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2026年9月 1日 (火)

「多様性」を感じるコンピレーション

Title:Official FIFA World Cup 2026™ Album

Fifa_album

今年最大級のスポーツイベントとして、大きな話題となったサッカーワールドカップ。日本も3大会連続決勝リーグ進出を決め、残念ながら決勝リーグでは1回戦敗退だったものの、大いに盛り上がった大会となりました。今回紹介するのは、そんな2026年FIFAワールドカップの公式アルバム。ワールドカップ同様、世界の様々な地域やジャンルのミュージシャンたちを集めた作品となっています

内容的にかなり豪華なメンバーが集まったアルバムとなっており、アメリカ出身のutureや南アフリカ出身のTyla、プエルトリコ出身のDaddy Yankee、ナイジェリア出身のBurna Boy、コロンビア出身のShakiraなど豪華なミュージシャンたちが参加。さらには韓国の女性アイドルグループBlack PinkのLisaも参加し、K-POP勢からの参加となっています。まさに全世界からあつまるサッカーワールドカップの公式アルバムらしいラインナップとなっています。

その中でも特に注目なのはThe Rolling Stonesが「In The Star」で参加している点。原曲をベースにリミックスされた作品となっており、打ち込みベースのスペーシーなアレンジで今風な雰囲気の曲となっており、ストーンズよりずっと下の世代の他のミュージシャンたちの曲ともマッチ。もちろん、ミックジャガーのボーカルやキースのギターもそんなアレンジに負けておらず、年齢を感じさせない勢いを感じる作品になっています。

またユニークなのはBlack PinkのLISAが参加した「Goals」。この曲は、ブラジリアンポップのミュージシャン、Anitta、ナイジェリア出身のミュージシャンRemaとのコラボとなっており、K-POPとブラジリアンポップ、アフロビートが融合した独特の楽曲となっており、冒頭に配置されているように、世界各国のミュージシャンが集合したこのアルバムを象徴するような作品となっています。

さらに興味深いのは「Champions」を歌っているIShowSpeedというミュージシャン。日本ではほとんど知名度がありませんが、こちらアメリカでは著名なYouTuberらしく、こういう「ミュージシャン」が参加している点、現代的に感じますし、そんなYouTuberとストーンズが並んで曲を提供している点にもユニークさを感じます。

そんな世界各国の音楽を取り入れたアルバムではあるものの、全体的にはメキシコも開催国のひとつであり、またアメリカでもヒスパニックの比率が高いため、ラテン系の曲が目立ちます。「Mi Mexico Lindo」ではメキシコを代表するシンガーのAlejandro Fernándezが参加。郷愁感たっぷりの歌声を聴かせてくれますし、「Partidazo」でもベネズエラ出身のDanny Oceanがリズミカルなラテンポップを聴かせてくれます。最後を締めくくる「Dai Dai」では、ラテンを代表する歌姫ShakiraがナイジェリアのBurna Boyとタッグを組み、ラテンとアフロポップを融合させたリズミカルなポップを聴かせてくれています。

このような世界各国のミュージシャンたちが参加し、様々なジャンルの音楽を詰め込んだ、まさに「多様性」を感じさせるコンピレーション。ただ、今、この「多様性」というキーワードに逆風が吹いています。特に今回のワールドカップの開催国、アメリカにおいては、トランプ大統領がこの「多様性」を否定するような方針を次々と打ち出しています。さらに、このトランプとFIFAの癒着が問題となっており、今回の大会ではアメリカ代表選手の処分にトランプが介入し、FIFAがそれに応じるという事態が生じ、猛反発や批判の声があがりました。それだけに、このような多様性の魅力を感じさせるコンピレーションをFIFAが、アメリカが開催国が加わっている大会においてリリースすることに、非常に皮肉を感じました。

もうひとつ今回のコンピレーションで気になったこととして、日本のミュージシャンが参加していないがあげられます。今回、日本はワールドカップに出場しており、一方でK-POPのミュージシャンも参加しているにも関わらず、残念ながら日本のミュージシャンは一切、参加していません。

ここ最近、特に日本のメディアにおいて「J-POPが海外でうけている」という話題をよく取り上げたりします。ただ、実際、アメリカのチャートでもイギリスのチャートでもBABYMETALをのぞいて、J-POPがチャートにあがってくることはほとんどなく、このニュースには以前から眉唾的な疑問を感じていました。そんな中、このコンピレーションで、これだけ世界のミュージシャンが参加していながら日本のミュージシャンが選ばれていない、という事実こそが、今のJ-POPの立ち位置なんだろうな、という現実を実感させられます。このコンピ盤ではそんなJ-POPがどうみられているのか、という事実を強く感じました。

そんな気になる点はあるとはいえ、豪華なミュージシャンが参加し、様々な音楽性を取り込んだ本作は、前述の通り、まさに人間が多様であり、その多様性が音楽に対して、いかにプラスの要素を与えるのか、ということを実感できるコンピレーションアルバム。ロック、HIP HOP、EDM、ラテン、アフロビートなどなどの要素をごった煮にしたような作風がとても楽しく、ワールドカップやサッカーに興味がなくても是非とも聴いてほしいアルバムです。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

Magazine/YHWH Nailgun

実験的な音楽性で注目を集めるニューヨークの4人組ロックバンドによる新作。前作「45 Pounds」は非常に挑戦的かつ実験的な作風が大きな魅力となっていましたが、今回もその路線を引き継ぎ、アイディア豊富、パンクやファンク、ノイズ、エレクトロなどを融合させたアグレッシブな作品が並びます。ただ、前作も10曲21分という短い作品でしたが、10曲入りわずか11分という短さ。どんどんと新しい曲が展開していくような内容ですが、さすがにここまで行くと短すぎるという感触は否めず、ただ、アイディアを並べているだけ、という感じになっていました。さすがに、もうちょっと曲としての体裁を保ってほしい感じも。惜しい感じもする新作でした。

評価:★★★★

YHWH Nailgun 過去の作品
45 Pounds

EXIT 2B/BOYG1RL&NOVAGANG

Exit2b

マイアミ出身のデゥオ、BOYG1RLと、アメリカのHIP HOPグループNOVAGANGによるコラボアルバム。強いビートのハイパーポップを軸に、ハイチのダンスミュージックやブラジリアンファンクなどワールドワイドな要素を入れた楽曲。ただ、基本的には攻撃的なビートのリズミカルなポップが終始流れるアルバム。若干、勢い重視な感もあるのですが、全11曲入りながらも24分という短い時間もあり、最後まで一気に楽しめるアルバムに仕上がっていました。

評価:★★★★★

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