アルバムレビュー(洋楽)2020年

2021年3月28日 (日)

注目の7人組大所帯バンド

Title:For the first time
Musician:Black Country,New Road

最近は、サブスクの影響などもあり、以前に比べてすっかりCDショップに行く回数が少なくなってしまいました。以前はよく、CDショップの試聴機でCDを聴きながら、知らない音楽を漁っていたのですが、最近はそういう機会も少なくなってしまいました。まあ、最近はCD売上低迷もあり、タワレコもすっかり「アイドルショップ」に変貌を遂げてしまったので、おもしろそうなCDが試聴機になかなか入らなくなった、ということもあるのですが。しかし、先日CDショップへ行き、時間もあったので久しぶりに試聴機を聴いていたら、これは!というカッコいいアルバムに試聴機経由で久しぶりに出会うことが出来ました。それがこの1枚。まあ、厳密にはこれがはじめての出会い、ではなく、以前、雑誌で紹介されているのを見たことあったのですが、その時はさほど食指が動かず。今回、試聴機で実際の音源を聴いてみて気になったため、さっそく聴いてみました。

そんなことがあって今回紹介するバンドは、ロンドン出身の最近、注目を集めているバンド、Black Country,New Road。男女7人組という大所帯バンドで、本作がデビュー作。デビュー前から元Sonic Youthのキム・ゴードン、RADIOHEADのエド・オブライエンという大物2人とフランスのテレビ番組で共演など話題を呼び、本作もMy Bloody Valentineなどを手がけたアンディ・サヴァースがプロデューサーとして参加するなど、大注目のデビュー作となっています。

そしてはりきって楽しみにしてこのアルバムを聴いたのですが、まず最初に聴いたら試聴機で聴いたほどよくなかった・・・・・・というのは、この手の出会いをしたアルバムでよるある話で(笑)。ただ、これが2度3度聴くうちに印象が変わり、徐々にアルバムの良さにはまっていくというのもよくあるケース。実際、本作も何度か聴いていると、確かに試聴機で感じた直観は間違えではなかった、という印象に変わっていきました。

7人組という大所帯バンドであることを生かした分厚くダイナミックなバンドサウンドが大きな魅力で、まず1曲目「Instrumental」から、分厚いベースラインにテンポのよいドラムス、さらにそれにのるホーンセッションで、全体的にはどこか妖艶でエキゾチックな印象の漂う独特なインスト曲に仕上がっています。続く「Athens,France」はヘヴィーなギターサウンドを前に押し出したインディーロック色も強いナンバー。ただ、こちらもホーンセッションも入れたサウンドが、楽曲に重厚感を与えています。

この分厚く重厚感を醸し出しつつ、一方ではどこかオルタナ系のインディーロックバンドの匂いが楽曲の中から漂ってくるのはその後の楽曲も同様。「Science Fair」「Sunglasses」のどちらも、粗々しくノイジーなギターサウンドにローファイ気味に語るようなボーカルは、まさにインディーロックな雰囲気が漂ってきます。一方では、そこに重なるホーンセッションやストリングスなどの豪華なサウンド構成は、インディーロックではあまり見られないスタイル。荒々しいインディーロックと、重厚なサウンド構成のアンバランスさが、彼らの大きな魅力のようにも感じました。

もう1つの魅力は、冒頭を飾る「Instrumental」でも特に強く感じた、どこかエキゾチックな雰囲気の漂うサウンド。どこかトラッドやワールドミュージックからの影響も感じられ、彼らの音楽に(ジャンル的な)厚みを増している大きな要因になっているように思います。このエキゾチックな雰囲気が魅力的なのがラストの「Opus」で、疾走感あるギターロックなのですが、ホーンやストリングスの音色がどこかエキゾチックで魅力的。このエキゾチックな雰囲気が印象に残る作品に仕上がっていました。

デビューアルバムながらも独特の魅力があり、確かに注目を集めるバンドであることは間違いありません。コロナ禍でなかなか見る機会もありませんが、ライブも魅力的だろうなぁ、と感じるバンド。比較的聴きやすくポップな側面がある反面、どこかインディー的だったり、ワールドミュージック的な要素があったりと、サブカルチャー的な要素を強く垣間見れるのも、マニア心をくすぐられるような部分も。なにげに本国イギリスの公式チャートでは最高位4位を記録するなど、既にブレイクしちゃっている感もありますが、今後、日本でもさらに注目を集めそうです。コロナ禍が落ち着いたら、来日してほしいなぁ。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

2020 Grammy Nominees

毎年恒例、グラミー賞のノミネート作を収録したコンピレーションアルバム。今の音楽シーンの動向を知るにはうってつけの1枚なのですが、2020年バージョンを聴いて目立つのが女性陣の活躍。Billie Eilishをはじめ、Ariana Grande、Taylor Swift、Lana Del Rey、さらにはBeyonceと勢いのある女性陣の活躍が目立ちました。全体としても、新時代を切り開くような新しいポップソングの潮流・・・といった感じではないものの、パワフルな女性陣に押される形での勢いのある作品が目立ち、ここ数年では一番の豊作ともいえる出来栄えになっています。この女性陣たちは、これからもポップシーンを引っ張って行ってくれそうです。

評価:★★★★★

Grammy Nominees 過去の作品
2011 GRAMMY NOMINEES
2012 GRAMMY NOMINEES
2013 GRAMMY NOMINEES
2014 GRAMMY NOMINEES
2015 GRAMMY NOMINEES
2016 GRAMMY NOMINEES
2017 GRAMMY NOMINEES
2018 GRAMMY NOMINEES
2019 GRAMMY NOMINEES

Music – Songs from and Inspired by the Motion Picture/Sia

オーストラリア出身のシンガーソングライターによる新作。いままで数多くのヒットアルバムをリリースしてきた彼女ですが、実は何気に私がアルバムを聴くのは本作がはじめて。そのユーモラスなジャケットもあって、非常にポップで明るいキュートなアルバムを想像していたのですが、思ったよりメランコリックで聴かせるタイプのアルバム。メロウな曲からバラード、トライバルな曲やレゲエ風の曲まで収録され、バラエティーは豊富に感じられるのですが、良くも悪くも今どきの売れ線といったイメージも否めず。あまり目新しさを感じませんでした。

評価:★★★

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2020年12月29日 (火)

伝説のロックバンドの初のベスト盤

Title:The White Stripes Greatest Hits
Musician:The White Stripes

ロックンロールリバイバルの代表的なバンドとして2001年頃から話題となり、2003年にリリースされたアルバム「Elephant」が大ヒット。一躍人気バンドの仲間入りを果たしたジャック・ホワイトとメグ・ホワイトの「姉妹」バンド、The White Stripes。その後も2005年に「Get Behind Me Satan」、2007年に「Icky Thump」とアルバムをリリース。いずれも大ヒットを記録しただけではなく、グラミー賞を受賞するなど、大活躍をつづけましたが、2011年、人気絶頂の最中に突然解散してしまいました。

