バンドの岐路に立つ新作
Title:I KNOW HOW NOW
Musician:GEZAN
前作「あのち」も高い評価を受け、徐々に注目度が高まっているロックバンドGEZAN。ただ、私が聴いた前作「あのち」も前々作「狂(KLUE)」も非常に実験的な作風であり、「マニアック」と表現されるようなタイプの音楽でした。それだけに、かなり意外だったのが3月に行われた日本武道館ワンマンライブ(!)。正直なところ、特に音楽ファンに高い支持を受けているバンドということはわかっていたのですが、武道館をワンマンで埋めれるバンドというのにはビックリ。彼らのようなタイプのバンドを支持する人たちは私が思っているよりもずっと多いのですね。個人的にはうれしくなってしまう事実でした。
そんな人気面でも上昇基調にあるGEZANが、ちょうど3年ぶりとなるニューアルバム。2025年に47都道府県ライブツアーと、さらには海外のライブの結果を受けた上でリリースされた新作。「予感にたどりつくまでのプレイリスト」というコンセプトを元に作成された作品だそうです。
そして、今回のアルバムで大きな特徴となった作品があります。それは非常にポップで聴きやすい歌モノのアルバムとなっていたという点。前述の通り、いままでのアルバムでは実験的な作風の曲が多く、良くも悪くも万人受けしない、マニアックな面が強かった点が否めません。それはそれで作品の魅力ではあったのですが、今回の作品については一気にポップな歌が流れる作風に大きく変化しています。
1曲目「beat」もアコギ1本で静かに聴かせる、フォーキーでノスタルジックがあふれる作品になっていますし、続く「Amrita」も力強いバンドサウンドで、郷愁感あふれるメロディアスな歌モノになっています。「TRANSIT」もバンドサウンドでグルーヴィーなサウンドを奏でつつ、ちょっとダウナー気味ながらもメロディアスな歌がしっかりと流れる作品に仕上がっています。
その方向性をポップにシフトさせた本作は、ある意味、GEZANにとってひとつの岐路と言えるかもしれません。ただ一方で、ポップな歌モノ路線にシフトしたからといって、GEZANの魅力が大きく減った、という感じではありません。むしろ、歌モノ路線になって、彼らのギアがさらに一段階上にシフトした、とも考えられる作品に仕上がっています。
それは、もともとGEZANの曲は、実験的である一方で、メロについては比較的ポップであった、という点も大きいでしょう。また、ポップな歌モノといっても、そこで奏でるサウンドは独特のグルーヴ感もあり、かつ独特なもの。「HAPPY HIPPIE」などは、タイトル通り、ヒッピー感あふれるハッピーでグルーヴィーな楽曲。「Memoria」も疾走感あるファンキーなリズムでグルーヴ感あふれる作品になっています。そして何よりユニークなのが「数字」で、いきなりiPhoneでよくありがちな呼び出し音からスタートしてビックリするのですが、様々な音が飛び出してくる、目くるめく展開から耳を離せなくなるようなユニークかつ独特なサウンド構成が実にユニークです。
最後の「予感」も「声」を上手く取り入れつつ、様々な音が重層的に重なる構成で、今回のアルバムの中では比較的前作「あのち」と地続きになるような作品になっており、ここでも彼らのユーモラスさが感じさせます。さらに何と言っても明日への希望を感じさせる歌詞も印象的。「予感にたどりつくまでのプレイリスト」というのが本作のテーマであるのですが、まさに明日への希望の予感が最後に待っていた、というあたり、実にGEZANらしい構成の作品だな、と感じさせます。
そんな訳で、全体的に歌モノメインでポップな内容になっただけに、バンドとしての岐路とも言える作品になっている本作。ただ、武道館ワンマンを成功させて、まさにバンドとして「売れている」タイミングでこういうアルバムをリリースしても、決して単純に「売れること」を志向しているアルバムと感じないのは、GEZANらしいサウンドやグルーヴをしっかりと作品に感じられるからでしょう。未来への希望も感じさせる歌詞も含めて、全体的に祝祭感や希望を感じさせる傑作アルバム。今年を代表する1枚となること間違いなしの作品です。
評価:★★★★★
GEZEN 過去の作品
狂(KLUE)
あのち(GEZAN with Million Wish Collective)
ほかに聴いたアルバム
SHADOW WORK/アンジェラ・アキ
2023年から活動を再開したアンジェラ・アキの実に約14年ぶりとなるニューアルバム。全体的に内省的な歌詞が多いものの、結婚、離婚、再婚、出産という人生経験を経た彼女だからこそ書けるような、ある意味、達観した視点を感じ、いい意味での「年齢なり」の歌詞を感じます。特に「Rental」など、「この世の全ては借り物」というある種の仏教的な概念が入っており、まさにこの年だからこそたどり着いた境地という感じもします。楽曲的にもピアノを主軸とした分厚いサウンドが特徴的ながらも、ヘヴィーなロックテイストの曲やゴスペルを入れた曲、打ち込みを入れてリズミカルにした曲などバラエティーも豊富。久しぶりの新作でしっかり「大人」な姿を見せてくれた作品でした。
評価:★★★★
アンジェラ・アキ 過去の作品
ANSWER
LIFE
WHITE
SONGBOOK
BLUE
TAPESTRY OF SONGS-THE BEST OF ANGELA AKI
アンジェラ・アキ sings「この世界の片隅に」
Bedford Hedgehog/Enfants
本作がデビューフルアルバムとなる4人組ロックバンド。全く知らないバンドだったのですが、ヒットチャートでいきなり上位に顔を出し、音的にも好みな感じのロックバンドだったので聴いてみました。聴いてみた後に知ったのですが、このバンド、2021年に活動を休止したロックバンドLAMP IN TERRENの松本大によるバンドということで、いきなり注目を集めるのも納得です。サウンド的には確かにLAMP IN TERRENと同じくオルタナ系のギターロックとなっているのですが、よりポップ色が強く、BUMP OF CHICKENのフォロワーっぽかったLAMP IN TERRENに比べると、音がグッとハードになり、グランジやガレージの色が濃くなったように感じ、微妙に印象も異なります。楽曲によっては、打ち込みを取り入れたり、シューゲイザーの色が強くなったり、バラエティーも。全体的には王道路線といった感じで、もう一歩、個性が欲しい気もしますが、これからの活躍に期待したいバンド。評価は期待値を含めて。
評価:★★★★★
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