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2026年8月

2026年8月31日 (月)

思ったより骨太感もある入門書

今回は最近読んだ音楽関連の書籍の感想です。

「世界一おもしろい現代ヒップホップ入門」。YouTuberとして活躍しているEJによるHIP HOP入門書。HIP HOPの歴史、HIP HOPとはどういうジャンルなのか、概説的に取り上げられている書籍で、「世界一おもしろい」というタイトル通り、非常にわかりやすそうな内容であったため、読んでみました。本書は序章含めて5つのチャプターに分かれており、Chapter0では、まずHIP HOPがどのような音楽なのか、Chapter1,2では本場アメリカでのHIP HOPの歴史、Chapter3では日本でのHIP HOPの紹介、Chapter4ではHIP HOPにおけるライフスタイルについて紹介、解説しています。

まず、予想以上に面白く、勉強になったのがChapter1,2の本場アメリカでのHIP HOPの歴史に関する項目。基本的にアメリカにおけるHIP HOP誕生に関するストーリーから、その後の展開、ギャングスターラップの登場や、HIP HOPの歴史で欠かせないビーフに関する事項、さらにはその結果の悲劇として生じた2パックとノートリアルB.I.G.の悲劇、さらには最後は、直近でHIP HOPに関するニュースとして大きな話題となったケンドリック・ラマーとDrakeのビーフに至るまで、HIP HOPの歴史について追いかけています。

HIP HOPの歴史を語るには、それなりにボリューム感が必要かと思うのですが、本書では2章でまとめているためザックリとしたまとめになっています。ただ、キーになる部分は抑えているため、いままでのHIP HOPの流れはしっかりとつかめる内容になっており、特に初心者にとっては、むしろわかりやすい感じがします。それよりも本書で感心したのは、これだけ概括的な内容でありながらも、HIP HOPの背景となるアメリカにおける社会問題、特に黒人差別がどうHIP HOPカルチャーに結び付いたのか、というのをしっかりと記載されている点でした。

いままでのHIP HOPの歴史に関して何冊か読んだことがあり、ここでも取り上げたことがあります。例えば「ライムスター宇多丸の『ラップ史』入門」や、HIP HOP入門書として話題となった名著「文科系のためのヒップホップ入門」がそれです。それらの書籍にもHIP HOPをめぐる社会的問題とのリンクも記載はされていましたが、そこまで詳しくはなく。本書に関しては、入門書という限られたボリュームの中で、社会問題とのつながりについてしっかりと記載があり、今回あらためて勉強となったと共に、思ったよりも骨太感があり、また、著者のHIP HOPに関するしっかりとした視点を感じることが出来た記載になっていました。

一方、物足りなさを感じたのがChapter3の日本のHIP HOPの紹介について。こちらもかなりザックリとした紹介なのですが、どうも著者自体が、日本のHIP HOPのうち、例えばスチャダラパーやRIP SLYMEのような、ポップ系、文科系的なHIP HOPをどうも評価していないように感じられ、そちら方向のグループの取扱いが非常に低く感じます。特にKICK THE CAN CREWなどはほぼ無視されているほか、なんといってもさすがにRhymesterを取り上げておらず、それはちょっと手落ち感がありすぎないか?という感じもします。

ここらへんにつながるのがChapter4での記載で、「HIP HOPに大切なのはリアルであること」という論説が述べられています。このこと自体はもちろんHIP HOPの基本中の基本な理解ですが、一方では日本のHIP HOPの中で、例えばAnarchyやBAD HOPのような「下流社会」についてラップしたグループを「リアル」として、スチャダラパーやRIP SLYMEのようなグループを「リアルじゃない」とするのにはかなり違和感があります(本書では「リアルじゃない」とまで直接述べている訳ではありませんが)。特に日本においては、アメリカの黒人差別ような社会問題は大きくは生じていない訳で、その中で、下流社会についてラップすればリアルというのは、ちょっと理解として単純すぎるようにも感じました。

全体としてザックリな紹介であり、また日本のHIP HOPの記載に関しては疑問を感じるような部分もありつつも、一方ではこれだけのザックリとした入門書でありつつも骨太な記載も目立ち、特に本場アメリカのHIP HOPに関しては、入門者の最初の1冊としてはかなりお勧めできる入門書だと思います。ただ、実際に曲を聴いてみようとした入門者に対して紹介されているのがアルバムではなくプレイリストで楽曲単位であるのは、今の時代だからなのか・・・とも思ってしまうのですが、その点を差し引いても、入門書として最適な1冊。HIP HOP、特に本場アメリカのHIP HOPについていろいろと知りたいと思っている方にはお勧めの1冊です。

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2026年8月30日 (日)

久々のオリジナルアルバムですが・・・

Title:THE BLACK〇ALBUM
Musician:Dreams Come True

90年代に、文字通り一世を風靡したミュージシャン、ドリカムことDreams Come True。ただし、ここ最近に関しては正直なところ、若干ネガティブなことで話題となるパターンが多いように思います。特に、メンバーの中村正人の言動が炎上要因となるケースが多く、以前にはCDの売上が芳しくないことをブログ上で明かして話題となったり、2024年にはライブ途中に帰ったファンに対する苦言をXに投稿し、炎上騒動になったりもしました。

もともと中村正人自身、感情をすぐに口に出してしまうタイプだそうで、この炎上騒動についてもそのためのようですが、ただ一方、ドリカムとしての活動の焦りのようなものも感じます。ドリカム自体はいまでもドームクラスでもライブが出来る人気を維持しているものの、最近の楽曲自体が話題になることも少なく、かつてに比べるとやはり人気の衰えは否めません。特に90年代、彼らと同時期に一世を風靡していたミスチルやスピッツ、B'zなどのミュージシャンが、ともすればいまだに圧倒的な人気を維持して新曲も話題にのぼるケースが多いことと比べると、ドリカムに関しては少々見劣りしてしまう点が否めません。

今回のアルバムは実にオリジナルアルバムとしては9年ぶり、本当に久々となる作品ですが、このアルバム自体にもそんな微妙さを感じてしまいます。作品自体は「オリジナルアルバム」であることにこだわった構成になっているようで、まず、CDでのリリースのみという形態。楽曲の構成もオープニングやエンディング的な曲を加え、既発表曲についても「TBA Version」としてリアレンジ。あくまでもアルバムとして、最初から最後まで通して聴くことを前提とした作品に仕上げています。

しかし、そこまで凝った作品のはずなのに、全14曲中、10曲までがこの9年間にリリースしたシングルをリアレンジした曲ばかり。残り4曲のうち1曲はオープニングなので、純粋な新曲は3曲のみ。既発表曲はこのアルバム用にリアレンジしているとはいえ、アルバムを待ちに待ったファンにしてみれば、いささか期待はずれな作品といった感じですし、その点にこのアルバムの微妙さを感じてしまいます。

その9年間に発表した楽曲自体は決して悪くはありません。ドリカムらしい、R&B的な要素を加味した明るいポップ路線を主軸としながら、バラエティー富んだ展開が魅力的。ラテン風の「ここからだ!」や、ある意味ドリカムらしい、祝祭色あるマーチ風の「あなたとトゥラッタッタ♪」、ロック風でダイナミックな「スピリラ」、オープニングにアニメの1シーンを加えて、ドラマチックなスタートとなっている「G」など、様々な要素を加えてリスナーを飽きさせません。

新曲にしても、ドリカムらしいハッピーさあふれる「カンパイマーン♪」やユーモラスでかわいらしい「アヒルガーガー」など、楽曲自体はむしろ全盛期に比べても衰えを感じさせない楽曲の数々に、吉田美和、中村正人それぞれの実力を感じさせます。ただ一方で正直なところ目新しいものはなく、メロディーラインにしても歌詞にしても、全盛期に比べるとインパクトの薄さはいなめません。90年代と比べると、2020年代だからこそのドリカムというスタイルは提示されておらず、この点はやはりかつての彼らに比べると停滞してしまっている、という印象は否めませんでした。

はっきり言うと、やはりアルバムというスタイルにこだわるのならば、基本的にはアルバムでの新曲がメインになるような構成にしてほしかったし、既発表曲をあらためてCDで・・・というのならば、ベスト盤みたいなスタイルにしてほしかったように思います。アルバムの出来としては悪くはないと思いますし、シングル単位で全ての曲を追いかけていないリスナーも多いでしょうから、この9年間のドリカムを知ってもらうという意味はあったと思うのですが・・・次は純然たる新曲メインのオリジナルアルバムを聴きたいな。いろいろな意味で微妙さを感じてしまう作品でした。

評価:★★★★

Dreams Come True 過去の作品
AND I LOVE YOU
DO YOU DREAMS COME TRUE?
LOVE CENTRAL
THE SOUL FOR THE PEOPLE~東日本大震災支援ベストアルバム~
ATTACK25
DREAMS COME TRUE THE BEST! 私のドリカム
DREAMS COME TRUE THE ウラBEST! 私だけのドリカム
THE DREAM QUEST
DISCO prime


ほかに聴いたアルバム

FIRST CRY!!/竹原ピストル

今年50歳を迎え、節目の年となった竹原ピストルの新作は、その節目の年らしく、あらためてもう一度デビューアルバムを作る気持ちで制作したという1枚。歌詞は相変わらず彼らしい、飾らない日常をストレートに綴る歌がメイン。ただ、もう一度デビューアルバムを、といっても内容的にはやはり年齢を経て、経験を経たからこその歌詞が多く、最後を飾る「あたりまえの歌」をはじめ、まさに50歳だからこその等身大を感じさせる曲が目立ちます。一方、サウンド面では弾き語り主導だったいままでの曲から一転、バンドサウンドがメインの構成に。力強いそのサウンドが、まだまだ自分はこれからだ、というような鼓舞にも感じられる、そんな1枚でした。

評価:★★★★

竹原ピストル 過去の作品
PEACE OUT
GOOD LUCK TRACK
It's my Life
STILL GOING ON
悄気る街、⾆打ちのように歌がある。
One for the show
すうぉ~む!!
Two for the show ~すうぉ~む!!ツアー 2025~

名盤ライブ「30/奥田民生」@LINE CUBE SHIBUYA/奥田民生

Meibanlive30

ミュージシャンが過去に発表した「名盤」と言われるアルバムを、そのままライブで再現する「名盤ライブ」と呼ばれるイベントが行われているそうですが、本作はそんな中、昨年12月11日に、渋谷のLINE CUBE SHIBUYAで行ったライブの模様を収録したライブ盤。1995年に奥田民生がリリースした「30」を完全再現したセットリストになっており、本編は「30」を曲順そのままで演奏。アンコールではそのほかの奥田民生の曲を演奏するというセットリストになっています。もう30年も前のアルバムの再現ながら、脱力感ある楽曲はこの頃からだったんだなぁ、とあらためて再認識したのと同時に、タイトル通り、30歳の年に作ったアルバムながらも、30年たった今の奥田民生にも、むしろマッチしているような感じすらするのは驚き。あらためてこの「30」の魅力を感じられたライブ音源でした。

評価:★★★★★

奥田民生 過去の作品
Fantastic OT9
BETTER SONGS OF THE YEAR
OTRL
Gray Ray&The Chain Gang Tour Live in Tokyo 2012
O.T.Come Home
秋コレ~MTR&Y Tour 2015~
奥田民生 生誕50周年伝説“となりのベートーベン"
奥田民生になりたいボーイに贈るプレイリスト
サボテンミュージアム

カンタンカンタビレ
MTRY LIVE AT BUDOKAN
ひとり股旅スペシャル@日本武道館
あまりもの

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2026年8月29日 (土)

豪華ゲストが参加

Title:日本民謡より愛をこめて
Musician:民謡クルセイダーズ

日本の民謡とラテン音楽を融合させて、独自の音楽性を作り出している民謡クルセイダーズ。そんな彼らの約2年7ヶ月ぶりとなる単独名義では3枚目となるアルバム。今回のアルバムでも、ドリフでおなじみの「北海盆唄」「花笠音頭」など、おなじみの民謡から、元ちとせと組んだ「ワイド節」のような新民謡まで、日本各地の民謡を取り上げて、ラテンのアレンジを加え、独特のグルーヴ感を生み出しています。

さて、そんな彼らのニューアルバムですが、基本的にはその音楽の方向性はいままでのスタイルから大きな変化はありません。ただ、そんな中で本作の特徴となっているのは豪華なゲストの参加が目につきます。まず、「こきりこ節」「花笠音頭」ではコロンビア出身のミュージシャン、マリオ・ガレアーノによるクンビア・プロジェクト、フレンテ・クンビエロが参加。こちらは以前、コラボアルバムをリリースしている彼らの盟友でもあります。特に「花笠音頭」は先行シングルとしてリリースした曲ですが、「花笠音頭」のこぶしの効いた歌と、ラテンのリズムの相性の良さを感じさせる曲に仕上がっています。

島根県の民謡「しげさ節」では、民謡歌手の朝倉さやとコラボ。彼女も日本の民謡とポピュラーミュージックを融合させたり、ポップスを山形弁でカバーしたりというユニークな活動で注目を集めていますが、本作では軽快なリズムやジャジーなサックスの音色をバックに伸びやかで包容力ある歌声を聴かせてくれており、歌手としての実力を感じさせます。

さらに耳を惹くのが前述の通り、元ちとせを起用した「ワイド節」。徳之島で1978年に誕生した新民謡だそうで、「ワイド」とは徳之島の方言で「がんばれ」「よくやった」という意味だそうです。こちらは何よりも元ちとせのこぶしを利かせた力強いボーカルが魅力的な作品。民謡クルセイダーズのラテン風のサウンドも魅力的ですが、それ以上に元ちとせのボーカルに耳がいく楽曲に仕上がっています。

もちろんその他にも魅力的な楽曲は多く、ラテンパーカッションでリズミカルに楽しく聴かせる「北海盆唄」からスタートし、ジャジーな雰囲気でムード感たっぷりに聴かせる「下津井節」、さらに最後を締めくくる「伊予万才」では、ラテンのリズムにジャジーなピアノも加わり、ライブでも楽しく盛り上がりそうな楽曲。アルバムを締めくくる集大成とも言える作品に仕上がっています。

ゲスト陣を参加させつつ、民謡とラテンを融合させ、民謡の新たな魅力を提示した彼ららしい作品。バンドとしての新しい方向性は提示されたものではなく、いままでの活動を深化させたような作風となっています。そのため、目新しさはありません。本作においては、バンドとしての勢いもありますし、ゲストを加えることによって、いわゆるマンネリになることは回避されています。ただ、今後、このスタイルが続いてしまうと、「大いなるマンネリ」になる危険性も感じました。

とはいえ、本作については間違いなく傑作と言える内容だったと思います。なによりもこの軽快なリズムと民謡独特のうねりでライブが楽しいだろうなぁ、ということを強く感じさせる作品です。

評価:★★★★★

民謡クルセイダーズ 過去の作品
エコーズ・オブ・ジャパン
民謡クンビエロ(フロム・トーキョー・トゥ・ボゴタ)(民謡クルセイダーズ&フレンテ・クンビエロ)
日本民謡珍道中


ほかに聴いたアルバム

MORE JET/ギターウルフ

オリジナルアルバムとしては実に約7年ぶりとなるギターウルフの新作。基本的にはいつも通り、これでもかというほどのノイズをまき散らした、ヘヴィーなガレージロックを聴かせてくれています。前作「LOVE&JETT」は比較的メロディアスな楽曲が多かったのに対して、今回のアルバムはよりパンキッシュでヘヴィーなガレージロック路線を追求した作品に。そのため、大いなるマンネリ的な部分がより強調されてしまった感もあるのですが、一方でギターウルフらしさが全開された作品に仕上がっていました。

評価:★★★★

ギターウルフ 過去の作品
宇宙戦艦ラヴ
野獣バイブレーター
チラノザウスル四畳半
LOVE&JETT
ブラックレザー爆弾 LIVE AT WWWX

Angels On The Dancefloor/tofubeats

tofubeatsの新曲はタイトル通り、「ダンスフロア」をテーマに据えた新作。オリジナル作としての直近作「NOBODY」はボーカロイドソフトを導入した実験的な作品となっていましたが、こちらの作品は全体的にハウスやUKガラージなど、クラブ系の作品が並ぶアルバムに。結果として、ダンサナブルで心地よいものの、目新しさはないダンスチューンといった印象も受けるのですが、それはそれでtofubeatsとしての原点という意味合いも強いアルバムに仕上がっていました。

評価:★★★★

tofubeats 過去の作品
Don't Stop The Music
ディスコの神様
First Album
STAKEHOLDER
POSITIVE
POSITIVE instrumental

POSITIVE REMIXS
FANTASY CLUB
RUN
TBEP
RUN REMIXES
REFLECTION
NOBODY
TB DJ REMIXES

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2026年8月28日 (金)

人生はプリズム

Title:PRISM
Musician:踊ってばかりの国

約2年ぶりとなる踊ってばかりの国のニューアルバム。今回のアルバムタイトルは「PRISM」。プリズムというとご存知の通り、ガラスや水晶などの透明な素材でできた多面体のことで、光を屈折、反射、分散させる性質のある物体のこと。音楽ファン的にはピンク・フロイドの「狂気」のジャケットでおなじみ・・・といった方がよいかもしれません。このアルバムタイトルを、「光をいろんな要素に分散させる」という性質から転じて「多様性」のような意味でつかわれているようですが、今回のアルバムはこのタイトル「PRISM」が、様々な意味で用いられている作品になっていました。

まず、そのリリース形態。CD、配信、LPという形態でリリースされているのですが、それぞれのメディアに沿った音質、マスタリングされているそうです。そこにこだわりを感じさせますし、また、リスナーの側からすると、様々なメディアを通して聴ける「多様性」を意図したリリースとなっています。

次に音楽性の側面。「踊ってばかりの国」の曲を、様々な音楽性の要素に分解して見せる、という意図があるようです。彼らは毎回、サイケデリックロックを主軸にしつつ、様々な音楽性を取り込んだ楽曲を聴かせてくれていますが、今回も同様で、アルバムの冒頭を飾る「PSYCHE STAR」はラーガロック的なスタート。「酸性雨」ではレゲエ的なリズムを取り入れていますし、「シーラカンス」では郷愁感帯びたサウンドに、ハワイアン的な要素が加わります。今回のアルバムに限った話ではないのですが、今回の作品でも様々な音楽的要素を感じさせます。

