アルバムレビュー(洋楽)2020年

2020年9月26日 (土)

心地よいポップなメロが気持ちよい

Title:Songs For The General Public
Musician:The Lemon Twigs

心地よいメロディーラインのポップスというのは、聴いていて本当にウキウキしてきます。なんといっても難しいこと抜きに楽しめますし、ちょっと試聴する程度のつもりでも、一度プレイボタンを押したら最後、ついつい時間も忘れて聴き進めてしまいます。そして、今回紹介するのはまさにそんなアルバム。ブライアン・ダダリオ、マイケル・ダダリオという兄弟を中心として結成された4人組ロックバンド、The Lemon Twigs。2016年にリリースされたデビューアルバム「Do Hollywood」も大きな話題となり、その後、フジロックやサマソニにも来日を果たしている彼ら。その3枚目となるニューアルバムがリリースされました。

まずいかにも80年代のロックバンドを彷彿とさせるジャケット写真が目を惹く彼らですが、サウンド的にもまさに80年代的な軽快なポップチューンが並んでいます。1曲目「Hell on Wheels」も、ちょっとしゃがれ気味の声がいかにもロックスター然としつつ、ギターのアレンジといい、ストリングスやコーラスラインを入れてほどよく分厚くしたサウンドも80年代的。「Only a Fool」のフュージョンっぽいシンセのサウンドなど、まさに80年代そのままといった印象を受けます。

ただ、そんな80年代的なサウンドをバックにしつつ、一番魅力的なのはなんといっても冒頭に書いた通りの、ワクワクするようなメロディーラインでしょう。特に個人的に壺だったのが「No One Holds You(Closer Than The One You Haven't Met)」。冒頭のギターの入り方や軽快なピアノ、さらには微妙に半音で展開されるメロディーラインや絶妙に入るシャウトなど、完全にBilly Joel風。もう聴いていて本当に楽しくなってくる1曲。ほかにも「Live in Favor of Tomorrow」も非常に楽しいポップチューンになっていますし、「Fight」もシンセの音も軽快なポップチューン。なんとなくサウンドやメロは初期TM NETWORKを彷彿してしまう部分もあったりして…。

80年代的といってもサウンドは、もうちょっと時代を下った80年代後半から90年代のような印象。シンセなども用いてほどよく分厚くなったサウンドとポップなメロディーラインも大きな魅力なのですが、個人的には80年代後半から90年代前半あたりのJ-POPとほどよくリンクしそうなサウンドに感じました。具体的にはその頃のEPIC系のミュージシャンの匂いを感じます。上にもTM NETWORKの名前を出しましたが、初期の岡村靖幸、渡辺美里、バービーボーイズ、大江千里、小比類巻かほる、松岡英明...etc。ここらへんの名前にピンと来るようなアラフォー、アラフィフ世代には、おそらく間違いなく彼らのサウンド、メロディーラインは壺に入るのではないでしょうか。

また、加えて彼らの大きな魅力に感じたのが、ポップなメロディーラインを前に押し出しつつ、実は様々な音楽性も感じさせる部分ではないでしょうか。例えば「Hog」などはポップなメロディーにちょっと怪しげなサウンドが重なり、ゴシックロック、ドリームポップ的な要素も感じますし、「Leather Together」もポップなメロが流れつつ、ロックンロールなギターサウンドが前に出ている楽曲に。ラストを飾る「Ashamed」もラストはギターノイズが前に押し出され、サイケロック的な様相を見せています。単なる80年代的なポップという枠組みを超えた、実はロックバンド然とした部分も彼らの大きな魅力に感じました。

個人的にはかなり壺に入りまくりの非常に気持ちのよい傑作アルバム。私のようなアラフォー、アラフィフ世代にはかなり壺をついたサウンドだと思いますし、なによりもポップス好きにはたまらない1枚ではないでしょうか。ただちょっと気になるのは、バンドの中心となっているのが兄弟ということ。ジザメリのリード兄弟、oasisのギャラガー兄弟のように、兄弟が中心となるバンドは少なくありませんが、仲たがいしてしまうケースが少なくありません。彼らは末永く活動を続けてくれるとうれしいのですが…。ただ、本当にメロディーセンスのあるバンドで、聴いていて時間を忘れさせてくれるようなそんなアルバムでした。非常に素直に気持ちの良さを感じさせる傑作です。

評価:★★★★★

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2020年9月25日 (金)

大人の風格漂う

Title:Unfollow The Rules
Musician:Rufus Wainwright

アメリカのシンガーソングライター、ルーファス・ウェインライトのニューアルバム。直近作「Take All My Loves: 9 Shakespeare Sonnets」はシェイクスピアの詩集を基とした企画盤、前々作「Prima Donna」はオペラのアルバムだったので、純粋なポップスのニューアルバムとしては2012年の「Out of the Game」より、約8年ぶりの新作となったそうです。

その渋い雰囲気のジャケットの風貌といい、直近作がシェイクスピアだったりオペラだったりと、非常に小難しい感じの企画モノだったりと、イメージとしては「通好み」のミュージシャン、ちょっと手を出しがたい感も否定はできません。実際、今回のアルバムも、全12曲入りながら、4曲毎に区切られた「全3幕」という構成のアルバムになっていて、その凝った感じのアルバムの構成も、良くも悪くも、手を出しがたい感じに拍車をかけています。

