アルバムレビュー(邦楽)2018年

2019年1月26日 (土)

前作同様、豪華コラボが話題に

Title:私的旅行
Musician:DAOKO

米津玄師とコラボ作「打上花火」の大ヒット。さらにそれに続き昨年末は紅白歌合戦への出演と、2017年から2018年にかけてのDAOKOは大きな飛躍の年となりました。そしてそんなDAOKOのニューアルバムが前作「THANK YOU BLUE」からわずか11ヶ月という短いスパンで早くもリリースとなりました。

その前作「THANK YOU BLUE」は様々なミュージシャンとの豪華なコラボが大きな話題となりましたが、続く本作でも数々の大物ミュージシャンとのコラボが大きな特徴となっています。1曲目「終わらない世界で」は小林武史作曲・編曲・プロデュースによる作品。サビの部分で転調した上で、半音階を上手く使いつつ切なさを醸し出しながらも爽やかに聴かせるメロディーラインは往年のMy Little Loverを彷彿とさせ個人的に壺。コバタケらしいメロディーもDAOKOのウィスパー気味のクリアボイスにピッタリとマッチしています。(サビの部分だけちょっと浮いちゃっているのは悪い意味でのコバタケらしい感じなのですが)

さらに続く「ぼくらのネットワーク」はちょっと聴けばすぐわかる中田ヤスタカサウンド。彼女のボーカル含めてちょっときゃりーぱみゅぱみゅっぽいのはご愛嬌。これもまた、ヤスタカサウンドがDAOKOともピッタリとマッチしています。

ほかに「サニーボーイ・レイニーガール」はいきものがかりの水野良樹が作曲を手掛けていますし、和風なサウンドがユニークな「蝶々になって」は、以前紹介した「合成音声ONGAKUの世界」にも参加した注目のボカロP、羽生まゐごが作曲編曲で参加。そしてラストの「NICE TRIP」はBOOM BOOM SATELLITESの中野雅之が作曲編曲プロデュースで参加。ブンサテを思い起こすようなトランシーなエレクトロチューンを聴かせてくれています。

そんな訳で前作と同様、豪華なミュージシャンを数多く迎えて様々なタイプのポップチューンを並べたアルバム。DAOKOのボーカルは透明感のあるウイスパー気味のスタイルなのですが、良くも悪くも癖がなく、そのため様々なタイプの音楽とも容易に結びつくことが出来、それがこれだけ豪華なアルバムを生み出す最大の要因となっています。

前作からわずか11ヶ月というスパンにも関わらず、再びこれだけ豪華なミュージシャンとコラボが出来た点、今の彼女の勢いを感じることが出来ます。ただ一方で気になる点は前作と同様。コラボ相手のミュージシャンに頼りすぎており、彼女の色がいまひとつ出せていない点。DAOKOとしての色や癖が薄く、ボーカリストとして自由度が高いのが彼女の魅力ではあるのですが、一方で今後、豪華なミュージシャンとのコラボが簡単に出来なくなってくると、一気にアルバムのクオリティーが下がってしまう、そんな心配を抱いてしまいます。

本作に関しては前作同様、弱点を上回るクオリティーを持つ傑作に仕上がっていたとは思います。ただ、気になる点も。今回、米津玄師とのコラボ曲「打上花火」をわざわざソロバージョンとして再度収録している点。端的に言ってしまえばネタ切れでは?この点についてはかなり気になりました。

ポップアルバムとしては文句なく楽しめた傑作アルバム。彼女の透明感あるボーカルにも気持ちよさがありました。ただ、次回作に向けていろいろと気になる部分も多かった作品で、この勢いが今年も続けることが出来るのでしょうか?ある意味、2019年はDAOKOにとって正念場の1年になりそうです。

評価:★★★★★

DAOKO 過去の作品
DAOKO
THANK YOU BLUE


ほかに聴いたアルバム

レインボーサンダー/ザ・クロマニヨンズ

ここ最近、ちょうど1年おきにアルバムをリリースしているクロマニヨンズの、こちらもちょうど1年ぶりとなるニューアルバム。これが12枚目のアルバムとなり、既にブルーハーツやハイロウズよりも長いキャリアとなったクロマニヨンズですが、バラエティーある曲調が特徴的だった前作とは異なり、シンプルなロックンロールが並ぶアルバムになっています。ある意味、ベテランらしく、無駄な部分を一切そぎ落としたロックンロールといった印象も。このメンバーで12年間活動を続けたからこそたどりついた1枚という印象を受ける作品でした。

評価:★★★★★

ザ・クロマニヨンズ 過去の作品
CAVE PARTY
ファイヤーエイジ
MONDO ROCCIA
Oi! Um bobo
ACE ROCKER
YETI vs CROMAGNON
ザ・クロマニヨンズ ツアー2013 イエティ対クロマニヨン
13 PEBBLES~Single Collection~
20 FLAKES~Coupling Collection~
GUMBO INFERNO
JUNGLE9
BIMBOROLL
ラッキー&ヘブン

週刊少年ジャンプ50th Anniversary BEST ANIME MIX vol.3

創刊50周年を迎えた人気漫画週刊誌「週刊少年ジャンプ」のテレビアニメの主題歌や挿入歌などを集めたノンストップミックスアルバム第3弾。さすがに第1弾、第2弾に比べると万人が「アニメソング」として認識してそうな定番曲は少なくなってきて、ネタ切れ気味なのは否めないのですが、それでもPENICILLINの「ロマンス」やPSY・Sの「Angel Night~天使のいる場所~」、さらに「ストップ!!ひばりくん!」など、まだ残っていたのかぁ、と懐かしく感じられる曲もチラホラ。全体的にはあまりアニソンとイメージできないような曲がメインになってしまった感はあるのですが、それでもいい意味でアニソンらしいインパクトあるポップチューンが並んでおり、J-POPのDJミックスアルバムとしても楽しむことが出来る作品になっていました。

評価:★★★★

週刊少年ジャンプ50th Anniversary BEST ANIME MIX vol.1
週刊少年ジャンプ50th Anniversary BEST ANIME MIX vol.2

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2019年1月25日 (金)

その「名前」を聞く機会は多いのですが・・・

Title:Spectra ~30th Alltime & Collaboration Best~
Musician:高野寛

高野寛というミュージシャン、その名前を聞く機会が非常に多いミュージシャンの一人です。Nathalie Wiseやpupaといったバンドへの参加や数多くのミュージシャンへのサポートやゲストなどに多く参加しており、高野寛という名前は様々な場面でよく遭遇します。一方、肝心の彼自身の曲に関しては、どんな曲を歌っていたのか、あまり強い印象を持っていません。実は高野寛自身のアルバムについてはいままで一度も聴いたことなく、今回、タイトル通り彼のデビュー30周年を記念したオールタイムベストがリリースされ、これを機に、はじめて彼自身の曲について聴いてみました。

ちょっと悪い言い方をしてしまうと、高い知名度の割に地味という印象を否めない彼ですが、今回ベスト盤を聴いてみても、この「地味」という印象を強く受けてしまいました。彼自身の最大のヒット曲は1990年にリリースされた「虹の都へ」という曲。この曲については確かに聴いたことがあり、「この曲は高野寛の曲だったのか」と今回はじめて気が付きました。ただ正直言うと、全体としてインパクトあるキャッチーなサビを持つような曲は少なく、全体的な印象の薄さは否めません。