さらにもうひとつの側面としては「歌詞」。もともとメンバーの下津光史は、社会的なメッセージ性の強い歌詞を多く書いていましたが、今回のアルバムで焦点となっているのは「自由」。今回のアルバムリリースに際して彼は「まさに人生はプリズム」という言葉を述べていますが、プリズムのような人生だからこそ大切となる「自由であるということ」を今回のアルバムのメッセージの軸として掲げているように感じます。

ただし、単純に声高に自由に生きることを歌っている訳ではない点が彼ららしくユニーク「Choose your life」ではタイトル通り、自分の人生を選べと比較的ストレートに歌っているものの、「酸性雨」では「自由に生きるわ/せめて」と「せめて」という言葉をつけて、どこかあいまいさを感じさせつつも自由に生きることの重要さを歌っていますし、「逢魔ヶ時」は、昼と夜の間、世界の境界があいまいになる時間を歌っており、インタビューで「自由を感じるのは白や黒ではなく灰色の部分」と語っているように、そのあいまいさ強調しています。

時として、特にネット上では「0」か「1」かを異常なまでに求められるシーンが少なくありません。自分たちの味方か敵か明確に区別し、少しでも自分たちの意見に異を唱える場合には、すぐに「敵」と判定するシーンがよく見られます。そんな現代だからこそ、このあいまいさを大切にしたい、このあいまいさこそ自由である・・・そんなメッセージを強く感じさせます。

ただ、こういうメッセージの下でこう言ってしまうのは何なのですが、このあいまいにゆれうごく音楽性のためか、アルバム全体としては若干インパクトが弱かったかな、という印象も受けてしまいます。「Blowin'in the wind」のように、グリーヴ感をよく感じさせる比較的インパクトを持った楽曲もあるのですが、アルバム全体としては核になるような曲があまりなかったかな、という印象を受けました。良くも悪くも、ちょっと地味なアルバムだった、という印象は否めません。

もっとも、そのマイナスがありつつも、多彩な音楽性や自由に対するメッセージ性、そして意外にポップなメロディーラインをあわせて、十分「傑作」の水準である作品であることは間違いないでしょう。あいまいさを許容できなくなりつつある現代だからこそ届けたい、人生はプリズムである、そんな主張が心に響いてくる作品でした。

評価:★★★★★

踊ってばかりの国 過去の作品
グッバイ、ガールフレンド
世界が見たい
SEBULBA
FLOWER
踊ってばかりの国
サイケデリアレディ
SONGS
君のために生きていくね
光の中に
moana
Paradise review
On the shore


ほかに聴いたアルバム

仮のまま定着したような愛情で/クリープハイプ

アルバムとしては、「こんなところに居たのかやっと見つけたよ」から約1年半ぶりとなる5曲入りのEP盤。楽曲的にはいつもの彼ららしい、これでもかというほどの哀愁感ただようメロディーラインに、独特のボーカルがのり、さらにはテンポよいバンドサウンドで聴かせるスタイル。基本的にはクリープハイプらしさを感じさせる曲が並び、良くも悪くも安心して聴ける作品になっています。

評価::★★★★

クリープハイプ 過去の作品
吹き零れる程のI、哀、愛
クリープハイプ名作選
一つになれないなら、せめて二つだけでいよう
世界観
もうすぐ着くから待っててね
泣きたくなるほど嬉しい日々に
どうにかなる日々
夜にしがみついて、朝で溶かして
だからそれは真実
こんなところに居たのかやっと見つけたよ

PAPER SLEEVE CD BOX/THEE MICHELLE GUN ELEPHANT

2024年末から、デビュー30周年プロジェクト「THEE 30TH」として、過去のアルバムのリマスター作がリリースされてきたTHEE MICHELLE GUN ELEPHANT。その締めくくり的にリリースされたのがこのボックスセット。いままでリリースされた彼らのアルバムをCD盤でまとめ、また、B面ベスト盤「RUMBLE」にアルバム未収録曲を加えた「RUNBLES」を収録しています。オリジナルアルバムに関しては、いままで当サイトでもレビューしてきたので、今回あらためて聴いたのが「RUNBLES」の方。ただ、基本的に疾走感あふれるガレージロックという路線はB面でも全く変わらず。B面だとちょっと変わった曲も収録、というケースも少なくないのですが、彼らの場合、愚直にロックンロールを追求してきたんだな、ということをあらためて感じます。いままでのリマスター作は基本的にアナログか配信でのリリースでしたので、CDで所有したい、という方はあらためて本作で。

評価:★★★★★

THEE MICHELLE GUN ELEPHANT 過去の作品
THEE GREATEST HITS
cult grass stars
High Time
Chciken Zombies
GEAR BLUES
カサノバ・スネイク
ロデオ・タンデム・ビート・スペクター
SABRINA HEAVEN
SANBIRNA NO HEAVEN
wonder style

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2026年8月27日 (木)

今週もちいかわ強し!

今週のHeatseekers Songs

https://www.billboard-japan.com/charts/detail?a=heat_seekers

今週もちいかわ映画関連の曲が目立ちました。特にHeatseekers Songsではちいかわ関連の楽曲が並びました。

ただ、先週1位だった「島のうた(セイレーンver.)」は3位にダウンし、代わって1位にランクインしたのは青木遥「机さする」が獲得しました。ちなみにその他にはハチワレ(田中誠人)「くつずれ」が4位、うさぎ(小澤亜李),モモンガ(井口裕香),人魚(大木咲絵子),人魚(七瀬彩夏)「うさぎラップ (リズム感のある者たちver.)」が5位、うさぎ(小澤亜李),人魚(大木咲絵子),人魚(七瀬彩夏)「うさぎラップ (ソロver.)」が8位と、今週もちいかわ映画の劇中歌がズラリと並んでいます。


今週のHot Albums

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

Hot Albumsでも「『映画ちいかわ 人魚の島のひみつ』オリジナル・サウンドトラック」はワンランクダウンながらも2位をキープ。特にストリーミング数は3週連続の1位を獲得しており、その人気のほどを感じる結果となっています。

一方、1位に初登場してきたのは韓国の男性アイドルグループZEROBASEONE「回帰LOVE」が獲得。CD販売数1位。オリコン週間アルバムランキングでは初動売上9万枚で1位初登場。日本版2作目となるEP盤。直近作であり、韓国盤EPである「Ascend-」の初動3万4千枚(3位)からアップ。

3位はHANA「HANA」が先週からワンランクダウンながらもベスト3をキープ。これで26週連続のベスト10ヒット&通算21週目のベスト3ヒットとなりました。

4位以下初登場盤は韓国の男性アイドルグループTREASURE「NEW WAV」が4位初登場。CD販売数2位。7位には、PRODUCE 101 JAPAN 新世界「PRODUCE 101 JAPAN 新世界」がランクイン。日韓合弁の芸能事務所LAPONEエンタテイメント主催のアイドルオーディション番組に使われた楽曲を収録した作品。CD販売数3位。8位にはシンガーソングライターmilet「Made of Glass」が初登場。CD販売数4位、ダウンロード数では1位を獲得しています。

ロングヒット盤ではILLIT「MAMIHLAPINATAPAI」が今週は2ランクダウンの5位。これでベスト10ヒットは16週連続に。BTS「ARIRANG」は2ランクダウンの6位。こちらは23週連続のベスト10ヒット。Mrs.GREEN APPLE「ANTENNA」はワンランクダウンの10位。こちらは通算75週目のベスト10ヒット。なお、先週までベスト10ヒットを続けていたマイケル・ジャクソン「スリラー」は14位にダウン。ベスト10ヒットは9週連続でストップとなりました。


今週のニコニコVOCALOID SONGS

https://www.billboard-japan.com/charts/detail?a=niconico

今週はボーカロイド曲の祭典、ボカコレ2026 Summer開催週ということでボカコレ関連の曲が上位にランクインしています。まず1位は東京真中「フォーモ」が獲得。本作はボカコレ2026 Summerの4位獲得曲となります。2位はOSTER project「音楽はつづく」。こちらはボカコレ1位獲得作。3位はSohbana「恋」が初登場。こちらはボカコレ2位獲得作となっています。

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2026年8月26日 (水)

ベスト3はアイドル勢

今週のHot100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

今週はベスト3にアイドル勢が並びました。

まず1位は韓国の男性アイドルグループTOMORROW×TOGETHER「セツナハナビ(Setsuna Hanabi)」が初登場。CD販売数2位、ダウンロード数及びラジオオンエア数1位、ストリーミング数13位。オリコン週間シングルランキングでは初動売上33万6千枚で2位初登場。前作「誓い(CHIKAI)」の初動35万8千枚(1位)より若干のダウン。

2位はAKB48「好きish」が初登場でランクイン。CD販売数1位、その他は圏外となっています。オリコンでは初動売上55万9千枚で1位初登場。前作「名残り桜」の初動44万6千枚(1位)からアップ。

3位は先週1位のEBiDAN「Yes!東京」が2ランクダウンながらもベスト3をキープしています。

4位以下の初登場曲は1曲のみ。4位に元SexyZoneの中島健人「鬼事」が初登場。フジテレビ系アニメ「逃げ上手の若君」オープニングテーマ。CD販売数3位、ダウンロード数4位。オリコンでは初動売上8万6千枚で3位初登場。前作「IDOLIC」の初動7万5千枚よりアップしています。

ロングヒット曲では、まずM!LK「好きすぎて滅!」が4位から6位、「爆裂愛してる」が6位から9位にダウン。ストリーミング数が「好きすぎて滅!」は2位から4位にダウン。一方「爆裂愛してる」は7位から6位にアップしています。これでそれぞれ38週連続、通算27週目のベスト10ヒット。

ILLIT「It's Me」は7位から8位にダウン。ただし、ストリーミング数は4位から3位にアップしています。これで通算10週目のベスト10ヒットに。また、サカナクション「夜の踊り子」は8位から10位にダウンしながらも、今週もベスト10入り。こちらはストリーミング数が5位から7位にダウン。通算13週目のベスト10ヒットとなりました。

一方、米津玄師「IRIS OUT」は9位から11位にダウンし、再びベスト10陥落。ベスト10ヒットは通算42週で再びストップです。

今週のHot100は以上。明日はHot Albums&Heatseekers&ボカロチャート!

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2026年8月25日 (火)

マイルスの生涯を追ったボリューム満点の1冊

本日は最近読んだ音楽関連の書籍の感想です。

「マイルス・デイヴィスの時代 ジャズの帝王とモダン・ジャズの軌跡」。整形外科医としての経歴ももつ、ジャズ評論家の小川隆夫による著書。彼のマイルス・デイヴィスに関する著書としては、ちょっと前に、彼がマイルスと出会った時の模様をドキュメンタリー的に記した著書「マイルス・デイヴィスが語ったすべてのこと~マイルス・スピークス~」をここでも取り上げました。この著書の中で、何度もマイルスにインタビューを行う小川氏に対して「なんでそんなに会いたがるんだ」と聴かれた時、マイルスの著書を書きたいから、と答えていましたが、そんなマイルスが亡くなってから25年という月日を経て、ようやく刊行された、まさに小川氏のマイルス研究に集大成ともいえる伝記となっています。

まず本書について感じるのはその圧巻のボリューム。全624ページにも及ぶ著作となっており、かなり読み応えのあるボリューム感となっています。そしてその内容自体もかなりのボリューム。基本的にマイルスの伝記ということで、彼の生い立ちからデビューに至る過程、さらには売れた後の活躍、音楽の主役がジャズからロックに変わる中で、新しい音楽を模索するマイルスの姿から、そして晩年に至るまで、マイルスの生涯の全てが語られてます。

全体的にはかなり丁寧な仕事ぶりを感じる著作となっており、マイルスの生涯について様々なジャズミュージシャンの発言が、様々なインタビューや本から抜粋されており、マイルスがどんなミュージシャンでどのような評価を受けてきたのか、比較的客観的な立場から記されているのが印象的。もちろん、前述の「マイルス・デイヴィスが語ったすべてのこと」に記載されているインタビューも用いられており、様々な角度から立体的にマイルスがどんなミュージシャンだったのか、浮かび上がっています。

また、ビバップ以降、ジャズシーンの中心にいた彼。最初に師事したチャーリー・パーカーとのエピソードも豊富に語られており、ビバップ以降のジャズの歴史も網羅的に理解できる形となっています。ジャズの特徴として、ロックなどと異なり自分のやりたい音楽に沿ってバンドメンバーを様々に変えていくため、次から次へと新しいミュージシャンたちが登場し、登場する人名も数多いため、ジャズに詳しくないと若干とまどうようにも思うのですが、全体的に平易な語り口のため、私のようなジャズにさほど詳しくないようなライトリスナーにも十分読みこなすことは出来ました。

個人的に本書で特に興味深く読めたのは終盤。音楽の主役がジャズからロックに代わり、マイルスも若干不遇な待遇を受けたり、新たな音楽の追求を模索していた頃以降の話でした。マイルスは1970年にリリースした「Bitches Brew」など、過去のジャズの枠組みを超える挑戦的なアルバムをリリースしていたのは知っていましたが、彼は自らの音楽を「マイルス・ミュージック」と呼び、ジャズの枠組みにあてはめられるのを嫌がっていた点、彼はあくまでも「ジャズ」ではなく「新しい自分だけの音楽」をやろうとしていたことを強く感じます。

また印象的だったのは、本書の中で記載されていた「ローリング・ストーン」誌でのインタビューでの発言として「俺が本気を出せば、世界一のロックバンドだって作れる」という発言。ロックには負けないという強い自負心を感じさせる発言であり、また一方で音楽シーンの中心を非常に意識した発言であり、ジャズ界の帝王として君臨しつつも、あくなき挑戦を続ける彼の意思を感じさせる発言として印象に残りました。

晩年まで、その時にもっとも人気のあった音楽を積極的に聴いていて、その理由を探ろうとしていた彼。もっと長生きしていたらHIP HOPとか積極的に取り入れていただろうなぁ・・・とも思っていたのですが、実際、晩年ではHIP HOPを楽曲に取り入れていたことをこの著書ではじめて知り、最後の最後までそのあくなき音楽の追求をやめなかったその姿勢には、あらためて感服させられました。

非常に読み応えのある1冊で、マイルス・デイヴィスや、彼が生きた時代のジャズに興味がある人は是非ともお勧めしたい1冊。ちょっと残念だったのは、彼のリリースしたアルバムのディスコグラフィーがなかった点。ラストに、本書の中に出てくるアルバムの一覧は記載されていたのですが、網羅的なディスコグラフィーは欲しかったかもしれません。ただ、それは他に多く出ているマイルス関連の著作を参考にしろ、ということなのかもしれません。今年はマイルス生誕100年ということでマイルス関係の本が多く出ていますが、その中でも特に力作と言える1冊だったと思います。お勧めです。

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2026年8月24日 (月)

リスナーに寄り添う

Title:花落知多少
Musician:君島大空

現在、おそらくもっとも勢いのある男性シンガーソングライターと言っていい、君島大空のフルアルバムとしては3作目となるニューアルバム。2025年には、フジロックでGREEN STAGEに立つなど、その注目度もグッとあがっています。今回のアルバムタイトル「花落知多少」とは、孟浩然の漢詩「春暁」の一節から取られた言葉で、「どれほど多くの花が散ったことだろう」という意味。「一体花はどのくらい散っただろうか/肩身を寄せずにそばにいることはできるか/毒と薬と世界に怯える全てのひとへ」というコメントが寄せられており、いろいろと不安なことが多い今の時代においての彼のメッセージを感じるアルバムタイトルと内容となっています。

まず本作の大きな特徴として、全編シンプルなアコースティック重視のアルバムに仕上がっている点。最近の作品ではアバンギャルドな作風も取り入れたバラエティーあるサウンドメイキングが特徴的でしたが、そこからグッと変わった、非常にシンプルなサウンドで、彼の清涼感のある歌を静かに聴かせるスタイルとなっています。もともとアコースティックでシンプルな作風の曲も多く手がけていた彼ですが、まさにこのアルバムではそんな君島大空の「コア」な部分を前面に押し出した作風・・・とも言えるかもしれません。

1曲目「Q」から、まずはアコギでしんみり聴かせるフォーキーな作品。切ないメロディーラインもまずは耳に残り、メロディーメイカーとしての君島大空の実力も光る作品になっています。続く「Drowsy」はアコギにストリングスが重なる作品に。このアコギとストリングスの重なりも非常に美しい作品に仕上がっています。中盤の「琥珀の遠景」もアコギアルペジオでしんみり聴かせるナンバー。こちらも切ないメロディーがインパクトとなっているフォーキーな作品となっています。そして最後を締めくくる「Anechoic」も静かなピアノ弾き語りのナンバーに。ゆっくりと静かに歌われる君島大空の歌と、メランコリックに奏でられるピアノの音色が印象的。最後は、「無音」で集約されるラストも印象的です。

そんな感じで、基本的にはシンプルなサウンドを聴かせる曲調に。あえて言えば「Afterending」に若干シンセのサウンドが、「夕映の坂から」に若干メタリックなサウンドが加わっており、サウンドに奥行きを与えていますが、これらの曲に関しても、シンプルなサウンドと君島大空の歌声がメインというスタイルはほとんど変わりません。

そしてもうひとつ大きな特徴に感じたのは、楽曲がどれも、リスナーに寄り添っているように感じる点でした。例えば「Q」では「君の目を見ている」と歌われていますし、「星玻璃」でも

「きえないでわたしのこえよ
きみを守って
きえないであなたのこえよ
ずっとたすけて」
(「星玻璃」より 作詞 君島大空)

と、まさにリスナーに寄り添った歌詞が印象的。また、そもそもこのアコースティックというシンプルな楽器のみをバックで歌われる君島大空の歌というスタイルこと、リスナーに寄り添ったスタイルとも言えるでしょう。実際、聴いているとすぐそばで、彼が歌ってくれているようなそんな錯覚に陥るような作品になっています。

シンプルが故に派手さはありませんが、前作同様、年間ベスト候補となる傑作アルバム。まさに不安が多い今の時代だからこその、君島大空がしっかりと私たちに寄り添ってくれるような、そんなアルバムになっていました。君島大空の魅力に、まさにダイレクトに触れられる、そんな作品です。

評価:★★★★★

君島大空 過去の作品
縫層
袖の汀
映帶する煙
no public sounds
音のする部屋


ほかに聴いたアルバム

30th Anniversary/PUFFY

PUFFYがデビュー30周年をリリースして記念したベストアルバム。基本的にアナログ及び配信のみでのリリース。メンバーが選曲した12曲が収録されています。PUFFYは最近、目立った活動はなく、音楽的にも5年前にオリジナルアルバムをリリースしたきり。デビュー20周年の時にも同じようなベスト盤をリリースしています。そういう意味では、30周年になにもやらないのでは・・・といった程度の穴埋め的なベスト盤なのですが、ただ、今回、楽曲をわずか12曲に絞り、かつ、40分強という程度の内容になっており、初心者にはうってつけのアルバム。作家陣も、奥田民生をはじめ、スピッツ草野マサムネ、イエモン吉井和哉、チバユウスケ、Aviril Lavigne、フジファブリック志村正彦など、そうそうたるメンバーがそろっており、肩の力が抜けたポップソングが並ぶのが大きな魅力。PUFFYの初心者にも、また久しぶりに彼女たちの曲で楽しみたいような方にもうってつけのベスト盤でした。

評価:★★★★★

PUFFY 過去の作品
honeycreeper
PUFFY AMIYUMI×PUFFY
Bring it!
15
20th Anniversary BEST ALBUM 非脱力派宣言
THE PUFFY

StandBy/Fear,and Loathing in Las Vegas

約3年半ぶりとなるFear,and Loathing in Las Vegasのニューアルバム。トランシーなエレクトロチューンで、軽快で疾走感ある楽曲を聴かせてくれ、また同時にヘヴィネスさも感じさせるサウンドが魅力的。正直言うと楽曲としてさほど目新しさもなく、若干一本調子な部分がある点も否めないのですが、とにかくこれでもかというほどインパクト満載の曲は、素直に聴いていて楽しめる作品。毎回、彼らの作品に共通するのですが、まずは難しいこと抜きで、聴いていて心地よさを感じさせる作品でした。

評価:★★★★

Fear,and Loathing in Las Vegas 過去の作品
HYPERTOUGHNESS
Cocoon for the Golden Future

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2026年8月23日 (日)

今年もスキヤキナゴヤ!