その三幕からなる内容ですが、ブルージーな雰囲気を醸し出しつつ、重厚なコーラスラインが心地よい「Trouble In Paradise」からはじまり、アコギとストリングスで伸びやかに聴かせる「Damsel In Distress」、感情のこもったボーカルでゆっくりと聴かせるタイトルチューンの「Unfollow The Rules」など、比較的スケール感のあるサウンドでメロディアスに聴かせる曲が並びます。

第2幕はピアノをバックにメロディアスなポップチューンを聴かせる「Romantical Man」やカントリー調の「Peaceful Afternoon」などメロディーの人懐っこさ、キュートさにまず耳が行くようなインパクトあるナンバーが並びます。そして第3幕は「Early Morning Madness」「Devils And Angels(Hatred)」などムーディーなピアノ曲がメイン。こちらは「大人の歌手」といったイメージのあるスタンダードポップ調の楽曲が並んでいます。

そんな訳で、3幕で構成された全12曲の楽曲。確かに第3幕目のムーディーなスタンダードポップ調の曲のようにジャケットの風貌と同様の「大人の雰囲気」が漂う楽曲も少なくありません。が、ただ、全体的にアルバムを聴き始める前に予感していたような小難しさは皆無。特に序盤から中盤にかけては、非常に人なつっこさを感じるポップなメロを聴かせてくれます。

全体的には確かに派手でインパクトのあるメロディーといった感じではありませんし、いわばしっかり聴かせる「大人のポップス」を聴かせてくれるタイプのシンガーソングライターであることは間違いありません。ただ、どの曲も基本的にはわかりやすいメロディーラインが流れるポップな楽曲ばかりという点は間違いありませんし、そういう意味での小難しさは皆無。非常に良質なポップチューンを私たちに届けてくれる傑作アルバムに仕上がっていました。

まさに「大人のポップス」を探している世代にはお勧めしたい1枚ですし、また、そうでなくても、ポップス好きならば気に入りそうな、気持ちよくポップな楽曲を楽しめる作品。お勧めです。

評価:★★★★★

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2020年9月22日 (火)

徐々に個性を確立

Title:The Glow
Musician:DMA'S

ここ十年程度、このタイプのバンドは次々と出ていただけに、難なくコンスタントに3枚目までリリースしてきたことはちょっと驚きも感じられます。オーストラリアはシドニー出身の3人組バンドDMA'Sのニューアルバム。デビュー作「Hills End」で、明確なoasisのフォロワーとしてデビューし、大きな話題を呼んだバンドです。その節回しといい、ボーカルスタイルといい、あまりに「そのまんまoasis」といった感じの作品だっただけに、正直、大絶賛は出来なかったものの、oasisファンとしては素直に楽しめるアルバムになっていました。

そういうタイプのバンドは大抵、1枚目のアルバムは話題になるものの、2枚目以降はほぼ話題になることはなく、いつの間にか消えている…というのが世の常。DMA'Sもそんな筋道を辿っていくのか…そう思われたのですが、ただ実際は違いました。その後コンスタントに2枚目、そして3枚目となる本作もリリース。なんと本作では、イギリスのナショナルチャートで最高位4位を記録。本国への逆輸入に成功し、人気バンドへと躍進を遂げています。

おそらく彼らがこれだけ人気を確保した一番大きな理由は、2枚目3枚目と徐々にDMA'Sとしての個性を出してきたからではないでしょうか。1枚目はoasisっぽく、グルーヴィーなバンドサウンドを前に押し出したような曲が目立ちましたが、2枚目はあっさりとしたポップな曲調がメインに。そして3枚目になる本作も、バンドサウンド以上にポップなメロディーラインの魅力を前に押し出した作品が並びます。

タイトルチューン「The Glow」も疾走感のあるバンドサウンドに軽快なメロディーラインを聴かせる爽やかなポップチューンになっていますし、「Hello Girlfirend」もタイトルからも想像できそうな、ポップでキュートなメロが心地よいギターポップのナンバーに。特に今回のアルバムで聴いていて心地よかったのが「Round&Around」で、ポップでキュートなメロディーラインにコーラスラインを重ねるサウンドも心地よく、ほどよくノイジーなギターサウンドも非常に心地よいポップチューンに仕上がっています。

とにかく全体的にポップなメロディーが心地よい楽曲が並んでいます。もちろんoasisもその第一の魅力はポップなメロディーラインでしたが、彼らの場合は、ポップというよりもいい意味でのバブルガムポップ的な、キュートでインパクトのある、スウィートとも表現できそうなポップスが並びます。このoasisと彼らとの違いが良い意味でさらに際立ったのが今回のアルバムで、彼らの個性をしっかりとアルバムの中で表現できていた傑作になっていました。

ただ一方ではoasisをはじめとするブリットポップからの影響もしっかりと感じられます。もっとも顕著なのが1曲目の「Never Before」で、ノイジーでグルーヴィーなサウンドは、まさにoasis的。この曲に関してはねちっこい歌い方も、どこかリアム・ギャラガーからの影響を彷彿とさせます。アルバムの1曲目で、まずはブリットポップが好きなリスナー層をガッチリと抱え込む、そんな構成といった感じでしょうか。