そんな彼らが活動を終えてから約9年。彼らのベストアルバムがリリースされました。ちょっと意外な点なのですが、ベストアルバムのリリースは本作が初。彼らの解散から9年の月日が流れましたが、いまだに「伝説的」なバンドとして語られることも少なくない彼ら。全26曲入り80分弱というボリュームのベスト盤ですが、CDでは1枚でのリリースですし、The White Stripes初心者にとっても、最初に手に取るアルバムとしては最適な1枚ではないでしょうか。

そして今回のベスト盤は、これが初のThe White Stripesというリスナーにもピッタリな構成に仕上がっていました。まず1曲目は彼らのデビューシングルであり、アルバム未収録となっている「Let's Shake Hands」からスタートするのですが、最初の1音、ギャンとなるギターの音がまず震えるほどカッコいい!それから奏でられるサウンドは、ノイジーなギターと力強いドラムスのみが鳴り響くサウンドなのですが、非常に力強いグルーヴ感を作り出しており、ギター+ドラムスというシンプルな構成であることが信じられないほど。デビュー作でありつつ、既にThe White Stripesとしてのスタイルが完成していたんだな、と驚かされる楽曲になっています。

前半は、続く「The Big Three Killed My Baby」「Fell In Love Wiht a Girl」「Hello Operator」などなど、ギターサウンドとドラムスだけで力強いサウンドを作り出すガレージロックという、The White Stripesのコアな部分を表に出しているロックチューンが並びます。このシンプルなサウンドながら大迫力のグルーヴを作り出している楽曲は、ロック好きなら心が震えるほどカッコよさを感じる楽曲ではないでしょうか。今回、久しぶりにThe White Stripesの曲を聴いたのですが、自分が覚えていた以上に素晴らしい曲の連続に思わず聴き入ってしまいました。

一方、中盤以降は、そんな「ロック」な側面だけではない彼らの魅力を感じさせる曲が並んでいます。まず今回のアルバムであらためて感じたのは、意外ともいえるメロディーラインの良さ。ギターを爪弾きながらメランコリックなメロを聴かせる「We're Going to Be Friends」や、泣きメロとも言っていいようなメロディーラインが魅力的な「Jolene」など(こちらはカバー曲ですが)、メロディーの良さを聴かせる曲も少なくないことに再認識させられました。こちらもカバーになるのですが、「Conquest」に至っては、こぶしを利かせたボーカルで哀愁感たっぷりに聴かせており、「え・・・演歌?」なんてことを感じてしまう部分もあったりして(笑)。

また、必ずしもギター+ドラムスのみというシンプルな構成のガレージロックだけに拘ることなく、中盤以降はバラエティーに富んだ作風の曲を聴かせてくれています。「The Denial Twist」ではピアノやシェイカーなどもサウンドに加えて、彼らにしてみれば賑やかなサウンドを聴かせてくれますし、「Hotel Yorba」ではアコギを軽快にかきならすフォーキーな作風に仕上げています。「My Doorbell」もピアノを軽快に聴かせる、ロックというよりも「ポップ」に近い作風が魅力的。バラエティー富んだ作風を楽しむことが出来ました。

そしてラストは彼らの代表作ともいえる「Seven Nation Army」で締めくくるあたりもにくいところ。こちらも彼らの王道ともいえるガレージナンバーを最後に配して、最後はあらためてThe White Stripesはカッコいい!と感じながらアルバムを締めくくるあたりも、なかなかよく出来たアルバム構成に感じます。

The White Stripesの魅力を存分に感じることが出来るベスト盤。楽曲の構成も凝ったものを感じるし、初心者が最初の1枚として聴くにもピッタリではないでしょうか。あらためて彼らの存在が唯一無二であることを感じさせました。もし、彼らの音にまだ触れたことがないのなら、是非とも聴いてみてください。ロック好きならば間違いなくはまるでしょう。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

Live in Maui/JIMI HENDRIX

映画「レインボウ・ブリッジ」撮影のため、1970年7月30日にハワイ・マウイ島で行われたライブの模様を収録したライブ盤。いままでブートレグの形で流通していましたが、このたびはじめて、公式アルバムでのリリースとなりました。映画「レインボウ・ブリッジ」の方は、かなり悪評の高い映画のようですが、ライブアルバムの方は、ジミヘンのギターがこれでもかというほどさく裂する、迫力満点の内容に。終始、テンションの高いパフォーマンスを楽しむことが出来ます。「ロックを聴いたなぁ」という満足度の非常に高いアルバムになっていました。

評価:★★★★★

Jimi Hendrix 過去の作品
VALLEYS OF NEPTUNE
People,Hell And Angels
MIAMI POP FESTIVAL(THE JIMI HENDRIX EXPERIENCE)
BOTH SIDES OF THE SKY

Odin's Raven Magic/Sigur Ros

現在、事実上、活動休止中となっているアイスランドのロックバンド、Sigur Rosの今回のアルバムは、彼らにオーケストラ・プロジェクトによるアルバム。もともと、2002年のレイキャビク・アーツ・フェスティバルで演奏されたもので、今回のアルバムは同じく2002年にパリのラ・グランデ・ハレ・ド・ラ・ヴィレットで行われた、レイキャビクのスコラ・カントルム(聖歌学校)とパリ国立高等音楽学校のオーケストラとの共演公演の模様を収録したライブ録音となっています。全編、荘厳なオーケストラアレンジが繰り広げられる美しいアルバムで、メランコリックに歌い上げるオペラ的なボーカルも印象的。この手のロックバンド、ポップミュージシャンによるオーケストラアレンジのアルバムというのは珍しくなく、そういう意味での目新しさはありませんし、サウンド的にもSigur Rosらしい実験性は少なかったのですが、ただ、聴いていて美しいサウンドに圧倒される、そんなアルバムに仕上がっていました。

評価:★★★★

Sigur Ros 過去の作品
Með Suð Í Eyrum Við Spilum Endalaust(残響)
valtari(ヴァルタリ~遠い鼓動)
KVEIKUR

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2020年12月18日 (金)

新生スマパンの第2弾だが。

Title:CYR
Musician:The Smashing Pumpkins

2005年の再結成後、断続的な活動が続くThe Smashing Pumpkins。しかし前作「SHINY AND OH SO BRIGHT,VOL.1/LP:NO PAST.NO FUTURE.NO SUN.」リリース時にはオリジナルメンバーのジェームス・イハとジミー・チェンバレンがバンドに復帰。4人中3人がオリジナルメンバーという、胸をはって「これぞスマパンだ」と言える体制でのニューアルバムリリースとなりました。それで調子に乗ったのでしょうか、今回のアルバムは前作から約2年という、ここ最近の彼らにとってみては比較的短いスパンでのニューアルバムリリース。2005年の再結成以降、メンバーが入れ替わりが続きましたが、今回は2作連続、同一のメンバーによるアルバムとなっています。

