書籍・雑誌

2026年2月24日 (火)

仲のよいメンバー同士の会話が楽しい

今回は最近読んだ音楽関連の書籍の感想です。

ご存知TM NETWORKの木根尚登によるドキュメンタリー小説「電気じかけの予言者たち-再起動編-」。木根尚登はTM NETWORKのメンバーやソロとしての活動のほか、以前から小説家としても活躍。彼の処女作「CAROL」は、TM NETWORKの同タイトルのアルバムにリンクした作品で、当時大きな話題となりました。その後も「ユンカース・カム・ヒア」が映画化されたり、コンスタントに作品を発表。ノンフィクションの作品としては、ここ20年ほど新作はないのですが、それまでに数多くの小説を発表してきています。

この「電気じかけの予言者たち」ももともとTM NETWORK活動を描いたドキュメンタリー小説として、いままで4作が刊行されており、本作が5作目。本作は2018年に起こった、小室哲哉の引退宣言からスタート。その後、コロナ禍での活動休止などを挟んで、2022年の「intelligence Days」ツアー、2023年の「DEVOTION」ツアー、そして40周年の「YONMARU」ツアーに至るまでの出来事を、木根尚登の視点からドキュメンタリー仕立てで描いています。

木根尚登については、アルバムは基本聴いているし、ソロでのライブにも以前足を運んだことがあるし、個人的に間違いなくTMのメンバーとしてもソロとしても好きなミュージシャンの一人なのですが、ただ彼の書く小説についてはいままで一度も読んだことがありません。リアルタイムで「CAROL」がリリースされた頃、クラスの女の子が話題にしていたことは覚えていますが、その頃はまだTMのファンでもなかったので、私がその小説を読むことはありませんでした・・・。

そんな訳で今回はじめて木根尚登の小説を読んでみたのですが、まず率直に言ってしまうと、小説としてはどうにも拙い印象が・・・・・・。文体にも特に工夫は見られませんし、内容もほぼ、メンバー同士やミーティングなどの出来事をそのまま会話文として載せているだけ。物語は前述の通り、小室哲哉の引退宣言からスタートするのですが、それに関して木根尚登本人や小室哲哉の心境を綴ったような文章はありませんでしたし、また、小室哲哉の復帰についても特に思いが語られることはありません。小説に関しては正直、「ライトノベル」の範疇といった印象を受けました。

ただし一方、この文体が特にこのドキュメンタリー小説の中では効果を発していると思われる部分はあり、特にメンバー同士やスタッフとの会話については、つまらない(笑)ジョーク部分も含めて会話文がそのまま記載されており、その結果、メンバー同士の関係性やその場の雰囲気もそのまま伝わってくるような文章に仕上がっていました。ひょっとしたら、この「会話文そのまま」という軽い書体は、このような雰囲気を出すため、わざと使用したのでしょうか?

そして、その「会話」を読んで感じたのがメンバー同士、仲がいいなぁ、ということ。かなり軽快に、ジョークを含んで気の置けない会話を交わしており、その良い関係性は小説で描かれている会話を通じても伝わってきます。また、この小説を読むと、木根尚登って、人脈的にも興味的にもやはり基本はフォークの人なんだ、ということを感じます。特にTMの活動休止中でのソロ活動ではその傾向が強くなっており、そんな彼がTMのようなエレクトロユニットに所属している点が、TMのユニークさなんだろうなぁ、とも感じました。

また本作では、特に中盤以降はツアーの模様を収録しています。選曲やアレンジに関するエピソードも満載。ここらへんのツアーについては、ライブアルバムが配信でもリリースされていますので、ライブアルバムを聴きながら読めば、より楽しめるかも。

ちょっと軽い文体は好き嫌いありそうですが、TM NETWORKのファンならおそらく楽しめるであろう1冊。なによりもメンバー3人の仲のよい会話は、ファンにとってはにやにやしながら読み進められるのではないでしょうか(笑)。

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2026年1月26日 (月)

独特なセレクションにジャズの「奥深さ」を感じる

今回は、最近読んだ音楽関連の書籍の感想です。

「20世紀ジャズ名盤100」。音楽評論家で、自らもサックス奏者としても活躍する大谷能生による著作。以前紹介した「日本語ラップ名盤100」「ヒップホップ名盤100」と同じシリーズの1冊となります。

本書は21世紀から見た20世紀の100年間のジャズを振り替えるというコンセプトで選ばれた100枚のアルバム。まず、この100枚ですが、非常にユニークなセレクトになっています。この手のジャズの名盤を紹介する本は数多く出ていますが、おそらく、そこで選ばれているアルバムと、本書で紹介されているアルバムは大きく異なります。もちろん、チャーリー・パーカーやマイリス・デイビス、ビル・エバンスやソニー・ロリンズ、ジョン・コルトレーンなど、おなじみのレジェンドたちもしっかりとフォローされています(ただ、そこで紹介されているアルバムは、「名盤ガイド」で紹介されそうなアルバムとちょっとずれていたりもします)。しかし、それ以上に、この手の名盤ガイドであまりピックアップされないような、というか、ジャズ初心者である私にとっては、名前を完全にはじめて聴くようなミュージシャンたちが数多く取り上げられています。

