映画・テレビ

2025年12月15日 (月)

最後の3年間を描く

今回は、先日見てきた映画の感想です。

「Ryuichi Sakamoto:Diaries」。2023年に71歳で逝去した坂本龍一の、最後の3年半を、彼が書いた日記を軸として追ったドキュメンタリー。もともとNHKのドキュメンタリーとして放送した内容に、新たに音楽や映像を加えて再構築したものだそうです。がん告知で余命宣告を受けた2020年から映画はスタートし、最後は逝去の2日前の映像まで公開され、その3年半、坂本龍一本人の映像や言葉、関係者へのインタビュー、さらには坂本龍一の音楽で、映画はすすんでいきます。

この映画で感じたのは、この3年半という最後の月日の中で、坂本龍一は2つの顔を見せていたように感じました。ひとつは天才音楽家として、自身の最期に向かう姿。この時期の坂本龍一は、最後に研ぎ澄まされた「音」の世界に興味があったようで、最後まで様々な音の世界を追求し、映画の中でも「雲の音楽を作りたい」と語っていたように、この世界に流れている音の本質的な部分を探っていたように感じます。また、手術の後、雨の音に癒されたり、最期の時まで、鈴などが奏でる美しい音色をめでていたようで、最期まで音へのこだわりを感じさせました。

そしてもうひとつ見せていたのは、ひとりの人間として、死に直面した坂本龍一の姿。余命宣告のことを「死刑宣告」と絶望的に日記に綴ったり、「あえて言霊を信じてみる」と書き「ナオル 治る」と日記に綴ったり、死の恐怖と戦いながら、残された短い時に向かい続けるひとりの男性の姿が描かれていました。

個人的に、アラフィフとなり「死」について考えることが増えてきました。特にそのきっかけとなったのは、昨年2月の義母の逝去。彼女も約2年間のがんの闘病の末での死だったのですが、74歳という、大往生とは言えないものの、決して「早すぎる」といった感じでもない彼女の「死」を迎えた時に、親の世代が亡くなり、次は自分たちの世代の番だ・・・という気持ちが沸き起こってきてしまいました(自分の実母はまだまだ元気ですが)。また、ここ数年、やはり身体に「不調」を感じる機会が増え、死につながるような体調不良はないのですが、身体が自分の魂の乗り物だと解釈した時、この「乗り物」も徐々にガタが来始めているな、とも感じ、年齢的にまだちょっと先のこととはいえ、「死」について意識する機会が増えてきました。

そんな中で、この映画では、やはりその死に立ち向かう坂本龍一の姿に、非常に興味が湧いたと共に、もし自分が同じ境遇に陥ったら・・・という思いを感じつつ、映画を鑑賞していました。映画の中で、自分の余命宣告を前に決して取り乱した姿は見せておらず、淡々と受け入れたようにも感じます。ただ一方、日記の端々や映画の映像からは、死に対する恐怖や長く生きられないことへの無念を感じさせる部分も少なくなく、自分がその立場だったらどうなるだろうか、そんなことを考えながら見入っていました(ただ、この時期に連載されていたエッセイ「ぼくは、あと何回満月を見るだろう」では術後妄想に悩まされた話もあるので、取り乱したような姿はあえて映画では省略したのでしょうが)。

また一方、映画で興味深く見ることが出来たのはもうひとつの側面、天才音楽家坂本龍一の姿。映画の冒頭、ニューヨークの自宅の庭にピアノを放置し、ピアノがどのように朽ち、自然に帰るのかを観察する実験を行う姿が映し出されます。この実験自体、彼のがんとは直接関係ないのですが、奇しくも、ピアノの朽ちる姿と、坂本龍一の姿が同一視されるような形になっています。ただ、映画後半に出てくる、自然に帰ろうとする朽ちたピアノの姿は、どこか美しさも感じられ、それが死に向かう坂本龍一の姿と、美しいシンメトリーを奏でているようにも感じました。

また、最後は、単なる音や、「雲の音楽」といった、自然の奏でる波長に興味を抱く姿も、ここらへんの興味についても、他の著書によるとがん告知の前から興味が向いていたようですが、音楽家としてある程度の到達点まで達したようにも感じます。一方では、10年後まで音楽を作りたい、と劇中語っていたように、最後まで音楽に対する意欲は失っておらず、最後の最後まで音楽家として生きる彼の姿に感銘も受けました。

最期に、息子からの質問に対して「楽しい人生だった・・・」「死に対して、もう恐怖はない」と語っていたというのも印象的。最期にすべてを受け入れて、そして人生を満足して旅立っていった姿にも、思わず胸が熱くなるのと同時に、第三者から見て、いい人生だったんだなぁ、とも感じました。自分は最期、ああいう風に旅立てるのだろうか、そんなことも感じてしまうラストでした。

そんな訳で、天才音楽家坂本龍一の最期としても、ひとりの71歳の人間、坂本龍一の最期としても、いろいろと感銘を受け、また考えさせられる部分も多いドキュメンタリーでした。ちょっと早い最期だったかもしれませんが、ただ一方、10年後の彼の音楽を聴いてみたかった反面、いろいろな意味でやり切った感もあるのかな、とも感じました。最期に向かう人間のドキュメンタリーとしても興味深い映画。坂本龍一に少しでも興味がある方ならお勧めしたい1本です。

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2025年11月 1日 (土)

oasis復活に先駆けて

今日は、最近見た音楽関連の映画の紹介、感想です。先日、東京ドームで復活来日公演を行ったoasis。今回はそれに伴い公開された、oasisのボーカリスト、リアム・ギャラガーの映画2本です。

まずこちらは、「リアム・ギャラガー:ライブ・アット・ネブワース2022」。リアム・ギャラガーが2022年にイギリスのネブワーク・パークで行った野外単独ライブの模様を収録したライブ映画。ネブワースと言えば、1996年、oasisの全盛期に行われたライブが、まさに「伝説」となっていますが、それから26年という月日を経て、今度はリアムのソロで行われたライブステージ。その模様を収録したライブ映像となっています。