もともとメランコリックなメロディーラインが大きな魅力の彼らですが、今回のアルバムに関して言っても、そのメロディーラインの良さが非常に魅力的な作品に仕上がっていました。先行シングルでもあった1曲目を飾る「The Colour Of Love」は疾走感リズムに、女性コーラスも上手く絡んだメランコリックなメロディーがまずは耳を惹き、アルバムへの期待感を否応なくたかめますし、タイトルチューンでもある「Cyr」もダンサナブルな打ち込みが耳を惹きつつ、ちょっと物憂いげなメロディーが非常に魅力的な楽曲に仕上がっています。「Wrath」の胸をかきむしりたくなるようなメランコリックなメロディーも魅力的。ラストの「Minerva」こそ爽やかなメロディーラインで締めくくり、アルバム全体の後味を爽快なものとしていますが、アルバム全体としては、実にスマパンらしさを感じる、メランコリーあふれるメロディーの曲が並びます。そういう意味では、メロディーラインのタイプとしては多少、似たようなタイプの曲が多いのですが、それでもアルバム1枚、ダレることなく聴かせてしまうのは、そのビリー・コーガンのメロディーメイカーとしての才能が光っている、と言えるのではないでしょうか。

ただその一方、今回のアルバム、サウンドの側面では少々厳しい感のある作品に仕上がっていました。せっかくオリジナルメンバーが多く参画した今回のアルバムなのですが、サウンドは全面、シンセを中心とした作風になっています。正直、コロナ禍の中でのアルバムなので、バンドメンバーが集まれなかったのか・・・とも思ったのですが、そうではないようで・・・。「Wyttch」のようなダイナミックなバンドサウンドが心地よいような楽曲はありますし、ほかにも「Purple Blood」などヘヴィーなギターサウンドを押し出したような作品もあるのですが、あまりバンドとしての妙味が出ている曲は少なかったように思います。

また、このシンセのサウンドも、どうにもチープさを感じてしまう点が否めず・・・。挑戦的なエレクトロサウンドを聴かせるといった感じでもなく、なぜバンドメンバーがそろっているのに、これだけシンセに拘るのか、いまひとつ不明。「Save Your Tears」のような、分厚いシンセの音色で心地よく聴かせてくれる曲もあるにはあるのですが、ただ、全体的には、これならバンドサウンドを主軸にした方がよかったのでは?と思うような曲が大半でした。

スマパンの、というよりもビリー・コーガンのワンマン色も目立ってしまったようなアルバムで、ひょっとしたらバンドで演るよりもソロで演った方が気楽でよかった、ということでしょうか?そう考えると、現メンバーでのアルバムもこれが最後になってしまう・・・だったら嫌だなぁ。メロディーにはビリーの才を感じさせるアルバムなのですが、全体的にはもうちょっとバンドとしてのアルバムを聴きたかった、そう感じてしまう作品でした。

評価:★★★★

The Smashing Pumpkins 過去の作品
Teargarden by Kaleidyscope
OCEANIA
(邦題 オセアニア~海洋の彼方)
Monuments to an Elegy
SHINY AND OH SO BRIGHT,VOL.1/LP:NO PAST.NO FUTURE.NO SUN.


ほかに聴いたアルバム

Delta Tour EP/Mumford&Sons

2018年にリリースされたアルバム「Delta」のリリースに伴うライブツアーの模様を収録したミニアルバム。「Delta」は非常にダイナミックでスケール感を覚えるアルバムでしたが、本作もそんなアルバムをそのまま体現化した、スケール感あふれるライブの模様を感じることが出来ます。というか「Delta」のようなアルバムは、このような大人数で大規模なライブだからこそ映えるのでしょう。コロナ禍でなかなかこれだけ大規模なライブの実施も難しい現在ですが、早くこのようなスケール感あふれるライブを何の気兼ねなく実施できる日が来ればよいのですが。

評価:★★★★

Mumford&Sons 過去の作品
Sigh No More
Babel
Wilder Mind
Delta

Trans Am/The Network

いきなり登場の謎のバンドですが・・・GREEN DAYのメンバーを中心に結成された覆面バンド。2003年に1枚アルバムをリリースしているのですが、この度復活。12月にアルバムがリリースされたのですが、本作はそれに先立ちリリースされたEPとなります。楽曲はとても懐かしさを感じるニューウェーヴ風の楽曲4曲が収録。80年代の匂いを感じさせる楽曲は、懐かしさと同時にどこか新しさも。12月にリリースされたアルバムも近いうちにチェックする予定ですが、こちらも楽しみです。

評価:★★★★★

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2020年12月 8日 (火)

「2020年」を反映した2021年ブルースカレンダー

Title:2021-Classic Blues Artwork from the 1920s Calendar

Bluescalender2021

今年も出ました!毎年恒例となっていますブルースカレンダーの2021年版。このカレンダーを購入しはじめてもはや8年目。私の部屋の壁にはすっかりなじんでおり、もはやこれがないととしを越せない気分なのですが・・・(笑)。今年も無事、購入。年越しの準備も万全です。本作について説明あせていただくと、アメリカのブルース・イメージズ社が毎年発行しているカレンダー。毎月、戦前ブルースの広告イラストや戦前のブルースミュージシャンの貴重な写真を掲載したカレンダーとなっているのですが、毎年CDが付属。こちらは毎年、戦前ブルースの楽曲を収録しているほか、貴重な発掘音源も収録しており、貴重な戦前ブルースのオムニバスアルバムとなっています。

まず今年のカレンダーで印象的なのはこの「表紙」。こちらはBLIND LEMON JEFFERSONの「Pneumonia Blues」の広告イラストなのですが、「Pneumonia」とは「肺炎」のこと。1929年に録音したナンバーということで、いまから90年以上前の楽曲なのですが、本作を収録し、さらにカレンダーの表紙に起用したのは、言わずと知れた、いまなお世界中で猛威を振るう新型コロナウイルスを意識したからでしょう。2020年は、結果として新型コロナで終始する1年となっていまいましたが、今回のカレンダーはそんな2020年を反映したセレクトとなっています。

もちろんこの曲は本作にも収録されているのですが、アコースティックギターを爪弾きながら聴かせるBLIND LEMON JEFFERSONの力強いボーカルが印象に残る楽曲。こうやってオムニバスアルバムでいろいろな楽曲を並べて聴くと、余計、彼のボーカリストとしてのパワフルさとその力量を感じさせます。今回のアルバムの中でも印象に残る作品でした。

