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2026年3月

2026年3月31日 (火)

手を変え品を変えのベスト盤

Title:ULTRA POP
Musician:渡辺美里

渡辺美里のデビュー40周年を記念してリリースされたベストアルバム。といっても、たった5年前にベストアルバム「harvest」をリリースしたばかりで、わずか5年のスパンでのベストアルバムのリリースとなります。特に最近、この手のベテランミュージシャンたちのベスト盤乱発は珍しくはないのですが・・・ただ、そろそろ久しぶりにオリジナルアルバムをリリースしてほしいところなのですが・・・。

そのベスト盤としての前作「harvest」はファンのセレクトによるベスト盤、というスタイルとなっていました。一方、今回は彼女にゆかりのあるミュージシャンたちや、芸能界で「ファン」を公言している人たちによって選ばれたベストアルバム。総勢59名によって選ばれた全40曲が収録されています。ちなみに前回の「harvest」は肝心なファン投票の順位は非公開だったのですが、今回はちゃんとどの曲が誰によるセレクトか、公表されています。

ちなみに、個人的にうれしかったのは大ファンのレキシが選者にいること(笑)。レキシと渡辺美里って、あまりつながりがあるように思わなかったのでかなり意外なイメージ。彼が選曲したのは「Teenage Walk」で、これはなかなかツウなセレクト・・・。選者の中には「芸能界の中でのつきあい」的に感じるような人もいらっしゃるのですが、彼はマジもんのファンなんですね・・・。

そんな収録曲ですが、「My Revolution」「10years」「夏が来た!」「サマータイムブルース」など代表曲は概ね収録。「harvest」で未収録だった「さくらの花の咲くころに」も本作では無事収録されています(ちなみに選者の一人に槇原敬之がいるっても、なんとなく納得感が)。一方、「My Love Your Love~たったひとりしかいないあなたへ~」や「いつかきっと」は未収録。まだ、「harvest」でも未収録だった「GROWIN'UP」や「JUMP」は今回も未収録。ここらへん、ライブの定番曲なのに・・・。特に、「BIG WAVE」以降の楽曲については(あまり目立ったヒット曲がなくなった時期ということもあるのですが)、結構選者の意向を反映されたような、知る人ぞ知る的な曲も多かったように思います。

また、知る人ぞ知る的なセレクトとしては「Tokyo」が選ばれていたのがちょっと意外な感も。小室哲哉作曲の楽曲で、アルバムのタイトルチューンながらも、あまりこの手のベスト盤では取り上げられませんでした。小室哲哉らしいメランコリックで叙情感あふれるメロに、渡辺美里のボーカルをしっかりと生かしたダイナミックな楽曲となっており、まさに知る人ぞ知る名曲です。

一方、ちょっと気になったのは今回の選者に、なぜか大江千里の名前が見えないこと・・・。選者には小室哲哉や木根尚登、岡村靖幸や伊秩弘将など、昔なじみのメンバーもズラリと名前を並べているのに、最近まで比較的交流が密だったはずの大江千里の名前がありません・・・。なにも情報はないのですが、何かあったのでしょうか、ちょっと気になります。

ちなみに初回盤ではBlu-rayで、昨年7月に行われたNHKホールでのライブの模様を完全収録しているほか、ベストライブ10選の模様を収録。3時間以上にも及ぶ、かなりボリューミーな内容になっています。ここらへん、さすがベスト盤を出しすぎとあってのファンへのプレゼントといった感じなのでしょうか。ただ、かなり見ごたえのある内容になっています。

初心者向けのベストとしては、やはり過去の「She loves you」か「Sweet 15th Diamond」がお勧め(というか、これ以降、「これ」といった大ヒット曲がほとんど出ていないのがつらいところなのですが・・・)なのですが、これはこれで、なんだかんだいっても聴きごたえのある名曲揃いのベスト盤になっています。ただ、前にも書いた通り、ベスト盤の乱発よりも、そろそろオリジナルアルバムをリリースしてほしいところなのですが・・・。

評価:★★★★★

渡辺美里 過去の作品
Dear My Songs
Song is Beautiful
Serendipity
My Favorite Songs~うたの木シネマ~
美里うたGolden BEST
Live Love Life 2013 at 日比谷野音~美里祭り 春のハッピーアワー~

オーディナリー・ライフ
eyes-30th Anniversary Edition-
Lovin'you -30th Anniversary Edition-
ribbon-30th Anniversary Edition-
ID
harvest
tokyo-30th Anniversary Edition-
うたの木 彼が好きな歌
Face to Face~うたの木~


ほかに聴いたアルバム

Official髭男dism Arena Tour 2024 -Rejoice-/Official髭男dism

2024年にヒゲダンことOfficial髭男dismが実施した全国アリーナツアーの模様を収録したライブCD。タイトル通り、アルバム「Rejoice」リリースに伴うツアーで、同作からの曲を中心としたセットリストになっているのですが、楽曲に「Pretender」が入っていないというのが驚き。ライブ盤で省略されているだけかと思いきや、本番でも演奏されていないみたいで、他にもヒット曲が多いものの、強きだなぁ、とも感じてしまいます。楽曲の方は思った以上にスケール感を覚える演奏となっており、アリーナという大箱でもピッタリとマッチ。バンドとしての実力を感じさせる内容に。最近、一時期に比べてヒット曲が出ていない状況ですが、これだけのライブを出来るのならば、そろそろまた大きなヒット曲がリリースされる、はず。

評価:★★★★

Official髭男dism 過去の作品
エスカパレード
Traveler
TSUTAYA RENTAL SELECTION 2015-2018
Official髭男dism one-man tour 2019@日本武道館
Traveler-Instrumentals-
HELLO EP
Editorial
ミックスナッツEP
one-man tour 2021-2022-Editorial-@さいたまスーパーアリーナ
Rejoice

Buddy~20th Anniversary Best Album "Originals&Collaborations"~/DEPAPEPE

メジャーデビュー20周年を記念してリリースされた2枚組のベストアルバム。Disc1はDEPAPEPEのオリジナル曲18曲が、Disc2では、タイトル通り、他のミュージシャンとのコラボ曲11曲が並びます。DEPAPEPEらしいアコギをベースとした爽やかなポップチューンが並んでいます。コラボ曲でも、基本的に同じ方向性のDEPAPEPEらしい爽やかなアコギが前に出た楽曲が多く、どのような立ち位置でも彼ららしさを維持している、しっかりとした個性を保持している点、20年という長く活動が続けられた大きな要因なのかな、ということを感じさせます。あらためてDEPAPEPの魅力を感じさせてくれるベスト盤でした。

評価:★★★★★

DEPAPEPE 過去の作品
デパクラ~DEPAPEPE PLAYS THE CLASSIC
HOP!SKIP!JUMP!
デパナツ~drive!drive!!drive!!!~
デパフユ~晴れ時どき雪~
Do!
デパクラII~DEPAPEPE PLAYS THE CLASSICS
ONE
Acoustic&Dining
Kiss
DEPAPEPE ALL TIME BEST~COBALT GREEN~
DEPAPEPE ALL TIME BEST~INDIGO BLUE~

COLORS
Seek
Purple on Palette

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2026年3月30日 (月)

SAULTらしい作品

Title:Chapter 1
Musician:SAULT

ほぼ毎回、突如アルバムをリリースし、さらにそのジャケットはほぼ無地というスタイル。「謎のグループ」というスタンスを貫くファンクグループ、SAULT。メンバーはInfloとCleo Solということで徐々にその実態は明らかになってきているのですが、毎作、ジャケットにしろ内容にしろ、最低限の情報しかリリースされず、「謎」という形態は保ちつつ、突如、ニューアルバムをリリースするというスタイルに大きな変化はありません。

そんな中、リリースされた約1年ぶりとなるニューアルバム。アルバムによってそのスタイルも様々に変化させている彼らですが、今回のアルバムは特にCleo Solのボーカルを前に押し出しつつ、ファンキーでメロウなグルーヴを聴かせる、というある意味、シンプルにSAULTらしい、ソウルでファンキーな作品に仕上がっています。

重心の低いベースラインとミニマルなドラムでファンキーなグルーヴを作りあげている「God,Protect Me from Enemies」からスタートし、Cleo Solの清涼感あるボーカルとストリングスに、ファンキーなグルーヴで美しく聴かせるメロディアスな「Fulfil Your Spirit」、メロウな女性ボーカルをメランコリックに聴かせるソウルナンバー「Good Things Will Come After the Pressure」など、Cleo Solのボーカルを聴かせつつ、SAULTらしいグルーヴ感あるナンバーが続きます。

その後もちょっと70年代あたりを彷彿とさせるレトロなソウルチューン「Love Does Not Equal Pain」やストリングスが入り、こちらも懐かしいシネマチックな雰囲気が漂う「Lord Have Mercy」、さらにはちょっと怪しげなストリングスがレトロでメランコリックな雰囲気を醸し出す、こちらもレトロソウル風な「Don't Worry About What You Can't Control」でもキュートなCleo Solのボーカルが効果的に用いられています。

全体的には、懐かしさを感じるレトロなソウル基調に、Cleo Solの清涼感ありキュートさも感じるボーカルを上手く使いつつ、終始鳴っている重低音のベースラインがグルーヴ感を醸し出している作品。かつてのSAULTのアルバムのように「圧巻なグルーヴ感」といった感じではありませんし、ある意味、目新しくもないのですが、SAULTらしい魅力をしっかりと感じられるアルバムに仕上がっていたと思います。今回も文句なしの傑作アルバムでした。

評価:★★★★★

SAULT 過去の作品
Untilted(Black is)
Untitled(Rise)
NINE
AIR
11
AⅡR
Earth
Today&Tomorrow
UNTITLED(God)
10
Acts of Faith


ほかに聴いたアルバム

Abundância/Maria João

2025年のベストアルバムを後追いで聴いた1枚。こちらは「Music Magazine誌」の「ロック(ヨーロッパほか)」部門で1位を獲得したアルバム。ポルトガルのリスボンと、モザンビークのマプトを行き来してつくられた作品だそうで、西洋のジャズと、モザンビークの音楽、さらにはエレクトロを融合させたという、独自の音楽性を追求した作品。ポルトガルとアフリカの文化的架け橋をテーマとしたそうで、ジャジーにしんみり歌い上げる曲があったかと思えば、トライバルなビートを前面に押し出した曲があったりとかなりユニーク。また、さらにユニークなのは彼女のボーカルで、ハイトーンでチャイルディッシュなボーカルが強いインパクトに。ある意味、ジャズ、アフリカ音楽、エレクトロ、さらにはチャイルディッシュなボーカルと、ベクトルがバラバラな要素をごった煮してしまっているような感じなのですが、これがユニークなことにしっかりと融合しているのが見事な感じ。独特なサウンドを楽しめる傑作でした。

評価:★★★★★

云与万花筒/周士爵&Fishdoll

Fishdoll_

こちらも2025年ベストアルバムを後追いで聴いた1枚。同じく「Music Magazine誌」の「ロック(アジア)」部門で1位を獲得したアルバム。中国出身のラッパーとトラックメイカーによるコンビによる作品。テンポよい男性のラップに、メロウなソウルやエレクトロなトラックが加わり、また、所々に女性ボーカルによるメロウな歌が加わるスタイル。ラップは比較的ポエトリーリーディングのスタイルに近く、全体的にメロウな作風が楽しめる曲調に。確かに1位という結果も納得の、しっかりと聴かせる傑作でした。

評価:★★★★★

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2026年3月29日 (日)