で、もう1作がドキュメンタリー作品。「リアム・ギャラガーinロック・フィールド オアシス復活の序章」。2022年に、リアム・ギャラガーがアルバム「C'MON YOU KNOW」制作のために訪れたウェールズのロック・フィールド・スタジオでの録音作業の模様を収録したドキュメンタリーとなっています。

さて、まず「ライブ・アット・ネブワース2022」ですが、やはりリアム・ギャラガーの歌う姿は本当に絵になります。その歌声と共に、カリスマ性があるし、純粋にとにかくカッコいい!!ついつい見入ってしまうような「華」があります。今回のライブ映像で、あらためてリアムのボーカリストとしての魅力を実感させられました。

ちなみに歌われた楽曲は、大半がoasisの楽曲。セットリストが公表されていますが、全16曲中、10曲までがoasisの曲。残り6曲のリアムソロの曲も、こうやってあらためて聴くと、決して悪くはないのですが、やはりoasis時代の曲と比べると・・・とは思ってしまいます。そんなoasisの曲、本編ラスト「Live Forever」は「母親に捧げます」と言っているあたり、母親を大切にしているリアムの一面を垣間見れたりします。また、本編最後には、リアムが来てくれたファンへの感謝やファンあっての自分ということを話していたりして、リアムもいい意味で丸くなったなぁ、ということも感じました。

そして、もう一篇のドキュメンタリー。基本的にアルバムのレコーディング風景を収めた内容。サブタイトルに「オアシス復活の序章」と書かれていたり、ノエルに語っているように書かれていたり、いかにもoasis再結成に関係するような宣言がされているのですが、これに関してはかなり詐欺的に近く、ノエルについて語っているのもほとんど一瞬で、内容的にoasis再結成とは全く関係ありません。oasis復活の先駆け的なドキュメンタリーを期待すると、かなり肩透かしをくらうかもしれません。

ただ、その点を差し引くと、oasisのファンとしては非常に楽しめる内容だったと思います。レコーディング風景といっても、グタグタしたような練習風景はほとんどなく、レコーディングスタジオでのセッションがメイン。それも、リアムソロの曲がメインながらもoasisの曲もセッションが行われており、ちょっとしたライブ風景を楽しめる内容となっています。

それ以上にほほえましいのが、このレコーディングにリアムは2人の息子を連れてきており、親子同士のリラックスした会話風景が収録されていること。2人の息子は若そうなのにビールを飲んでいてちょっとビックリしたのですが、調べたら2人とももう成人を迎えているのですね。ただ、この親子の会話は、どちらかというと友達同士のようなフランクリーな感じで、リアムもパパとしてはよいパパなんだなぁ、ということが垣間見れて、とても微笑ましく感じます。この親子の風景を眺められるだけでも、このドキュメンタリーの価値があるように感じました。

ちなみに「ライブ・アット・ネブワース」が80分、「ロック・フィールド」が50分弱と、どちらも映画としては短め。ただ、映画料金は、「ライブ」が2,500円、「ロック・フィールド」が2,000円とフルに取られました。両者合わせても2時間強なので、2つの映画を合体させてほしかった感もするのですが・・・。ただ、どちらの映画も非常に見ごたえのある内容。oasisファンならとりあえずは見ておくべき映画でしょう。あらためてリアムの魅力を感じられた2本でした。

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2025年10月17日 (金)

メンバーの証言からバンドを追ったドキュメンタリー

今回は、最近見た音楽関連の映画の感想です。

ハードロックの祖として、今なお多くのミュージシャンたちに影響を与えつづけているロックバンド、レッド・ツェッペリン。そんな偉大なバンドのメンバーの生い立ちから結成・ブレイクまでの軌跡を追ったドキュメンタリー映画が公開されました。「レッド・ツェッペリン:ビカミング」。メンバー本人たち初公認ということでも大きな話題となっているようです。

構成的には基本的にシンプルなドキュメンタリー。基本、インタビューを軸としつつ、その間に当時の映像や、さらにバンド本人のライブ映像もさしはさみつつ、バンドの歩みを追っていくスタイル。語られている内容は、熱心なファンにとっては特に目新しさはない内容のようで、ただ一方でバンドの歩みをしっかり追っているため、比較的バンド初心者にとっても難なく内容を理解し、楽しめるドキュメンタリーになっていたように思います。

そんな比較的シンプルなドキュメンタリー映画なのですが、ただ大きな特徴が2つあります。ひとつはインタビューがバンドメンバーだけにおこなれているという点。通常、この手の音楽ドキュメンタリーは、バンドメンバーだけではなく様々な関係者にインタビューを行い展開しているのが通常です。しかし本作は、あくまでもバンドメンバーのみからのインタビューにこだわっています。そもそも他のドキュメンタリー映画で様々な関係者からインタビューを行っているのは、ミュージシャンを多面的に捉えるため。一方、本人たちのみのインタビューは、確かに本人たちが実際に経験したことを語っているようで、実は本人たちの思い違いや偏った見方が往々にして「真実」として捉えられる危険性があり、ドキュメンタリーとして必ずしも望ましいスタイルとは言えません。しかし、それでも本作がバンドメンバー本人のインタビューにこだわったというのは、おそらく監督としてはレッド・ツェッペリンがどんなバンドだったのか、ということ以上に、レッド・ツェッペリンがメンバーにとってどんなバンドだったのか、ということをこの映画では残したかったのかもしれません。

特に今回の映画で印象的だったのは、若くして亡くなったドラムスのボンゾことジョン・ボーナムの貴重なインタビュー音源を使用していた点で、今回の目玉のひとつとなっています。このインタビュー音源も非常に貴重なのですが、それ以上に今回印象に残ったのは、映画の終盤、ボンゾがバンドについて語る音源を、メンバーがそれぞれ聴いているシーンがあります。その時のメンバーのなんとも言えない表情が、とても心にしみて・・・今回の映画でもっとも印象に残るシーンでした。