そんなミュージシャンたちが取り上げられている背景として、大谷能生がセレクトするジャズの基準が、ちょっと独特という点があります。まず本書の第1章「ポップスの古層としてのジャズ」では、戦前において、「ジャズ」という音楽がアメリカンポップの代名詞的に用いられていた時代を踏まえた上での「ジャズ」が紹介されています。そのため、一般的に今となっては「ジャズ」というジャンルからちょっと外れそうなミュージシャンも紹介されています。例えばベッシー・スミスやルイ・ジョーダンが紹介されていますが、おそらくこれらのミュージシャンは、今ではジャズではなくブルースの枠組みで紹介されることが多いと思います。ただ、今ではブルースと分化されたジャンルを含めて、当時は「ジャズ」とひとまとまりとなっていた音楽をひとくくりにすることにより、戦前の黒人ポップスの幅広さ、奥深さを浮き上がらせようとしている点が、本書の大きな特徴となっています。

もうひとつの要素が、2章以降で見受けられる、「先駆的、実験的な音楽としてのジャズ」という基準でした。正直、ここで取り上げられているアルバムのほとんどが、私が聴いたことないアルバムばかり。そのため、詳しいことはわかりませんが、解説文を読む限り、結構、フリージャズのミュージシャンが多く取り上げられていたような印象を受けます。フリージャズというジャンルは、今でも賛否あるジャンルであり、そのわかりにくさもあって、この手の「ジャズ名盤」的なアルバムではさほど取り上げられない印象も受けます。ただ、本書ではそんな実験的なジャズも多く取り上げられているような印象を受けます。その結果としておそらく著者としては、ともすれば現在、「大人のムーディーな音楽」と捉えられがちなジャズというジャンルが、実は非常に挑戦的、先駆的なジャンルであるという点を強調しようとしているように感じました。

結果として、この手の名盤ガイドは通常、初心者向けであるケースが多いのですが、正直本書に関しては、決して初心者向けではありません。むしろ、完全にジャズの初心者が、最初に聴くアルバムの参考として本書を選ぶと、若干、困惑しそうな印象も受けます。ある程度、一般的に言われるようなジャズの名盤を一通り聴いた後に、ジャズの他の側面を知るためにチェックすべき次の100枚、そんな印象を受ける1冊でした。

ただ一方で、初心者向けではない1冊ですが、文体については比較的読みやすく、ある程度固有名詞が多く登場してくる点、途中ひっかかる部分はあるものの、ジャズの初心者でも読みやすい内容になっていたように感じます。ここらへんは著者の文才による部分が大きいようにも感じるのですが・・・。

ちなみに本書のもうひとつ大きな特徴として、日本のジャズミュージシャンが多く取り上げられている点があります。戦前はあきれたぼういずという、今となってはあまりジャズというジャンルで取り上げられなさそうなヴォードヴィルグループが取り上げられていますし、戦後も阿部薫や山下洋輔など、日本のジャズシーンを代表するミュージシャンなれど、洋楽メインの名盤ガイドではあまり取り上げられないミュージシャンたちも多く取り上げられています。日本のジャズを紹介する名盤ガイドは正直少ない印象も受けるため、この点はちょうどよい名盤ガイドと言えるかもしれません。

かなり独特なセレクションで、この手の名盤ガイドに飛びつきそうな初心者にとっては必ずしもお勧めできる1冊ではないかもしれませんが、通常の名盤ガイドとはまた異なるジャズの側面を垣間見ることの出来る100枚で、一言で「ジャズ」という名前で括られても、その音楽性には非常に幅広いものがあるというジャズの奥深さを感じられる名盤ガイドになっていました。私も正直、ジャズに関してはあまり詳しくないので、この名盤をもとにいろいろ聴いていこうかどうかはちょっと躊躇するのですが・・・それでもまだ知らない「ジャズ」の奥深さを感じる、非常に興味深い1冊でした。

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2026年1月23日 (金)

60年代ポップグループの充実ぶりが目立つ

今回は最近読んだ音楽関連の書籍の感想です。

このサイトで何度か紹介しているMUSIC MAGAZINE増刊アルバム・セレクションシリーズ。前回まで、「60年代ブリティッシュ・ロック」「70年代ブリティッシュ・ロック」「80年代ブリティッシュ・ロック」とイギリスのロックのシリーズが続いていましたが、今回発売されたは「60年代アメリカン・ロック」。イギリスのロックがひと段落したのは、続いてはアメリカのロックのシリーズが続きそうです。

60年代といえば、いわゆるブリティッシュ・インヴェンションが音楽シーンに吹き荒れた頃。ビートルズをはじめとしたブリティッシュ・ロック勢の影響により、50年代までのアメリカのロック勢が一掃された頃。本書でもTHE 4 SEASONSのアルバムレビューの項に「まったく動じることがなかったのは一連のモータウン勢と、ビーチ・ボーイズと、そしてフォー・シーズンズだけだったとも言われる。」と記載されていますが、まさにブリティッシュ・ロック勢が世界のポップシーンを席巻した時期だったりします。

このアルバム・セレクションシリーズ、構成としては前半は「ARTIST PICKUP」として、この時期の重要なミュージシャンを個別に取り上げ、略歴と代表作の紹介、後半は年代ごとに分けて、その時代のその他のミュージシャンたちのアルバムを、基本1ミュージシャン1アルバムごとに紹介しています。今回、この「60年代アメリカン・ロック」を「60年代ブリティッシュ・ロック」と比較したのですが、その差が如実にあらわれているのが前半の「ARTIST PICKUP」。「60年代ブリティッシュ・ロック」では、実に21組ものミュージシャンたちがこのコーナーで取り上げられていますが、「60年代アメリカン・ロック」で取り上げられているのはわずか10組。それだけ、この時期に大きな影響を与えたミュージシャンたちが、イギリスとアメリカで大きな差があることがわかります。