シュールでシニカルな歌詞が炸裂

Title:TOWN BEAT
Musician:KIRINJI

前作「Steppin' Out」から約2年4か月ぶり。新作としてはちょっと久々となってしまったKIRINJIの新作ですが、久々のアルバムとしては全9曲34分程度の長さと短め。さらに純粋な新曲は6曲のみで、2曲は他シンガーへの提供曲のセルフカバーで、残り1曲は既発表曲のリミックスという構成となっています。久々の新譜なのに新曲少な目というケースはミュージシャンがスランプ中のところ、なんとか作り出した1作・・・という場合が多く、出来としては微妙な内容のケースが往々にしてあります。それだけにちょっと身構えて聴いてみたのですが、しかし、そんな予想をいい意味で裏切る、KIRINJIの魅力がしっかりと発揮された作品になっていました。

今回のアルバムでまずは耳を惹いたのはその歌詞でした。特に秀逸だったのが「flush! flush! flush!」で、最近時々言われる、「日本のトイレはすごい」という言説と、埼玉で行った陥没事故をからめて、今の日本で蔓延する「日本、すごい!」という風潮を、ユニークかつ痛烈に皮肉った1曲。かなりシュールな歌詞の内容に思わず笑ってしまうような内容になっています。

「デートの練習」もなかなかユニークでコミカルな作品。タイトルのように、男友達相手にデートの練習をしてしまうような、もてない男の悲哀を綴ったような歌詞がシニカルでコミカルなのですが、ただこれ、歌詞を深読みすると、実はLGBTの話なんじゃないか?とも読めるような内容になっています。V6への提供曲のセルフカバー「素敵な夜」もユニークで、誰か知らない人に声をかけられたケースや、他人の空似で間違えた人に声をかけてしまったというような「あるある」なケースをユニークに切り取って、歌詞ともども、パッと聴いた感じでは「あか抜けたシティポップ風」に仕上がているのが、KIRINJI堀込高樹の力量を感じさせます。

アルバムの冒頭を飾る「ルームダンサー」も歌詞、メロともに耳を惹くポップス。シンガーソングライターの小田朋美がゲストボーカルとして参加しているこの曲は、タイトル通り、部屋の中でひとりで(こっそりと)踊る主人公をテーマとしたダンスチューン。しゃれたエレクトロダンスチューンが耳を惹くナンバーとなっています。

そんな歌詞の側面では特筆すべき今回のアルバム。一方、メロディーラインやサウンドはいつものKIRINJIらしい、ソウルやファンクを基調としたシティポップの作品にまとまっています。切ない片思いを歌った「気になる週末」は、ストリングスも入ってメロウなソウル風のシティポップチューン。アイドルマスターへ提供した「LEMONADE」は、こちらも小田朋美がゲストボーカルで参加。メロウでメランコリックなR&Bのポップスに。「ベランダから」も、エレピやストリングスでメロウに聴かせるソウル風のナンバーに仕上がっています。

正直なところ、ここらへんの楽曲の方向性にはKIRINJIとしての目新しさは感じません。ただ、KIRINJIらしい、彼の王道を行くような路線の曲だからこそ、いずれの曲も非常に濃度の濃い、クオリティーの高い良質なシティポップのナンバーに仕上がっています。こちらもKIRINJIらしい、というよりも、これまでの堀込高樹以上に、シュールでシニカル、かつユーモラスな歌詞の世界が、王道のシティポップ路線とガッチリとマッチし、インパクトある良質な作品に仕上がっていました。

前述の通り、アルバムのリリースとしては比較的スパンが空き、かつ、新曲は少な目。堀込高樹の状況は、決して脂ののったような状況ではなく、若干のスランプ気味なのかもしれません。だからこそ、音楽的に変な冒険をせず、ガッチリと彼の王道を行くような作品にまとめてきたのかもしれません。それが結果としてこれだけクオリティーの高い作品に仕上げてきたのだからさすがです。ボリューム的にはちょっと少な目ですが、KIRINJIらしさがみっちりとつまった傑作アルバム。本年度のベスト盤候補の1枚があらわれた、といって間違いない作品だと思います。さすがです。

評価:★★★★★

キリンジ(KIRINJI) 過去の作品
KIRINJI 19982008 10th Anniversary Celebration
7-seven-
BUOYANCY
SONGBOOK
SUPERVIEW
Ten
フリーソウル・キリンジ
11
EXTRA11
ネオ
愛をあるだけ、すべて
Melancholy Mellow-甘い憂鬱-19982002
Melancholy Mellow II -甘い憂鬱- 20032013
cherish
KIRINJI 20132020
crepuscular
Steppin'Out


ほかに聴いたアルバム

15th ANNIVERSARY BEST「自由悟然」/高橋優

タイトル通り、デビュー15周年を記念したベストアルバム。3枚組全45曲というボリューミーな内容で、インディーズ時代の曲から最近の曲まで網羅しています。楽曲は3枚のCDにテーマ毎に収録されており、Disc1は「優勝盤」と名付けられた、ライブの定番曲やアップテンポな曲がメイン。Disc2は「優遇盤」として代表曲や人気曲がメイン、Disc3は「優男(やさおとこ)盤」としてバラード計がメインとなっているそうです。どれも基本的に主張の強いインパクト大の、良くも悪くも暑苦しいナンバーが並ぶのですが、なんだかんだいってもCD3枚分、それなりに飽きずに聴けてしまうあたり、やはりこのインパクトやフックの強さと、いい曲を書いているってことなんでしょうね。あらためて高橋優の魅力も感じられたボリューム満点のベスト盤でした。

評価:★★★★★

高橋優 過去の作品
リアルタイム・シンガーソングライター
この声
僕らの平成ロックンロール(2)
BREAK MY SILENCE
今、そこにある明滅と群生
高橋優 BEST 2009-2015 『笑う約束』
来し方行く末
STARTING OVER
PERSONALITY
ReLOVE&RePEACE
HAPPY
基礎からの高橋優【バンド式】 (Live)
基礎からの高橋優【弾き語り式】 (Live)

坂本九/坂本九

60年代から80年代にかけて一世を風靡し、特に1961年にリリースした「上を向いて歩こう」はアメリカビルボードチャートで1位を獲得する快挙を記録。ただ、1985年の日航機墜落事故の犠牲となり43歳という若さでこの世を去った坂本九。そんな昭和を代表するエンターテイナーが、昭和100年にあたる昨年にリリースした3枚組のベストアルバムとなります。3枚にもわたる彼のアルバムは、洋楽テイストの強いポップナンバーから、歌謡曲、演歌に近いナンバーや、逆にロック調の曲までバラエティー豊富。なんでも起用に歌いこなす、あるいは、なんでも歌いこなすことを要求されるような、昭和のエンターテイナーらしい幅広い楽曲が並びます。そういう曲をどれもしっかり坂本九らしい、明るく楽しく仕上げるのが彼の大きな魅力なのでしょう。ちなみにDisc3ではソノシートに収録された彼の軽快なトークも収録。ただ、このトークはノリが完全に「昭和」で、良くも悪くも時代を感じさせます・・・。昭和のエンタテイナーを知るには最適なベストアルバム。また、昭和芸能史を知るためにも貴重なベストアルバムかと。

評価:★★★★

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2026年3月28日 (土)

3作目にして新たな方向性も

Title:Secret Love
Musician:Dry Cleaning

デビュー作「New Long Leg」がいきなり高い評価を受け、チャート的にも全英チャート4位と大ヒットを記録。一躍注目を集めたイギリスのポストロックバンドDry Cleaning。前作「Stumpwork」は売上的には全英チャート最高位11位と、惜しくもベスト10入りを逃したものの、グラミー賞の最優秀レコーディングパッケージ賞を受賞。グラミー賞自体は音楽的な評価・・・という観点からすると、若干微妙な感も否めないのですが、ただ、前作も高い評価を獲得しており、今、もっとも注目を集めるロックバンドの一組となっています。

そんな中リリースされた、約4年ぶり、1作目と2作目のスパンと比べると、ちょっと久々となった3枚目となるアルバム。当然注目されるアルバムとなるのですが、今回のアルバムも全2作と比べても勝るとも劣らぬ傑作に仕上がっていました。

基本的な楽曲の路線は前作までと同様。オルタナ系の影響を受けたギターロックが流れる中、ボーカルは歌ではなく、ポエトリーリーディングを綴るというスタイル。そういう基本的なスタイルは以前と変わらないものの、一方でさすがに3枚目となり、いままでと全く同じでは「大いなるマンネリ」になりかねないと感じたのか、ちょっとベクトルを違う方向に向けたような作風に仕上げています。

まず具体的には歌唱パートを取り入れて、いままでの曲に比べてさらにポップに仕上げているという点。例えば冒頭を飾る「Hit My Head All Day」では、サビで歌われる楽曲タイトルの部分はしっかりと「歌って」いまし、「Secret Love(Concealed in a Drawing of a Boy)」でもドリーミーな歌を入れています。

特に終盤にかけてポップな曲が目立ち、「The Cute Things」も、エッジの効いたギターサウンドをバックに、サビの部分はポップに歌っていますし、最後の「Joy」も歌モノのポップに仕上げています。特に気だるくダウナーな感じのボーカルも目立つのですが、一方ではハイトーンでキュートに歌うシーンもあり、「歌」の部分でもしっかりとその魅力を感じさせます。

また、前作までに比べると、バンドサウンドがよりエッジを利かせたロックなものとなっているようにも感じます。冒頭を飾る「Hit My Head All Day」もギターサウンドはよりエッジを利かせたものとなっていますし、続く「Cruise Ship Designer」も、軽快なギターリフはポップさがあり心地よいのですが、こちらもエッジを利かせたロックなサウンドが印象的。「Evil Evil Idiot」でも後半、ヘヴィーなギターでダークに聴かせてくれますし、タイトルそのまま「Rocks」も、まさにタイトルの通り、パンキッシュなギターサウンドで疾走感あるサウンドを聴かせてくれます。

このように、アルバムも3作目となり、いままでと変わらない部分はしっかり残している一方、あらたな方向性も感じさせるアルバム。特に、歌唱パートの増加や、よりロックになったサウンドにより、アルバムとしてのインパクトがさらに増したように感じました。わかりやすいポップなメロを聴かせてくれるわけではないので、決して派手なバンドではないのですが、そのサウンドやボーカルで妙なインパクトを残す彼女たち。まだまださらに注目は高まりそうです。

評価:★★★★★

Dry Cleaning 過去の作品
New Long Leg
Stumpwork


ほかに聴いたアルバム

Buya Buya/Mahotella Queens

今回も2025年ベストアルバムを後追いで聴いた1枚。本作は「Music Magazine」誌「ワールド・ミュージック」部門で6位を獲得した1枚。南アフリカの伝統的なダンスミュージックであるムバカンガを代表する女性ミュージシャンの、実に18年ぶりとなるニューアルバム。軽快なベースラインや爽やかな女性コーラスをバックに、楽しくリズミカルなポップチューンが魅力的で、爽やかな太陽の下での野外ライブのステージに似合いそうな爽快なダンスミュージックを聴かせてくれています。グループ結成から60年続いているそうですが、オリジナルメンバーは一人だけで(オリジナルメンバーが残っているだけで驚きですが・・・)今回も新たなメンバーが加入。その伝統的な音楽を継承していっているそう。楽曲的にはいま聴いても全く古臭さは感じられず、軽快でリズミカルなポップは広い世代に親しまれそう。ワールドミュージックの枠を超えて楽しめそうな絵傑作アルバムでした。

