映画・テレビ

2026年10月13日 (火)

「ラブ&ピース」を唱えた偉大なシンガー

今回は、最近見た音楽関連の映画の感想です。

「愛し合ってるかい? 忌野清志郎が教えてくれた」。忌野清志郎デビュー55周年記念企画だそうで、彼の生涯を追ったドキュメンタリー映画となります。監督は相原裕美。以前、このサイトでも取り上げた、加藤和彦を取り上げたドキュメンタリー映画「トノバン 音楽家 加藤和彦とその時代」を手掛けた監督でもあります。

内容的には、タイトル通り、忌野清志郎の生涯を追ったドキュメンタリー。この手の音楽ドキュメンタリーにはよくありがちな構成で、基本的にミュージシャンに関係ある人物のインタビューによる証言と当時の映像を軸に進んでいく構成。インタビュアーとして、前半は主に高校時代の同級生であった三浦友和や、泉谷しげる、RC以降の後半は、RCサクセションのサポートメンバーだった梅津和時や忌野清志郎の付き人で、後にギタリストとして彼の楽曲にも多く参加した三宅伸治の証言を中心に展開していく構成となっています。

このドキュメンタリーについては比較的シンプルな構成。個人的に清志郎について隅々まで追いかけるような熱心なファン、という訳ではないので詳しくはわからないのですが、今回の映画で「よく見つけてきたな」というレア映像は少なかったようですが、それでもRCの初期の頃の映像から全盛期、さらにはソロになった後の映像など、ライブ映像もふんだんに使われており、かなり満足が出来る構成だったのではないでしょうか。

一方で賛否わかれそうなのが後半。後半では昨年8月に、梅津和時を迎えて行われたライブイベントSWEET LOVE SHOWERでの忌野清志郎トリビュートライブの模様が、準備風景を含めて収録されているほか、その後は清志郎の娘で、現在は消しゴム版画の作家として活躍している百世のインタビューと、彼女の消しゴム版画の絵を用いたMVが流れます。

ここらへんの映像については、清志郎の意思が次の世代に受け継がれているという点で重要な映像だとは思うのですが、トータル1時間近い長さの映像になっており、ちょっと長すぎるのではないか、こちらを短くしても、その分、清志郎の映像を長くしてほしいという意見も多いようです。確かに、監督の意図はよくわかりますし、特に百世のインタビューについては(本人も言っていたのですが、清志郎そっくり・・・)重要なインタビューだとは思うのですが、全体的に、もうちょっと短くてもよかったのではないか、という点は私も同感です・・・。

もうひとつ映画で気になったのは、清志郎を巡る重要な事件である、「COVERS」の販売中止問題や「君が代」問題について、あまり取り上げていなかった点。「COVERS」については、それなりに取り上げられていましたが、原発問題についてはさほど深掘りされず。「君が代」事件については、ドキュメンタリー上、全く取り上げられていませんでした。

確かに、ここらへんの取り扱いについては忌野清志郎について語る時に、実は難しい問題であるように感じます。清志郎については、よくその反骨の精神が取り上げられますが、どちらかというと本人は意図して「反骨」の精神を貫いているというよりも、「自分のやりたいように自由に歌う」というスタンスが中心になっているように感じます。実際、映画の中でも、この自分のやりたいように歌う「自由」を貫くという点が、ひとつのポイントになっていましたし、泉谷しげるの証言として「彼は自己満足でやっていた」という証言もまた、的を射ているように感じます。

それだけにともすれば議論を巻き起こしそうな「反原発」や「君が代」問題については、意図して避けているようにも感じました。確かに、これを取り上げる中で中途半端な取り上げ方は、どう取り上げたとしても反発を生みそうな感じもします。ただ一方では、ここから逃げるというのはちょっとズルいようにも感じてしまいました。

ただ、そんな中で、ひとつ清志郎のメッセージとして取り上げていたのは反戦というメッセージ。テレビのインタビューの中で、清志郎自身、自分のコアな部分として「反戦」をあげていましたし、ある意味、前述の通り「自己満足」で活動を行っていた彼の中での一番のメッセージや、やはりラブ&ピース、「反戦」というのは大きかったのではないでしょうか。そんなメッセージはしっかりと伝わるような内容になっていました。

ちなみに、この映画の中で一番「粋」に感じられたのはラストのクレジットロール。最後、「雨上がりの夜空」のRC時代のライブ映像で締めくくられるのですが、クレジットロールのクレジットが、ライブ映像の邪魔にならないように、画面の右端に流れていきます。ここらへん、最後にライブ映像をしっかりと見せてくれるという、監督の「粋」を感じました。

そんな感じで、後半の「次世代に与える影響」の長さや、清志郎の起こした「事件」からの「逃げ」など、ドキュメンタリーとしてちょっと物足りなさや中途半端さも感じてしまいましたが、一方では忌野清志郎の魅力はしっかりと伝えられていたと思いますし、また、数多くの彼の歌や映像から、ますます清志郎が好きになるような、そんなドキュメンタリーだったと思います。あらためて、今の時代の清志郎の不在を残念にも感じてしまうドキュメンタリー。あらためて、彼の偉大さを感じることが出来ました。

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2026年9月28日 (月)

「和解」と「寛容」のドキュメンタリー

今回は最近見た、音楽関連の映画の感想です。

ご存知、90年代に一世を風靡し、全世界に特大のヒット曲を連発したロックバンド、oasis。稀代のボーカリスト、リアム・ギャラガーと天才的なメロディーメイカー、ノエル・ギャラガー兄弟を中心したこのバンドでしたが、リアムとノエルの兄弟喧嘩がよく話題となり、ついには2009年に解散に至ってしまいました。しかし、月日を経て、2024年に再結成。2025年には全世界ツアーを行い、来日公演も大きな話題となりました。本作は、そんな解散ツアーの模様を追ったドキュメンタリー映画「オアシス ドント・ルック・バック・イン・アンガー」。blurの再結成ツアーを追ったドキュメンタリー映画「ノー・ディスタンス・レフト・トゥ・ラン ア・フィルム・アバウト・ブラー」を手掛けたディラン・サザーンとウィル・ラブレースが監督をつとめた作品となります。