また、力強いボーカルということで今回のアルバムの中でも印象に残ったのが、REV D.C.RICE AND CONGREGATIONの「The Angles Rolled The Stone Away」。毎年、12月に相当する12曲目の楽曲には、ブルースというよりも説教師による説教のトラックが収録されることが多いのですが、とにかく血管が切れそうなほどの迫力で説教を繰り広げる内容が印象的。まあ、一歩間違えれば、昨今の新興宗教の宗教家みたいな・・・みたいにとらえられそうになるのですが、ただ、リズムを刻みながら、ソウルフルに繰り広げるそのボーカルは実に魅力的。教義の内容については英語なので聴き取れないのですが、それでもそのパワフルな説教に思わず耳を傾けてしまいます。

そして、今回のブルースカレンダーで最大の特徴は、13曲目以降に収録される未発表音源。今回はLOST JOHN HUNTERというブルースシンガーの未発表音源が13曲目以降23曲目まで全11曲収録されています。LOST JOHN HUNTER・・・・・・といっても、もちろん私も初耳のミュージシャンな訳ですが、1911年にテネシー州で生まれたとされる盲目のピアニストでありシンガーでもある彼。1950年頃に録音された音源4曲が、4スター・レコードから発売されたのみという知る人ぞ知る的なミュージシャンなのですが、そんな彼の未発表音源が一気に11曲、日の目を見ることになりました。

そんな彼の音源なのですが、まずはそのボーカルが耳をひきます。だみ声のボーカルがゆえに、非常に耳に残るボーカルが印象的。しかし、そんなインパクトあるボーカルとは裏腹に、楽曲自体はピアノを取り入れて軽快にポップにまとまっているのが特徴的で、例えば「Boogie For Me Baby」などはブギウギ調のピアノで軽快に聴かせるナンバー。「Mind Your Own Business」も軽快にポップに聴かせる楽曲となっています。かと思えば「You Gotta Heart Of Stone」はピアノをバックにしんみり聴かせる楽曲になっており、意外な繊細さも見せてくれたり・・・そんな荒々しいだみ声のボーカルとは裏腹な、軽快なピアノや意外に繊細さを見せる歌などのアンバランスさが逆に魅力的。ひょっとしたら、このアンバランスさ故に、「幻のミュージシャン」的な立場になってしまったのかもしれませんが、今となっては、それが彼の大きな魅力になっているようにも感じました。

全体的に1月から12月分に相当する1~12曲目よりも、13曲目以降の「未発表曲」が魅力的だった本作。戦前ブルースファンなら今回もたまらない選曲になっていたかと思います。あなたの部屋にも来年、このカレンダーを飾ってみてはいかがですか?お勧めです。

評価:★★★★★

2013-Classic Blues Artwork from the 1920s Calendar
2014-Classic Blues Artwork from the 1920s Calendar
2015-Classic Blues Artwork from the 1920s Calendar
2016-Classic Blues Artwork from the 1920s Calendar
2017-Classic Blues Artwork from the 1920s Calendar
2018-Classic Blues Artwork from the 1920s Calendar
2019-Classic Blues Artwork from the 1920s Calendar
2020-Classic Blues Artwork from the 1920s Calendar

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2020年12月 7日 (月)

キュートなボーカルが魅力的

Title:THE ANGEL YOU DON'T KNOW
Musician:Amaarae

本作がデビュー作となる、両親がガーナ人でアメリカ出身の女性シンガーソングライターAmaaraeのニューアルバム。日本ではまだほぼ無名といって言いミュージシャンで、まだ海外でも評判の・・・とまでは言っていないようですが、本作はPitchforkで高い評価を受け、徐々に注目度も高まっているようです。

アルバムは、いきなりパンキッシュなサウンドからスタート。え?ロック系??と思いきや、楽曲的にパンキッシュなのはこのわずか21秒のイントロ的な楽曲「D*A*N*G*E*R*O*U*S」のみ。それに続く「FANCY」はミディアム系のポップス。HIP HOP的なトラックが流れる中、ウィスパー気味のボーカルでかわいらしく聴かせるポップチューンとなっています。

その後の楽曲も、比較的ハイトーンのウィスパー気味のボーカルでかわいらしく聴かせる、HIP HOPの要素も取り入れたメロウなR&B寄りのポップチューンが並びます。「TRUST FUND BABY」などもそんな彼女のボーカリストとしての魅力を感じるかわいらしいポップチューン。それに続く「HELLZ ANGEL」も(刺激的なタイトルはともかく)HIP HOP系の楽曲なのですが、非常にキュートな歌声を聴かせてくれます。さらに「CELINE」もハイトーンのクリアボイスでキュートに聴かせるナンバー。ちょっと感じるエキゾチックな雰囲気も大きな魅力となっています。

そして終盤はメランコリックな楽曲が並び、そのキュートは歌声はそのままに、しんみりと聴かせてくれます。「SAD,U BROKE MY HEART」もタイトルからしてそのままなのですが、哀しげな楽曲。メロウな歌声でしんみり聴かせる「3AM」に、リズミカルな楽曲ながらも、悲しげなメロディーが印象的な「SAD GIRLZ LUV MONKEY」と続きます。ウィスパー気味のボーカルも相まって、胸がキュンと来てしまうそうなポップチューンが続きます。

ラストもメロウに聴かせる「PARTY SAD FACE/CRAZY WURLD」で締めくくり。こちらはメロウな歌声に色っぽさも感じるなど、ボーカリストとしての表現の幅も感じます。そしてラストは再びパンキッシュなサウンドがいきなり登場して締めくくり。アルバムの構成的にはスタートにそのままつながる感じになるのでしょうか。こういったアルバムの構成もまた非常に面白さを感じさせる作品になっていました。

ガーナ系アメリカ人ということでアフリカ的な要素も探してしまうのですが、正直言うと、アフリカ的な要素はこのアルバムではさほど感じません。数曲、トライバルなリズムを取り入れた楽曲がある程度でしょうか。ただ、トライバルなリズムも、アメリカのブラック系のミュージシャンがよく取り入れる要素であり、彼女特有といった感じではありません。そういう意味では、アフリカ音楽の要素を期待すると、若干方向性は違うのかもしれません。

もっとも、キュートなボーカルが非常に魅力的なポップシンガーで、広いリスナー層に波及していきそうなポピュラリティーを持ったミュージシャンであることは間違いなさそう。これから徐々に知名度も高くなり、日本でも注目が集まりそうな予感がします。これからが楽しみなミュージシャンです。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

POWER UP/AC/DC

オーストラリアのハードロックバンドAC/DCの約6年ぶりとなるニューアルバム。バンドメンバーのマルコム・ヤング逝去後初となるアルバムなのですが、軽快なギターリフを中心としたハードロック路線は相変わらず。ある意味、「大いなるマンネリ」ともいえるサウンドなのですが、「POWER UP」というタイトル通り、バンドサウンドにはいまなおある種の「若々しさ」すら感じる部分も。ただ、ブライアン・ジョンソンのボーカルは、さすがに寄る年波に勝てず、いまひとつ伸びがない感じも・・・。現役感があって十分楽しめるアルバムですが、いろいろと寄る年波も感じてしまう部分も否定できないアルバムでした。