評価:★★★★★

Ego Death At A Bachelorette Party/Hayley Williams

こちらも2025年ベストアルバムを後追いで聴いた1枚。こちらは各種メディアが発表したベストアルバムを集約して順位をつけたサイトAOTY2025の10位にランクインしたアルバム。アメリカのロックバンドParamoreのボーカリストによるソロ3作目。全20曲1時間以上に及ぶボリューム感ある内容で、全体的にポップなメロを主体としつつ、オルタナ系のギターロックからシューゲイザー、フォークロック、エレクトロなど様々な楽曲が展開するバラエティー富んだ作品。ある意味、バンドからのソロ作らしい、自由度あふれる作品になっています。ただ一方、その結果、20曲という内容はちょっとボリューミーすぎたかな?最後の方はちょっと長くてダレてきてしまった感も。あと2、3曲削れればよかったような気がするのですが。

評価:★★★★

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2026年3月27日 (金)

「昭和百年」目の最後に

Title:唱和百年
Musician:チャラン・ポ・ランタン

昨年は、昭和換算で100年目にあたるということで、昭和を振り替える書籍が多く発売され、記念式典やイベントなども行われ話題となりました。その昭和百年目の最後の月のクリスマスイブに、駆け込みセーフのようにリリースされたのがチャラン・ポ・ランタンのカバーアルバム。もともとライブなどでは多く披露しているそうですが、カバーアルバムとしてはこれが2作目。カバーアルバムとしての前作「借りもの協奏」では主に彼女たちと同じく2人組のグループの楽曲をカバーしてきましたが、今回のアルバムはタイトル通り、「昭和歌謡曲」をコンセプトとしたカバーアルバムとなっています。

ただ、正直、アルバムを聴き始めた段階ではまず不安が先に立ってしまいました。というのも1曲目は布施明の「君は薔薇より美しい」。ご存知のように布施明といえば、声量あるボーカルで力強く歌い上げるスタール。一方彼女たちは、決して「声量を前に押し出した」のようなスタイルではありませんし、アコーディオン主体のサウンドは非常に軽いもの。この曲のカバーに関しては、オリジナルと比べるとかなりスカスカに感じてしまい、まずは違和感が先に立ってしまいました。

しかし、2曲目以降はその不安は徐々に消えていきます。続く「真赤な太陽」も同じく美空ひばりによる力強いボーカルが印象的な楽曲なのですが、こちらはももがこぶしを利かせた力強いボーカルを聴かせてくれており、違和感はありません。さらに続く「ハチのムサシは死んだのさ」みたいな、ちょっとコミカルさがある楽曲は、チャラン・ポ・ランタンの軽快なサウンドがピッタリとマッチしています。

基本的にカバーは、アコーディオンメインのいつもながらの彼女たちのスタイルで、原曲をシャンソンやキャバレーポップのような、チャラン・ポ・ランタンの世界に引きずり込むようなスタイル。特にコミカルな楽曲については比較的マッチしており、よかったのが「モン・パパ」のカバー。もともと、エノケンや二村定一、岸井明などが歌っていた戦前のコミックソングですが、軽快でコミカルな内容に、ちょっと芝居がかった小春の歌い方もピッタリマッチ。チャラン・ポ・ランタンの世界観ともピッタリマッチしています。

特に女性ボーカルのカバーについては、「魅せられて」「喝采」のような力強いボーカルで歌い上げるタイプの曲もマッチ。「喝采」はアコーディオンでしんみり聴かせるシャンソン風のカバーが哀愁感たっぷりで曲にもピッタリマッチ。また「サウスポー」などはアコーディオンに打ち込みを加えたユニークな組み合わせ。独自のアレンジで挑戦的な作風に仕上がています。

ただ逆にちょっと残念だったのは男性ボーカルで歌い上げるようなスタイルの曲。前述の「君は薔薇より美しい」もそうですし、尾崎紀世彦の「また逢う日まで」のカバーもちょっといまひとつ。やはり男性ボーカルで声量をもって歌い上げるスタイルはそのままカバーできないのか、非常に軽い感じでカバーしているのですが、正直、原曲と比べて物足りなさを感じてしまいます。

そういう惜しい感じのカバーもあるのですが、ただ全体としてはチャラン・ポ・ランタンの世界にしっかりと楽曲を引きずり込み、彼女たちしかできないようなカバーにまとめあげた内容になっていたと思います。そもそも彼女たちのアコーディオン片手に、シャンソンやジンタ(は、このアルバムではあまり登場しませんが)、キャバレーポップ風に歌うというスタイルは昭和歌謡曲の世界にもピッタリマッチ。マッチしすぎるからこそ、ひょっとしたらいままであえてこの手のカバーアルバムをリリースしてこなかったのかもしれませんが、しっかし彼女たちの良さを出し切れたカバーアルバムだったと思います。原曲の魅力ももちろん、チャラン・ポ・ランタンの魅力もしっかりと感じられるカバーアルバムでした。

評価:★★★★★

チャラン・ポ・ランタン 過去の作品
テアトル・テアトル
女の46分
女たちの残像
借り物協奏
トリトメモナシ
ミラージュ・コラージュ
過去レクション
ドロン・ド・ロンド
いい過去どり
こもりうた
紆余曲折集


ほかに聴いたアルバム

AKIKO YANO TRIO featuring Will Lee&Chris Parker Live at Blue Note Tokyo 2025.09.04/矢野顕子

Akiko-yano-trio-featuring-will-leechris-

タイトル通り、矢野顕子が、ベーシストのウィル・リー、ドラマーのクリス・パーカーと組んで、昨年9月にBlue Note Tokyoで行われたライブを収録したライブアルバム。長年共演してきたメンバーで、それだけに息の合った演奏を楽しめます。矢野顕子の曲だけではなくカバー曲も多いセットリストなのですが、特に「ゴジラ」では曲の前にゴジラの咆哮が入り、さらにはメンバーの小芝居(?)もあった上で、おなじみ「ゴジラ」のテーマをジャズアレンジしているユニークなカバー。またYMOの「Rydeen」や、坂本龍一の「千のナイフ」もカバーしており、ここらへん、離婚した元夫の曲だけど・・・と思うのと同時に、その元夫、坂本龍一への追悼的な意味もあるのかなぁ、とも感じました。基本的にジャジーなアレンジながら、シンセが入ったり、軽快なポップチューンになっていたりと、ジャズというカテゴリーを超えて楽しめるライブアルバムになっています。カバー曲から彼女の音楽的遍歴も楽しめるような作品でした。

評価:★★★★★

矢野顕子 過去の作品
akiko
音楽堂
荒野の呼び声-東京録音-
Get Together~LIVE IN TOKYO~(矢野顕子×上原ひろみ)
矢野顕子、忌野清志郎を歌う
飛ばしていくよ
JAPANESE GIRL - Piano Solo Live 2008 -
さとがえるコンサート(矢野顕子+ TIN PAN)
Welcome to Jupiter
矢野顕子+TIN PAN PARTⅡ さとがえるコンサート
(矢野顕子+ TIN PAN)
矢野山脈
Soft Landing
ラーメンな女たち
矢野顕子×上原ひろみ)
ふたりぼっちで行こう
音楽はおくりもの
君に会いたいんだ、とても
矢野顕子・野口聡一)
Step Into Paradise -LIVE IN TOKYO-(矢野顕子×上原ひろみ)

Success Is The Best Revenge/SKY-HI

Successisthebestrevenge

SKY-HIによる約3年ぶりとなるニューアルバム。SKY-HIはアイドルグループからスタートしつつ、ラッパーとして一定の評価を得て、自ら設立した音楽事務所BMSG傘下所属のBE:FIRSTやHANAが大ヒットを記録し、一躍、時の人となる経歴の持ち主。そんな中で、かなり挑発的なアルバムタイトルになっていますが、歌詞の内容的にもアイドルとラッパーという立場で揺れ動く心境や、その上で前向きなスタンスを綴った内容となっています。楽曲的にも彼の集大成的な内容になっており、これでもかというほどスキルを聴かせるラップや、メロウな歌モノなどが入ったバラエティーのある内容に。タイトル通り、「成功」を誇らしげに歌い上げる作品となっています。

ただ、「成功」の結果、やっていることが女子高生を夜中に呼び出してイチャイチャすることだったとはね(苦笑)。まあ、みっともない、というよりも「脇が甘い」と思ってしまいますが。なんか、急激な「成功」でも、ほかにも足を取られるような事態が出てきてしまいそうな感じもするのですが・・・うーむ。

評価:★★★★

SKY-HI 過去の作品
FREE TOKYO
JAPRISON
Say Hello to My Minions 2(SKY-HI×SALU)
SKY-HI's THE BEST
八面六臂
THE DEBUT

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2026年3月26日 (木)

復活が大きな話題に!

今週のHot Albums

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

復帰ライブも大きなニュースとなりました。

今週1位は韓国の男性アイドルグループBTS「ARIRANG」が獲得。CD販売数、ダウンロード数及びストリーミング数のすべてで1位を獲得しています。ご存知の通り、全世界的な人気を誇るグループながら、2022年にメンバーの兵役のため活動が休止。ただ、このたび、メンバーが兵役を無事終えて活動再開。特に3月21日に行われた復帰ライブの模様は、日本でも通常のニュース枠で取り上げられるなど、大きな話題となりました。

オリコン週間アルバムランキングでは初動売上54万6千枚で1位初登場。直近作「BE」は韓国盤のスペシャルアルバムで、初動売上19万1千枚を記録。日本盤の前作「MAP OF THE SOUL:7~THE JOURNEY~」は初動56万4千枚(1位)で、こちらよりはダウン。直近作のベスト盤「BTS,THE BEST」の初動78万2千枚(1位)よりはダウンという結果に。事実上、ほぼ横バイという結果で、良くも悪くも「ファンがそのままついてきた」といった感じの結果になっています。

2位は先週まで3週連続の1位をキープしてきたHANA「HANA」がワンランクダウン。3位はスターダストプロモーション所属の男性アイドルグループLienel「Osyan」が初登場。オリコンでは初動売上9万2千枚で2位初登場。前作「罪と罰」の初動3万6千枚からアップしています。

以下、初登場は10位にDREAMS COME TRUE「THE BLACK〇ALBUM」が初登場でランクイン。CD販売数3位。彼女たち、実に9年ぶりとなるニューアルバム。今回はあえて配信を行わず、CDのみでのリリースとなっています。

ロングヒット盤では、まずNumber_i「No.Ⅱ」は先週から変わらず5位。King&Prince「STARRING」も先週から変わらず7位と両者順位は先週から変わらず。ベスト10ヒットをそれぞれ26週連続、13週連続に伸ばしています。また、XG「THE CORE-核」も先週と変わらず8位をキープ。ベスト10ヒットを9週連続に伸ばしています。


今週のHeatseekers Songs

https://www.billboard-japan.com/charts/detail?a=heat_seekers

Heatseekers Songs今週の1位はCIRRA「Always」が初登場で獲得。LDH所属の女性アイドルグループ。3月18日にリリースしたEPの両A面曲となります。ラジオオンエア数で2位。Hot100では49位にランクインしています。


今週のニコニコVOCALOID SONGS

https://www.billboard-japan.com/charts/detail?a=niconico

ボカロチャート1位はSohbana「個々々々々々人」がチャートインから5週目にして初の1位獲得。ボカコレ2026年冬で4位にランクインした曲となります。2位はアボガド6「音源吐露」が先週の17位からランクアップし、ランクイン2週目にしてベスト10入り。3位は山本「デロスサントス」がワンランクダウンながらもベスト3をキープしました。

今週のHot Albums&Heatseekers&ボカロチャートは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2026年3月25日 (水)

