« 「和解」と「寛容」のドキュメンタリー | トップページ | 今週も男性アイドルグループがズラリ »

2026年9月29日 (火)

ノンフィクション性の強いリリックが特徴的

Title:無職覚醒
Musician:アフロ

2024年12月に活動を休止したHIP HOPグループ、MOROHAのMC、アフロによる初のソロアルバム。徹底的に自己の内面を吐露したリリックにポエトリーリーディング的なラップと、相方UKのアコギ1本というシンプルなサウンドという独自性のあるユニットでしたが、残念ながらUKからの申し出により活動休止となってしまいました。

もともと、UKからの活動休止の申し出を受けた時、アフロは「1人での活動を続ける」という話をしたそうですが、それはUKから拒否されたそうで、その後、アフロはどのような活動を続けるのか気になっていたのですが、今回、ソロ活動をスタート。あくまでもUKから拒否されたのは、MOROHAとしての活動という意味だったのでしょうか。

そんなアフロのソロデビュー作ですが、明確にMOROHAとしての活動と、そのスタイルが異なります。まず耳を惹くのがトラック。アコギ1本だったMOROHAの時のトラックと異なり、様々なサウンドを取り入れています。冒頭を飾る「ギンギラ」では打ち込みやシンセで分厚いトラックを作りあげていますし、「花と木刀」はハードコア風なHIP HOPとなっています。「ムーンリバー」ではピアノとホーンで哀愁たっぷりのムーディーなトラックに仕上げていますし、ラストを飾る「ワンツー」や「じんせい」はMOROHAを彷彿とさせるようなリリックとシンプルなトラックが特徴的ですが、そこで鳴っている音はアコギではなくピアノに入れ替わっています。

また、さらに大きく異なっているのがリリック。MOROHAの作品では、前述の通り、自己の内面を吐露する、ノンフィクション性の強いリリックが特徴的でしたが、今回の作品では12曲にそれぞれの主人公が登場。かなりノンフィクション性の強いリリックとなっています。1曲目の「ギンギラ」は、まさに現在、アフロが立たされている状況を描いているのですが、「花と木刀」では、学校の不良が主人公。いままでのアフロのリリックからすると違和感を覚えるかもしれません。かと思えば「牛乳パン」では、逆にいじめられっ子が主人公となっていますし、「POETRY DREAM」では、MOROHAをモデルとなっているようですが、相方は既に死んでいる設定にっています。これ、UKに許可は取ったんだよね?(笑)

サウンド面はもちろん、リリックでも大きくMOROHAのスタイルと変えてきたあたり、ソロとして新しいことをやりたい、またソロだからこそ出来ることをやりたいというアフロの決意を感じます。また、ソロだからこそ、様々なゲストが参加している点も特徴的で、「checkered fire」「牛乳パン」では澁谷逆太郎ことSUPER BEAVERの澁谷龍太がボーカルで参加しているほか、「サンパチ」ではヒグチアイ、「花と木刀」ではMY FIRST STORYのNobがアレンジで参加しているなど、多彩なゲストの参加もまた、ソロならでは、といった感じがします。

一方、もちろんMOROHAから変わらないアフロらしさも健在で、そのポエトリーリーディング的な、独特なラップスタイルは変わりません。また、様々な人物が主人公になっているますが、基本的に逆境にあっている「弱者」であり、その中から立ち上がろうとするスタイルはMOROHAの楽曲から大きくは変わっていません。ノンフィクション性の強いリリックやバラエティー富んだサウンドに、MOROHAのイメージを聴こうとすると違和感を持つ方もいるかもしれませんが、聴く進めるうちにおそらく違和感は徐々に薄れ、MOROHAが好きだった方は十分楽しめる作品だったと思います。

ソロとして自由度の高まった作品と感じますが、その一方、ノンフィクション性が強い作品がゆえに、どこか作られた感は否めず、ソロの活動が進んでいく上に、徐々にネタ切れしてしまうのではないか、という感じも受けてしまいます。まあ、自己を吐露するMOROHAのスタイルも同じようなリスクは抱えるのですすが・・・。そういう気になる点はありつつも、本作はアフロらしい傑作と言える作品。自分の内面の吐露については、いつか帰ってくるかもしれないUKを待っているのかもしれません。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

GOLDEN☆BEST ブレッド&バター/ブレッド&バター

レコード会社共通の廉価版ベストシリーズ「GOLDEN☆BEST」。本作は2005年にリリースされた作品のBlu-spec CD 2仕様による再発盤。1984年から1996年に在籍したファンハウス時代の音源を収録しているため、一部、1989年に再録した音源を使用しているそうです。フォークデゥオとして紹介される2人ですが、基本的には1980年代以降の楽曲が収録されているため、フォークというよりもAORやシティポップ的な作品が多い感じに。楽曲によっては哀愁感が強く、歌謡曲テイストが強い感じになっているのは、なんでも歌謡曲になりがちな昭和の頃ならではといった感じですが、全体的にはシティポップの先駆け的に楽しめるアルバムになっていました。

評価:★★★★

GOLDEN☆BEST りんけんバンド/りんけんバンド

こちらも同じく「GOLDEN☆BEST」シリーズのBlu-spec CD 2仕様の再発盤。沖縄民謡と日本のポップスを融合させた独自の音楽性で人気を博し、今でも活動を続けているりんけんバンドのベスト盤。三線や太鼓を用いた沖縄音楽のリズムに、時にはリズミカルに、時には哀愁たっぷりに歌い上げる曲調が魅力的。曲によっては、シンセを融合させており、「現代風」にアップデートさせた音楽性もユニーク。時代を超えて今でも十分に楽しめるアルバムです。

評価:★★★★★

|

« 「和解」と「寛容」のドキュメンタリー | トップページ | 今週も男性アイドルグループがズラリ »

「アルバムレビュー(邦楽)2026年」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« 「和解」と「寛容」のドキュメンタリー | トップページ | 今週も男性アイドルグループがズラリ »