アルバムレビュー(洋楽)2020年

2020年11月23日 (月)

次は南インドの音楽との融合

Title:Global Control/Invisible Invasion
Musician:Ammar 808

チュニジア人のシンセ奏者/プロデューサーであるソフィアン・ベン・ユーセフによるソロユニット、Ammar 808。以前も当サイトで紹介した「Maghreb United」が世界的にも注目を集めヒットを記録し、一躍、ワールドミュージック界の注目の的となりました。本作は、そんな彼の2枚目となるアルバム。再び大きな注目を集める1枚となっているそうです。ちなみに前作「Maghreb United」でも書いたのですが、彼の名前「808」は「ヤオヤ」こと日本のメーカー、ローランドによるリズムマシーン、TR-808から取られたということ。そういう意味では日本人にとっても親近感の持てるミュージシャンと言えるかもしれません。

前作「Maghreb United」はタイトル通り、北アフリカのマグレブの音楽と西洋的なエレクトロビートと融合させた音楽。ただ、このマグレブ音楽を軸として様々な音楽とごった煮になったような、ある種の「B級」感あふれたサウンドが大きな魅力でした。そして今回、彼が取り込んだのは南インドの古典音楽であるカルナータカ音楽。彼自身、若いころにインドに留学したことがあるそうで、それだけインド音楽にも深い造形を持っているそうで、彼の幅広い音楽的な素養を感じられます。

もっともカルナータカ音楽、と言われても、私自身はインド音楽にさほど詳しい訳ではないのですが・・・ただ、アルバムの1曲目「Marivere gati」では、まさしくインド!といった感じの女性ボーカルのこぶしの利いた妖艶なボーカルからスタートします。そしてその音楽のバックには強いビートのエレクトロサウンドが。続く「Ey paavi」も伸びやかで妖艶なサウンドに、ちょっとチープなエレクトロサウンドがエキゾチックな雰囲気を醸し出しています。男女2人のやり取りのようなボーカルもコミカル。どこか感じるB級的な雰囲気が大きな魅力にも感じます。

このこぶしを利かせた妖艶なボーカルスタイルでエキゾチックな雰囲気を醸し出しつつ、チープさを感じるエレクトロビートを力強く聴かせるというのが本作の主なスタイル。その後も「Geeta duniki」などでは非常にメランコリックなメロディーラインが魅力となっていますし、「Duryohana」で聴かせる、ハイトーンのホーンも、おそらくインドの楽器なのではないでしょうか?エキゾチックな雰囲気が強い魅力になっています。

ただ一方、非常にユニークなのですが、全8曲の作品、その8曲が8曲、微妙に異なるエレクトロのビートを聴かせてくれており、これがアルバムの中でのバリエーションとなっています。「Mahaganapatim」はアクセントを聴かせつつ、エッジの効いた細かいリズムパターンが特徴的ですし、「Pahi jagajjanani」は、テクノの要素の強い、あか抜けたスペーシーなリズムが特徴的。最後を締めくくる「Summa solattumaa」もチープな雰囲気ながらも力強いはじけるようなエレクトロビートを聴かせてくれます。

チープな雰囲気のエレクトロサウンドでB級的な・・・という言い方をしていますが、ただバリエーションに富んだリズムパターンやサウンド、幅広い音楽的素養からは間違いなく彼の実力を感じさせます。本作もまた前作同様のごった煮的なアルバムだったのですが、そのごった煮の素材が前作とは異なる点もおもしろいところ。これからどんなサウンドをごった煮してくれるか・・・彼の活動からは目が離せなさそうです。

評価:★★★★★

Ammar 808 過去の作品
Maghreb United


ほかに聴いたアルバム

Magic Oneohtrix Point Never/Oneohtrix Point Never

ニューヨーク・ルックリンを拠点に活動するダニエル・ロパティンによるソロプロジェクトの約2年ぶりのニューアルバム。前作「Age of」ではじめて彼の作品を聴いたのですが、その前作はいかにもソフトロック的なアルバムジャケットで、内容も歌モノ・・・ながらも微妙に歪んだサウンドメイキングが魅力的な内容でした。今回のアルバムも様々なサウンドをサンプリング。1曲の中でどんどんと雰囲気が変わっていくドラスチックな展開もスリリングな作品になっていたのですが、「歌モノ」的な要素が強かった前作に比べると、メロディアスな部分は要所要所に感じるものの、全体的には「実験的」な要素が強くなっていたアルバムになっていました。ちょっととっつきにくかった部分もあり、個人的には前作の方が好みだったかな。様々な音楽的な挑戦がおもしろいアルバムではあるのですが。

評価:★★★★

Oneohtrix Point Never 過去の作品
Age of

Hey Clockface/Elvis Costello

かなり不気味なジャケット写真が妙に目をひくエルヴィス・コステロの約2年ぶりとなるニューアルバム。前半は、2曲目の「No Flag」をはじめギターサウンドとシャウト気味のボーカルでロッキンな曲を聴かせつつ、主軸となるのはムーディーなミディアムテンポのナンバー。メランコリックなメロディーラインも特徴的で、良くも悪くも「良質な大人の音楽」というイメージを強く抱くアルバムになっています。アルバムの出来としては一定以上の安定感があり、その点はさすがはコステロといった感じでしょうか。しっかりと聴かせる作品になっていました。

評価:★★★★

Elvis Costello 過去の作品
Momofuku(Elvis Costello&the Imposters)
Secret,Profane&Sugarcane
National Ransom
Wise Up Ghost(Elvis Costello&The Roots)
LOOK UP(Elvis Costello&the Imposters)
Purse(Elvis Costello&The Imposters)