一方で楽曲的には幅広い音楽性を感じさせる曲が並んでおり、雑食性を感じさせます。この幅広い音楽性もまた、高野寛の音楽的なイメージをぼやけさせて「地味」という印象を強調する要素になっているようにも思われます。例えば初期の作品はAOR的な要素を強く感じるのですが、「相変わらずさ」ではボッサ風なサウンドを入れてきたり、「Moon Shadow」ではブルースロック風に仕上げてきたり、「新しいカメラ」ではラウンジ風だったり。

ほかにも「Time Drop」はギターロック的な要素に打ち込みの音を入れてきていたり、「(それは)Music」はジャジーに仕上げてきていたり、さらに「Everything is good」はフォーキーにまとめあげたりしています。「高野寛はどんなジャンルのミュージシャンか」と言われた時に、その幅広い音楽性からひとこと「ポップ」としか答えられようがなく、それもまた彼のイメージをぼやかしている要因にも感じました。

ただ、一方ではこの幅広い音楽をどれもしっかりと自らのものとして取り入れており、音楽的な素養の高さも強く感じます。確かにインパクトあるサビもあまりありませんし、「売れ線のポップ」という観点からすれば地味な印象も否めませんが、バラエティーある音楽性のためこのベスト盤も最後まで飽きることなく楽しめる内容になっており、1曲1曲クオリティーの高い作風がつまっています。

またこの高い音楽的な素養と、そしてミュージシャンとして強烈な色を持っていないという点が、彼がサポートやゲストとして様々なミュージシャンから引っ張りだこである大きな理由のように感じさせます。変に強い色がないからこそ、様々なミュージシャンとのコラボも違和感なくおさまることが出来、実際、今回のベスト盤でもDisc3にそんなコラボ作が収録されているのですが、忌野清志郎や坂本龍一、田島貴男や大貫妙子といった個性の強いミュージシャンたちとのコラボも違和感なくこなしています。もちろん、「色が薄い」だけではなく彼自身が実力あるミュージシャンだから、という点は言うまでもない事実でしょうが。

そんな訳で、確かに「地味」という印象はこのベスト盤からも強く感じてしまいましたが、ミュージシャンとしての確かな実力も同時に感じることが出来た今回のベスト盤。しっかりと聴くと、魅力がしっかりと伝わる曲ばかりで、彼が多くのミュージシャンから支持を受けているのも強く納得できます。次はオリジナルアルバムも聴いてみようかなぁ。これからも高野寛の名前を聞く機会はますます増えていきそうです。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

Virgin Graffiti/シャムキャッツ

その高い音楽性で注目を集める4人組ロックバンドの5枚目となる新作。メロウとフォーキーさを同居させたようなその作風は、サニーデイ・サービスと大きな括りでは同じベクトルを感じるものの、彼らの方がよりバンド然とした雰囲気を出しています。全体的には地味な印象が否めず、もうちょっと核になるような作品があれば良いようにも感じられるのですが、音楽的な偏差値は非常に高いバンドで、さらなる活躍が期待できそうな良作になっていました。

評価:★★★★★

シャムキャッツ 過去の作品
Friends Again

BLOW BLOW ALL NIGHT LONG/BLOODEST SAXOPHONE feat.BIG JAY McNEELY

ジャンプブルースで最高にカッコいい演奏を聴かせてくれるブラサキことBLOODEST SAXOPHONEの今回紹介する作品は、ジャンプ・ブルースを代表するアメリカのサックスプレイヤー、ビッグ・ジェイ・マクニーリーとの共演作。ビッグ・ジェイ・マクニーリーは昨年、91歳という大往生ながらも惜しまれつつこの世を去ってしまったため、これが最初で最後の共演となってしまったのですが、これが文句なしにカッコいい!タイトル通り、ブロウしまくる10曲は、まさにサックスを吹くまくる作品の連続でその息遣いがダイレクトに耳に入ってくる迫力ある演奏ばかり。ジャケット写真そのままにプレイヤーが音楽を通じて迫力ある会話をしている姿がそのまま浮かんでくるような作品になっており、最初から最後まで耳を離せません。これが最期になってしまったのが非常に惜しまれる素晴らしいコラボ作でした。

評価:★★★★★

Bloodest Saxophone 過去の作品
ROLLER COASTER BOOGIE

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2018年12月24日 (月)

「ラスボス」による初のベスト盤

Title:THE BEST ALBUM
Musician:般若

最近ではテレビ番組「フリースタイルダンジョン」で、「ラスボス」として降臨。知名度を一気に高めただけではなく、そのラッパーとしての実力を世に知らしめた般若。そんな彼がキャリア初となるベストアルバムをリリースしました。デビューアルバム「おはよう日本」から、2016年にリリースされた「グランドスラム」までに収録された曲の中から発表順に並べたアルバム。ちなみに全20曲入りのCD版のほか、サブスプ版は全33曲収録。ボリューム満点の内容になっています。

さて、そんな般若の楽曲の大きな特徴と言えば、間違いなく具体的な表現に終始した、しっかりと内容を聴かせるラップを主軸に据えている点でしょう。また、彼のラップのスタイル自体も、リリックの内容をしっかり聴かせるべく、言葉をしっかりと綴るラップのスタイルとなっています。そして、そんな彼のラップが描き出す世界は非常に多岐にわたっており、それが般若のラップの大きな魅力となっています。

具体的に言えば「ちょっと待って」のようなコミカルなラップに、反戦をテーマとした「オレ達の大和」や下流社会の現実を描いた「路上の唄」のようなハードな社会派のラップ。「ゼロ」のように死をテーマとした内省的なラップもあるかと思えば、HIP HOPでは恒例とも言える「MY HOME」のような地元をテーマとした曲や「最ッ低のMC」のようなラップ界について綴った曲もあります。

そんな中でも印象に残るのが父親への複雑な思いを綴った「家族」から、産まれてくる自分の子どもに対する思いを綴った「#バースデー」への流れ。「#バースデー」では実際に妻であるシンガーのSAYも参加しており、父親への思いと自らが父親になる思いを並べたこの構成に、聴いていてグッと感じ入るものがあります。

ただ、彼の魅力はこのリリックの内容だけではありません。こういう具体的なテーマのリリックがしっかりとリズムに乗ってラップされている点も大きな魅力。わかりやすく語尾を合わせるというよくありがちなライムがあるわけではないのに、しっかりとリズム感よくラップが出来る言葉をセレクトそている彼の実力を強く感じますし、また、そんなリリックを卒なく、かつテンポよくラップする彼のラッパーとしての実力も強く感じることが出来ます。ここらへん、さすが「ラスボス」。そのスキルは伊達ではありません。

一方でトラックについては「無難」という印象を受けます。正直言って、これといって特筆するようなトラックはありません。もちろん、かといって聴いていて厳しくなるようなチープなトラックはありませんし、「#バースデー」などのような今風なトラックもしっかりと取り入れています。

もっともこれはおそらく、彼の「売り」はあくまでもラップ自体であるため、トラックはラップを邪魔しないように作り込まれているのではないか、という印象を受けます。実際、楽曲を聴いていてもラップがすんなり耳に入り、いい意味でトラックはBGM的に機能しているように感じます。そういう意味ではラップとトラックがちょうどよいバランスの上に成り立っているように感じました。

来年1月には初となる武道館ワンマンも控えている彼。知名度もあがってきて勢いにのってきている感もあります。そんな彼の入門盤としても最適な1枚ですし、また、彼のキャリアを振り返るという意味でも最適なベストアルバム。これからの活躍も楽しみです。