もうひとつ大きな特徴なのが、バンドの演奏シーンを、ほぼフル演奏で聴かせてくれる点。この手のドキュメンタリー映画は、ドキュメンタリー性を重視し、ライブ音源はダイジェスト、というケースが少なくありません。ただ、今回のドキュメンタリーについては、大迫力の演奏を画面越しに楽しむことが出来る、いわばライブ映画としての側面も兼ね備えています。今回のドキュメンタリー映画、このタイプの映画としては異例のヒットを記録しているのですが、このライブ体験が出来るという点がヒットの大きな要因かもしれません。また、インタビューをメンバーだけに絞ったのも、時間をたっぷりとって、バンドのライブ演奏を聴かせるため、という要素が強かったのかもしれません。

このライブ音源というのが、とにかく迫力満点。非常にヘヴィーでダイナミック、そして息の合った演奏は、今聴いても古さを感じさせません。レッド・ツェッペリンとしてのバンドの魅力を存分に感じることが出来ます。それと同時に、ちょっと不思議だったのは、なぜあのメンバーで、突然、あれだけのヘヴィーな音を出せたのか、という点。映画ではメンバーの生い立ちとして、それぞれ、影響を受けたミュージシャンたちを取り上げています。今回の(確かジミー・ペイジへの)インタビューで、「レッド・ツェッペリンは異なる音楽から影響を受けた4人のメンバーがちょうど交わった場所で生まれた」という趣旨の発言をしているのですが、彼らの影響を受けたミュージシャンは、誰もあれだけヘヴィーな音を出してはいません。本人たちのインタビューだけであるため、当時の音楽シーン全体の中での彼らの位置づけが、今回のドキュメンタリー映画ではいまひとつ不明確なのですが、なぜ彼らが、あれだけの音を出すことが出来たのか・・・今回の映画を見終わった後、残った疑問のひとつでした。

また、今回の映画、「ビカミング」という副題の通り、ドキュメンタリーで追いかけているのは彼らの生い立ちからバンド結成、そしてブレイクまで。具体的には2枚目のアルバムまで、となっています。バンドとして昇り基調を追ったドキュメンタリーのため、全体的に明るい雰囲気であり、ストレスなしで楽しめる内容にもなっています。ただ一方、これから先のバンドとしての終盤まで追ったドキュメンタリーも見てみたかったかも、とも感じました。ひょっとしたら第2弾も計画されている可能性もあるのですが・・・。

そんな訳で、初心者から熱心なファンまで楽しめるドキュメンタリー。あらためてレッド・ツェッペリンというバンドの偉大さを実感できる内容でした。迫力のライブ映像は、映画館で是非!

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2025年4月12日 (土)

天才音楽家の人生がレゴムービーに!

今回は最近見た、音楽関連の映画の紹介・感想です。今回見てきた映画は「ファレル・ウィリアムス:ピース・バイ・ピース」です。

プロデューサーチーム、ザ・ネピュチューンズのメンバーとして数多くのヒット作を飛ばし、さらには自らもN.E.R.Dのメンバーとしても活動。さらに2014年に発表した「Happy」が世界規模での大ヒット作となり、日本でも大きな話題となったミュージシャン、ファレル・ウィリアムス。その彼の人生を追ったドキュメンタリー映画なのですが、その映像手法が、なんとレゴを使ったアニメーション。ファレル・ウィリアムスの人生が、まさかの「レゴムービー」化!ということで大きな話題となっています。

最初、「レゴムービー」ということで、ファレル・ウィリアムスを人生をレゴでアニメ化したノンフィクションの「物語」と思っていました。ただ、実際に見ると、映画はノンフィクションの「物語」ではなく、完全に「ドキュメンタリー」。この手のドキュメンタリー映画でありがちな、関連する人物のインタビュー映像をつなぎあわせる手法の映画。ファレル本人はもちろんのこと、彼の奥さんや両親、ネプチューンズの盟友、チャドに、スヌープ・ドッグやケンドリック・ラマーなどという著名なメンバーも全員、レゴブロックの人形となってインタビューに応じています。

この「レゴムービー」という手法、非常にユニークな試みだったのですが、本作の中で、実は非常にマッチしているように感じました。この手のドキュメンタリー映画は、よく関係者のバストアップのインタビュー映像と、一部当時の映像をつなぎ合わせて作られる手法がほとんどです。そのため、「絵」としてかなり長いシーンが関係者のインタビュー映像となってしまう場合が多く、時として非常に退屈な絵が続く場合も少なくありません。

その点本作は、レゴによるアニメという手法を使っているため、インタビューの時も、本人の映像が流れるわけではなく、インタビューの内容に沿った、ファレルのアニメが展開されていきます。そのため、インタビューの時もファレルの人生の物語が続いていくことになります。さらにレゴムービーでよかったのは、ファレルの内面を、レゴをつかって映像化することができている点。特に序盤、音楽が、ファレルにとっては非常に鮮やかな色に見せてくるという証言を、レゴを使いうまく映像化しており、ファレルの見えている世界を追体験することができる点、この映画の大きなポイントだったように感じます。

そのため、ドキュメンタリー映画でありつつも、ファレル本人の人生を追った、ノンフィクションのアニメムービーとしても楽しむことができる作品ともなっていました。物語の構成としても、ファレルの幼少期の出来事から、ミュージシャンとしての成功談、さらに成功に至ったからこそのファレルの苦悩、そしてその苦悩を乗り越えた先の「ハッピー」の大ヒット・・・と、起承転結がうまく構成されているサクセスストーリーとして仕上がっており、ちょっとベタな部分はあるのですが、ひとつの物語として、おそらくファレルのことを詳しく知らなくても(といっても「ハッピー」が世界的にヒットした、という事実くらいは知っていた方がいいとは思いますが)楽しめる内容となっていました。

一方、若干物足りなさを感じた点は、終始、レゴムービーによって構成されているため、本人の映像が全く流れない、という点。ノンフィクションをアニメ化した場合、一部だけ実写化する、ということはよくある手法なのですが、本作はレゴ化を徹底しており、本人たちの映像は一切登場しませんし、実写のMVも流れません。レゴムービーということで仕方ないのですが、最後まで本人たちも登場せずMVも流れないため、若干、欲求不満にも感じました。