評価:★★★★

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2020年12月 5日 (土)

差別への怒りをぶつけたライブ盤

Title:LIVE
Musician:Angel Bat Dawid

今回紹介するのは、新進気鋭のジャズミュージシャンとして注目を集めている、シカゴを拠点として活動するジャズミュージシャン、Angel Bat Dawidのライブアルバムです。作曲家、クラリネット奏者、ピアニストとしての顔を持つ彼女ですが、このジャケット写真からすると、むしろパワフルなソウルボーカルをイメージさせられるかもしれません。そして実際に、このライブアルバムを聴くと、ジャズというよりもむしろ個人的にはソウルのアルバムという印象すら抱く作品となっていました。

本作は2018年11月に行われたシカゴでのライブや、2019年11月にベルリンで行われたジャズフェスティバルの模様などを収録したライブアルバム。そんなアルバムの冒頭、いきなり「ever since I’ve been here y’all have treated me like shit!"(私はここに来てからずっとゴミみたいな扱いを受けてる!)」と叫びだし、バンドメンバーが落ち着かせようとするシーンからスタートし、ある意味、度肝を抜かれます。この言葉をわざわざライブアルバムに収録しているのは、どうもライブステージ自体(特にベルリンでのステージにおいて)現地での性差別・人種差別を目の当たりにした彼女が、差別への怒りを表現したパフォーマンスになっているそうで、ラストの「HELL」では、現地のジャズフェスティバルのパネルディスカッションの朗読を収録。ボーカルにエフェクトをかけられているため、私のつたない英語力では聴き取れないのですが、パワフルな彼女の叫びに、その怒りを強く感じるトラックになっています。

まさにそんな彼女の叫びを体現化したこのライブアルバムでは、(基本的にクラリネット奏者、ピアニストのはずなのですが)彼女のパワフルなボーカルに終始圧巻されるような内容に仕上がっています。冒頭の叫びが収録されている「Enlightenment」も自ら演奏するピアノと同化し、どんどんボーカルがパワフルに。バックに流れるフリーキーなサウンドを合わせて、リスナーを圧巻する内容になっていますし、タイトルを力強く連呼する「Black Family」も、彼女の主張をそのボーカルから強く感じることが出来ます。フリーキーなサウンドをバックに聴かせる「We Are Starzz」もメランコリックなメロに哀愁感たっぷりに力強く聴かせるボーカルが印象的ですし、事実上のラストとなる「Dr.Wattz n'em」は終始、彼女のパワフルなボーカルを前面に押し出した作品になっていました。

そんなパワフルでソウルフルなボーカルが前面に押し出された作品であるがゆえに、ジャズのアルバムというよりはソウルのアルバムという印象を受けてしまう本作。実際、ソウルやR&Bが好きな方なら、おそらく本作は気に入るのではないでしょうか。ただもちろん、ジャズの演奏もしっかりと魅力的に聴かせてくれます。基本的には、フリーキーな演奏がベースになっており、「We Hearby Declare the African」「Melo Deez from Heab'N」ではかなりダイナミックなプレイも聴かせてくれます。サイケ的な要素も強く、そういう意味ではロックリスナーも楽しめる内容かもしれません。さらに「The Wicked Shall Not Prevail」ではトライバルなパーカッションでアフリカ音楽の要素も押し出してきたりして、おそらく彼女の出自を主張しているのでしょうが、この点でもジャズにとらわれない幅広い音楽性を感じさせます。そのような様々な音楽の要素が一体となり、パワフルな演奏とともにリスナーの耳に襲いかかる本作。とにかく終始、圧倒されるライブアルバムになっていました。

聴き終わるとグッと疲れるようなライブアルバムになっているのですが、それだけ彼女のパワーがみなぎっているそんなアルバムだったように感じます。差別への怒りは、言葉の壁がある私たちにはストレートには伝わってはこないかもしれませんが、彼女の演奏を通じて、確実にリスナーの心に届いているのではないでしょうか。とにかく圧巻のライブアルバムで、生でも演奏も是非聴いてみたい、そう感じさせる内容でした。これは本当にすごいライブアルバム。是非一度、このパワーを体験してみてください。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

100 Years of Blues/Elvin Bishop&Charlie Musselwhite

ギタリストのエルヴィン・ビショップとブルース・ハープ奏者、チャーリー・マッスルホワイトの共演によるブルースアルバム。どちらも大ベテランのレジェンドとも言える彼ら。作品的には特に目新しさはない、昔ながらのブルースの作品といった感じなのですが、どちらも心の底からブルースの演奏を楽しんでいるような作品になっており、聴いていてこちらもハッピーな気分になれるようなアルバムになっていました。どちらもそろそろ80歳に近い年齢の彼ら。いつまでもお元気で!

評価:★★★★

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2020年11月23日 (月)

次は南インドの音楽との融合

Title:Global Control/Invisible Invasion
Musician:Ammar 808

チュニジア人のシンセ奏者/プロデューサーであるソフィアン・ベン・ユーセフによるソロユニット、Ammar 808。以前も当サイトで紹介した「Maghreb United」が世界的にも注目を集めヒットを記録し、一躍、ワールドミュージック界の注目の的となりました。本作は、そんな彼の2枚目となるアルバム。再び大きな注目を集める1枚となっているそうです。ちなみに前作「Maghreb United」でも書いたのですが、彼の名前「808」は「ヤオヤ」こと日本のメーカー、ローランドによるリズムマシーン、TR-808から取られたということ。そういう意味では日本人にとっても親近感の持てるミュージシャンと言えるかもしれません。

前作「Maghreb United」はタイトル通り、北アフリカのマグレブの音楽と西洋的なエレクトロビートと融合させた音楽。ただ、このマグレブ音楽を軸として様々な音楽とごった煮になったような、ある種の「B級」感あふれたサウンドが大きな魅力でした。そして今回、彼が取り込んだのは南インドの古典音楽であるカルナータカ音楽。彼自身、若いころにインドに留学したことがあるそうで、それだけインド音楽にも深い造形を持っているそうで、彼の幅広い音楽的な素養を感じられます。

もっともカルナータカ音楽、と言われても、私自身はインド音楽にさほど詳しい訳ではないのですが・・・ただ、アルバムの1曲目「Marivere gati」では、まさしくインド!といった感じの女性ボーカルのこぶしの利いた妖艶なボーカルからスタートします。そしてその音楽のバックには強いビートのエレクトロサウンドが。続く「Ey paavi」も伸びやかで妖艶なサウンドに、ちょっとチープなエレクトロサウンドがエキゾチックな雰囲気を醸し出しています。男女2人のやり取りのようなボーカルもコミカル。どこか感じるB級的な雰囲気が大きな魅力にも感じます。

