実力派3人によるバラエティー富んだ作品
Title:forgotten
Musician:冬にわかれて
ミュージシャン名が独特ながらも詩的な印象を受けるバンド、冬にわかれて。このバンドについては今回、はじめて知ったのですが、メンバーは寺尾紗穂、伊賀航、あだち麗三郎という、それぞれもソロでも活躍しているミュージシャンたち3人によるスーパーグループで、結成が2017年で、なにげにこれが既に4枚目となるアルバムだとか。冬にわかれてという名前も印象的ですが、こちらは詩人、尾崎翠の詩「冬にわかれて」の一節「冬にわかれて 私の春に住まなければならない」からとられているそうです。
サウンドはアコースティックな楽器がメインとなる構成で、楽曲も基本的にはフォークを基調とした作風。「冬にわかれて」というバンド名のイメージ通り、冬らしい静けさと、どこか寂寥感も覚えつつも、同時にアコースティックな楽器からどこか暖かみを感じさせるメロディーとサウンドが特徴的になっています。そして、そんなフォーキーな作風をベースとしながらも、楽曲によって顔をかえてくるようなバラエティーのある構成も大きな魅力となっていました。
まずオープニングに続く事実上の1曲目「夜半の火の子守歌」は、ちょっとくすんだ感じを醸し出す寺尾紗穂のボーカルも魅力的な、ムーディーでジャジーな作品からスタート。かと思えば、続く「ペパーミント・タイムス」は一転、エレクトロサウンドも用いた、アンビエント風のポップチューンに仕上がっています。さらにそれに続く「シーフー」では、異国への旅をテーマとした歌詞の曲となっており、サウンドもどこか異国情緒を感じさせるような作風に仕上げています。
その後も「東京レイン」はメロウなソウルチューン。個人的にはちょっとKIRINJIも彷彿とさせました。さらに「素粒子のダンス」はピアノやフルートのサウンドを爽快に聴かせる明るくメロウなポップチューン。そして楽曲はピアノでポップに爽快に聴かせる「君の旅」が終盤のハイライトとなり、最後はエレピで静かにジャニーに聴かせる「みらい」で締めくくられます。
そんな感じで全10曲38分という比較的短い長さの作風の中、様々にバラエティー富んだ作品が並ぶアルバムとなっています。これはやはり3人が3人とも、それぞれにソロでも活躍を続けるミュージシャンたちということで、その音楽性の広さがそのままバンドにも反映された、ということなのでしょう。また、それぞれの音楽性を制約することなく、好きなように活動を続けているからこそ、時として空中分解しがちなスーパーグループでありながらも、既に8年以上にわたり、4枚ものアルバムをリリースできたのかもしれません。
ただ一方ではアルバム全体を貫くような共通点もしっかりと感じられるアルバムとなっており、まずなによりも寺尾紗穂の暖かみのありつつ、感情のこもったボーカルが魅力的。また、全体的にアコースティックなサウンドが共通項となっており、どこかフォーキーな雰囲気が漂う点も、アルバム全体がバラバラにならずにまとまっている大きな要因でしょう。また、「ペパーミント・タイムス」や「君の旅」のような、どこか外へ旅立っていくような歌詞も目立ちますし、最後も「みらい」と先へ進んでいこうとするスタンスも感じられます。この点もアルバム全体に共通項を感じさせる部分でした。
そんな訳で、それぞれがソロで活躍するメンバーそれぞれがしっかりとその魅力を伝えて、バラエティー富んだ作風を聴かせてくれる傑作。決して派手な作品ではありませんが、ゆっくりと聴き入りたい、そんな作品となっていました。これからの夏の暑い時期でもしんみりと心に染み入ってくるような作品です。
評価:★★★★★
ほかに聴いたアルバム
Crest/Anarchy
Anarchyの10枚目となるアルバムは、KMが全曲プロデュースを手掛ける作品。PUNPEEやWatsonなどの豪華ゲストも参加しています。最近のAnarchyの傾向でもあるのですが、全体的にわかりやすさを感じる作品となっており、彼に求められる「下流社会のリアル」のようなテーマ性もわかりやすく綴られています。また、プロデューサーとしてKMが入ったことによって、メロウなサウンドやエレクトロビートなどを取り入れた、全体的に都会的に洗練されたサウンドになっている点も特徴的。Anarchyの描く「下流社会」というリリックと、KMによる都会的なサウンドが若干ミスマッチな感も否めなくはないのですが、全体的にはやはりAnarchyの世界観がしっかりと伝わる、いい意味で聴きやすさ、ポピュラリティーを感じさせる作品となっていました。
評価:★★★★
Anarchy 過去の作品
Dream and Drama
Diggin' Anarchy
DGKA(DIRTY GHETTO KING ANARCHY)
NEW YANKEE
BLKFLG
THE KING
NOISE CANCEL
LAST
Chunk of Red/ビレッジマンズストア
結成20周年イヤーにリリースされた7曲入りのミニアルバム。もう、そんなベテランの域に入るようなバンドなんだ・・・とちょっと驚かされますが、勢いのあるガレージロックに、感情を込めたシャウト気味のボーカルは、まだまだ若々しさを感じますし、それがまた彼らの魅力なのでしょう。この勢いあるガレージロックに、歌謡曲的な哀愁感あるメロという組み合わせは魅力的ですし、歌謡曲風でありつつも変にウェットすぎず、ベタになりすぎないというバランス感覚の良さも魅力的。ただ、以前から勢い1本の似たような曲が多いのも課題な感もあります。とはいえ、本作に関しては、7曲入り20分強という内容なだけに、そういうマイナス点が気にならないうちに一気に聴き切れる内容となっており、ビレッジマンズストアの魅力をしっかりと感じられる作品になっていました。
評価:★★★★★
ビレッジマンズストア 過去の作品
正しい夜明け
YOURS
愛とヘイト
re:Rec BEST『遊撃』
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