政治的主張も強いが、インパクトあるリズミカルな楽曲も大きな魅力
Title:FENIAN
Musician:KNEECAP
北アイルランドの3人組HIP HOPデゥオ、KNEECAP。2017年から活動を開始している比較的若手のグループで、本作もまだ3作目のアルバムとなります。北アイルランドといえば、北アイルランド紛争が知られるように大きな問題の抱える地域。そんな中で結成された彼らは、非常に政治的な主張が強いグループとして知られ、アイルランド統一を支持する立場から、楽曲的には社会風刺を多く含む歌詞が取り入れられています。アルバムタイトルである「FENIAN」という言葉も、19世紀のアイルランド独立運動家を指すことばだとか。一部では侮蔑的な意味を込められた言葉だそうですが、あえてそのような言葉をアルバムタイトルとして使い、自分たちのアイデンティティを取り戻そうとしている強い意図があるそうです。
さて、そんなアルバム、政治的な要素もある歌詞を英語と、彼らの母国のアイルランド語を駆使した内容となっています。そんな作品であるがゆえに、歌詞の内容を含め、私たち日本人にとって、その魅力をすべて理解するのは難しいかもしれません。しかし、本作、その政治的主張の鼓舞が伝わってくるような力強いラップとリズミカルなビートが実に魅力的。14曲42分というコンパクトな内容がゆえに最後まで一気に楽しめる傑作に仕上がっていました。
サウンドは重低音を駆使し、高揚感あるリズミカルなビートが特徴的。全体的には80年代、90年代のHIP HOPを彷彿とさせる、ちょっと懐かしさも感じるオールドスクールなサウンドづくりとなっています。まず序盤の「Smugglers&Scholars」はトリップポップ風なサウンドでリズミカルなビートが耳を惹く作品。続く「Carnival」もタイトルとは異なり、不穏なビートが終始流れる作品ながらも、その不穏さとテンポよいリズムが強い印象を与えるナンバーとなっています。
インパクトの強さで言えば中盤の「Liars Tale」が魅力的。疾走感あるれる強いビートのリズミカルなチューンで、高揚感があがる作品。タイトルチューンとなっている「FENIAN」も、エレクトロなビートが入ったリズミカルなダンスチューンとなっており、ライブでは大盛り上がり間違いなさそうな楽曲。続く「Big Bad Mo」もこちらはよりテクノの色合いの強くなっているダンスチューン。さらに「Headcase」はリズミカルなダブステップのナンバーと、インパクトの強いナンバーが並び、高揚感がどんどん高まっていきます。
後半はインダストリアル的なサウンドでダークに聴かせる「Occupied 6」や、アイルランド語のリズムが特徴的ながらも、不穏な雰囲気が漂う「Geal Phonics」などが並び、ラストの「Irish Goodbye」はピアノを中心としたメランコリックでメロディアスなフロウのラップで締めくくり。全体的に政治色の強い作風ながらも、最後の曲は家族への想いがテーマという内省的な作品となっており、強烈なメッセージが続く本編の中ではサウンドを含め、心地よい余韻を残す締めくくりとなっています。
歌詞ももちろん大きな特徴で、アルバム冒頭の「Éire go Deo」はタイトルからしても「アイルランドよ、永遠に」という意味だそうですし、「Liars Tale」はタイトルからしてわかりやすいのですが、政治家やメディアを嘘つきとして批判する内容で、イギリスのキア・スターマー首相を批判する内容が含まれているそうです。また、必ずしもアイルランド周辺の出来事だけに限らず、「Palestina」ではタイトル通り、パレスティナへの連帯がテーマに。サウンドには中東的な要素も含められており、歌詞とリンクしたサウンドも大きな特徴となっています。
そんな社会派の強い歌詞も大きなインパクトになりつつ、ちょっと懐かしさも感じさせる力強いビートやラップも大きなインパクトに。そのサウンドを通じても彼らの主張が伝わってくるようですし、まずは興味を持ってもらうという点において、非常に有効的と言えるでしょう。リズミカルなビートはライブでも盛り上がりそうですし、申し分ない傑作のアルバム。個人的には今年を代表する1枚と言っていいと思います。パレスティナの問題もそうですが、世界では様々に不穏な状況が続いていますが、そんな中、彼らのようなグループはますます存在感が増すように思います。今、もっとも注目したいHIP HOPグループと言えるでしょう。
評価:★★★★★
ほかに聴いたアルバム
Michael:Song From The Motion Picture(邦題「Michael/マイケル」オリジナル・サウンドトラック)/Michael Jackson
日本でも大ヒットを記録した映画「Michael/マイケル」。KING OF POPことマイケル・ジャクソンの半生を描いたこの映画は先日私も見に行きましたが、本作はその映画のサントラ盤。といっても、事実上、マイケルのオールタイムベスト的なアルバムとなっており、ジャクソン5時代の曲から、1987年のナンバー「BAD」まで網羅的に収録。映画自体、1984年のジャクソンズ脱退までで終わっているため、これ以降の楽曲は収録されていないのですが、マイケルの代表曲を、13曲57分というコンパクトな内容にまとめたベスト盤になっているために、初心者にとってはうってつけのベスト盤になっています。映画を見て、あらためてマイケルの曲を聴いてみたいと思った方にもピッタリの1枚です。
評価:★★★★★
MICHAEL JACKSON 過去の作品
Thriller(25th Anniversary Edition)
MICHAEL JACKSON'S THIS IS IT
KING OF POP
MICHAEL
XCAPE
Thriller 40
HAND IT OVER:2 CD DELUXE EXPANDED EDITION)/DINOSAUR JR.
オルタナ系ロックの雄、DINOSAUR JR.が1997年にリリースした作品。2CDデラックス・エディションとして再リリースされた本作は、アルバム未収録のEP収録曲やテレビで放送された音源などをボーナストラックとして収録したほか、Disc2には1997年のストックホルムでの公演がフルに収録されています。ノイジーなギターロックが炸裂する本編ももちろんですが、ライブ音源の方も、彼らがもっとも勢いのあった時代を収録された、その当時の空気感が伝わるような作品に。彼らの魅力を再認識できる2枚組でした。
評価:★★★★★
Dinosaur Jr. 過去の作品
beyond
Farm
Give a Glimpse of What Yer Not
SWEEP IT INTO SPACE
Green Mind (Expanded Edition)
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