また「Stragers」のようなメランコリックなメロディーラインをグルーヴィーなバンドサウンドにのせているこの楽曲も、ブリットポップからの影響を強く感じますし、リスナーによってはある種のノスタルジックな気持ちを掻き立てるようなポップスになっているかもしれません。ここで聴かせてくれるようなインパクトあるメロディーも彼らのメロディーメイカーとしての実力を感じさせます。ブリットポップのフォロワーという立ち位置とDMA'Sだけが持っている個性を上手く融合させた楽曲と言えるかもしれません。

oasisをはじめとするブリットポップからの影響をしっかりと残しつつ、一方ではDMA'Sとしての個性や実力をしっかり反映させることが出来た3枚目。徐々に人気が上がってきて、ついにはイギリス本国での人気を得ることにも成功した彼らでしたが、その理由はよくわかります。これだけしっかりとした魅力的なメロディーラインが書けるのであれば、今後、さらに彼らの人気は高まりそう。古き良きブリットポップの魅力を残しつつ、今後も彼らの活躍は続きそうです。

評価:★★★★★

DMA'S 過去の作品
Hills End
FOR NOW


ほかに聴いたアルバム

FIXTAPE/Popcaan

ジャマイカ出身のダンスホールシンガーによる新作。ちょっとギャングスタっぽい感じもするいかにもなジャケット写真になっていますが、作品自体はメランコリックなメロディーラインでテンポよく聴かせるレゲエがメイン。楽曲によっては爽快感あるメロやサウンドを聴かせる曲もあり、全体的にはいい意味での聴きやすさもあるレゲエチューンが展開されます。心地よくレゲエを楽しめる1枚でした。

評価:★★★★

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2020年9月21日 (月)

原点回帰の新作

Title:Purple Noon
Musician:Washed Out

アメリカの男性ミュージシャン、アーネスト・グリーンによるソロプロジェクト、Washed Out。2011年にリリースされたアルバム「Within and Without」が高い評判を得て、一躍、注目を集めました。そこで話題となった音楽のジャンルが「チルウェイヴ」という音楽。チープな打ち込みをバックに、ノスタルジックなメロディーラインを載せている点が特徴的な音楽で、80年代的なシンセポップと、今風のHIP HOPが融合されている音楽、ということだそうです。

Washed Outというミュージシャンは、このチルウェイヴというジャンルを確立し、その後のシーンに大きな影響を与えたミュージシャンでした。ただ、その後は若干音楽性が変化し、特に前作「Mister Mellow」はダンスミュージックやHIP HOP寄りにシフトした作品になっていた……そうです。聴いていないので詳しくは知らないのですが…。

しかし、今回のアルバムはそんな彼が「原点回帰」ということで、デビュー作の方向性に近い、チルウェイヴの作品を作り上げてきました。まずその傾向は1曲目から顕著。「Too Late」はちょっとチープさを感じる打ち込みのリズムがまさに80年代的テイストで、ノスタルジックな雰囲気を感じる哀愁感漂うメロディーラインからして完全にチルウェイヴのイメージにピッタリ来ています。

さらに続く「Face Up」「Time to Walk Away」は、80年代的ながらも、どこか洒落た感のある打ち込みのサウンドとメロディーラインに、ここ数年、世界中で注目を集めているシティポップの要素を強く感じます。Washed Outが確立したチルウェイヴの音楽性は、まさにシティポップの要素を兼ね備えたような部分を強く感じるのですが、そのような音楽を、今から約10年前の2011年に、まだ80年代的なシティポップがほとんど注目されていないような時期に打ち出したWashed Outの先見性をあらためて今回のアルバムでは強く感じました。

またこのチルウェイヴの音楽の特徴とした「霧にかかったようなホワイトノイズ」という説明を見受けます。実際、デビュー作「Within and Without」でもこの霧にかかったようなサウンドという点が大きな特徴となっていました。ただ今回の作品に関しては、特に前半においてこの「霧にかかったようなサウンド」という特徴はあまり強くはありません。ただ、中盤の「Game of Chance」「Leave You Behind」は、まさにこの「霧にかかったようなホワイトノイズ」という特徴を兼ね備えた楽曲になっており、そういう意味ではしっかりとチルウェイヴの要素を踏まえた作品として仕上げていました。

そんな訳で、まさに原点回帰となった今回のアルバム。といっても個人的には彼のアルバムを聴いたのはそのデビュー作以来なので、彼のその後の変化は知らないのですが…。ただ、懐かしく、メランコリックで妙に人懐っこいメロディーラインは非常に魅力的。ほどよいノイズもまじり、非常に心地よさを感じる音楽になっていました。メロディーラインもいい意味でわかりやすく、日本人にとっても壺をついたようなメロディーと言えるのでは?良質なポップソングとしてお勧めできるアルバムでした。