また、これもレゴムービー化ということで仕方ないのでしょうが、特に人物についてはみんな同じレゴの人形の造形のため、顔のパーツや髪型で区分しているものの、やはりいまひとつ見分けがつきにくい点。短髪キャラは髪型で区別がつきにくいため、見分けるのが難しいですし、主人公のファレルは映画が進む中で成長に従い造形も変化しているため、場面によっては若干混乱します。この点はレゴムービーとして仕方ない部分なのですが、若干のマイナス点に感じました。

あと、映画本編に関係ない余談ですが、この映画、途中、NIGOがインタビューイーとして登場します。このシーンだけ突然日本語が登場してくる(当然、日本語字幕はついていません)のですが、ずっと映画が続く中、突然日本語が登場してくると、頭が切り替わらず、最初、聞き取れないんですね。ちょっとおもしろい発見でした。

そんな気になる点もあるのですが、総じて、非常に楽しめたドキュメンタリー映画でした。私自身、それほどファレルの曲に詳しいわけではないのですが、それでも聞いたことある曲は少なくなく、懐かしさを感じつつ楽しめましたし、彼が手掛けた「ハッピー」が、かつて世界的な大ヒットを記録した、程度の予備知識があった方がよいとは思うのですが、ファレルのことをほとんど知らなくても、ひとりの天才音楽家のサクセスストーリーとして楽しめる内容になっていました。音楽ドキュメンタリーとしてもよくできていながら、広い層が気軽に楽しめる、そんな映画でした。

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2025年2月11日 (火)

blurドキュメンタリー2本同時公開!

先日、blurのドキュメンタリー映画が公開されたので、映画館に足を運んできました。今回はその紹介です。

今回、2本同時公開という形となっており、1本は2023年7月に行われたロンドンのウェンブリースタジアムで行われたライブの模様を収録した「blur:live at wembley stadium」、もう1本は、昨年リリースしたアルバム「The Ballad of Darren」のレコーディングのために集まったメンバーの模様を収録したドキュメンタリー映画「blur:TO THE END」の2本となります。

とはいえ、さすがに2本も映画館で見るだけの時間的余裕はなく、うち「TO THE END」は公開同時に各種動画サイトでの同時公開となったため、そちらで視聴。一方、「live at wembley stadium」の方は映画館でしっかりと見てきました。

   Blurmovie

さて、まずは「TO THE END」。こちらは前述の通り、レコーディングに集まったメンバーの模様から、ウェンブリースタジアムのライブへ挑む姿まで収録されており、「live at wembley stadium」の前哨戦的なドキュメンタリー映画。そういう意味で、まず「live at wembley stadium」の前にこちらの映画を見ることをお勧めします(そのため、動画サイトでの同時公開となっているのでしょう)。

ただ、こちらはレコーディング風景を詳細に追った、という形でも、ウェンブリースタジアムのバックヤードに迫った、という映画ではありません。まあ、そういう風景も収録はされているのですが、この映画で主眼となっているのは、バンドメンバーそれぞれの関係性を、blurの思い出話を重ねながら追った、そんなドキュメンタリー映画となっています。

メンバーが久々に集まったということもあって、同窓会的な雰囲気を醸し出しており、特にアレックスがコメントした、メンバーがそろえばいつでも19歳に戻る、というコメントが非常に印象的。メンバー全員、和気あいあいとした空気が流れており、バンドとしては、いい意味で若い時期の仲間関係をそのまま維持しているんだな、という感じを受けました。

まあ、それだけメンバー全員、歳を取ったなぁ、ということは感じます。デーモンとアレックスは今年57歳、グレアムは56歳、デイヴに至っては今年還暦(・・・という言い方は向こうではしないのでしょうが)ですからね。バンドとして、若い時分を懐かしむ雰囲気になりますよね。私もアラフィフ世代となり、今の彼らの気持ちはなんとなくわかるように思います。

そして「live at wembley stadium」。こちらは映画館の大画面で楽しんできたのですが、非常に音もよく、ライブ会場の臨場感もしっかりと感じられる映画となっていました。

ウェンブリースタジアムはサッカーの聖地とも呼ばれるそうですが、大きなスタジアム満員に詰まった観客に、今なおblurが絶大な人気を誇っていることを感じられます。観客席の映像もよく映ったのですが、30年以上のキャリアを誇るバンドながら、観客層は比較的若い感じがします。90年代の全盛期のみならず、その後もしっかりとファンを確保し続けているということなのでしょう。ちなみに、観客としてやけにかわいい女の子ばかりが映るのはちょっと露骨な感じも・・・(特にアジア系が目立ったのは監督の趣味か?(苦笑))。

セットリストの方は、彼らの代表曲を惜しみなく展開するような構成となっており、おなじみの曲の連続に大興奮。あらためて感じるのですが、やはりblurの曲は、ロックバンドとして高揚感を覚えるというよりは、素直に聴いていてワクワクするようなポップな曲が多い、ということを感じます。ここらへんは、ライブ会場の全員でシングアロングするようなoasisの曲とは対照的ですね。

そういうこともあってか、セットリストの構成としては、途中に聴かせる曲を並べる、とか、最後に高揚感のある代表曲を連発する、という感じではなく、ポップな曲も盛り上がる曲も全体に散らばって配置されている感じ。「Song2」とか「Girls&Boys」のような盛り上がるナンバーも後半とはいえ、一番最後に配されているわけでもなく、ラストも「The Universal」というおとなしいナンバーで終了。ここらへんもある意味、blurらしい、と言えるのかもしれません。

基本的にはウェンブリースタジアムでのライブの模様をそのまま収録しただけのライブ映画ですが、前述の通り、音質には臨場感もあり、また、映像にしてもへんなひねりなどもなく、素直にステージの模様や、ステージ上でのメンバーの表情をしっかりと捉えていました。あまり癖のない作りにはなっていたのですが、その分、ライブを存分に楽しめる映像になっていたように感じました。