アイドル系の新譜ラッシュ

今週のHot100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

今週はアイドル系の新譜ラッシュ。さらに既存曲も合わせて10曲中8曲までアイドル系という結果となっています。

まず1位はBE:FIRST「BE:FIRST ALL DAY」が初登場で獲得。ダウンロード数、ラジオオンエア数及び動画再生回数で1位獲得。ストリーミング数も6位を獲得し、総合順位で1位獲得。5月6日CDリリース予定のシングルからの先行配信となります。

2位は旧ジャニーズ系、SixTONES「一秒」が初登場。CD販売数1位、ダウンロード数6位、ラジオオンエア数15位。日テレ系2026アスリート応援ソング。要するに、ミラノ・コルティナ冬季オリンピックの日テレのテレビ中継主題歌となります。オリコン週間シングルランキングでは初動売上39万2千枚で1位初登場。前作「Stargaze」の初動33万枚(1位)よりアップ。

3位は秋元康系女性アイドルグループSKE48「サンダルだぜ」がランクイン。CD販売数2位。オリコンでは初動売上18万8千枚で2位初登場。前作「Karma」の初動23万1千枚からダウン。

4位以下の初登場も前述の通りアイドル系。8位にはaoen「秒で落ちた」がランクイン。CD販売数3位。韓国の芸能事務所HYBE傘下事務所に所属する男性アイドルグループ。オリコンでは7万5千枚で3位初登場。前作「青い太陽(The Blue Sun)」の初動7万4千枚(3位)から微増。

そして9位にはLDH系男性アイドルグループTHE JET BOY BANGERZ「HEAD UP introduced by Zeebra」が初登場。CD販売数4位。タイトル通り、あのZEEBRAも参加したニューシングル。オリコンでは初動売上5万4千枚で4位初登場。前作「Jettin'」の初動8万6千枚(3位)からダウン。

他に今週はM!LK「爆裂愛してる」が先週から同順位の4位、「好きすぎて滅!」も先週と同順位の6位をキープ。「好きすぎて滅!」はこれで16週連続のベスト10ヒットとなりました。また5位には嵐「Five」がランクインしており、これでベスト10中8曲までがアイドル系という結果となっています。

そして残り2曲はロングヒット。まず米津玄師「IRIS OUT」が5位から7位にダウン。ただ、ストリーミング数は3位から2位、動画再生回数も6位から4位にアップしています。これでベスト10ヒットを連続27週に伸ばしています。

また、Mrs.GREEN APPLE「lulu.」は7位から10位にダウン。ただ、こちらもストリーミング数は先週から変わらず5位。こちらは10週連続のベスト10ヒットとなりました。

一方、この新譜ラッシュに押し出されるように、HANA「ROSE」は10位から16位、「Blue Jeans」も9位から14位といずれもベスト10陥落。それぞれベスト10ヒットは通算38週、通算32週で再びストップ。今週、HANAの曲は1曲もベスト10圏内にランクインせず、という結果になっています。また、King Gnu「AIZO」も8位から13位にダウン。こちらもベスト10ヒットは連続10週でストップとなりました。

今週のHot100は以上。明日はHot Albums&Heatseekers&ボカロチャート!

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2026年3月24日 (火)

2025年のHIP HOPシーンは?

今回は最近読んだ音楽関連の書籍の紹介です。

「ele-king presents HIP HOP 2025-26」。昨年から発刊がスタートした、ele-kingが発刊するHIP HOPの年刊誌。通常、雑誌は本コーナーの対象外なのですが、いままでも厳密に、書籍の流通形態が雑誌扱いなのか一般書籍扱いなのかでわけていた訳でもなく、また1年に1度のみ発刊という扱いであるため、通常の音楽関連書籍と同じように、当サイトでも取り上げたいと思います。

昨年発刊された段階で「1年に1度のみ発行の年刊誌」というイレギュラーな形態なのはわかっていましたが、得てして1年に1度しか発刊されないようなスタイルは企画倒れに終わるケースも多く、1年で終わりだろうなぁ、と思っていました。実際、昨年は1月24日に発刊されたのですが、今年は1月下旬になっても、ele-kingのサイトで発刊のお知らせがされていなかったことから、「やはり1年限りだったか」と思っていたのですが、3月に入って偶然書店で、この本が並んでいるのを見かけました。今年の発刊日は2月12日。昨年から半月ほど遅れての発刊だったようですが、無事、発刊され、「年刊誌」の体を保ったようです。

さて、このHIP HOPの年刊誌について、昨年も読み、そして今年も読んでみた大きな理由としては、HIP HOPというシーンが非常に活発であり、なおかつ、HIP HOPというシーンの盛り上がり方が、内輪的なゴシップの要素も強く、熱心なファンではないとなかなかシーンに追いつけず、どんなミュージシャンが話題になっているのかがわかりにくいから、という点があげられます。ただ、正直言って、2025年に関しては、あまりHIP HOPで大きな話題がないなぁ・・・というような感覚を漠然と抱いていました。

実際、本書を読むと、HIP HOPシーンが現在、停滞気味であることを強く感じさせます。実際、昨年の「HIP HOP 2024-25」では、2024年のHIP HOPシーンが対談やコラムなどによって、全編にわたって紹介されていたのに対して、本書では、ほぼ前半を使って、アンダーグラウンドHIP HOPの紹介という、2025年のHIP HOPシーンに直接的には関係ない記事で埋められています。

後半は、昨年と同様、2025年のHIP HOPベストアルバムの紹介や、2025年のシーンを概観した対談記事、コラムなどが紹介されていますが、2024年に比べると、やはり取り上げる話題に乏しく、停滞感は否めません。実際、2025年の後半には、ビルボード100の上位40位までにHIP HOPの楽曲が1曲もランクインしなかったということが、実に35年ぶりに行ったそうで、そのことがニュースにもなったそうです。

対談やコラムでは、そんなHIP HOPの停滞を必死で否定するような記事が目立っていましたが、ただ、やはり私のようにHIP HOPにさほど詳しくない人間にとっては、以前に比べて活気がないようには感じてしまいます。実際、外部からもわかりやすい形でのHIP HOPの新しい動きとしては、トラップ以降、大きな変動が起きていないように感じますし、そのトラップにしてもシーンの中心にあらわれてからかなり月日が経ってしまいました。次から次へと新しいシーンを作り出してきた、ここ数年来のHIP HOPシーンが、ここに来てちょっと停滞している、というのは否めないように感じます。

だからこそ、次のシーンを生み出すためにも、アンダーグラウンドHIP HOPに注目があつまり、本誌でも特集記事として紹介しているのではないでしょうか。もちろん、停滞気味とはいえども、私も年間ベストクラスの傑作だと思ったLittle Simzの「Lotus」(本書の年間ベストで3位)や、各種メディアなどでも年間ベストの上位に取り上げられているClipseの「Let God Sort Em Out」(本書年間ベストで4位)など、2025年も少なくないHIP HOPの名盤がリリースされています。そういう意味では、まだまだ2026年以降、新たなシーンが生み出され、HIP HOPの勢いが増すという流れは十分すぎるほど考えられるのではないでしょうか。特にアンダーグラウンドHIP HOPの特集を読む限り、次のシーンを生み出すために手ぐすねをひいているミュージシャンが数多く存在していることは強く感じることが出来ました。

個人的には、特に現在、トランプが大暴走を起こしているアメリカの社会情勢の中におけるHIP HOPとのかかわりについて、もうちょっと深く細かく紹介してほしかったようにも思うのですが、昨年9月に刊行済のコラム記事の転載だけだったのは非常に残念。「年刊誌」とはいえ、適時性が問われる雑誌だからこそ、今の社会情勢とHIP HOPの関わりについて、リアルタイムな紹介記事を期待したかったところです。この点は残念に感じました。

そんな訳でHIP HOPの現状について今回もいろいろと勉強になった1冊。ちなみに本書に紹介された年間ベストですが、上位でまだ聴いていないアルバムもあったので、昨年同様、こちらも後追いで聴いてみたいと思います。その感想はまた後日に。来年も発刊を期待したいのですが、どうなるかなぁ・・・。楽しみに待っていたいところですが。

ele-king presents HIP HOP 2025-26

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2026年3月23日 (月)

2枚目も王道のオルタナ路線で

Title:moisturizer
Musician:Wet Leg

イギリスはワイト島出身の女性2人、ギターボーカルのリアン・ティーズデイル、ギターのヘスター・チャンバースの2人組としてスタートし、2022年にセルフタイトル「Wet Leg」でデビューした彼女たち。デビュー作でいきなりブレイクし、なんとグラミー賞で最優秀オルタナティブ・ミュージック・アルバム賞を受賞するなど、いきなり注目のバンドとなりました。

本作は、そんな話題騒然のアルバムから約3年というインターバルを経てリリースされた2枚目となるアルバム。なんと驚くことに、前作からメンバーが3名追加され、5人組バンドに!いままでの女性2人組というイメージからガラッとその様態を変えたのは正直ビックリしました。また、ビルボードチャートでは残念ながら前作の最高位14位から45位と大きくダウン。ただし、イギリスの公式チャートでは前作に引き続き1位を獲得。その人気ぶりを見せつける結果となっています。

楽曲的には前作同様、「王道」とも言えるオルタナ系ロック。ノイジーなギターサウンドに、ほどよくヘヴィーなドラムとベースがリズムを刻み、そこにのる歌は比較的ポップで聴きやすい・・・とまぁ、90年代以降のオルタナ系ギターロックの系譜をしっかりと引き継いでいるスタイルとなっています。

今回、バンドメンバーが2名から5名に一気に増えたことになりますが、正直、それによってガラッと楽曲の雰囲気が変わった、ということはありません。そもそも、前作にしても、2ピースであることを押し出したような曲はなく、基本的にサポート前提での曲調となっていました。あえていえば若干分厚い音の曲は増えた、ような感じもします。例えば、冒頭を飾る「CPR」では、ヘヴィーなベースラインからスタートし、シンセの音が入ってくるなど分厚いサウンドを聴かせる曲になっていますし、「pillow talk」のようにハードロック的なバンドサウンドでグイグイと押してくるような曲は5人組となった本作ならでは、と言えるかもしれません。ただ、それらの曲も含めて、前作で感じたWet Legらしさは本作も引き続き聴くことが出来ます。

また、今回のアルバムでも「davina mccall」のような、ちょっとメロウさを感じるボーカルでメロディアスに聴かせる曲や、「don't speak」のような、シューゲイザーライクなホワイトノイズをバックとしつつ、歌はキュートという作品、さらにラストを飾る「u and me ato home」のような、ノイジーなバンドサウンドを押し出しつつも、サビをみんなで歌えるような楽しいポップチューンなど、ノイジーなバンドサウンド+ポップなメロという、オルタナ系ギターロックの王道とも言えるスタイルは健在です。

さらにアルバムの中でインパクトのある曲といえば「catch these fists」で、タイトルを直訳すると「パンチを食らえ!」と、まさに男性に対してこぶしをつきつけるような勇ましいナンバー(笑)。バックのバンドサウンドもかなりパワフルで、ライブでも(男性も一緒になって)盛り上がる曲となっています。さらに「Pokemon」なんて曲も。ちょっとメロウでメロディアスな曲なのですが、こちらはもちろん、あの「ポケモン」のことで、「私を君のポケモンにして」という歌詞になっています。

ちなみに本作、昨年7月にリリースされていたのですが、いまさら取り上げるのは、これ、スルーしていたことに最近気が付いたから(笑)。もうライブレポをアップしましたが、先日の来日ライブに足を運んできたのですが、そのチケットを取る段階になって最新アルバムを聴いていなかったことに気が付いてしまい、慌ててチェックした・・・という次第となります。ライブも非常に楽しかったのですが、このアルバムも、特に90年代のギターロックが好きな人には壺にはまりそうな傑作アルバム。まだまだ彼女たちの快進撃は続きそうです。