評価:★★★★★

般若 過去の作品
ドクタートーキョー
HANNYA
グランドスラム


ほかに聴いたアルバム

RUN/tofubeats

メジャーデビュー以降、勢いある傑作アルバムが続いたtofubeatsですが、4作目となる本作は正直言ってしまうと、うーん、悪い作品ではないけど、いままでのアルバムと比べるといまひとつ。前半と終盤が歌モノ、中盤がインストチューンという構成になっていて、どちらもそれなりに楽しく聴かせます。ただ、80年代ポップスを狙った曲があったり、いままでの彼のお得意だった90年代J-POP風の曲があったり、細野晴臣やcorneliusあたりからの影響を感じる曲があったりと意欲的な音楽性を感じつつも、全体的には中途半端。おとなしすぎるような感も強く、いまひとつ印象薄の作品でした。

評価:★★★

tofubeats 過去の作品
Don't Stop The Music
ディスコの神様
First Album
STAKEHOLDER
POSITIVE
POSITIVE instrumental

POSITIVE REMIXS
FANTASY CLUB

ROCK SHOW/ZIGGY

昨年、メジャーデビュー30周年を迎えてベスト盤をリリースしたZIGGY。さらにその後、10年ぶりのオリジナルアルバムがリリースされましたが、そこからわずか1年。ニューアルバムが早くもリリースとなりました。今回のアルバムは、タイトルやジャケット写真の通り、まさに「ロックショー」といった感じの80年代のハードロックをゴリゴリと入れてきて、かなり仰々しい雰囲気に仕上げたスタジアムロック風の作品。まさにロックが華々しかった80年代あたりを彷彿とさせるダイナミックなサウンドが並んでいて、あの頃のロックという音楽が持っていたきらびやかさを、ちょっとのいかがわしさも加味して再現したアルバムに。アラフィフあたりの世代なら懐かしさを感じさせる感もある反面、少々仰々しすぎて胸焼けした感も否めず。

評価:★★★★

ZIGGY 過去の作品
SINGLE COLLECTION
2017

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2018年12月23日 (日)

民謡歌手としての原点回帰

Title:元唄(はじめうた)~元ちとせ 奄美シマ唄集~
Musician:元ちとせ

約3年4ヶ月ぶりとなる元ちとせの新作は全7曲入りのミニアルバム。前作「平和元年」は、戦後70周年の年にリリースされた「平和」をテーマとしたコンセプチャルな内容となっていました。そして続く本作は、彼女の生まれ故郷、奄美大島の「シマ唄」を彼女が歌った作品となっています。

ここで単純に「元ちとせ、奄美の民謡に挑戦」という書き方をしたいところなのですが、まあご存じの方も多いかとは思いますが、もともと彼女はシマ唄の歌い手として注目を集め、中学から高校にかけて、数多くの奄美民謡の大会で受賞し大きな話題になり、オフィスオーガスタからデビューする前に、既に奄美民謡を吹き込んだCDをリリースしていた過去もあります。

そういう意味では今回のアルバム、彼女にとってはまさに原点回帰のアルバムと表現がピッタリ来る内容となっています。また、全7曲のうち4曲はおなじ奄美大島出身のシンガー、中孝介とのデゥオとなっています。彼もまた、もともとシマ唄の歌い手として活動をはじめており、そういう意味ではお互い、今はポップスシーンで活動をしながらも原点に奄美大島のシマ唄がある、という点で共通しているミュージシャン同士となっています。

さらに今回のアルバムは、奄美大島のシマ唄をポップス風にアレンジしたアルバム・・・といった感じではありません。本当にシマ唄のオリジナルなアルバムを聴いたことがないので、正確なことはわからないのですが、三味線の音色のみをバックに、元ちとせと中孝介がこぶしの聴いた歌声のみで歌い上げるスタイルの本格的なシマ唄のアルバムとなっています。

そのためポップス的な耳で聴くと、少々戸惑ってしまう感もあるかもしれません。ただ、三味線+こぶしを効かせた哀愁感あるフレーズというスタイルは本土の民謡とも共通する部分も感じられ、私たちにとっても比較的なじみやすい歌ではないでしょうか。

そしてそんなシマ唄を、元ちとせは(中孝介もですが)まさに水を得た魚のように、非常に生き生きと歌い上げています。彼女のボーカルもいつも以上に表現力が増した歌声を聴かせてくれており、聴いていてゾクゾクするような感覚すら覚える部分も。基本的には聴かせるタイプの曲が多く、若干「似たようなタイプの曲が並んでいる」という印象を受ける部分もあるのですが、その点を差し引いても、元ちとせの歌手としての実力がいかんなく発揮されたアルバムに仕上がっていたと思います。

また今回、アルバムの最後には民謡クルセイダーズがゲスト参加。「豊年節」を元ちとせと作り上げているのですが、今回、彼らは「豊年節」にクンビアのリズムを取り入れて、独特なリズムの楽曲にリアレンジしています。原曲は聴いたことがないのですが、ただこの作品を聴く限りだと楽曲自体にもマッチ。また元ちとせのボーカルとの相性も抜群で、ほかの曲とはまた違った味わいを醸し出す名曲に仕上がっていました。

そんな訳で民謡歌手としての元ちとせの魅力を存分に味わえるアルバム。確かに彼女、もともと歌い方からして、シマ唄の歌い方をそのままポップスに取り入れているのですが、それだけにシマ唄を歌うと、よりそのボーカルが映えるように思います。次はまたおそらくポップの作品を作ってくるのでしょうが、時々はシマ唄のアルバムも聴きたいな、そう感じさせてくれる1枚でした。

評価:★★★★★

元ちとせ 過去の作品
カッシーニ
平和元年


ほかに聴いたアルバム

YOAKE/KYONO

THE MAD CAPSULE MARKETSのボーカリスト、KYONOの初となるソロ名義でのアルバム。基本的にはマドカプの延長線上のようなエレクトロビートの入ったハードコアな作品が並んでいます。マドカプといえば上田剛士がAA=として活動していますが、AA=を聴くとどうしても感じる「何かが物足りない」の「何か」がここにありました。どう考えてもAA=に足りないのはこの力強いボーカル。ただ一方、KYONOソロはソロでサウンド的にマドカプをなぞっているだけ、という印象も否めず、それなりに満足感はあるのですが、マドカプと比べると新たな一歩を感じられないんだよなぁ。そういう意味ではTHE MAD CAPSULE MARKETSの活動再開を強く希望したいのですが。

評価:★★★★

KYONO(WAGDUG FUTURISTIC UNITY) 過去の作品
HAKAI
DESTROY THE DESTRUCTION-mash up&remixes-
R.A.M.
ЯAW

qp/青葉市子

2年ぶりとなるニューアルバム。いままでの彼女の作品同様、アコースティックギター一本でのアレンジにより、その美しい歌声を聴かせてくれています。歌詞もファンタジックな雰囲気を醸し出したものが多く、それにあわせてファンタジックな作風の曲も目立ちます。そんなこともあり基本的には前作「マホロボシヤ」の延長線上のようなアルバムなのですが、そのボーカルの表現力、シンプルなアコギの奏でながらもしっかりと聴かせるフレーズから、聴いていて全く飽きが来ることがありません。ただただその静かなサウンドとボーカルに圧倒されるアルバムです。

評価:★★★★★

青葉市子 過去の作品
うたびこ
ラヂヲ(青葉市子と妖精たち)
0
マホロボシヤ

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2018年12月22日 (土)

