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2026年3月24日 (火)

2025年のHIP HOPシーンは?

今回は最近読んだ音楽関連の書籍の紹介です。

「ele-king presents HIP HOP 2025-26」。昨年から発刊がスタートした、ele-kingが発刊するHIP HOPの年刊誌。通常、雑誌は本コーナーの対象外なのですが、いままでも厳密に、書籍の流通形態が雑誌扱いなのか一般書籍扱いなのかでわけていた訳でもなく、また1年に1度のみ発刊という扱いであるため、通常の音楽関連書籍と同じように、当サイトでも取り上げたいと思います。

昨年発刊された段階で「1年に1度のみ発行の年刊誌」というイレギュラーな形態なのはわかっていましたが、得てして1年に1度しか発刊されないようなスタイルは企画倒れに終わるケースも多く、1年で終わりだろうなぁ、と思っていました。実際、昨年は1月24日に発刊されたのですが、今年は1月下旬になっても、ele-kingのサイトで発刊のお知らせがされていなかったことから、「やはり1年限りだったか」と思っていたのですが、3月に入って偶然書店で、この本が並んでいるのを見かけました。今年の発刊日は2月12日。昨年から半月ほど遅れての発刊だったようですが、無事、発刊され、「年刊誌」の体を保ったようです。

さて、このHIP HOPの年刊誌について、昨年も読み、そして今年も読んでみた大きな理由としては、HIP HOPというシーンが非常に活発であり、なおかつ、HIP HOPというシーンの盛り上がり方が、内輪的なゴシップの要素も強く、熱心なファンではないとなかなかシーンに追いつけず、どんなミュージシャンが話題になっているのかがわかりにくいから、という点があげられます。ただ、正直言って、2025年に関しては、あまりHIP HOPで大きな話題がないなぁ・・・というような感覚を漠然と抱いていました。

実際、本書を読むと、HIP HOPシーンが現在、停滞気味であることを強く感じさせます。実際、昨年の「HIP HOP 2024-25」では、2024年のHIP HOPシーンが対談やコラムなどによって、全編にわたって紹介されていたのに対して、本書では、ほぼ前半を使って、アンダーグラウンドHIP HOPの紹介という、2025年のHIP HOPシーンに直接的には関係ない記事で埋められています。

後半は、昨年と同様、2025年のHIP HOPベストアルバムの紹介や、2025年のシーンを概観した対談記事、コラムなどが紹介されていますが、2024年に比べると、やはり取り上げる話題に乏しく、停滞感は否めません。実際、2025年の後半には、ビルボード100の上位40位までにHIP HOPの楽曲が1曲もランクインしなかったということが、実に35年ぶりに行ったそうで、そのことがニュースにもなったそうです。

対談やコラムでは、そんなHIP HOPの停滞を必死で否定するような記事が目立っていましたが、ただ、やはり私のようにHIP HOPにさほど詳しくない人間にとっては、以前に比べて活気がないようには感じてしまいます。実際、外部からもわかりやすい形でのHIP HOPの新しい動きとしては、トラップ以降、大きな変動が起きていないように感じますし、そのトラップにしてもシーンの中心にあらわれてからかなり月日が経ってしまいました。次から次へと新しいシーンを作り出してきた、ここ数年来のHIP HOPシーンが、ここに来てちょっと停滞している、というのは否めないように感じます。

だからこそ、次のシーンを生み出すためにも、アンダーグラウンドHIP HOPに注目があつまり、本誌でも特集記事として紹介しているのではないでしょうか。もちろん、停滞気味とはいえども、私も年間ベストクラスの傑作だと思ったLittle Simzの「Lotus」(本書の年間ベストで3位)や、各種メディアなどでも年間ベストの上位に取り上げられているClipseの「Let God Sort Em Out」(本書年間ベストで4位)など、2025年も少なくないHIP HOPの名盤がリリースされています。そういう意味では、まだまだ2026年以降、新たなシーンが生み出され、HIP HOPの勢いが増すという流れは十分すぎるほど考えられるのではないでしょうか。特にアンダーグラウンドHIP HOPの特集を読む限り、次のシーンを生み出すために手ぐすねをひいているミュージシャンが数多く存在していることは強く感じることが出来ました。

個人的には、特に現在、トランプが大暴走を起こしているアメリカの社会情勢の中におけるHIP HOPとのかかわりについて、もうちょっと深く細かく紹介してほしかったようにも思うのですが、昨年9月に刊行済のコラム記事の転載だけだったのは非常に残念。「年刊誌」とはいえ、適時性が問われる雑誌だからこそ、今の社会情勢とHIP HOPの関わりについて、リアルタイムな紹介記事を期待したかったところです。この点は残念に感じました。

そんな訳でHIP HOPの現状について今回もいろいろと勉強になった1冊。ちなみに本書に紹介された年間ベストですが、上位でまだ聴いていないアルバムもあったので、昨年同様、こちらも後追いで聴いてみたいと思います。その感想はまた後日に。来年も発刊を期待したいのですが、どうなるかなぁ・・・。楽しみに待っていたいところですが。

ele-king presents HIP HOP 2025-26

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