元祖、本家、そして「知られざる」ガールズポップミュージシャンたち
今回紹介するのは、各レコード会社共通の廉価版タイトル「GOLDEN☆BEST」シリーズの作品。以前、歌謡曲のシンガーたちをまとめて取り上げましたが、今回は70年代から90年代にかけて活躍した「元祖」「本家」そして「知られざる」ガールズポップのミュージシャンたちを紹介します。
ガールズポップとは、主に90年代に登場した、アイドルとミュージシャンの間を行くような女性シンガーたちのこと。当時はアイドル冬の時代で、アイドルがほとんど見向きもされない中、そのスキマを埋めるように、アイドルばりのルックスを持ち、アイドル的な人気を確保しつつ、ボーカリスト、あるいはシンガーソングライターとして「本格的なミュージシャン」的に活躍していたシンガーたちのこと。アイドル全盛の今でも、このタイプの女性シンガーは少なくありませんが、特に90年代においては、ひとつのムーブメントとして一世を風靡しました。
Title:GOLDEN☆BEST 太田裕美
Musician:太田裕美
まずはある意味、このガールズポップの「元祖」とも言えるシンガー、太田裕美。一般的にはこのアルバムにも収録されている「木綿のハンカチーフ」の大ヒットで知られています。その後も同作に続くシングルで、本作にも収録されている「赤いハイヒール」「最後の一葉」などもヒットを飛ばしており、決して「木綿のハンカチーフ」の一発屋ではないのですが、現在、彼女を紹介される時は、どうしても「木綿のハンカチーフ」のシンガー、という紹介のされ方をされてしまっています。
そんな彼女のデビュー作「雨だれ」から、2001年にリリースされ、NHK「みんなのうた」の曲として注目もされた「パパとあなたの影ぼうし」まで収録されている本作。まず感じるのは楽曲として良くも悪くもバラエティーがあるという点。特にデビュー作「雨だれ」や「最後の一葉」などはムード歌謡曲の傾向が強いのですが、「木綿のハンカチーフ」もそうですが、同作ヒット後は比較的フォーキーな作風の曲が増えます。かと思えば哀愁感あってドラマチックな大滝詠一の「さらばシベリア鉄道」を歌ったり(大滝詠一バージョンしか知らなかったのですが、こちらがオリジナルなのですね・・・)、「満月の夜 君んちへ行ったよ」のようなテクノ歌謡とラテンを融合させたような曲もあり、バラエティーに富んでいます。
彼女の曲は非常に清涼感のある歌声で、ある種の包容力も感じさせ、良く言えば、曲を選ばない歌声ということも言えるのですが、一方、70年代の歌謡曲を聴いて感じた、シンガーのイメージをあまり大事にしない、シンガーに対する「雑」な取り扱いという感じもします。もっとも、彼女の場合は、「木綿のハンカチーフ」のヒット後は、比較的フォーキーなイメージが前に押し出されており、そういう意味ではまだミュージシャンイメージというものを大事にされたのでしょうが・・・。
評価:★★★★
Title:ゴールデン☆ベスト 永井真理子
Musician:永井真理子
そしてこちらは90年代ガールズポップの代表格。まさに「本家」といっていいミュージシャン、永井真理子。キュートなルックスながらもボーイッシュな元気印のスタイルで、アイドル的な人気を博しました。本作にも収録されている「ミラクル・ガール」が当時大ヒットしたアニメ「YAWARA!」の主題歌にもなり大ヒット。「ZUTTO」では紅白出場を果たすなど、数多くのヒット曲をリリースしてきました。本作はそんな彼女の代表曲を収録されているのですが、リリース順ではなく、曲の並びも考えられた構成となっています。
彼女も基本的にはシンガーソングライターではなく、他の作家の曲を歌う「シンガー」になるのですが、この頃になると、やはりミュージシャンの「イメージ」ということも大事にされはじめたのか、70年代歌謡曲にような「なんでもあり」みたいな雑な扱いはなく、基本的にはヒットした「ミラクル・ガール」や、(現時点で)最後のヒット曲となった「chu-chu」のような、まさにボーイッシュなイメージ通りの元気印の楽曲を多く歌う一方、ヒットした「ZUTTO」や「やさしくなりたい」「瞳・元気」のようなしんみりと聴かせるタイプの曲も多く、ここらへんのギャップがまた、当時は多いに受けたのでしょう。
実は私自身、リアルタイムでは永井真理子についてそこまではまっていなかったのですが、ただあらためて聴くと、やはり良い意味でいかにも90年代的な、当時の社会全体の「明るさ」も感じさせるようなポップな楽曲が多く、やはり元気印の彼女の楽曲にはすごく魅せられてしまいます。もちろん今でも現役で活動されているそうなので、ライブなども機会があったら見に行きたいかも。これぞガールズポップといった感じの魅力的な作品でした。
評価:★★★★★
永井真理子 過去の作品
My foot steps-20th anniversary memorial collection-
GOLDEN☆BEST-complete singles collection-
Title:GOLDEN☆BEST/チューインガム
Musician:チューインガム
そしてこちらは「知られざる」ガールズポップといったところでしょうか。松田りか、松田マミという実の姉妹2人組によるフォークデゥオ、チューインガムのベストアルバム。1972年に「風と落葉と旅びと」でデビュー。デビュー当時はまだ小学生だったようで、「天才小学生デゥオ」と話題になったようで、同作もオリコン最高位16位とスマッシュ・ヒットを記録しています。
確かに、この「風と落葉と旅びと」は、アコギアルペジオと、彼女たち2人の幼さも感じさせるものの、声変わり前の清涼感ある歌声のハーモニーが絶妙で、確かに「天才小学生デゥオ」という名前が嘘ではなく、今聴いても非常に魅力的な作品となっています。その後も物語性ある内容でメランコリックな「岡田さんの手紙」やハワイアンの要素を入れた「海のみえる放送局」など、彼女たちの魅力的なハーモニーを聴かせるフォーキーな作品が続き、耳を惹かれます。また、基本的に本人たちも作詞作曲も手掛けており、ミュージシャンとしての実力もしっかりと感じさせてくれます。
その後も基本的にはフォーキーな作品が目立つのですが、やはり70年代当時はミュージシャンイメージを軽視していたためか、また、大きなヒットを出せなかったためか、徐々にいかにも歌謡曲といった感じの曲が増えてきており、清涼感あるハーモニーのフォークソングという彼女たちの魅力が薄れていってしまう感じになってしまうのが残念。また、逆に「天才小学生」というイメージが足を引っ張ったのか、全体的にカーペンターズあたりを彷彿とさせるような優等生的なソフトロックという路線が目立ち、これはこれで「大人」になっていく彼女たちのイメージチェンジを阻害するような要因になってしまったようにも感じました。
ただ、彼女たちの存在を今回はじめて知ったのですが、非常に魅力的なグループであることは間違いなく、まだまだ素晴らしいミュージシャンが数多くいるんだな、ということを感じさせる出逢いのあったベスト盤でした。
評価:★★★★
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