相変わらずの暑さ

Title:STARTING OVER
Musician:高橋優

その具体的で世の中のリアルを突いた歌詞が大きなインパクトを持つシンガーソングライター、高橋優の2年ぶりとなるニューアルバム。
相変わらず自身の顔のドアップがそのままジャケット写真になっている訳ですが、この「生真面目」そうなジャケット写真が示すように、彼の歌詞はある意味世の中を真正面から「真面目」に取り上げているという印象を受けます。

ただ、その結果として、いままでのアルバムにも共通するのですが、世の中について真正面から取り組みすぎて、「押し一辺倒」にある種の暑苦しさを感じてしまうのが気になってしまいます。今回のアルバムにしても1曲目「美しい鳥」がまさに彼が今の時代に感じることを一気に吐露するような歌詞になっており、聴いていてちょっとひるんでしまいます。

また、歌詞に若干唐突感があるのも良くも悪くも彼の特徴になっており、例えば「いいひと」なんかは

「いい人ですねって言うのは 大抵都合のいい人って意味だから本当であればいい人なんかならなくたっていいんだよ」
(「いいひと」より 作詞 高橋優)

なんていう歌詞はかなり納得感を覚えるものの、歌詞の登場人物がなぜかいきなり「サイコパス」な側面を持っていたりして違和感バリバリですし、上に紹介した「美しい鳥」にしろ、日本語歌詞を立て板に水のごとく歌った後、いきなり「How do you feel?」なんて英語が登場してくるあたり、正直、中2病的な言葉の選択のようにも感じられ、失笑してしまいました。

ただ、歌詞についても決して悪くはないんですよね。上にも書いた「いいひと」の歌詞のように、心に残るような歌詞にもしっかり出会えますし、「非凡の花束」のような、日常の中での妻に対するラブソングのような素敵な曲も収録されています。

また今回のアルバムでユニークかつ秀逸だったのが「Harazie!!」で、彼の出身地、秋田県の方言をそのまま歌詞にして、それをファンクなリズムに乗せて歌い上げるナンバー。ファンクの持つ泥臭さが秋田弁の雰囲気にピッタリとマッチし、まさに彼しか歌えない和製ファンクの傑作ナンバーになっています。

そのほかにも「若気の至り」ものすたるいっくな切ない歌詞がアコースティックなサウンドの載せて歌われる印象的なナンバー。学生時代のなつかしさを感じさせる風景描写も秀逸で、彼の歌詞の魅力を存分に感じることができる作品となっています。

そんな訳で、しっかりと高橋優の実力と魅力を感じられ、歌詞にしろメロディーにしろしっかりとインパクトを感じられるアルバムなのは間違いありません。ただ、やっぱり、これでもかというほどに畳みかけられる歌詞には、正直もうちょっと力を抜いた部分があった方がよりおもしろくなると思うんですよね・・・。もっとも彼もまた34歳と若いだけに(・・・といえるほど「若い」かは微妙ですが(^^;;)これからもっと年を重ねるごとに、力の抜き方を覚えると思うのですが・・・。この歌詞の暑苦しさは魅力であると同時に、彼の弱点でもあるように感じます。そろそろもうちょっと肩の力を抜いたほうがおもしろくなると思うんだけどなぁ。

評価:★★★★

高橋優 過去の作品
リアルタイム・シンガーソングライター
この声
僕らの平成ロックンロール(2)
BREAK MY SILENCE
今、そこにある明滅と群生
高橋優 BEST 2009-2015 『笑う約束』
来し方行く末


ほかに聴いたアルバム

うたいろ/吉岡聖恵

今年年末の紅白での復活が予定されているいきものがかりのボーカリストによるソロアルバム。そんな彼女のソロデビュー作は全曲カバーアルバムで、米津玄師の「アイネクライネ」のような作品の曲もありますが、笠木しず子「ヘイヘイブギー」、ピーター、ポール&マリー「500マイル」(作詞は忌野清志郎)など、結構昔の楽曲が目立つ、ちょっと渋い選曲になっています。

正直彼女自身、ボーカリストとして安定感はありますが、表現力に乏しく、決して上手い歌手ではありません。実際、中島みゆきの「糸」など原曲と比べるとかなり辛い内容になっており、「カラオケレベル」という部分も否めません。ただ、メロディーをしっかり聴かせる懐かしい選曲はなかなか惹かれるものがありますし、また「ヘイヘイブギー」のようなハイトーンボイスを生かしたアップテンポなナンバーはそれなりに健闘しているような印象もあります。歌唱力、特に表現力に厳しい部分はありましたが、選曲含めて曲は素直に楽しませてもらったので下記のような評価に。次は・・・カバーアルバムにしないほうが無難かと思いますが・・・。

評価:★★★★

地球 東京 僕の部屋/和田唱

TRICERATOPSのボーカリスト、和田唱による初のソロアルバム。ジャケット写真のかわいらしい写真は彼の5歳の時の写真だとか。かわいいね(笑)。ちなみにこれ書いていてはじめて気が付いたのですが、手に持っているのって、確か透明な部分にフィルムが入っていて、スコープを覗いて手元もボタンを押すとフィルムがくるくる回って、アニメが見れるようになるおもちゃだよね。懐かしい!私も確か持っていました!さすが同年代(笑)。

ちなみにソロアルバムはすべての楽器の演奏を一人でこなしたとか。歌詞の内容も内省的で自分のことをうたった歌詞が多く、いかにもソロアルバムらしい作品になっています。音楽的にもファンキーな曲調のナンバーやAOR調の曲などあって、トライセラではあまり出来ないようなタイプの曲も並びます。ただメロディーメイカーの彼としてはメロディーラインはちょっと地味だったのはトライセラに遠慮したのでしょうか?ラストを飾る「Home」はピアノとストリングスで聴かせるバラードナンバーになっており、彼のメロディーセンスがしっかりと反映された聴かせるナンバーに仕上がってはいるのですが。

ただトライセラに留まらない広い音楽への興味を感じますし、今後もちょくちょくソロでのリリースは続きそうな感じはします。もっとも、そろそろトライセラの新作も聴きたいところなので、そちらにも期待!

評価:★★★★

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2018年12月18日 (火)

懐かしさあふれるコンピ盤

Title:宮川泰 テレビテーマ・ワールド
Musician:宮川泰

和製ポップスの第一人者として数多くのヒット曲を生み出し、かのザ・ピーナッツの育ての親としても知られる作曲家、宮川泰(「やすし」ではなく「ひろし」と読みます)。おそらく当サイトを見てくださっているような方にとっては、「宇宙戦艦ヤマト」の作曲者、と言われれば一番ピンと来るかもしれません。そんな彼はテレビ番組の挿入歌、テーマ曲も数多く手掛けているのですが、今回紹介するのは、そんなテレビに使われた彼の楽曲をまとめたコンピレーションアルバムとなります。

その収録音源は、アルバム冒頭を飾る「シャボン玉ホリデー」のような60年代、70年代の頃の曲もあり、さすがになじみのない曲も少なくありませんが、一方ではおそらく私のようなアラフォー世代にとっても非常になじみのある懐かしいテレビのテーマ曲も数多く収録されています。そしてこれらの曲が使われていた80年代や90年代はネットがなくまだまだテレビが家庭の中心にあった時代。おそらく家にいれば、まずはテレビを見ていたという方も多いでしょう。そういう世代にとっては、宮川泰の名前を知らなくても、知らず知らずのうちに彼の曲に出会っていたことに気が付かされます。そして、彼の曲を聴くと、そのテレビを見ていた頃のことを懐かしく思い出してしまうことでしょう。

