのは、なんと結成24年目にして初となるセルフタイトルのアルバム。「結成24年目にしてバンドの意思と楽曲と演奏が完全に一体化した最高傑作」と自ら評するような、自信作となっています。

そしてアルバムを聴き進めると、その自信の理由も納得の内容に仕上がっています。確かにこれは、セルフタイトルにふさわしい傑作アルバムに仕上がっていました。その最大の理由としては、いままでのアルバムに比べても圧倒するほどの楽曲のバリエーション。全6曲入りのアルバムに仕上がっているのですが、その6曲の要所要所に彼らの様々なアイディアがつまっており、聴くものを終始惹きつけてやみません。

まず1曲目「SINO RHIZOME」は、まるで心臓のリズムのような静かな音とシンバルに音色からスタート。この緊迫感ある序盤も耳を惹きますが、途中からはベースラインをファンキーに聴かせるグルーヴィーでちょっと黒さを感じるトランスナンバーへと展開していきます。続く「KAMARA」もヴァイオリンの奏でるメランコリックなメロがまずは耳に残ります。終始ダイナミックなバンドサウンドが重なりつつ、リズムと同時にメロディーも聴かせる楽曲に仕上がっています。

さらに驚かされるのは3曲目「ARCA」で、いきなりアコギの音色で静かにスタート。その後はROVOらしいエキゾチックなバイオリンの音色を聴かせつつ、ダイナミックなバンドサウンドが入ってくるのですが、後半につれて、狂乱度合が増していく展開に惹きつけられます。「AXETO」もメランコリックなバイオリンのメロが印象的なのですが、終始響く軽快でリズミカルなパーカッションのリズムが特徴的。バイオリンの音色と合わせて、どこかエキゾチックな異世界感を覚える楽曲が印象に残ります。

後半の「NOVOS」は郷愁感のあるメロの流れるサウンドに、どこかAOR的な雰囲気すら感じられる、ROVOとしての楽曲の振れ幅の広さを印象付けられる楽曲。さらにラストに流れる「SAI」も郷愁感漂いメロディーがとにかく印象的な楽曲となっており、とても心地よい気持ちを味わうことが出来ます。ただ締めくくりは重厚なサウンドでサイケな締めくくりになっているのがROVOらしいところ。全6曲1時間強。様々に変化する音の世界を楽しめるアルバムになっていました。

いままでのROVOの作品は、圧巻的なサウンドで攻めてくるような作品が多く、ライブを意識した作品が多かったように感じます。ただ、今回のアルバムに関しても、ライブを意識している一方で、それ以上にCD音源でリスナーに聴かせるというスタイルを意識しているような作品のようにも感じました。今回のアルバムが、もともとコロナの前から制作されたものか、それともコロナの最中に制作されたものかは不明なのですが、もし制作を開始したのがコロナ後であった場合は、ひょっとしたらライブをあまり意識しなかったからこそ、もっと「音」自体に純粋に向き合った結果なのかもしれません。

これまでもROVOの作品は傑作続きだったのですが、個人的に今回の作品は、そんな中でもさらに段違いの傑作アルバムだったと思います。彼らの言う通り、本作は彼らの最高傑作と言えるアルバムでしょう。非常にバリエーションの多い作風に、いままでの作品では感じられなかったROVOのメンバーの、奥深い実力を感じることが出来ました。年間ベストクラスの傑作アルバムです。

評価:★★★★★

ROVO 過去の作品
NUOU
ROVO Selected 2001-2004
RAVO
PHOENIX RISING
(ROVO×SYSTEM7)
PHOENIX RISING LIVE in KYOTO(ROVO×SYSTEM7)
PHASE
Phoenix Rising LP(ROVO and System7)
LIVE at MDT Festival 2015
XI


ほかに聴いたアルバム

今回は最近リリースされたtofubeatsの2作品をまとめて紹介。

TBEP/tofubeats

まずは全7曲入りの、タイトル通りのEP盤。基本的に配信限定のデジタルアルバムなのですが、一方、フィジカルではアナログ盤をリリース、というリリース形態が今風な感じ。今回はフロア志向の強いアルバムとなっており、テクノやハウス、ディスコなどの要素を多分に取り入れたアルバムになっています。そのためわかりやすいポップな歌モノこそありませんが、ダンスミュージックとはいえ根底にポップなメロディーは確実に流れており、ダンサナブルなビートと合わせて、非常に聴きやすい内容に。まさにtofubeats流のクラブ・ミュージックといった感の強い作品でした。

評価:★★★★★

RUN REMIXES/tofubeats

そしてこちらは2018年にリリースされたアルバム「RUN」の収録曲を、様々なミュージシャンがリミックスしたリミックスアルバム。こちらも配信オンリーのアルバムとなっています。基本的にはエレクトロ路線という点で共通していながらも、分厚いノイズを入れたり、キュートなポップチューンに仕上げたり、ボーカルにエフェクトをかけてくぐもった感じに仕上げたりとリミキサーに様々な作風に仕上げているのがユニーク。各リミキサーの個性を感じられるリミックスアルバムでした。

評価:★★★★

tofubeats 過去の作品
Don't Stop The Music
ディスコの神様
First Album
STAKEHOLDER
POSITIVE
POSITIVE instrumental

POSITIVE REMIXS
FANTASY CLUB
RUN

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