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2026年3月 3日 (火)

現地の人々の感情がそのまま詰め込まれたパンキッシュなコンピレーション

Title:TSAPIKY! MODERN MUSIC FROM SOUTHWEST MADAGASCAR

今回紹介するアルバムも(既に年間ベストで簡単に紹介済ですが)各種メディアの年間ベストを後追いで聴いた1枚。「ミュージック・マガジン誌」のワールドミュージック部門で3位にランクインしたアルバム。アフリカ大陸の南東沖に浮かぶ島国、マダガスカル。そのマダガスカルの南西部で演奏される伝統音楽「ツァピキー(Tsapiky)」を収録したコンピレーションアルバム。現地のお祭りや葬式、結婚式、成人の儀式といった場所で演奏される音楽なのですが、その現場で流されている音楽をそのまま収録したのが本作となるそうです。

このツァピキーという音楽の特徴は、歪んだ音色を出すギターの大音量とそれに呼応してパワフルに歌い上げる女性ボーカルというのが特徴的で、現地ではタマリンドの木から吊り下げたスピーカーとホーンスピーカーから大音量で音楽を流し、何キロも離れた場所まで響かせるそうです。現地の儀式は通常、何日も行われ、その際にタバコやお酒を片手にこの音楽を楽しむのが特徴的だそうです。

そんなマダガスカルの現地の人々のパワーがそのまま注入されたこのツァピキーという音楽。その迫力にまずは驚かされます。アルバムの冒頭を飾るのがMAMEHYというミュージシャンの「Je mitsiko ro mokotse」という曲ですが、これでもかというほど歪みまくった大音量のギターに、ポリリズムで激しくなりまくるパーカッションのリズム、さらにそれに呼応して高らかに歌い上げる女性ボーカルと、これでもかというほど荒々しくパンキッシュな楽曲を聴かせてくれています。

続く「Sinjake Panambola」も疾走感あるギターサウンドにリズミカルなパーカッション、さらには男女のかけ合いというスタイルで軽快にダンサナブルな楽曲に。その後も基本的なスタイルである荒々しい歪んだギターと女性ボーカルというスタイルの曲が目立ち、その後も「Marolinta」「Eka ndao」「Fanoigna」など、このスタイルの楽曲が荒々しく響きまくります。特にラストの「Bleu bleu」はハイテンポなギターとパーカッションのビートをバックに歌う、ハイテンポでちょっとコミカルさもある女性ボーカルが耳を惹きます。流れるメロディーラインは意外とポップでもあり、ハイテンポなビートで押すだけではなくツァピキーという音楽の魅力も感じられます。

楽曲的にはもちろん、この歪んだギター+女性ボーカルというスタイルだけではありません。「Tany be maneky」は横笛の爽快感ある音色と、力強いパーカッションの組み合わせのインスト曲。「Arodarodao」はアコーディオンと女性ボーカルというスタイル。アコーディオンの軽快な音色が軸となっており、ちょっとヨーロッパトラッド的な雰囲気もあります。さらには「Ka tseriky iha」は女性ボーカルメインのアカペラという楽曲。ミディアムテンポで聴かせる楽曲となっており、こちらはチルアウトなナンバーといったところでしょうか。

とにかく全体的に荒々しくパンキッシュな楽曲が並んでいます。「パンキッシュ」という表現を使っていますが、それこそ一般的なパンクミュージックとは異なる、現地の庶民の精神がそのまま音楽に注入されているような、リアルで荒々しい音楽表現が印象的。ある意味「激しい」音楽を私たちはいろいろと聴くことが出来ますが、まだこんなに荒々しく激しい音楽が世界にはあったんだ、ということを実感した作品ともいえます。世界にはまだまだ魅力的な音楽があふれていることを、あらためて感じられたコンピレーションでした。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

EURO-COUNTRY/CMAT

こちらも2025年度のベストアルバムのうち、聴き逃していたアルバムを後追いでチェックした1枚。本作は、各種メディアの年間ランキングをまとめたサイトAOTY2025で4位にランクインしていた、アイルランドのシンガーソングライターによる3枚目のアルバム。全英チャートで2位にランクインしており、大きくブレイクした作品になっています。楽曲は全体的にシンプルなポップソング。バンドサウンドを取り入れたり、アコースティックなアレンジにしたり、バリエーションあるサウンドをバックに、基本的にはフォークやカントリーの影響を受けたポップスがメイン。爽やかで耳なじみのよいポップチューンを聴かせてくれています。ただ一方で、タイトルチューンの「EURO-COUNTRY」は2008年の金融危機後、母国アイルランドで起きた経済危機のことを歌っていますし、「The Jamie Oliver Petrol Station」では資本主義への皮肉を歌ったりと、パッと聴いた感じのポップなメロとは裏腹な、結構骨太で社会的な歌詞も特徴的。単なる耳障りのよいポップとは一線を画する魅力を感じる作品でした。

評価:★★★★★

 

Yanbett/Noura Mint Seymari

こちらも同じく、2025年度ベストアルバムを後追いで聴いた1枚。Music Magazine誌のベストアルバム2025の「ワールド・ミュージック部門」で、2位にランクインした作品。モーリタニア出身のグリオ(吟遊詩人)、ノウラ・ミント・セイマリの3枚目となるアルバム。いわゆる「砂漠のブルース」の要素を感じさせるギターサウンドと、こぶしの効いたボーカルでグルーヴィーに聴かせる楽曲が強いインパクト。インターリュード的なインストと歌モノが交互に配置されており、渋みのあるボーカルを力強く聴かせる楽曲や、比較的明るく、ダンサナブルな楽曲も配置されており、バリエーションも感じさせます。前述の通り「砂漠のブルース」近辺が好きならお勧めできるアルバムです。

評価:★★★★★

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