評価:★★★★★

Washed Out 過去の作品
Within and Without


ほかに聴いたアルバム

Microphones in 2020/The Microphones

アメリカのロックバンドによるThe Microphones。1999年から活動を開始し、2003年に解散。ただし、その後は再結成で散発的な活動を続け、このたび実に約17年ぶりとなるアルバムとなったのが本作。とはいえ本作、約44分にも及び1曲のみが収録されているという作品。シングル…ではなく一応アルバム扱いのようですが。ただ、この手のアルバムでありがちな、非常にマニアックな聴きにくいアルバムといった感じではなく、終始メランコリックなメロディーが流れつつ、フォーキーな作風になったりノイズギターが入ったりと徐々に形式を変えつつ展開していくような内容に。44分という長さで聴きどころも多く、あっという間に楽しめるような作品でした。

評価:★★★★★

Twice as Tall/Burna Boy

ナイジェリアのシンガーソングライターによる5枚目のアルバム。Beyonceのアルバム「The Lion King:The Gift」への参加でも話題を集め、前作「African Giant」も傑作アルバムに仕上がっていました。それだけに期待して聴いた今回のアルバム。確かにアフリカ音楽やレゲエにHIP HOPなどを融合させた音楽性は非常にユニーク。ただ、全体的にはレゲエ的な要素も強く、メランコリックなメロディーが前に。良くも悪くも垢抜けた感はあり、アフリカの音楽と西洋音楽の融合というイメージは前作に比べると薄くなってしまった感もありました。欧米ポップ寄りにグッとシフトした1枚。この方向性が次回作以降、吉と出るか凶と出るか・・・。

評価:★★★★

Burna Boy 過去の作品
African Giant

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2020年9月19日 (土)

期待のインディーロックバンド

Title:A Hero's Death
Musician:Fontaines D.C.

最近、ヒットシーンはすっかりHIP HOP系で埋め尽くされており、ロック系にはいまひとつ勢いがありません・・・・・・なぁんてことを言いたくなったりもするのですが、ちょっと待ってください。なにげに最近、おもしろいロックバンドは少なくありません。当サイトの私的アルバムランキングの上半期1位となったDoglegもそもそも注目のポストロックバンドですし、Mannequin Pussy、IDLESなどといったポストパンク組は、ここ数年、傑作アルバムを連発しており、なにげに注目すべきロックバンドは増えているように思います。

今回紹介するアイルランドはダブリン出身のロックバンド、Fontaines D.C.もそんな今、注目したいロックバンドの一組でしょう。デビューアルバムとなった前作「Dogrel」も大きな注目を集めたようですが、続く2作目である本作も、今年を代表する1枚となりそうな注目を集める傑作アルバムに仕上がっています。

サウンド的には、基本的に全編ダウナーな雰囲気のギターロック。ボーカルもかなり淡々とした歌い方になっており、全体的にはローファイ気味なインディーロックを奏でるバンドとなっています。アルバムの冒頭を飾る「I Don't Belong」などはまさにそんなローファイ気味なサウンドで淡々と奏でる、いかにもなインディーロック然としたような曲調。この荒削りなバンドサウンドは、ちょっと80年代のインディーロック的な部分も感じられ、バンドの大きな魅力にもなっています。

その後も「Televised Mind」「I Was Not Born」のような分厚いギターノイズを響かせながらも、疾走感あるバンドサウンドを聴かせるような楽曲や、「A Lucid Dream」や「Living In America」のようにエフェクトをかけたサウンドのかたまりを響かせて、サイケロックの様相も呈している楽曲などはロックが好きならかなり壺にはまるのではないでしょうか。

ローファイ気味で淡々とした作風ながらも、一方では意外なメロディーセンスも感じられるのもバンドの特徴で、中盤の「You Said」「Oh Such A Spring」で聴かせるようなメランコリックなメロディーラインも魅力的。最後を締めくくる「No」もミディアムテンポのノイジーなサウンドをバックに、意外とメロディアスでポップなメロディーラインをしっかりと聴かせてくれる歌モノの楽曲に仕上がっており、メロディーメイカーとしての才も垣間見れる作品となっています。

この荒々しい80年代のインディーロック的なサウンドに意外とポップなメロディーライン・・・ということで強い影響を感じさせるのがPixiesで、特に語るようなボーカルとへヴィーなギターサウンドのタイトルチューン「A Hero's Death」なんかは、完全にPixiesの影響を感じさせるような楽曲に。ほかにもSonic Youthあたりが好きなら、間違いなく気に入りそうなバンドだと思います。

そんな訳で、まだまだおもしろいロックバンドはたくさん出てきているんだなぁ、ということを実感させられる1枚。サウンド的には懐かしさと新しさが同居しているようにも感じる部分もあるのですが、勢いのあるギターサウンドは、今でも十分すぎるほど魅力的なノイズを響かせています。これからの活躍も楽しみです。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

Such Pretty Forks in the Road/Alanis Morissette

一時期に比べると、話題に上ることも減ってしまったアラニス・モリセット。久々の新譜と思いきや、実に約8年ぶり。とはいえ、イギリスのナショナルチャートではちゃんと8位にランクイン(米ビルボードでは16位)にランクインしており、一時期ほどの熱狂的な人気はないものの、確固たる人気も感じさせます。

そんな今回のアルバムは基本的にアラニスらしい楽曲。ミディアムテンポでスケール感を覚えるダイナミックな曲調を、彼女の力強く、かつねっちりと感情のこもったボーカルで歌い上げるスタイル。デビュー当初のイメージから変わらないアラニスのスタイルといった感じで、目新しさはない反面、安心して聴けるアルバムになっています。ただ、アラニスの歌声を久しぶりに聴くと、やはり日本の女性ボーカリストは直接的にしろ間接的にしろ彼女の影響下にある人が多いですね。今回のアルバムを聴くと、あきらかに椎名林檎や鬼束ちひろのボーカルスタイルのルーツとしてのアラニスの姿が感じられます。そういう意味でも、椎名林檎や鬼束ちひろのような、情熱系の女性シンガーが好きな方は、改めて本作をチェックしてもよいのでは?