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2020年11月21日 (土)

いつもながらのシンプルなポップアルバム

Title:Love Goes
Musician:Sam Smith

約3年ぶりとなったサム・スミスのニューアルバムは、今回の新型コロナの影響を大きく受けてしまうアルバムになってしまいました。もともとは「To Die For」というタイトルで5月1日にリリースされることが決定された本作。しかしコロナ禍の最中ということで5月のリリースは延期に。さらに「To Die For」というタイトルがコロナ禍の中では不謹慎ということになり、タイトルも「Love Goes」に変更。10月30日にようやくニューアルバムのリリースとなりました。

そんなコロナ騒動に思いっきり巻き込まれてしまった今回のアルバムですが、そんな中でリリースされた先行シングルはバラードシンガーのイメージが強い彼にしては、比較的テンポのよいダンサナブルなシングル曲が続いていたということでも話題になりました。事実、本作に収録されている「Diamonds」やBurna Boyをゲストに迎えた「My Oasis」などは確かにリズミカルなナンバーですし、タイトルそのまま「Dance('Til You Love Someone Elese)」「Dancing with a Stranger」のようなエレクトロダンスチューンも収録されています。そういう意味ではいままでの彼のアルバムに比べると、比較的ダンサナブルな楽曲も収録されているアルバムと言えるかもしれません。

ただ正直なところアルバム全体としてはダンスチューンも目立つバリエーションのある作品というよりは、いつものサム・スミスと同様、ミディアムチューン中心に美しいメロディーラインを聴かせる作品というイメージで大きな変化はありませんでした。アルバムもアカペラのバラードソング「Young」からスタートしますし、前半は前述の先行配信曲や「Another One」「So Serious」のようなテンポよくメロディアスな曲が並ぶのですが、そんな曲も基本的には伸びやかなサム・スミスのボーカルが主軸となっており、彼のいままでのイメージから大きな変化はありません。

さらに後半にはスケール感あるバラードナンバー「Kids Again」やストリングスも入ってダイナミックに歌い上げるバラード「Fire on Fire」など、彼らしいバラードナンバーが続きます。そんな中でも特にインパクトがあるのがタイトルチューンでもある「Love Goes」。メランコリックなメロディーラインにファルセットも入って美しく聴かせる彼のボーカル、さらに途中ホーンセッションも入ってスケール感を覚えるサウンドも見事で、タイトルチューンらしいアルバムの中での主軸となっている楽曲に仕上がっています。

そんな訳でいままでの彼の楽曲と大きな相違はなく、サウンドは比較的シンプル。バリエーションもダンスチューンが耳を惹くものの、バラエティー豊富な、というよりはあくまでも歌を聴かせるスタイルという点に大きな変化はありません。ただ、それでも最後まで飽きることなくしっかりと聴かせることが出来るのは、いままでの彼の楽曲同様、美しいメロディーラインと美しいボーカルが際立っているからでしょう。まただからこそシンプルなサウンドでも十分勝負できるだけのクオリティーを維持しているのでしょう。今回のアルバムも、そんな彼の魅力が満載の傑作アルバムに仕上がっていました。

評価:★★★★★

Sam Smith 過去の作品
IN THE LONELY HOUR
Thrill It All


ほかに聴いたアルバム

The Power Of The One/Bootsy Collins

Pファンクのメンバーであり、ファンク界隈では最も著名なベーシストのひとりBootsy Collins。70歳近い今となっても、Pファンクのノリと全く変わらない精力的な音楽活動を続けていますが、本作は約3年ぶりとなるニューアルバム。基本的にはいつも通り、終始ご機嫌なファンクチューンが並んでいる作品に。大いなるマンネリといえばマンネリなのですが、最初から最後まで続くファンキーなリズムに聴いていてご機嫌になってくる、とても心地よさを感じるアルバムでした。

評価:★★★★

Bootsy Collins 過去の作品
THA FUNK CAPITAL OF THE WORLD
World Wide Funk

Positions/Ariana Grande

アメリカのシンガーソングライター、アリアナ・グランデのニューアルバム。基本的に楽曲は彼女ののびやか美しい歌声を主軸に据えた、清涼感あってメロディアスなポップチューンが並んでいます。ただ、そのキュートなルックスとは裏腹に・・・というと怒られてしまいそうですが・・・メッセージ性を込めた作品が特徴的で、タイトルチューンの「Positions」は女性大統領に扮したPVも話題になり、女性の社会的な立ち位置をメッセージに込めたといわれていますし、1曲目を飾る「Shut up」も今の時代にリリースされると、トランプ大統領に向けたメッセージソングにすら感じます。そういうメッセージ性を楽曲の中にさらりと取り入れつつ、全体的にはキュートなポップチューンにまとめあげている点に彼女の実力を感じさせる、そんな作品でした。

評価:★★★★

Ariana Grande 過去の作品
My Everything
The Best
Sweetener
thank u,next

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2020年11月20日 (金)

久々にコンパクトでポップなアルバム

Title:SIGN
Musician:Autechre

その独特の音世界で様々なミュージシャンへの影響を与え、多くの音楽リスナーに支持されるエレクトロユニットAutechre。既に結成から30年以上、ワープ・レコードでアルバムデビューしてから25年以上が経過するベテランユニットだったりします。ただ既に「ベテラン」の域に達している彼らですが、その制作意欲は全く衰えていません。衰えていないどころか、ここ数年はオリジナルアルバムが非常に長尺化している傾向にあり、前作「NTS Sessions」はCDにすると8枚組、全8時間にも及ぶという強烈な長さのセッション。前々作「elseq 1-5」も5時間にも及ぶアルバムになっており、その前の「Exai」も2時間に及ぶアルバムと、近年になるに至って、どんどんインフレ化していきました。