映画は最初、oasisの解散が決まった、2009年のフランスでの音楽フェスの映像から始まります。会場のアナウンスで、ライブの中止とリアムがもう戻ってこない旨が伝えられます。ただ、解散の瞬間であったのですが、兄弟喧嘩が日常茶飯事だった彼らだったので、その時、会場にいたファンの多くは「いつもの喧嘩だな・・・」としか考えなかっただそうなぁ・・・という感じがします。そして、その後、ライブのリハーサルの初日の映像が。ノエルを含めたメンバーが揃っている中、リアムが最初に登場する瞬間をとらえた貴重な映像になっており、ノエルを含めて、リアムが登場で上手くいくのか、緊迫感のある空気感が印象的な映像になっています。

そんな貴重な映像を織り込みつつ、ただ、その後については、正直言えば少々期待外れでした。というのも、本作はあくまでも「ドキュメンタリー」であり、「ライブ映画」ではありません。ドキュメンタリーは、彼らのライブツアーでの映像を挟みつつ、全世界のoasisファンが、いかにoasisを待望していたのか、それぞれコメントしていく映像になっています。oasisというバンドがいかにファンに愛されたのか、ということを実感できる構成になっているのですが、正直言って、ファンのコメントの比率が多すぎ。もっと肝心のoasisのライブを見せてほしかった、というのが率直な感想です。

そして肝心なライブ音源についても、フル収録になっていない部分も非常に残念な点。基本的にライブ映像は演奏の途中で切られており、1曲まるごと聴けるような曲はありません。もちろん楽曲については魅力的ですし、なによりも久しぶりのoasisとしてのステージでありながらも、バンドとして一体感のある迫力ある演奏が魅力的。もちろん、oasisが活動休止中も、ギャラガー兄弟はいずれも活動を続けており、リアムに至っては、oasisの全盛期に行われたネブワースでのライブを行ったほどの人気を維持していた、現役バリバリのミュージシャンという点も大きいのでしょう。ただ、長らくの活動休止と、その後の久しぶりのステージという点を感じられないような、魅力的なステージを見せてくれています。それだけに肝心のライブシーンがあまり多くなかった点は非常に残念に感じました。

ちなみにもうひとつ残念に感じた点として、世界各地のoasisファンがインタビューに応じており、その場所でのライブ映像が使われているのですが、アジア代表として登場するのが日本ではなく韓国であったという点・・・韓国であることに大きな意味があるとは感じなかったのですが、ただ、ここらへん、世界における日本の地位の低下を強く感じてしまいました・・・。

もちろん、見どころも少なくありません。劇中でのコメントで、ノエルがリアムのことを、ボーカリストとしての才能を認めた上で、「自分がもっと折れればよかったんだ」と大人なコメントを聴かせてくれていたことも印象的。後半にはノエルとリアム兄弟が同席したインタビューシーンも登場し、2人が並んでいて話している点だけで胸が熱くなるのですが、なにげに仲良さげな雰囲気を漂わせている点も印象的。今回の活動再開劇は一時的で、すぐにまた喧嘩しそう、と思っていたのですが、お互いに「大人」になった今、この映画から伝わってくる雰囲気からすると、永続的にoasisの活動は続きそうな印象すら受けました。

また、監督が映画に込めたメッセージも印象的で、ノエルとリアム兄弟の和解にも象徴されるように、和解や寛容がこの映画のメッセージにもなっています。特に後半、2017年に起こった、アリアナ・グランデのライブでの自爆テロ事件の生存者によるインタビューが収録。その中で、oasisの代表曲「Don't Look Back In Anger」が心の支えとなっており、また、事件の慰霊祭のシーンでは、みんなでこの歌を歌うシーンが収録されてます。ノエルもインタビューの中で「自分たちは右翼のバンドではないので、誰でも大歓迎」という話をしており、世界各地で「寛容さ」が失われて、トランプのような大統領が登場したり、ヨーロッパで極右が台頭していく中で、「寛容」の大切さがメッセージとして込められています。だからこそ、映画のタイトルを「ドント・ルック・バック・イン・アンガー」としているのでしょう。

そんな監督が込めたメッセージには強い共感を覚えつつ、ただ、正直、「ライブ映画」を期待して見に行った身からすると、いささか期待外れに感じてしまう内容でもありました。ひょっとしたら、近いうちにライブをそのまま収録した映像作品がリリースされるか、また、映画が上映されるのかもしれませんが・・・。一方で、短期的になるのではないか、と思っていたoasisの再結成でしたが、この映像を見る限り、兄弟の仲はいままでにないくらいに良好で、今後もコンスタントに活動が続きそうなのはうれしくなってきます。早くも次のツアーの予定もアナウンスされていますし、次の来日ライブには是非、足を運びたいなぁ。ちょっと期待外れでしたが、oasisの魅力は感じられる映画でした。

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2026年7月10日 (金)

コミカルでちょっとミステリあるな天才ピアニストの生涯

今回は最近見た音楽関連の映画の紹介です。

「ジェイムズ・ブッカー/愛すべきピアノ・ジャンキー」。主に60年代から70年代に活躍した、ニューオリンズ生まれニューオリンズ育ちのピアニスト。自らの名前での作品以上に数多くのミュージシャンへのセッションピアニストとしての参加で知られており、ウィルソン・ピケット、B.B.キング、リトル・リチャードなど、そうそうたるミュージシャンたちのバックでピアノをプレイしていたピアニストです。

本作は、そんなジェイムズ・ブッカーの生涯を追ったドキュメンタリー。彼と関わった様々なミュージシャンや人物がブッカーについて語っていきます。その面子たるや、ドクター・ジョン、アラン・トゥーサン、チャールズ・ネヴィルなどまさにそうそうたるメンバーがズラリ。いかにブッカーが様々なミュージシャンたちに影響を与え、そしてリスペクトを受けていたのかがわかります。