評価:★★★★

Alanis Morissette 過去の作品
Flavors Of Entanglement

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2020年9月14日 (月)

Arcaのパーソナリティーが反映

Title:KiCk i
Musician:Arca

ベネズエラのトラックメイカーArca。Bjorkのアルバムのプロデュースで話題となり、さらにはKanye WestやFKA Twigsとの仕事も話題となり、一躍注目を集めるミュージシャンとして活躍しています。そんなArcaの約3年ぶりとなるオリジナルアルバムなのですが、まず、ジャケット写真に驚かされます。どこか日本のフィギュアみたいな感じもする武器に身を固め、こちらをじっと見つめる彼女・・・・・・って、あれ?Arcaって女性だったの?と思ってしまうのですが・・・今回、彼女は自らをノンバイナリー(性認識が男性・女性どちらにもはっきりと当てはまらないという考え)であると公言。今回、このようなジャケット写真を公表するに至ったようです。今回のアルバムもいきなり1曲目は「Nonbinary」という曲からスタートします。

ただもっとも、Arca自身、いままで音楽に対してそのパーソナリティーを前面に出してきたようなミュージシャンではありません。そういうこともあって今回、彼女がノンバイナリーとしてその姿をあらわしたとしても、さほどの違和感はありませんでした。ただ、今回のアルバムの特徴としては、彼女がノンバイナリーであることを公表し、それを前面に出したことによって、アルバムが非常にパーソナリティーな内容になったように感じます。

そのため、無機質的な感触が強かった以前のアルバムと比べると、楽曲として暖かみが増して、よりポップにシフトした印象を受けます。具体的に言うと、以前のアルバムに比べて「歌モノ」がグッと増えています。1曲目「Nonbinary」からして、おそらく彼女の独白であろうポエトリーリーディングのような語りが展開される楽曲になっていますし、「Calor」「Machote」のような彼女自身がその歌声を聴かせる楽曲も目立ちます。さらにラストを締める「No Queda Nada」では、彼女が伸びやかな歌声で歌い上げる荘厳な楽曲に仕上がっており、Arcaがボーカリストとして前面に出てきている楽曲になっています。

そのほかにも豪華なゲストボーカルが参加した「歌モノ」の曲が目立ちます。アルバムのハイライトとも言えるのが間違いなく、かのBjorkが参加した「Arterwards」で、荘厳なエレクトロサウンドを聴かせる、しっかりArcaらしさを押し出した曲であるのですが、Bjorkの感情たっぷりに歌い上げるボーカルが前面に出ており、完全にBjrokの楽曲になってしまっています…が、相手がBjrokでは仕方ないですね。このままではBjorkの曲として終わってしまうと思ったのか(笑)、最後はArca自身がボーカルで登場し、曲を締めくくりました。

他にもROSALIAが参加した「KLK」ではラテン調のビートを披露しつつ、軽快なポップチューンを聴かせてくれたりしつつ、逆に、「La Chiqui」ではSOPHIEがゲストボーカルとして参加し、幻想的な歌声を聴かせつつ、強烈なハイトーンビートでアバンギャルドな作風に仕上げてきたりと、歌モノをいれつつポップでまとめながらも、Arcaらしい挑戦心、アバンギャルドさはしっかりと健在していました。

セルフタイトルとなった前作「Arca」もポップな方向性にシフトした作品になっていましたが、今回の作品は、よりArcaというパーソナリティーを押し出し、さらなるポップに仕上げた作品に。ただもちろん、以前からのArcaらしさも健在で、彼女にしか作りえないような独特の「ポップス」に仕上がっていました。今後は、より彼女のパーソナリティーを反映した作風にシフトしていくのでしょうか。今後の方向性にも要注目です。

評価:★★★★★

Arca 過去の作品
Xen
Sheep(Hood By Air FW15)
Mutant
Arca

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2020年9月12日 (土)

シンプルゆえに味わい深い傑作

Title:folklore
Musician:Taylor Swift

今や、おそらくアメリカで最も人気のあるシンガーソングライターの一人となったテイラー・スウィフト。日本でも高い人気と知名度を誇る彼女ですが、そんな彼女の約1年ぶりとなるニューアルバム。リリース公表日がリリース日の1日前というサプライズリリースということでファンを驚かせましたが、突然のリリースにも関わらず、ビルボードチャートでは当然のように1位を獲得。大ヒットとなっています。

