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2026年8月28日 (金)

人生はプリズム

Title:PRISM
Musician:踊ってばかりの国

約2年ぶりとなる踊ってばかりの国のニューアルバム。今回のアルバムタイトルは「PRISM」。プリズムというとご存知の通り、ガラスや水晶などの透明な素材でできた多面体のことで、光を屈折、反射、分散させる性質のある物体のこと。音楽ファン的にはピンク・フロイドの「狂気」のジャケットでおなじみ・・・といった方がよいかもしれません。このアルバムタイトルを、「光をいろんな要素に分散させる」という性質から転じて「多様性」のような意味でつかわれているようですが、今回のアルバムはこのタイトル「PRISM」が、様々な意味で用いられている作品になっていました。

まず、そのリリース形態。CD、配信、LPという形態でリリースされているのですが、それぞれのメディアに沿った音質、マスタリングされているそうです。そこにこだわりを感じさせますし、また、リスナーの側からすると、様々なメディアを通して聴ける「多様性」を意図したリリースとなっています。

次に音楽性の側面。「踊ってばかりの国」の曲を、様々な音楽性の要素に分解して見せる、という意図があるようです。彼らは毎回、サイケデリックロックを主軸にしつつ、様々な音楽性を取り込んだ楽曲を聴かせてくれていますが、今回も同様で、アルバムの冒頭を飾る「PSYCHE STAR」はラーガロック的なスタート。「酸性雨」ではレゲエ的なリズムを取り入れていますし、「シーラカンス」では郷愁感帯びたサウンドに、ハワイアン的な要素が加わります。今回のアルバムに限った話ではないのですが、今回の作品でも様々な音楽的要素を感じさせます。

さらにもうひとつの側面としては「歌詞」。もともとメンバーの下津光史は、社会的なメッセージ性の強い歌詞を多く書いていましたが、今回のアルバムで焦点となっているのは「自由」。今回のアルバムリリースに際して彼は「まさに人生はプリズム」という言葉を述べていますが、プリズムのような人生だからこそ大切となる「自由であるということ」を今回のアルバムのメッセージの軸として掲げているように感じます。

ただし、単純に声高に自由に生きることを歌っている訳ではない点が彼ららしくユニーク。「Choose your life」ではタイトル通り、自分の人生を選べと比較的ストレートに歌っているものの、「酸性雨」では「自由に生きるわ/せめて」と「せめて」という言葉をつけて、どこかあいまいさを感じさせつつも自由に生きることの重要さを歌っていますし、「逢魔ヶ時」は、昼と夜の間、世界の境界があいまいになる時間を歌っており、インタビューで「自由を感じるのは白や黒ではなく灰色の部分」と語っているように、そのあいまいさ強調しています。

時として、特にネット上では「0」か「1」かを異常なまでに求められるシーンが少なくありません。自分たちの味方か敵か明確に区別し、少しでも自分たちの意見に異を唱える場合には、すぐに「敵」と判定するシーンがよく見られます。そんな現代だからこそ、このあいまいさを大切にしたい、このあいまいさこそ自由である・・・そんなメッセージを強く感じさせます。

ただ、こういうメッセージの下でこう言ってしまうのは何なのですが、このあいまいにゆれうごく音楽性のためか、アルバム全体としては若干インパクトが弱かったかな、という印象も受けてしまいます。「Blowin'in the wind」のように、グリーヴ感をよく感じさせる比較的インパクトを持った楽曲もあるのですが、アルバム全体としては核になるような曲があまりなかったかな、という印象を受けました。良くも悪くも、ちょっと地味なアルバムだった、という印象は否めません。

もっとも、そのマイナスがありつつも、多彩な音楽性や自由に対するメッセージ性、そして意外にポップなメロディーラインをあわせて、十分「傑作」の水準である作品であることは間違いないでしょう。あいまいさを許容できなくなりつつある現代だからこそ届けたい、人生はプリズムである、そんな主張が心に響いてくる作品でした。

評価:★★★★★

踊ってばかりの国 過去の作品
グッバイ、ガールフレンド
世界が見たい
SEBULBA
FLOWER
踊ってばかりの国
サイケデリアレディ
SONGS
君のために生きていくね
光の中に
moana
Paradise review
On the shore


ほかに聴いたアルバム

仮のまま定着したような愛情で/クリープハイプ

アルバムとしては、「こんなところに居たのかやっと見つけたよ」から約1年半ぶりとなる5曲入りのEP盤。楽曲的にはいつもの彼ららしい、これでもかというほどの哀愁感ただようメロディーラインに、独特のボーカルがのり、さらにはテンポよいバンドサウンドで聴かせるスタイル。基本的にはクリープハイプらしさを感じさせる曲が並び、良くも悪くも安心して聴ける作品になっています。

評価::★★★★

クリープハイプ 過去の作品
吹き零れる程のI、哀、愛
クリープハイプ名作選
一つになれないなら、せめて二つだけでいよう
世界観
もうすぐ着くから待っててね
泣きたくなるほど嬉しい日々に
どうにかなる日々
夜にしがみついて、朝で溶かして
だからそれは真実
こんなところに居たのかやっと見つけたよ

PAPER SLEEVE CD BOX/THEE MICHELLE GUN ELEPHANT

2024年末から、デビュー30周年プロジェクト「THEE 30TH」として、過去のアルバムのリマスター作がリリースされてきたTHEE MICHELLE GUN ELEPHANT。その締めくくり的にリリースされたのがこのボックスセット。いままでリリースされた彼らのアルバムをCD盤でまとめ、また、B面ベスト盤「RUMBLE」にアルバム未収録曲を加えた「RUNBLES」を収録しています。オリジナルアルバムに関しては、いままで当サイトでもレビューしてきたので、今回あらためて聴いたのが「RUNBLES」の方。ただ、基本的に疾走感あふれるガレージロックという路線はB面でも全く変わらず。B面だとちょっと変わった曲も収録、というケースも少なくないのですが、彼らの場合、愚直にロックンロールを追求してきたんだな、ということをあらためて感じます。いままでのリマスター作は基本的にアナログか配信でのリリースでしたので、CDで所有したい、という方はあらためて本作で。

評価:★★★★★

THEE MICHELLE GUN ELEPHANT 過去の作品
THEE GREATEST HITS
cult grass stars
High Time
Chciken Zombies
GEAR BLUES
カサノバ・スネイク
ロデオ・タンデム・ビート・スペクター
SABRINA HEAVEN
SANBIRNA NO HEAVEN
wonder style

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