ただ、正直、本作、音楽ドキュメンタリーとしてよく出来ているかどうか、と言われれば微妙なところ。基本的にこの手のドキュメンタリーにありがちな、当時にミュージシャン本人の映像を間に挟みつつ、関係者のボトムアップの映像での証言をつなぐようなスタイル。この点、あまり面白味のある展開ではありませんし、全体的にいまひとつ説明不足の感もあり、ジェイムズ・ブッカーの生涯について、初心者にとってはわかりにくさを感じる部分も少なくありませんでした。

また、この手のドキュメンタリーは、貴重なライブ映像を見れる、というのが大きな売りなのですが、残念ながらそういった映像は多くありません。基本的にジェイムズ・ブッカーについてはセッション・ピアニストという側面が大きいのでしょう、当時のライブ映像については限定的であり、本作の中でもあまり多く見ることが出来ません。そういう意味ではちょっと残念にも感じました。

ただ一方で、この映画を見終わった後、やはりジェイムズ・ブッカーはどのようなピアノを弾いていたのか、俄然、興味は出てきました。正直言えば、私自身、ジェイムズ・ブッカーというミュージシャンについてはこの映画ではじめて知りました。セッション・ミュージシャンでの活躍がメインだったために、なかなか名前が出てこないということもありますし、また、彼はクラッシックからソウル、ジャズ、ブルースなど幅広いジャンルのピアノを弾いていたのですが、えてしてこのような「幅広い音楽を手掛ける」ミュージシャンは焦点がぼけてしまい、逆にいろいろなメディアに取り上げられずらくなるような感じもします。

ただ、この映画では、ジャズピアニストのハリー・コニックJr.が彼のピアノプレイの特徴やその難しさをしっかりと解説。彼のピアノの聴きどころについてもしっかりと解説してくれますし、またジェイムズ・ブッカー本人の映像にしても、片目の視力を失ったためにつけている眼帯がどこか怪しげでありつつも、おしゃれでかつコミカル、洒脱な印象を受ける外見が魅力的。その片目を失った経緯もいまひとつ不明という点もどこかミステリアスで彼の魅力を引き上げています。

そういう意味では見終わった後、しっかりジェイムズ・ブッカーの魅力を感じ、かつ、彼の作品を聴きたくなる、という点で、本作は映画として十分すぎるほど「成功している」と言えるのかもしれません。彼自身、ちょっとマニアックなミュージシャンであるため、万人にお勧めという感じではないのですが、ソウルやブルースが好きな方、ニューオリンズの音楽が好きな方はチェックして損のない、そんな作品でした。

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2026年6月30日 (火)

往年のマイケルのパフォーマンスを疑似体験できる作品

今回は最近見た音楽関連の映画の感想です。

Moviemichael

最近話題の映画「Michael/マイケル」を見てきました。言わずと知れたKING OF POP、マイケル・ジャクソンの人生を描いた映画。この手のミュージシャンの人生を描いた映画は、かの「ボヘミアン・ラプソディー」の大ヒットでも知られていますが、ある種、映画の題材の定番中の定番。いままで様々なミュージシャンの伝記的映画がつくられています。ただそんな中、マイケルの自伝的映画である本作は大きな話題となっており、先日のヒットチャートでもマイケル関連のアルバムが多くランクインして話題となりました。死後16年がたった彼ですが、今なお、その人気ぶりが伺わされます。

さて、この映画、比較的賛否がわかれている部分があります。正直、映画の出来としては決して高い評価は得ていません。ただ一方、観客の評価は上々で、国内映画ランキングでも1位を獲得するなど、高い人気を誇っています。

一部では「映画ファンの評判は悪いけど、音楽ファンの評判は良い」という感想を見かけました。そして映画を見た感想としては、確かにこの評価が一番、的を射ているように感じます。率直な感想として映画としての出来は決して良くはありません。映画としては主に強権的にマイケルを縛り付けようとする父親との確執を軸に、ジャクソン5時代からソロとして大成功するまでの栄光を描いています。ただ、全体的にその描き方がすごく薄っぺらく通り一遍といった感じ。公式サイトでは「早熟の天才ゆえの孤独感」と書いていますが、こういうマイケルの内面についてもさほど描かれておらず、映画の出来は、かなり薄っぺらいものを感じます。

ただ一方、マイケルの音楽を映画館の環境で聴きたい、マイケルの往年のパフォーマンスを追体験したい、という観客(主に音楽ファン)にとっては、その要望にダイレクトに答えてくれる内容になっていたと思います。今回、マイケル役を演じるのは、マイケルの兄、ジャーメインの息子、ジェファー・ジャクソンが演じているのですが、このパフォーマンスには舌を巻きます。特にマイケルと言えば、その天性の才能を感じさせる独創的なダンスパフォーマンスが大きな魅力なのですが、その難しいダンスを劇中、しっかりと演じ切っています。映像を見ていると、本物のマイケルがそこで踊っているものと思ってしまうほどの完成度の高いステージで、まさに往年のマイケルのパフォーマンスを映画館のスクリーンで疑似体験できる内容になっています。間違いなく、マイケルのパフォーマンス、音楽を楽しみたいという観客にとってはかなり満足の行く内容だったのではないでしょうか。

映画的に薄っぺらいと書いたのですが、ただ逆に、マイケルのパフォーマンスを見たい、という観客層にとっては、薄っぺらいストーリー展開のため、映画を見る中でストレスをほとんど感じることがなく、音楽の部分だけを純粋に楽しめる、という点ではよかったのかもしれませんし、ひょっとしたら制作側としてはそれを狙っていたのかもしれません(もっとも、映画的に薄っぺらいだけに、クライマックスで味わえるカタルシスも薄いのですが・・・)。

そんな訳で、マイケル・ジャクソンが好きなら文句なしに見るべき映画だと思いますし、マイケルの音楽が好き、「スリラー」が好き、もっと言えば、マイケルがキライじゃなければ、その音楽を十分すぎるほど楽しめる映画だと思います。一方、ストーリー展開を楽しみたい、純粋に映画的に見たい、という方にとっては物足りなさをかなり感じてしまうかも・・・。以下、詳細なネタバレ感想は「つづく」から!

