仲のよいメンバー同士の会話が楽しい
今回は最近読んだ音楽関連の書籍の感想です。
ご存知TM NETWORKの木根尚登によるドキュメンタリー小説「電気じかけの予言者たち-再起動編-」。木根尚登はTM NETWORKのメンバーやソロとしての活動のほか、以前から小説家としても活躍。彼の処女作「CAROL」は、TM NETWORKの同タイトルのアルバムにリンクした作品で、当時大きな話題となりました。その後も「ユンカース・カム・ヒア」が映画化されたり、コンスタントに作品を発表。ノンフィクションの作品としては、ここ20年ほど新作はないのですが、それまでに数多くの小説を発表してきています。
この「電気じかけの予言者たち」ももともとTM NETWORK活動を描いたドキュメンタリー小説として、いままで4作が刊行されており、本作が5作目。本作は2018年に起こった、小室哲哉の引退宣言からスタート。その後、コロナ禍での活動休止などを挟んで、2022年の「intelligence Days」ツアー、2023年の「DEVOTION」ツアー、そして40周年の「YONMARU」ツアーに至るまでの出来事を、木根尚登の視点からドキュメンタリー仕立てで描いています。
木根尚登については、アルバムは基本聴いているし、ソロでのライブにも以前足を運んだことがあるし、個人的に間違いなくTMのメンバーとしてもソロとしても好きなミュージシャンの一人なのですが、ただ彼の書く小説についてはいままで一度も読んだことがありません。リアルタイムで「CAROL」がリリースされた頃、クラスの女の子が話題にしていたことは覚えていますが、その頃はまだTMのファンでもなかったので、私がその小説を読むことはありませんでした・・・。
そんな訳で今回はじめて木根尚登の小説を読んでみたのですが、まず率直に言ってしまうと、小説としてはどうにも拙い印象が・・・・・・。文体にも特に工夫は見られませんし、内容もほぼ、メンバー同士やミーティングなどの出来事をそのまま会話文として載せているだけ。物語は前述の通り、小室哲哉の引退宣言からスタートするのですが、それに関して木根尚登本人や小室哲哉の心境を綴ったような文章はありませんでしたし、また、小室哲哉の復帰についても特に思いが語られることはありません。小説に関しては正直、「ライトノベル」の範疇といった印象を受けました。
ただし一方、この文体が特にこのドキュメンタリー小説の中では効果を発していると思われる部分はあり、特にメンバー同士やスタッフとの会話については、つまらない(笑)ジョーク部分も含めて会話文がそのまま記載されており、その結果、メンバー同士の関係性やその場の雰囲気もそのまま伝わってくるような文章に仕上がっていました。ひょっとしたら、この「会話文そのまま」という軽い書体は、このような雰囲気を出すため、わざと使用したのでしょうか?
そして、その「会話」を読んで感じたのがメンバー同士、仲がいいなぁ、ということ。かなり軽快に、ジョークを含んで気の置けない会話を交わしており、その良い関係性は小説で描かれている会話を通じても伝わってきます。また、この小説を読むと、木根尚登って、人脈的にも興味的にもやはり基本はフォークの人なんだ、ということを感じます。特にTMの活動休止中でのソロ活動ではその傾向が強くなっており、そんな彼がTMのようなエレクトロユニットに所属している点が、TMのユニークさなんだろうなぁ、とも感じました。
また本作では、特に中盤以降はツアーの模様を収録しています。選曲やアレンジに関するエピソードも満載。ここらへんのツアーについては、ライブアルバムが配信でもリリースされていますので、ライブアルバムを聴きながら読めば、より楽しめるかも。
ちょっと軽い文体は好き嫌いありそうですが、TM NETWORKのファンならおそらく楽しめるであろう1冊。なによりもメンバー3人の仲のよい会話は、ファンにとってはにやにやしながら読み進められるのではないでしょうか(笑)。



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