インドネシア音楽と現代の音楽を見事融合
Title:Nusantara Beat
Musician:Nusantara Beat
今回紹介するアルバムは、Music Magazine誌のベストアルバム2025の「ワールド・ミュージック部門」で5位にランクインしていたアルバム。2025年の各種メディアで紹介されたベストアルバムのうち、聴き逃したアルバムを後追いで聴いた1枚となります。Nusantara Beatはオランダ・アムステルダムを拠点とするバンドで、メンバー全員がインドネシアにルーツを持っているそうです。ちなみにNuantaraとはインドネシア語で、インドネシア全島を意味する言葉。タイトル通り、インドネシアの音楽を大胆に取り入れた作風が特徴となっています。
具体的に言えば、インドネシアの伝統音楽であるガムランの音階を基調としつつ、サイケデリック・フォークやロック、ファンクなどの要素を取り入れた独特の曲風が特徴的。冒頭を飾る「Ke Masa Lalu」は、まず清涼感のある女性コーラスからスタートするドリーミーな雰囲気を醸し出しつつ、ガムラン風の独特の曲調が特徴的。特に続く「Kalangkang」は力強いバンドサウンドを入れつつ、ガムランの独特な音階が、エキゾチックで不思議なビートを醸し出しています。
その後も楽曲タイトルを唱えるコーラスも呪術的で妖艶な「Ular Ular」や独特のこぶしを利かせつつ歌い上げる「Hilang Kendali」など、ガムランの要素を取り入れた、エキゾチックで独自の音階が特徴的。「今風」のバンドサウンドにのせて、インドネシア音楽の要素をたっぷりと加えた、独特の音楽を聴かせてくれています。
ただ、私たち日本人にとってユニークなのは、同じアジア系ということがあるのでしょうか、どこかこの節回しに懐かしさを感じる部分があります。特にラストを飾る「Cinta Itu Menyakitkan」は典型的なアジア歌謡といった感じで、歌謡曲や、ともすれば演歌にもつながるような哀愁ただようメロディーラインが特徴的。楽曲全体的に感じるメランコリックな節回しは、郷愁感を覚えるリスナーも多いのではないでしょうか。
そして一方で、彼らの大きな魅力は単純に伝統的なインドネシア音楽を演奏しているだけではなく、インドネシア音楽と現代的な音楽を融合させている点が大きな魅力。例えば「Di Pantai」は伸びやかでメロウなボーカルやギターの音色で、シティポップとカテゴライズされそうな楽曲を聴かせてくれていますし、「Tamat」も力強いギターにバンドサウンドで、ガレージ風の楽曲となっています。さらに「Baker」ではサイケの要素を加えたようなバンドサウンドがグルーヴィーで魅力的。彼らにしかなしえないような、独自のサウンドを聴かせてくれています。
ボーカルは爽やかな女性ボーカルで、どこかレトロな雰囲気も。この点も楽曲に独自の雰囲気を与えていますし、また同時にポップスさを与える要素にもなっています。インドネシアの伝統音楽と現代の音楽を見事に融合させて、ポップスさを加え、独自のグルーヴ感を加味した傑作アルバム。年間ベストの上位にランクインされるのも納得の作品でした。
評価:★★★★★
ほかに聴いたアルバム
Tranquilizer/Oneohtrix Point Never
アメリカのエレクトロミュージシャンによる11枚目のアルバム。本作は、インターネット上のアーカイブで、一度は削除されながら、その後復活したサンプル音源を元にして制作されたそうで、本人は「あらゆるものがアーカイブされながらも、絶えず失われていく時代の感情の響きを捉えたかった」そうです。非常に現代らしいコンセプトによるアルバムですが、全編メランコリックでドリーミーなエレクトロサウンドで構築されており、美しくもどこか儚げな雰囲気を醸し出している点は、まさにアルバムのコンセプトをあらわしているのでしょうか?比較的、実験性が強い作風なので万人受けといった感じではありませんが、儚く消えゆく現実に思いをはせつつ聴きたいアルバムです。
評価:★★★★
Oneohtrix Point Never 過去の作品
Age of
Magic Oneohtrix Point Never
Again
Beloved/Givéon
こちらも2025年ベストアルバムを後追いで聴いた1枚。Music Magazine誌「R&B/ソウル/ブルース」部門で1位を獲得した、アメリカのR&BシンガーGivéonの2枚目となるアルバムです。ジャケット写真も、いかにもオールドスタイルな雰囲気が漂う作品ですが、内容的にも70年代のクラシックなソウル/R&Bの影響を強く受けた、ある意味「王道」なソウル路線の1枚。ちなみに全米ビルボードチャートでも8位にランクインし、名実共に人気を確保しているようです。正直、目新しさは少ないものの、ゆっくりとメロウなボーカルをしっかりと聴かせるソウルチューンに心惹かれる1枚。ある意味、この手のアルバムがミューマガで1位ってちょっとわかりやすすぎる感はあるのですが、いいアルバムなのは間違いありません。
評価:★★★★★
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