そんな中、リリースされた約2年ぶりとなるアルバムは、全11曲、65分という、比較的シンプルで「常識的」な長さのアルバムになっています。まあ、正直なところ、前作「NTS Sessions」はアルバムとして長すぎて、ちょっと冗長といった印象を受けるアルバムでしたので、今回のアルバム程度の長さがちょうどよい、といった感じでしょうか。実際、アルバム全体としては、おそらく良い意味で取捨選択されているようなシンプルな構成の楽曲が並び、いい意味で「ポップ」という印象を受けるアルバムに仕上がっていたように感じます。

アルバム全体としては、比較的ダウナーで、ドローン的な要素を含んだ楽曲が多く見受けられる内容になっています。1曲目「M4 Lama」など、まさにドローン的なサウンドにメタリックな音が重なるようなダウナーな作風になっていますし、続く「F7」もハイトーンのメタリックなサウンドで構成されながらも、全体的には陰鬱な印象の受ける作風になっています。

後半も「sch.mefd 2」「gr4」など、メタリックなサウンドを入れつつ、ドローン風のサウンドが低音で響く、ダウナーな楽曲が並びます。ただ、楽曲としては5~6分程度の曲が並んでいるため、ポピュラーミュージックとしての体裁は兼ね備えており、その中に実はポップなメロディーラインが流れているため意外と聴きやすい、というのは彼ららしさを感じます。「au14」などはリズミカルなテンポのエレクトロビートが軽快な作品になっており、聴きやすいポップな作風となっているため、これが中盤に入っていることでアルバムにひとつの核が生じていますし、ラストを飾る「r cazt」などはメロディーラインに哀愁感すら漂っており、そのメロが心に残るようなアルバムに仕上がっていました。

ここ最近のアルバムの中では断然ポップで聴きやすいアルバムに仕上がっていた本作。ちょっと冗長的だったここ最近のアルバムに比べて、グッと引き締まったアルバムといった印象も受けました。彼らの魅力をしっかりと感じることの出来る傑作アルバムです。

評価:★★★★★

・・・と思っていたら、それからわずか20日後、早くもニューアルバムがリリースされました。

Title:PLUS
Musician:Autechre

続けざまにリリースされたこのアルバムは、決して「SIGN」のアウトテイク集、ではなく歴とした新作となるそうです。実際、ドローンの要素の強かった「SIGN」と比べると、メタリックなエレクトロビートでリズミカルな楽曲が目立つのが今回のアルバム。1曲目「DekDre Scap B」こそダウナーな作風になっているものの、強いビートが目立つ曲調ですし、続く「7FM ic」もテンポよいエレクトロビートが主軸となっている曲になっています。

その後もエッジの効いたエレクトロビートの「X4」やスペーシーなサウンドにアーケードゲーム風なノイズが混じる「ii.pre esc」、さらに最後の「TM1 open」は、ピコピコサウンドとも言うべき軽快なエレクトロサウンドで疾走感もって展開される曲調に、聴いていて楽しくなってしまうような楽曲に仕上がっています。

今回のアルバムも、全9曲63分という「常識的」な内容。ただ、「SIGN」に比べると、「ecol4」が15分弱、「X4」が12分、ラストの「TM1 open」が11分と1曲の長さは前作に比べて若干長尺な曲も目立ちます。もっとも、軽快なエレクトロサウンドがミニマル的に続くリズムとなっているため、長尺でも比較的聴きやすい構成に。アルバム全体としても前作以上に「ポップ」にまとまっていて聴きやすいアルバムに仕上がっていたと思います。

「SIGN」とは異なる作風のアルバムということで、「SIGN」「PLUS」合わせてAutechreの今やりたいことを表現した構成になっている、ということなのでしょうか。ただ、1枚あたりのアルバムの長さは1時間程度と(彼らにしては)コンパクトにまとまったのですが、2枚合わせると2時間強と今回もやはりそれなりのボリュームのなってしまった作品に。やはり彼らの衰えない創作意欲をカバーするためには、60分程度の長さでは物足りなさすぎるということなのでしょうか。ただ、それでも2枚のアルバムに分けたことにより、それなりにメリハリがついて、それぞれのアルバムがいい意味で引き締まっている、聴きやすいアルバムに仕上がっていたように感じます。Autechreの実力をしっかりと感じられる2枚のアルバムでした。

評価:★★★★★

Autechre 過去の作品
Quaristice
Oversteps
move of ten
Exai
NTS Sessions 1-4


ほかに聴いたアルバム

MTV Unplugged/Pearl Jam

彼らがデビューアルバム「TEN」で大ブレイクした直後、1992年3月に行ったアコースティックによるスタジオライブ番組「MTVアンプラグド」で行ったパフォーマンスの模様を収録したライブアルバムいままで「レコードストアデイ」の限定商品としてアナログリリースされたことはあったのですが、単独での通常リリースは今回がはじめて。コロナ禍でライブもままならない中でのライブの穴埋め的な意図もあるのでしょうか?