私にとっては例えば「ひるのプレゼントのテーマ」「午後は○○おもいッきりテレビテーマ」などを聴くと、番組自体よりも、風邪だったり何かの理由で学校を休んだ平日の昼間の、普段だったら学校にいるはずなのになぜか家でゴロゴロしている、あのなんともいえない解放感を思い出します。また土曜日の午後にやっていた(というか、まだ「やっている」なのですが)番組のテーマ「バラエティー生活笑百科テーマ」を聴くと、この番組を見ていた当時はまだ土曜日の午前中に学校の授業があった頃。これから休みになる、というワクワク感を思い出させてくれます。また「ズームイン!朝」「ズームイン!!SUPERオープニングテーマ」なども聴いているだけで眠たい朝を思い出す人も多いのではないでしょうか。

そして個人的に一番懐かしく感じたのが(これはテレビの曲ではないのでボーナストラック扱いなのですが)「歌謡ベスト10 オープニングテーマ」。FM東京系で土曜日の午後1時から放送されていた「コーセー歌謡ベスト10」のテーマ曲。実は私にとって、いわゆるポップス、歌謡曲、ヒット曲との出会いがこの番組を中学生の頃に聴き始めたから。中学生の頃はこの番組をむさぼるように聴いていて、ランクインしている曲を片っ端から聴いていました。いわば私の音楽趣味の原点とも言える番組で、正確には私が聴いていたころ使われていたテーマ曲は、今回のコンピに入っている曲を若干アレンジした曲だったのですが、あの中学生の頃を思い出してしまい、とても懐かしくなってしまいました。

そんな感じで、まさにおそらく多くの方にとって聴いているだけで懐かしくなってくるような曲が数多く収録されているコンピレーション。私と同じアラフォー世代やもっと上の世代、さらにおそらく30代あたりの方でも同じような思いを抱くのではないでしょうか。ちなみに冒頭で紹介した「宇宙戦艦ヤマト」も収録されています。またこのコンピ盤を聴いていくと、いかにも一昔前のテレビ番組の曲といった印象を受ける曲に多く出会うかもしれません。それは彼がいかにもな曲を書いていた、というよりも、宮川泰が書くサウンドのことを、私たちが「一昔前のテレビ番組の曲」とイメージしていた、という理解の方が正確かもしれません。

そして彼の書く曲を聴いていると、ソウルやジャズなどの要素を取り入れた曲が多く、今の私たちの耳から聴いても洋楽テイストが強くあか抜けた作風という印象を強く受けます。「お笑いオンステージの歌」はソウル風なリズムがカッコよさすら感じますし、「わんさかワンサくん」もニューオリンズ風の軽快でコミカルな楽曲が楽しめます。そういう点からも、懐かしさに浸るだけではなく音楽的な面でももちろん楽しめるコンピでしたし、また、洋楽テイストを強く押し出した和製ポップスという意味では、同じく洋楽的な要素を強く押し出しているJ-POPの原点という見方も出来るかもしれません。実際、彼の曲は数多くのヒット曲や、あるいはテレビのテーマ曲などを通じて、知らず知らずのうちに私たちやさらに下の世代の耳にも届いている訳で、そういう意味ではJ-POPシンガーも意識的に、あるいは知らず知らずのうちに彼の曲の影響を受けているという見方も出来るかもしれません。

そんな訳で、アラフォー世代以上にとっては、いやもっと下の世代にとっても懐かしさに浸れるコンピ盤。またもちろん音楽的にも楽しめる1枚となっていました。とりあえず、おそらく多くの方にとって1度は聴いたことあるような曲が必ず収録されているコンピなので、興味ある方は是非。テレビが家庭の中心にあった時代に流れていた音楽たちが、今の時代に復活してくる、そんな懐かしさあふれるコンピレーションアルバムでした。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

ALL INDIES THE BACK HORN/THE BACK HORN

結成20周年を迎える彼らが、20周年企画の第3弾としてリリースする本作は、現在、廃盤となっているインディーズ時代の楽曲を再録した企画盤。彼らのインディーズ時代の曲は今回はじめて聴いたのですが、叙情感あふれるメロディーとダイナミックなサウンドはメジャーデビュー後の作風と変わらず、初期の段階からその作風が既に完成していたことを伺わせます。ただ一方、似たような作風の曲が多く、1曲1曲はカッコよく耳を惹くのですが、アルバム全体としては後半、少々飽きが来てしまいました。

評価:★★★★

THE BACK HORN 過去の作品
BEST
パルス
アサイラム
リヴスコール
暁のファンファーレ
運命開花
BEST OF BACK HORN II
情景泥棒

ケツノポリス11/ケツメイシ

ケツメイシ11枚目のアルバムは、ここ最近、英語表記の「KETSUNOPOLIS」だったタイトルが「ケツノポリス」に戻り、ジャケットの色もデビューアルバム「ケツノポリス」と同じ白に。さらに写真の構図も同作と同じという、ある意味「原点回帰」的なジャケットとなっています。

ただ内容的にはいい意味で、そのデビューアルバムから遠くに来たなと感じさせるような内容。レゲエはもちろん、HIP HOP、エレクトロ、トランス、ポップなどの音楽的な要素を広く入れてほどよくポップにまとれ、歌詞も大人になった彼らの等身大のスタイルを時にはユーモラスをまじえて歌い上げています。特に今はやりのラップバトルの要素をコミカルに織り込んだ曲などは彼らならでは。ここ最近、安定感の増した彼らですが、ベテランミュージシャンとして、さらに一歩上のレベルに到達した感のある、ある種の貫禄すら感じさせるアルバムでした。

評価:★★★★★

ケツメイシ 過去の作品
ケツノポリス5
ケツノポリス6
ケツノポリス7
ケツの嵐~春BEST~
ケツの嵐~夏BEST~
ケツの嵐~秋BEST~
ケツの嵐~冬BEST~

KETSUNOPOLIS 8
KETSUNOPOLIS 9
KTMusic(KTMusic)
KETSUNOPOLIS 10

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2018年12月16日 (日)

ライブ音源が魅力的

Title:野宮真貴 渋谷系ソングブック
Musician:野宮真貴

ご存じ元ピチカート・ファイブのボーカリストであり、90年代に起きた「渋谷系」と呼ばれる音楽のムーブメントの中心にいた野宮真貴。彼女が、その原点を振り返るべくここ数年の行っている企画が「野宮真貴、渋谷系を歌う」。いわゆる渋谷系と呼ばれるルーツと思われる曲を彼女がカバーする企画で、最初はライブの企画からスタート。その後、アルバムを5枚リリースし今日に至っています。

今回のアルバムはその「渋谷系を歌う」の企画を総括するベストアルバム。いままで彼女がリリースしたアルバムの中から、ライブ盤だった1枚目と、(なぜか)最新アルバム「ホリディ、渋谷系を歌う」を除く3枚のアルバムからセレクト。さらに渡辺満里奈のアルバム「MY FAVOURITE POP」に収録されていた「大好きなシャツ(1990旅行大作戦)- Marina's 30th Anniversary Mix-」も収録されています。

さらに今回のベスト盤の大きな目玉のひとつが本編ラストに収録されている「中央フリーウェイ」。2015年11月に行われたライブ音源なのですが、この日、ライブを見に来ていたムッシュかまやつが飛び入り出演。今となっては貴重な音源となってしまった2人によるデゥエットも収録されています。