スキヤキナゴヤ2026

MADALITSO BAND/UFO et MAYU+武藤祐志/ALKDO

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今年も足を運んできました、スキヤキナゴヤ2026!毎年、富山県南砺市で行われるワールドミュージックのフェスティバル、スキヤキ・ミーツ・ザ・ワールド。その派生イベントとして名古屋で行われるライブです。毎年必ず実施される訳ではなく、行われたり行われなかったり、といった感じなのですが、今回は昨年に続いての開催。昨年に引き続きとなるUFO et MAYU+武藤祐志、ALKDOと、スキヤキ・ミーツ・ザ・ワールドにも出演しているMADALITSO BANDの3組からなるステージとなりました。

今年も最初は、UFO et MAYU+武藤祐志のステージからスタート。西アフリカの打楽器、ジャンベ奏者の野口UFO義徳、同じく西アフリカの太鼓、ドゥンドゥン奏者であり、アフリカンダンサーであるMAYUとのユニットにギタリストの武藤祐志が加わった3人組となります。

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昨年のライブレポでも説明しましたが、基本的にはジャンベとドゥンドゥンのトライバルなリズムに、武藤祐志のギターがのるスタイル。最初はその太鼓をバックに力強く歌い上げる、真理のバスンケ族のリズムを奏でる楽曲からスタート。さらにコレジュラというマリの道化師のためのリズムを取り入れた、8分の9拍子という楽曲も。こちらは事実上、3拍子的なリズムで、アフリカでは珍しいスタイルだとか。さらにマリで割礼を行う時に奏でられる曲。こちらは昨年も聴かせてくれましたが、非常に力強いリズムが印象的。さらにシガンディーという、子供が生まれた時に奏でられる曲も。こちらはどこか祝祭色を感じる楽曲に。最後は、「この時期はよくあることですよね」ということで(??)、「村長さんの畑に駆り出された時」に奏でられるマダンというリズムの曲で締めくくり。いずれもアグレッシブでトライバルなパーカッションのリズムが印象的な楽曲で、45分のステージでした。

2番手はALKDOのステージ。こちらは愛知県豊田市で「橋の下世界音楽祭」というイベントの主催者としてもおなじみのTurtle Islandのフロントマン、アコギの永山愛樹とパーカッションの竹舞による2人組ユニット。アコースティックな楽器で、フォークやブルースの影響の強い楽曲を聴かせてくれます。

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前半は裏打ちのリズムを取り入れたり、エキゾチックに聴かせてくれたり、比較的トライバルな雰囲気の強いナンバー。さらに中盤、「最近は、『え、あの人も?』というような先輩が次々と亡くなっていきます」という、ちょっと寂しいMCに。ただ、自分も50代になって、まだ近い年齢の人で亡くなった人はほとんどいませんが、なんとなく「死」を意識してしまうのもわかるような気がして聞いていました。そんな亡くなった先輩の曲ということで、THE FOOLSの伊藤耕の「太陽のまばたき」という曲。力強くそして感情たっぷりに聴かせてくれます。さらにその後もMCで、「最近、徐々に戦争に向っていっているような気がします」という話から、「平和に生きる権利」をカバー。チリの歌手、ビクトル・ハラの曲ですが、個人的にはソウル・フラワー・ユニオンのカバーでおなじみな曲。日本語詞も歌詞も、ソウル・フラワーのカバーだったと思うのですが、こちらも感情をこめて力強く聴かせてくれます。

昨年は彼らのステージ、かなり長く演って、結果、後ろが押してしまったように思うのですが、この日は30分程度で思ったよりあっさりと終了。ただ、特に後半は思いのこもった力強いパフォーマンスが印象に残るステージでした。

そして3番手として、おまちかねMADALITSO BANDの登場。アフリカ南東部に位置するマラウィ共和国の2人組バンドで、ひとりはアコギを抱えつつ、足でドラムをたたいてリズムを出し、もう1人はババトーンという1弦の楽器を抱えての演奏となります。20時50分頃からのライブスタート。事前に、机をステージ上に設置。その机の上に座ってのパフォーマンスとなります。

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基本的にアコギがメインのフレーズを奏でつつ、1本弦のババトーンがリズムを奏でたり、1本の弦ならではのユニークな音を奏でたりするスタイル。まず最初はアコギが前面に押し出した、伸びやかで哀愁感のあるナンバーからスタート。最初はミディアムのナンバーで会場を徐々に暖めていきます。

そして2曲目から徐々にエンジンがかかってきます。2曲目の曲ではよりリズミカルに。ここらへんから会場全体で手拍子が鳴り響き、そして踊りだす人もあらわれます。ここからテンションはだんだんとアップしていきます。続く曲では、アコギの人がシャウトを繰り出し、さらにサウンドはミニマルなサウンドが延々と続くスタイル。徐々に高揚感があがっていき、会場前方で立ち上がって踊る人もどんどん増えていきます。4曲目では、2人のハーモニーを聴かせて、こちらも軽快で歌を聴かせるナンバー。さらに「Last Song」と言ってはじめた5曲では、メンバーが「Stand Up!」といって会場の観客を立たせ、こちらも踊りまくる楽曲に。こちらもミニマル的なビートで高揚感がグングンとあがっていく曲で、特にババトーンの人が力強く歌い上げて、会場を沸かせていました。

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そしてラストといっていた曲が終わるとそのままアンコールを求める声が。そのため、メンバーはステージから去らず、そのままアンコールに突入。ちなみにアンコールの曲は、おそらく最後の曲と同じ曲をもう1回披露してくれたと思うのですが、高揚感あふれるリズミカルなナンバーに会場のテンションはさらに上がっていき、大盛況のうちに幕を下ろします。ライブ終了や22時頃。ちょうど3時間のステージでした。

MADALITSO BAND、素晴らしいバンドでした!全く事前情報なしに彼らのステージを見たのですが、そのミニマルで高揚感あるリズムが非常に心地よく、アコギと1本弦のババトーンと、シンプルな太鼓のみという、最小限の音ながらもこれでもかというほどのグルーヴ感を醸し出しており、その実力のほどを認識し、そのライブの魅力に惹かれたステージでした。いやぁ、スキヤキが呼んでくるグループは本当に外れがないなぁ!とても満足度の高い3時間のライブでした。

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2026年8月22日 (土)

独特なビート感が耳を惹く

Title:The Classic Guinean Guitar Group(邦題:ギニアのギターグループ)
Musician:Arfican Virtuoses

今回紹介するのは、タイトル通り、西アフリカはギニアの音楽。もともと1960年代から70年代にかけての音源を収録した作品。その当時、独立直後のギニアでは、時のセク・トゥーレ政権による文化推進制作により多くのオーケストラやバンドが結成されたそうです。本作で紹介するAfrican Virtuosesもそんなバンドのひとつだそうで、ギニアのジャバテ兄弟を中心としたギターアンサンブルだそうです。オリジナル音源は2007年にリリースされたようですが、今年に入り、国内盤がリリースとなったため、今回、はじめてチェックしてみました。

さて、この音楽の特徴としてあげられるのは、全体的に非常にモダンで、かつ爽やかなギターの音色を聴かせてくれる点。正直、匿名でアルバムを聴くと、本作がアフリカはギニアの音楽である、ということに気が付く人は少ないように思います。アルバム冒頭を飾る「Nanibali」も爽やかでメロディアスなアコースティックギターのフレーズが前面に押し出されるインストナンバーですし、続く「Kankan diarabi」も哀愁たっぷりのメロディーラインは、アフリカというよりも、むしろ南米ラテン地方の音楽を彷彿とさせるような内容となっています。

もともと作品としては、ギニアの伝統的な楽器、コラやバラフォンのフレーズをそのままギターに置き換えたスタイルを取っているそうで、アフリカ的な音楽の音色を、そのままモダンなギターサウンドに置き換えたスタイルなのでしょう。これはあくまで勝手な憶測ですが、ギニアが植民地から独立国家として生まれ変わる中、独自の文化を守ろうとする一方で、西洋の先進国を模倣して発展しよう、という中で、このような伝統音楽を西洋の楽器に置き換えた、というスタイルが生み出されたのでしょうか。

ただ、この無国籍な感じが非常に楽しく、例えば「Madame nana」などはサーフミュージックのイメージを感じさせ、真夏のリゾート地の海辺が非常に似合いそうなイメージがありますし、「Toubaka」では、ギターサウンドにどこかブラジル音楽的な部分を彷彿とさせます。意識したのかどうかは不明なのですが、前述の通り、ラテン音楽を彷彿とさせる曲もあり、ギニアから様々な音楽的要素が各地に伝播した影響も感じさせます。

一方ではある意味、「アフリカらしい」とも言えるトライバルな要素も随所に感じられ、前述の「Nanibali」でも爽やかなギターフレーズが鳴り響くバックには、トライバルなパーカッションの音が響いていますし、終盤の「Ballade sur la lagune」でも、爽やかなギターの音色が前面に鳴り響いているものの、背後ではしっかりとトライバルなリズムがインパクトあるビートを作り上げています。

このあたりの独特なビート感はアルバム全体に感じることが出来、前述の無国籍的な音楽性に合わせて、本作を単なる爽やかなBGMから一線を画させている大きな要素になっているように感じます。そのため、最初はある種、BGM的なイージーリスニングのイメージで聴き始めても、徐々にその音楽性にはまっていく大きな要因となっているように感じました。爽やかなギターの音色にアフリカ音楽の広がりと奥の深さも感じさせる1枚。ワールドミュージックに興味がある方ならば、要チェックの傑作です。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

Peaches!/The Black Keys

The Black Keysとしては2021年の「Delta Kream」に続くカバーアルバム。Dr.FeelgoodやR.L.バーンサイドの曲などもカバーしていますが、全体的には知る人ぞ知る的なブルース系の作品がメインで、このマニアックな方向性に彼ららしさを感じます。ゴツゴツとしたノイジーなギターサウンドを前面に押し出した作風が特徴的で、ある意味、バンドとしての「初期衝動」をあえて押し出したような、原点回帰的な作品となっています。かなり粗削りな作品でしたが、それだけにThe Black Keysらしさを全面的に感じられる作品でした。

評価:★★★★★

The Black Keys 過去の作品
EL CAMINO
"Let's Rock"
Delta Kream
Dropout Boogie
Ohio Players
No Rain,No Flowers

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2026年8月21日 (金)

6人組フルバンド編成に

Title:everyone for ten minutes
Musician:Bleachers

テイラー・スウィフトはじめ、数多くの人気ミュージシャンたちのプロデュースを手掛ける売れっ子プロデューサー、ジャック・アントノフ率いるロックバンド、Bleachersの新作。約2年ぶりとなる作品で、Bleachersを取り上げるのも今回で2度目なのですが、この間、編成が大きく変わりました。前作の時は、事実上、ジャック・アントノフのソロプロジェクトだったのですが、この2年の間にサポートメンバーが正式メンバーとして加入。6人組フル編成のロックバンドとして生まれ変わりました。

ただ、ミュージシャンとしての編成は大きく変わりましたが、もちろんジャック・アントノフが楽曲を手掛けているだけに基本的には前作から大きくそのスタイルの変化はありません。80年代や90年代を彷彿とさせるような、ちょっと懐かしさも感じさせる、ポップで人なつっこいメロディーラインが特徴的。おそらく多くのリスナーが気に入りそうな、メロディアスなポップチューンが並びます。

楽曲はシンセが入ってメランコリックで荘厳さを感じさせる「sideways」からスタート。どちらかというとアルバムの締めくくりに収録されそうな曲からのスタートというのがユニーク。続く先行シングルでもある「the van」がまさにBleachersらしさを感じさせるミディアムポップで、ホーンセッションなども入って、ちょっとメロウなソウル的な要素を入れつつも、懐かしさを感じさせる暖かい雰囲気のポップチューンに仕上げています。

続く「we should talk」もバンドサウンドが心地よいポップスロックの作品に。さらに4曲目「you and forever」はまさに前半のハイライト。先行シングルでもあるこの曲は、分厚いサウンドで荘厳さを感じつつ、こちらも90年代的な雰囲気を感じさせる暖かさと懐かしさを同居させた楽曲になっています。

このように前半はある種の祝祭色も感じられる、明るく暖かいポップチューンが並んでいるのに対して、後半はメランコリックに聴かせる楽曲が並びます。後半の「i can't believe you're gone」はタイトル通り、愛する人を失った悲しみを歌う内省的なナンバー。切ないメロディーラインでゆっくりと歌い上げるインパクトの強い楽曲に仕上がっています。また「dancing」「she's from before」もフォーキーで郷愁感のあるナンバーに。シンセが目立つ楽曲が多い中、アコースティックテイストの強い作品に。同じく、アコースティックテイストを残す郷愁感たっぷりの「i'm not joking」を挟み、ラストは再び彼ららしい、祝祭色も感じられる明るいポップチューン「upstairs at els」で締めくくられます。

シンセを取り入れたサウンドが、80年代、90年代の懐かしいテイストを醸し出している一方、ちょっとサウンドとして軽く感じてしまう点、マイナスな部分もあるのですが、全体的には前作同様、暖かさと優しさ、そしてちょっとノスタルジーを感じさせるポップチューンが絶品。前作同様、文句なしの傑作に仕上がっていたと思います。ポップミュージックとして、比較的広いリスナー層にお勧めできる、そんな作品でした。

評価:★★★★★

Bleachers 過去の作品
BLEACHERS


ほかに聴いたアルバム

Go:Apex And Beyond/The Chemical Brothers

Go-chemical

今年、彼らの楽曲「Go」が、Netflix映画「APEX」で使用されたことをきっかけに、大ヒットを記録。再び注目をあつめた彼らですが、そのヒットをきっかけに、過去の代表曲をまとめたコンピレーションアルバムが本作。その大ヒットした「Go」をスタートに「Setting Sun」「Star Guitar」など彼らの代表曲を網羅。ケミブラの初心者にはピッタリなベストアルバムになっています。ケミブラの魅力をあらためて感じられた作品でした。

評価:★★★★★

The Chemical Brothers 過去の作品
Brotherhood
Further(邦題:時空の彼方へ)
HANNA
Born In The Echoes
No Geography
Surrender(20th Anniversary Edition)
For Tha Beautiful Feelings

American Stories/Rostam

Vampire Weekendのオリジナルメンバーで、2016年に脱退したロスタム・バトマングリによるソロ3作目のアルバム。もともとイラン・ペルシャ系アメリカ人である彼が、アメリカらしい伝統的なフォークソングに、ペルシャ音楽を融合させた独特の音楽性が特徴的。基本的にフォーキーな作風でしんみり聴かせる作風なのですが、どこかエキゾチックさが加味されている独特の作風がユニーク。アメリカ的なフォーキーなサウンドとペルシャ的なメロディーラインが意外なほど自然にマッチしており、やはり人間の作る作品というのは、どんな国、どんな文化であろうとどこか共通項があることを感じさせます。イランと言うと、現在、トランプの横暴によりアメリカと戦争状態に入っていますが、そういう時だからこそリリースする意義を強く感じさせる作品でした。

評価:★★★★★

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2026年8月20日 (木)

ちいかわ映画、強し!