さてそんな今回のアルバムですが、プロデューサーとして以前からの盟友、ジャック・アントノフに加えてThe Nationalのアーロン・デスナーが参加。17曲中11曲をアーロンがプロデューサーとして参加しています。また、コロナ禍の中作成されたアルバムということで、作成は主にリモートによって作成されたようで、さらにほとんどの楽器をジャックとアーロンが演奏するという、ある意味、宅録的なアルバムに仕上がっています。

そんなアルバムということもあって、アルバム全体としては比較的、シンプルな作品として仕上がっています。カントリー色の強い「Seven」やアコギでフォーキーな作風に仕上がっている「Illicit Affairs」「betty」などといった曲もあり、ここらへんは以前からの彼女らしい曲調と言えるかもしれません。ただ、全体的にはカントリー、フォーク色の強い以前の彼女のアルバムのような作品…といった感じではありません。シンセが入って分厚い音を聴かせる「This Is Me Trying」や、ピアノとストリングスで幻想的に聴かせる「Epiphany」といったような、軽く幻想的な作風が本作のひとつの特徴となっています。

他にも打ち込みのリズムをバックにメロディアスに聴かせる「The Last Great American Dynasty」や、静かなギターサウンドをバックに伸びやかなボーカルで聴かせる「Peace」など、シンプルながらもしっかりとメロディーを聴かせるポップチューンがメイン。エレクトロサウンドを取り入れて比較的ポップで派手目な作品が多かった前作「Lover」と比べると「地味目」という印象すら受けるかもしれませんが、The Nationalのアーロン・デスナーがプロデューサーとして参加している影響でしょうか、インディーロックの色合いを強く感じるような作風となっています。そのため、地味という印象を受けるアルバムですが、その実、アルバムのバリエーションも豊かで、聴けば聴くほど味が出てくるような、味わい深い作風になっていたように感じます。

そんなシンプルな作風がゆえに、テイラーの表現力あふれるボーカルの魅力を味わえるのも本作の特徴。清涼感あるボーカルを聴かせる「Mirrorball」や、ピアノをベースとしたシンプルなサウンドをバックに表現力豊かに聴かせる「Mad Woman」などといった、彼女のボーカリストとしての魅力が冴えた作品が並びます。デビュー当初はわずか16歳という若さも話題となった彼女も、今年で既に30歳。女性に対して年齢の話をするのは失礼ではあるのですが、既にベテランの域に達した彼女。しかし、そのキャリアがしっかり裏付けられたボーカルが実に魅力的でした。

さらにアルバムの中のひとつのハイライトと言えるのが4曲目の「Exile」でしょう。この作品はピアノをベースとしたサウンドでゆっくりと聴かせるミディアムチューンなのですが、Bon Iverがゲストボーカルとして参加。彼とのデゥオにより、彼女の清涼感ある歌越えとBon Iverの骨太なボーカルのバランスも実に見事。楽曲としてのスケール感もあり、強いインパクトのある作品に仕上がっています。

リリース以来、各所で大絶賛を受けている本作ですが、確かにそれも納得と言えるような傑作だった本作。個人的にも、最初聴いた時は、地味な作風にさほどピンと来なかったのですが、2度3度聴くうちに魅力にはまっていってしまい、今では彼女の最高傑作であり、年間ベストクラスの傑作ではないか、と思うほどに至っています。こういう地味目な作品をしっかりと聴かせるあたり、本当に実力のあるミュージシャンと言えるのでしょうね。彼女のすごさを見せつけた傑作アルバムでした。

評価:★★★★★

TAYLOR SWIFT 過去の作品
FEARLESS
RED
1989
REPUTATION
Lover

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2020年9月11日 (金)

不気味なジャケが目を惹くが・・・

Title:Flower of Devtion
Musician:Dehd

今回紹介するのは、シカゴ出身の3ピースインディーロックバンドのニューアルバム。「Dehd」と書いて、これで「デフド」と読むそうです。本作が3作目となるアルバムなのですが、まず目を惹くのは非常に奇妙なジャケット。非常に不気味で、妙な印象を見る人に与えるようなジャケットになっており、このアルバムを聴こうとする人に対して、期待と同時にある種の不安を与えるようなジャケットになっています。

このジャケットが故に、最初聴く前はサイケポップ、ノイズ、あるいはドローンなどといった、ある種、ポップからはちょっとかけ離れたような、そんな音楽ではないか、と思いながら、まずはアルバムを聴いてみました…その予想はまず1曲目から完全に裏切られました。スカスカなビートからスタートした1曲目「Desire」は、シャウト気味のボーカルが加わりつつ、ミディアムテンポのポップチューン。続く2曲目「Loner」もそうなのですが、完全に80年代ニューウェーヴ路線のポップチューン。スカスカのビートと懐かしさを感じるギターサウンドが非常に人懐っこい、ポップチューンになっていました。

この80年代ニューウェーヴ路線を主軸にしつつ、アルバムの中で微妙に様々なスタイルに展開していくのがユニーク。前半はスカスカなサウンドで軽快に聴かせるポップナンバーが並ぶのですが、中盤からはダウナー気味なサウンドにポップなメロディーラインというスタイルが特徴的で、どこかシューゲイザー系の匂いも感じさせる楽曲が耳を惹きます。「Mouth」などはダウナー気味なサウンドながらも、メロはキュートなポップ、というのはある種のシューゲイザーの王道といった感もしますし、「Flood」もリバーブを利かせたギターサウンドをダウナーに響かせつつ、メロはポップというシューゲイザーっぽい作風になっています。