一方、本書で非常に魅力に感じたのは、後半、年代別のアルバム紹介。前半の「ARTIST PICKUP」のコーナーが薄かった反動という面もありますが、この時期、ブリティッシュ・インヴェンションの中でもアメリカで活躍していたミュージシャンたちが多く取り上げられています。特に60年代前半に活躍したポップグループの紹介の充実ぶりには目を見張るものがありました。

今回、本書を手掛けたのは音楽評論家の萩原健太。もともと彼は、ビートルズ登場以前のポップシーンに関しても深い知見のある評論家で、以前にも、その時代のポップミュージシャンたちを取り上げた彼の著作「グレイト・ソングライター・ファイル 職業音楽家の黄金時代」を紹介したことがありますが、まさにそんな彼の評論家としての知見が反映された1冊となっています。

特にこの時期のアメリカのポップミュージシャンたちは、「ロックの歴史」を語る際に、あまりピックアップされることはありません。冒頭に、ブリティッシュ・インヴェンションの中、アメリカで動じることのなかった数少ないバンドであるフォー・シーズンズでも、今となっては彼らのアルバムが「ロックの名盤」として取り上げられることはあまりないように思います。ただ、本書では、今となってロック、あるいはポップスの歴史の中であまり語られることのないミュージシャンのアルバムについてもしっかりと取り上げられており、ブリティッシュ・インヴェンションの中、アメリカの音楽シーンがイギリス勢に席巻されたと言われても、数多くのアメリカのミュージシャンたちが活躍していたことがわかりました。

これを機に、ブリティッシュ・インヴェンションの影に、なかなか取り上げられる機会の少ない60年代のアメリカのロックシーンについても追いかけてみたくなる1冊。おそらく今後「70年代アメリカン・ロック」「80年代アメリカン・ロック」と発刊されると思うのですが、今後もどんなミュージシャンに出会えるか、楽しみです。

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2026年1月11日 (日)

今の視点から見た名盤100枚

今回は最近読んだ音楽関連の書籍の紹介です。

イースト・プレスから発刊された、タイトル通り、HIP HOPの名盤100枚を紹介する「ヒップホップ名盤100」。「ミックステープ文化論」や「誰がラッパーを殺したのか?」などの著書でも知られる小林雅明による著書。以前も紹介した「日本語ラップ名盤100」と同じシリーズの名盤ガイドということになります。

この手の名盤ガイド、いろいろとリリースされていますが、ヒップホップというジャンルを区切って紹介する書籍は、まだそれほど多くないように感じます。というのも、最大の要因が、ヒップホップというジャンルが、今なお進化を続けている現在進行形のジャンルであり、その都度、過去のアルバムについても評価が変化し、なかなか「名盤」という評価が固まらないから、ではないでしょうか。ロックだと、60年代や70年代あたりの名盤の評価はほぼ固まっていますが、ヒップホップではまだ流動的な側面があります。

そのため、このディスクガイドについてもあくまでも現在の視点を軸としたセレクトになっているそうで、特徴的なのは評価が固まりつつある黎明期のアルバムだけではなく、最近のアルバムについても積極的に取り上げられている点。2000年以降にリリースされたアルバムが42枚、010年以降にリリースされたアルバムが、21枚も収録されています。ここらへん、同じ「名盤ガイド」をリリースしても、2010年代以降はおろか、1990年代以降からも、ほとんど選ばれないロックと対照的な感があります。

そういう意味では非常に「現役感」のあるリストになっており、今のヒップホップリスナーにとっても、過去の歴史を巡ろうと考えた時に、比較的受け入れられやすい100枚という印象を受けます。それこそ、今を輝くケンドリックラマーもタイラー・ザ・クリエイターもしっかりと選ばれています。ちなみにトラヴィス・スコットは100枚の中では選ばれていませんが、「プラス1枚」的なコーナーで紹介されています。

もちろん、そんな大物ラッパーはしっかり捉えつつ、一方では最近ではNo NameやBilly Woodsといった売上面よりもコアなリスナーからの評価が高いミュージシャンたちもしっかりと紹介されています。メジャーどころからサブカル系まで、網羅的に収められた名盤集となっており、これをディスクガイドとしてヒップホップの歴史を学ぶにはピッタリではないでしょうか。

また、本書のもうひとつの特徴としてはアルバム評の中でリリックやライムを取り上げている点でしょう。英語話者ではない私たちにとって、リリックはまだしも、ライムについては、ヒップホップの中で非常に重要な要素であるにも関わらず、なかなか取り上げにくい分野だったりします。ただ本書では、しっかりとリリックを英語で取り上げ、その中でどのようにライムを踏んでいるのかを具体的に紹介しています。この点、非常に勉強になりましたし、あらためて、このリリックやライムの奥深さも感じることが出来ました。

ただ一方、本書を純粋なヒップホップ初心者にお勧めできるか、と言われると正直、ちょっと微妙な部分があります。というのも、アルバムの紹介の中でヒップホップの歴史について綴ってはいるのですが、体系的な解説ではないためわかりにくく、かつ固有名詞が何の紹介もなしにどんとん飛び込んでくるため、読みにくさも感じます。私も、ヒップホップの初心者ではないものの、正直なところ、ちょっと読みにくさを感じてしまいました。ヒップホップの歴史をある程度知っている人向けの1冊のようにも感じます。もしくは、ヒップホップの歴史など関係なく、単純に名盤のディスクガイドとして片っ端から聴いてやろう、という方向けかもしれません。

そんな訳で、盤のセレクトやリリック・ライムの記載にいろいろと参考になった一方、若干読む人を選ぶような1冊だったように思います。前述のように、純粋なディスクガイドとして使うか、ある程度ヒップホップの歴史を学んだあとに読むにはちょうどよい1冊かもしれません。ただ、今なおどんどん新たなミュージシャン、名盤が登場してくるヒップホップという分野。また10年くらいしたら、新たな名盤集も出してほしいなぁ。