ただ、アコースティックなライブパフォーマンスながらも、そんな中からにじみ出てくるパワフルな演奏を感じられるのがこのアルバム。「MTV Unplugged」というと大人の雰囲気のパフォーマンス、というイメージが強いのですが、1992年、若いエネルギーがありあまる彼らにとっては、アコースティックライブであろうと、そのパワーを「封印」することは出来なかった模様。ただ、このアコースティックなサウンドと、彼らのみなぎるパワーの絶妙なバランスがユニークなライブパフォーマンスに仕上がっています。今となっては非常に貴重な音源。逆に、今の彼らだったら、どのようなパフォーマンスをするのか気になるところでもあるのですが。

評価:★★★★★

Pearl Jam 過去の作品
Backspacer
Lightning Bolt
Gigaton

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2020年11月16日 (月)

カレー屋の匂いも漂ってくるような

Title:インドカレー屋のBGM 決定版

「インドカレー屋のBGM」という企画モノについては、ご存じの方も多いかもしれません。インド人が経営する本場インドカレーの専門店で流れている「謎の音楽」をリサーチし、その楽曲をつきとめ、CDとして収録したアルバム。謎の音楽というエキゾチックさや、妙に耳の残り気になってしまうメロディーというインドカレー屋のBGMについつい惹かれる人も多いらしく、2005年の第1弾以来、シリーズを重ね、累計4万枚のセールスを記録するという、ちょっとしたスマッシュヒットとなっているオムニバス盤だそうです。私も以前からこのシリーズのことは知っていたのですが、今回「決定版」という形でリリースされた本作を、遅ればせながらチェックしてみました。

基本的に、このインドカレー屋のBGMに収録されている楽曲は、日本でも一時期話題となった「ボリウッド」と呼ばれるインド映画に使用されている音楽がメイン。インドの音楽というと、タブラやシタールなどの楽器を用いて、非常に複雑なリズムを奏でる構成の音楽、というイメージが強いのですが、正直言うと、このCDに収録されている楽曲は、そういう複雑な変拍子から構成されるようなインド音楽とは違うタイプの曲になっています。

全体的には比較的チープな打ち込みをバックに、ハイテンポでダンサナブルなリズム、典型的なハイトーンの女性ボーカル、そして哀愁感あふれるメロといった楽曲がメイン。比較的わかりやすいリズムの曲がメインとなっており、ラップなども取り込んだ曲もあったりと、欧米のサウンドの影響を多分に取り入れ、ただ所々に強烈なインド的な風味を加えた、そんな楽曲になっています。

ちなみにそんな楽曲を歌い上げるのは「プレイバックシンガー」と呼ばれるような歌手だそうで、映画で使われる音楽を俳優の代わりに歌うシンガーだそうで、特にインドでは、主演俳優や音楽監督と同等の地位を占めるなど、非常に高く評価されているそうです。今回のCDに収録されている曲を歌うシンガーも、非常に長いキャリアのある歌手も少なくないようで、かなりコミカルで謎にみちた企画のように感じるのですが、ボリウッド映画で使われる楽曲をまとめたオムニバスとして、なにげに聴き応えのある企画盤であるようにも感じました。

楽曲的には、上にも書いた通り、終始、エキゾチックな香り漂うサウンドにダンサナブルでチープなリズムが重なる曲が続いていき、インドカレー屋で感じるような異世界のような不思議な感覚を味わうことが出来ます。本作に収録されている曲でもラストの「Ehi Thaiyaa Motiya」はシタールやタブラの音色が入っている曲になっており、伝統音楽的な曲調になっているのも印象的。強烈なインド音楽のサウンドを存分に味わうことが出来るアルバムになっていました。

ジャケット写真といい、日本語の「空耳」をそのままサブタイトルにしちゃった試みといい、かなりB級っぽい奇抜なオムニバスなのですが、一方でインド音楽のオムニバスとしては聴き応えのあるアルバムだったと思います。まあ、だからこそ、15年にわたる人気シリーズになっているのでしょう。妙な味わいが癖になってやめられなくなりそうな、そんなアルバムでした。

評価:★★★★


ほかに聴いたアルバム

Letter to You/Bruce Springsteen

前作からわずか1年4ヶ月というスパンでリリースされたBOSSのニューアルバムは、2012年にリリースされたアルバム「WRECKING BALL」以来、約8年ぶりとなる、Eストリート・バンドとのオリジナルアルバム。基本的に彼の渋みを増したボーカルでゆっくりと歌われるタイプの曲が多いのですが、アルバム全体としてはEストリート・バンドとの作品ということもあって、力強いバンドサウンドを前面に押し出したロック色の強い作品になっています。Bruce Springsteenらしさを強く感じさせるアルバムになっていました。

評価:★★★★

BRUCE SPRINGSTEEN 過去の作品
Working On A Dream
WRECKING BALL
High Hopes
1980/11/05 Tempe,AZ
Western Stars

Beastie Boys Music/Beastie Boys

アメリカの人気HIP HOPグループ、Beastie Boys。1986年にリリースしたアルバム「Licensed to ill」がHIP HOPのアルバムとしてははじめてビルボードで1位を獲得するなど大ヒットを記録し、その後も人気グループとしてHIP HOPシーンを牽引していったのですが、2012年にリーダーのMCAが47歳という若さで逝去。その後、事実上の解散状況となっています。

今回突如リリースされたのは、そんな彼らのキャリアを網羅したベストアルバム。まあ、彼らのベスト盤は過去に何作かリリースされており決して新しさはないものの、改めて彼らの代表曲を聴きなおすことが出来ました。比較的ビートの強いダイナミックでリズミカルなサウンドはHIP HOPというよりもロック的な部分も強く、そういう意味ではロックリスナーにも親和性の強いサウンドを聴くことが出来ます。一方ではHIP HOP的な魅力もしっかりと兼ね備えており、ロックリスナー、HIP HOPリスナーに幅広くアピールできるサウンドが彼らの大きな魅力であり、かつだからこそ大ヒットを記録できた、とあらためて感じることが出来ました。それにしても、あまりにも早すぎるMCAの死はあらためて非常に残念にも感じる、そんなベスト盤でした。

