隠遁生活している女性が主人公
Title:Nothing's About to Happen to Me
Musician:Mitski
三重県出身の日系アメリカ人のシンガーソングライター、Mitskiの、約2年5ヶ月ぶりとなるニューアルバム。2022年にリリースされたアルバム「Laurel Hell」はビルボードチャートで最高位5位を記録するなど大ヒットを記録。一方、それに続く前作「The Land Is Inhospitable」は最高位12位と残念ながらベスト10落ちしてしまっていましたが、今回のアルバムでは最高位10位と、再びベスト10ヒットを記録しています。
今回のアルバムに関して、まず感じてしまうのは全体的に地味なアルバム、という点でした。この点に関しては前作「The Land Is Inhospitable and So Are We」も同じようなことを感じたので、基本的にその路線を引き継いだ作品と言えるのかもしれません。アルバムの冒頭を飾る「In a Lake」から、いきなりバンジョーの音色からスタートする、カントリーテイストの強いナンバーになっていますし、「Cats」もストリングスでフォーキーに聴かせるナンバー。中盤の先行シングルになった「I'll Change for You」も、ストリングスとホーンセッションで、優雅に聴かせるような楽曲に。終盤の「Charon's Obol」もフォーキーに聴かせる楽曲に仕上げているなど、全体的におとなしいサウンドでメロを聴かせるタイプの曲が並んでいます。
ここらへん、全体的に聴かせるタイプの曲が並ぶのは、アルバムのコンセプトに依る部分も大きいでしょう。今回のアルバムのコンセプトとして、「荒れた家に住む隠遁生活を送る女性の主人公」がテーマだそうで、「家の外では彼女は異端者だが、家の中では自由」というテーマ性の下でのアルバムとなっているそうです。今回、しっかりと聴かせるナンバーが多いのは、主人公の内面を描いたような曲が多いから、という理由なのでしょう。
もちろん、これらの作品についても全体的におとなしく、地味な作風とはいえ、美しく聴かせるメロディーラインは、ソングライターとしてのミツキの実力を存分に感じられるもの。前述の先行シングル「I'll Change for You」も伸びやかな彼女のボーカルを生かしたメロウなメロディーラインが魅力的ですし、軽快なカントリー調の「Rules」も、楽しげなポップなメロが印象的。「Charon's Obol」もシンフォニックなサウンドも取り入れて、美しく聴かせるメロも強いインパクトを持った曲となっています。
一方で、初期の彼女を彷彿とさせるようなギターサウンドを前に押し出したような曲も少なくなく、例えば「Where's My Phone?」もヘヴィーでノイジーなギターを前に押し出した楽曲。「That White Cat」も力強いバンドサウンドを聴かせるロックチューンとなっていますし、最後を締めくくる「Lightning」もバンドサウンドを中心に分厚いサウンドを構成しており、最後にふさわしいダイナミックな曲調とサウンドに仕上げています。
そんな訳で、全体的に地味な印象はぬぐえないアルバムなのですが、カントリーやフォークを取り入れたサウンドやメロディーは美しく、心に残り、また、時折聴かせてくれるバンドサウンドのダイナミックなロックチューンは、アルバムの中でちょうどよいインパクトとなっているように感じました。今回も申し分ない傑作アルバム。シンガーソングライターとしていい意味で安定感も覚える作品でした。
評価:★★★★★
Mitski 過去の作品
Be the Cowboy
LAUREL HILL
The Land Is Inhospitable and So Are We
ほかに聴いたアルバム
Days of Ash/U2
U2が急遽リリースした6曲入りのEP盤。「急遽リリース」というのは理由があって、いずれの曲も社会派な曲で構成されており、非常に強い政治的メッセージが込められた曲が並びます。「American Obituary」は、アメリカICEによって射殺されたレネー・グッドに捧げる曲ですし、「Song Of The Future」は、マフサ・アマニ抗議運動に参加し、当局に殴打されて死亡した、16歳のイラン人女子学生に捧げた曲。ラストの「Yours Eternally」は、かのエド・シーランが参加したことでも話題ですが、ウクライナの歌手から兵士になったタラス・トポリアがゲストボーカルとして参加。ウクライナの戦争について歌った歌となっています。
メロディーラインやアレンジは、ある意味シンプルなギターロックとなっており、いつものU2といった感じで目新しさは覚えません。ここらへん、楽曲の完成度よりも、その伝えたいメッセージの適時性を優先させたのでしょう。ある意味U2らしいですし、こういう行動をすぐに行えるあたりもミュージシャンとしての頼もしさを感じます。純粋に楽曲としての出来ならば★4つですが、そのメッセージに敬意を表して、★1つ追加で。
評価:★★★★★
U2 過去の作品
No Line on the Horizon
Songs of Innocence
Songs Of Experience
The Virtual Road – U2 Go Home: Live From Slane Castle Ireland EP
Live At Red Rocks: Under A Blood Red Sky EP
The Virtual Road – PopMart Live From Mexico City EP
The Virtual Road – iNNOCENCE + eXPERIENCE Live In Paris EP
Songs Of Surrender
ZOO TV Live In Dublin 1993 EP
How To Dismantle An Atomic Bomb(Re-Assemble Edition)
Green Mind (Expanded Edition)/Dinosaur Jr.
アメリカのロックバンド、ダイナソーJr.が1991年にリリースし、オルタナティヴ・ロックを代表する名盤とされる作品。2019年に、B面集&シングル集と、ライブ音源を加えた2CDのデラックス拡張盤がリリースされましたが、本作は、同作にリマスターを加えた再発盤となります。オルタナティヴ・ロックの、ある意味「手本」的なオリジナルの傑作ぶりはもちろんなのですが、本作の聴きどころはやはりDisc2のライブ音源。1991年6月14日に、ハリウッドのパラディウムでのライブの模様を収録しているのですが、かなり荒々しい音源となっており、ダイナソーJr.のコアな部分が如実にあらわれた音源になっています。彼らの「本質」に触れるにはうってつけの音源になっていました。
評価:★★★★★
Dinosaur Jr. 過去の作品
beyond
Farm
Give a Glimpse of What Yer Not
SWEEP IT INTO SPACE
| 固定リンク
「アルバムレビュー(洋楽)2026年」カテゴリの記事
- クラブ系寄りだが、ポップスセンスは健在(2026.05.12)
- ちょっと意外な約10年ぶりの新作(2026.05.09)
- 隠遁生活している女性が主人公(2026.05.05)



コメント