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2025年12月28日 (日)

oasisをめぐるシーンを網羅的に紹介

今回も最近読んだ音楽関連の書籍の紹介です。

「オアシスとブリット・ポップ完全版」。音楽評論家の和久井光司責任編集による「完全版/攻略ガイド」シリーズの1冊。以前紹介した「ローリング・ストーンズ完全版」「ビートルズ以後のモダン・ポップ完全版」の同じシリーズとなり、本書での主役はoasisとなります。今年再結成を果たし、来日公演も行い話題となったoasisブーム便乗本の1冊と言った感じでしょうか。

ただ、oasisのアルバムだけを紹介するとボリュームが足りなかったため、本作では、oasisを主軸としつつ、彼らの音楽の直接のルーツを探り、また、oasisと同世代及びそれ以降のミュージシャンたちを紹介しています。具体的にはoasisをはじめとする、いわばブリット・ポップムーブメントの萌芽ともいえる、70年代終盤にスタートしたファクトリーレコーズをはじめとしたインディーロックからスタートし、その後のマッドチェスター・ムーブメント、シューゲイザーと続き、oasisへと流れ込み、その後はブリット・ポップのミュージシャンたちを紹介し、最後はTravisで締めくくっています。

この主に80年代から2000年代くらいまでのイギリスのインディーロックの流れの中のバンドを紹介している訳ですが、この流れについて、非常にわかりやすく解説されており、マッドチェスターやシューゲイザー、ブリットポップというインディーロックの歴史やその関係性について、あらためて非常に勉強となる1冊でした。

その要因として、書籍の構成が非常にわかりやすかったという点があげられます。以前紹介した「ビートルズ以後のモダン・ポップ完全版」では書籍の構成が統一されておらず、いまひとつわかりにくい内容になっていましたが、今回はそれぞれの時期のロックシーンについて解説したコラムの後、それぞれの時期を代表するミュージシャンたちについて項目を設けてその略歴と代表的なアルバムの紹介、さらにはその他のミュージシャンたちについてはまとめてディスクガイド的にアルバムを紹介するという流れとなっています。この構成は本書全体に統一されていたため、非常にわかりやすい構成となっていました。

また、以前の同シリーズで気になっていた、編集を担当した和久井光司のコラムですが、本書でも自分の経験談を第一に語るような、癖のある部分は若干ありましたが、以前紹介した2冊に比べると全体的にはさほど気になる程度ではありませんでした。おそらく、この80年代以降のイギリスのインディーロックやブリットポップ自体に、彼の興味が薄いんでしょうね。そのため、変な思い入れがないだけに、コラムの内容や紹介されるミュージシャンたちにも変な癖もなく非常にオーソドックスにまとまっており、それがまた本書がわかりやすくなっている大きな要因に感じました。

ただし、この時期のイギリスのロックシーンの中で大きな影響を与えたビック・ビートについては全く言及されていません。これはおそらく、和久井光司の好みの影響のような気もするのですが・・・。そのため、ケミカルブラザーズやプロディジーについては本書では取り上げられていません。確かに彼らはロックというよりはテクノのミュージシャンとも言えるので、本書のコンセプトからちょっとズレるという見方も出来るかもしれませんが・・・ここらへんのミュージシャンを省略したのは賛否がわかれるかもしれません。

一方、ちょっと気になったのは、このシリーズのコンセプトとして「完全版」となっており、必ずしも「名盤ガイド」となっていない点。これ自体は、シーンの流れを解説するために必要なアルバムをピックアップしている、という側面があるので問題ではないのですが、結果として初心者にとってはどのアルバムをまずは聴くべきなのか、というのがちょっとわかりにくかったように感じます。例えばPrimal Screamのアルバムとしては「Scremadelica」と「Give Out But Don't Give Up」が紹介されています。「Scremadelica」は文句ない名盤ですが、一方「Give Out~」については評価のわかれるアルバムであり、初心者が最初に聴くべきアルバムといった感じはしません。そこらへん、「まずは聴くべき名盤」のようなものにマークをつけるなどして、わかりやすくしてほしかったようには思いました。

またミュージシャンによって、90年代頃のアルバムしか取り上げらていないミュージシャンと、直近作まで取り上げられているミュージシャンがいて、そのバラツキも気になりました。特にPrimal Screamなどは、「Give Out~」の後も音楽性をいろいろと変化させており、この2枚だけではバンドを語るには物足りなさを感じますし、一方でSuedeやTravisなどは直近作まで取り上げられており、そのアンバランスさが気になりました。

ちなみにoasisに関しては、ソロ作含めてすべてのアルバム及びシングルも紹介。初心者にとってもうってつけのディスクガイドになっていますし、ファンにとってもあらためて彼らの作品を網羅的に知るには、そのボリュームも含めてちょうどよい内容となっています。また、シーンの最後に紹介されているのがTravisになっています。それはそれでなんとなくわかるような気もするのですが、個人的には終着点はColdplayのような気がするなぁ。これは完全に個人的な感想になるのですが。

そんな訳で、ちょっと気になる点はありつつも、80年代90年代のイギリスのインディーロックやブリットポップを知るのは必要な情報がちょうどよくまとまっており、非常によくできた1冊だったと思います。また、今回のブームでoasisを知った若い世代にとっても、oasisがどんな作品をリリースしているのか、またoasisがどのようなシーンの位置づけられるバンドなのか、oasisの次にはどんなミュージシャンを聴けばよいのか、よくわかる1冊となっており、入門書としてもお勧めできる1冊になっていたと思います。oasisファンやブリットポップ好きにも文句なしにお勧めできる1冊。個人的にもあらためて勉強になりました。