今週のHot Albums

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

あの映画のサントラ盤がついに1位獲得です。

今週1位は「『映画ちいかわ 人魚の島のひみつ』オリジナル・サウンドトラック」がランクインから4週目にしてついに1位獲得。ストリーミング数は3週連続で1位。ダウンロード数も先週の2位からランクアップして1位を獲得しています。興行収入が92億円を突破するなど大ヒットを記録している本作。ヒットチャートでもその人気ぶりを反映した結果となっています。

2位はHANA「HANA」が先週からワンランクアップ。これで25週連続のベスト10ヒット&通算20週目のベスト3ヒットとなっています。

3位はILLIT「MAMIHLAPINATAPAI」が先週の5位からランクアップ。5月20日付チャート以来のベスト3返り咲き。これで15週連続のベスト10ヒット&通算2週目のベスト3ヒットとなりました。

4位以下の初登場盤では、まず5位に木村拓哉「Checkpoint」が初登場。CD販売数1位、ダウンロード数6位。6位に韓国の男性アイドルグループStray Kids「THIS&THAT」が先週の11位からアップし、ベスト10初登場。7位にはEBiDAN「Yes!東京(体験入学版)」が初登場。今週Hot100で1位となった「Yes!東京」の各グループのバージョンのダイジェスト版が収録された配信限定のアルバム。ダウンロード数8位、ストリーミング数5位。8位には.ENDRECHERI.「new chapter purple」が初登場でランクイン。CD販売数2位、ダウンロード数3位。ご存知DOMOTO(元Kinki Kids)の堂本剛によるソロユニット。

ロングヒット盤ではBTS「ARIRANG」が先週と変わらず4位をキープ。これで22週連続のベスト10ヒット。Mrs.GREEN APPLE「ANTENNA」も先週から変わらず9位をキープ。これで通算74週目のベスト10ヒット。マイケル・ジャクソン「スリラー」も先週から変わらず10位。こちらは9週連続のベスト10ヒット。一方、ヨルシカ「二人称」は今週12位にダウン。ベスト10ヒットは通算15週で再びストップとなりました。


今週のHeatseekers Songs

https://www.billboard-japan.com/charts/detail?a=heat_seekers

Hot Albumsで「映画ちいかわ」のサントラが見事1位を獲得しましたが、今週のHeatseekers Songsではちいかわ映画の関連作品がズラリと並びました。

今週1位はセイレーン(鈴木みのり),人魚(大木咲絵子),人魚(七瀬彩夏) 「島のうた(セイレーンver.)」がランクイン。ダウンロード数8位。「映画ちいかわ 人魚の島のひみつ」の劇中歌。以下、2位に青木遥「机さする」、3位にハチワレ(田中誠人)「くつずれ」、4位にうさぎ(小澤亜李),モモンガ(井口裕香),人魚(大木咲絵子),人魚(七瀬彩夏)「うさぎラップ (リズム感のある者たちver.)」、7位にうさぎ(小澤亜李),人魚(大木咲絵子),人魚(七瀬彩夏)「うさぎラップ (ソロver.)」とちいかわ映画の劇中歌がズラリと並び、その人気のほどを感じる結果となりました。

ただし、こちらはあくまでもHeatseekers Songsで、最高位の「島のうた」でもHot100では44位。Hot Albumsでのヒットを反映して、Hot100でのランクもあがっていくのでしょうか。


今週のニコニコVOCALOID SONGS

https://www.billboard-japan.com/charts/detail?a=niconico

今週1位は、非常に懐かしい、じん「カゲロウデイズ」が獲得しています。本作はマルチメディア作品「カゲロウプロジェクト」を代表する楽曲で、2011年にリリースされた作品。8月15日が作中や歌詞の舞台となっており、毎年「カゲロウデイズの日」として親しまれており、その影響で8月15日がチャート対象週となる今週、見事1位に輝きました。ちなみに、リリース当時はボカロチャートがありませんでしたので、これが初の1位獲得となります。2位は大漠波新「初音ミクの熱唱」が先週の15位からランクアップし、チャートイン2週目にして初のベスト3入り。3位は先週1位のr-906「ワンダー」が2ランクダウンでこの位置となっています。

今週のHot Albums&Heatseekers&ボカロチャートは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2026年8月19日 (水)

ロングヒット曲が復活

今週のHot100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

今週は集計対象期間がお盆休み中ということもあって新譜は少な目。結果、ロングヒットの返り咲きが目立つチャートとなりました。

まず1位にはEBiDAN「Yes!東京」が先週の13位からランクアップし、6週ぶりのベスト10返り咲き&初の1位獲得。8月11日にCDがリリースとなり、その売上が加味されたことによる影響で、CD販売数で1位獲得。スターダストプロモーション所属の男性アイドルグループでM!LKなどもここからの派生ユニットになります。オリコン週間シングルランキングでも初動売上105万3千枚で1位初登場。

2位には韓国の女性アイドルグループHearts2Hearts「ICONIC HEART」が初登場。CD販売数2位、ラジオオンエア数1位。オリコンでは初動売上4万9千枚で2位初登場。CDシングルでは初のリリースとなります。

3位はMrs.GREEN APPLE「Brand New」が先週の4位からランクアップして3週ぶりのベスト3返り咲き。ちなみにストリーミング数は5週連続1位をキープしています。

4位以下の初登場曲は1曲のみ。10位に先日のサマソニのステージも話題となったAdo「モンストロ」が初登場。ダウンロード数5位、ラジオオンエア数3位。映画「ブルーロック」主題歌。作詞はsupercellのryo、作曲及び編曲はGiga&TeddyLoidと、今回はボカロ人脈による楽曲提供となっています。

さて、今週は初登場曲が少ないということで、ロングヒット曲の返り咲きも目立ちます。まず、こちらも先日のサマソニが(良くも悪くも)話題となったサカナクション「夜の踊り子」が先週の12位から8位にランクアップ。3週ぶりのベスト10返り咲き。通算12週目のベスト10ヒットに。ただし、ストリーミング数は先週と変わらず5位でしたが、ダウンロード数は15位から18位、動画再生回数は9位から13位にダウンしています。

さらに米津玄師「IRIS OUT」が先週の14位から9位にアップ。こちらは6週ぶりにベスト10返り咲き。通算42週目のベスト10ヒットとなりました。ただし、こちらもストリーミング数は4位から6位に、動画再生回数も14位から15位にダウンしています。

他のロングヒット曲ですが、まず、今週1位のEBiDANにも参加しているM!LK「好きすぎて滅!」は7位から4位に、「爆裂愛してる」も9位から6位にアップ。こちらはそれぞれ37週連続及び通算26週目のベスト10ヒットに。

ILLIT「It's Me」も10位から7位にアップ。こちらは通算9週目のベスト10ヒットとなりました。

今週のHot100は以上。明日はHot Albums&Heatseekers&ボカロチャート!

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2026年8月18日 (火)

70年代の歌謡曲のシンガーたち

ここでも何度か紹介しているレコード会社を横断した廉価版ベスト盤企画「GOLDEN☆BEST」。過去にソニーミュージックがリリースしたアイテムがBlu-spec CD2で再発売ということで、あらためて聴いてみました。今回はそんな中でも70年代初頭に活躍した歌謡曲の歌手たちのベスト盤となります。

Title:GOLDEN☆BEST 藤圭子ヒット&カバーコレクション 艶歌と縁歌
Musician:藤圭子

まずは1970年に「女のブルース」「圭子の夢は夜ひらく」が大ヒットした藤圭子のベスト盤。2枚組となっており、Disc1がオリジナル、Disc2がカバー曲という構成になっています。そういう説明よりも、言わずとしれた宇多田ヒカルの母親ですね。

その2曲のヒット曲のイメージから、ちょっとアングラ的で、情念的な曲を歌う歌手、という印象が強いのですが、ここで歌われている曲については、完全な演歌。それもかなりベタで形式化されちゃっている「ド演歌」。ヒット曲で培ったはずの彼女のイメージが全く生きておらず、率直に言うと、かなりつまらない。悪い意味でちょっと驚いてしまいました。

歌は間違いなくかなり上手いんですよ。声量もあるし、感情表現も素晴らしいし、おそらくは純粋に歌の上手さだけで言えば娘より上だと思います。ただ、それに対して、肝心の曲自体があまりにも平凡・・・。非常に残念に感じたベスト盤でした。

評価:★★★

Title:GOLDEN☆BEST ジュディ・オング Sony Music Years 1973~1983
Musician:ジュディ・オング

こちらは1979年にヒットした「魅せられて」でおなじみの台湾出身の歌手、ジュディ・オングのベスト盤。ソニーミュージックに所属していた1973年から1983年の楽曲が収録されています。

もともと台湾出身の歌手ということもあり、「魅せられて」もそうですが、ちょっとエキゾチックな、アジアンテイストの楽曲が魅力的で、このベスト盤でも、同じようなエキゾチックな雰囲気の曲もチラホラ。ただ一方、「清水よいとこ」のような、「え?彼女にこんなの歌わせるの?」というようなベタな創作民謡のような曲もあったり、もっとミュージシャンイメージを大切にするような現在の音楽シーンから考えると、ちょっと意外・・・というよりも「雑」な扱われ方も感じてしまいます。

そんな「雑」さを含めて、全体的にはポジティブに言うと、バラエティーに富んだ構成になっている本作。「魅せられて」は今から聴いても、これらの曲の中でも圧倒的に魅力に感じるなぁ。

評価:★★★★

Title:GOLDEN☆BEST / キャンディーズ
Musician:キャンディーズ

1970年代に活躍し、いまなお、一部では絶大な支持を得ているアイドルグループ、キャンディーズ。そんな彼女たちのベスト盤となるのが本作です。

今回取り上げる4枚のアルバムの中で、一番「今の耳」で聴いても古さを感じさせなかったのが本作で、楽曲的にはあか抜けており、ベタな歌謡曲的な部分は薄い印象。逆に、美しいハーモニーを聴かせてくれていて、この点はユニゾンばかりの最近のアイドルグループとは大きく異なる点。また、楽曲的にはいわば「アイドル歌謡曲」となるのですが、ただ、80年代以降のアイドル歌謡曲のような様式化されたものではなく、そういう点でも魅力的に感じます。

アイドル的な側面の魅力もさることながら、今の時代でも変わらない楽曲自体の魅力も感じられるベスト盤。いまでも支持される理由がわかるようなアルバムでした。

評価:★★★★★

キャンディーズ 過去の作品
GOLDEN☆BEST コンプリートシングルコレクション

Title:GOLDEN☆BEST 南沙織コンプリート・シングルコレクション
Musician:南沙織

こちらは1971年にシングル「17才」が大ヒットを記録し、一世を風靡したアイドル歌手のシングル集。「17才」は1989年に森高千里が、2000年に銀杏BOYZがカバーし、いずれもヒットするなど、時代を超えたスタンダードナンバーとなっており、今聴いても違和感なく楽しめるポップスとなっています。

ただ、時代を下るにつれて、徐々にベタな歌謡曲化していくのがこの時代の特徴。彼女の年齢に依るところもあるのですが、こちらも彼女のイメージからすると曲の扱いがちょっと雑に感じさせます。一方で、後半になればなるほど彼女の歌唱力がどんどんと上がっていくのも魅力的。ある意味、このベスト盤を通じて、南沙織の歌手としての成長を実感できる、そんなベスト盤になっていました。

評価:★★★★

さて、70年代に一世を風靡した歌謡曲の歌手によるベスト盤をまとめて聴いたのですが、ただ、これらのベスト盤を聴いて感じるのは、この時期の楽曲はどこか取扱いが雑だなぁ、という点。いまなら、もっとアイドルシンガーにしても本人のミュージシャンイメージに沿った曲が提供されると思うのですが、この時期は、時折優れた楽曲がある一方、正直平凡で、本人のイメージにもいまひとつマッチしない歌謡曲的な曲も多く、楽曲に対する扱いの雑さを感じます。「歌手」の地位がいまより低かったということでしょうか・・・。良くも悪くも時代を感じてしまいました。

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2026年8月17日 (月)

日本の民謡や盆踊り唄を独自のグルーヴで聴かせる

Title:夜明け烏が渡るまで
Musician:中西レモン

今日紹介するのは、もともと江州音頭の歌い手として活躍しつつ、各地の民謡を現代音楽風にあらたに解釈し、大きな話題となっているシンガー、中西レモンの最新アルバムです。ただ、この「民謡を現代風に解釈」というスタイル自体は、正直なところ最近、決して珍しくはありません。もともと、ソウルフラワーユニオンなども自身が奏でるロックミュージックの中に民謡の要素を積極的に取り入れてきましたし、最近では民謡クルセイダーズやすずめのティアーズなど、民謡と現代のポピュラーミュージックを融合させたスタイルの音楽を発表するミュージシャンが多く出てきています。

彼もそんなスタイルが大きな特徴的なミュージシャンの一人。このアルバムでも、同じく、民謡とポップスを融合させて注目をあつめているデゥオ、すずめのティアーズが全面的に参加しています。本作では他にもジャンプ・ブルースのグループ、Bloodest Saxophoneやキーボーディストのエマーソン北村も参加。ロックやジャズ、フォークなどの様々な音楽的な要素を民謡に取り入れています。

ただ、そのように様々なミュージシャンが民謡とポップスを融合させる中でも、このアルバムは特に魅力的に感じました。それは、中西レモンの楽曲が、非常にグルーヴ感のあるサウンドを作りあげている点です。

例えば冒頭を飾る「タント節」。北東北に伝わる盆踊り唄だそうですが、こちらにBloodest Saxophoneが演奏に参加。スカやジャンプブルースの要素を取り入れながら、盆踊りのリズムをグルーヴ感あふれる演奏で聴かせてくれています。青森県黒石市を代表する民謡「黒石よされ」もかなりユニーク。かの「砂漠のブルース」を彷彿とさせるような演奏とリズム感が特徴的で、東北の民謡が、見事、アフリカのグルーヴ感と融合しています。新潟県の民謡「山田はんや」に至っては、リズミカルなビートが特徴的。伸びやかな民謡の歌声をバックにしつつ、リズミカルなグルーヴ感を作りあげています。

他にも様々な音楽との融合が実にユニークで、富山県の盆踊り唄「新川古代神」では、ブラジルのリズム、バイフォンを起用。こちらもラテン風ながら独特のグルーヴ感が魅力的。民謡というよりも脱衣じゃんけんで有名になってしまった「野球拳」も、スカのリズムで軽快に聴かせてくれますし、自分くらいの年代では、どちらかというとドリフターズでおなじみの「北海盆唄」も、こちらもバイフォンのリズムで軽快に聴かせつつ、ブラジル音楽の要素を取り入れた爽やかなサウンドは、どこかシティポップ的な要素も感じられます。

収録曲どの曲も、様々な音楽性を巧みに取り入れており、民謡の魅力を残しつつ、独自のグルーヴ感を作りあげている構成が実に魅力的。なによりも、日本の民謡や盆踊り唄の中に実はちゃんと用意されている、現代でも通用するグルーヴ感をしっかりと引き出している、その実力、その慧眼に感心させられる傑作アルバムに仕上がっていました。あらためて日本の民謡の魅力を実感した、そんな作品でした。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

MOTHERLAND/BIGMAMA

Motherland_bigmama

BIGMAMAの新作は「音楽を奏でる空想遊園地」をコンセプトとしたアルバムとなっており、遊園地のアトラクションや風景をモチーフとした楽曲が並びます。ただ、楽曲的には、ヘヴィーなバンドサウンドにバイオリンを加えたBIGMAMAらしいドラマチックなサウンドに、メランコリックなメロディーラインが載ったいつものスタイル。独特なサウンドはインパクトはあり、爽やかなメロディーラインはポップで心地よさはあるものの、ベタさも感じられる内容に。良くも悪くもBIGMAMAらしい作品となっていました。

評価:★★★★

BIGMAMA 過去の作品
Dowsing For The Future
君がまたブラウスのボタンを留めるまで
君想う、故に我在り
Synchronicity(HY+BIGMAMA)
Fabula Fibula
BESTMAMA
-11℃
Tokyo Emotional Gakuen

tone/Uru

女性シンガーソングライターUruの4枚目となるアルバム。今回も初回盤ではカバーアルバムが付属しており、平井堅の「瞳をとじて」やMrs.GREEN APPLEの「青と夏」、さらにはさだまさしの「たとえば」をカバーしています。とにかく歌が上手く、清涼感たっぷりのボーカルが実に魅力的なミュージシャンなのですが、前作同様、オリジナルに関しては似たようなタイプのバラード一本調子。ボーカルが魅力的なだけに、もうちょっとどうにかならんのか、と思うのですが。カバーアルバムは5ですが、オリジナルは3というところで。

評価:★★★★

Uru 過去のアルバム
オリオンブルー
コントラスト

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2026年8月16日 (日)

大バズりしたバンドの現在位置

Title:VS Tairiku Ondo
Musician:テレビ大陸音頭

Tvtairikuondo

2024年、ある高校生バンドの音源がネット上で大バズりして話題を呼びました。北海道を拠点に活躍するそのバンドはテレビ大陸音頭。当時高校生だった4人組によるバンドで、なんと当時の全国ネットのテレビ番組にまで出演するなど大きな話題となりました。そして、驚くのはその音楽性。この手のテレビ番組にまで出演してバズるバンドというと、一般的にはメロディーラインの優れた、いわば売れ線のバンドとなりがちですが、彼らの奏でるのはむしろ比較的、マニアックとも言えるような「アートパンク」と言われるような分野。正直なところ、決して万人受けするようなタイプの音を出しているバンドではないにも関わらず、大バズりしたことも、非常に意外性がありました。

その後も2025年にはフジロックの「ROOKIES A GO-GO」に出演するなど話題となりましたが、正直なところ、最初に比べると若干、一時期ほど注目度が薄くなった感は否めません。ただ、そんな中でもライブハウスを中心に着実に活動を進め、今年、ついにリリースされた待望のデビューアルバムが本作となります。

アルバムは、その大きな話題となった「俺に真実を教えてくれ!!」からスタート。バンドサウンドは非常にシンプルかつタイトながらもしっかりとしたグルーヴを感じられ、その一方で疾走感あるラップ気味のボーカルスタイルながらもどこかポピュラリティーと、そして歌詞からはユーモラスを感じさせます。

続く「異次元の暮らし」もギターリフを主導としたシンプルなサウンドの中に、いきなり「仲良い友達が川に流されてる/俺はそれを見てるだけ」という非常にシュールな歌詞からスタートします。「hentai」もかなりユニークな作風。ボーカルとシンクロするギターサウンドからスタートする冒頭は、どこかZAZEN BOYSを彷彿とさせつつ、途中からはサイケなギターサウンドになだれ込んだかと思いきや、最後はなんとスペーシーなエレクトロサウンドが顔を覗かせるという、かなり実験的でユニークな構成となっています。

後半の「超常現象を信じてみる。」もファンキーなギターとドラムスがハイテンポに展開する独特のリズム感覚が実にユニークな作品。そして最後を締めくくる「夜について」も、スペーシーなエレクトロのサウンドに、メランコリックなメロディーラインを前に押し出した曲調となっており、彼らのまた違った側面を垣間見れる楽曲となっています。

海外ではblack midiや、あるいはちょっと懐かしいミドリに似ているという指摘もあるようです。ただ、正直言って、ミドリのようなエッジの効いた狂気は楽曲からはあまり感じられません。むしろ、空間を聴かせるシンプルなサウンドに独自のグルーヴ感、そして意外とポップな側面も感じられる点に、個人的にはOGRE YOU ASSHOLEや、あるいはゆらゆら帝国あたりに連なる部分も感じます。ただ、そんな中でも独特のグルーヴ感や、歌詞の言語感覚、さらにはエレクトロサウンドなども取り込む自由さも感じられ、バンドとしての圧倒的な独自性を感じます。