さらに後半は、女性ボーカルEmily Kempf を前面に押し出しつつ、よりポップなメロディーを聴かせる曲が並びます。軽快なポップチューン「Nobody」から、パンキッシュながらもしっかりとポップなメロを聴かせる「No Time」など、後半はよりメロディーラインを聴かつつ、80年代的な懐かしさを感じさせるポップな楽曲が並んでいました。

またこれらの曲はどれもインパクトのあるメロディーラインを聴かせる点が特徴的。比較的わかりやすく、いい意味で人なつっこいポップなメロディーラインが特徴的で、その不気味なジャケットと反して、非常に聴きやすいアルバムになっていました。シューゲイザー系、あるいはドリームポップなどと言われる楽曲にも近いものがあり、そのタイプのバンドが好きならば気に入りそうなアルバム。不気味なジャケットが良きにしろ悪しきにしろ目を惹きますが…音楽な一級のポップチューンです。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

Healing Is A Miracle/Julianna Barwick

アメリカの女性シンガーソングライターによる新作。エレクトロサウンドをループさせることによる作曲が特徴的なミュージシャンだそうで、ジャンル的にはアンビエントフォーク。エレクトリックなサウンドを荘厳に聴かせつつ、ゆっくりと伸びやかなボーカルを聴かせるスタイルが特徴的。「In Light」ではシガーロスのヨンシーもゲストとして参加。終始、ゆっくりと聴かせる荘厳なサウンドに圧巻される作品でした。

評価:★★★★

Homegrown/Neil Young

ニール・ヤングが1975年に録音したものの、未発表となっており「幻のアルバム」と言われていた作品。ニール自身が管理する膨大なコレクションから掘り起こされるアーカイヴシリーズで、もともとマスターテープの損傷がひどく、リリースに耐えられないような内容だったものを、ニールのレコーディングエンジニアとしておなじみのジョン・ハンロンが、70年代当時のアナログなレストア/リマスター手法をとり、時間をかけてマスターを復元させたという作品。アコースティックなアレンジがメインとなる作品で、彼の歌声をしんみりと聴かせる作品。なぜ未発表だったか謎なほど完成度の高い作品が並んでいます。サウンド的にはさすがに70年代的でちょっと時代を感じさせる部分はあるものの、間違いなく傑作と言えるアルバムでした。

評価:★★★★★

Niel Young 過去の作品
Fork In The Road
Psychedelic Pill(Neil Young&Crazy Horse)
Storytone
The Monsanto Years(Neil Young+Promise Of The Real)
Peace Trail
The Visitor(Neil Young+Promise Of The Real)
Colorado(Neil Young&Crazy Horse)

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2020年8月30日 (日)

激しいビートとシャウトが特徴的

Title:The Passion Of
Musician:Special Interest

The-passion-f

今回紹介するバンドも、日本では現時点でほとんど知名度のないバンドでしょう。アメリカはニューオリンズ出身のバンド、といっても一般的な「ニューオリンズ」のイメージからするとかなりかけ離れた感じもあるかもしれません、4人組のポストパンクバンド、Special Interest。知名度には海外でもまだ知る人ぞ知るバンドであるようで、Wikipediaなどで詳しい情報が入手できませんでした…。ただ、2018年にデビューアルバムをリリースしたばかりのようで、バンドとしてもまだデビュー間もないようです。

このバンドの特徴的なんはメンバーで、ボーカル、ギター、ベースというおなじみのラインナップに加えて、ドラムスではなく、ドラムはプログラミングというスタイルという点。そのため、リズムは終始、へヴィーな打ち込みのビートが続きます。本作も1曲目のイントロナンバーに続く事実上の1曲目「Disco III」はいきなりへヴィーな打ち込みのビートからスタート。さらにそこに警告音のようなノイジーなギターのリフ、さらにはシャウトするボーカルが加わり楽曲が展開していくナンバー。まずは打ち込みのビートに耳を惹かれます。

この打ち込みのヘヴィーなリズムに歪んだギターサウンドとシャウトするボーカルが重なりハイテンポに進んでいくというスタイルは基本的に彼らの楽曲の共通点。全11曲入りのアルバムなのですが、このスタイルが終始貫かれています。ポストパンクとカテゴライズされる彼らですが、スタイル的にはインダストリアルに近いサウンドに感じます。そのため、楽曲のバリエーションは決して多いありませんし、似たような曲は少なくありません。ただ30分弱という短さと楽曲の勢いもあり、ダレることなく最後まで一気に聴き切れてしまいますし、なによりもハイテンポで力強い打ち込みのビートとへヴィーなバンドサウンド、さらにパッショナブルなボーカルのシャウトにより、最後まで緊張感があり耳の離せないアルバムに仕上がっていました。