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2025年12月26日 (金)

一つの時代の終わりと始まり

今回は、最近読んだ音楽関連の書籍の紹介です。

何度かこのサイトでも紹介しているMUSIC MAGAZINE増刊アルバム・セレクションシリーズの最新刊「80年代ブリティッシュ・ロック」。いままで、「60年代ブリティッシュ・ロック」「70年代ブリティッシュ・ロック」とシリーズで続いていたので、それに続くシリーズとなります。監修は、「60年代ブリティッシュ・ロック」と同様、音楽評論家の大鷹俊一。ちなみに、「70年代ブリティッシュ・ロック」では彼ひとりの著述となっていましたが、本作では「60年代」同様、監修という立場に戻り、基本的に複数のライターがかき分けているスタイルとなっています。

スタイルとしてはいままでの「アルバム・セレクションシリーズ」と同様、前半は代表的なミュージシャンを取り上げて、その略歴と代表的なアルバムの紹介、後半は年代を区切って、それぞれの時期の代表的なアルバムの紹介というスタイルとなっています。

さて、この80年代のロックについて、大鷹俊一は同書の冒頭でこう記載しています。「ブリティッシュ・ロックにおける1980年代とは、一つの終着点であり転換点であった」。確かに私も、80年代以前と以降において、ロックというジャンルに大きな変動があったように思います。

ご存じの通り、先日、再結成したoasisが日本に来日し大きな話題となりました。その中で、ライブに来場したファン層の世代が非常に若かったという点がニュースになりました。これはもちろん、再結成が大きなニュースとなり、それをきっかけに若い世代が押し寄せた、という点もあるのでしょう。ただ一方で、現在日本で人気を集める多くのロックバンドが、oasisをはじめとした90年代の、いわゆるオルタナ系ロックバンドの影響を強く受けており、oasisの奏でるサウンドが若い世代においても耳なじみやすかった、という点も大きいのではないでしょうか。

実際、このアルバムで紹介されている80年代以前に活躍したバンドについては、そのサウンドについて「昔の音」という印象を受けてしまいます。一方で、90年代以降のオルタナ系バンドの音は、今聴いても「今の音」として違和感なく楽しむことが出来ます。逆に言うと、90年代以降、ロックというジャンルに大きな地殻変動が起きていない、というネガティブな評価も出来てしまうのですが、確かに80年代という時代は、それまでのロックにおける終着点であり、そしてそれ以降のロックへの転換点ということを強く感じます。

そして、今回、冒頭の「ARTIST PICKUP」で取り上げられているバンドたちは、いわば80年代以前のバンドが比較的多かったように感じます。THE SMITHSやCOCTEAU TWINSのように、それ以降のシーンに大きな影響を与えているバンドも取り上げられていますが、一方で90年代以降に大きな影響を与えたMy Bloody ValentineやTHE STONE ROSESは年代別のコーナーで1枚アルバムが紹介されているのみ。もちろん、マイブラにしろローゼズにしろ、紹介するアルバムが(80年代には)1枚しかなかった・・・という点も大きいのかもしれませんが、全体的には90年代を見据えて、というよりも、これぞ80年代、というバンドがより前面に押し出されていたように感じました。

本書の構成としてそんな特徴を感じつつも、一方では全体的に取り上げているミュージシャン、アルバム共に、非常にオーソドックスに感じます。もともとこのシリーズ自体、比較的癖のない、王道的な内容という点も特徴的でした。ただ前作「70年代ブリティッシュ・ロック」に関しては、大鷹俊一ひとりの著述だったため、良くも悪くも彼の好みが前面に出ていた内容になっていました。それに対して本作では彼が監修の立場に戻ったことにより、より癖のない、入門書的にもピッタリな構成になっていたと思います。もちろん、ある程度詳しい方にとっても、シーンを捉えなおすという意味でもお勧めのアルバムだったと思います。あらためていろいろと聴いてみたいと思うミュージシャン、アルバムにたくさん出会えた1冊でした。

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2025年12月21日 (日)

ブラックミュージックとしてのテクノ/ハウス

今回は最近読んだ音楽関連の書籍の紹介です。

テクノ専門誌「el-king」の創刊者であり、音楽評論家の野田努による著書「ブラック・マシン・ミュージック」。デトロイト・テクノやシカゴ・ハウスなどについて、その成立する前段階から誕生の瞬間、そして発展までを記した通史的な1冊。もともと2001年に発刊しており、テクノやハウスの歴史を社会的な背景を含めて記載した「名著」として知られているそうですが、そのたび文庫本で再販。はじめて同書を読んでみました。

まず、ブラックミュージックという枠組みの中で、テクノやハウス史が取り上げられているという点に、新鮮なものも感じます。本書でも語られていますが、テクノはともすれば「白人」の音楽として語られるケースが多く、特にアメリカにおいては、ケミカル・ブラザーズやエイフェックス・ツインなどがテクノの代表格的に語られることが多いため、その印象が強く強くなってしまっています。確かに日本でも、テクノといえば、ケミカル・ブラザーズや、あるいはWarpレーベルのミュージシャンたちの名前があがることが少なくありません。