そして肝心の内容自体は、アルバムをいままでもここで紹介していますし、いまさら言うまでもないかもしれません。しんみりとその歌声を聴かせつつも、感情過多にならないそのボーカルのバランスの良さはさすが経験豊富な大人のボーカリストといった印象。また彼女の歌声はそのしっとりとした歌声には強いインパクトがありつつも、一方では歌い方にも声色にも比較的「癖」が薄く、そのためいろいろな曲のカバーにもマッチするという意味では、この「渋谷系を歌う」の企画がピッタリということも言えるでしょう。

ただ、今回のこのアルバムの一番の肝となるのはDisc2の方になるかもしれません。今年2月に行われた「モーション・ブルー・ヨコハマ」でのステージをMC含めてフル収録したライブ盤。もともとこの企画はライブイベントからスタートしていますので、ライブこそが「渋谷系を歌う」の本領と言えるかもしれません。

渋谷系の大定番「ぼくらが旅に出る理由」のカバーなども素晴らしいのですが、途中にはチョコレートのCMソングを歌うコーナーがあったり、MCではカバーする曲の詳しい説明があったり、そういった部分も楽しいですし、よくよく聴くと、バックにおそらく観客が食事をしていると思われる食器の音なども聞こえたりするのもライブの臨場感が増す大きな要素となっていたりします。

さらにこのライブではゲストも参加しています。高野寛を迎えたコーナーでは懐かしいヒット曲「Winter's tale」が聴けたりするのがなかなかうれしいのですが、特に素晴らしいのが横山剣とのデゥオ。二人とも本当に渋い大人のボーカリスト同士といった感じで、その相性も抜群。絶妙なデゥエットを聴かせてくれます。なにでにこの2人で組んで、アルバムをリリースしてくれないかなぁ・・・そんなことくらい考えてしまう相性の良さでした。

さらにうれしいのは・・・これはライブでは毎回の定番のようですが、アンコールのピチカート・ファイヴメドレーもしっかりと収録されている点でしょう。なんだかんだ言っても、やはり野宮真貴=ピチカート・ファイヴのイメージでしょうし、懐かしいヒット曲の連続で聴いていてうれしくなってきますし、ワクワクもしてきます。このピチカート・ファイヴメドレーが収録されている点はライブ盤ならでは、といった感じでしょうか。

ともかく、いろいろな点から彼女のライブの魅力がしっかりとつまった臨場感あるライブ盤。本編の方に含まれたレア音源も含めて、いままでの彼女の「渋谷系を歌う」シリーズを全て聴いていたとしても、あらためて聴いてみたいベスト盤になっていました。ただ・・・そろそろこの企画も「ネタ切れ」状態。このベスト盤がひとつの区切りとなるのでしょうか。次はどんな企画になるのか・・・そろそろ彼女の「純粋なソロオリジナルアルバム」も聴いてみたいのですが。

評価:★★★★★

野宮真貴 過去の作品
実況録音盤!「野宮真貴、渋谷系を歌う。~Miss Maki Nomiya Sings Shibuya-kei Standards~」
世界は愛を求めてる。-野宮真貴、渋谷系を歌う。-
男と女~野宮真貴、フレンチ渋谷系を歌う。
野宮真貴、ヴァカンス渋谷系を歌う。~Wonderful Summer~
野宮真貴、ホリディ渋谷系を歌う。


ほかに聴いたアルバム

After The Rain/古内東子

今年、デビュー25年を迎えた古内東子の、なんとオリジナルアルバムとしては約6年半ぶりとなるニューアルバム。この6年半の間、結婚・出産という大きなイベントを経た彼女。しかし、ここでよくありがちな「母としての作品」にはならなかったのはある意味彼女らしい感じ。久々のニューアルバムは、むしろ原点回帰的な、いかにも彼女らしい王道を行く切なくメロウなナンバーが並ぶアルバムに仕上がっています。正直なところそのため目新しさみたいなものはなかったのですが、結婚・出産を経てもこれからもこのスタイルで行くという彼女の決意のようなものを感じました。

評価:★★★★

古内東子 過去の作品
IN LOVE AGAIN
The Singles Sony Music Years 1993~2002
Purple

透明
夢の続き
and then...~20th anniversary BEST~
Toko Furuuchi with 10 legends

NEUE TANZ/YELLOW MAGIC ORCHESTRA

YMO結成40周年を記念してリリースされたコンピレーションアルバムはメンバーのソロ作を含めて選曲をテイ・トウワが行い、さらに砂原良徳によるリマスタリングが行われたコンピレーションアルバム。選曲のテーマとして「今響かせたいYMO」をテーマにしたそうで、それだけに音楽的な進歩が早いエレクトロミュージックでありながらも、まりんのリマスタリングと合わせて、今の耳で聴いても古さを感じさせないどころか新鮮味すら感じさせる曲が並んでいます。また、基本的にポップな作風にどこかコミカルさも感じられ、最初から最後まで全く飽きることなく一気に聴けるコンピレーションに。「正統派」ではないかもしれませんが、今のリスナーにとってはYMO入門としてピッタリの1枚と言えるでしょう。

評価:★★★★★

Yellow Magic Orchestra 過去の作品
LONDONYMO-YELLOW MAGIC ORCHESTRA LIVE IN LONDON 15/6 08-
GIJONYMO-YELLOW MAGIC ORCHESTRA LIVE IN GIJON 19/6 08-

YMO
NO NUKES 2012

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2018年12月10日 (月)

J-POP史に残るバンド

Title:BEST MONCHY1-Listening-
Musician:チャットモンチー

今年7月、惜しまれつつその活動を「完結」させたロックバンド、チャットモンチー。その突然の解散に多くのファンが衝撃を受けたと思います。本作はそんな彼女たちが解散後リリースしたオールタイムベスト。彼女たちの代表曲が発表順に収録されているほか、Disc3ではレア音源も収録されている、彼女たちの活動を総括するようなベスト盤となっています。

さてこのチャットモンチーというバンド、個人的には間違いなくJ-POP史に名前を残すレジェンド的なバンドだと思っています。その理由はトリビュートアルバムの感想でも書いたのですが、彼女たちが、数多くのガールズバンドを生み出す先駆け的存在であったため。もちろんチャットモンチーの前にも多くの女性オンリーのバンドはありました。ただ、同じくガールズバンドの代表格であるプリンセスプリンセスなどはあまりにポップス色が強すぎてフォロワー的なバンドはほとんど現れませんでしたし、逆に少年ナイフやZELDA、メスカリンドライブなどはある意味サブカル色が強すぎて、ガールズバンド登場の大きな契機とはなりませんでした。

しかし彼女たちの場合はロックバンドとしてのカッコよさを持ちつつ、同時にヒットチャートで戦えるポピュラリティーも持っており、結果として多くの女性たちに「女の子だけでバンドが出来るんだ」ということを知らしめるきっかけになったと思います。そして、彼女たちのブレイク以降、ねごと、SHISHAMO、yonige、赤い公園、the peggies、CHAI(CHAIはどちらかというと少年ナイフやZELDAからの流れかもしれませんが)などのガールズバンドが登場しました。そういう意味でチャットモンチーというバンドはJ-POP史に大きな痕跡を残したバンドだったと思っています。