ただ、バリエーションに乏しいとはいっても、ビートをこれでもかというほど強調した「Disco III」から一転し、シングル曲でもある「Don't Kiss Me in Public」はビート感以上に疾走感が強いインパクトを持ったナンバーになっていますし、「All Tomorrow's Carry」はThe Velvet Undergroundの「All Tomorrow's Party」を彷彿とさせるタイトルですが、楽曲的にもどこか、VUを思い出させるようなダウナー気味なメロディーとノイジーなサウンドの楽曲になっています。

さらに中盤では「Passion」のようなスペーシーなインスト曲を挟んできており、アルバムの中ではちょうど箸休めのような構成になっているのもインパクトに。そこからの後半も「Head」「Tina」とハイテンポで疾走感あふれる楽曲を一気に繰り広げ、最後まで勢いのあるアルバムに仕上げています。最初から最後まで、耳の離せないアルバムになっていました。

そんな訳で、日本どころか世界的にもまだまだ知名度の低い彼らですが、このアルバムは間違いなく多くのロックファンが惹かれるであろう傑作アルバムになっていました。それだけに今後は徐々に、彼らの名前を聴く機会も増えてくるのではないでしょうか。パンク好き、あるいはインダストリアルが好きなら、チェックしてほしいアルバムです。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

On Sunset/Paul Weller

イギリスのロック兄貴、ポール・ウェラーのオリジナルアルバムとしては約2年ぶりとなる新作。直近作「In Another Room」ではエクスペリメンタル・ミュージックに挑戦した彼ですが、本作は、アコースティックな作風の哀愁感ある渋みのある楽曲がメインに。オリジナルアルバムとしての前作「True Meanings」の流れを受けたような作品になっているのですが、作風としてはかなり地味な印象も受けます。ただ、シンセを入れてくる楽曲があったりするのは、「In Another Room」の名残りでしょうか?ここらへんのちょっとした隠し味的な部分に、決して枯れていない、彼の現役感も感じたりするのがおもしろいところといえるかもしれません。

評価:★★★★

Paul Weller 過去の作品
22 DREAMS
Wake Up The Nation
Sonik Kicks
A Kind Revolution
True Meanings
In Anohter Room

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2020年8月28日 (金)

ちょっとレトロで懐かしさも

Title:What's Your Pleasure?
Musician:Jessie Ware

今回紹介するのは、イギリスはロンドン出身のシンガーソングライターの新作。2012年にリリースされたデビューアルバム「Devotion」が大きな話題を呼び、イギリスのナショナルチャートで5位を獲得するなど、いきなりの大ヒット。4枚目のアルバムとなる本作も含めて、いずれもイギリスチャートではベスト10ヒットを記録しており、本作では3位を記録するなど、人気のシンガーとしてその地位を確立しています。

日本では残念ながらイギリスの人気と反して、さほど知名度も高くない彼女。私も本作が彼女のアルバムとしてははじめて聴く作品となりますが、ただ、非常にポピュラリティーの高いインパクトある楽曲が並んでおり、しっかりPRすれば日本でも十分なファンを獲得できるのでは、と思うような魅力的な作品に仕上がっていました。

本作に関して、まず前半はエレクトロなサウンドでリズミカルに聴かせる楽曲が並びます。アルバムのスタート「Spotlight」では、まずストリングスと彼女ののびやかな歌声でメロウな雰囲気でスタートしますが、すぐに打ち込みのリズムが入ってきて、リズミカルなポップが楽しめる楽曲に。続くタイトルチューン「What's Your Pleasure?」もシンセのリズムが心地よいダンサナブルなトラックに、彼女のウィスパー気味の清涼感あるボーカルが心地よいポップチューンに仕上がっています。

その後もファンキーなリズムが心地よい「Ooh La La」など軽快なナンバーが続くのですが、もうひとつ、彼女の楽曲で大きなポイントになるのは、全体的に漂う80年代的なレトロ感。特にチップチューン気味なサウンドがユニークな「Soul Control」やそれに続く「Save A Kiss」など、サウンド的に懐かしさを感じさせるチープさを感じる楽曲になっており、ともすればアラフィフ世代あたりには懐かしく、若い世代には新しい、そんな作風になっているようにも感じました。

一方、後半になると楽曲の雰囲気が変わります。「In Your Eyes」ではリズムは打ち込みですが、ストリングスが入り、伸びやかでメロウな歌声を聴かせるナンバーに。さらに「Step Into My Life」「Read My Lips」はいずれも透明感あるボーカルでメロウに美しく聴かせるソウルチューンに仕上げています。

前半もちょっと色気も感じる美しい歌声が大きな魅力だったのですが、後半はその歌声の魅力をさらに押し出したような楽曲に。さらに、どこか感じる80年代風のレトロな雰囲気も変わりません。ダンサナブルでリズミカルな側面を前面に押し出した前半に、メロウな作風を前面に押し出した後半。彼女の魅力を異なる側面から味わえることの出来る構成になっていました。

そんなレトロな要素を要所要所に感じつつも、全体としてはいい意味で耳障りのよいポップチューンになっている傑作。これはイギリス本国で大人気なのも納得。日本でももっともっと注目されてもいいと思うんだけどなぁ。比較的、広いリスナー層にお勧めできるポップアルバム。特にアラフォー、アラフィフ世代だと、どこか感じる懐かしさにはまってしまうかもしれません。

評価:★★★★★

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