評価:★★★★★

Beastie Boys 過去の作品
HOT SAUCE COMMITTEE PART 2
An Exciting Evening At Home With Shadrach, Meshach & Abednego
Love American Style
Hey Ladies(Remixes)
Shadrach(Remixes)
Shake Your Rump(Remixes)
Looking Down The Barrel Of A Gun (Remixes)

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2020年11月15日 (日)

様々なミュージシャンが参加(CHAIも!)した自由度の高いアルバム

Title:Song Machine: Season One – Strange Timez
Musician:Gorillaz

blueのデーモン・アルバーンと、イギリスの漫画家・イラストレイターのジェイミー・ヒューレットによる架空のバンドプロジェクトGorillaz。当初は企画モノ的なプロジェクトとみられてきたGorillazですが、当初の結成から22年目に突入。ともすればblur以上の成功すらおさめており、すっかり「ベテランバンド」の仲間入りをした彼ら(?)。そんなGorillazは今年の初頭から「Song Machine」というプロジェクトをスタート。これはGorillazが様々なミュージシャンと組んで楽曲政策を行うプロジェクトで、そんなプロジェクトの中で発表されたアルバムを今回まとめた、約2年ぶりのニューアルバムが本作となります。

そんなGorillazのニュープロジェクトに集まったメンバーはとにかく豪華で、The Cureのロバート・スミスにエルトンジョン、Beckなどといったベテラン勢から、St Vincentやslowthaiのような注目の若手ミュージシャンまで、ロックやポップス、ソウルやHIP HOPなど、実に多彩な音楽性を持ったミュージシャンが並んでいます。

また、それに従い、収録されている楽曲も実にバラエティー富んだ作品が並んでいます。テンポよく疾走感あるロックチューンの「Strange Timez」からスタートし、Beckが参加した「The Valley of The Pagans」は、Beckらしいともいえる軽快なポップチューン。日本人にとってなじみ深いゲームを題材とした「Pac-Man」はダウナーなラップを入れた、ちょっとコミカルな感のあるポップチューンですし、エルトン・ジョンの参加した「The Pink Phantom」はメロウなソウルチューンとなっています。

その後も、ちょっと80年代的な打ち込みが入ったエレクトロポップの「Aries」、マリのシンガー、Fatoumata Diawaraが参加した「Désolé」は、まさにデーモン・アルバーンの趣味性も反映されたトライバルな雰囲気を兼ね備えた楽曲になっていますし、本編ラストを飾る「Momentary Bliss」はblurの楽曲に似たような要素も感じる、パンキッシュなギターロックチューンで締めくくり。どこかコミカルな雰囲気も感じられる点もGorillazらしいと言えるかもしれません。

デーモン・アルバーンの興味に取り入れつつも、参加ミュージシャンの音楽性に沿ったバラエティー富んだ作品に仕上がっています。もともとGorillazの楽曲は非常に自由度の高い曲が並んでいるのですが、今回のアルバムはそんな中でも特に自由度の高いアルバムに仕上がっていたと思います。これだけ自由度がありつつ「バンド」として破綻していないのは、Gorillazがバーチャルバンドであるが所以でしょうし、またこの自由度があるからこそ、20年以上という長い期間、このプロジェクトは維持できたのでしょう。また一方、どの楽曲もデーモン・アルバーンが持っているポップスセンスあふれるメロディーラインが流れており、それが自由度の高いアルバムの中でひとつの統一感となっています。この点もGorillazの大きな魅力に感じました。

そして今回のアルバムで一番の注目は、ここでも何度か紹介している日本人ミュージシャンCHAIが参加していることでしょう。本編ではなくデラックスエディションに収録されている「MLS」での参加なのですが、「日本人ミュージシャンが参加」といってよくありがちな、日本盤のボーナストラックに参加している、という感じではなく、全世界向けのアルバムの中で参加しています。楽曲はCHAIらしいダウナーな雰囲気のまったりとしたミディアムチューンなのですが、日本語も登場。ボーカルといいCHAIらしいメロディーラインといい、しっかりとCHAIらしさが出ている楽曲になっていました。

ちなみに本作、Season Oneというタイトルがついていますが、このプロジェクトはまだまだ続く、ということなのでしょうか?それだったら、これからも様々なミュージシャンとのコラボが期待できそう・・・。もっとも、この手のプロジェクト、Season Oneなどと名付けながら、いつまでたってもSeason Twoに続かないケースは多々あるので(笑)、過剰な期待をしないで待っていたいと思います。さてさて。

評価:★★★★★

GORILLAZ 過去の作品
D-Sides
Plastic Beach
THE FALL
The Singles Collection 2001-2011
Humanz
The Now Now

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2020年11月14日 (土)

コロナ禍が生み出したアルバム?