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2025年12月15日 (月)

最後の3年間を描く

今回は、先日見てきた映画の感想です。

「Ryuichi Sakamoto:Diaries」。2023年に71歳で逝去した坂本龍一の、最後の3年半を、彼が書いた日記を軸として追ったドキュメンタリー。もともとNHKのドキュメンタリーとして放送した内容に、新たに音楽や映像を加えて再構築したものだそうです。がん告知で余命宣告を受けた2020年から映画はスタートし、最後は逝去の2日前の映像まで公開され、その3年半、坂本龍一本人の映像や言葉、関係者へのインタビュー、さらには坂本龍一の音楽で、映画はすすんでいきます。

この映画で感じたのは、この3年半という最後の月日の中で、坂本龍一は2つの顔を見せていたように感じました。ひとつは天才音楽家として、自身の最期に向かう姿。この時期の坂本龍一は、最後に研ぎ澄まされた「音」の世界に興味があったようで、最後まで様々な音の世界を追求し、映画の中でも「雲の音楽を作りたい」と語っていたように、この世界に流れている音の本質的な部分を探っていたように感じます。また、手術の後、雨の音に癒されたり、最期の時まで、鈴などが奏でる美しい音色をめでていたようで、最期まで音へのこだわりを感じさせました。

そしてもうひとつ見せていたのは、ひとりの人間として、死に直面した坂本龍一の姿。余命宣告のことを「死刑宣告」と絶望的に日記に綴ったり、「あえて言霊を信じてみる」と書き「ナオル 治る」と日記に綴ったり、死の恐怖と戦いながら、残された短い時に向かい続けるひとりの男性の姿が描かれていました。

個人的に、アラフィフとなり「死」について考えることが増えてきました。特にそのきっかけとなったのは、昨年2月の義母の逝去。彼女も約2年間のがんの闘病の末での死だったのですが、74歳という、大往生とは言えないものの、決して「早すぎる」といった感じでもない彼女の「死」を迎えた時に、親の世代が亡くなり、次は自分たちの世代の番だ・・・という気持ちが沸き起こってきてしまいました(自分の実母はまだまだ元気ですが)。また、ここ数年、やはり身体に「不調」を感じる機会が増え、死につながるような体調不良はないのですが、身体が自分の魂の乗り物だと解釈した時、この「乗り物」も徐々にガタが来始めているな、とも感じ、年齢的にまだちょっと先のこととはいえ、「死」について意識する機会が増えてきました。

そんな中で、この映画では、やはりその死に立ち向かう坂本龍一の姿に、非常に興味が湧いたと共に、もし自分が同じ境遇に陥ったら・・・という思いを感じつつ、映画を鑑賞していました。映画の中で、自分の余命宣告を前に決して取り乱した姿は見せておらず、淡々と受け入れたようにも感じます。ただ一方、日記の端々や映画の映像からは、死に対する恐怖や長く生きられないことへの無念を感じさせる部分も少なくなく、自分がその立場だったらどうなるだろうか、そんなことを考えながら見入っていました(ただ、この時期に連載されていたエッセイ「ぼくは、あと何回満月を見るだろう」では術後妄想に悩まされた話もあるので、取り乱したような姿はあえて映画では省略したのでしょうが)。

また一方、映画で興味深く見ることが出来たのはもうひとつの側面、天才音楽家坂本龍一の姿。映画の冒頭、ニューヨークの自宅の庭にピアノを放置し、ピアノがどのように朽ち、自然に帰るのかを観察する実験を行う姿が映し出されます。この実験自体、彼のがんとは直接関係ないのですが、奇しくも、ピアノの朽ちる姿と、坂本龍一の姿が同一視されるような形になっています。ただ、映画後半に出てくる、自然に帰ろうとする朽ちたピアノの姿は、どこか美しさも感じられ、それが死に向かう坂本龍一の姿と、美しいシンメトリーを奏でているようにも感じました。

また、最後は、単なる音や、「雲の音楽」といった、自然の奏でる波長に興味を抱く姿も、ここらへんの興味についても、他の著書によるとがん告知の前から興味が向いていたようですが、音楽家としてある程度の到達点まで達したようにも感じます。一方では、10年後まで音楽を作りたい、と劇中語っていたように、最後まで音楽に対する意欲は失っておらず、最後の最後まで音楽家として生きる彼の姿に感銘も受けました。

最期に、息子からの質問に対して「楽しい人生だった・・・」「死に対して、もう恐怖はない」と語っていたというのも印象的。最期にすべてを受け入れて、そして人生を満足して旅立っていった姿にも、思わず胸が熱くなるのと同時に、第三者から見て、いい人生だったんだなぁ、とも感じました。自分は最期、ああいう風に旅立てるのだろうか、そんなことも感じてしまうラストでした。

そんな訳で、天才音楽家坂本龍一の最期としても、ひとりの71歳の人間、坂本龍一の最期としても、いろいろと感銘を受け、また考えさせられる部分も多いドキュメンタリーでした。ちょっと早い最期だったかもしれませんが、ただ一方、10年後の彼の音楽を聴いてみたかった反面、いろいろな意味でやり切った感もあるのかな、とも感じました。最期に向かう人間のドキュメンタリーとしても興味深い映画。坂本龍一に少しでも興味がある方ならお勧めしたい1本です。

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2025年11月 1日 (土)

oasis復活に先駆けて

今日は、最近見た音楽関連の映画の紹介、感想です。先日、東京ドームで復活来日公演を行ったoasis。今回はそれに伴い公開された、oasisのボーカリスト、リアム・ギャラガーの映画2本です。