一方で、最初知った時に高校生だった彼らも既に20歳。そして満を持したデビューアルバムがわずか7曲20分弱という内容の寡作さはちょっと気にかかります。また、最初に知った「俺に真実を教えてくれ!!」は高校生らしい若さ、初々しさを一種の武器になっていたのに対して、20歳という大人になった現在、その年齢と比して楽曲が初々しすぎないか、ということもちょっと懸念点に感じてしまいます。

そんな気になる点はありつつ、やはり圧倒的な個性を覚えるバンドなだけにこれからの活躍が非常に楽しみ。ライブに楽曲制作に、さらなる経験を重ねて、日本を代表するバンドになりそうな、そんな予感も覚える作品。これからの彼らにも注目です。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

etc.works4/MONGOL800

MONGOL800が、トリビュートアルバムに参加した際にカバーした曲や他ミュージシャンへの提供曲のセルフカバー曲、未発表曲などを収録した企画盤的なアルバム。モンパチらしい軽快なパンクロックが並ぶ作品なのですが、特にユニークなのがカバー。井上陽水の「少年時代」や美空ひばりの「川の流れのように」をモンパチ流にカバーしているほか、なんと安室奈美恵with SUPER MONKEY'Sの「TRY ME~私を信じて~」のカバーも収録。最初、トランシーなイントロが流れて来て、原曲まんまな路線を無理やりカバーするのはおもしろいと思ったら、途中からバンドサウンドベースのスカのリズムによりカバーに。これはこれでおもしろかったのですが、原曲そのままなユーロビートでのカバーもおもしろかったかも(笑)。

評価:★★★★

MONGOL800 過去の作品
愛彌々(MONGOL800×WANIMA)
LAST PARADISE
愛彌々2(MONGOL800×WANIMA)

BAND-AID/The Ravens

Bandaid_ravans

Dragon AshのKj率いるThe Ravansの4枚目となるアルバム。メランコリックなメロディーラインを前面に出した作風で、メロディーラインにはインパクトも感じられれますが、全体的に似たようなタイプの曲が多く、正直、目新しさは感じません。ラテンのテイストを取り入れつつ、メランコリックなメロを前面に押し出す方向性は、ここ最近のKjっぽい感じなのですが、新機軸は感じられず、全体的に平凡な感じが否めない作品でした。

評価:★★★

The Ravens 過去の作品
ANTHEMICS
SCARECROWS

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2026年8月15日 (土)

恋のはじまりから終わりまで

Title:you seem pretty sad for a girl so in love
(邦題 恋に落ちた女の子にしては、なんだかずいぶん悲しそうだね)
Musician:Olivia Rodrigo

オリヴィア・ロドリゴ、おそらく、現在、もっとも勢いのあるシンガーソングライターかもしれません。1作目「Sour」も2作目「Guts」も、アメリカ、イギリス並びに世界各国のチャートで軒並み1位を獲得。本作もアメリカ、イギリスはもちろん、オーストラリア、カナダなど、世界各国のチャートで軒並み1位を獲得。さらには日本においてもベスト10ヒットを記録。昨今、日本では洋楽が売れなくなった、という話をよく聞くだけに、その中でのベスト10ヒットというのは「なんだかんだ言っても、売れるミュージシャンは日本でも売れるんじゃん」と思ってしまいます。

そして実際本作は、聴いていて素直に楽しめる、非常に良くできたポップスアルバムである点、間違いありません。80年代風のエレクトロサウンドで、軽快なポップソングとなっている先行シングルの「drop dead」、ピアノやストリングスを用いて美しく聴かせる「honey bee」、シンセのサウンドを全面的に取り入れて、リズミカルなダンスチューンに仕上げたインパクトたっぷりの「my way」、バンドサウンドにストリングスも加えて、スケール感たっぷりにダイナミックに聴かせる「the cure」など、ポップなメロやインパクトあるサウンドに、一発で心踊らされるようなポップチューンが並びます。

アルバムの構成としてもバラエティーに富んだ展開となっており最後まで飽きさせません。上で紹介した楽曲もバラエティー富んだ作風になっていますが、その他にも疾走感あるギターポップ風なナンバーに仕上げている「maggots for brains」、ピアノとアコギでしんみり聴かせるバラードナンバー「begged」、哀愁たっぷりのピアノの音色をバックに感情たっぷりに歌い上げる「less」など、基本的にはシンプルなギターロックやピアノ、ストリングスで美しく聴かせるポップチューンを軸としつつ、バラエティー富んだ構成となっています。

ちなみに歌詞の方の展開も、アルバム全体としての流れがあるそうで、前半は恋に落ちる歓びを歌い、後半はその恋に翳りがみえ、さらには破局、最後には再生までつながる展開になっているそうです。実際、序盤の「drop dead」や「stupid song」は、まさに恋の歓びを歌った多幸感あるナンバー。一方、中盤には「begged」のような悲しみを感じさせるナンバーもあったり、さらに「what’s wrong with me」では、The Cureのロバート・スミスが参加。まさにタイトル通り、男女の言い争いをそのまま曲にしたようなユニークな曲になっています。

一方、ラスト前の「expectations」は、エレクトロサウンドを入れて軽快なギターロックにまとめたポップチューンとなっており、失恋からの再生を感じさせますし、ラストを締めくくる「cigarette smoke」も、ストリングスやアコギでスケール感を覚えるバラードナンバーに。次への希望を感じさせる楽曲となっており、後味のよいラストの締めくくりとなっています。

ここらへんの展開もユニークでバラエティー富んだ音楽的な構成も聴かせ、かつ、全体的にはあくまでもポップな内容となっているので、普段、洋楽を聴かないようなリスナーにも、おそらく難なく楽しめる内容になっています。そういう意味では万人にお勧めできる1枚ですし、ある意味、理想的なポップアルバム。今年を代表する1枚になりそうです。

評価:★★★★★

Olivia Rodorigo 過去の作品
SOUR
GUTS

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2026年8月14日 (金)

天才シンガーの活動を網羅

Title:ふわふわ~ALL TIME BEST
Musician:川本真琴

1996年にシングル「愛の才能」でデビュー。2ndシングル「DNA」で初のベスト10ヒットを記録し一躍ブレイク。その後も「1/2」「桜」などのヒットを飛ばし、一世を風靡したシンガーソングライター、川本真琴。ただ、その人気絶頂の最中、徐々にリリースペースが落ち、2002年にはソニーとのメジャー契約を解消。しばらくは事実上の活動休止状態となりました。

その後は2006年に活動を再開したものの、またすぐに活動を休止したりして、ある意味マイペースに、インディーズでの活動を行ってきた彼女。ただ、ここ最近はようやく徐々に活動ペースもあがってきて、2023年には久々となるニューアルバムもリリース。そして今回リリースされたのは、初期メジャー時代の作品から、2010年代以降のインディーズ時代の作品まで網羅的に収録したオールタイムベストとなります。

川本真琴については、過去に何度かこのサイトでも紹介してきましたが、今回あらためて彼女の代表曲を網羅的に聴いてみて感じるのは、川本真琴というシンガーソングライターは、間違いなく「天才」と称することが出来る実力を持ったミュージシャンである、ということでした。メロディーメイカーとしての才能を感じられるのはいわゆるAメロ、Bメロからサビへの展開が非常に自然で、かつ徐々に盛り上がり、気が付いたらサビの高揚感を味わえるような展開になっている点。これは大ヒットした「DNA」もそうですし、「1/2」や「ピカピカ」など、彼女のヒット曲のいずれにも大きな特徴として感じられます。

また、感情をストレートに、そして時としてエロチックにあらわしたような情熱的な歌詞も魅力的。「DNA」の

「AH!抱き合ったら
こんがらがっちゃうよね
脳でなんかわからないよ」
(「DNA」より 作詞 川本真琴)

という歌詞もそうですし、「1/2」の

「唇と唇 瞳と瞳と 手と手
神様は何も禁止なんかしてない 愛してる 愛してる 愛してる」
(「1/2」より 作詞 川本真琴)

なんていう表現も、まさに川本真琴の真骨頂と言えるでしょう。

個人的に、この川本真琴のひとつの到達点と思っているのが「桜」で、卒業式の空気感をそのまま包んだような、これで最後という切なさと将来への希望を見事バランスさせたメロディーラインに、最初からサビの部分まで一気に上り詰めるメロディー展開の妙も絶品。「あたしとあたしの手があなたにふれた時/できない できない できない」という爽やかな中でエロティシズムを感じさせる歌詞も魅力的。川本魅力の才能を、これでもかというほど詰め込んだ名曲になっています。

ただ、この初期のメジャーレーベル時代は多忙によるプレッシャーで精神的にも限界になったようで、活動を休止。インディーズに移ってからはマイペースな活動を再開しています。今回のアルバムではDisc1ではメジャー時代、Disc2は主にインディーズ時代の作品が収録されている構成となっています。そして、こうやって2つの時期の曲を通して聴いてみると、残念ながらインディーズ時代の作品には、初期のような才気あふれるような楽曲はあまり見受けられません。

もちろんインディーズ時代の曲でも魅力的な曲はあります。「ホラーすぎる彼女です」などはメロディアスでしっかりとインパクトもありますし、「ゆらゆら」も爽やかなポップ路線が川本真琴らしさを感じます。ただ、やはり初期のメジャー時代の曲と比べると、メロディーにしても歌詞にしてもいまひとつ。決して悪くはないのですが、全盛期と比べてしまうと物足りなさは否めません。

そんなこともあって、Disc1は申し分ない傑作に対して、Disc2は惜しい内容といった印象。ただ、Disc1のすごさはDisc2のマイナスをはるかに凌駕する内容になっており、その点を差し引いても文句なしの傑作だったと思います。そして、なんとこのたびメジャーレーベル、ソニーミュージックへの復帰が決定!本作は、そのソニーからのリリースとなっていますし、またメジャー再デビュー後のシングル「Superstar」「きいていて」も収録されています。メジャーを離脱した時の経緯から考えると、メジャー再デビューは意外でしたし、驚きでもあるのですが、時代を経て、彼女のメジャーへの見方も、またメジャーの彼女への見方も変わってきたということでしょうか。おそらく、メジャー復帰により活動がさらに活発になりそう。これからの彼女の活躍に期待したいところです。

評価:★★★★★

川本真琴 過去の作品
音楽の世界へようこそ(川本真琴feat.TIGAR FAKE FUR)
The Complete Single Collection 1996~2001
願いがかわるまでに
川本真琴withゴロニャンず(川本真琴withゴロニャンず)
ふとしたことです
新しい友達
ひかり


ほかに聴いたアルバム

LOVE PSYCHEDELICO NAKED SONGS/LOVE PSYCHEDELICO

今回の作品は、彼らの過去の代表曲について、メンバーのNAOKI自身が、ゼロからリミックスした作品。「当時脳裏に描いていた本来の、本当の完成形」となったアレンジで収録したセルフリミックスアルバムだそうです。もちろん、基本的にはオリジナルと大きな変化はなく、ベスト盤的な楽しみ方もできる一方、オリジナルに比べて、よりエッジの効いたサウンドとなっており、耳元でダイレクトな演奏を聴いているような、よりリアリティーある演奏に仕上がっています。LOVE PSYCHEDELICOの魅力がより伝わる作品になっていました。

評価:★★★★★

LOVE PSYCHEDELICO 過去の作品
This Is LOVE PSYCHEDELICO~U.S.Best
ABBOT KINNEY
IN THIS BEAUTIFUL WORLD
LOVE PSYCHEDELICO THE BEST I
LOVE PSYCHEDELICO THE BEST Ⅱ

15th ANNIVERSARY TOUR-THE BEST-LIVE
LOVE YOUR LOVE
LOVE PSYCHEDELICO Live Tour 2017 LOVE YOUR LOVE at THE NAKANO SUNPLAZA
"TWO OF US"Acoutsic Session Recording at VICTOR STUDIO 302
Complete Singles 2000-2019
20th Anniversary Tour 2021 Live at LINE CUBE SHIBUYA
A revolution
Premium Acoustic Live “TWO OF US” Tour 2023 at EX THEATER ROPPONGI

大黒ミサ THE END OF SEASON ONE “FINAL” @SSA/聖飢魔Ⅱ

The-end-of-season-one-final-ssa

地球デビュー40周年を記念して、昨年行われた大黒ミサツアーのファイナル、11月30日にさいたまスーパーアリーナで行われた大黒ミサ(ライブ)の模様を収録した作品。映像作品としてリリースされたものが配信でもリリースされており、今回紹介するのはそちらのアルバム。デビュー40周年記念の黒ミサということで、ワースト(ベスト)的なセレクトとなっており、信者にとっては聴きごたえ十分な作品に。ただ、映像作品ではフル収録されている(と思われる)トークの部分が配信ではカットされているのがちょっと残念かと。

評価:★★★★

聖飢魔Ⅱ 過去の作品
XXX-THE ULTIMATE WORST-
BLOODIEST
聖飢魔Ⅱ 期間再延長再集結「35++執念の大黒ミサツアー -大阪-」
聖飢魔II 期間再延長再集結「35++執念の大黒ミサツアー -東京FINAL-」
SeasonⅡ

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2026年8月13日 (木)

今週もサントラ盤が健闘

今週のHot Albums

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

今週も、あの話題の映画のサントラが上位にランクイン。

まず1位は旧ジャニーズ系。元関ジャニ∞ことSUPER EIGHTのEP盤「ダンダーラ」が獲得。CD販売数1位、ダウンロード数7位。オリコン週間アルバムランキングでは初動売上13万枚で1位初登場。直近のフルアルバム「SUPER EIGHT」の初動18万3千枚(1位)からダウン。

そして2位に「『映画ちいかわ 人魚の島のひみつ』オリジナル・サウンドトラック」が先週に引き続きランクイン。今週もストリーミング数は1位をキープ。ダウンロード数もワンランクダウンの2位となっています。また、おなじ映画がらみというとマイケル・ジャクソン「スリラー」は今週は2ランクダウンの10位。ただ、これで8週連続のベスト10ヒットとなっています。

さらに3位にはHANA「HANA」が先週からワンランクアップ。これで24週連続のベスト10ヒットに。また、2週ぶりのベスト3返り咲きとなり、通算19週目のベスト3ヒットとなっています。

4位以下の初登場盤は、韓国の男性アイドルグループTOMORROW×TOGETHERのミニアルバム
7TH YEAR: A Moment of Stillness in the Thorns」が6位初登場。アメリカの人気シンガーソングライター、アリアナ・グランデ「ペダル」も7位に初登場しています。

またベスト10返り咲きとしてMrs.GREEN APPLE「ANTENNA」が12位から9位にアップし、2週ぶりのベスト10返り咲き。これで通算73週目のベスト10ヒットに。ロングヒット盤としてはBTS「ARIRANG」が5位から4位にアップし、21週連続のベスト10ヒット。ILLIT「MAMIHLAPINATAPAI」もワンランクアップの5位。こちらは14週連続のベスト10ヒット。ヨルシカ「二人称」も8位にアップ。こちらは通算15週目のベスト10ヒットとなっています。


今週のHeatseekers Songs

https://www.billboard-japan.com/charts/detail?a=heat_seekers

Heatseekers Songs1位はM.Sasuke「GG EZ」が3週ぶりに1位返り咲き。通算3週目の1位獲得となりました。Hot100では76位にランクインしています。


今週のニコニコVOCALOID SONGS

https://www.billboard-japan.com/charts/detail?a=niconico

ボカロチャートではr-906「ワンダー」が先週の2位からランクアップし、初の1位獲得。ハウス系のサウンドに、ちょっと90年代が入ったようなリズムが印象的な楽曲。2位はルシノ「ループザループ」が先週の11位からアップ。6週ぶりのベスト3返り咲き。3位はNeru「電脳殺意」が先週と同順位をキープしています。

今週のHot Albums&Heatseekers&ボカロチャートは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2026年8月12日 (水)

新譜は比較的おとなしいが・・・

今週のHot100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

とはいっても今週も10曲中5曲まで初登場です。

1位は韓国の男性アイドルグループTWS「SODA SODA」が獲得。CD販売数及びラジオオンエア数2位。オリコン週間シングルランキングでは初動売上22万5千枚で2位初登場。前作「はじめまして」の初動15万枚(1位)よりアップ。

2位は女性アイドルグループME:I「花咲く道」が初登場。CD販売数3位、ダウンロード数7位、ラジオオンエア数4位。日韓合弁の芸能事務所LAPONEエンタテイメント傘下のLAPONE GIRLS所属のグループ。オリコンでは初動売上11万6千枚で3位初登場。前作「MUSE」の初動19万8千枚(1位)からダウン。

3位は声優アイドルグループ≒JOY「サマーツインテール」がランクイン。CD販売数1位。オリコンでは初動売上30万8千枚で1位初登場。前作「電話番号教えて!」の初動23万枚(4位)からアップ。

4位以下初登場は5位にM!LK「罪と罰と雨とキス (佐野勇斗&吉田仁人)」。M!LKのメンバー佐野勇斗と吉田仁人によるユニット曲。昔ながらの歌謡曲風なのですが、なんとなく一昔前のジャニーズ系の曲っぽい・・・。ダウンロード数3位、ストリーミング数8位、動画再生回数1位。

ちなみにM!LKは「好きすぎて滅!」が今週8位から7位に、「爆裂愛してる」も10位から9位にランクアップ。それぞれ36週連続、通算25週目のベスト10ヒットを記録しています。

そして8位にはスピッツ「見知らぬ糸」がランクイン。TBS系ドラマ「Tシャツが乾くまで」主題歌。ダウンロード数2位、ラジオオンエア数6位。ドラマ主題歌とはいっても、最近はさほどタイアップ効果も強くありませんし、配信オンリーでCD売上が加味されていませんし、それでもベスト10入りしてくるあたり、スピッツの根強い人気を感じます。

今週はベスト10返り咲きも。10位にILLIT「It's Me」が先週の12位からランクアップ。5週ぶりのベスト10返り咲き。これで通算8週目のベスト10ヒットとなりました。

今週のHot100は以上。明日はHot Albums&Heatseekers&ボカロチャート!