このこぶしを利かせた妖艶なボーカルスタイルでエキゾチックな雰囲気を醸し出しつつ、チープさを感じるエレクトロビートを力強く聴かせるというのが本作の主なスタイル。その後も「Geeta duniki」などでは非常にメランコリックなメロディーラインが魅力となっていますし、「Duryohana」で聴かせる、ハイトーンのホーンも、おそらくインドの楽器なのではないでしょうか?エキゾチックな雰囲気が強い魅力になっています。

ただ一方、非常にユニークなのですが、全8曲の作品、その8曲が8曲、微妙に異なるエレクトロのビートを聴かせてくれており、これがアルバムの中でのバリエーションとなっています。「Mahaganapatim」はアクセントを聴かせつつ、エッジの効いた細かいリズムパターンが特徴的ですし、「Pahi jagajjanani」は、テクノの要素の強い、あか抜けたスペーシーなリズムが特徴的。最後を締めくくる「Summa solattumaa」もチープな雰囲気ながらも力強いはじけるようなエレクトロビートを聴かせてくれます。

チープな雰囲気のエレクトロサウンドでB級的な・・・という言い方をしていますが、ただバリエーションに富んだリズムパターンやサウンド、幅広い音楽的素養からは間違いなく彼の実力を感じさせます。本作もまた前作同様のごった煮的なアルバムだったのですが、そのごった煮の素材が前作とは異なる点もおもしろいところ。これからどんなサウンドをごった煮してくれるか・・・彼の活動からは目が離せなさそうです。

評価:★★★★★

Ammar 808 過去の作品
Maghreb United


ほかに聴いたアルバム

Magic Oneohtrix Point Never/Oneohtrix Point Never

ニューヨーク・ルックリンを拠点に活動するダニエル・ロパティンによるソロプロジェクトの約2年ぶりのニューアルバム。前作「Age of」ではじめて彼の作品を聴いたのですが、その前作はいかにもソフトロック的なアルバムジャケットで、内容も歌モノ・・・ながらも微妙に歪んだサウンドメイキングが魅力的な内容でした。今回のアルバムも様々なサウンドをサンプリング。1曲の中でどんどんと雰囲気が変わっていくドラスチックな展開もスリリングな作品になっていたのですが、「歌モノ」的な要素が強かった前作に比べると、メロディアスな部分は要所要所に感じるものの、全体的には「実験的」な要素が強くなっていたアルバムになっていました。ちょっととっつきにくかった部分もあり、個人的には前作の方が好みだったかな。様々な音楽的な挑戦がおもしろいアルバムではあるのですが。

評価:★★★★

Oneohtrix Point Never 過去の作品
Age of

Hey Clockface/Elvis Costello

かなり不気味なジャケット写真が妙に目をひくエルヴィス・コステロの約2年ぶりとなるニューアルバム。前半は、2曲目の「No Flag」をはじめギターサウンドとシャウト気味のボーカルでロッキンな曲を聴かせつつ、主軸となるのはムーディーなミディアムテンポのナンバー。メランコリックなメロディーラインも特徴的で、良くも悪くも「良質な大人の音楽」というイメージを強く抱くアルバムになっています。アルバムの出来としては一定以上の安定感があり、その点はさすがはコステロといった感じでしょうか。しっかりと聴かせる作品になっていました。

評価:★★★★

Elvis Costello 過去の作品
Momofuku(Elvis Costello&the Imposters)
Secret,Profane&Sugarcane
National Ransom
Wise Up Ghost(Elvis Costello&The Roots)
LOOK UP(Elvis Costello&the Imposters)
Purse(Elvis Costello&The Imposters)

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2020年11月21日 (土)

いつもながらのシンプルなポップアルバム

Title:Love Goes
Musician:Sam Smith

約3年ぶりとなったサム・スミスのニューアルバムは、今回の新型コロナの影響を大きく受けてしまうアルバムになってしまいました。もともとは「To Die For」というタイトルで5月1日にリリースされることが決定された本作。しかしコロナ禍の最中ということで5月のリリースは延期に。さらに「To Die For」というタイトルがコロナ禍の中では不謹慎ということになり、タイトルも「Love Goes」に変更。10月30日にようやくニューアルバムのリリースとなりました。

そんなコロナ騒動に思いっきり巻き込まれてしまった今回のアルバムですが、そんな中でリリースされた先行シングルはバラードシンガーのイメージが強い彼にしては、比較的テンポのよいダンサナブルなシングル曲が続いていたということでも話題になりました。事実、本作に収録されている「Diamonds」やBurna Boyをゲストに迎えた「My Oasis」などは確かにリズミカルなナンバーですし、タイトルそのまま「Dance('Til You Love Someone Elese)」「Dancing with a Stranger」のようなエレクトロダンスチューンも収録されています。そういう意味ではいままでの彼のアルバムに比べると、比較的ダンサナブルな楽曲も収録されているアルバムと言えるかもしれません。

ただ正直なところアルバム全体としてはダンスチューンも目立つバリエーションのある作品というよりは、いつものサム・スミスと同様、ミディアムチューン中心に美しいメロディーラインを聴かせる作品というイメージで大きな変化はありませんでした。アルバムもアカペラのバラードソング「Young」からスタートしますし、前半は前述の先行配信曲や「Another One」「So Serious」のようなテンポよくメロディアスな曲が並ぶのですが、そんな曲も基本的には伸びやかなサム・スミスのボーカルが主軸となっており、彼のいままでのイメージから大きな変化はありません。

さらに後半にはスケール感あるバラードナンバー「Kids Again」やストリングスも入ってダイナミックに歌い上げるバラード「Fire on Fire」など、彼らしいバラードナンバーが続きます。そんな中でも特にインパクトがあるのがタイトルチューンでもある「Love Goes」。メランコリックなメロディーラインにファルセットも入って美しく聴かせる彼のボーカル、さらに途中ホーンセッションも入ってスケール感を覚えるサウンドも見事で、タイトルチューンらしいアルバムの中での主軸となっている楽曲に仕上がっています。

そんな訳でいままでの彼の楽曲と大きな相違はなく、サウンドは比較的シンプル。バリエーションもダンスチューンが耳を惹くものの、バラエティー豊富な、というよりはあくまでも歌を聴かせるスタイルという点に大きな変化はありません。ただ、それでも最後まで飽きることなくしっかりと聴かせることが出来るのは、いままでの彼の楽曲同様、美しいメロディーラインと美しいボーカルが際立っているからでしょう。まただからこそシンプルなサウンドでも十分勝負できるだけのクオリティーを維持しているのでしょう。今回のアルバムも、そんな彼の魅力が満載の傑作アルバムに仕上がっていました。