このウェンブリースタジアムのライブ、さらには2024年のコーチェラフェスへの出演を最後に、再び活動休止状態になった彼ら。この映画のタイトルも「TO THE END」になっていたり、毎回、「これで最後」みたいなことを(特にデーモンが)口にする傾向があるのですが、ただ、バンドとしての雰囲気は悪くなさそうだし、何年かすると、また懐かしくなって再集結するんでしょうね。彼らのライブはまだ一度も見ていないだけに、是非また来日してライブを実施してほしいのですが・・・。blurの魅力を存分に感じると共に、メンバーも歳を取ったなぁ・・・と感慨に浸ってしまう映画でした。

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2025年1月25日 (土)

「ブルースとは何か?」を感じさせるモキュメンタリー形式の映画

今日は、最近見た音楽関連の映画の紹介です。

音楽ドキュメンタリー作家、ロバート・マンスーリスが監督をつとめた映画「ブルースの魂」。もともとは1970年代に撮影され、監督自らアメリカのミシシッピ・デルタを旅して、数多くのブルースのミュージシャンたちの映像やインタビューをおさめ、映画は完成されたものの、お蔵入りに。ただ、このたびB.B.KING生誕100周年を記念して、2Kレストア版が作成され、昨年7月にアメリカで公開。さらに昨年末から今年にかけて日本でも公開され、制作から50年以上の月日を経て、ようやく日の目を見ることとなった作品です。

本作の特徴としては、数多くの伝説的なブルースミュージシャンたちの実際の演奏やインタビューを取り上げながら、その間にニューヨークはハーレムに住む、若いカップルを描いた「ドラマ」パートが入ってくる点。ドキュメンタリーとドラマをシームレスにつないだ、ちょっと特殊な感じの構成となっています。ただ、全体的にこの映画が描きたかったのは、ブルースという音楽がどのように誕生し、どのような人たちに聴かれていたのか、という点。そのため、ドラマパートについても、役者へのインタビューの形態をとっている部分があり、まるで「本当のカップル」を取材しているかのような、ノンフィクション的な雰囲気を醸し出しています。いわばモキュメンタリーともとらえられる作品となっていました。

まず、この映画の肝ともなっているのは、なんといってもこの映画の半数を占めるブルースミュージシャンたちの演奏シーンでしょう。時代は1970年代。まだまだレジェンドと呼ばれるブルースミュージシャンたちが現役でバリバリ活動していた時代。今となっては非常に貴重な演奏風景が収められています。特に今となっては、なかなか見ることが出来ない、ブルースミュージシャンたちの卓越した演奏技法にまずは目を奪われます。前半ではファリー・ルイスやブラウニー・マギーなどのギタープレイには特に目を見張るものがありました。

さらにルーズヴェルト・サイクスのパワフルなボーカルやバリバリ現役だったバディ・ガイの、まだまだ若々しく、感情的で迫力のあるギターの演奏に惹かれつつ、なんといってもこの映画のハイライトとも言えるのは、後半にたっぷりと聴かせてくれるB.B.KINGのライブパフォーマンス。顔いっぱいに、これでもかというほどの汗をかきつつ、まさにそれだけ力が入っているということを感じさせるような迫力たっぷりのパフォーマンスを聴かせてくれます。これら多くのレジェンドたちのパフォーマンスを見れるだけでこの映画の価値がある、と言って間違いないでしょう。

一方、ドラマパートの方は、正直言えば、そんなに大したことはありません。公式サイトでは「若いカップルの愛と苦闘の物語」と書いていますが、はっきり言えば、たわいのない痴話喧嘩を取り上げたもの。貧乏な暮らしの中で、偏見からなかなかうまくいかない男性と女性の物語といえば、社会性もありそうですが、本人たちが(特に男性が)上手くいかないのは自業自得な部分や自堕落な部分が多く、正直言えば、同情できるような状況ではなく、どちらかというと、そんな男性に精神的に依存している女性も含めて、主人公は「ダメ人間」の部類に入るような人間でしょう。

ただ、そんな「ダメ人間」であっても、決して否定することなく、優しく寄り添ってくれる音楽、それがブルースという音楽の大きな魅力のように感じました。思えば本作の登場人物たちを「ダメ人間」と否定することは簡単です。しかし、考えてみれば私たちだって、そんな人たちを簡単に糾弾できるような立派な人間でしょうか。私たちだって、ついつい自堕落に走ってしまったり、ダメなことだ、とわかっていてやってしまうことも少なくありません。そんなダメな部分こそ、ある意味もっとも人間が人間らしい部分であり、そしてそんなところも優しく包み込んで、そして寄り添ってくれるような音楽、それがブルースではないか、とこの映画を見ていて強く感じました。

かつて落語の名人、立川談志は、落語のことを「人間の業の肯定である」と語っていました。今回、この映画を見て頭に浮かんだ言葉がそれで、ある意味、ブルースという音楽に関しても同じようなことが言えるのではないでしょうか。特に本作のドラマパートからは、そんなブルースというのがどのような音楽であるのか、その物語を通じて感じ取れるようにも思いました。

そんな訳で、ブルースという音楽が好きなら、あるいは興味を持っているのならば、間違いなくチェックしてほしい映画だと思います。ドラマパートの物語自体には、それほど魅力はないのですが、ただ、この映画を通じて、ブルースとはどんな音楽なのか、感じ取れる素晴らしい映画だったと思います。お勧めです。

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2024年10月29日 (火)

神がかった時期のoasisのライブ映画

今回は先日見た、音楽関連の映画の紹介です。

Oasis

「オアシス:ライヴ・アット・ネブワース 1996.8.10」。先日、再結成を発表し、世界中で大きなニュースとなったoasis。その彼らの人気の絶頂期、1996年の8月10日、11日に行われた、イギリスのネブワース・パークで行われた、今や伝説ともなった野外ライブの模様を収めたライブ映画。ただ、この「ネブワース」を取り上げた映画は以前も上映されており、それが2021年に公開された「オアシス:ネブワース1996」となります。この「オアシス:ネブワース1996」は、ライブ映画といっても、この「ネブワース」を巡るバンドや、さらにファンの物語をドキュメンタリーとして描いた映画。一方、今回見た映画「オアシス:ライブ・アット・ネブワース 1996.8.10」は、2日間にわたって行われたネブワースでのライブのうち、1996年8月10日のライブの模様をノーカットで収録した映画。そのため「オアシス:ネブワース1996」とは異なる映画となっていますし、なによりも「映画」というよりもライブ映像をそのまま映画館で放映された作品、といった感が強いかもしれません。