そして今回のベスト盤を聴くと、あらためてチャットモンチーというバンドはいろいろな意味でバランスの取れたバンドだな、ということに気が付かされました。楽曲的にロックバンドとしてのカッコよさとポップミュージックとしてのポピュラリティーのバランスの良さはもちろんですし、例えば歌詞の世界にしても男性陣にとっては「かわいらしい」と感じさせるような女の子像を描きつつも、女の子としての等身大の本音をきちんと描いており、この「かわいらしさ」には男性陣に媚びたようないやらしさは感じられません。ここらへんの歌詞の世界観もチャットモンチーというミュージシャンが幅広く支持を集める大きな要因ではないでしょうか。また、ちょっといやらしい話かもしれませんが、彼女たちルックスも、嫌味のない程度にほどよくかわいく、そういう点でも男女ともに広く支持を広げる要因のように思います。

もっともそんな彼女たちも今回のベスト盤を聴く限り、解散の理由として出来ることをやりつくしたという理由が非常に強く納得できる内容になっていました。特に高橋久美子脱退後、2人組になってからは、2人だけでアルバムを作ったり、逆にサポートメンバーを入れてきたり、さらにラストアルバムでは打ち込みを入れてきたりと、様々な作風に挑戦してきました。そしてその結果、この2人だけで出来ることはほぼやりつくした、と感じたのではないでしょうか。今回の解散という話は非常に残念ではありますが、一方でこのベスト盤を聴くと、解散という結論を出したことになんとなく納得がいく感もありました。

そんな訳で、チャットモンチー解散は非常に残念ではあるものの、一方ではどこか「仕方なかったかな」という感想も抱くベストアルバム。おそらくこれからも2人は音楽活動を続けるでしょうが、これからの活躍も楽しみ。これからさらなる飛躍を遂げるであろう彼女たちの今後を心から応援したいと思います。

評価:★★★★★

チャットモンチー 過去の作品
生命力
告白
表情
Awa Come
YOU MORE
チャットモンチーBEST~2005-2011~
変身
共鳴
誕生


ほかに聴いたアルバム

What A Wonderful World/堀込泰行

フルアルバムでは2枚目となる元キリンジ、堀込泰行のニューアルバム。基本的にはキリンジ時代からほとんど変わらないスタイルのシティポップ。「泥棒役者」のような、彼らしいユニークな言葉の使い方をしている楽曲もあり、ファンなら満足できそうな楽曲が並びます。前作「One」ではヘナヘナしたボーカルが気にかかり、今回のアルバムでも正直、キリンジ時代と比べると声が出ていないような印象は受けましたが、前作ほどは気にならず、そういう意味では改善傾向といった感じでしょうか。アルバム全体としては目新しさは感じませんが、彼らしいポップソングで卒なくまとめられている印象が。聴いていて心地よさを感じる良質なポップアルバムでした。

評価:★★★★★

堀込泰行 過去の作品
River(馬の骨)
"CHOICE" BY 堀込泰行
One
GOOD VIBRATIONS

THE PENDULUM/降谷建志

Dragon Ashのボーカリスト降谷建志の2枚目となるソロアルバム。ピアノやストリングスを入れて叙情感を増したサウンドが前作よりも前面に出ているものの、基本的には物悲し気な歌がメインとなるアルバム。彼のメロディーセンスをこれでもかというほど生かしたような美しいナンバーがメインとなっており、前作同様、繊細さと力強さを同居させた、彼らしいソロアルバムになっていました。

評価:★★★★

降谷建志 過去の作品
Everything Becomes The Music

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2018年12月 6日 (木)

一時代を築いたプロデューサーの総括的コンピ

今年1月、不倫疑惑報道から突然の引退を表明し、シーンに衝撃を与えた小室哲哉。ご存じの通り、90年代後半に彼がプロデュースしたミュージシャンが続々と大ヒットを記録し、J-POPシーンに大きな痕跡を残しました。その彼がプロデュースを手掛けた数多くの楽曲の中から選りすぐりの曲を集めたコンピレーションアルバムがリリースされました。

Title:TETSUYA KOMURO ARCHIVES "T"

Title:TETSUYA KOMURO ARCHIVES "K"

それぞれ4枚組ずつ計8枚100曲にも及ぶボリューム感満点のコンピレーションアルバム。まだTM NETWORKとして活動する以前のSPEEDWAY時代の曲や、その時代に提供した数少ないナンバー「愛しのリナ」から、小室哲哉の名前が一躍知れ渡った「My Revolution」や、渡辺美里、TM NETWORKの曲、そしてご存じ小室ファミリーと呼ばれた安室奈美恵、TRF、華原朋美、hitomi、globeなどの小室系ブーム時代の大ヒット曲、さらに低迷期、詐欺事件を経てリリースされた2010年代の作品群など、最初期から最近の楽曲まで、まさに小室哲哉の作品を網羅的に収録したアルバムになっています。

まとめて聴くとそれぞれ約4時間、計8時間にも及ぶ長さ。まさにたっぷりと小室哲哉の曲を聴くことが出来ます。そして彼の曲を聴くとあらためて思うのですが、プロデューサーとしても数多くの曲を提供してきた彼ですが、どちらかというと職人肌というよりも天才タイプであることを強く感じます。

これは以前からよくわかっていたことなのですが、小室作品は一度聴くとすぐに彼の作品だとわかる手癖が非常に強くついています。具体的に言えば、ピアノで言うところの黒鍵を多用したフレーズ、サビでの転調、同じ音の連打を多用したメロディーなど、小室哲哉の熱心なファンでなくてもおそらくは「これは小室哲哉の曲だ」とすぐわかるよな傾向が彼の作品では非常に強く見て取れます。

例えば同じく数多くの楽曲提供を行っている筒美京平やつんく♂はよくよく聴くと音楽性の方向性はわかるのですが、パッと聴いた感じだと彼らならではの手癖はあまり強くなく、完全に裏方として徹しています。そういう意味では彼らは「職人肌」タイプと言えるでしょう。しかし一方、小室哲哉の楽曲はどんな曲だろうと彼の曲にはぬぐいきれない彼の癖が残っています。そういう意味で彼はまさに職人というよりも天才肌。だからこそ小室哲哉の楽曲が一時期、大いに時代にマッチして一時代を築いたのでしょうし、また同時にあっという間に飽きられて一気にブームが去って行ったのでしょう。

実は最近、この「小室らしい」と言われることを彼自身が嫌がっているということを知りました。うーん、しかし、彼の場合、どうしてもぬぐいきれない小室らしさが楽曲にビッシリとこびりついているんですよね・・・。彼自身もそれをよくわかっているからこそ、そういう発言に至ったのかもしれませんが・・・ある意味、天才ゆえのジレンマといったところなのでしょうか。

さてそんな彼の仕事の総括ともいえる今回のコンピレーションアルバム。大ヒットしたナンバーが数多く収録されている一方、出来るだけ数多くのシンガーの曲を収録したそうで、結果として思ったより小室系ブームの時代の曲が少なく、一方で最近の曲が比較的多い内容となっていました。

その収録曲の方向性としてはわからないこともないのですが・・・正直言うと、さほどヒットしておらず、曲の出来としてもいまひとつな2010年代の曲が多すぎるような印象を受けます。一方で小室系ブームの時代のヒット曲ってもっとあったんじゃない?と思いつつ、あらためて当時のヒット曲を考えると、確かにそれなりには網羅されている選曲になっており、あらためて小室系ブームがいかに瞬間最大風速的に吹き荒れたということを実感させられます。

