円熟味の増した傑作アルバム
Title:tokyo -30th Anniversary Edition-
Musician:渡辺美里
「eyes」「Lovin'you」「ribbon」に続く、渡辺美里の全盛期のアルバムをリマスタリングしてリリースした30周年記念アルバムの第4弾は1990年にリリースされた彼女の6枚目となるオリジナルアルバム「tokyo」。当時はチャート1位を記録し、年間ランキングでも4位にランクインしてくる大ヒットアルバムとなりました。ただ一方で、いままで30周年記念盤としてリリースされた3枚に比べると、その立ち位置的には若干地味かな、という印象もあります。正直、私も「tokyo」を聴いたのは何年振りか・・・かなり久しぶりという印象を受けます。
ただ、久しぶりに本作を聴いてみて、「やはり渡辺美里はいいなぁ」という久しぶりにファン心がうずきました(笑)。まず感じたのは、作家陣の脂ののり方が半端ないということ。彼女の黄金期を支えた小室哲哉、岡村靖幸、伊秩弘将らが参加しているのですが、どのミュージシャンも全く外れ曲がありません。小室哲哉の「Power-明日の子供-」は「悲しいね」「ムーンライトダンス」「卒業」と並ぶメランコリック路線の傑作。小室哲哉らしい転調メロにゾクゾクときます。一方、表題曲「tokyo」は、あまりベスト盤などに収録されることもないので、久々に聴きました。アップテンポの、これまたいかにも小室メロディーらしい曲なのですが、非常にカッコいい!まさに隠れた名曲といった感じでしょうか。
さらに素晴らしいのが岡村靖幸の「虹をみたかい」で、まさに岡村ちゃん節炸裂のファンキーでロッキンなこの曲。非常にメロディー展開が複雑で、リズム感と声量がないとなかなか歌いきれない難曲を、渡辺美里がいとも簡単に歌いきっています。個人的には彼女の楽曲のうちベスト3に入るような名曲。そして伊秩弘将の「Boys Kiss Girl」「バースデイ」も文句ない傑作。「バースデイ」は爽やかな曲調から、途中、切ない曲調への変化する展開が聴かせ、切ない歌詞を含めて涙腺がゆるんでしまう名曲だと思います。
そしてこのアルバムで特徴的なのが渡辺美里作曲の曲が5曲もある点(うち1曲は佐橋佳幸との共作)。シングルにもなった「サマータイムブルース」や切ないバラード曲「遅れてきた夏休み」など、ほかの作家陣に勝るとも劣らない傑作が並んでいます。そのままシンガーソングライターとして作曲家としての才能も伸ばすのか・・・残念ながら、正直なところ「作曲家」としては今まで大成することはできませんでした。
前々作「ribbon」は参加メンバーがいずれも全盛期を迎えた作品だったのですが、「tokyo」はさらに作家陣の円熟味が増し、それにつられるように渡辺美里本人も作曲家としての才能を発揮した傑作アルバムになっていました。今、聴いても外れ曲が皆無で、まさに脂ののりまくった時期のアルバムになっています。久しぶりに聴いたのですが、「ribbon」に負けず劣らず、本作も傑作だったなぁ、と感じました。
ただ、「tokyo」本体は文句なしの傑作なのですが、相変わらずちょっと微妙なのが「30th Anniversary Edition」の追加要素。まずCDのボーナストラックが、アルバム未収録のカップリング曲「Love is magic」はいいのですが、あと2曲が「虹をみたかい」と「バースデイ」のライブ音源なのですが、なぜか最新のライブツアーの音源。そりゃあ、今の渡辺美里のボーカルで、というのも悪くないけど、それよりも過去の貴重音源の方が・・・。初回盤についてくるDVDも過去にリリースされた「born V」に特典映像を付けた程度。70分超えのボリュームという点では悪くないのですが、これも過去にリリース済の映像でありレア度は低め。なんか、本作に限らず、他の30th Anniversary Editionや今年リリースされたベスト盤も含め、なんで渡辺美里のCD特典って、どれも「今一つ」なんでしょうか?もうちょっと貴重な映像や音源などがあっても言いと思うのですが・・・そういう音源や映像があまりないのでしょうか??
そんな残念な点もあるのですが、ただ「tokyo」が傑作アルバムである点は間違いありません。久しぶりに渡辺美里にはまってしまいました。ちなみにこの「30th Anniversary Edition」はまだ続くのでしょうか?個人的には、次の「Lucky」は、私がはじめて聴いた渡辺美里のアルバムという意味で思い入れがあるだけに「30th Anniversary Edition」で聴いてみたいのですが。
評価:★★★★★
渡辺美里 過去の作品
Dear My Songs
Song is Beautiful
Serendipity
My Favorite Songs~うたの木シネマ~
美里うたGolden BEST
Live Love Life 2013 at 日比谷野音~美里祭り 春のハッピーアワー~
オーディナリー・ライフ
eyes-30th Anniversary Edition-
Lovin'you -30th Anniversary Edition-
ribbon-30th Anniversary Edition-
ID
harvest
ほかに聴いたアルバム
HYSTERIA/鬼束ちひろ
鬼束ちひろの約3年ぶりとなるニューアルバム。前作「シンドローム」も往年の彼女の王道路線を引き継いだようなピアノバラード曲が目立ったのですが、本作も冒頭の「憂鬱な太陽 退屈な月」をはじめとして、メランコリックなボーカルでダイナミックに歌い上げるタイプのバラード曲が目立ちます。ただその結果、前作でも大いなるマンネリ色が目立ったのですが、今回のアルバムは、はっきり言って完全にマンネリ気味。特に過去のヒット曲に比べて、メロディーラインの弱さが目立ってしまって、ほとんど印象に残らず。タイプ的にも似たような曲が並んでいて、正直、ちょっと厳しい内容に・・・。楽曲的にはこういうスタイルがやはり彼女には一番似合っているとは思うのですが・・・。
評価:★★★
鬼束ちひろ 過去の作品
LAS VEGAS
DOROTHY
ONE OF PILLARS~BEST OF CHIHIRO ONITSUKA 2000-2010
剣と楓
FAMOUS MICROPHONE
GOOD BYE TRAIN~ALL TIME BEST 2000-2013
シンドローム
Tiny Screams
REQUIEM AND SILENCE
Soul to Soul/布袋寅泰
「Soul Sessions」から約14年ぶりとなるコラボレーションアルバム。吉井和哉、コブクロ、氷川きよしといった、様々なジャンルのミュージシャンとコラボ。日本のみならず、アメリカ、イギリス、フランスにイタリア、ブラジル、中国のミュージシャンとコラボし、まさにワールドワイドなコラボとなっています。ただ、その挑戦心は買いたいのですが、正直なところ、このコラボ、いまひとつおもしろくない・・・。フュージョン的なギターサウンドは無難に縮こまっている感じですし、日本のミュージシャンとのコラボは妙にJ-POP的でロック的な要素は皆無。海外とのコラボにしても、どうもお互いに遠慮したような中途半端なコラボに留まってしまっている感が。ちょっと残念に感じる1枚でした。
評価:★★★
布袋寅泰 過去の作品
51 Emotions -the best for the future-
Paradox
GUITARHYTHM VI
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