まずこちらは、「リアム・ギャラガー:ライブ・アット・ネブワース2022」。リアム・ギャラガーが2022年にイギリスのネブワーク・パークで行った野外単独ライブの模様を収録したライブ映画。ネブワースと言えば、1996年、oasisの全盛期に行われたライブが、まさに「伝説」となっていますが、それから26年という月日を経て、今度はリアムのソロで行われたライブステージ。その模様を収録したライブ映像となっています。

で、もう1作がドキュメンタリー作品。「リアム・ギャラガーinロック・フィールド オアシス復活の序章」。2022年に、リアム・ギャラガーがアルバム「C'MON YOU KNOW」制作のために訪れたウェールズのロック・フィールド・スタジオでの録音作業の模様を収録したドキュメンタリーとなっています。

さて、まず「ライブ・アット・ネブワース2022」ですが、やはりリアム・ギャラガーの歌う姿は本当に絵になります。その歌声と共に、カリスマ性があるし、純粋にとにかくカッコいい!!ついつい見入ってしまうような「華」があります。今回のライブ映像で、あらためてリアムのボーカリストとしての魅力を実感させられました。

ちなみに歌われた楽曲は、大半がoasisの楽曲。セットリストが公表されていますが、全16曲中、10曲までがoasisの曲。残り6曲のリアムソロの曲も、こうやってあらためて聴くと、決して悪くはないのですが、やはりoasis時代の曲と比べると・・・とは思ってしまいます。そんなoasisの曲、本編ラスト「Live Forever」は「母親に捧げます」と言っているあたり、母親を大切にしているリアムの一面を垣間見れたりします。また、本編最後には、リアムが来てくれたファンへの感謝やファンあっての自分ということを話していたりして、リアムもいい意味で丸くなったなぁ、ということも感じました。

そして、もう一篇のドキュメンタリー。基本的にアルバムのレコーディング風景を収めた内容。サブタイトルに「オアシス復活の序章」と書かれていたり、ノエルに語っているように書かれていたり、いかにもoasis再結成に関係するような宣言がされているのですが、これに関してはかなり詐欺的に近く、ノエルについて語っているのもほとんど一瞬で、内容的にoasis再結成とは全く関係ありません。oasis復活の先駆け的なドキュメンタリーを期待すると、かなり肩透かしをくらうかもしれません。

ただ、その点を差し引くと、oasisのファンとしては非常に楽しめる内容だったと思います。レコーディング風景といっても、グタグタしたような練習風景はほとんどなく、レコーディングスタジオでのセッションがメイン。それも、リアムソロの曲がメインながらもoasisの曲もセッションが行われており、ちょっとしたライブ風景を楽しめる内容となっています。

それ以上にほほえましいのが、このレコーディングにリアムは2人の息子を連れてきており、親子同士のリラックスした会話風景が収録されていること。2人の息子は若そうなのにビールを飲んでいてちょっとビックリしたのですが、調べたら2人とももう成人を迎えているのですね。ただ、この親子の会話は、どちらかというと友達同士のようなフランクリーな感じで、リアムもパパとしてはよいパパなんだなぁ、ということが垣間見れて、とても微笑ましく感じます。この親子の風景を眺められるだけでも、このドキュメンタリーの価値があるように感じました。

ちなみに「ライブ・アット・ネブワース」が80分、「ロック・フィールド」が50分弱と、どちらも映画としては短め。ただ、映画料金は、「ライブ」が2,500円、「ロック・フィールド」が2,000円とフルに取られました。両者合わせても2時間強なので、2つの映画を合体させてほしかった感もするのですが・・・。ただ、どちらの映画も非常に見ごたえのある内容。oasisファンならとりあえずは見ておくべき映画でしょう。あらためてリアムの魅力を感じられた2本でした。

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2025年10月17日 (金)

メンバーの証言からバンドを追ったドキュメンタリー

今回は、最近見た音楽関連の映画の感想です。

ハードロックの祖として、今なお多くのミュージシャンたちに影響を与えつづけているロックバンド、レッド・ツェッペリン。そんな偉大なバンドのメンバーの生い立ちから結成・ブレイクまでの軌跡を追ったドキュメンタリー映画が公開されました。「レッド・ツェッペリン:ビカミング」。メンバー本人たち初公認ということでも大きな話題となっているようです。

構成的には基本的にシンプルなドキュメンタリー。基本、インタビューを軸としつつ、その間に当時の映像や、さらにバンド本人のライブ映像もさしはさみつつ、バンドの歩みを追っていくスタイル。語られている内容は、熱心なファンにとっては特に目新しさはない内容のようで、ただ一方でバンドの歩みをしっかり追っているため、比較的バンド初心者にとっても難なく内容を理解し、楽しめるドキュメンタリーになっていたように思います。

そんな比較的シンプルなドキュメンタリー映画なのですが、ただ大きな特徴が2つあります。ひとつはインタビューがバンドメンバーだけにおこなれているという点。通常、この手の音楽ドキュメンタリーは、バンドメンバーだけではなく様々な関係者にインタビューを行い展開しているのが通常です。しかし本作は、あくまでもバンドメンバーのみからのインタビューにこだわっています。そもそも他のドキュメンタリー映画で様々な関係者からインタビューを行っているのは、ミュージシャンを多面的に捉えるため。一方、本人たちのみのインタビューは、確かに本人たちが実際に経験したことを語っているようで、実は本人たちの思い違いや偏った見方が往々にして「真実」として捉えられる危険性があり、ドキュメンタリーとして必ずしも望ましいスタイルとは言えません。しかし、それでも本作がバンドメンバー本人のインタビューにこだわったというのは、おそらく監督としてはレッド・ツェッペリンがどんなバンドだったのか、ということ以上に、レッド・ツェッペリンがメンバーにとってどんなバンドだったのか、ということをこの映画では残したかったのかもしれません。