先日、TRAVISの「10 Songs」という非常にシンプルなタイトルのアルバムを紹介しましたが、今回のアルバムタイトルは、それを上回るシンプルさかもしれません。

Title:songs
Musician:Adrianne Lenker

Title:instrumentals
Musician:Adrianne Lenker

「songs」と「instrumentals」。そのものズバリでこれ以上ないシンプルなタイトルのアルバムを2枚同時リリースしたのは、ここでもアルバムを何度か紹介したことのあるフォークロックバンドBig Thiefの女性ボーカリスト、Adrianne Lenkerのソロアルバム。Big Thiefのワールドツアーがコロナ禍によって中止された3月初旬に、彼女はマサチューセッツの山小屋に移住。その雰囲気にインスパイアされてつくられたアルバムだそうで、100%アナログ機材だけで制作された作品になっています。

まず「songs」の方ですが、タイトル通り、「歌モノ」の曲を集めた楽曲。非常にシンプルなタイトルにもあらわれているように、基本的にアコースティックギターのみで演奏されたアレンジの中、彼女の清涼感あふれる歌声が静かに流れる楽曲ばかり。とてもシンプルな曲調でフォーキーな作品をしんみりと聴かせる構成になっています。

アコギを静かにかき鳴らしつつメランコリックに歌う「ingydar」、清涼感あるボーカルとメロディーが美しい「anything」、アコギのアルペジオで静かに歌われるフォーキーなメロが印象に残る「heavy focus」、しんみり伸びやかなボーカルを聴かせる「come」、切なさを感じるメロディーラインが印象的な「dragon eyes」など、どの曲も全く派手さはありません。派手さはないのですが、フォーキーで美しいメロディーラインと歌声がしっかりと印象に残る楽曲が全11曲並んでいます。

一方、「instrumentals」は「music fo indigo」「mostly chimes」という2曲だけで構成される40分弱のアルバム。こちらは1日のはじまりに日課として行っていたアコースティックギターの即興演奏をコラージュして構成したアルバムとなっています。そのため楽曲としてはそれぞれ21分、16分という長尺の楽曲なのですが、ひとつの曲としてまとまっているというよりも、それぞれ様々なアコギの演奏が断続的に連なっているような作品になっています。ただ、シンプルで美しいアコギの演奏はとてもやさしさを感じられ、ついつい聴き入ってしまう内容になっていました。

このシンプルなサウンドの楽曲は、まさにこのコロナ禍の「Stay Home」の状況の中、山小屋というちょっと閉鎖的な自然の環境でこそ生まれた作品なのでしょう。そういう意味ではコロナ禍が生み出したアルバムと言っていいかもしれません。コロナ禍は音楽業界にマイナスの意味で様々なインパクトを与えてきましたが、逆にミュージシャンが家にこもって制作しなければならないという制限された環境が故に、新しいアイディアや作品も生み出された側面もあり、このアルバムもそんな典型例と言えるかもしれません。

派手さはなく、わかりやすいインパクトもない作品ではあるのですが、どちらもシンプルなメロディーラインとサウンドが魅力的でついつい聴き入ってはまってしまう、そんな傑作アルバム。とかくギスギスになって憂鬱になりがちな今の世界の状況ですが、そんな中、この美しい歌声に癒されたくなる、そんな作品でした。

評価:どちらも★★★★★

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2020年11月 6日 (金)

往年のロックバンドらしいロックバンド

Title:Strange Days
Musician:The Struts

イギリスのロックバンド、The Strutsの3枚目となるニューアルバム。70年代、ともすれば60年代あたりのロックバンドを彷彿とさせるようなジャケット写真もそうですが、ある意味、いかにもロックバンドらしいといった表現がピッタリとくる彼ら。もともとイギリスでもライブを中心に徐々に人気をあげてきており、本作ではイギリス公式チャートで自身最高位となる11位を記録。確実に、ファン層を広げてきています。

そのジャケット写真もそうですが、彼らの楽曲はいかにもロック然としたロックといった感じ。ハードロックやグラムロックの影響をストレートに受けた楽曲が印象的で、特に70年代後半や80年代あたりの、ロックというジャンルが最も「ポップ」で、人気の高かった時代のサウンドをそのままこの時代に引き継いだような、そんな作風が印象的です。

タイトルチューンである1曲目「Strange Days」はかのロビー・ウイリアムズがゲストボーカルで参加。スケール感あるサウンドで、どちらかというとロックというよりもポップ寄りの作品になっているのですが、2曲目「All Dressed Up(With Nowhere To Go)」は、イントロのギターリフは、ストーンズからの影響を強く感じる一方、ボーカルのシャウトはいかにも80年代的で一種のなつかしさを感じます。

続く「Do You Love Me」や、デフ・レパードのジョー・エリオットとフィル・コリンが参加した「I Hate How Much I Want You」は完全に80年代の産業ロックを彷彿とさせるようなダイナミックなナンバー。ひょっとしたら、この曲を10年くらい前に聴いたら「ダサい」という印象すら受けていたかもしれません・・・。ただ、時代が一回りしたということもあるでしょうし、やはりダイナミックなバンドサウンドが魅力的という点もあるのでしょう。今聴くと、懐かしさと同時にカッコよさを感じさせる楽曲になっています。

しかし、このアルバムの中で文句なしにカッコよかったのはちょうど中盤、5曲目の「Wild Child」でしょう。この曲、あのトム・モレロがギターで参加。彼の奏でるヘヴィーなギターリフだけで楽曲がグッと引き締まる、文句なしにカッコいい楽曲。The Strutsが、というよりもトム・モレロの実力による部分も大きいのですが、アルバムの中でも断トツにカッコいいサウンドを聴かせてくれます。

後半も、いかにもハードロック然としたロックバラード「Burn It Down」や、AOR風の「Another Hit Of Showmanship」、さらにモータウンビートを取り入れて軽快なハードロックチューン「Can't Stop」など、80年代テイストをふんだんに盛り込んだ、懐かしさ満載のロックナンバーが続いていきます。アラフォー、アラフィフ世代には、感涙モノと言える楽曲ばかりようにも感じます。