また、ブラックミュージックの歴史というと、ソウルやR&Bからはじまり、80年代90年代というとHIP HOPという流れで語られることがほとんどであり、そこにテクノやハウスが登場するケースは多くありません。ホワン・アトキンスやデリック・メイなど、本書でも重要ミュージシャンとして語られる「黒人」ミュージシャンたちはポップス史の中で取り上げられることも少なくありませんが、あまりソウルからHIP HOPへと続くブラックミュージックの枠組みで語られることは多くはありません。私が本書を知ったのは、ソウルやブルースの専門誌「Blue&Soul Records」の中での紹介文だったのですが、コアなブラックミュージックの専門誌で取り上げられた点は最初、意外に感じました。

ただ、実際に読み進めると、70年代から80年代のテクノ、ハウスの誕生にあたって、アメリカの黒人文化が色濃く影響している点、非常に興味深く読み進めることが出来ました。特にPファンクやサン・ラからの影響についても記述があり、間違いなくテクノ、ハウスがブラックミュージックの流れの中で色濃く絡み合っている点も興味深く感じます。一方で、その音楽的な源流としてクラフトワークやYMOの名前があがっており、こういう黒人文化の外部からの影響の強さについても面白さを感じます。クラフトワークはもちろん、YMOからの影響も多くあげられており、日本発のこの偉大なグループが、音楽界全体に与える影響の大きさを、あらためて感じることが出来ます。

一方で、ブラックミュージックとしてのテクノ、ハウスという内容ですので、日本で人気のあるテクノ四天王と呼ばれるケミカル・ブラザーズやUNDERWORLDなどのミュージシャン、あるいはエイフェックス・ツインやオウテカをはじめとするWarpのミュージシャンたちについては全く取り上げられていません。そちらの流れに興味がある方については、違う書籍を探す必要があるでしょう。ただ、本書はあくまでもブラックミュージックとして語られる内容ですので、それらのミュージシャンたちが登場しなくても、全体としての流れとして違和感はありません。

ちなみに本書のもうひとつの特徴として、過去の雑誌や文献から、ミュージシャン本人たちの経験談を積み重ねる形で話が進められていく点があげられるでしょう。日本人による著者の作品だと、この手の著書は理論的な説明文を積み重ねるようなケースが多く、こういう経験談を並べていくスタイルは、欧米の著書の作品でよくみられるスタイルで、著者が日本人というのはちょっと意外に感じました。ここらへん、現場のリアルがよくわかる内容である反面、バックグラウンドの知識がないような人にとっては若干わかりにくい部分があり、その点、本書はちょっと初心者にとっては読みにくい内容であることは否めません。実際、私もテクノやハウスの歴史については詳しいわけではないので、読み進めるのにはちょっと苦労しました。ただ、それでも少しずつ読み進めると、その内容は非常に興味深く、文庫本にして上下巻になるボリューミーな内容ながらも、最後まで楽しく読み進めることが出来ました。

そんな訳で、決して初心者向けではない1冊ではあるものの、「名著」としての評判も納得の、テクノやハウスが好き、興味があるのならばチェックしておきたい1冊。非常に読み応えがあり、そしてテクノ、ハウスについて知ることのできた1冊でした。

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2025年12月16日 (火)

読むライブドキュメンタリー

今回は、最近読んだ音楽関連の書籍の紹介です。

Umediary

電気を使いつつ、あくまでも人力で音を出す、ユニークな楽器を発明し、その楽器を演奏しながら音楽活動を行う明和電機。今年、そんな明和電機の社長が、楽器を大きなスーツケース2つだけにまとめ、軽自動車のラパンにそのスーツケースを詰め込み、ひとりだけで全47都道府県を回るライブ、「UMEツアー」を行いました。私も7月に行われた岐阜県大垣市でのライブに行ってきたのですが、本書は、そんな「UMEツアー」の模様を社長が日記形態でまとめた「UME日記」。文庫本サイズで全485ページからなるフルボリューム。一般書店ではなく明和電機の公式サイトでの販売となります。

本書は、まず最初、なぜ彼が、楽器をスーツケースにまとめるという発想が生じたのか、という話からスタートし、そのための苦労話、さらにはそこからなぜ「UMEツアー」という話になっていったか、そして「UMEツアー」を実現させるため、いかに苦労し、そして工夫を行ったかを記載しています。その後はツアーのエピソード。こちらは日記形式に各会場で行った出来事を記載し、社長が全国をいかにしてめぐっていったのかを記載した日記になっています。その内容はまさにライブドキュメンタリーとも言っていい内容で、本書は「読むドキュメンタリー」と言っていいかもしれません。

今回のライブツアーでは前後編にわけ、4月から8月にかけて全国をまわるツアーとなっていました。内容的には結構過酷なスケジュールで、ほぼ毎日ライブを行っては次の会場に向かう、という日程。そのため、今回、全国をめぐるライブツアーの模様をおさめた日記なのですが、ほぼライブの模様のみに終始しており、全国各地の名所・観光地等へ訪れることはありません。そのため、全国をめぐるツアーの模様を記載しているのですが、紀行文的な要素はなく、各地のライブの模様のレポート、さらにはライブで起こった楽器のトラブルの話がメインとなっています。

本書を読んでまず感じるのは、文章が非常に読みやすいという点。一言で言うと、非常に理路整然とした文章を書いており、好みの問題もあるのですが、とても簡潔的なわかりやすい文章を書いています。ちょっと理屈っぽい感じもするのですが、それも含めて読んでいてすんなりと頭に入ってくる文章なので、分厚い内容でありながらも最後までスラスラと読み進めることが出来ます。この点はさすがといった感じでしょうか。

