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2026年5月24日 (日)

新たな椎名林檎像を模索か?

Title:禁じ手
Musician:椎名林檎

椎名林檎というミュージシャンは、もともと、非常に挑戦精神の強いミュージシャンでした。大ヒットして注目をあつめたデビューアルバム「無罪モラトリアム」に続く2枚目「勝訴ストリップ」は曲調をかなり変えてきていますし、さらに3枚目「加爾基 精液 栗ノ花」はアルバムタイトルもさることながら、中身もかなり実験精神あふれる作風になっており、当時はかなり賛否のわかれる作品となりました。

「無罪モラトリアム」でブレイクしたころに、インタビューで「椎名林檎はアルバム3枚で終わり」という発言をして一部で騒がせ、その発言の通り、アルバム3枚リリース後は、バンド東京事変を立ち上げています。東京事変活動休止後は、「椎名林檎らしい」アルバムをリリースしているものの、前作「放生会」は女性ミュージシャンとのコラボという形をとっていますし、その前の作品はリミックスアルバムでしたし、手を変え品を変え、新作をリリースしているというイメージがあります。

デビュー当初からという話ではあるのですが、椎名林檎というミュージシャンは、強烈にその個性的なキャラクター設定を前に出していますし、また、そのキャラクターを「売り」にしている点は間違いないでしょう。ただ、それゆえに椎名林檎というミュージシャン像が固定されてしまっており、そんな中でどのような挑戦を行うのか、特にここ最近のアルバムに関しては試行錯誤しているような感じがします。

「禁じ手」と名付けられた今回のアルバムはまさにそんな試行錯誤の一環のように感じました。今回のアルバムの大きな特徴は作曲をすべて他のミュージシャンにゆだねたという点。ソングライターという立場を離れて、あくまでもシンガーとしてふるまい、作曲をあえて他のミュージシャンに任せることにより、新たな椎名林檎像を模索しようとした、そんなアルバムに感じました。

ただ、そんな中でもどうしても作曲家の側でも椎名林檎というイメージが強く、楽曲的には総じてよく出来ているのですが、新たな椎名林檎像という意味では微妙だった感は否めません。特にアルバム冒頭、三宅純が手掛けた「至宝」はムーディーな曲調が椎名林檎のイメージそのものでしたし、伊澤一葉が手掛けた「芒に月」も、やはり元東京事前のメンバーだから、という点はあるのでしょうが、基本的に椎名林檎らしい作品になっています。

「禁じ手」というタイトルに反して、基本的に椎名林檎らしい楽曲が多かった本作ですが、ただ、そんな中で椎名林檎のイメージから離れるような作品も見受けられました。まず1曲目が向井秀徳が手掛けた「SI・GE・KI」。これは椎名林檎らしい、というよりも、楽曲タイトルもそのままですが、まさに向井秀徳そのままな作品(笑)。椎名林檎と違う個性がそのまま持ち込まれ、それが椎名林檎という配慮が全くなく楽曲を提供してしまうあたり、向井秀徳らしさを感じますが、これはこれでいつもの椎名林檎のスタイルとは異なっていたため、非常に新鮮に感じました。

もう1曲がBIGYUKIの提供した「秘め初め」。トライバルな要素も加味された、ヘヴィーなエレクトロビートが印象的なナンバーで、非常に実験テイストの強い作風。あえていえば、初期の頃の椎名林檎を思い出させるようなナンバーですが、ここ最近の彼女からはあまり感じられなかった挑戦心も感じさせます。

また、新たな椎名林檎とはちょっと異なるかもしれませんが、ラストの、こちらも三宅純が手掛ける「憂世」は、ボーカリスト椎名林檎の魅力が発揮された楽曲。ムーディーな作風の曲に感情的に歌い上げる椎名林檎のボーカルが魅力的で、ソングライターではなく、ボーカリストとしての椎名林檎の実力を再認識させてくれる作品となっています。

全体的には結果として本作も椎名林檎のキャラクターが勝ってしまった感はありますが、そんな中で作曲家を他の人に任せたからこそ感じられるような、椎名林檎の「別の魅力」も感じることの出来るアルバムだったと思います。アルバム全体としては純粋によくできたアルバムだったと思いますが、「実験」としてみた場合には、「半分成功」といった感じだったかな・・・とも思ってしまいました。

ただ、もっとも椎名林檎ほど強いキャラクター像を持っているからこそ、逆に新たな挑戦をするのは簡単で、その一般的に椎名林檎にイメージされるキャラクター像の逆のことを行えばいいだけのこと。実際に、1枚目から3枚目のオリジナルアルバムに関しては、それに近いことを行っていました。現在の彼女が、そこまで大きな変化に踏み出せないというのは、残念ながら彼女がそれだけ保守的になってしまった、といった感は否めません。ここらへんでそろそろ、それこそ一部のファンが離れてしまうような変化も見たいような気がするのですが。

評価:★★★★★

椎名林檎 過去の作品
私と放電
三文ゴシップ
蜜月抄
浮き名

逆輸入~港湾局~
日出処
逆輸入~航空局~
三毒史
ニュートンの林檎~初めてのベスト盤~
百薬の長
放生会


ほかに聴いたアルバム

キラーパス/礼賛

ご存知川谷絵音が、お笑いコンビ、ラランドのサーヤや、ゲスの極み乙女の盟友、休日課長と組んだバンド礼賛のミニアルバム。基本的に前作「SOME BUDDY」の延長的なスタイルのミニアルバムで、シティーポップ風の楽曲に、HIP HOPの要素も入り、懐かしさと今風を交互に行きかうようなスタイル。サーヤことCLRの気だるさのありつつバタ臭いボーカルも、都会的な作風にピッタリとマッチしています。次のフルアルバムも楽しみです。

評価:★★★★

礼賛 過去の作品
SOME BUDDY

uku/藤原さくら

前作から約1年10ヶ月ぶりとなる藤原さくらの新作。前作作成以降、自身の耳や喉の不調により、好きだった音楽を怖いとすら感じ、距離を置いていた時期があったそうで、そんな時期を乗り越えてリリースされた本作は、「解放」がテーマとなっているそうです。前作に続き、石若駿がプロデュースを手掛けた音楽は、オーガニックな雰囲気でしんみり聴かせるジャズテイストの強いナンバー。全体的にはダウナーな雰囲気の曲が多く、「解放」がテーマのような軽やかやポップというイメージはありません。ただ、どこか肩の力の抜けた部分も感じ、彼女が一歩前に進んだということも感じさせる、そんなアルバムでした。

評価:★★★★★

藤原さくら 過去の作品
PLAY
green
red
SUPERMARKET
AIRPORT
wood mood

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