ただ、例えば安室奈美恵の「Chase The Chance」、trfの「寒い夜だから・・・」、華原朋美の「keep yourself alive」などが未収録となっており、もうちょっと小室系ブームの頃の大ヒット曲が収録されていてもよかったのでは?とも思います。全体的にちょっと2010年代の作品が多すぎ、HIKAKIN&SEIKIN「YouTubeテーマソング」やらAOAの「WOW WAR TONIGHT~時には起こせよムーヴメント girls ver.」とか、これ、曲の出来を含めて収録する必要あったのか?とも思ってしまい、また、ここらへん、なんとなく「大人の事情」を伺えてしまいました。

もっとも大賀埜々、円谷憂子、未来玲可、tohko、翠玲など小室系末期に時代の徒花のように出てきて、小室系ブームの中でそれなりに注目されたもののあっという間に消えて行った女性シンガーなど、リアルタイムで知っていた身としてはちょっと懐かしく感じられ、またここらへんの曲が収録されているのはうれしくも感じられたりして。ここらへんは久しぶりに聴いて懐かしさも感じました。

そんな訳でボリューミーなコンピレーションながらも少々不満に感じる部分も少なくなかったコンピ盤。もっとも、小室哲哉の才能については強く感じることが出来るアルバムだったとは思います。しかし、これで本当に引退しちゃうのかなぁ・・・。不倫疑惑についてはいろいろな噂もあるのですが、ただそれを差し引いても、これで消えてしまうのは本当に惜しい才能なだけに、是非、何年かしたら「引退表明」など知らん顔して復活してほしいのですが・・・お願いします!

評価:どちらも★★★★


ほかに聴いたアルバム

FILM/GOING UNDER GROUND

インディーズでのCDデビューから今年で20年(!)たったGOING UNDER GROUNDの新作。一時期に比べて人気の面では落ち着いたものの、いまなおほぼ1年に1枚のペースでアルバムをリリースし続けるなど、積極的な活動が目立ちます。もっともバンドメンバーは気が付けば3人になってしまいましたが・・・。

そんな彼らの最新作は安定感があり安心して聴ける一方で、良くも悪くも大いなるマンネリ。いつも通りの郷愁感ある、心にキュンと来るメロディーにアコギやピアノを用いつつ、基本的には分厚いバンドサウンドが魅力的なサウンド。ファンにとっては壺をきちんとついた作品なのでそれなりに満足感はありそうですが、代わり映えしない内容となっています。まあ下手に変な挑戦をしないほうがいいんでしょうが・・・。

評価:★★★★

GOING UNDER GROUND 過去の作品
おやすみモンスター
COMPLETE SINGLE COLLECTION 1998-2008
LUCKY STAR
稲川くん
Roots&Routes
Out Of Blue
真夏の目撃者

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2018年12月 3日 (月)

ファン投票の傾向も興味深い

今年、結成20周年を迎えたロックバンドストレイテナー。そんな彼らのオールタイムベストがリリースされました。

Title:BEST of U -side DAY-
Musician:ストレイテナー

Title:BEST of U -side NIGHT-
Musician:ストレイテナー

彼らの曲の中からファン投票によって選ばれた25曲にメンバーが選んだ4曲を追加。さらに新曲1曲を加え、計30曲を2枚のアルバムに収録したベスト盤。5年前にベスト盤「21st CENTURY ROCK BAND」がリリースされたばかりですが、ただファン投票による選曲ということもあり、まさに決定版的なベストアルバムとなっています。

今回、この2組のアルバムは主に比較的明るい雰囲気の曲が「side DAY」に、暗めの雰囲気の曲が「side NIGHT」に収録されたよう。ただ全体的に両者の差がそれほど大きい訳ではなく、基本的に彼ららしいストレートなギターロックナンバーが並んでいます。

このファン投票の結果というのもなかなか興味深く、1位を獲得したのが「REMINDER」だとか。確かにストレイテナーらしいエッジの利いたギターサウンドに、疾走感あるリズム、ちょっと切なさを感じるメロディーラインと、ストレイテナーらしさを体現しつつインパクトある作品になっており、まあ1位というのは納得感があります。続く2位は「シーグラス」ですが、こちらは疾走感あるギターロックなのですが、叙情感ある歌詞と切ないメロが特徴的で比較的ポップテイストの強いナンバー。こういう切ない感じのメロディーラインの曲がファンには人気なのでしょうか?

個人的には「KILLER TUNE」のようにガレージサウンドでへヴィーなナンバーが好きなのですが、この曲も20位と人気投票で上位とはいえ、今回選ばれた中ではさほど上位ではありません。またちょっと意外だったのはテレビ東京系ドラマ「勇者ヨシヒコと悪霊の鍵」の主題歌にもなった「From Noon Till Dawn」が圏外で、ホリエアツシの得票によってえらばれていたということ。また、日向秀和の得票で選ばれた「The World Record」も英語詞でダンサナブルなリズムにエッジの利いたギターがカッコいいナンバーなのですが、こちらも全体の投票では40位と圏外。比較的メロディアスなポップス寄りの曲が多く、個人的にはストレイテナーの英語詞の曲、へヴィーなバンドサウンドを聴かせる曲が好きなのですが、そちらはファン投票であまり上位には入ってきていなかったようです・・・。

そんなこともあってか、このベスト盤を聴くとポップテイストが強いシンプルなギターロックバンドという印象を強く受けます。今回のベスト盤に限らずストレイテナーは、それなりにインパクトあるメロデイーとカッコいいバンドサウンドを聴かせてくれるのですが、今一歩、パンチに欠ける部分があるというイメージがありました。そして今回のベスト盤を聴くと、残念ながらそのイメージをさらに強く受けてしまいました。しっかりと聴かせるインパクトあるメロディーの曲も少なくありませんし、間違いなくいいバンドだと思うのですが、どうももう一歩、物足りなさも否めない、そんな印象を受けてしまったベスト盤でした。

評価:どちらも★★★★

ストレイテナー過去の作品
Immortal
Nexus
CREATURES
STOUT
STRAIGHTENER
21st CENTURY ROCK BAND
Resplendent
Behind The Scene
Behind The Tokyo
COLD DISC
Future Soundtrack


ほかに聴いたアルバム

MeRISE/Sabão

元Hysteric BlueのTamaとたくやによる新バンドSabão。「さばお」と読みたくなるのですが、ポルトガル語で「シャボン」が正式名称。Hysteric Blueというと1999年に「春~spring~」「なぜ・・・」が大ヒットを飛ばした3人組バンドで2003年に活動を休止したのですが、その後、メンバーのナオキが強姦・強制わいせつ罪で捕まるというポップス史上、類のない犯罪を起こし、バンドも解散。そのため、Hysteric Blueの活動再開も無理な状況なうえ、ヒット曲を流すのも困難な状況になっています(とはいえ先日ラジオで、普通にHysteric Blueの「春~spring~」が流れてきて、「あ、もういいんだ」と思ったんですが)。

そんな訳なので残されたメンバー2人で結成されたSabãoは、使われにくくなったHysteric Blueの曲を再生するという役割もあるようで、「春~spring~」「なぜ・・・」もカバー。初のアルバムとなる本作でも収録されています。そのほかも「ふたりぼっち」「Dear」「グロウアップ」とHysteric Blueの曲が並んだ本作。もっとも、その後に続くSabãoのオリジナル曲も基本的にはHysteric Blueの延長線上のような曲ばかりで、事実上、Hysteric Blueの再結成のような内容になっています。Hysteric Blueが好きだった方なら、とりあえずは要チェックのアルバムです。

評価:★★★★

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