この1996年8月10日のライブを見ると、とにかくそのセットリストの豪華さには目を見張ります。まさにキラーチューンの連続。1996年といえば、oasis史上最大のヒット作となったアルバム「 (What's the Story) Morning Glory?」がリリースされた後、「Be Here Now」をリリースする前。このライブのセットリストは、1stアルバム、2ndアルバムからの選曲となっていますが、結果として今となっても「ほぼベスト」なセレクトになっています。ライブ映えがするようなアップテンポなもちろんなのですが、途中、普通ライブでは、ちょっと落ち着いてしっかりと聴かせるような部分となる、ミディアムチューンが並ぶような部分でも「Whatever」や「Don't Look Back In Anger」などキラーチューンが続き、観客の盛り上がりが落ち着くことはありません。

この日のライブのセットリストについて、よくよく考えると、おそらく再結成した今、再びベストなセットリストでライブを行ったとしても、おそらくかなりの部分、この日のセットリストと重なると思うんですよね。それだけoasisは、この1996年の時点までの曲で、彼らの代表曲がほぼ網羅されちゃっている訳で、いまだに絶大な支持を得ている彼らですが、ちょっと暴言的な発言かもしれませんが、この1996年の時点までに積み重ねた貯金を、いまだに使い続けている・・・なんて見方も出来るかも?と思ってしまったりもしました。それだけ、1996年頃までの彼らが書いた曲が、神がかっていた、とも言えるのかもしれませんが。

ただ、実はこの日のネブワースのライブ映像について、この日はじめて見た訳ではありません。先に紹介した映画「オアシス:ネブワース1996」がDVD化された際に、8月10日、11日の2日間のネブワースライブのフル映像が特典としてついており、その時に一度、映像として見ています。このDVDについてきた映像とこの日の映像が同じなのか違うのかはちょっとわからないのですが、ただ、いずれにしても8月10日のネブワースでのライブ、この日はじめて見た・・・という訳ではありません。

それでも、やはりこれだけのライブを、映画館という大きな画面を通じて、さらに映画館の音響をつかって体験できた、というのは、DVDでの映像を家で見た、というのとは全く異なる体験となりました。映画を見ながら、思わず身体も音楽に合わせて揺らしてしまいましたし、思わず一緒に歌いそうになりました。映画では声出しも自由な「声出し上映」というスタイルもあるのですが、このライブに関しても、正直、椅子席でじっと見ているのではなくて、声を出して、一緒に歌いながら見たかったな、という気持ちになりました。ま、そういう上映のスタイルって、はたから見るとかなりシュールかもしれませんが。

oasisの魅力を再度認識できた映画でしたし、この1996年時点の彼らが、いかに神がかっていたかを再認識できた映画でもありました。今年、ついに再結成した彼ら、またライブを見れればよいのですが・・・。

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2024年7月 5日 (金)

天才の生涯

今回は、音楽関連の映画の紹介です。先日、映画「トノバン 音楽家 加藤和彦とその時代」を見てきました。

タイトル通り、オリコンチャート史上で最初のミリオンセラーヒット「帰って来たヨッパライ」を歌ったザ・フォーク・クルセイダーズのメンバーであり、その後もサディスティック・ミカ・バンドとして海外で高い評価を得たり、「あの素晴らしい愛をもう一度」などのヒット曲を世に送り出した、日本ポップス史上を代表するミュージシャンのひとり、加藤和彦。2009年にわずか62歳をいう若さで自ら命を絶つという衝撃的な最期を迎るのですが、本作は、その彼の生涯を追ったドキュメンタリー映画となります。

基本的には、この手の音楽ドキュメンタリーによくありがちな、関係者の証言をバストアップのインタビュー映像でつないでいくスタイルの構成。ザ・フォーク・クルセイダーズの相棒である北山修をはじめ、フォークルやサディスティック・ミカ・バンド時代に共に活動をした作詞家の松山猛、ミカ・バンドのプロデューサーだったクリス・トーマスなど、数多くの関係者が登場し、加藤和彦について語っています。特に感涙モノなのが、高橋幸宏と坂本龍一も登場する点。高橋幸宏はおそらく昔のインタビュー映像の使いまわしと思われるのですが、坂本龍一は声だけの出演で、おそらく生前に、病床でのインタビューではないかと思われます。今となっては非常に貴重な証言となってしまいました・・・。

個人的に加藤和彦というと、もちろんフォークルやミカ・バンドとしての活躍は知っていましたし、それを含めて、日本のポップス史上に残るミュージシャンの一人ということはしっかりと認識していました。ただ、この映画であらためて、彼が実にすごい「天才」であったということを再認識させられました。常に新しい音楽性を追い求め、時代の半歩先を進もうとしていたその姿勢。さらには常に一流であることを追い求め、音楽はもちろん、ファッションや食に対しても強いこだわりを見せていたその姿。映画の中での写真の彼は、確かにすらりとした高身長にとてもおしゃれな衣装を身に着けており、そのセンスの良さは、時代を超えて今でもしっかり伝わってきます。

その中でこの映画で特徴的だったのは、まず1点目としてはあくまでも彼の音楽活動にスポットをあてた構成になっていた、という点でしょう。ファッションや食の話も登場してきますが、いずれもやはり彼の先駆的な音楽性を裏付けるためにすぎません。映画のスタートは「帰って来たヨッパライ」のヒットからスタートしますし、それ以前の彼の生い立ちについては全く触れられていません。私生活の話ではミカとの離婚の話題が取り上げられていた程度で、あくまでも彼の音楽活動にスポットがあてられた構成になっています。ただ、逆に彼はそれだけ私生活を表に出すのを嫌っていたのかもしれません。

