今の時代だからこその「希望」を感じさせてくれる作品
Title:HOPE!!
Musician:Angelique Kidjo
西アフリカはベナンのシンガーソングライター、Angelique Kidjo。世界的に高い評価を得ているシンガーソングライターで、前作「Mother Nature」もグラミー賞の「ベスト・グローバル・ミュージック・アルバム」を受賞。その後もほぼ毎年、なんらかのジャンルにノミネートを果たすなど、今、ワールドミュージックの分野で最も高い評価を得ているミュージシャンと言えるでしょう。ちなみに2021年に行われた東京オリンピックの開会式に登場したことでも話題となりました。
今回のアルバムのテーマはタイトル通り「希望」。このアルバムの制作直前に彼女は母親を亡くしており、作品全体が母親に捧げるような内容になっています。その中で、彼女が母親から受けた教えとして「希望こそ人間の土台である」というものがあるそうで、このアルバムでは、まさにそんな人間としての希望を大きなテーマとして掲げています。
特に今回のアルバムで大きな特徴なのは様々なミュージシャンとコラボしている点で、アルバム冒頭を飾る「Bando」では、かのファレル・ウィリアムズとコラボ。アフロポップのナンバーとなっていますが、ファレルらしい明るい雰囲気のポップな作品に。さらにこの曲ではMigosのQuavoも参加し、軽快なラップを聴かせてくれています。「No Stopping Us」も同じくファレルとのコラボとなっていますが、リズミカルでトライバルなビートが鳴り響きますが、こちらも軽快でポピュラリティーを感じさせる作品となっています。
さらに「Oyaya」ではなんとナイル・ロジャースとコラボ。ナイル・ロジャースらしい爽やかなカッティングギターに、トライバルでファンキーなリズムが重なります。さらにブラジルのシンガーIZAも参加しており、ラテンなリズムも加わる作品になっており、まさにアフリカとブラジルのつながりを感じさせる曲になっています。
その他にも「For Me」では、アメリカのファンクバンドThe Gap BandのCharile Wilsonが参加。伸びやかで力強いソウルなボーカルを聴かせつつ、アフロビートのリズムを取り入れており、R&Bとアフロの融合を意図していますし、「Nadi Balance」ではコンゴのシンガー、Fally IpupaにナイジェリアのThe Cavemen、さらにイギリスのジャズ・トランぺッターSheila Maurice-Greyという国際的なコラボを実現。ハイライフの軽快なリズムにジャズの要素が入るというボーダーレスな作品に仕上げています。
そしてラストを締めくくる「MalaÏka」は東アフリカの名曲のカバーで、彼女の母親が愛した曲だとか。力強く歌い上げる「祈り」のような曲なのですが、アレンジはストリングスを入ってクラシカルなものとなっていますし、ここではフランスを代表するシンガーFlorent Pagnyが参加。こちらもアフリカとヨーロッパの融合を意図したような作風に仕上げています。
思えば現在、世界はまさに「分断」が進んでいます。欧米をはじめ、排外主義を煽る傾向は加速しており、残念ながらそれは日本も例外ではありません。また、ウクライナやイランにおける戦争も進んでいます。そんな中、今回のこのアルバムは、まさにアフリカ、アメリカ、ヨーロッパ、ブラジルなど、様々な地域のミュージシャンがコラボを行い、融合を果たすことを意図した作品になっています。楽曲的にもアフリカを彷彿とさせるトライバルなビートに、あか抜けた西洋的なメロディーやサウンドが重なるような作風となっており、楽曲を通して、異なる文化を融合させる意図を強く感じさせます。
そして、その彼女の音楽の方向性は、まさにアルバムのテーマである「希望」を意識させる構成となってます。「希望こそが人間の土台」という彼女の母親の教えの通り、分断を煽られて暗さを感じさせる世の中だからこそ、「希望」こそが重要だと感じさせてくれる作品になっています。ある意味、2026年を代表するような1枚とも言える作品。世界はまだまだ素晴らしいという、希望を抱かせてくれる1枚でした。
評価:★★★★★
Angelique Kidjo 過去の作品
Remain in Light
Celia
Mother Nature
ほかに聴いたアルバム
Inferno/Boards of Canada
スコットランドのエレクトロドゥオによる、実に約13年ぶりとなる新作。タイトルは「Inferno」=地獄というタイトルですし、アルバム全体として宗教的な世界観を意図した作風ということなのですが、そんなことからイメージされるようなおどろおどろしい部分はなく、全編、静かでドリーミーなエレクトロサウンドが流れる作品に。アンビエント色も強い作風となっており、生音なども効果的に取り入れつつ、彼ららしい完成度の高いエレクトロチューンを聴かせてくれています。18曲約70分という長さが、ちょっと長すぎる感じはするのですが、その点を差し引いても、13年という空白をものともしない傑作になっていました。
評価:★★★★★
Boards of Canada 過去の作品
TOMORROW'S HARVEST
Live at Eden Project 25/07/2023/The Who
2023年7月25日に、イングランド・コーンウォールのエデン・プロジェクトで行われた公演の模様を収録したライブアルバム。2022年から23年にかけて行われてきたオーケストラ共演ツアー「The Who Hits Back!」の最終公演であり、ハート・オブ・イングランド・フィルハーモニー管弦楽団との共演となっています。タイトル通り、彼らの代表曲を多く網羅したセットリストになりますが、特に彼らの名盤「Tommy」の冒頭を30分にわたって連続して演奏している点などが大きな注目を集めています。大ベテランの彼ららしい、安定したライブを見せてくれている一方、ストリングスやホーンが入っている演奏は良くも悪くも「大物然」している感じもあり、ロックバンドとしての迫力というよりも、スケール感のあり安定した演奏を聴かせてくれる内容に。それはそれでベテランの彼ららしいといった感じですが、The Whoで求めているものかと言われると微妙な面も。これはこれで間違いなく「今の彼ら」の姿なのでしょうが。
評価:★★★★
THE WHO 過去の作品
Endless Wire
WHO
Live At The Oval 1971
| 固定リンク
「アルバムレビュー(洋楽)2026年」カテゴリの記事
- 「多様性」を感じるコンピレーション(2026.09.01)
- 独特なビート感が耳を惹く(2026.08.22)


コメント