評価:★★★★★

Wet Leg 過去の作品
Wet Leg


ほかに聴いたアルバム

Even In Arcadia/Sleep Token

昨年、アメリカのBillboard 200で1位を獲得。近年、ビルボードでヒットが出ることが稀になってしまったロックバンドの中で珍しく大ヒットを記録したアルバムとして話題となった作品。イギリスの覆面ロックバンドで、ジャンル的にはメタルとなるのですが、R&Bやポップと融合させた独特の音楽性が話題に。確かに、「Past Self」ではトラップ風のサウンドを入れてきたり、メランコリックなメロディーラインが印象的だったりと、メタルとR&B、あるいはポップを融合させたような作風が印象に残り、また、より幅広いリスナー層へ訴求しそうな作風となっています。本作は、ロッキンオン誌の年間ベストアルバムで3位にランクインしたアルバム。1位獲得はリアルタイムで知っていたのですが、今回、ベスト盤として選出されたのを機に、後追いで聴いたアルバム。正直、年間ベストクラスなのはあきらかにロケノンらしく「売れたから」が大きな理由のような気がします。実際、本作の評価は賛否両論の模様。ただ、メタルとしてはポップ寄りすぎるのかもしれませんが、逆にそれが聴きやすくもあり、個人的には思ったよりも良いアルバムだったと思います。ある意味、良くも悪くも売れたのが納得できるような作品でした。

評価:★★★★★

CARO Vapor II – Qual a forma de pagamento?/Don L

Carovapor

こちらも2025年ベストアルバムを後追いで聴いた1枚。こちらは「Music Magazine誌」のブラジル部門で1位となった、ブラジルのラッパーによるアルバム。ブラジルの音楽とHIP HOPを融合させた音楽を目指しており、特にMPBやボサノヴァ、サンバなどといったブラジルの音楽史を飾る音楽とHIP HOPを意欲的に融合。あらたな音楽を模索した作品に。全体的にはメロウでメランコリックでムーディーなトラックにリズミカルなラップが加わっているというスタイル。結構ポップにまとめられており、ブラジル音楽、HIP HOP共に、音楽の包容力も感じさせるアルバムでした。

評価:★★★★

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2026年3月22日 (日)

対照的な2作品

ロックバンド「森は生きている」としてデビュー。現在はソロとして活躍し、また数多くのミュージシャンのプロデュースも手掛ける岡田拓郎の2枚のアルバムの紹介です。

Title:The Near End,The Dark Night,The Country Line
Musician:岡田拓郎

The-near-end-the-dark-night-the-county-l

こちらは取り上げるがちょっと遅くなってしまいましたが・・・昨年3月にリリースされた10曲入りのアルバム。純粋なオリジナルアルバムではなく、彼が過去10年間に蓄積してきた膨大なレコーディング素材のアーカイブから、彼自身が選りすぐった10曲を収録したコンピレーションアルバムだそうで、特にギターに焦点をあてた作品となっています。

楽曲はインスト曲がメイン。エレクトロサウンドで、文字通り1日の始まりを感じさせる「Following Morning」から、朝の気だるい雰囲気を感じさせる「The Room」とアンビエントなナンバーが目立ちます。続く「Shadow」はアコースティックな歌モノのナンバー。こちらもフォーキーに静かに聴かせる、アンビエントテイストの強い楽曲となっています。

そんな感じでアルバム全体として静かなアンビエント的な曲が続くのですが、一方では様々なバリエーションも感じさせ、バンドサウンドの入った「Reflections/Entering #2」では後半、怪しげでサイケなサウンドが展開。「Taco Beach」でもアラビアンな雰囲気のエキゾチックなギターで怪しげに聴かせるナンバーに。かと思えば「Ohme Part 1」ではアコギのアルペジオの音色を美しく聴かせるドリーミーな曲と、様々な展開を楽しませてくれます。

全体的には過去に録りためた楽曲をつかっているということもあり、自由度も高く、ギター、アンビエントというアルバム全体を貫く共通項はあるものの、アルバム全体としてのまとまりは薄く、その場その時の岡田拓郎のアイディアをまとめた「断片集」といった印象を受けます。そういう意味ではちょっとファン向けといった感じもするのですが、岡田拓郎の頭の中をのぞくような、様々な音のアイディア、羅列は実に美しもあり魅力的。申し分ない傑作アルバムに仕上がっていました。

評価:★★★★★

Title:Konoma
Musician:岡田拓郎

そして本作が昨年11月にリリースされたオリジナルアルバム。今回のアルバムは、「日本人の音楽家として、アフリカ系アメリカ人の音楽を単に借用することなくどう敬意を払えるのか?」という問いの探究により形作られたとか。そんな中で彼が出会ったのがアメリカのアーティスト、シアスター・ゲイツが提唱する「アフロ民藝」というコンセプトで、これは黒人の美学と日本の工芸の哲学を融合させた美術の考え方だそうで、今回のアルバム作成にあたっての方針となったそうです。

1曲目の「Mahidere Birhan」はまさにそんなコンセプトを感じさせる1曲で、哀愁たっぷりに鳴り響くジャジーなサックスとホーンの分厚い音色は、エキゾチックで、「ジャズ」という音楽的要素を含め、ブラックミュージック的な部分を強く感じさせる一方、哀愁ただようメロディーラインは日本人の琴線にも触れる「和風」さを感じさせる作品。まずは彼なりに「アフロ民藝」的なコンセプトを音楽に反映させたような作品に感じます。

続く「Sunrise」もタイトル通りの夜明けを彷彿させるような穏やかでジャジーな作品なのですが、シンセの音色に、どこかアフリカのカリンバの音色を彷彿とさせる一方、静かなサックスの音色にはどこか和風な雰囲気も。「Nefertite」はノルウェーのサックス奏者、ヤン・ガンバレクの曲のカバー。70年代的なジャズだそうで、どこか懐かしさを感じさせるジャズの音色は、こちらも日本人の琴線なメロディーを聴かせてくれています。

後半の「November Owens Valley」も、トライバルなパーカッションの音色をバックに、メランコリックなサックスの音色が流れるナンバーは、やはり彼なりのアフリカと日本の融合というコンセプトに沿った作風ということでしょうか。また「Love」は日本のジャズピアニスト鈴木宏昌の楽曲。昨今、注目をされつつある日本のフュージョンのカバーとなるのですが、これもまた、アメリカの黒人音楽であるジャズが、日本的に変化を遂げた日本のフュージョンという楽曲が、アルバムのコンセプトにマッチした、といった感じでしょうか。そしてラスト「Acute Angle Black Button」もエレクトロサウンドにダブの手法も用いた、このアルバムの中でも特に実験テイストの強い楽曲。こちらはブラックミュージックテイストの強いナンバーでアルバムは幕を下ろします。

アルバムは、インターリュード的な曲も加わり全8曲39分の内容。比較的シンプルにまとまった短めのアルバムにはなっているのですが、コンセプチュアルな内容が強く、岡田拓郎の意思がギッチリとつまったアルバムとなっていました。そういう意味では、コンセプトとあまり関係なく、自由に曲をつくった「The Near End~」とは対照的な作品とも言えるかもしれません。一方、アルバムのコンセプトが全面に押し出された、「思考のアルバム」とも言えるだけに、楽曲としてのインパクトはちょっと弱かったかもしれません。ただ、その点をあわせても、彼の思考に沿って、ゆっくりと聴き進めたい傑作アルバムなのは間違いないでしょう。彼の提示したコンセプトについて、リスナーとしても考えたい1枚です。

評価:★★★★★

岡田拓郎 過去の作品
ノスタルジア(Okada Takuro)
Morning Sun
都市計画(Urban Planning)(Okada Takuro+duenn)
Betsu No Jikan
熱のあとに Original Soundtrack


ほかに聴いたアルバム

マウスピリッツ/キュウソネコカミ

Mousprits

結成15周年を記念してリリースされた5曲入りのミニアルバム。メンバー全員アラフォーになった今の心境を歌った「歳食ってる」なんて曲があったりして、キュウソネコカミというと「若手」というイメージがずっとあったのですが、既にもう、そんな年のバンドになっちゃったんですね・・・。ただ、シンセが入ってハイテンポの勢いで押していくパンキッシュなナンバーなのは今回も変わらず。大いなるマンネリ気味とはいえ、楽曲の勢いはかつてから変わらず、ここらへん、「若手」と思わせるような、いつまでも変わらないバンドのスタンスがあるんでしょう。これからもこの勢いは止まらなさそうです。

評価:★★★★

キュウソネコカミ 過去の作品
チェンジ ザ ワールド
ハッピーポンコツランド
人生はまだまだ続く
キュウソネコカミ -THE LIVE-DMCC REAL ONEMAN TOUR 2016/2017 ボロボロ バキバキ クルットゥー
にゅ~うぇいぶ
ギリ平成
ハリネズミズム
モルモットラボ
私飽きぬ私
出現!鼠浄土

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2026年3月21日 (土)

自己肯定感あふれるパフォーマンス

サンボマスター 全員優勝VICTROY25「全員優勝パレードツアー~全員優勝決定シリーズ~」中部地区全員優勝決定戦 day1

会場 Niterra日本特殊陶業市民会館フォレストフォール 日時 2026年3月12日(木) 19:00~

Sanbolive1

今回、はじめてサンボマスターのライブに足を運んできました。サンボマスターについては、アルバムを毎作聴いているものの、「熱心なファン」という訳ではなかったのですが、ライブの評判についてはいままで聴いており、一度足を運びたいなぁ、と考えていました。今回は、市民会館2daysのワンマンライブ。2日ともソールドアウトであり、その人気ぶりをうかがわせます。会場に集まったファンは、おそらく40代あたりがボリュームゾーンと思うのですが、20代や、逆に60代くらいの観客もチラホラ見受けられており、そのファン層の広さも感じさせました。

ライブはほぼ19時ちょうどからスタート。ステージ上は3人のみでサポートメンバーはなしというスタイル。最初は「あなたといきたい」「世界をかえさせておくれよ」「輝きだして走っていく」といきなりサンボマスターの代表曲からスタート。なによりも3ピースバンドとして非常に力強いサウンドを市民会館の広い会場に響かせており、一気にテンションがあがっていきます。

その後はまず最初のMC。1月に骨折してしまった山口隆の話。医者に手のしなりがかなりやわらかいと話されたネタから、自分は天性のギタリストだ、と力強いギタープレイを披露してくれました。

その後も「ミラクルをキミとおこしたいんです」「光のロック」、さらに「踊れるナンバー」ということで「青春狂騒曲」と代表曲が続き、テンションがあがりまくります。さらに、ここで「7:59:50」という時計が後ろのスクリーンに登場し、8時ピッタリから、テレビ番組「ラヴィット!」のオープニングがスタートし、それに合わせるように「ラヴィット!」の主題歌「ヒューマニティ!」に。なかなかユニークな演出。「もう8時か?」と思いきや、実際はまだ7時40分くらい。これ、実時間も8時に合わせられればおもしろかったんですけどね(笑)。

さらにMCではEPをレコーディングした話から、新曲へ。こちらは暖かい雰囲気のミディアムポップになっていました。さらに「We Need Love&Peace」をしんみり聴かせてくれます。そしてここでMCに。この日は3月12日。東日本大震災の起こった3月11日の翌日ということで、その想いを山口隆が淡々と語ります。「いのちにありがとう」と語ると、最初は生声で「ラブソング」を。じーん、と胸に来るものがありました。