そんな訳で往年のロックバンドらしい楽曲がならんだアルバム。ただ、今の時代となっては逆に新しさと、その突き抜けぶりからはむしろカッコよさすら感じさせる、そんなアルバムになっていました。正直なところ、上にも書いた通り、このアルバムを10年前に聴いたら、「ダサい」と感じてしまったかもしれません。もっとも、昔の産業ロックバンドみたいな大味な部分はあまりなく、ルーツロックをはじめ様々な音楽からの影響や楽曲のバリエーションも感じさせてくれます。間違いなく、ロック好き、それもひと昔前のハードロックが好きならはまってしまうアルバム。まだまだ人気が伸びそうな予感のする1枚でした。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

Blue Note Re:Imagined

イギリスのデッカ・レコードとジャズの名門レーベル、ブルーノートがタッグを組んでリリースしたコンピレーションアルバム。Blue Noteの名曲の数々を現代のジャズミュージシャンがカバーしたアルバム。全体的に今風なアレンジでBlue Noteの名曲の数々を再解釈した曲が並んでいるのですが、大胆な再解釈というよりは、原曲を今風にリアレンジといった印象の楽曲が多かったような。全体的にはメロウなサウンドで幅広いジャズリスナーが楽しめそうなコンピレーションアルバムでした。

評価:★★★★

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2020年11月 3日 (火)

キュートでポップ

Title:Fake It Flowers
Musician:beabadoobee

昨年、若干18歳の女性シンガーソングライターが大きな話題となりました。ビリー・アイリッシュ。アメリカ出身の彼女はティーンエイジャーの本音を綴った歌詞が大きな話題となり、今年のグラミー賞で主要4部門を含む5部門を受賞し大きな話題に。その後、グラミー賞受賞でようやく日本でも話題となり、ヒットを記録しました。

そのアメリカのビリー・アイリッシュに対抗…したわけではないと思うのですが、イギリスからすい星のごとく現れ、一気に大きな話題となった女性シンガーソングライターが彼女。名前は「ビーバドゥービー」と呼ぶらしく、本名はBeatrice Laus。もともとフィリピンのイロイロ市出身で、3歳の時にロンドンに移り住んだそうです。このジャケット写真だとちょっとわかりにくいのですが、ルックス的には完全にアジア系なので、日本人にとっても親しみが持てそうです。

もともと彼女のファンが動画サイトにアップした「Coffee」という楽曲が、数日で30万回以上再生されるなど話題となり注目を集め、2019年にはNMEアワードの新人賞を受賞。さらにイギリスの新人ミュージシャンの登竜門ともいえる「BBC Sound of 2020」にもノミネートされて話題となりました。さらに本作ではイギリスのナショナルチャートで8位を獲得。名実ともにブレイクしています。

そんな話題の彼女ですが、もともとスマパンやソニックユース、マイブラなどからの影響を公言しているそうで、ある意味、典型的な90年代のオルタナ系ギターロック路線が、これまた耳なじみやすい印象を受けます。1曲目「Care」から、まさに90年代のギターロックを彷彿とさせるようなギターロックにポップなメロディーラインがインパクトのあるナンバー。さらに「Dye It Red」などはギターをバックに静かに入るイントロからして、完全にNIRVANA。ある意味、サウンド的には非常に「わかりやすい」とも言えるかもしれません。

その後もヘヴィーなバンドサウンドとシャウトするボーカルでダイナミックに聴かせる「Charlie Brown」やある意味、典型的なノイジーなオルタナ系ギターロックでポップなメロを聴かせる「Together」、分厚いギターサウンドを聴かせつつ、ポップなメロがインパクトのある「Yoshimi,Forest,Megdaiene」など、ポップなギターロックという典型的な楽曲が並びます。

ポップなメロディーラインやキュートなボーカルを含めて、イメージ的には完全にthe brilliant green。個人的にはブリグリが好きなら絶対気に入りそうなミュージシャンだと思います。そういう意味ではサウンド的に正直目新しさはほとんどありません。ただ、彼女のキュートなボーカルを含めて、ポップでキュートなメロディーラインといい、ほどよくノイジーでダイナミックなバンドサウンドといい、特に90年代のUK系のギターロックが好きなら間違いなく壺にはまるミュージシャンだと思います。本作が話題になるというのは非常によく理解できます。

おそらく日本でも今後、より話題になりその名前を聴く機会が増えそうなミュージシャン。というよりも、ルックス的な親しみやすさも含めて、日本ではビリー・アイリッシュより人気が出る可能性も高いような。今後に要注目のミュージシャン。個人的にもかなりはまってしまったミュージシャンでした。

評価:★★★★★

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2020年11月 2日 (月)

メランコリックなメロが魅力のポストハードコアバンド

Title:Lament
Musician:Touche Amore

最近、ここで紹介する期待のロックバンドが増えてきているように思います。先日紹介したIDLESもそうですし、ロックバンドというよりもSSWですが、Bartees Strangeもロック寄りのミュージシャンですし、私的ベストアルバムで上半期1位としたDoglegもそうですし、ここ最近、ヒットシーンはすっかりHIP HOP勢に占拠され、ともすれば「脇役」的な位置づけになりつつあるロックですが、やはり分厚い爆音に圧倒されたいという欲求は強いのでしょうか、勢いのあるロックバンドが増えてきているように思います。

今回紹介するバンドもそんなバンドの一組、と言えるでしょうか。ロサンジェルスやカリフォルニアをベースに活動する「ポストハードコアバンド」Touche Amore。最近出ていた…といった感じではなく、結成は2007年。このアルバムは既に6枚目となるオリジナルアルバムになりますので、既に中堅、ともすれば「ベテラン」の領域に入るミュージシャンと言えるかもしれません。