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2026年8月11日 (火)

今、最も注目されるトラックメイカー

Tilte:イ三
Musician:原口沙輔

Isan

おそらく、現在最も注目をされているミュージシャンの一人であろう、原口沙輔。ボカロPとしても活躍し、特に「人マニア」はビルボードのボカロチャートで14週連続1位を獲得するなど、圧倒的な人気を確保しました。本作は、その彼の3枚目となるアルバム。ただ、彼はこのアルバムを「実質のファーストアルバムであり、ベストアルバムであり、ラストアルバム」と語っており、まさにいままでの彼の活動のひとつの集大成とも言えるアルバムとなっています。

彼は非常に実験的なミュージシャンであり、「ミュージシャン」という以上に「トラックメイカー」という表現がピッタリくるかもしれません。実際大ヒットして、本作にも収録されている「人マニア」についても、かなり挑戦的な作品で、重音テトのボーカルが、ひとつの言葉ごとに分解されたように配置され、ピアノとドラムで刻まれるリズムはかなりアバンギャルド。これが14週も1位を獲得するほどヒットしていた事実にも驚かされます。

今回のアルバムについても、31曲もの曲が収録されているのですが、アルバム全体の長さとしては56分。1曲あたり1分から、長くて2分程度の短い曲が並んでおり、次から次へと繰り広げられる「音の実験場」みたいな構成となっています。パソコンの起動音からスタートする本作は、事実上の1曲目はタイトルチューンでもある「イ三」からスタートするのですが、エレクトロやノイズ、メロウなポップを融合した、挑戦的な楽曲。続く「有す」もアバンギャルドなエレクトロのビートと、静かなストリングスとピアノの音色の対比がユニークな挑戦的な作品となっています。

ほかにも「千号」ではサイケでダイナミックなギターサウンドを大胆に導入してきたり、「理性」では女性ボーカルによるポエトリーリーディングを加えてきたり、重音テトを用いた「それに命」では、ボカロと人のボーカルというデュオに挑戦していたり1曲あたりが短い曲の連続ながらも、様々な音の挑戦が試みられています。また、「誰か」では、最初は和風なサウンドが入りつつ、途中からエレクトロビートが加わり、最後はサイケでダイナミックなバンドサウンドで締めくくるなど、3分という短さとは思えない大胆な展開が繰り広げられる作風になっています。

さらには「仮有0一」「仮有0二」ではU-zhaanのタブラに鎮座DOPENESS、環ROYのラップが重なる挑戦的なスタイル。リリックが哲学的なのも特徴的ですが、「仮有0三」ではあのいとうせいこうも参加。「有」という意味についての哲学的な考察は、このアルバムのひとつのテーマとなっています。

全体的には挑戦的な作風の曲が多いものの、メロディアスなポップチューンももちろん多く収録されており、バーチャルライバーの月ノ美兎が参加した「贋ト旧称」はメロウなピアノやストリングスをバックに、月ノ美兎のボーカルと語りでダンサナブルなポップチューンに。「僅力」でも郷愁感あるメロディーをしっかりと聴かせてくれています。全31曲というボリュームで、次々と展開していく構成なのですが、アルバムとしては聴きやすさを感じさせるのは、ここらへんのポップスセンスがアルバム全体を貫いているからでしょう。

ただ、正直言ってしまうと、メロディーメイカーとして原口沙輔については、ちょっと物足りなさを感じてしまう点は事実。純粋にメロディーだけでの勝負となると、いまひとつ的に感じてしまう点も否定できません。とはいえ、サウンドを含めてその実験精神や、その中でのメロディーとのバランスという点においては、間違いなく今のシーンにおいても指折りの、卓越したミュージシャンと言えるでしょう。本作は、そんな原口沙輔の実力を存分に感じさせる傑作。まだまだ彼の活躍は続きそうです。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

いきものがかり meets 2

数々のミュージシャンたちがいきものがかりの曲をカバーしたコラボレーションアルバムの第2弾。JUJUや礼賛、スキマスイッチ、原口沙輔、ねぐせ。といった若手からベテランまで、様々なミュージシャンたちがいきものがかりの曲をカバーしているほか、NHK BS「玉置浩二ショー」で披露された、玉置浩二といきものがかりのコラボ「帰りたくなったよ」、さらにいきものがかり本人たちにより、「ありがとう」をリメイク(本人たち曰く20%増し)した「超ありがとう」も収録されています。ただ、基本的にはいきものがかりの原曲に沿ったカバーとなっており、あまり目新しさはない反面、ファンにとっては安心して聴けるカバーアルバムといった感じに。ちなみにスキマスイッチの「じょいふる」では途中、2人が名古屋弁で会話するシーンがあったりして、個人的にはちょっとうれしかったりして。

評価:★★★★

日本武道館 LIVE 2026 kanekoayano/kanekoayano

Budokankanekoayano

カネコアヤノ率いるバンド、kanekoayanoが、今年1月15日に開催した初の日本武道館単独ライブの模様を収録したライブアルバム。カネコアヤノ名義の曲もkanekoayanoとしての曲も織り交ぜてのセットリストになっていますが、全体的にバンドアレンジにマッチさせて、よりダイナミックな演奏を聴かせてくれるライブアルバムに。カネコアヤノが、わざわざバンドを結成して演りたかった音が何なのか、ということがより明確になっているライブアルバムでした。

評価:★★★★★

カネコアヤノ 過去の作品
燦々
燦々 ひとりでに
よすが
タオルケットは穏やかな
カネコアヤノ 単独演奏会 2022 秋 - 9.26 関内ホール
タオルケットは穏やかな ひとりでに
よすが ひとりでに
カネコアヤノ Billboard Live ワンマンショー 2023 - 12.15 Billboard Live OSAKA
石の糸(kanekoayano)
石の糸 ひとりでに
LIVE 2025 kanekoayano(kanekoayano)

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2026年8月10日 (月)

シンプルなロックをバラエティーもって聴かせる

Title:For Love of Grace&the Hereafter
Musician:Iceage

デンマークのロックバンド、Iceage。2008年に結成し、2009年にデビューアルバムをリリースした、そろそろベテランの領域に入りそうなロックバンド。前作「Seek Shelter」ではじめて彼らのアルバムを聴いたのですが、ブリットポップやマンチェスタームーブメントの影響を感じさせるグルーヴィーなサウンドがとても心地よく、2021年の年間私的ベストアルバムで4位にランクインさせるなど、個人的にかなりお気に入りの1枚となりました。

本作はそんな前作から約5年ぶりとちょっと久しぶりとなるニューアルバム。グルーヴィーなサウンドが魅力的でブリットポップの影響も感じさせた前作から一転、今回のアルバムはガレージロックやパンク、またオールドスタイルのロックンロールの影響を感じさせる作品になっていました。ただ、そんな中でも様々なバリエーションを感じさせる曲が並んでおり、シンプルに言ってしまえば、難しいこと抜きにしてロックの楽しさを体現したアルバム、そんな印象を受ける作品となっていました。

アルバムの冒頭を飾る「Ember」は軽快なパンクロックのナンバー。続く「Match Head Girl」もガレージロック風の楽曲となっており、シンプルなロックチューンに、アルバム全体の方向性を感じさせる曲となっています。そして3曲目「The Weak」、こちらは60年代を彷彿とさせるようなロックロールな楽曲。こちらも軽快なリズムに心躍るようなロックチューンとなっています。

中盤の「Salve for Every Sore」はハイテンポのリズムで疾走感のある軽快なナンバー。カントリー風のリズムが入っており、ちょっとアメリカーナ的な要素も感じます。一方「mother-of-pearl」は同じリズミカルなチューンでも明るく軽快でポップなナンバーに。さらに続く「Tender Blades」はノイジーな分厚いギターサウンドが特徴的。こちらは90年代オルタナ系の流れを汲んだような作風となっているなど、バリエーション富んだ展開が続きます。

後半の「Star」は先行シングル曲。ヘヴィーなギターサウンドでグルーヴ感を持って聴かせてくれる楽曲になっており、ここらへんは本人たちの前作からの流れも感じさせます。かと思えば「Lifetime」ではモータウンビートを取り入れた軽快なロックンロールナンバーに。「Holy Water」もテンポよいガレージ風のナンバーと様々に展開。さらにラスト「True Blue」はノイジーなギターがシューゲイザーの影響を感じさせる作風と、最後の最後までバラエティー富んだ作風を楽しむことが出来ます。

そんなバラエティー富んで展開していく作品ではあるのですが、ただ、とはいってもアルバム全体がバラバラ、といった印象は受けません。基本的にアルバムを貫く感じで共通点もあり、まず全体的にシンプルなロックチューンがメインということ。パンクやオルタナ系ロックが軸となっており、シンプルなギターロックが共通項となっています。またメロディアスでポップなメロが流れており、その点もアルバムを貫くポイント。基本的にはこの軸をズラすことなく、最後までロックな楽曲が並ぶからこそ、バラエティーに富んでいてもアルバムの一体感が保たれる作風おあんっていました。

個人的にはグルーヴ感があった前作の方が好みだったのですが、ただこちらもシンプルなロックが楽しめるアルバムで、十二分に楽しめた傑作だったと思います。ロック好きなら間違いなく楽しめる1枚です。

評価:★★★★★

Iceage 過去の作品
Seek Shelter


ほかに聴いたアルバム

Kehlani/Kehlani

アメリカ・カリフォルニア州オークランド出身のシンガーソングライターによる、オリジナルアルバムとしては5枚目となる作品。現代のR&Bシーンを代表するミュージシャンの一人だそうですが、個人的にはこれがはじめて聴いた彼女のアルバムとなります。前作ではカントリーやロックの要素を取り込んだ、実験性の高い作風になっていたそうですが、本作はベイビーフェイスやジャム&ルイスのような90年代あたりに活躍していたプロデューサーたちが参加。90年代から2000年代あたりのR&Bを彷彿とさせるオーセンティックな曲づくりが特徴的なアルバムになっています。特に彼女のメロウで力強いボーカルが魅力的。正直なところ、目新しさはないのですが、彼女のボーカルの魅力に触れながら、安心して聴けるアルバムになっていました。

評価:★★★★★

8-Tracks(極到~8トラックス)/PINK FLOYD

1971年から1979年の黄金期にスポットをあてたピンク・フロイドのベストアルバム。ピンク・フロイドのようなプログレバンドといえば、曲単位ではなくアルバム単位で作品を作りあげるというイメージがあったので、このような単なる8曲のみを収録したベストアルバムのリリースは意外だったのですが、ただ、プロデューサーのSteven Wilsonは曲間を調整し、一続きの作品として聴けるような構成に仕上げています。そのため、アルバム一体としても違和感はなく、また、こうやって代表曲を並べると、音楽的なクオリティーと共に、意外とポップにまとまっているんだな、ということを感じられる作品に。43分という長さもちょうどよく、初心者向けとしてもお勧めできそうな作品です。

評価:★★★★★

PINK FLOYD 過去の作品
The Endless River(永遠(TOWA))
Live At Knebworth 1990
Pink Floyd at Pompeii - MCMLXXII

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2026年8月 9日 (日)

音楽で登山

Title:スーパー登山部
Musician:スーパー登山部

今回紹介するのは名古屋を拠点に活動し、現在、もっとも注目を集めているインディーポップバンドと言えるスーパー登山部。「登山部」という名前の通り、全員が実際に登山を行い、山小屋などでもライブを行うなど、その活動のユニークさでも注目を集めているようです。ただ一方、音楽性でも高い評価を受けており、特に本作に収録されている「燕」はかの蔦谷好位置が年間ベストとして選んだことでも話題となるなど、現在、高い注目を集めています。

そんな彼女たちの奏でる楽曲は、ソフトロックやシティポップ、フォークを基調とした爽快なポップチューン。そんな楽曲を歌うボーカルHinaの透明感あふれる声が大きな魅力となっています。前述の「燕」はピアノや軽快なドラムのリズムで爽やかなポップチューン。爽快感ある楽曲ともマッチするような前向きな希望に満ちた歌詞も特徴的。「意志拾い」は男女デゥオでフォーキーな作風となっていますし、「ITAI」ではピアノ中心にミディアムテンポで聴かせつつ、後半では美しい歌声で力強く歌い上げるスケール感あるナンバーになっています。

かと思えば「ハイライト」は疾走感あるバンドサウンドを聴かせる比較的ロック色の強いナンバーなどもあったり、TENDREが参加している「樹海」は、メロウなR&B風の曲になったり、さらに、終盤の「スーパー銭湯もある」では裏打ちのリズムで脱力感のある楽曲となったりとバラエティー豊富に展開。前述の通り、ソフトロックやシティポップ、フォークなどを軸につつつも、バラエティーある展開に、彼女たちの音楽性の広さを感じさせます。

さらにこのアルバムでユニークなのは、アルバム全体を通じて、音楽で登山を体験できるような構成になっている点でしょう。1曲目はオープニング的な「Departure」でスタート。続く「Breathe」で一息ついた後、山道でみかけた「燕」に元気をもらいながら、「頂き」にたどり着きます。ただ、「頂きと思って近付くと/道まだ続く」といっており、この登山はまだまだ続くことを感じさせます。

そして中盤には「ハイライト」と続き、「樹海」はもう帰り道でしょうか。ちょっと寒い季節のようで「木枯らし」に出会った後、山から下りた後は、まさに「スーパー銭湯もある」で疲れた身体を癒す、といった感じでしょう。最後は「風を辿る」でこの登山の総括といった感じ。楽曲的にも爽やかなソフトロックで、このアルバムを通じて感じるスーパー登山部らしさを体現化した曲となっています。

今回のアルバムは基本的に彼女たちがいままで発表してきた曲を収録した内容となっており、いままでの活動の集大成的なアルバムになっているそうです。どの曲も非常に爽やかなポップが並んでおり、まさに優しい木陰の下で、山頂に向かってピクニックしているような、そんな雰囲気を感じさせます。ここでも何度か紹介している鈴木実貴子ズといい彼女たちといい、名古屋では今、生きのいいインディーバンドが続々と出てきているようですね。地元ということでも応援したいところですが、それを差し引いても文句なしに注目したいバンドなのは間違いありません。本作も年間ベストクラスの傑作。これから、もっともっと注目が集まりそうな予感のする傑作でした。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

三者山羊/Chevon

最近、注目をあつめている3ピースバンドChevonのメジャーデビュー作。バンド名「Chevon」とは「成熟したヤギの肉」の意味だそうで、このバンド名といい、やけに「ヤギ」がらみが多いのはボーカルの名前が谷絹(ヤギヌ)茉優だからみたいです・・・。今回はじめて聴いたのですが、基本的にメランコリックなメロディーラインが特徴的。バンドサウンドはファンキーな曲やちょっとメタル入ったヘヴィーな曲までバラエティー富んでいる点はユニーク。和風な味付けをされた曲もあったりと、サウンドの面白さを感じます。ただ一方、メロディーラインについてはちょっと哀愁メロに頼りすぎで一本調子な部分も。ここらへん、今後の成長に期待したいところです。

評価:★★★★

1996 30th anniversary edition/坂本龍一

坂本龍一の過去の作品をピアノ、ヴァイオリン、チェロによるトリオ編成で再録音したコンピレーションアルバム。タイトル通り、1996年にリリースした作品で、リリース30周年を記念してリマスタリングが行われ、再発されました。2012年にアメリカでリマスター盤がリリースされ、その際、16曲目が坂本龍一本人の意向で「Bring them home」から「Self Portrait」に入れ替わっていますが、本作も基本的にそのリマスター盤に沿った内容となっています。

「Merry Christmas Mr.Lawrence」など、おなじみの楽曲も収録されたコンピ盤で、全面的にピアノとストリングスによるメランクリックでメロディアスな作品が特徴的。おそらく、坂本龍一を詳しく知らない人は、坂本龍一といったら、こういう作品かYMOの楽曲を思い起こしそうな感じなのですが、それはそうとして、やはり教授の書くメロディーラインは非常に美しくて魅力的。もちろん、文句なしの傑作アルバムと言えるでしょう。

評価:★★★★★

坂本龍一 過去の作品
out of noise
UTAU(大貫妙子&坂本龍一)
flumina(fennesz+sakamoto)
playing the piano usa 2010/korea 2011-ustream viewers selection-
THREE
Playing The Orchestra 2013
Year Book 2005-2014
The Best of 'Playing the Orchestra 2014'
Year Book 1971-1979
async
Year Book 1980-1984

ASYNC-REMODELS
Year Book 1985-1989
「天命の城」オリジナル・サウンドトラック
BTTB-20th Anniversary Edition-
BLACK MIRROR : SMITHEREENS ORIGINAL SOUND TRACK
Ryuichi Sakamoto: Playing the Piano 12122020
12
サウンドトラック「怪物」
TRAVESIA RYUICHI SAKAMOTO CURATED BY INARRITU
The Best of Tohoku Youth Orchestra 2013~2023(東北ユースオーケストラと坂本龍一)
Opus
エナジー風呂(U-zhaan&Ryuichi Sakamoto feat. 環ROY×鎮座DOPENESS)

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2026年8月 8日 (土)

2026年上半期 邦楽ベスト5

昨日に続き、今回は邦楽の上半期ベスト5です。

5位 スーパー登山部/スーパー登山部

名古屋出身のインディーポップバンドのデビュー作。スーパー登山部という名前の通り、メンバーが実際に登山を行い、山小屋でライブを行うなど、その活動のユニークさでも注目を集めています。ただ、バンドとしてはそんなギミック的な要素にとらわれることなく、ソフトロックやシティポップを基調とする爽やかなポップチューンが魅力的な実力派バンド。今後、さらに注目を集めそうなバンドです。

4位 ヤッホー/坂本慎太郎

聴いた当時の感想は、こちら

毎回、独特な世界観を繰り広げる傑作をリリースし続ける坂本慎太郎の最新作。今回も、ハワイアンやソウル、ブルースにサイケ、歌謡曲など、様々な要素を取り入れた音楽性を、独特なグルーヴ感で聴かせる作風は健在。さらに今回のアルバムは以前の作品に比べて、よりシンプルで空間を聴かせるような作風に進化。最初はあまりのスカスカぶりに違和感も持ったのですが、ただ聴くうちに徐々にはまっていく作品になっていました。ユーモラスとシニカルを同居させた歌詞の世界も非常にユニークで、今回も文句なしの傑作に仕上がっていました。

3位 TOWN BEAT/KIRINJI

聴いた当時の感想は、こちら

KIRINJI約2年4ヶ月ぶりの新作・・・なのですが、アルバムとしては9曲入りというボリュームで、うち純粋な新曲は6曲のみ。ある意味、久々の新作でありつつ、この曲数の少なさは「スランプ気味」とも受け取れそうなのですが、ただ、そんな予想を裏切るKIRINJIの魅力のしっかりとつまった傑作に。全体的にいつも通りのKIRINJIらしいシティポップな作風に、なによりもシニカルの度合いが強い歌詞が魅力的。特に「flush! flush! flush!」は現在の日本を強烈に皮肉った歌詞が特徴的であり、まさに2026年を代表する作品と言えるでしょう。

