oasis全曲を豊富なエピソードに絡めて紹介
今年、再結成を果たし、先日の日本公演も大盛況で大きな話題となったoasis。その再結成や来日公演に合わせて、oasis関連の書籍がいろいろと販売されています。その中でも面白そうなもの、手軽に読めそうなものをピックアップし、いろいろと読んでいるのですが、今回紹介するのは、そんな中、私が読んでみたoasis関連の書籍の1冊です。
「What's the story? オアシス全曲解説」。NMEの音楽ジャーナリスト、テッド・ケスラーとヘイミッシュ・マクベインによる著書。タイトル通り、oasisが過去に発表した全曲を取り上げて、1曲1曲解説を加えた1冊。「全曲解説」という建付けは伊達じゃなく、アルバムやシングルのカップリング曲はもちろん、日本盤のみでボーナストラックに収録された曲も網羅。まさに文字通り、全曲取り上げて、1曲1曲に解説を加えています。
それだけにかなりボリューミーな1冊で、全452ページ、ハードカバーの本書。そんな読み応えのある一方、文章は比較的平易で読みやすく、スラスラ読める、読みやすい内容に。これは訳者の力でもあるのかもしれませんが・・・。そして、エピソード満載の内容で、個人的には、ここ最近読んだoasisの関連書籍の中で、ダントツで面白い1冊だったと思います。
全曲解説ということで、oasisの楽曲が発表順に並び、それぞれの解説がついている内容となっています。ただ、解説といっても音楽的な分析とかはほとんどなく、基本的にそれらの曲にまつわるエピソードが並んでいる構成。また、楽曲解説の間に、ライブや記者会見など、著者2人がoasisと関わった「現場」でのレポート記事も載っており、こちらもエピソード満載となっています。
このエピソードが非常におもしろく、ドキュメンタリー映画「オアシス:スーパーソニック」で紹介されたエピソードも引用されているのですが、その一方、初耳のエピソードも満載。初期のエピソードはもちろん、本書ではoasis解散まで追った作品になっているため、「スーパーソニック」では取り上げられていない時期のエピソードも多く、特にoasis後期については、自分も一時期に比べて「熱」が醒めていたこともあって、逐一話題を追っていなかったため、今回、はじめて知ったようなエピソードも数多くありました。また、イギリス国内で、CMやテレビ番組などでどのように取り上げられてきたのか、というのは日本でも紹介されないケースが多いため、日本だとあまり知られていないような曲が、本国では人気があったり、また、他のミュージシャンのカバーや、ソロとなってからのノエル、リアムがライブなどでレパートリーに入れた曲もコメントされており、意外な曲が人気だったり、評価が高かったりして、日本での見方とは違った視点での取り上げられ方もまた、新鮮味を覚えました。
また、非常に興味深かったのは、それぞれの曲の元ネタになりそうな曲、「パクリではないか」と話題になった似たようなタイプの曲、影響を受けたような曲も紹介されているのもおもしろいところ。特に元ネタや似たようなタイプの曲は、日本のメディアでは取り上げられることがほとんどないため、こういうところをズバズバ指摘するのも、いい意味でイギリスらしいな、とも感じます。また、元ネタや影響を受けたような曲に関しては、ちょっと意外なミュージシャンや日本ではあまり知名度が高くないバンドなども少なくなく、これを機に、oasisに影響を与えたミュージシャンとしてチェックしてみようかな、とも感じました。
そして、こちらも興味深かったのが、日本に関するエピソードも結構取り上げられていること。日本のメディアでのインタビューなどで日本のファンについて言及することは多いのですが、あくまでも日本のファン向けのファンサービスと思っていましたが、特に結成初期において、英語の通じない、イギリスから遥か遠い島国の日本で熱烈に受け入れられたことは、メンバーにとっても相当うれしかったようです。特に、oasisがはじめてアンコールに応じたライブが名古屋のクラブクアトロでのライブだったそうで、名古屋が意外な形で登場してきたのもちょっとうれしかったりします。
そんな訳で、非常にボリューミーな内容でしたが、読み応え満載の1冊。oasisファンならば、まずは読むべき1冊だと思います。oasisに関しては、アルバムはもちろん全曲聴いているのですが、シングルのカップリングについては聴いていない曲も多く、これを機に、あらためてoasisの楽曲を全曲聴きなおしてみたくなりました。oasisの魅力を再認識できたのはもちろん、これだけ多くのエピソードを曲にからめて紹介した、著者2人のジャーナリストとしての力量に感服した、そんな力作でした


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