基本的に彼らのスタイルは、分厚いバンドサウンドをこれでもかというほどの勢いで攻めてくるハードコアバンド。ボーカルは終始、シャウトしているスタイルがメインとなっており、疾走感あるリズムも魅力的になっています。特に前半は1曲目を飾る「Come Heroine」からスタートし、タイトルチューンである「Lament」「Feign」と分厚いサウンドで疾走感あるハードコアのナンバーが続いており、聴いていて、その音圧が非常に心地よい楽曲が並びます。

そのため、楽曲のタイプ的には先日紹介したIDLESに近いようなタイプのバンドと言えるかもしれません。ボーカルのスタイルがシャウトが基本なのも共通項。IDLESはイギリスのバンドですので、彼らはそれに対抗する(?)アメリカのポストハードコアバンド・・・・・・と言えるかもしれません。

ただ、圧倒的なサウンドの分厚さで攻めてくるIDLESに比べると、彼らのサウンドはもうちょっとあっさりとした印象もあります。また、IDLESも意外とポップなメロディーラインが大きな魅力なのですが、一方、彼らについても意外とポップで、そしてメランコリックさを感じるメロディーラインが大きな魅力。例えば前述のタイトルチューン「Lament」もボーカルがシャウトするメロディーは意外と哀愁感を覚えますし、ほかにも、例えば中盤の「Savoring」などもボーカルのスタイルは他の曲と同様にシャウトしているのですが、メロディーラインは非常にポップで、メロディアスという印象すら受ける曲になっています。

終盤の「Deflector」もメランコリックなメロディーラインが魅力になっていますし、最後を締めくくる「A Forecast」も中盤から分厚いバンドサウンドが入ってくるのですが、前半は静かなピアノの弾き語りに。こちらもメランコリックな歌が大きな魅力になっています。ここらへん、IDLESに比べると、よりメランコリックさが大きな魅力になっているように感じます。

おそらくIDLESあたりが気に入るのならば間違いなく気に入りそうな、そのハードコアなサウンドが大きな魅力のロックバンド。逆に、彼らが好きならIDLESなんかも好きなんだろうなぁ。まだまだ日本では無名のバンドですが、こちらも今後、徐々に人気が伸びてくるかもしれません。ロック好き要注目の1枚です。

評価:★★★★★

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2020年11月 1日 (日)

ジョンの曲が今によみがえる

Title:GIMME SOME TRUTH.
Musician:John Lennon

今年、生誕80年を迎えるジョン・レノン。説明するまでもないと思いますが、伝説的なバンドThe Beatlesの一員であり、かつメインのソングライターの一人であった彼。The Beatles解散後も妻であるオノ・ヨーコと共に平和活動を続け、今では一種の平和活動のアイコン的な存在にもなっています。1980年にわずか40歳という若さで凶弾に倒れ、その短い生涯を終えましたが、いまでも彼がつくった曲の多くは歌い継がれ、彼の存在は音楽シーンに限らず、大きな存在となっています。

本作はそんな彼のベストアルバム。生誕80年目の記念すべきベストアルバムとして、相当力が入ったベストアルバムになっているようで、彼の実の息子、ショーン・レノンがプロデュース、さらにはオノ・ヨーコがエクゼクティヴ・プロデューサーとして参加。まさに家族総出(?)のベストアルバムとなっています。ちなみにその力強さを感じさせる横顔が印象的なジャケット写真は、彼がMBE勲章を返還に行った日に撮影された、彼としては珍しい横顔の白黒写真だそうです。

まずは今回のセレクション、彼のソロ時代の代表曲をまとめて聴いて強く思うのは、ソロ時代の曲でも、今なお歌い継がれている曲が多いな・・・というより、なんとなくのイメージなのですが、CMソングとしてよく耳に入る曲が多いような印象も受けます。ソロ時代の代表曲として取り上げられることが多い「Imagine」をはじめ、「Power To The People」(「Gatorade」のCM曲)だったり、「Woman」(三菱「ekワゴン」CM曲)だったり、「Stand by me」(キリンフリーCM曲)だったり、「Beautiful Boy(Darling Boy)」(資生堂CM曲)だったりと、ともすればThe Beatles曲以上に多いないか??とすら思うほど、CMによく使われているような印象も受けます。

おそらく要因のひとつとして、The Beatles時代の曲みたいに有名すぎない一方、平和活動家というジョン・レノンのイメージは企業が採用するCMソングとしてもピッタリという点もあるのでしょう。またちょっとうがった見方をすると、既にこの世にいない彼の曲を使用すれば、いわゆるスキャンダルなどとは無縁、という読みもあるのかもしれません。いろいろな意味で使い勝手がいい、という点があるのでしょう。

もっとも、やはりそういう要因もあるのでしょうが、最大の理由は曲の良さである点は言うまでもありません。実際、今回のベスト盤であらためて彼の代表曲を聴くと、やはり心に染み入ってくるような名曲ばかり。40年以上前の曲ばかりなのですが、今、普通に聴いても全く違和感ない、普遍的なメロディーラインを楽曲から感じることが出来ます。

また、そんなメロディーラインの普遍性を強く感じたのは、今回のアルバムのリミックスによる部分も大きいようにも感じました。今回のリミックスによって、グッと音がよくなったように感じます。サウンドもよりクリアになり、音もクリアに。楽曲のバランスも、今の耳で聴いて全く違和感のないように調整されているように感じました。結果として、彼の名曲の数々が、2020年の今の音楽として生まれ変わり、そのためメロディーラインの持つ普遍性がより明確になったようにも感じました。

あらためてJohn Lennonというミュージシャンの魅力、そしてすごさを感じたベスト盤。2枚組というボリューム感もちょうどいい感じ。文句なしにJohn Lennonの「入門」としてもお勧めできるベストアルバムです。

評価:★★★★★

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