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2026年3月 2日 (月)

アンソロジーシリーズまさかの第4弾!

Title:Anthology 4
Musician:The Beatles

ポピュラーミュージックシーンを代表する偉大なるロックバンド、The Beatles。いまなお高い人気を誇るバンドであることは間違いありませんが、一時期は毎年のようにビートルズ関連アイテムがリリースされ、市場を賑わせてきました。若干、露骨とも言える版権ビジネスに眉をしかめる向きもあることはあったのですが、概ね、次々と出てくるまだ見ぬビートルズ関連の音源に、多くのファンが夢中になりました。

そんな「ビートルズ商法」の嚆矢となったのは、アンソロジーシリーズだったのではないでしょうか。1995年から1996年にかけて「Anthology」と名付けられた、未発表音源を多く含む3組のアルバムがリリースされたほか、公式の自伝に、さらにはドキュメンタリー番組も制作。このドキュメンタリー番組は、当時日本でも放送され、なんと紅白の裏番組としてぶつけてきたあたり、ビートルズ人気のほどをうかがわせます。このアンソロジーシリーズに合わせて、未完成音源を残ったメンバーで完成させた新曲「Free as a Bird」もリリースされ大ヒットを記録。大きな話題にもなりました。

その当時、私は高校生。「ビートルズ」という名前に惹かれて、このアンソロジーシリーズのアルバムはリアルタイムで聴いてみました。ただ、正直、その当時はこのアンソロジーシリーズの意味がよくわかっておらず、有名な曲のアウトテイク集もいまひとつ何のための音源なのかピンと来ておらず、ただただ、なんとなくビートルズの有名な曲が聴けた・・・という程度の感触だったように記憶しています。

さて、そんなアンソロジーシリーズのリリースから20年の月日を経てリリースされたのは、このアンソロジーシリーズの第4弾。もともとは旧来のアンソロジーシリーズ3組に本作を加えたボックスセットのみのリリースが予定されていたそうですが、第4弾部分のみで別途リリースされることになったそうです。全36曲2枚組からなるアルバム。ラストには2023年にリリースされ、AI技術を使用しての27年ぶりの新曲として話題となった「Now and Then」も収録されています。

その新曲を除くと楽曲は、基本的に彼らの既発表曲のアウトテイク集。オリジナルとの聴き比べも楽しく、楽曲によってはまだインスト段階のテイクも収録されているため、まさに曲が最初に生み出された瞬間を聴いているような、そんな楽しさもあります。ただ、それ以上にこのアルバムを聴いて魅力的だったのは、リハーサル風景をそのまま収録したようなトラック。例えば冒頭を飾る「I Saw Her Standing There(Take2)」ではメンバーの簡単な会話が収録されていますし、Disc1の「This Boy(Takes 12&13)」では、曲の途中でメンバーが笑い出して演奏がストップする風景が収録されており、おだやかなレコーディングの情景が浮かんできます。既にメンバーのうち2人はこの世にいないバンドなだけに、現役時代のこのメンバー同士の会話を聴くだけで、ファンとしてはうれしくなってきてしまうのではないでしょうか。

その他にもプレスリーのカバー「(You're So Square)Baby I Don't Care」から一気に「Helter Skelter(Take 17)」に流れ込む構成もユニーク。景気づけのカバーのせいか、オリジナル以上に荒々しい演奏になっています。「Octopus's Garden(Rehearsal)」もリハーサル風景ならではのおだやかな雰囲気が流れていますし、オーケストラのみのインスト「Something(Take 39)」もオーケストラ部分のみの収録だからゆえに、スコアのより精密さが際立って聴こえます。

ただ今回のアルバム、全36曲中、未発表音源は13曲のみ。それ以外は主に、2017年以降リリースされてきたオリジナルアルバムの「Super Deluxe」シリーズの中で収録したものを選曲したものとなっており、熱心なファンにとっては若干物足りなさを感じてしまう構成になっていたようで、全体的には賛否のわかれる構成になっていたようです。とはいえ、少ないとはいえ未発表曲はファンにとっては素直にうれしい内容になっているのではないでしょうか。そこまで熱心なファンでない私にとっても聴きどころも多いアルバム。当時の雰囲気がそのまま伝わってくる音源ともども、とても楽しめたアルバムでした。

評価:★★★★★

The Beatles 過去の作品
LOVE
On Air~Live At The BBC Volume2
1+ (邦題 ザ・ビートルズ 1+)
LIVE AT THE HOLLYWOOD BOWL
Get Back (Rooftop Performance)
The Beatles 1962-1966(2023 Edition)
The Beatles 1967-1970(2023 Edition)


ほかに聴いたアルバム

One More Time/Aerosmith&Yungblud

実に約13年ぶりとなるエアロスミスの新作を収録した作品は、5曲入りのEP盤。さらにイギリスのシンガー、Yungbludとのコラボ作。エアロスミスはスティーヴン・タイラーの体調不良により、活動停止状態でしたが、「One More Time」というタイトルに象徴されるように、今一度、活動を再開するという意気込みでしょうか。実際、体調不良だったことを感じさせないスティーヴン・タイラーの力強いボーカルを聴かせてくれています。また、エアロスミスといえば80年代に一時期低迷したいたものの、「Walk This Way」でRun-D.M.C.とコラボしたことにより見事復活を果たしましたが、今回、あえて若手ミュージシャンとのコラボで活動再開したのも、ひょっとしたらこの事実を意識したのかもしれません。楽曲的にはエアロスミス的なハードロックを維持しつつも、Yungbludが加わることにより、現代的なロックの要素を取り込んだ作品に。間違いなく「One More Time」というタイトル通り、再び動き出そうとする強い意志を感じさせる作品でした。

評価:★★★★

AEROSMITH 過去の作品
Devil's Got A New Disguise(エアロスミス濃縮極極ベスト)
Music From Another Dimension!
Greatest Hits

TOUMARO/Hawa & Kassé Mady Diabaté

本作はマリの伝統音楽を代表するミュージシャンHawa Kassé Mady Diabatéと、その父、Kassé Mady Diabatéによるアルバム。Kassé Mady Diabatéは、「マリの黄金の声」とも称される伝統的なグリオ(西アフリカの伝統的な吟遊詩人)の巨匠なのですが、2018年に急逝したそうです。その残された音源を元に、娘のHawaが遺志を引き継ぎ完成させたのが本作。ミュージック・マガジン誌の2025年年間ベスト「ワールドミュージック」部門1位だったので、今回、後追いで聴いてみた作品となります。

パーカッションをベースとしたシンプルな演奏をバックに、渋みがありつつ、同時に清涼感も持ち合わせたような父、Kasséの伸びやかな歌声が耳に残ります。娘Hawaも非常に力強く伸びやかな歌声を聴かせてくれており、「黄金の声」に引けを取らない歌声を聴かせてくれます。シンプルながらも哀愁感たっぷりの力強い楽曲が並びます。特に最後のタイトルチューン「TOUMARO」は、力強く感情たっぷりに歌いあげるHawaのボーカルが印象的。まさに天国にいる父親に届けるように・・・といったら感傷的すぎるのでしょうか。年間1位も納得の傑作でした。

評価:★★★★★

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