評価:★★★★★

Sam Smith 過去の作品
IN THE LONELY HOUR
Thrill It All


ほかに聴いたアルバム

The Power Of The One/Bootsy Collins

Pファンクのメンバーであり、ファンク界隈では最も著名なベーシストのひとりBootsy Collins。70歳近い今となっても、Pファンクのノリと全く変わらない精力的な音楽活動を続けていますが、本作は約3年ぶりとなるニューアルバム。基本的にはいつも通り、終始ご機嫌なファンクチューンが並んでいる作品に。大いなるマンネリといえばマンネリなのですが、最初から最後まで続くファンキーなリズムに聴いていてご機嫌になってくる、とても心地よさを感じるアルバムでした。

評価:★★★★

Bootsy Collins 過去の作品
THA FUNK CAPITAL OF THE WORLD
World Wide Funk

Positions/Ariana Grande

アメリカのシンガーソングライター、アリアナ・グランデのニューアルバム。基本的に楽曲は彼女ののびやか美しい歌声を主軸に据えた、清涼感あってメロディアスなポップチューンが並んでいます。ただ、そのキュートなルックスとは裏腹に・・・というと怒られてしまいそうですが・・・メッセージ性を込めた作品が特徴的で、タイトルチューンの「Positions」は女性大統領に扮したPVも話題になり、女性の社会的な立ち位置をメッセージに込めたといわれていますし、1曲目を飾る「Shut up」も今の時代にリリースされると、トランプ大統領に向けたメッセージソングにすら感じます。そういうメッセージ性を楽曲の中にさらりと取り入れつつ、全体的にはキュートなポップチューンにまとめあげている点に彼女の実力を感じさせる、そんな作品でした。

評価:★★★★

Ariana Grande 過去の作品
My Everything
The Best
Sweetener
thank u,next

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2020年11月20日 (金)

久々にコンパクトでポップなアルバム

Title:SIGN
Musician:Autechre

その独特の音世界で様々なミュージシャンへの影響を与え、多くの音楽リスナーに支持されるエレクトロユニットAutechre。既に結成から30年以上、ワープ・レコードでアルバムデビューしてから25年以上が経過するベテランユニットだったりします。ただ既に「ベテラン」の域に達している彼らですが、その制作意欲は全く衰えていません。衰えていないどころか、ここ数年はオリジナルアルバムが非常に長尺化している傾向にあり、前作「NTS Sessions」はCDにすると8枚組、全8時間にも及ぶという強烈な長さのセッション。前々作「elseq 1-5」も5時間にも及ぶアルバムになっており、その前の「Exai」も2時間に及ぶアルバムと、近年になるに至って、どんどんインフレ化していきました。

そんな中、リリースされた約2年ぶりとなるアルバムは、全11曲、65分という、比較的シンプルで「常識的」な長さのアルバムになっています。まあ、正直なところ、前作「NTS Sessions」はアルバムとして長すぎて、ちょっと冗長といった印象を受けるアルバムでしたので、今回のアルバム程度の長さがちょうどよい、といった感じでしょうか。実際、アルバム全体としては、おそらく良い意味で取捨選択されているようなシンプルな構成の楽曲が並び、いい意味で「ポップ」という印象を受けるアルバムに仕上がっていたように感じます。

アルバム全体としては、比較的ダウナーで、ドローン的な要素を含んだ楽曲が多く見受けられる内容になっています。1曲目「M4 Lama」など、まさにドローン的なサウンドにメタリックな音が重なるようなダウナーな作風になっていますし、続く「F7」もハイトーンのメタリックなサウンドで構成されながらも、全体的には陰鬱な印象の受ける作風になっています。

後半も「sch.mefd 2」「gr4」など、メタリックなサウンドを入れつつ、ドローン風のサウンドが低音で響く、ダウナーな楽曲が並びます。ただ、楽曲としては5~6分程度の曲が並んでいるため、ポピュラーミュージックとしての体裁は兼ね備えており、その中に実はポップなメロディーラインが流れているため意外と聴きやすい、というのは彼ららしさを感じます。「au14」などはリズミカルなテンポのエレクトロビートが軽快な作品になっており、聴きやすいポップな作風となっているため、これが中盤に入っていることでアルバムにひとつの核が生じていますし、ラストを飾る「r cazt」などはメロディーラインに哀愁感すら漂っており、そのメロが心に残るようなアルバムに仕上がっていました。

ここ最近のアルバムの中では断然ポップで聴きやすいアルバムに仕上がっていた本作。ちょっと冗長的だったここ最近のアルバムに比べて、グッと引き締まったアルバムといった印象も受けました。彼らの魅力をしっかりと感じることの出来る傑作アルバムです。

評価:★★★★★

・・・と思っていたら、それからわずか20日後、早くもニューアルバムがリリースされました。

Title:PLUS
Musician:Autechre

続けざまにリリースされたこのアルバムは、決して「SIGN」のアウトテイク集、ではなく歴とした新作となるそうです。実際、ドローンの要素の強かった「SIGN」と比べると、メタリックなエレクトロビートでリズミカルな楽曲が目立つのが今回のアルバム。1曲目「DekDre Scap B」こそダウナーな作風になっているものの、強いビートが目立つ曲調ですし、続く「7FM ic」もテンポよいエレクトロビートが主軸となっている曲になっています。

その後もエッジの効いたエレクトロビートの「X4」やスペーシーなサウンドにアーケードゲーム風なノイズが混じる「ii.pre esc」、さらに最後の「TM1 open」は、ピコピコサウンドとも言うべき軽快なエレクトロサウンドで疾走感もって展開される曲調に、聴いていて楽しくなってしまうような楽曲に仕上がっています。

今回のアルバムも、全9曲63分という「常識的」な内容。ただ、「SIGN」に比べると、「ecol4」が15分弱、「X4」が12分、ラストの「TM1 open」が11分と1曲の長さは前作に比べて若干長尺な曲も目立ちます。もっとも、軽快なエレクトロサウンドがミニマル的に続くリズムとなっているため、長尺でも比較的聴きやすい構成に。アルバム全体としても前作以上に「ポップ」にまとまっていて聴きやすいアルバムに仕上がっていたと思います。

「SIGN」とは異なる作風のアルバムということで、「SIGN」「PLUS」合わせてAutechreの今やりたいことを表現した構成になっている、ということなのでしょうか。ただ、1枚あたりのアルバムの長さは1時間程度と(彼らにしては)コンパクトにまとまったのですが、2枚合わせると2時間強と今回もやはりそれなりのボリュームのなってしまった作品に。やはり彼らの衰えない創作意欲をカバーするためには、60分程度の長さでは物足りなさすぎるということなのでしょうか。ただ、それでも2枚のアルバムに分けたことにより、それなりにメリハリがついて、それぞれのアルバムがいい意味で引き締まっている、聴きやすいアルバムに仕上がっていたように感じます。Autechreの実力をしっかりと感じられる2枚のアルバムでした。

評価:★★★★★

Autechre 過去の作品
Quaristice
Oversteps
move of ten
Exai
NTS Sessions 1-4


ほかに聴いたアルバム

MTV Unplugged/Pearl Jam

彼らがデビューアルバム「TEN」で大ブレイクした直後、1992年3月に行ったアコースティックによるスタジオライブ番組「MTVアンプラグド」で行ったパフォーマンスの模様を収録したライブアルバムいままで「レコードストアデイ」の限定商品としてアナログリリースされたことはあったのですが、単独での通常リリースは今回がはじめて。コロナ禍でライブもままならない中でのライブの穴埋め的な意図もあるのでしょうか?