ここらへんから自分の中でのテンションもどんどんあがっていきます。代表曲の連続ということもあるのですが、サンボマスターの歌は、まさにどの曲も「人生讃歌」。徹底的な「自己肯定」の歌詞は、音源で聴く分には少々きれいごと感も覚えてしまったのですが、こういうライブの場所でみんな一緒で盛り上がると、どんどんとテンションが高まっていきます。

新曲「とまどうほどに照らしてくれ」では、MVでも使われた小山ゆうじろうの書きおろし漫画がバックに流れます。さらに「新しく光れ」から、みんなで「全員優勝!」と叫んで、おなじみ「世界はそれを愛と呼ぶんだぜ」へ。みんなで「ラブアンドピース」と叫びまくるのですが、この時、私は思わず思いっきり笑顔になりながらも、その圧倒的な自己肯定感に、同時に涙もしていました。

その後、「孤独とランデブー」で踊りまくった後にMCへ。ある意味、ライブの真骨頂とも言える山口隆の曲に対する思いを訥々と語ります。まさに中学生の頃、自分の存在に不安になったころに流れてきたのがブルーハーツで、生きていていいんだ、ということを曲から教えられたこと。そして、それをみんなに伝えていきたいということを語られます。そして、その流れから「Future Is Yours」「できっこないをやらなくちゃ」そして「花束」とクライマックスへ。まさに最後の最後まで、ファンに「そのままで生きていていいんだ」という自己肯定感を伝えるメッセージを曲にのせて歌い上げました。

そしてアンコールへ。アンコールではドラムの木内泰史が前に出てきて、「アンコールドラフト会議」なるものの宣言。くじが配られて、アンコールで演る楽曲をメンバーのうちくじをあてた人が決めれる、という試みらしいです。結果としては山口隆が見事くじをひきあて、アンコールスタート・・・かと思いきや、いきなりNHK「プロフェッショナル」のエンディングでおなじみ「プログレス」が流れ、その音楽にあわせて木内の語りという展開に。結果、もう1度実施することになり、2度目は映像によるルーレットという展開で、今回も山口隆が選ばれた・・・かと思えば、ルーレットが崩れ、今度は木内泰史が選ばれるという、いかにもやらせ的な展開に(笑)。このアンコールの茶番劇(?)が延々と続いた結果、アンコールへと流れ込みます(で、結果、誰のリクエストがどの曲って言わなかったので、完全に茶番劇だったのですが(笑))。

アンコールは「そのぬくもりに用がある」「忘れないで忘れないで」、そして「ロックンロールイズデッド」へ。アンコールも一気に盛り上がり、ライブは幕を下ろしました。アンコール含めて約2時間45分のステージ。ちょっと長めのステージだったのですが、代表曲盛りだくさんのステージで、最後の最後までテンションがあがりっぱなりにステージとなっていました。

さて、今回はじめてサンボマスターのライブに足を運んだのですが、予想以上に素晴らしいステージでした。なんといって彼らの楽曲の圧倒的な自己肯定感が胸に響きまくるステージ。さらに3ピースという最低限の編成でサポートメンバーなしのステージながらも、市民会館という大ホールにしっかりと音を響かせまくれるロックバンドとしての実力も感じさせるパフォーマンス。特に、この自己肯定感ふあれる彼らのパフォーマンスは、ライブに参加して、グッと胸に来る部分が多く、これでもかというほど多幸感を覚えるパフォーマンスになっていました。

それだけテンションがあがりまくったパフォーマンスだったので、ちょっとだけ残念だったのがアンコール後のMC。いや、おもしろかったんですが、アンコール前からの流れをぶち切ることになってしまって、正直、アンコール後の3曲はアンコール前ほどテンションが高められなかった部分がありました。あういうMCはどちらかというと本編の中盤あたりで披露して、最後は一気に押しまくった方がよかったようにも思います。その点だけはちょっと残念にも感じました。

とはいえ、その点を差し引いても、申し分なく本年度のベストライブ候補・・・どころか、今年、よっぽどのライブがこの後になければ、おそらくこの日のライブが今年のベストアクトでしょう。そう強く感じさせる素晴らしいパフォーマンス。まさに「全員優勝」というキャッチフレーズ通り、みんなに自己肯定感を与えまくる素晴らしいパフォーマンスで幸せな気分になれました。日々、辛いことや悲しいことで落ち込んでしまいそうな時は、サンボマスターのライブに一度足を運ぶべき!本当に素晴らしいパフォーマンスで、彼らの高いライブの評判も納得の内容でした。

Sanbolive2

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2026年3月20日 (金)

現在、もっとも注目されているバンドの一組

Title:kurayamisaka yori ai wo komete
Musician:kurayamisaka

こちらのアルバムも、2025年にベストアルバムとして選出されたアルバムの中で、まだ聴いていなかった作品を後追いで聴いた1枚。今回はネット上で見つけた「ネットの音楽オタクが選んだ2025年のベストアルバム 50→1」という記事の中から。ベスト50の、特に上位にランクインしたアルバムについてはほとんど聴いたことあったのですが、唯一聴いたことがなかったのが3位にランクインした本作。遅ればせながらチェックしてみました。

kurayamisakaというバンドは2021年に結成した5人組バンド。本作が初のフルアルバムとなるそうです。2024年25年のフジロックに出演。本作は今年のCDショップ大賞の「大賞<青>」を受賞したほか、昨年はイギリスのNMEの「2025年注目すべき世界中の新鋭アーティスト100組」にも選出されたそうです。

そんな訳ではじめて今回、彼女たちのアルバムを聴いてみたのですが、聴き始めてまず感じたのは、いやぁ、この音楽、かなりツボだわぁ・・・ということ。あと、同じく感じるのは、こういう音楽好きなアラフィフ世代、多いだろうなぁ・・・ということ。おそらくアラフォーやアラフィフ世代の割合が多そうなネット上での人気投票で上位に来る、というのはすごくよく理解できます。

楽曲的にはひとことで言ってしまうと王道のシューゲイザー路線。ホワイトノイズがアルバム全体を流れており、そのサウンドをバックに流れるのがキュートな女性ボーカルが歌うポップなメロ。また、サウンド的にはマイブラ直系といった感じではあるのですが、オルタナやグランジからの流れも強く感じるヘヴィーでダイナミックなバンドサウンドも特徴的。確かに、こういうタイプの曲がツボにはまりそうなタイプ、特にアラフォー、アラフィフ世代のリスナーは多いだろうなぁ、という印象を受けます。

ホワイトノイズバックにゆっくり聴かせるタイトルチューン「kurayamisaka yori ai wo komete」からスタートし、ちょっと切ないメロとオルタナ系のヘヴィーなバンドサウンドが心地よい「sunday driver」、郷愁感あふれるメロディーラインの「evergreen」は、完全に「和」の雰囲気を感じさせるミディアムチューン。爽快でちょっとメランコリックなギターロック「ハイウェイ」に、力強いドラムのリズムでダイナミックに聴かせる「jitensha」など、魅力的な楽曲が続き、ラストでアルバムタイトルをつぶやくのはちょっとあざとさを感じさせるものの、きれいな締めくくりに感じます。

ただ一方でもろ手を挙げて絶賛するには正直ちょっと躊躇する部分もあります。それは彼女たちの音楽に「どこかで聴いたような・・・」という印象を受けるのが多い点でした。楽曲自体、前述の通りにマイブラ直系で、90年代のオルタナやグランジの影響をダイレクトに受けています。そういうバンドは今でも多いのですが、それに加えて彼女たちの場合は、「これに似ている」という具体的な名前があがってしまう点が少なくありませんでした。

例えば特に気になったのが「modify Youth」で、男性ボーカルと女性ボーカルが交互に入るスタイルや、ちょっと気だるげな男性ボーカルの歌い方にしても、完全に90年代に一世を風靡したロックバンド、スーパーカーのスタイル。「sekisei inko」のオープニングのギターなんて、まんまoasisで笑ってしまいました。メロディーラインをまるごとパクった、みたいな露骨なものではないので、「あらあら」と笑ってしまう程度ではあるのですが、そんな感じで、どこか90年代のロックの切り貼り的な部分も目立ち、そこが「新世代のロックバンドだ!」ともろ手をあげて絶賛するには躊躇してしまう理由だったりします(ただ、これだけ露骨にパクっておいて、メンバーが影響を受けたミュージシャンとしてスパカもoasisも上げていない点は、ちょっとずるいようにも感じました)。

そんな気になる点は多いバンドなのですが、一方で、シューゲイザーをはじめ90年代オルタナ系ロックを通ってきた世代にとってはこの魅力には抗いがたいものがあるのは事実。やはり「評価」という点では「自分の好み」という点を加味して5つをつけざるを得ない感じも・・・。ワンマンライブも現時点ですべてソールドアウトと人気上昇中ということで、今後、さらに注目を集めそう。今後の活躍にも期待したいバンドです。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

Two for the show ~すうぉ~む!!ツアー 2025~/竹原ピストル

昨年3月から7月に行われた全国弾き語りツアー「すうぉ~む!!」から、ベストアクト17曲を収録したライブアルバム。基本的にギター1本で力強く歌いパフォーマンスが特徴的。ある意味、これでもかというほど「暑苦しい」歌詞と歌と、そして力強いギターの音色が、無理やり耳に入り込んでくるようなパフォーマンス。いつも通りの竹原ピストルといった感じではあるのですが・・・オリジナルアルバムよりも、彼の本質な部分がより伝わってくるようなライブアルバムです。

評価:★★★★

竹原ピストル 過去の作品
PEACE OUT
GOOD LUCK TRACK
It's my Life
STILL GOING ON
悄気る街、⾆打ちのように歌がある。
One for the show
すうぉ~む!!

HAYABUSA JETⅡ/佐野元春&THE COYOTE BAND

佐野元春の過去の楽曲を再構築してセルフカバーしたアルバムの第2弾。「誰かが君のドアを叩いている」のような代表曲をカバーしているのですが、「イノセント」を「君を想えば」のように改題したり、さらに「Happy Man」のセルフカバー「吠える」では歌詞も書き換えるなど、かなり大胆な再構築が行われています。サウンド的にも低音を押し出したカバーとなっており、グッと「今風」な内容に仕上げており、若い世代でも「今のロック」として違和感なく楽しめる内容に。前作「HAYABUSA JET」同様、いまなお前に進み続ける佐野元春の挑戦心を感じさせるアルバムになっています。

評価:★★★★★

佐野元春 過去の作品
ベリー・ベスト・オブ・佐野元春 ソウルボーイへの伝言
月と専制君主
ZOOEY
BLOOD MOON
MANIJU
自由の岸辺(佐野元春&THE HOBO KING BAND)
或る秋の日
MOTOHARU SANO GREATEST SONGS COLLECTION 1980-2004
THE ESSENTIAL TRACKS MOTOHARU SANO & THE COYOTE BAND 2005 - 2020(佐野元春&THE COYOTE BAND)
ENTERTAINMENT!(佐野元春&THE COYOTE BAND)
今、何処(佐野元春&THE COYOTE BAND)
2022 LIVE AT SENDAI,FUKUOKA,OSAKA(佐野元春&THE COYOTE BAND)
「今、何処」東京国際フォーラム 2023 (LIVE)(佐野元春&THE COYOTE BAND)
HAYABUSA JET Ⅰ(佐野元春&THE COYOTE BAND)
The Circle 30th Anniversary Edition

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2026年3月19日 (木)

3週連続の1位獲得

今週のHot Albums

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

これで3週連続の1位となりました。

今週もHANAのデビューアルバム「HANA」が、これで3週連続で1位獲得。CD販売数は3位から、ダウンロード数は3位から、それぞれ8位ににダウンしましたが、ストリーミング数は3週連続の1位となっています。