特に今回の映画で印象的だったのは、若くして亡くなったドラムスのボンゾことジョン・ボーナムの貴重なインタビュー音源を使用していた点で、今回の目玉のひとつとなっています。このインタビュー音源も非常に貴重なのですが、それ以上に今回印象に残ったのは、映画の終盤、ボンゾがバンドについて語る音源を、メンバーがそれぞれ聴いているシーンがあります。その時のメンバーのなんとも言えない表情が、とても心にしみて・・・今回の映画でもっとも印象に残るシーンでした。

もうひとつ大きな特徴なのが、バンドの演奏シーンを、ほぼフル演奏で聴かせてくれる点。この手のドキュメンタリー映画は、ドキュメンタリー性を重視し、ライブ音源はダイジェスト、というケースが少なくありません。ただ、今回のドキュメンタリーについては、大迫力の演奏を画面越しに楽しむことが出来る、いわばライブ映画としての側面も兼ね備えています。今回のドキュメンタリー映画、このタイプの映画としては異例のヒットを記録しているのですが、このライブ体験が出来るという点がヒットの大きな要因かもしれません。また、インタビューをメンバーだけに絞ったのも、時間をたっぷりとって、バンドのライブ演奏を聴かせるため、という要素が強かったのかもしれません。

このライブ音源というのが、とにかく迫力満点。非常にヘヴィーでダイナミック、そして息の合った演奏は、今聴いても古さを感じさせません。レッド・ツェッペリンとしてのバンドの魅力を存分に感じることが出来ます。それと同時に、ちょっと不思議だったのは、なぜあのメンバーで、突然、あれだけのヘヴィーな音を出せたのか、という点。映画ではメンバーの生い立ちとして、それぞれ、影響を受けたミュージシャンたちを取り上げています。今回の(確かジミー・ペイジへの)インタビューで、「レッド・ツェッペリンは異なる音楽から影響を受けた4人のメンバーがちょうど交わった場所で生まれた」という趣旨の発言をしているのですが、彼らの影響を受けたミュージシャンは、誰もあれだけヘヴィーな音を出してはいません。本人たちのインタビューだけであるため、当時の音楽シーン全体の中での彼らの位置づけが、今回のドキュメンタリー映画ではいまひとつ不明確なのですが、なぜ彼らが、あれだけの音を出すことが出来たのか・・・今回の映画を見終わった後、残った疑問のひとつでした。

また、今回の映画、「ビカミング」という副題の通り、ドキュメンタリーで追いかけているのは彼らの生い立ちからバンド結成、そしてブレイクまで。具体的には2枚目のアルバムまで、となっています。バンドとして昇り基調を追ったドキュメンタリーのため、全体的に明るい雰囲気であり、ストレスなしで楽しめる内容にもなっています。ただ一方、これから先のバンドとしての終盤まで追ったドキュメンタリーも見てみたかったかも、とも感じました。ひょっとしたら第2弾も計画されている可能性もあるのですが・・・。

そんな訳で、初心者から熱心なファンまで楽しめるドキュメンタリー。あらためてレッド・ツェッペリンというバンドの偉大さを実感できる内容でした。迫力のライブ映像は、映画館で是非!

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2025年4月12日 (土)

天才音楽家の人生がレゴムービーに!

今回は最近見た、音楽関連の映画の紹介・感想です。今回見てきた映画は「ファレル・ウィリアムス:ピース・バイ・ピース」です。

プロデューサーチーム、ザ・ネピュチューンズのメンバーとして数多くのヒット作を飛ばし、さらには自らもN.E.R.Dのメンバーとしても活動。さらに2014年に発表した「Happy」が世界規模での大ヒット作となり、日本でも大きな話題となったミュージシャン、ファレル・ウィリアムス。その彼の人生を追ったドキュメンタリー映画なのですが、その映像手法が、なんとレゴを使ったアニメーション。ファレル・ウィリアムスの人生が、まさかの「レゴムービー」化!ということで大きな話題となっています。

最初、「レゴムービー」ということで、ファレル・ウィリアムスを人生をレゴでアニメ化したノンフィクションの「物語」と思っていました。ただ、実際に見ると、映画はノンフィクションの「物語」ではなく、完全に「ドキュメンタリー」。この手のドキュメンタリー映画でありがちな、関連する人物のインタビュー映像をつなぎあわせる手法の映画。ファレル本人はもちろんのこと、彼の奥さんや両親、ネプチューンズの盟友、チャドに、スヌープ・ドッグやケンドリック・ラマーなどという著名なメンバーも全員、レゴブロックの人形となってインタビューに応じています。

この「レゴムービー」という手法、非常にユニークな試みだったのですが、本作の中で、実は非常にマッチしているように感じました。この手のドキュメンタリー映画は、よく関係者のバストアップのインタビュー映像と、一部当時の映像をつなぎ合わせて作られる手法がほとんどです。そのため、「絵」としてかなり長いシーンが関係者のインタビュー映像となってしまう場合が多く、時として非常に退屈な絵が続く場合も少なくありません。

その点本作は、レゴによるアニメという手法を使っているため、インタビューの時も、本人の映像が流れるわけではなく、インタビューの内容に沿った、ファレルのアニメが展開されていきます。そのため、インタビューの時もファレルの人生の物語が続いていくことになります。さらにレゴムービーでよかったのは、ファレルの内面を、レゴをつかって映像化することができている点。特に序盤、音楽が、ファレルにとっては非常に鮮やかな色に見せてくるという証言を、レゴを使いうまく映像化しており、ファレルの見えている世界を追体験することができる点、この映画の大きなポイントだったように感じます。

そのため、ドキュメンタリー映画でありつつも、ファレル本人の人生を追った、ノンフィクションのアニメムービーとしても楽しむことができる作品ともなっていました。物語の構成としても、ファレルの幼少期の出来事から、ミュージシャンとしての成功談、さらに成功に至ったからこそのファレルの苦悩、そしてその苦悩を乗り越えた先の「ハッピー」の大ヒット・・・と、起承転結がうまく構成されているサクセスストーリーとして仕上がっており、ちょっとベタな部分はあるのですが、ひとつの物語として、おそらくファレルのことを詳しく知らなくても(といっても「ハッピー」が世界的にヒットした、という事実くらいは知っていた方がいいとは思いますが)楽しめる内容となっていました。

