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2026年8月11日 (火)

今、最も注目されるトラックメイカー

Tilte:イ三
Musician:原口沙輔

Isan

おそらく、現在最も注目をされているミュージシャンの一人であろう、原口沙輔。ボカロPとしても活躍し、特に「人マニア」はビルボードのボカロチャートで14週連続1位を獲得するなど、圧倒的な人気を確保しました。本作は、その彼の3枚目となるアルバム。ただ、彼はこのアルバムを「実質のファーストアルバムであり、ベストアルバムであり、ラストアルバム」と語っており、まさにいままでの彼の活動のひとつの集大成とも言えるアルバムとなっています。

彼は非常に実験的なミュージシャンであり、「ミュージシャン」という以上に「トラックメイカー」という表現がピッタリくるかもしれません。実際大ヒットして、本作にも収録されている「人マニア」についても、かなり挑戦的な作品で、重音テトのボーカルが、ひとつの言葉ごとに分解されたように配置され、ピアノとドラムで刻まれるリズムはかなりアバンギャルド。これが14週も1位を獲得するほどヒットしていた事実にも驚かされます。

今回のアルバムについても、31曲もの曲が収録されているのですが、アルバム全体の長さとしては56分。1曲あたり1分から、長くて2分程度の短い曲が並んでおり、次から次へと繰り広げられる「音の実験場」みたいな構成となっています。パソコンの起動音からスタートする本作は、事実上の1曲目はタイトルチューンでもある「イ三」からスタートするのですが、エレクトロやノイズ、メロウなポップを融合した、挑戦的な楽曲。続く「有す」もアバンギャルドなエレクトロのビートと、静かなストリングスとピアノの音色の対比がユニークな挑戦的な作品となっています。

ほかにも「千号」ではサイケでダイナミックなギターサウンドを大胆に導入してきたり、「理性」では女性ボーカルによるポエトリーリーディングを加えてきたり、重音テトを用いた「それに命」では、ボカロと人のボーカルというデュオに挑戦していたり1曲あたりが短い曲の連続ながらも、様々な音の挑戦が試みられています。また、「誰か」では、最初は和風なサウンドが入りつつ、途中からエレクトロビートが加わり、最後はサイケでダイナミックなバンドサウンドで締めくくるなど、3分という短さとは思えない大胆な展開が繰り広げられる作風になっています。

さらには「仮有0一」「仮有0二」ではU-zhaanのタブラに鎮座DOPENESS、環ROYのラップが重なる挑戦的なスタイル。リリックが哲学的なのも特徴的ですが、「仮有0三」ではあのいとうせいこうも参加。「有」という意味についての哲学的な考察は、このアルバムのひとつのテーマとなっています。

全体的には挑戦的な作風の曲が多いものの、メロディアスなポップチューンももちろん多く収録されており、バーチャルライバーの月ノ美兎が参加した「贋ト旧称」はメロウなピアノやストリングスをバックに、月ノ美兎のボーカルと語りでダンサナブルなポップチューンに。「僅力」でも郷愁感あるメロディーをしっかりと聴かせてくれています。全31曲というボリュームで、次々と展開していく構成なのですが、アルバムとしては聴きやすさを感じさせるのは、ここらへんのポップスセンスがアルバム全体を貫いているからでしょう。

ただ、正直言ってしまうと、メロディーメイカーとして原口沙輔については、ちょっと物足りなさを感じてしまう点は事実。純粋にメロディーだけでの勝負となると、いまひとつ的に感じてしまう点も否定できません。とはいえ、サウンドを含めてその実験精神や、その中でのメロディーとのバランスという点においては、間違いなく今のシーンにおいても指折りの、卓越したミュージシャンと言えるでしょう。本作は、そんな原口沙輔の実力を存分に感じさせる傑作。まだまだ彼の活躍は続きそうです。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

いきものがかり meets 2

数々のミュージシャンたちがいきものがかりの曲をカバーしたコラボレーションアルバムの第2弾。JUJUや礼賛、スキマスイッチ、原口沙輔、ねぐせ。といった若手からベテランまで、様々なミュージシャンたちがいきものがかりの曲をカバーしているほか、NHK BS「玉置浩二ショー」で披露された、玉置浩二といきものがかりのコラボ「帰りたくなったよ」、さらにいきものがかり本人たちにより、「ありがとう」をリメイク(本人たち曰く20%増し)した「超ありがとう」も収録されています。ただ、基本的にはいきものがかりの原曲に沿ったカバーとなっており、あまり目新しさはない反面、ファンにとっては安心して聴けるカバーアルバムといった感じに。ちなみにスキマスイッチの「じょいふる」では途中、2人が名古屋弁で会話するシーンがあったりして、個人的にはちょっとうれしかったりして。

評価:★★★★

日本武道館 LIVE 2026 kanekoayano/kanekoayano

Budokankanekoayano

カネコアヤノ率いるバンド、kanekoayanoが、今年1月15日に開催した初の日本武道館単独ライブの模様を収録したライブアルバム。カネコアヤノ名義の曲もkanekoayanoとしての曲も織り交ぜてのセットリストになっていますが、全体的にバンドアレンジにマッチさせて、よりダイナミックな演奏を聴かせてくれるライブアルバムに。カネコアヤノが、わざわざバンドを結成して演りたかった音が何なのか、ということがより明確になっているライブアルバムでした。

評価:★★★★★

カネコアヤノ 過去の作品
燦々
燦々 ひとりでに
よすが
タオルケットは穏やかな
カネコアヤノ 単独演奏会 2022 秋 - 9.26 関内ホール
タオルケットは穏やかな ひとりでに
よすが ひとりでに
カネコアヤノ Billboard Live ワンマンショー 2023 - 12.15 Billboard Live OSAKA
石の糸(kanekoayano)
石の糸 ひとりでに
LIVE 2025 kanekoayano(kanekoayano)

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