2位は旧ジャニーズ系アイドルグループWEST.「唯一無二」がランクイン。CD販売数1位。オリコン週間売上ランキングでは初動売上22万4千枚で1位初登場。前作「A.H.O. -Audio Hang Out-」の初動18万3千枚(1位)からアップ。

3位初登場はスターダストプロモーション所属の男性アイドルグループ原因は自分にある。「文藝解体新書」がランクイン。4曲入りのEP盤。CD販売数2位、ダウンロード数20位。オリコンでは初動売上13万4千枚で2位初登場。前作「核心触発イノベーション」の初動6万5千枚(3位)からアップ。

今週は4位以下では初登場盤はありませんでした。一方、ロングヒット盤は、デッドヒートを繰り広げる因縁の対決、Number_i「No.Ⅱ」は先週から変わらず5位をキープ。一方、King&Prince「STARRING」は6位から7位にダウン。ベスト10ヒットはそれぞれ25週連続、12週連続に伸ばしています。

他には、8位に韓国の事務所XGALX所属の女性アイドルグループXG「THE CORE-核」がランクイン。ベスト10ヒットを連続8週に伸ばしています。


今週のHeatseekers Songs

https://www.billboard-japan.com/charts/detail?a=heat_seekers

今週はseiza「エウレカブルー」が初登場で1位獲得。特にラジオオンエア数で1位を獲得し、Heatseekers1位の要因となっています。seizaはもともとボカロPとして活動していた男性シンガーソングライター。いままでシングル1枚、配信シングル4曲をリリースしています。なお、Hot100では49位にランクインしています。


今週のニコニコVOCALOID SONGS

https://www.billboard-japan.com/charts/detail?a=niconico

ボカロチャート1位はkz×TAKU INOUE「クロスロード」が初登場で1位獲得。livetuneとして、ボカロ黎明期から高い人気を誇ったボカロPと、様々なミュージシャンへの楽曲提供、アレンジを行ってきたTAKU INOUEのコラボ。ポケモンと初音ミクが音楽でコラボするプロジェクト、「ポケモン feat. 初音ミク Project VOLTAGE High↑」からうまれた曲だそうです。2位は先週まで1位を獲得してきた山本「デロスサントス」がワンランクダウン。3位はSohbana「個々々々々々人」が先週と同順位をキープしています。

今週のHot Albums&Heatseekers&ボカロチャートは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2026年3月18日 (水)

話題となったカバー曲が上位に

今週のHot100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

今週の話題曲と言ったら、なんといっても2位に初登場した稲葉浩志「タッチ」でしょう。大きな話題を呼んだ2026ワールドベースボールクラシックNetflix大会応援ソング。言わずとしれば80年代に大ヒットした同タイトルのアニメの主題歌のカバーで、今でも人気曲として歌いつがれている曲。この意外な組み合わせもあり、大きな話題に。ダウンロード数1位、ストリーミング数10位、ラジオオンエア数2位、動画再生回数3位を記録し、総合順位でも2位を記録しています。

ただ、カバーとしては「あの『タッチ』を稲葉浩志が歌ったら」というイメージ通りのカバーといった感じ。もともとアニメ「タッチ」は、まだスポ根モノがメインだったスポーツアニメの中で、恋愛を中心に押し出して、スポ根という当時の王道を避けたという点で大きなインパクトがあり、主題歌も、岩崎良美のボーカルもそれに沿った、比較的熱量の薄い歌い方だったのですが、その文脈で考慮すると、稲葉浩志らしい、熱量を表に押し出したカバーというのは、原曲の意図からはちょっと外れるかもしれません。ただ、これはこれで、実に稲葉浩志らしい、インパクトのあるカバーだったと思います。

さて、1位に初登場したのは秋元康系女性アイドルグループ。櫻坂46「The growing up train」がランクイン。CD販売数1位、ダウンロード数9位、ストリーミング数18位。オリコン週間シングルランキングでは初動売上51万7千枚で1位初登場。前作「Unhappy birthday構文」の初動52万5千枚(1位)からダウン。

3位は嵐「Five」が先週の1位から2ランクダウン。ただ、ストリーミング数及び動画再生回数は先週から引き続き1位をキープしており、まだまだ強さを感じます。

続いて4位以下ですが、今週の初登場は1位2位の2曲のみ。ただ、新譜が少なかった影響か、ベスト10返り咲きも1曲。10位にHANA「ROSE」が先週の11位からランクアップし、2週ぶりのベスト10返り咲き。ベスト10ヒットを通算38週に伸ばしています。また「Blue Jeans」も先週の10位から9位にアップ。こちらは通算32週目のベスト10ヒットに。ただし、先週、ベスト10に初登場した「ALL IN」は12位にダウン。今週も2曲同時ランクインとなっています。

ほかのロングヒット曲では、まずM!LK「好きすぎて滅!」は5位から6位にダウン。5週連続キープした5位からはついにワンランクダウン。ただしストリーミング数は5位から4位にアップしています。これで15週連続のベスト10ヒット。また「爆裂愛してる」も2位から4位にダウンしながらもベスト10をキープしており、今週も2曲同時ランクインとなっています。

米津玄師「IRIS OUT」も今週3位から5位とダウン。ストリーミング数は2位から3位、動画再生回数は先週と変わらず6位。これで26週連続のベスト10ヒットとなりましたが、さすがにそろそろダウントレンドか?

Mrs.GREEN APPLE「lulu.」は先週から同順位の7位をキープ。これで9週連続のベスト10ヒットに。ただし、ストリーミング数は4位から5位にダウン。こちらもゆるやかなダウントレンドか。

一方、King Gnu「AIZO」はここに来て9位から8位にアップ。ストリーミング数が8位から7位にアップ。ここに来てしぶとい強さを見せました。これでベスト10ヒットは連続10週となります。

今週のHot100は以上。明日はHot Albums&Heatseekers&ボカロチャート!

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2026年3月17日 (火)

バリエーションあるオーディション的アルバム

Title:Black And Blue Super Deluxe Edition
Musician:The Rolling Stones

今回紹介するアルバムはローリングストーンズが1976年に発表したアルバム「Black And Blue」のSuper Deluxe Editionとなります。本作ではアルバム4枚+Blu-rayのついたSuper Deluxe Editionに、CD2枚組のデラックス・エディション、またアルバム本編のみも2025年Mixとしてリリースされています。

さて、1976年にリリースされたこのアルバムはミック・テイラーの脱退を受けて作成されたアルバムで、いわゆる次期ギタリストのオーディションも兼ねて作成された作品だそうで、曲毎に様々なギタリストが参加しています。「Hot Stuff」「Memory Motel」はCanned Heatのハーヴェイ・マンデルが、「Hand of Fate」「Fool To Cry」にはセッションギタリストのウェイン・パーキンズが参加。その他の曲にはロン・ウッドが参加していますが、結果、ロン・ウッドがストーンズの正式メンバーの地位を確保したのがご存知の通りです。

また、もうひとつ本作の大きな特徴として、いままでのストーンズの曲に比べて、非常にバリエーションの富んだ作風であるという点もあげられます。「Hot Stuff」のディスコ風のナンバーからスタートし、「Cherry Oh Baby」ではレゲエ風、「Melody」ではジャジーなナンバーに挑戦しています。

このように様々なギタリストが参加し、楽曲のバリエーションも多いことから、当時としては散漫な印象を与えてしまって、あまり評価の高い作品ではなかったようです。確かに現代においてもストーンズの名盤としてあげられるのは70年代前半のアルバムまでで、本作が代表作としてピックアップされるのはあまり多くありません。

また、確かに、今聴いてもアルバム全体として若干散漫なイメージは否めません。アルバムの長さも8曲入りと比較的コンパクトであり、ちょっとボリューム感としての物足りなさも否めません。ただ、ギタリストを決めるためのオーディション的な録音でありながら、自由度に富んだ作風からは、どこか肩の力が抜けたようなものも感じられ、アルバム全体としていい意味での「軽さ」も感じます。レゲエやらディスコやらバラエティー富んだ展開も、今となってみればやはり「ストーンズらしさ」の範囲内であり、アルバムのちょうどよいインパクトにもなっています。確かに、ストーンズの代表作、としてピックアップするには物足りなさも感じますが、これはこれで間違いなく傑作と言える作品だと言えるでしょう。

さらに今回のSuper Deluxe Editionではこのアルバム作成にあたってのアウトテイク集がついてきています。この中には「Rotterdam Jam」「Freeway Jam」として、なんとかのジェフ・ベックとのジャムセッションも収録。かなり貴重な音源を聴くことが出来ます。また、Disc3、4として1976年に行われたロンドン・アールズコートでのライブの模様をフル収録。こちらもこの時期の、まだまだ勢いのあるストーンズのライブパフォーマンスを堪能できます。一方、Blu-rayには同じ時期にパリのレザバトワールで行われた、こちらも貴重なライブ映像が収録されているのですが・・・こちらはフルボリュームのCDに比べると、映像的には貴重ながらも、長さ的にはちょっと短めだったかも。

そんな訳でいろいろと聴きどころの多いアルバム。4枚組+Blu-rayというSuper Deluxe Editionだとちょっとボリューミーすぎるかも、という方はCD2枚組のデラックス・エディションでもよいかも。ストーンズのアルバムを後追いで聴いた場合にはちょっと後回しになりそうなアルバムですが、この作品ももちろん聴きのがし厳禁の傑作でした。

評価:★★★★★

The Rolling Stones 過去の作品
Shine a Light: Original Soundtrack
Some Girls LIVE IN TEXAS '78
CHECKERBOAD LOUNGE LIVE CHICAGO 1981(邦題 ライヴ・アット・ザ・チェッカーボード・ラウンジ・シカゴ1981)
(MUDDY WATERS&THE ROLLING STONES
GRRR!
HYDE PARK LIVE
Sweet Summer Sun-Hyde Park Live
Sticky Fingers Live
Blue&Lonesome
Ladies & Gentlemen
ON AIR
Voodoo Lounge Uncut
Honk
The Rolling Stones Rock and Roll Circus
A Little Bang (Bigger Bang Tour EP)
GRRR Live!
Licked Live In NYC
Hackney Diamonds
Hackney Diamonds(Live Edition)
Live At The Wiltern
Welcome To Shepherds Bush


ほかに聴いたアルバム

I Tried To Tell You/KP SKYWALKA

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アメリカのラッパーKP SKYWALKAのフルアルバム。20曲入りというボリュームながらもアルバムの長さは50分という短さで、ループするトラックでゆっくりと哀愁感たっぷりに聴かせる楽曲がテンポよく展開していく楽曲。独特のフロウとリズムが注目をされており、知名度的にはまだまだといった感じのようですが、知る人ぞ知る的なラッパーであり、高い評価を受けているようです。全体的に似たようなタイプの楽曲が多く、個人的にはそこまではまれませんでしたが、興味のある方はチェックしておきたい注目のラッパーでしょう。

評価:★★★★

Vendrán Suaves Lluvias/Silvana Estrada

Vendransuaveslluvias

こちらは2025年ベストアルバムを後追いで聴いた作品。「Music Magazine」誌「ラテン」部門で1位を獲得した作品。2022年のラテン・グラミー賞で最優秀新人賞を獲得したメキシコの女性シンガーソングライターによる2枚目のアルバム。彼女の清涼感あふれる歌声を加えて美しく聴かせてくれます。基本的にはフォーキーな作品ながらも、楽曲によってはラテン風なリズムも加わったりして。また、本作で静かに美しい音色を聴かせる楽器は、ベネズエラの小型弦楽器の「クアトロ」という楽器だそうで、これをつま弾きながらも、ジャズの影響も受けた伸びやかな歌声を聴かせてくれます。幅広いリスナー層が楽しめそうなアルバムです。