一方、若干物足りなさを感じた点は、終始、レゴムービーによって構成されているため、本人の映像が全く流れない、という点。ノンフィクションをアニメ化した場合、一部だけ実写化する、ということはよくある手法なのですが、本作はレゴ化を徹底しており、本人たちの映像は一切登場しませんし、実写のMVも流れません。レゴムービーということで仕方ないのですが、最後まで本人たちも登場せずMVも流れないため、若干、欲求不満にも感じました。

また、これもレゴムービー化ということで仕方ないのでしょうが、特に人物についてはみんな同じレゴの人形の造形のため、顔のパーツや髪型で区分しているものの、やはりいまひとつ見分けがつきにくい点。短髪キャラは髪型で区別がつきにくいため、見分けるのが難しいですし、主人公のファレルは映画が進む中で成長に従い造形も変化しているため、場面によっては若干混乱します。この点はレゴムービーとして仕方ない部分なのですが、若干のマイナス点に感じました。

あと、映画本編に関係ない余談ですが、この映画、途中、NIGOがインタビューイーとして登場します。このシーンだけ突然日本語が登場してくる(当然、日本語字幕はついていません)のですが、ずっと映画が続く中、突然日本語が登場してくると、頭が切り替わらず、最初、聞き取れないんですね。ちょっとおもしろい発見でした。

そんな気になる点もあるのですが、総じて、非常に楽しめたドキュメンタリー映画でした。私自身、それほどファレルの曲に詳しいわけではないのですが、それでも聞いたことある曲は少なくなく、懐かしさを感じつつ楽しめましたし、彼が手掛けた「ハッピー」が、かつて世界的な大ヒットを記録した、程度の予備知識があった方がよいとは思うのですが、ファレルのことをほとんど知らなくても、ひとりの天才音楽家のサクセスストーリーとして楽しめる内容になっていました。音楽ドキュメンタリーとしてもよくできていながら、広い層が気軽に楽しめる、そんな映画でした。

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2025年2月11日 (火)

blurドキュメンタリー2本同時公開!

先日、blurのドキュメンタリー映画が公開されたので、映画館に足を運んできました。今回はその紹介です。

今回、2本同時公開という形となっており、1本は2023年7月に行われたロンドンのウェンブリースタジアムで行われたライブの模様を収録した「blur:live at wembley stadium」、もう1本は、昨年リリースしたアルバム「The Ballad of Darren」のレコーディングのために集まったメンバーの模様を収録したドキュメンタリー映画「blur:TO THE END」の2本となります。

とはいえ、さすがに2本も映画館で見るだけの時間的余裕はなく、うち「TO THE END」は公開同時に各種動画サイトでの同時公開となったため、そちらで視聴。一方、「live at wembley stadium」の方は映画館でしっかりと見てきました。

   Blurmovie

さて、まずは「TO THE END」。こちらは前述の通り、レコーディングに集まったメンバーの模様から、ウェンブリースタジアムのライブへ挑む姿まで収録されており、「live at wembley stadium」の前哨戦的なドキュメンタリー映画。そういう意味で、まず「live at wembley stadium」の前にこちらの映画を見ることをお勧めします(そのため、動画サイトでの同時公開となっているのでしょう)。

ただ、こちらはレコーディング風景を詳細に追った、という形でも、ウェンブリースタジアムのバックヤードに迫った、という映画ではありません。まあ、そういう風景も収録はされているのですが、この映画で主眼となっているのは、バンドメンバーそれぞれの関係性を、blurの思い出話を重ねながら追った、そんなドキュメンタリー映画となっています。

メンバーが久々に集まったということもあって、同窓会的な雰囲気を醸し出しており、特にアレックスがコメントした、メンバーがそろえばいつでも19歳に戻る、というコメントが非常に印象的。メンバー全員、和気あいあいとした空気が流れており、バンドとしては、いい意味で若い時期の仲間関係をそのまま維持しているんだな、という感じを受けました。

まあ、それだけメンバー全員、歳を取ったなぁ、ということは感じます。デーモンとアレックスは今年57歳、グレアムは56歳、デイヴに至っては今年還暦(・・・という言い方は向こうではしないのでしょうが)ですからね。バンドとして、若い時分を懐かしむ雰囲気になりますよね。私もアラフィフ世代となり、今の彼らの気持ちはなんとなくわかるように思います。

そして「live at wembley stadium」。こちらは映画館の大画面で楽しんできたのですが、非常に音もよく、ライブ会場の臨場感もしっかりと感じられる映画となっていました。

ウェンブリースタジアムはサッカーの聖地とも呼ばれるそうですが、大きなスタジアム満員に詰まった観客に、今なおblurが絶大な人気を誇っていることを感じられます。観客席の映像もよく映ったのですが、30年以上のキャリアを誇るバンドながら、観客層は比較的若い感じがします。90年代の全盛期のみならず、その後もしっかりとファンを確保し続けているということなのでしょう。ちなみに、観客としてやけにかわいい女の子ばかりが映るのはちょっと露骨な感じも・・・(特にアジア系が目立ったのは監督の趣味か?(苦笑))。

セットリストの方は、彼らの代表曲を惜しみなく展開するような構成となっており、おなじみの曲の連続に大興奮。あらためて感じるのですが、やはりblurの曲は、ロックバンドとして高揚感を覚えるというよりは、素直に聴いていてワクワクするようなポップな曲が多い、ということを感じます。ここらへんは、ライブ会場の全員でシングアロングするようなoasisの曲とは対照的ですね。

そういうこともあってか、セットリストの構成としては、途中に聴かせる曲を並べる、とか、最後に高揚感のある代表曲を連発する、という感じではなく、ポップな曲も盛り上がる曲も全体に散らばって配置されている感じ。「Song2」とか「Girls&Boys」のような盛り上がるナンバーも後半とはいえ、一番最後に配されているわけでもなく、ラストも「The Universal」というおとなしいナンバーで終了。ここらへんもある意味、blurらしい、と言えるのかもしれません。