2位 kodomo to otona/SAKANAMON

聴いた当時の感想は、こちら

個人的に、現在、もっとも過小評価されているように感じるバンド、SAKANAMONの新作。毎作、傑作アルバムを聴かせてくれる彼らですが、今回のアルバムは大人向けの曲と子供向けの曲を並べるという、コンセプチャルかつ非常に実験的な構成に。大人向けの作品はポップにまとめあげているのですが、一方ユニークなのが子供向けの楽曲。子供向けだからこそ、なのかもしれないのですが、非常に挑戦的かつ実験的な作品が多く、子供向きと軽視できない、聴きごたえある楽曲が並びます。もっともっと評価されるべき、2026年を代表する傑作です。

1位 夜明け烏が渡るまで/中西レモン

河内音頭の歌い手としても活躍する中西レモン。日本各地の民謡と現代のポップスを融合させた独特の音楽性で高い評価を集めています。この民謡を現代風にアップデートというスタイル自体は決して珍しいものではありませんが、本作に関しては特に独特のグルーヴ感が魅力的。ジャンプブルースやアフリカの「砂漠のブルース」などのスタイルも取り入れた独自のグルーヴ感が身体に心地よい快感を与えてくれる傑作。ほかにもブラジル音楽やスカ、ロック、シティポップの要素なども巧みに取り入れられており、民謡の中に内包されたグルーヴの魅力をしっかりと伝えてくれる傑作でした。

あらためて1位から5位を並べると・・・

1位 夜明け烏が渡るまで/中西レモン
2位 kodomo to otona/SAKANAMON
3位 TOWN BEAT/KIRINJI
4位 ヤッホー/坂本慎太郎
5位 スーパー登山部/スーパー登山部

ほかのベスト盤候補は・・・

潮汐/二階堂和美
儚くも美しき12の変奏/くるり
NEWME/UA
I KNOW HOW NOW/GEZAN
Disque 4-'76 Studio et Live-/裸のラリーズ
THIS IS THE PARTY/THE BAWDIES
Believe/本日休演
VS Tairiku Ondo/テレビ大陸音頭

ベストアルバム常連のくるり新作がベスト5落ち(!)。いや、いいアルバムだとは思うのですが・・・。GEZANはマヒトゥの一件が、特に音楽ファンにある種の衝撃を与えましたが、アルバムの出来は文句なしと思うので、とりあえず候補に連ねています。ただ・・・マヒトゥはもう、戻ってこなくていいよ・・・。

今年の邦楽シーンについては、決して不作ではないものの、一方でとびぬけた傑作はなかったかな、という印象。洋楽と異なり、上位5枚、いずれもいつの年でもベストアルバム上位にランクインしそうな傑作ではあるものの、下期では順位をグッと落とすような可能性も。下期もさらなる傑作が生みだされるように、期待したいところです。

2007年 年間1 
2008年 年間1  上半期
2009年 年間1  上半期
2010年 年間1  上半期
2011年 年間1  上半期
2012年 年間1  上半期
2013年 年間1  上半期
2014年 年間1  上半期
2015年 年間1  上半期
2016年 年間1  上半期
2017年 年間1  上半期
2018年 年間1  上半期
2019年 年間1  上半期
2020年 年間1  
上半期
2021年 年間1  上半期
2022年 年間1  上半期
2023年 年間1  上半期
2024年 年間1  上半期
2025年 年間1  上半期

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2026年8月 7日 (金)

2026年上半期 洋楽ベスト5

ちょっと遅くなりましたが、上半期私的アルバムベスト5。まずは洋楽編です。

5位 Blame The Crown/Twisted Teens

Blametheclown  

聴いた当時の感想は、こちら

アメリカ・ニューオリンズ出身の2人組パンクロックバンド。ガレージパンクにカントリーを融合させた独自の音楽性が特徴的。最近、アメリカではアメリカーナ的なロックバンドが増えているような印象がありますが、彼らもその流れの一貫といった感じでしょうか。ただ、メロディアスでパンキッシュなサウンドと、郷愁感あるカントリーのメロがマッチして、絶妙なインパクトを作り出しています。カントリーというと、日本人的には好き嫌いがわかれそうなジャンルではあるのですが、このアルバムは文句なくはまりました。

4位 Distracted/Thundercat

聴いた当時の感想は、こちら

フライング・ロータスやケンドリック・ラマーなどの作品への参加へも知られ、日本でも高い評価を受けているベーシストThundercatの新作。毎回、フュージョンやソウル、ファンクなどの要素を取り入れた、ポップでメロウな作品が魅力的ですが、特に今回のアルバムではそんな彼のポップな側面が全面に押し出された作品となっています。また、フライング・ロータスやTame Impala、The Lemon Twigsなどのゲスト陣も豪華でアルバムに彩りを加えており、幅広いリスナー層が楽しめそうなポップなアルバムとなっています。

3位 you seem pretty sad for a girl so in love/Olivia Rodrigo

全世界的にはもちろん、日本においても大ヒットを記録した、まさに売上面でも今年を代表する1枚とも言えるオリヴィア・ロドリゴの最新作。恋に落ちてから、恋の最後、さらにその後の再生まで描いた構成もユニークですし、エレクトロサウンドやギターロック、アコースティックなポップまでバラエティーに富んだ楽曲の展開も魅力的。いい意味で広いリスナー層が楽しめる珠玉のポップスアルバムに仕上がっていますし、歌詞、メロディーライン、サウンドあらゆる点が高水準かつポップに収束している、理想的なポップスアルバムと言える作品です。

2位 Creature of Habit/Courtney Barnett

聴いた当時の感想は、こちら

オーストラリア出身のシンガーソングライターによる約5年ぶりのアルバム。前作「Things Take Time,Take Time」ではメロディアスなポップ路線にシフトしたのですが、今回のアルバムは再び、王道路線とも言うべきローファイ気味なオルタナ系ギターロック路線に回帰しています。一方で前作で提示したポップなメロディーラインは今回でも聴くことが出来、まさにロックな側面とポップな側面を上手く融合させた傑作に。いまの彼女の集大成とも言える作品に仕上がっていました。

1位 FENIAN/KNEECAP

聴いた当時の感想は、こちら

今年のフジロックでのパフォーマンスも大きな評判となった北アイルランド出身の3人組HIP HOPデゥオ、KNEECAP。社会派な主張が多いリリックも特徴的で、その主張と音楽性をしっかりリンクしていきている部分も大きな魅力。アメリカや中東、ウクライナなど、世界が再び、覇権主義に陥りそうになっている現在だからこそ、大きく評価されるべき作品と言えるでしょう。一方、音楽的にも重低音を駆使した高揚感あるリズミカルなビートが魅力的。その主張を抜きとしても、音楽的にも楽しめる傑作アルバムに。まさに2026年という年を象徴するような作品です。

そんな訳で上半期ベスト5を並べると

1位 FENIAN/KNEECAP
2位 Creature of Habit/Courtney Barnett
3位 you seem pretty sad for a girl so in love/Olivia Rodrigo
4位 Distracted/Thundercat
5位 Blame The Crown/Twisted Teens

ほかのベスト5候補を並べると

To Whome This May Concern/Jill Scott
Nothing's About to Happen to Me/Mitski
Play Me/Kim Gordon
WOR$ST GIRL IN AMERICA/Slayyyter
HOPE!!/Angelique Kidjo

率直に言うと、上半期の洋楽シーン、かなりの不作だったように感じます。上記、5枚のアルバムを選びましたが、突出した作品はありませんでしたし、正直、下半期の動向次第では、上位5枚がすべて年間ベスト10から消える、という可能性すらある内容だったと思います。下期は是非とも挽回を期待したくなる、そんな上期の洋楽シーンでした。

2007年 年間
2008年 年間 上半期
2009年 年間 上半期
2010年 年間 上半期
2011年 年間 上半期
2012年 年間 上半期
2013年 年間 上半期
2014年 年間 上半期
2015年 年間 上半期
2016年 年間 上半期
2017年 年間 上半期
2018年 年間1  上半期
2019年 年間1  上半期
2020年 年間1  上半期
2021年 年間1  上半期
2022年 年間1  上半期
2023年 年間1  上半期
2024年 年間1  
上半期
2025年 年間1  上半期

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2026年8月 6日 (木)

話題の映画のサントラが・・・

今週のHot Albums

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

今週は、あの話題の映画のサントラが上位にランクインしています。

まず1位は旧ジャニーズ系男性アイドルグループNEWS「KMK」が初登場で獲得。CD販売数1位、ダウンロード数4位、ストリーミング数20位。オリコン週間アルバムランキングは初動売上11万2千枚で1位初登場。前作「変身」の初動8万7千枚(1位)からアップ。また、3位には葛葉「Adamantite」が初登場。CD販売数2位、ダウンロード数5位。にじさんじ所属のバーチャルVTuber。オリコンでは初動売上7万8千枚で2位初登場。前作「Sweet Bite」の初動5万2千枚(2位)からアップしています。

そしてその間に入ってきたのが「『映画ちいかわ 人魚の島のひみつ』オリジナル・サウンドトラック」。先週の現在、大きな話題となっているちいかわの映画のサントラ盤。ダウンロード数及びストリーミング数で1位を獲得し、総合順位でも見事ベスト3入り。その人気のほどを見せつける結果となりました。ちなみに音楽は、CMやアニメの劇伴音楽を多く手掛けている上水樽力と、かのトクマルシューゴが担当。この2人はトクマルシューゴのアルバム「TOSS」でも共演しているそうで、音楽面でも注目できそうです。

ちなみに話題の映画といえば、映画「Michael/マイケル」で注目のマイケル・ジャクソン「スリラー」が今週も8位にランクインし、7週連続のベスト10をキープしています。

続いて4位以下ですが、今週は4位以下に初登場盤はありません。一方、ベスト10返り咲き組としてヨルシカ「二人称」が先週の14位から9位にランクアップ。6月3日付チャート以来、9週ぶりのベスト10返り咲きとなっています。またこれでベスト10ヒットは通算14週目に。特にストリーミング数が8位から6位にアップしています。

ほかのロングヒット盤は、HANA「HANA」が先週からワンランクダウンの4位、BTS「ARIRANG」もワンランクダウンの5位と、両者の順番は変わらず。それぞれ23週連続及び20週連続のベスト10ヒットとなっています。また、ILLIT「MAMIHLAPINATAPAI」もワンランクダウンの6位。こちらは13週連続のベスト10ヒットに。一方、Mrs.GREEN APPLE「ANTENNA」は12位にダウン。ベスト10ヒットは通算72週で再びストップとなります。


今週のHeatseekers Songs

https://www.billboard-japan.com/charts/detail?a=heat_seekers

今週のHeatseekers Songsは、ONE OR EIGHT「YANKEE SQUAT」が1位初登場。ラジオオンエア数4位。avex所属の男性アイドルグループ。Hot100では37位にランクインしています。


今週のニコニコVOCALOID SONGS

https://www.billboard-japan.com/charts/detail?a=niconico

ボカロチャート1位は■37「ふぁうんどふってーじ」が2週連続1位を獲得。2位はr-906「ワンダー」、3位にNeru「電脳殺意」がそれぞれ初登場でランクインしています。

今週のHot Albums&Heatseekers Songs&ボカロチャートは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2026年8月 5日 (水)

今週もまた新譜ラッシュ

今週のHot100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

今週もまた新譜ラッシュに。10曲中7曲が新譜というチャートとなりました。

まず1位は元ジャニーズ系timelesz「消えない花火」が獲得。CD販売数1位、ダウンロード数3位、ラジオオンエア数15位。映画「君と花火と約束と」主題歌。オリコン週間シングルランキングでは初動売上42万5千枚で1位初登場。前作「Steal The Show」の初動51万3千枚(1位)からダウン。

2位は韓国の女性アイドルグループILLIT「I Got Your Back」が初登場。CD販売数5位、ダウンロード数14位、ラジオオンエア数3位、動画再生回数15位。オリコンでは初動売上7万1千枚で4位初登場。前作「時よ止まれ」の初動4万4千枚(2位)からアップ。

3位は韓国の男性アイドルグループATEEZ「BAD」がランクイン。CD販売数2位。オリコンでは初動売上16万5千枚で2位初登場。前作「Birthday」の初動12万2千枚(3位)からアップ。

4位以下も初登場曲が並びます。5位には櫻井優衣「夏いぞん」が初登場。女性アイドルグループFRUITS ZIPPERのメンバーによるソロデビュー作。オリコンでは初動売上7万3千枚で3位初登場。

6位は吉本興業所属の男性アイドルグループOCTPATH「なつめき」が初登場でランクイン。CD販売数4位。オリコンでは初動売上6万5千枚で5位初登場。前作「Steppin'!!!」の初動4万3千枚(3位)よりアップ。

7位にはTOBE所属の男性アイドルグループCLASS SEVEN「アイノーヒーロー」がランクイン。CD販売数6位、ラジオオンエア数2位。TOBEオフィシャルサイト限定販売のためか、オリコンではランク対象外となっています。

そして9位にはKing Gnu「GO GHOST」が初登場でランクイン。ダウンロード数2位、ストリーミング数10位、ラジオオンエア数18位。フジテレビ系アニメ「攻殻機動隊 THE GHOST IN THE SHELL」オープニングテーマとなっています。

ちなみにこの曲に関して、この曲の宣伝動画が「ふざけすぎ」とバッシングになっているのが話題となっているようです。ただ、該当の宣伝動画を見てみたのですが、正直言って、これが叩かれるのが本当に意味不明。別にふざけたわけじゃなくて通常モードで話していることは熱心なファンじゃなくてもわかりますし、特に茶化しているわけでもないし、これを叩いている人の考えが本当に理解できません。じゃあ優等生的な態度をすれば受け入れられるのかというと、ネット上では優等生すぎるのも「コンプライアンス重視の行き過ぎ」みたいに叩かれるし、結局、自分が気に入らないものを理屈抜きで叩いているだけじゃん。本当に心の底からくだらないと思う炎上劇でした。

一方、ロングヒット曲は、M!LK「好きすぎて滅!」は先週から変わらず8位をキープ。「爆裂愛してる」は9位からワンランクダウンの10位。「好きすぎて滅!」は35週連続、「爆裂愛してる」は通算24週目のベスト10ヒットとなりました。一方、サカナクション「夜の踊り子」は11位にダウン。ベスト10ヒットは通算11週で再びストップとなりました。

今週のHot100は以上。明日はHot Albums&Heatseekers Songs&ボカロチャート!

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2026年8月 4日 (火)

今の時代だからこその「希望」を感じさせてくれる作品

Title:HOPE!!
Musician:Angelique Kidjo

西アフリカはベナンのシンガーソングライター、Angelique Kidjo。世界的に高い評価を得ているシンガーソングライターで、前作「Mother Nature」もグラミー賞の「ベスト・グローバル・ミュージック・アルバム」を受賞。その後もほぼ毎年、なんらかのジャンルにノミネートを果たすなど、今、ワールドミュージックの分野で最も高い評価を得ているミュージシャンと言えるでしょう。ちなみに2021年に行われた東京オリンピックの開会式に登場したことでも話題となりました。

今回のアルバムのテーマはタイトル通り「希望」。このアルバムの制作直前に彼女は母親を亡くしており、作品全体が母親に捧げるような内容になっています。その中で、彼女が母親から受けた教えとして「希望こそ人間の土台である」というものがあるそうで、このアルバムでは、まさにそんな人間としての希望を大きなテーマとして掲げています。

特に今回のアルバムで大きな特徴なのは様々なミュージシャンとコラボしている点で、アルバム冒頭を飾る「Bando」では、かのファレル・ウィリアムズとコラボ。アフロポップのナンバーとなっていますが、ファレルらしい明るい雰囲気のポップな作品に。さらにこの曲ではMigosのQuavoも参加し、軽快なラップを聴かせてくれています。「No Stopping Us」も同じくファレルとのコラボとなっていますが、リズミカルでトライバルなビートが鳴り響きますが、こちらも軽快でポピュラリティーを感じさせる作品となっています。

さらに「Oyaya」ではなんとナイル・ロジャースとコラボ。ナイル・ロジャースらしい爽やかなカッティングギターに、トライバルでファンキーなリズムが重なります。さらにブラジルのシンガーIZAも参加しており、ラテンなリズムも加わる作品になっており、まさにアフリカとブラジルのつながりを感じさせる曲になっています。

その他にも「For Me」では、アメリカのファンクバンドThe Gap BandのCharile Wilsonが参加。伸びやかで力強いソウルなボーカルを聴かせつつ、アフロビートのリズムを取り入れており、R&Bとアフロの融合を意図していますし、「Nadi Balance」ではコンゴのシンガー、Fally IpupaにナイジェリアのThe Cavemen、さらにイギリスのジャズ・トランぺッターSheila Maurice-Greyという国際的なコラボを実現。ハイライフの軽快なリズムにジャズの要素が入るというボーダーレスな作品に仕上げています。

そしてラストを締めくくる「MalaÏka」は東アフリカの名曲のカバーで、彼女の母親が愛した曲だとか。力強く歌い上げる「祈り」のような曲なのですが、アレンジはストリングスを入ってクラシカルなものとなっていますし、ここではフランスを代表するシンガーFlorent Pagnyが参加。こちらもアフリカとヨーロッパの融合を意図したような作風に仕上げています。

思えば現在、世界はまさに「分断」が進んでいます。欧米をはじめ、排外主義を煽る傾向は加速しており、残念ながらそれは日本も例外ではありません。また、ウクライナやイランにおける戦争も進んでいます。そんな中、今回のこのアルバムは、まさにアフリカ、アメリカ、ヨーロッパ、ブラジルなど、様々な地域のミュージシャンがコラボを行い、融合を果たすことを意図した作品になっています。楽曲的にもアフリカを彷彿とさせるトライバルなビートに、あか抜けた西洋的なメロディーやサウンドが重なるような作風となっており、楽曲を通して、異なる文化を融合させる意図を強く感じさせます。

そして、その彼女の音楽の方向性は、まさにアルバムのテーマである「希望」を意識させる構成となってます。「希望こそが人間の土台」という彼女の母親の教えの通り、分断を煽られて暗さを感じさせる世の中だからこそ、「希望」こそが重要だと感じさせてくれる作品になっています。ある意味、2026年を代表するような1枚とも言える作品。世界はまだまだ素晴らしいという、希望を抱かせてくれる1枚でした。