また、この楽器のトラブルのドタバタエピソードも非常にユニークで印象的。明和電機というと、前述の通り、電気の力を借りつつ人力で音を出す、ユニークな楽器が特徴的なのですが、実に様々なトラブルがツアーの最中に起こっています。機械というのは、いろいろとトラブルが起こりえるんだな、ということを感じると共に、こういうトラブルをしっかり解決できる社長の力量に感心しますし、また、通常のライブでは、もっと大がかりなステージを、ほぼノートラブルで終えることが出来るという、当たり前ではあるのですが、それを「当たり前」にしてしまう、プロのステージ技術者の力量にも、読んでいて感心させられます。

そして読んでいて感じるのは、この過酷なツアー、社長はよく、大きな事故もなく終えられたなぁ、という点。読んでいると、予備日はほぼなしで、夜までライブを行い、翌日も朝早くから移動というスケジュール。場合によっては睡眠時間3時間程度での移動もあったりと、自分だったら寝不足での運転にちょっと怖さも感じてしまいます。日記の最後で「車をとりまくテクノロジーの進歩で(運転は)楽だった」とは書いているのですが・・・。社長は現在58歳。体力あるなぁ、と感心すると同時に、今ではまだまだ現役の年齢とはいえ、社長にとっても、これだけ大規模でハードスケジュールなツアーを行えるのは、そろそろ最後・・・という意識もあったのかもしれません。

前述の通り、特に各地の名物が登場する訳ではなく、ただひたすらライブを行うだけの内容なのですが、その中でも様々な出来事やトラブルがあり、それがまたとても楽しく読める、そんな内容となっていました。もちろん、7月に行ってきたライブも思い出しながら・・・。今回の「UMEツアー」に足を運んだ方ならば、是非とも読んでおきたい1冊。まさに読むドキュメンタリーな1冊でした。

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2025年12月 6日 (土)

日本の伝統音楽を知る

今回は、最近読んだ音楽関連の書籍の感想なのですが、ちょっと毛色が違う書籍・・・。いろいろな音楽を聴いている中で、日本の伝統的な音楽にも興味を抱きはじめ、特に雅楽に関しての入門書が出ていたのでちょっと読んでみました。

「マンガでわかる雅楽 鑑賞ポイントを押さえて楽しむ雅の極み」。タイトル通り、雅楽について漫画で解説した1冊。そもそも雅楽とはどういった音楽なのか、からスタートし、雅楽を楽しむポイントや鑑賞のツボ、主な演目の聴きどころや雅楽で使われる楽器の紹介、さらには雅楽に関する有名人の紹介まで、漫画で解説されています。

音楽としては、神社などで日本人なら多くの方が聴いたことあるものの、いまひとつどういう音楽なのかわからない日本の伝統音楽「雅楽」について詳しく解説されており、どんな特徴があるのか、どんな音楽があるのか、そもそもどういうルールで音が鳴っているのかを解説されており、聴きどころも含めて、初心者にとっては最初の一歩を詳しく解説されているのですが・・・ただ、正直言って、ちょっとわかりにくい。いや、これは同書の著者が悪い、という訳ではなく、やはり「音楽」、それも西洋音楽とは全く違うルールに基づく日本の伝統音楽を、文字や絵だけで解説するのはなかなか難しく、さらに専門用語も次々飛び出してくるため、読んでいてもなかなか頭に入ってこないという部分も少なくありませんでした。

あとちょっと賛否わかれそうなのがこの「マンガ」の部分で、水墨画をベースとした独特な画風は味があり、ある意味、雅楽というジャンルにもピッタリマッチしている反面、このような「解説漫画」ではどうしても少々抽象的な画風になってしまうため、ちょっとわかりにくい部分も。純粋に漫画としては味があって非常に良かったと思うのですが、いかんせん「解説する」という部分では賛否がわかれそうな画風だったように思います。

そういう訳で、ほぼ同時期に発売されていたので、もう1冊チェックした本があるのですが・・・

「雅楽のひみつー見かた・楽しみがわかる本-」。上記と同じく、雅楽の入門書的な1冊で、雅楽とはどういうものか、からスタートし、雅楽でつかわれる楽器の紹介や鑑賞のポイント、有名な雅楽の曲などが紹介されています。一貫してイラストだった「マンガでわかる雅楽」とは異なり、こちらは写真がふんだんに使われている内容で、写真なだけに正直、「マンガでわかる雅楽」よりはわかりやすい部分もあったように感じます。

写真に対する解説も、必要十分なボリュームといった感じで、比較的端的で読みやすい内容。そういう意味でも雅楽って何だろうと興味を持った人が最初に読む本としてはわかりやすかったように思います。まあ、ちょっとこのボリューム量で、1冊 2,500円強というのは、高めかな、とは思うのですが、写真がそれなりのボリューム掲載されているので、今時、仕方ない、といった感じでしょうか。

この2冊、それぞれ補完する部分もあるので、両方ともチェックしてみると、より雅楽とは何か、理解できるように思います。ただ、それを差し引いても、どうしても「音」を「文字や絵」で説明しているため、最後までわかりにくい部分があることは否定できないのですが・・・。また、それに伴って物足りなさを感じてしまったのは、雅楽というものをある程度理解して、じゃあ、次はどのように聴けばよいのか、という点がわかりにくい、という点でした。「マンガでわかる雅楽」ではいきなりカルチャー教室で楽器を演奏してみよう、という構成になっており、さすがにいきなり自ら楽器を演奏するというのはハードルが高いのでは・・・?「雅楽のひみつ」では、全国各地の主な神社での演奏会が紹介されていたのですが・・・こちらも日程があわないと、なかなか足を運べません。