基本的にはウェンブリースタジアムでのライブの模様をそのまま収録しただけのライブ映画ですが、前述の通り、音質には臨場感もあり、また、映像にしてもへんなひねりなどもなく、素直にステージの模様や、ステージ上でのメンバーの表情をしっかりと捉えていました。あまり癖のない作りにはなっていたのですが、その分、ライブを存分に楽しめる映像になっていたように感じました。

このウェンブリースタジアムのライブ、さらには2024年のコーチェラフェスへの出演を最後に、再び活動休止状態になった彼ら。この映画のタイトルも「TO THE END」になっていたり、毎回、「これで最後」みたいなことを(特にデーモンが)口にする傾向があるのですが、ただ、バンドとしての雰囲気は悪くなさそうだし、何年かすると、また懐かしくなって再集結するんでしょうね。彼らのライブはまだ一度も見ていないだけに、是非また来日してライブを実施してほしいのですが・・・。blurの魅力を存分に感じると共に、メンバーも歳を取ったなぁ・・・と感慨に浸ってしまう映画でした。

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2025年1月25日 (土)

「ブルースとは何か?」を感じさせるモキュメンタリー形式の映画

今日は、最近見た音楽関連の映画の紹介です。

音楽ドキュメンタリー作家、ロバート・マンスーリスが監督をつとめた映画「ブルースの魂」。もともとは1970年代に撮影され、監督自らアメリカのミシシッピ・デルタを旅して、数多くのブルースのミュージシャンたちの映像やインタビューをおさめ、映画は完成されたものの、お蔵入りに。ただ、このたびB.B.KING生誕100周年を記念して、2Kレストア版が作成され、昨年7月にアメリカで公開。さらに昨年末から今年にかけて日本でも公開され、制作から50年以上の月日を経て、ようやく日の目を見ることとなった作品です。

本作の特徴としては、数多くの伝説的なブルースミュージシャンたちの実際の演奏やインタビューを取り上げながら、その間にニューヨークはハーレムに住む、若いカップルを描いた「ドラマ」パートが入ってくる点。ドキュメンタリーとドラマをシームレスにつないだ、ちょっと特殊な感じの構成となっています。ただ、全体的にこの映画が描きたかったのは、ブルースという音楽がどのように誕生し、どのような人たちに聴かれていたのか、という点。そのため、ドラマパートについても、役者へのインタビューの形態をとっている部分があり、まるで「本当のカップル」を取材しているかのような、ノンフィクション的な雰囲気を醸し出しています。いわばモキュメンタリーともとらえられる作品となっていました。

まず、この映画の肝ともなっているのは、なんといってもこの映画の半数を占めるブルースミュージシャンたちの演奏シーンでしょう。時代は1970年代。まだまだレジェンドと呼ばれるブルースミュージシャンたちが現役でバリバリ活動していた時代。今となっては非常に貴重な演奏風景が収められています。特に今となっては、なかなか見ることが出来ない、ブルースミュージシャンたちの卓越した演奏技法にまずは目を奪われます。前半ではファリー・ルイスやブラウニー・マギーなどのギタープレイには特に目を見張るものがありました。

さらにルーズヴェルト・サイクスのパワフルなボーカルやバリバリ現役だったバディ・ガイの、まだまだ若々しく、感情的で迫力のあるギターの演奏に惹かれつつ、なんといってもこの映画のハイライトとも言えるのは、後半にたっぷりと聴かせてくれるB.B.KINGのライブパフォーマンス。顔いっぱいに、これでもかというほどの汗をかきつつ、まさにそれだけ力が入っているということを感じさせるような迫力たっぷりのパフォーマンスを聴かせてくれます。これら多くのレジェンドたちのパフォーマンスを見れるだけでこの映画の価値がある、と言って間違いないでしょう。

一方、ドラマパートの方は、正直言えば、そんなに大したことはありません。公式サイトでは「若いカップルの愛と苦闘の物語」と書いていますが、はっきり言えば、たわいのない痴話喧嘩を取り上げたもの。貧乏な暮らしの中で、偏見からなかなかうまくいかない男性と女性の物語といえば、社会性もありそうですが、本人たちが(特に男性が)上手くいかないのは自業自得な部分や自堕落な部分が多く、正直言えば、同情できるような状況ではなく、どちらかというと、そんな男性に精神的に依存している女性も含めて、主人公は「ダメ人間」の部類に入るような人間でしょう。

ただ、そんな「ダメ人間」であっても、決して否定することなく、優しく寄り添ってくれる音楽、それがブルースという音楽の大きな魅力のように感じました。思えば本作の登場人物たちを「ダメ人間」と否定することは簡単です。しかし、考えてみれば私たちだって、そんな人たちを簡単に糾弾できるような立派な人間でしょうか。私たちだって、ついつい自堕落に走ってしまったり、ダメなことだ、とわかっていてやってしまうことも少なくありません。そんなダメな部分こそ、ある意味もっとも人間が人間らしい部分であり、そしてそんなところも優しく包み込んで、そして寄り添ってくれるような音楽、それがブルースではないか、とこの映画を見ていて強く感じました。

かつて落語の名人、立川談志は、落語のことを「人間の業の肯定である」と語っていました。今回、この映画を見て頭に浮かんだ言葉がそれで、ある意味、ブルースという音楽に関しても同じようなことが言えるのではないでしょうか。特に本作のドラマパートからは、そんなブルースというのがどのような音楽であるのか、その物語を通じて感じ取れるようにも思いました。

そんな訳で、ブルースという音楽が好きなら、あるいは興味を持っているのならば、間違いなくチェックしてほしい映画だと思います。ドラマパートの物語自体には、それほど魅力はないのですが、ただ、この映画を通じて、ブルースとはどんな音楽なのか、感じ取れる素晴らしい映画だったと思います。お勧めです。

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