そしてもう1点は、彼の自殺という最期についても、避けることなく、しっかりと取り上げていたという点でしょう。特に彼の自殺についての関係者の証言は、聴きづらかったでしょうし、答えづらかったでしょう。ただ、関係者それぞれ、しっかりと思うところを証言していたのが映画の中でも重いシーンではあったものの印象的。「あの時、ああしていれば・・・」という後悔を語る関係者も多く、このような後悔を友人たちに残してしまう点が自殺に重い罪だと認識させられました。また、精神科医でもある北山修の証言も重く、そして印象的。自殺の理由について、最終的には断言は避けていたものの、時代の半歩先を進んでいた彼が、半歩先を進めなくなった時に、死を選んだ、ある意味、最期の最期まで、彼は彼らしさを選び続けた、そんな印象を受ける証言となっていました。

映画の構成として、インタビューシーンが多く、例えば当時の貴重なライブ映像、などがあまりなかったのはちょっと残念。何点かライブ映像もはさまれていたのですが、何曲かはフルでライブ映像も見てみたかったな、というのもあります。時代が時代なのであまり残っていないのかもしれませんが・・・。その点はちょっと残念でした。

もう1点は、残念、という点ではないのですが、映画全体の構成として、完全な初心者にはわかりにくかったかもしれない、という点も特徴的と言えるかもしれません。この手のドキュメンタリー映画としては珍しく、ナレーションはなく、インタビューについての背景の説明もさほどなされません。もちろん、ある程度注意深く見て行けば、全くの初心者でも加藤和彦の音楽活動が理解できるようにはなっていましたが、詳しい説明が省略されていたため、彼について、この映画ではじめて知る、という方はちょっとわかりにくかったかもしれません。

そういう気になる点はあるものの、ミュージシャン加藤和彦の素晴らしさについて、しっかりと知ることの出来るよく出来たドキュメンタリー映画だったと思います。ラストは高野寛、高田漣、坂本美雨といった下の世代のミュージシャンも参加しての「あの素晴らしい愛をもう一度」のリメイク版の演奏風景で締めくくられているのも、加藤和彦の業績がしっかりと下の世代に伝えられていることが伝えられており、印象に残りました。加藤和彦というミュージシャンについて、リアルタイムに良く知っているファンはもちろん、フォークルやミカ・バンドなどの業績は知っているものの、詳しくは知らない、という方もお勧めでいるドキュメンタリー。あらためて、日本ポップス史上に残る天才の素晴らしさを感じることが出来る1本でした。

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2024年3月22日 (金)

現代の視点からレジェンドを描く

本日は、最近鑑賞した、音楽関係の映画の感想です。

ロックンロールの創始者のひとりと言われ、数多くのロックミュージシャンたちに影響を与えたレジェンド、リトル・リチャードの伝記的映画「リトル・リチャード:アイ・アム・エヴリシング」です。

偉大なるロックンローラー、リトル・リチャードの生涯を、リアルタイムの映像や関係者のインタビューを中心に構成されたドキュメンタリー。まあ、この手の音楽ドキュメンタリーは良くありがちなのですが、リトル・リチャード自体、比較的長生きだったのと、彼が元気だったうちに、ロックンロールの創始者として評価を受けていたということもあって、生前の映像が比較的多く残っており、またテレビのトーク番組なので、彼自身について語った映像も残っているため、この手のドキュメンタリーでたまにある「インタビューされる人のバストアップ映像のみ淡々と流れる」ということにはならず、それこそ最初期の「よくこんな映像が残っていたな!」という貴重な映像と共に、リトル・リチャードの生涯を、映像を楽しみながら見ることが出来る映画となっていました。特に初期のロックンロールの映像は、今見ても迫力満点。非常にカッコいい演奏となっており、ロック好きなら間違いなく惹きつけられる映像の連続となっています。

また、インタビューされる人選もさすが超著名人揃い。ミック・ジャガーやキース・リチャード、ポール・マッカートニーなど、超大物がリトル・リチャードから自らが受けた音楽的な影響について語っています。その点においても非常に豪華なゲスト勢が彼について語るのを見るだけでも、リトル・リチャードがいかに偉大なミュージシャンだったのか、ということを実感させられます。

さて今回の映画、リトル・リチャードの生涯を追ったドキュメンタリーだったのですが、そこには現代的な観点からの2つのキーワードに沿った構成がされていました。それが「文化の盗用」と「LGBTQ」。この2つのキーワードに沿って、彼の生涯が描かれていました。

一つ目は「文化の盗用」。これはある特定の地域の文化を、他の地域の文化圏の人たちが流用する行為であり、昨今、よく非難を集めるケースが目立っています。ただ個人的には、文化というのは様々な地域固有のものが混じりあい、あらたな文化が生まれてくるものであるため、他の地域の文化を流用したといっても、即「文化の盗用」という非難のされ方をする点については疑問を持っています。

ただ一方、ここで語られたのは、リトル・リチャードがロックンロールの創始者でありながらも、黒人であるためその恩恵を(特に初期においては)ほとんど受けることがなく、彼が生み出したロックンロールというスタイルもすぐに白人ミュージシャンにパクられて、さらに彼の作った作品についても著作権に基づく報酬が正統に彼に支払われていなかったという事実が語られ、そのため、彼が一時期、非常に貧しい思いをしていた事実が語られています。確かにこういう歴史を踏まえると、現在、特にアメリカにおいて「文化の盗用」という点が問題になっていることもよくわかります。ただし、むしろ文化を流用すること自体が問題というよりも、「文化の盗用」は、流用した結果、流用元が正統に評価されない、経済的なメリットが流用元に流れ込まない、という構造こそが問題のように感じました。

さらにこの映画で最も重要かつリトル・リチャードの生涯においても大きな影響を与えたのは「LGBTQ」というキーワードでしょう。有名な話ですが、彼は自らがゲイであることを公言していました。彼が生きていた当時は、今よりも激しく同性愛者は差別を受けていました。そのため、彼自身も父親から認められなかったり、彼自身もゲイでありつつも、一時期は女性と結婚していた時期もあったり、さらには一時期は宗教の道へ進み、「キリストに帰依したことによって、同性愛が『治った』」という発言すらしていました。(この明らかな事実誤認の発言には、LGBTQの活動家も「困った」という発言をしていました)

