「ラブ&ピース」を唱えた偉大なシンガー
今回は、最近見た音楽関連の映画の感想です。
「愛し合ってるかい? 忌野清志郎が教えてくれた」。忌野清志郎デビュー55周年記念企画だそうで、彼の生涯を追ったドキュメンタリー映画となります。監督は相原裕美。以前、このサイトでも取り上げた、加藤和彦を取り上げたドキュメンタリー映画「トノバン 音楽家 加藤和彦とその時代」を手掛けた監督でもあります。
内容的には、タイトル通り、忌野清志郎の生涯を追ったドキュメンタリー。この手の音楽ドキュメンタリーにはよくありがちな構成で、基本的にミュージシャンに関係ある人物のインタビューによる証言と当時の映像を軸に進んでいく構成。インタビュアーとして、前半は主に高校時代の同級生であった三浦友和や、泉谷しげる、RC以降の後半は、RCサクセションのサポートメンバーだった梅津和時や忌野清志郎の付き人で、後にギタリストとして彼の楽曲にも多く参加した三宅伸治の証言を中心に展開していく構成となっています。
このドキュメンタリーについては比較的シンプルな構成。個人的に清志郎について隅々まで追いかけるような熱心なファン、という訳ではないので詳しくはわからないのですが、今回の映画で「よく見つけてきたな」というレア映像は少なかったようですが、それでもRCの初期の頃の映像から全盛期、さらにはソロになった後の映像など、ライブ映像もふんだんに使われており、かなり満足が出来る構成だったのではないでしょうか。
一方で賛否わかれそうなのが後半。後半では昨年8月に、梅津和時を迎えて行われたライブイベントSWEET LOVE SHOWERでの忌野清志郎トリビュートライブの模様が、準備風景を含めて収録されているほか、その後は清志郎の娘で、現在は消しゴム版画の作家として活躍している百世のインタビューと、彼女の消しゴム版画の絵を用いたMVが流れます。
ここらへんの映像については、清志郎の意思が次の世代に受け継がれているという点で重要な映像だとは思うのですが、トータル1時間近い長さの映像になっており、ちょっと長すぎるのではないか、こちらを短くしても、その分、清志郎の映像を長くしてほしいという意見も多いようです。確かに、監督の意図はよくわかりますし、特に百世のインタビューについては(本人も言っていたのですが、清志郎そっくり・・・)重要なインタビューだとは思うのですが、全体的に、もうちょっと短くてもよかったのではないか、という点は私も同感です・・・。
もうひとつ映画で気になったのは、清志郎を巡る重要な事件である、「COVERS」の販売中止問題や「君が代」問題について、あまり取り上げていなかった点。「COVERS」については、それなりに取り上げられていましたが、原発問題についてはさほど深掘りされず。「君が代」事件については、ドキュメンタリー上、全く取り上げられていませんでした。
確かに、ここらへんの取り扱いについては忌野清志郎について語る時に、実は難しい問題であるように感じます。清志郎については、よくその反骨の精神が取り上げられますが、どちらかというと本人は意図して「反骨」の精神を貫いているというよりも、「自分のやりたいように自由に歌う」というスタンスが中心になっているように感じます。実際、映画の中でも、この自分のやりたいように歌う「自由」を貫くという点が、ひとつのポイントになっていましたし、泉谷しげるの証言として「彼は自己満足でやっていた」という証言もまた、的を射ているように感じます。
それだけにともすれば議論を巻き起こしそうな「反原発」や「君が代」問題については、意図して避けているようにも感じました。確かに、これを取り上げる中で中途半端な取り上げ方は、どう取り上げたとしても反発を生みそうな感じもします。ただ一方では、ここから逃げるというのはちょっとズルいようにも感じてしまいました。
ただ、そんな中で、ひとつ清志郎のメッセージとして取り上げていたのは反戦というメッセージ。テレビのインタビューの中で、清志郎自身、自分のコアな部分として「反戦」をあげていましたし、ある意味、前述の通り「自己満足」で活動を行っていた彼の中での一番のメッセージや、やはりラブ&ピース、「反戦」というのは大きかったのではないでしょうか。そんなメッセージはしっかりと伝わるような内容になっていました。
ちなみに、この映画の中で一番「粋」に感じられたのはラストのクレジットロール。最後、「雨上がりの夜空」のRC時代のライブ映像で締めくくられるのですが、クレジットロールのクレジットが、ライブ映像の邪魔にならないように、画面の右端に流れていきます。ここらへん、最後にライブ映像をしっかりと見せてくれるという、監督の「粋」を感じました。
そんな感じで、後半の「次世代に与える影響」の長さや、清志郎の起こした「事件」からの「逃げ」など、ドキュメンタリーとしてちょっと物足りなさや中途半端さも感じてしまいましたが、一方では忌野清志郎の魅力はしっかりと伝えられていたと思いますし、また、数多くの彼の歌や映像から、ますます清志郎が好きになるような、そんなドキュメンタリーだったと思います。あらためて、今の時代の清志郎の不在を残念にも感じてしまうドキュメンタリー。あらためて、彼の偉大さを感じることが出来ました。




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