次の一歩として、CDやDVDなど、あるいは、今風にYouTubeの公式チャンネルの紹介があっても良かったのではないかなとも思います。その点、これを読んだけど、次はどうすればいいの?という疑問に答えておらず、ちょっと残念に感じました。ただ、それでいろいろ調べたんですが、CDやDVD、あるいはYouTubeにしても、どうも「これは」というものが少ないんですよね・・・。ここらへん、どうしても伝統音楽を聴く人の少なさが影響しちゃうのかもしれませんが・・・。

そんな訳で、いろいろと難しく、わからない部分も残ってしまったのですが、雅楽についていろいろと知れた2冊。次はどこかの神社などでの演奏会に足を運んで、実際に雅楽を聴いてみたいところ。前述の通り、誰でも音楽自体は聴いた事あるであろうジャンルのため、興味がある方はこの2冊を機に、聴いてみてもいいのではないでしょうか。音楽の世界がより広がりそうです。

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2025年11月25日 (火)

「ポップ」なバンドを軸にポピュラーミュージックの歴史を概観するディスクガイド

今回は、最近読んだ音楽関連の書籍の紹介です。

「ビートルズ以後のモダン・ポップ完全版」。音楽評論家の和久井光司責任編集による河出書房新社から出版されている「完全版/攻略ガイド」シリーズの1冊。以前、ローリング・ストーンズの作品を網羅し、紹介した「ローリング・ストーンズ完全版」を紹介しましたが、本作はそれと同じシリーズの1冊となります。

今回紹介しているのは「モダン・ポップ」とカテゴライズされたミュージシャンたちの作品。ここで言う「モダン・ポップ」とは、ビートルズ以降の、多重録音が可能になったレコーディング技術に基づいて録音されたポップミュージックと定義されています。ここで題名として「ビートルズ以降」という記載がありますが、率直なところビートルズはあまり関係がありません。確かに、ビートルズに影響を受けたミュージシャンたちが取り上げられていますが、ビートルズと同時代のポップシンガーから取り上げられていますし、一方、ビートルズ自体はもちろん、メンバーのソロの作品は取り上げられていません。そういう意味では、「ビートルズ」という名前を売れるために意図的に使った便乗商法、という見方も出来てしまう感もあります。

ただ本書がユニークだったのが、この「モダン・ポップ」というコンセプトの下で、ビートルズ以降に登場した、ポップ色の強いミュージシャンたちを多く取り上げている点。ホリーズやELO、PILOT、10cc、XTXといったバンドたちの作品が、代表作はもちろん、あまり取り上げられないアルバムや、メンバーソロの作品、バンド結成前の作品なども含めて取り上げられています。これらのバンドは、「ロック中心史観」が強い、ビートルズ以降のポップス史の中で、取り上げられるバンドではある一方、ポップ寄りな作風のためか、あまり中心的に語られることは多くありません。そういうポップバンドによりスポットをあてることにより、「ロック中心史観」とはまた違った視点から、ポピュラーミュージックの歩みについて、魅力的なミュージシャンたちやアルバムを知ることが出来る1冊だったと思います。

ちなみに今回の作品、アルバムレビューの中で、ミュージシャンたちの歩みを語っているという構成上、アルバムが網羅的に取り上げられているため、決して「名盤集」ではありません。実際、かなり強烈に批判されているような「駄作」も紹介されています。そういうアルバムはよほどのマニア以外、聴く必要はない作品なのでしょうが・・・ただ、普通のディスクガイドで取り上げられないような、そんな作品のレビューもまた興味深く、楽しく読むことも出来ました。

そんな興味深い1冊である一方、ちょっと問題点も目立った1冊でもあり・・・まずちょっと残念だったのが、書籍の構成上、ちょっとわかりにくさを感じてしまった点でした。様々なミュージシャンやバンドが紹介されているのですが、その簡単な略歴が、ディスクガイドの間のコラムで紹介されているケースもあれば、ディスクガイドの中で紹介されているケース、また、アルバムだけが紹介されていて、ミュージシャンがあまり詳しく紹介されていないケースなどもあり、全体的に統一感がありませんでした。また、「モダン・ポップ」としての全体の流れもわかりにくい点もあり、読んでいて、「モダン・ポップ」の進化・発展がいまひとつわかりにくいものがありました。

また、もっと残念だったのが、特に和久井光司のコラムに関して、自分の経験談と関連づけて語られたコラムが多く・・・これは、以前の「ローリング・ストーンズ完全版」でも感じたのですが、こういう「辞書的」な書籍としては、あまり好ましくなかったようにも思います。もっとビックリしたのは、p205 B.A.ROBERTSON「Bully For You」のディスク評の中で、「オンナコドモには不人気」という表現が飛び出したこと・・・。まさか、この時代にこんな女性差別的な表現が飛び出すとは思いませんでした・・・校閲の段階で、編集者が指摘しなかったのでしょうか。

そういう問題表現もあり、全体的に残念な部分も少なくありませんでしたが、一方では、前述の通り、「ロック中心史観」とはちょっと異なる、ポップを主軸としたディスクガイドとしてはなかなか興味深く、ここで登場したミュージシャンたちのアルバムも、是非とも聴いてみたい、そうとも感じさせる1冊でした。

最後に余談ですが、この「モダン・ポップ」というジャンル、あまり聴きなじみなく、一般的に使われるような表現なのか疑問に感じ、ネットで調べてみました。そうすると、GoogleのAIによる概要では、「モダン・ポップ」をこの本と同一の定義で用いられており、実際に使用されている音楽用語なのか・・・と思ったのですが、よくよく見ると、AIが参考にしているWebサイトが、この本の紹介サイトでした・・・。こういう点、AIによるまとめは、まだまだそのまま信じるのは危険、ということを感じてしまいます・・・。

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