実際、彼自身もこのパーソナリティーが影響してか、キリスト教的には忌避されるようなロックンロールミュージシャンでありつつも、いきなりロックンロールを捨ててゴスペルを歌いだしたり、さらに再びロックンロールに戻ったかと思えば、再び宗教に深く帰依するようになったり、とかなり自らの感情が揺れ動くような活動ぶりを見せています。彼ほどのロックンロールのレジェンドが、いや、ロックンロールのレジェンドだったからこそ、複雑な心の動きがあったのでしょう。ここ最近、特にSNS近辺では人々を単純に白か黒か、右か左か、反対か賛成か、分けるような風潮が少なくありませんし、過去の発言を引っ張り出して執拗に攻撃することも少なくありませんが、彼の生涯を見ると、人の心というのは、そんなに単純ではない、ということをあらためて感じさせます。

映画全体としては、ラストはリトル・リチャードがロックンロールの創始者として、様々な絶賛を集めて高い評価を受ける、というある意味、ハッピーエンド的な構成となっています。そういう意味では終わった後は、比較的、後味のよい映画となっていました。ロックンロールが好きなら、間違いなくチェックしておきたい映画と言えるでしょう。リトル・リチャードの偉大さをあらためて実感すると共に、彼が受けてきた苦労についても、あらためて強く印象に残る映画となっていました。

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2023年10月31日 (火)

ノスタルジーを感じながら

今回も先日見た、音楽関連の映画の紹介です。

今年はEPICレーベルの創立45周年。その節目の年を記念して、EPICレーベルで発表されたライブ・フィルムを、毎週木曜日の7時から一夜限定で上映するイベント「EPIC レコード創立45周年記念 毎木7ライヴ・フィルム・フェスティヴァル2023 -THE LIVE IS ALIVE!-」が開催されました。今回見たのは、そのうちの6回目。10月26日(木)に行われた「渡辺美里『misato born IV 愛と感動の超青春ライブ』」を見てきました。

私が見てきたのは、東京品川の「T・ジョイ PRINCE 品川」。122席の会場で、半数弱程度の人の入りといった感じでしたでしょうか。一夜限りとはいえ、平日の夜ということを考えると、そこそこの客の入りといった感じ。やはり彼女の最盛期は80年代後半から90年代前半でしたので、観客層はおそらくほとんどが50代以上。渡辺美里のライブへ行ってもいつもそうなのですが、40代後半の私の年代が、むしろ「若手」になってしまっています・・・。

今回のイベント、「映画」というよりも、過去に発売された映像作品を映画館という空間で大音量・高音質で楽しむというイベント。この日流されたのも、1990年にVHSでリリースされた同タイトルの映像作品をそのまま流しただけのイベントで、今回のイベントに合わせた特典映像があるわけでもありません。このVHSこそ持っていませんが、映像自体は一度は見たことある映像ばかりでした。

ちなみに特殊なイベントということで、映画だと恒例の予告編はなし。例の「映画泥棒」のCMもなく、いきなり本編からスタートしたのにはかなり違和感が・・・。

ちなみにこの「born IV」の映像は1989年7月26日の西武球場でのライブの模様と、11月に行われた東京ドームでのライブの模様を収録したもの。ファンにはおなじみの話なので、映像には一切説明もなかったのですが、この7月26日のライブ、豪雨と落雷に見舞われて、ライブが途中で中止になったファンには有名なライブ。その後、その埋め合わせ的に「史上最大の学園祭」と題して、東京ドームワンマンライブが行われたもの。時期的にはアルバム「Flower bed」リリース後のライブで、秋の東京ドームライブは、シングル「虹をみたかい」がチャート1位を獲得した直後のステージ。まさに彼女の全盛期のライブで、1986年から2005年まで毎年行われていた西武スタジアムでのライブですが、この年は唯一、2日間公演だったという点も、その当時の人気のほどがうかがえます。

そんな訳で、正直なところ、映像自体は特に目新しいものではありません。ただ、それを映画館という場所で、大音量・高音質で聴けるという点、非常に貴重な体験をすることが出来たひと時でした。彼女の曲については、ベスト盤リリースや「30周年記念盤」リリースのタイミングで聴いていたり、時々、今でも曲を聴いていたりしています。ただ、こういうイベントで、当時の映像、当時の歌声で集中しながら聴いていると、(この映像の頃はまだ、渡辺美里を聴きはじめる前なのですが)ふと自分がはじめて渡辺美里と出会って、はまって、そして何度も聴いた、中学生や高校生の頃を思い出してしまいました。聴いていて、その当時の事、渡辺美里に関する、友人や、その当時好きだった女の子の事も思い出してきてしまったりして、とても甘酸っぱい気持ちになりながら、渡辺美里の歌に耳を傾けていました。

また、そんなノスタルジックな気持ちから離れて、客観的な気持ちで彼女の歌を聴いていても、やはりあらためて、圧倒的な声量、歌の上手さを感じます。彼女はこの時、若干23歳。でも、その年齢を感じさないすごみを感じさせます。もっとも、この時点でかなり完成されすぎてしまっていて、その後、正直、ほとんど変化がない、という点も良くも悪くも気になってしまうのですが。

さらに会場の盛り上がりのすごさも、その当時の渡辺美里人気とその勢いを感じさせます。西武球場のライブが雨で中止になった時に「青春のバカヤロー」と叫ぶシーンがあって、率直な感想として少々痛いのですが(苦笑)、ただ、そのちょっと痛々しい発言がそのまま受け入れてしまうだけの勢いと盛り上がりが映像を通じて、30年以上たった今でも伝わってくるようでした。

渡辺美里全盛期の彼女の勢い、実力、そして魅力を感じさせてくれるイベント。全13曲1時間11分。決して長くはないものの、充実感のある内容になっていました。そして、私自身はちょっと中学生や高校生の頃に戻り、ノスタルジックな気持ちにひたった、そんな夜でした。

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