« 異なるセットリストによる2作同時シリーズのライブアルバム+お知らせ | トップページ | 久々の大型フェス参加! »

2026年5月26日 (火)

ポピュラリティーと実験性のバランスが絶妙

Title:Girlfriend
Musician:Grace Ives

Girlfriend_graceives

アメリカはニューヨーク出身のシンガーソングライター、Grace Ivesの3枚目となるアルバム。前作「Janky Star」が高い評価を受け、約4年ぶりのニューアルバムとなる本作でも高い評価を受けているようです。そして、確かに本作は、そんなメディアの高い評価も納得の、ポップのアルバムとして理想的なバランスを保った作品に感じました。

ポップのアルバムとして理想的なバランス・・・というのは、要するに挑戦的なスタンスを保ちつつも、一方では広いリスナー層を惹きつけるポピュラリティーを持っている、という点でした。まず、アルバムを聴き始めると、いい意味で聴きやすいポップな曲調がまずは印象に残ります。オープニングを飾る1曲目「Now I'm」はドリーミーでフォーキーな楽曲で、まずその美しくもメロディアスな雰囲気に耳を惹かれます。それに続く「Avalanche」も軽快でポップなエレクトロチューンとなっており、メロディーラインはポップでインパクトある作品に仕上がっています。

中盤の「My Mans」もストリングスやピアノが入り、スケール感のあるサウンドでメロディアスに聴かせるナンバーとなっており、ポップチューンとしてのインパクトも十分。後半の「Trouble」などもリズミカルでキャッチーという表現がピッタリと来るようなポップチューンとなっています。

一方では中盤の「Drink Up」ではポップなメロが流れつつも、ちょっと不穏さを感じるビートと破壊的なサウンドが加わるサイケ風な楽曲。「Neither You Nor I」もダウナーなサウンドで淡々と聴かせるアートポップ寄りの作品と、挑戦的なサウンドを取り入れた楽曲が目立ち、前述のポップなナンバーにしても、エレクトロやバンドサウンドを取り入れた複雑なサウンド構成に耳を惹かれる作品に仕上がっています。

実際、このアルバムの歌詞の内容自体、彼女が「本当のどん底」と表現した時期を経て生まれてきた作品で、もともとアルコールに逃避していた彼女が、「逃避から探求へ」と変化し「自分の居場所を確保」した結果、生まれたアルバムだとか。そのため、タイトルそのまま「Drink Up」のように、飲酒に溺れていく自分の姿を描いたり、後悔や自己嫌悪を表現した作品があったりと、ポップな作風に反して、ヘヴィーな表現が目立つそうです・・・英語なのでこの点は聴いただけではわかりませんが・・・ここらへんの彼女の曲に対するスタンスもまた、単純なポップとは異なる複雑なサウンドを生み出しているのでしょう。

そしてラストを飾る「Stupid Bitches」がまさに最後にして本作を象徴するような作品に感じます。メロディーラインは至ってポップでキャッチーと表現できそうなもの。一方、ダイナミックなビートに、サイケで歪んだ感のあるエレクトロサウンドが楽曲を覆う、まさにポップと実験性を両立させたナンバー。まさに本作を代表するような作風の曲で締めくくられています。

ポップス好きにも、実験的なアートポップ好きにも訴求できそうな、魅力的なアルバム。前作も聴いていて気持ちよさを感じさせるポップが魅力的でしたが、今回のアルバムも心地よさ以上に癖になりそうなサウンドが魅力的な傑作でした。文句なしに、これからの活躍にも注目したいシンガーソングライターです。

評価:★★★★★

Grace Ives 過去の作品
Janky Star


ほかに聴いたアルバム

Trying Times/James Blake

メジャー契約が終了し、自身のレーベル「Good Boy Records」からのリリースとなった新作。え?メジャー契約打ち切り?と思ったのですが、本作も全英チャートで3位を記録し、その人気は変わらず、おそらく自由な作品作りを求めての移籍なのでしょう。今回のアルバムタイトル「Trying Times=困難な時代」は現在のイギリスの状況を皮肉的に描写したタイトルのようで、彼の問題意識をより反映させた作品作りになっているようです。

ただ、楽曲的にはここ最近のメロディアスな歌を聴かせる路線を強く感じさせる作品に。ファルセットボーカルをメインに、メランコリックでドリーミーに聴かせるような作品が目立ちます。一方では前作「Playing Robots Into Heaven」は原点回帰を感じさせるような作品となっており、今回の作品にも、原点回帰を感じさせるアンビエントやソウル、エレクトロなどを基調にした作品も目立つ作品に。ここ最近の歌モノ路線をメインとしつつ、ちゃんと初期からの彼ららしい実験性も取り入れた、そんなバランスのよい作風に仕上がっていました。

評価:★★★★★

JAMES BLAKE 過去の作品
JAMES BLAKE
ENOUGH THUNDER
OVERGROWN
The Colour In Anything
Assume From
Covers
Friends That Break Your Heart
Playing Robots Into Heaven
Bad Cameo(James Blake,Lil Yachty)

TIGRAY FUNK/Sideshow

Sideshow

エチオピアのティグライ出身で、現在はアメリカで活動を行っているラッパーの新作。アンダーグラウンドHIP HOPシーンで注目を集めているそうです。全体的にはアンダーグラウンドな雰囲気を感じられる、歪んだ音色のトラックやサイケな雰囲気の音響、今時のビートミュージックを取り入れたリズムやソウルやジャズなどのサウンドの断片を取り入れた手法などが特徴的。1時間強という長さながらも、全32曲というトラックのため、次々と展開していくテンポよさを感じさせる一方、それが32曲にもわたって続くため、若干間延びしてしまっている印象も。

評価:★★★★

|

« 異なるセットリストによる2作同時シリーズのライブアルバム+お知らせ | トップページ | 久々の大型フェス参加! »

アルバムレビュー(洋楽)2026年」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« 異なるセットリストによる2作同時シリーズのライブアルバム+お知らせ | トップページ | 久々の大型フェス参加! »