ただ、アコースティックなライブパフォーマンスながらも、そんな中からにじみ出てくるパワフルな演奏を感じられるのがこのアルバム。「MTV Unplugged」というと大人の雰囲気のパフォーマンス、というイメージが強いのですが、1992年、若いエネルギーがありあまる彼らにとっては、アコースティックライブであろうと、そのパワーを「封印」することは出来なかった模様。ただ、このアコースティックなサウンドと、彼らのみなぎるパワーの絶妙なバランスがユニークなライブパフォーマンスに仕上がっています。今となっては非常に貴重な音源。逆に、今の彼らだったら、どのようなパフォーマンスをするのか気になるところでもあるのですが。

評価:★★★★★

Pearl Jam 過去の作品
Backspacer
Lightning Bolt
Gigaton

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2020年11月16日 (月)

カレー屋の匂いも漂ってくるような

Title:インドカレー屋のBGM 決定版

「インドカレー屋のBGM」という企画モノについては、ご存じの方も多いかもしれません。インド人が経営する本場インドカレーの専門店で流れている「謎の音楽」をリサーチし、その楽曲をつきとめ、CDとして収録したアルバム。謎の音楽というエキゾチックさや、妙に耳の残り気になってしまうメロディーというインドカレー屋のBGMについつい惹かれる人も多いらしく、2005年の第1弾以来、シリーズを重ね、累計4万枚のセールスを記録するという、ちょっとしたスマッシュヒットとなっているオムニバス盤だそうです。私も以前からこのシリーズのことは知っていたのですが、今回「決定版」という形でリリースされた本作を、遅ればせながらチェックしてみました。

基本的に、このインドカレー屋のBGMに収録されている楽曲は、日本でも一時期話題となった「ボリウッド」と呼ばれるインド映画に使用されている音楽がメイン。インドの音楽というと、タブラやシタールなどの楽器を用いて、非常に複雑なリズムを奏でる構成の音楽、というイメージが強いのですが、正直言うと、このCDに収録されている楽曲は、そういう複雑な変拍子から構成されるようなインド音楽とは違うタイプの曲になっています。

全体的には比較的チープな打ち込みをバックに、ハイテンポでダンサナブルなリズム、典型的なハイトーンの女性ボーカル、そして哀愁感あふれるメロといった楽曲がメイン。比較的わかりやすいリズムの曲がメインとなっており、ラップなども取り込んだ曲もあったりと、欧米のサウンドの影響を多分に取り入れ、ただ所々に強烈なインド的な風味を加えた、そんな楽曲になっています。

ちなみにそんな楽曲を歌い上げるのは「プレイバックシンガー」と呼ばれるような歌手だそうで、映画で使われる音楽を俳優の代わりに歌うシンガーだそうで、特にインドでは、主演俳優や音楽監督と同等の地位を占めるなど、非常に高く評価されているそうです。今回のCDに収録されている曲を歌うシンガーも、非常に長いキャリアのある歌手も少なくないようで、かなりコミカルで謎にみちた企画のように感じるのですが、ボリウッド映画で使われる楽曲をまとめたオムニバスとして、なにげに聴き応えのある企画盤であるようにも感じました。

楽曲的には、上にも書いた通り、終始、エキゾチックな香り漂うサウンドにダンサナブルでチープなリズムが重なる曲が続いていき、インドカレー屋で感じるような異世界のような不思議な感覚を味わうことが出来ます。本作に収録されている曲でもラストの「Ehi Thaiyaa Motiya」はシタールやタブラの音色が入っている曲になっており、伝統音楽的な曲調になっているのも印象的。強烈なインド音楽のサウンドを存分に味わうことが出来るアルバムになっていました。

ジャケット写真といい、日本語の「空耳」をそのままサブタイトルにしちゃった試みといい、かなりB級っぽい奇抜なオムニバスなのですが、一方でインド音楽のオムニバスとしては聴き応えのあるアルバムだったと思います。まあ、だからこそ、15年にわたる人気シリーズになっているのでしょう。妙な味わいが癖になってやめられなくなりそうな、そんなアルバムでした。

評価:★★★★


ほかに聴いたアルバム

Letter to You/Bruce Springsteen

前作からわずか1年4ヶ月というスパンでリリースされたBOSSのニューアルバムは、2012年にリリースされたアルバム「WRECKING BALL」以来、約8年ぶりとなる、Eストリート・バンドとのオリジナルアルバム。基本的に彼の渋みを増したボーカルでゆっくりと歌われるタイプの曲が多いのですが、アルバム全体としてはEストリート・バンドとの作品ということもあって、力強いバンドサウンドを前面に押し出したロック色の強い作品になっています。Bruce Springsteenらしさを強く感じさせるアルバムになっていました。

評価:★★★★

BRUCE SPRINGSTEEN 過去の作品
Working On A Dream
WRECKING BALL
High Hopes
1980/11/05 Tempe,AZ
Western Stars

Beastie Boys Music/Beastie Boys

アメリカの人気HIP HOPグループ、Beastie Boys。1986年にリリースしたアルバム「Licensed to ill」がHIP HOPのアルバムとしてははじめてビルボードで1位を獲得するなど大ヒットを記録し、その後も人気グループとしてHIP HOPシーンを牽引していったのですが、2012年にリーダーのMCAが47歳という若さで逝去。その後、事実上の解散状況となっています。

今回突如リリースされたのは、そんな彼らのキャリアを網羅したベストアルバム。まあ、彼らのベスト盤は過去に何作かリリースされており決して新しさはないものの、改めて彼らの代表曲を聴きなおすことが出来ました。比較的ビートの強いダイナミックでリズミカルなサウンドはHIP HOPというよりもロック的な部分も強く、そういう意味ではロックリスナーにも親和性の強いサウンドを聴くことが出来ます。一方ではHIP HOP的な魅力もしっかりと兼ね備えており、ロックリスナー、HIP HOPリスナーに幅広くアピールできるサウンドが彼らの大きな魅力であり、かつだからこそ大ヒットを記録できた、とあらためて感じることが出来ました。それにしても、あまりにも早すぎるMCAの死はあらためて非常に残念にも感じる、そんなベスト盤でした。

評価:★★★★★

Beastie Boys 過去の作品
HOT SAUCE COMMITTEE PART 2
An Exciting Evening At Home With Shadrach, Meshach & Abednego
Love American Style
Hey Ladies(Remixes)
Shadrach(Remixes)
Shake Your Rump(Remixes)
Looking Down The Barrel Of A Gun (Remixes)

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