評価:★★★★★

Angelique Kidjo 過去の作品
Remain in Light
Celia
Mother Nature


ほかに聴いたアルバム

Inferno/Boards of Canada

スコットランドのエレクトロドゥオによる、実に約13年ぶりとなる新作。タイトルは「Inferno」=地獄というタイトルですし、アルバム全体として宗教的な世界観を意図した作風ということなのですが、そんなことからイメージされるようなおどろおどろしい部分はなく、全編、静かでドリーミーなエレクトロサウンドが流れる作品に。アンビエント色も強い作風となっており、生音なども効果的に取り入れつつ、彼ららしい完成度の高いエレクトロチューンを聴かせてくれています。18曲約70分という長さが、ちょっと長すぎる感じはするのですが、その点を差し引いても、13年という空白をものともしない傑作になっていました。

評価:★★★★★

Boards of Canada 過去の作品
TOMORROW'S HARVEST

Live at Eden Project 25/07/2023/The Who

2023年7月25日に、イングランド・コーンウォールのエデン・プロジェクトで行われた公演の模様を収録したライブアルバム。2022年から23年にかけて行われてきたオーケストラ共演ツアー「The Who Hits Back!」の最終公演であり、ハート・オブ・イングランド・フィルハーモニー管弦楽団との共演となっています。タイトル通り、彼らの代表曲を多く網羅したセットリストになりますが、特に彼らの名盤「Tommy」の冒頭を30分にわたって連続して演奏している点などが大きな注目を集めています。大ベテランの彼ららしい、安定したライブを見せてくれている一方、ストリングスやホーンが入っている演奏は良くも悪くも「大物然」している感じもあり、ロックバンドとしての迫力というよりも、スケール感のあり安定した演奏を聴かせてくれる内容に。それはそれでベテランの彼ららしいといった感じですが、The Whoで求めているものかと言われると微妙な面も。これはこれで間違いなく「今の彼ら」の姿なのでしょうが。

評価:★★★★

THE WHO 過去の作品
Endless Wire
WHO
Live At The Oval 1971

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2026年8月 3日 (月)

実力派3人によるバラエティー富んだ作品

Title:forgotten
Musician:冬にわかれて

ミュージシャン名が独特ながらも詩的な印象を受けるバンド、冬にわかれて。このバンドについては今回、はじめて知ったのですが、メンバーは寺尾紗穂、伊賀航、あだち麗三郎という、それぞれもソロでも活躍しているミュージシャンたち3人によるスーパーグループで、結成が2017年で、なにげにこれが既に4枚目となるアルバムだとか。冬にわかれてという名前も印象的ですが、こちらは詩人、尾崎翠の詩「冬にわかれて」の一節「冬にわかれて 私の春に住まなければならない」からとられているそうです。

サウンドはアコースティックな楽器がメインとなる構成で、楽曲も基本的にはフォークを基調とした作風。「冬にわかれて」というバンド名のイメージ通り、冬らしい静けさと、どこか寂寥感も覚えつつも、同時にアコースティックな楽器からどこか暖かみを感じさせるメロディーとサウンドが特徴的になっています。そして、そんなフォーキーな作風をベースとしながらも、楽曲によって顔をかえてくるようなバラエティーのある構成も大きな魅力となっていました。

まずオープニングに続く事実上の1曲目「夜半の火の子守歌」は、ちょっとくすんだ感じを醸し出す寺尾紗穂のボーカルも魅力的な、ムーディーでジャジーな作品からスタート。かと思えば、続く「ペパーミント・タイムス」は一転、エレクトロサウンドも用いた、アンビエント風のポップチューンに仕上がっています。さらにそれに続く「シーフー」では、異国への旅をテーマとした歌詞の曲となっており、サウンドもどこか異国情緒を感じさせるような作風に仕上げています。

その後も「東京レイン」はメロウなソウルチューン。個人的にはちょっとKIRINJIも彷彿とさせました。さらに「素粒子のダンス」はピアノやフルートのサウンドを爽快に聴かせる明るくメロウなポップチューン。そして楽曲はピアノでポップに爽快に聴かせる「君の旅」が終盤のハイライトとなり、最後はエレピで静かにジャニーに聴かせる「みらい」で締めくくられます。

そんな感じで全10曲38分という比較的短い長さの作風の中、様々にバラエティー富んだ作品が並ぶアルバムとなっています。これはやはり3人が3人とも、それぞれにソロでも活躍を続けるミュージシャンたちということで、その音楽性の広さがそのままバンドにも反映された、ということなのでしょう。また、それぞれの音楽性を制約することなく、好きなように活動を続けているからこそ、時として空中分解しがちなスーパーグループでありながらも、既に8年以上にわたり、4枚ものアルバムをリリースできたのかもしれません。

ただ一方ではアルバム全体を貫くような共通点もしっかりと感じられるアルバムとなっており、まずなによりも寺尾紗穂の暖かみのありつつ、感情のこもったボーカルが魅力的。また、全体的にアコースティックなサウンドが共通項となっており、どこかフォーキーな雰囲気が漂う点も、アルバム全体がバラバラにならずにまとまっている大きな要因でしょう。また、「ペパーミント・タイムス」や「君の旅」のような、どこか外へ旅立っていくような歌詞も目立ちますし、最後も「みらい」と先へ進んでいこうとするスタンスも感じられます。この点もアルバム全体に共通項を感じさせる部分でした。

そんな訳で、それぞれがソロで活躍するメンバーそれぞれがしっかりとその魅力を伝えて、バラエティー富んだ作風を聴かせてくれる傑作。決して派手な作品ではありませんが、ゆっくりと聴き入りたい、そんな作品となっていました。これからの夏の暑い時期でもしんみりと心に染み入ってくるような作品です。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

Crest/Anarchy

Crest_anarchy

Anarchyの10枚目となるアルバムは、KMが全曲プロデュースを手掛ける作品。PUNPEEやWatsonなどの豪華ゲストも参加しています。最近のAnarchyの傾向でもあるのですが、全体的にわかりやすさを感じる作品となっており、彼に求められる「下流社会のリアル」のようなテーマ性もわかりやすく綴られています。また、プロデューサーとしてKMが入ったことによって、メロウなサウンドやエレクトロビートなどを取り入れた、全体的に都会的に洗練されたサウンドになっている点も特徴的。Anarchyの描く「下流社会」というリリックと、KMによる都会的なサウンドが若干ミスマッチな感も否めなくはないのですが、全体的にはやはりAnarchyの世界観がしっかりと伝わる、いい意味で聴きやすさ、ポピュラリティーを感じさせる作品となっていました。

評価:★★★★

Anarchy 過去の作品
Dream and Drama
Diggin' Anarchy
DGKA(DIRTY GHETTO KING ANARCHY)
NEW YANKEE
BLKFLG
THE KING
NOISE CANCEL
LAST

Chunk of Red/ビレッジマンズストア

結成20周年イヤーにリリースされた7曲入りのミニアルバム。もう、そんなベテランの域に入るようなバンドなんだ・・・とちょっと驚かされますが、勢いのあるガレージロックに、感情を込めたシャウト気味のボーカルは、まだまだ若々しさを感じますし、それがまた彼らの魅力なのでしょう。この勢いあるガレージロックに、歌謡曲的な哀愁感あるメロという組み合わせは魅力的ですし、歌謡曲風でありつつも変にウェットすぎず、ベタになりすぎないというバランス感覚の良さも魅力的。ただ、以前から勢い1本の似たような曲が多いのも課題な感もあります。とはいえ、本作に関しては、7曲入り20分強という内容なだけに、そういうマイナス点が気にならないうちに一気に聴き切れる内容となっており、ビレッジマンズストアの魅力をしっかりと感じられる作品になっていました。

評価:★★★★★

ビレッジマンズストア 過去の作品
正しい夜明け
YOURS
愛とヘイト
re:Rec BEST『遊撃』

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2026年8月 2日 (日)

政治的主張も強いが、インパクトあるリズミカルな楽曲も大きな魅力

Title:FENIAN
Musician:KNEECAP

北アイルランドの3人組HIP HOPデゥオ、KNEECAP。2017年から活動を開始している比較的若手のグループで、本作もまだ3作目のアルバムとなります。北アイルランドといえば、北アイルランド紛争が知られるように大きな問題の抱える地域。そんな中で結成された彼らは、非常に政治的な主張が強いグループとして知られ、アイルランド統一を支持する立場から、楽曲的には社会風刺を多く含む歌詞が取り入れられています。アルバムタイトルである「FENIAN」という言葉も、19世紀のアイルランド独立運動家を指すことばだとか。一部では侮蔑的な意味を込められた言葉だそうですが、あえてそのような言葉をアルバムタイトルとして使い、自分たちのアイデンティティを取り戻そうとしている強い意図があるそうです。

さて、そんなアルバム、政治的な要素もある歌詞を英語と、彼らの母国のアイルランド語を駆使した内容となっています。そんな作品であるがゆえに、歌詞の内容を含め、私たち日本人にとって、その魅力をすべて理解するのは難しいかもしれません。しかし、本作、その政治的主張の鼓舞が伝わってくるような力強いラップとリズミカルなビートが実に魅力的。14曲42分というコンパクトな内容がゆえに最後まで一気に楽しめる傑作に仕上がっていました。

サウンドは重低音を駆使し、高揚感あるリズミカルなビートが特徴的。全体的には80年代、90年代のHIP HOPを彷彿とさせる、ちょっと懐かしさも感じるオールドスクールなサウンドづくりとなっています。まず序盤の「Smugglers&Scholars」はトリップポップ風なサウンドでリズミカルなビートが耳を惹く作品。続く「Carnival」もタイトルとは異なり、不穏なビートが終始流れる作品ながらも、その不穏さとテンポよいリズムが強い印象を与えるナンバーとなっています。

インパクトの強さで言えば中盤の「Liars Tale」が魅力的。疾走感あるれる強いビートのリズミカルなチューンで、高揚感があがる作品。タイトルチューンとなっている「FENIAN」も、エレクトロなビートが入ったリズミカルなダンスチューンとなっており、ライブでは大盛り上がり間違いなさそうな楽曲。続く「Big Bad Mo」もこちらはよりテクノの色合いの強くなっているダンスチューン。さらに「Headcase」はリズミカルなダブステップのナンバーと、インパクトの強いナンバーが並び、高揚感がどんどん高まっていきます。

後半はインダストリアル的なサウンドでダークに聴かせる「Occupied 6」や、アイルランド語のリズムが特徴的ながらも、不穏な雰囲気が漂う「Geal Phonics」などが並び、ラストの「Irish Goodbye」はピアノを中心としたメランコリックでメロディアスなフロウのラップで締めくくり。全体的に政治色の強い作風ながらも、最後の曲は家族への想いがテーマという内省的な作品となっており、強烈なメッセージが続く本編の中ではサウンドを含め、心地よい余韻を残す締めくくりとなっています。

歌詞ももちろん大きな特徴で、アルバム冒頭の「Éire go Deo」はタイトルからしても「アイルランドよ、永遠に」という意味だそうですし、「Liars Tale」はタイトルからしてわかりやすいのですが、政治家やメディアを嘘つきとして批判する内容で、イギリスのキア・スターマー首相を批判する内容が含まれているそうです。また、必ずしもアイルランド周辺の出来事だけに限らず、「Palestina」ではタイトル通り、パレスティナへの連帯がテーマに。サウンドには中東的な要素も含められており、歌詞とリンクしたサウンドも大きな特徴となっています。

そんな社会派の強い歌詞も大きなインパクトになりつつ、ちょっと懐かしさも感じさせる力強いビートやラップも大きなインパクトに。そのサウンドを通じても彼らの主張が伝わってくるようですし、まずは興味を持ってもらうという点において、非常に有効的と言えるでしょう。リズミカルなビートはライブでも盛り上がりそうですし、申し分ない傑作のアルバム。個人的には今年を代表する1枚と言っていいと思います。パレスティナの問題もそうですが、世界では様々に不穏な状況が続いていますが、そんな中、彼らのようなグループはますます存在感が増すように思います。今、もっとも注目したいHIP HOPグループと言えるでしょう。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

Michael:Song From The Motion Picture(邦題「Michael/マイケル」オリジナル・サウンドトラック)/Michael Jackson

日本でも大ヒットを記録した映画「Michael/マイケル」。KING OF POPことマイケル・ジャクソンの半生を描いたこの映画は先日私も見に行きましたが、本作はその映画のサントラ盤。といっても、事実上、マイケルのオールタイムベスト的なアルバムとなっており、ジャクソン5時代の曲から、1987年のナンバー「BAD」まで網羅的に収録。映画自体、1984年のジャクソンズ脱退までで終わっているため、これ以降の楽曲は収録されていないのですが、マイケルの代表曲を、13曲57分というコンパクトな内容にまとめたベスト盤になっているために、初心者にとってはうってつけのベスト盤になっています。映画を見て、あらためてマイケルの曲を聴いてみたいと思った方にもピッタリの1枚です。

評価:★★★★★

MICHAEL JACKSON 過去の作品
Thriller(25th Anniversary Edition)
MICHAEL JACKSON'S THIS IS IT
KING OF POP
MICHAEL
XCAPE
Thriller 40

HAND IT OVER:2 CD DELUXE EXPANDED EDITION)/DINOSAUR JR.

オルタナ系ロックの雄、DINOSAUR JR.が1997年にリリースした作品。2CDデラックス・エディションとして再リリースされた本作は、アルバム未収録のEP収録曲やテレビで放送された音源などをボーナストラックとして収録したほか、Disc2には1997年のストックホルムでの公演がフルに収録されています。ノイジーなギターロックが炸裂する本編ももちろんですが、ライブ音源の方も、彼らがもっとも勢いのあった時代を収録された、その当時の空気感が伝わるような作品に。彼らの魅力を再認識できる2枚組でした。

評価:★★★★★

Dinosaur Jr. 過去の作品
beyond
Farm
Give a Glimpse of What Yer Not
SWEEP IT INTO SPACE
Green Mind (Expanded Edition)

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2026年8月 1日 (土)

表現者、星野源について

今日は最近読んだ音楽関連の書籍の感想です。

「星野源論」。ご存じ、いまや「国民的スター」と言っても過言ではない、ミュージシャンとして、そして俳優としても大活躍の星野源について分析した評論本。ライターで編集者の小田部仁が編者となり、ライターの戸部田誠と、おなじくライターのつやちゃんがそれぞれ評論を手掛けた2部構成の内容となっており、前半の戸部田氏のパートでは、ミュージシャンとしてのみならず星野源の芸能活動前半から、彼の表現について探り、後半つやちゃんのパートでは、音楽という側面に焦点をあてて、彼の表現を分析する構成となっています。

このうち、非常におもしろく、興味深く読むことが出来たのが前半のパートでした。正直言うと、私自身、星野源の音楽はSAKEROCK時代から追い続けており、彼のアルバムもデビューアルバム「ばかのうた」もリアルタイムで聴いており、すべてのアルバムを追い続けています。ただ一方、ミュージシャン星野源についてはその活動をリアルタイムで追っているものの、星野源本人のファンか、と言われるとそうではなく、正直、彼のテレビ番組などはあまり追いかけていませんでした。

もちろん、彼がいままで出演してきた「おげんさんといっしょ」や「星野源のおんがくこうろん」など、番組として放送された事実は知っていましたが、いままでわざわざテレビを見る、ということはありませんでした。それだけに今回、この「星野源論」ではじめて、それらの番組のアバンギャルドさ、アナーキーさを知り、特に「おげんさんといっしょ」など、リアルタイムで見ておけばよかったなぁ~と非常に後悔しましたし、今回の評論の中で、星野源という人物がどのようなスタンスで活動を行っていたのか、ということをあらためて知ることが出来ました。

本書の中で星野源のことを「アナーキーなポップスター」という言い方をしていますが、彼の活動はアバンギャルドでありながらも、一方でポピュラリティーを保っているという絶妙なバランス感覚を実感します。個人的には彼のスタイルについて、どこか90年代サブカルチャーの空気感を受け継いでいるように感じます。本書の中でも、いわゆるサブカル文化からの影響を記載していますが、イメージとして感じたのは、以前、当サイトでも紹介した「オールナイトロングー私にとっての電気グルーヴのオールナイトニッポンとその時代ー」の世界観。70年代的な、明確な政治的反権力でもなく、昨今のような体制への迎合的なスタンスでもなく、でも現在の体制に対してどこか皮肉的な視点を忘れていないスタンス。「マス」に対してどこか距離を置き、アバンギャルドな姿勢を貫きつつ、でも一方ではしっかりと「ポップ」であるというスタンスが、ある意味、90年代っぽさを感じますし、個人的には、本書では言及されていませんし、また、音楽的な影響は感じませんが、どこか電気グルーヴにも通じるような部分すら感じられました。星野源という人物の行動の意味が、あらためてよく理解できると同時に、いままでミュージシャンとしてしか興味を持たなかった星野源の、「表現者」としてのスタンスに俄然、興味がわいてきた評論になっていました。

一方、ちょっと残念に感じられたのが後半のつやちゃんの評論。星野源の音楽の側面に焦点をあてた評論になっているのですが、正直言うと、悪い意味で「ロッキンオン的」な評論に感じてしまいました。

要するに、ほとんどが彼の音楽の概念的な説明に終始しており、音楽性の解説やサウンド面での詳細な説明はあまり多くありません。また、一番違和感を覚えたのが、終始、「星野源の音楽」にばかり焦点があてられており、彼の音楽が彼の活動の中で、外部からどのような影響を受けて生み出されたものか、ということの言及がほとんどなかったという点。特に最新アルバム「Gen」では、ルイス・コールやサム・ゲンデルなど、最近のエレクトリックジャズシーンの重要人物などが参加し、世界の音楽シーンとリンクしたようなアルバムになっているなど、海外からの影響も顕著な音楽性を感じられるのですが、そのような外からの影響への言及も皆無。過去から現在に至るまで、星野源もミュージシャンである以上、様々なシーンからの影響を受け、そして、意図して様々な音楽へ挑戦を行っていると思うのですが、そのような分析はほとんどありません。読んでいて、あまりにも星野源の音楽を、孤立させて評価し、かつ、概念的に考えようとし過ぎている感があり、違和感を覚える評論になっていました。

本書について、特に前半においては星野源という人物の魅力をあらためて強く感じることが出来、ミュージシャンとしてではなく、表現者星野源の興味が俄然わいてきた1冊となってきました。熱心なファンは言うまでもありませんが、そこまでではないものの星野源という人物に興味がある方についてはチェックして損のない1冊かと思います。これからの彼がどんな活動を行うのか、非常に注目したくなってくる1冊でした。

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