評価:★★★★★

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2026年3月16日 (月)

全英語詞ながら際立つ「日本らしさ」

Title:Prema
Musician:藤井風

今、おそらく最も勢いのあるミュージシャンの一人、藤井風のニューアルバムがリリースされました。今回のアルバムは全英語詞というのが大きな特徴。そのため、「grace」「花」といった、日本語詞の先行シングルは初回盤のみについてくる「Pre:Prema」に収録されています。また、全編でプロデューサーを手掛けるのが250という、NewJeansやNCT127などを手掛けるプロデューサー。また、本作はアメリカのリパブリック・レコードと契約後、初となるアルバムとなっており、明らかに海外進出を意識したアルバムとなっています。

とはいえ楽曲は全体的に藤井風らしい作品が並んでおり、海外進出を意識した英語詞のアルバム・・・とはいえ大きく変化している訳ではありません。90年代や80年代あたりのR&B、ファンク、あるいはジャズを意識した曲作りで、ちょっと懐かしさを彷彿とさせつつ、今風のサウンドにしっかりアップデートしている彼らしいポップソングを聴かせてくれています。

1曲目を飾る「Casket Girl」はまさに90年代のR&Bを彷彿とさせる軽快なポップチューン。先行シングルともなっており、タイトル通り、渋谷のハチ公をモチーフとした「Hachikō」は、ちょっと懐かしいディスコを彷彿とさせながらも、軽快なエレクトロトラックは一方で、プロデューサー250の音楽性を反映させたような、K-POPを彷彿とさせるような今風のダンスチューンにも聴こえます。

先行シングルともなっている「Love Like This」は切なさを感じるメロディーラインが胸をうつミディアムポップチューン。なんといっても藤井風のメロディーセンスが光る楽曲に仕上がっています。同じくアルバムのタイトルチューン「Prema」もサビに入るところのメロが非常に心地よさを感じ、こちらも彼のメロディーセンスの良さを感じます。

後半の「You」も80年代的なシンセの音色で懐かしさを感じさせる、シティポップ色の強いようなミディアムチューンの聴かせる楽曲。そしてラストを彩る「Forever Young」も、こちらも80年代的なスペーシーなエレクトロトラックが印象的なナンバー。懐かしさも感じさせるトラックと相まって、明るい雰囲気のポップスとなっており、タイトル通りの希望を感じさせるような締めくくりとなっていました。

このように、藤井風という作品の方向性はいままでと変わらないものの、英語詞とすることによってアルバム全体の統一感を覚える内容に仕上がっていました。前述の通り、初回盤ではBonus Discとして、日本語詞のシングル曲を集めた「Pre:Prema」がついてくるのですが、こちらに関しても、「Prema」と音楽性としては大きく変わらないものの、日本語詞であるがゆえに、確かに全編英語詞のアルバムの中に入っていたら違和感を覚えるだろうなぁ、ということは強く感じました。

ただ一方、ちょっとおもしろいことに、英語詞がゆえに藤井風の「日本人ミュージシャン」であるということが逆に強調されたようにも感じました。英語詞であっても、哀愁を帯びたメロディーラインは健在。プロデューサーとして250を起用したことによって、現在のサウンドにアップデートしたことにより、むしろ、例えば250が手掛けたK-POP勢とは明らかに異なる方向性も感じました。また、全体的に80年代90年代という色合いを強く感じることにより、同じ「今風」のポップに仕上げても、同じく2025年を代表する名盤であった星野源の「Gen」ともまた異なる方向性を感じます。日本人の琴線に触れるようなメロディーや、あるいは耳なじみやすいサウンドを取り入れることによって、英語詞でありながらも、日本のミュージシャン、藤井風という姿がより際立ったようにも感じました。

もちろんこれは決してこのアルバムの評価をマイナスとするものではありません。むしろ海外進出にあたっては、こういう「日本人」的な部分がより受ける可能性も高いですし、また、先駆的な試みとは相反するような、メランコリックな耳なじみやすいメロやサウンドが、藤井風の人気の大きな要素とも言えるでしょう。今回も申し分ない傑作として仕上がっていた彼のアルバム。海外進出を含めて、彼が今後どのように展開していくのか、とても楽しみです。

評価:★★★★★

藤井風 過去の作品
HELP EVER HURT NEVER
HELP EVER HURT COVER
Kirari Remixes(Asia Edition)
LOVE ALL SERVE ALL
Fujii Kaze Stadium Live “Feelin' Good”


ほかに聴いたアルバム

Like This/Bank.Somsaart

Likethis

今回も2025年度年間ベストアルバムを後追いで聴いた作品。「Music Magazine誌」のラップ/ヒップホップ(日本)部門で1位を獲得したアルバムで、Bank.Somsaartはタイ出身の母親と日本人の父親によるハーフで、横浜出身のラッパー。本作が2枚目のアルバムとなります。トラックは全編、YamieZimmerが担当しており、比較的シンプルなサウンドやビートをクールに聴かせるスタイルが特徴的。ここに彼の、英語と日本語を織り交ぜつつ、比較的感情を抑え気味で淡々とつづるようなラップがのります。全体的にどこか醒めた雰囲気が独特の雰囲気を醸し出しています。今後に期待の新進気鋭のラッパーです。

評価:★★★★

TM NETWORK 40th FANKS intelligence Days~DEVOTION~-LIVE-/TM NETWORK

昨年10月から、7ヶ月連続でサブスク解禁されているTM NETWORKのライブアルバム第3弾。本作は、40周年プロジェクトの第1シリーズであり、2023年にリリースされたアルバム「DEVOTION」を引っ提げてのライブツアー。2023年11月30日に、東京国際フォーラムホールAで行われたライブの模様を収録しています。「DEVOTION」のツアーということもあって、基本的に「DEVOTION」からの曲が多め。原曲に比べて、よりダイナミズムが増したような感も?ただ、「DEVOTION」からの楽曲を入れたため、最近の曲が比較的多め。7ヶ月連続で様々なライブの音源がリリースされていますので、コアなファンから聴き比べも楽しい1枚。

評価:★★★★

TM NETWORK 過去の作品
SPEEDWAY
TM NETWORK THE SINGLES 1
TM NETWORK THE SINGLES 2
TM NETWORK ORIGINAL SINGLES 1984-1999
DRESS2
QUIT30
GET WILD SONG MAFIA
GET WILD 30th Anniversary Collection - avex Edition
Gift from Fanks T
Gift from Fanks M
LIVE HISTORIA T 〜TM NETWORK Live Sound Collection 1984-2015〜
LIVE HISTORIA M〜TM NETWORK Live Sound Collection 1984-2015〜
DEVOTION
40+ ~Thanks to CITY HUNTER~
How Do You Crash It?
TM NETWORK TOUR 2022"FANKS intelligence Days"at PIA ARENA MM-LIVE-

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2026年3月15日 (日)

今、最も「売れている」女性シンガーの1人

Title:Man's Best Friend
Musician:Sabrina Carpenter

2025年、特に海外の音楽シーンにおいて間違いなく最も話題となったミュージシャンのひとりが彼女、サブリナ・カーペンターでしょう。本作にも収録されているシングル「Manchild」がアメリカのビルボードHot100で1位を獲得するなどの大ヒットを記録。その後リリースされた本作も、アメリカ、イギリスをはじめ各国で大ヒットを記録し、まさに2025年を代表するヒットアルバムの1枚となりました。

そんな訳で、いまさらながらその2025年を代表するアルバムを紹介する訳ですが、こちらも2025年にベストアルバムとして各種メディアで紹介されていたアルバムを後追いで聴いた1枚で、「rockin'on」誌の年間ベストアルバムで7位にランクインした1枚。売上面では文句なく、他のメディアの評価も悪くはないのですが、年間ベストクラスとして評価しているメディアはあまり多くないようですが・・・。良くも悪くも「売れているアルバム」を高く評価しがちな、ロッキンオンらしい評価とも言えるのですが。

さて、そんなアルバムをいまさらながら聴いてみたわけですが、聴いてみた感想としては「確かに、このアルバムは売れるだろうな」という印象でした。とにかくフックの効いたメロディーラインのインパクトあるポップソングが続きます。アルバム冒頭を飾るのは前述の通り大ヒットした「Manchild」。未熟な恋人("manchild"=精神的に子供な男性)を皮肉ったこの曲は、カントリー風の軽快で爽快なポップチューン。一度聴いたら忘れられない軽快なメロディーも印象的です。

個人的に印象に残ったのが続く「Tears」で、80年代的な要素を感じるディスコチューン。ちょっと懐かしさを感じられるメロディーラインが耳に残りますし、メロウでセクシーさを感じるサブリナのボーカルも印象的な楽曲になっています。これに続く「My Man on Willpower」もちょっと懐かしさを感じさせる80年代や90年代のテイストを感じさせる爽快なポップチューンと、アルバム冒頭からキラーチューンとも言えそうなポップチューンが並びます。

中盤は一転、ミディアムチューンが並び、特に中盤の「We Almost Broke Up Again Last Night」は最初のフォーキーな出だしが印象的。ちょっと気だるさを感じるボーカルには彼女のボーカリストとしての幅広さを感じます。その後は、ちょっとファンク的な要素を入れた「When Did You Get Hot?」や軽快さも感じるカントリー風のポップチューン「Go Go Juice」など、メランコリックさを感じさせる曲も並びます。

そして最後も再び80年代のディスコチューン「House Tour」に、ラストを飾るにふさわしいタイトルの「Goodbye」へ。こちらも爽やかながらも、ちょっと切なさを感じるメロディーラインが耳に残ります。最後の最後まで、強いフックのあるメロディーラインのあるポップなキラーチューンが並ぶアルバムとなっています。

正直言って、80年代や90年代的な要素を感じさせるポップチューンは音楽的には目新しいものではありません。実際、このアルバムの評価でも、ポップソングとして、決して奥は深くない点がマイナス評価として上がっているそうです。ただ、本作はなによりもインパクトのあるポップなメロを素直に楽しめる内容となっていますし、マイナス評価が気にならないレベルの勢いと、メロディーの良さを持っています。だからこそ、大ヒットを記録したのでしょう。日本でももっと売れてもいいアルバムだと思うのですが・・・。遅ればせながら、彼女がなぜ、あれだけ今売れているのかがわかる1枚でした。

余談。ちなみにラストの「Goodbye」という曲を聴いていると、いきなり「サヨナラ」という日本語が飛び込んできます。どんな使われ方をしているなかなぁ・・・と調べたら、こんな歌詞になっていて

"Well,sayonara,adiós
You're not billingau
But you should know"
(和訳 じゃあ、サヨナラ、アディオス
あなたはバイリンガルじゃないけど
このくらいはわかるよね)
From "Goodbye" Written by Amy Allen/Jack Antonoff/Sabrina Carpenter

要するに、「サヨナラ」って言葉って、アメリカにおいても「日本語で"Goodbye"の意味だ」ということは、一般常識として知られている、ということなんですね。勉強になりました。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

choke enough/Oklou

本作も2025年ベストアルバムを後追いで聴いた作品。各種メディアのベスト盤をまとめたサイトAOTY2025で9位にランクインしたアルバム。フランスのミュージシャン、Oklouのデビューフルアルバム。シンプルなエレクトロポップの作品。比較的静かでシンプルなエレクトロサウンドが流れる作品なのですが、中世的な対位法を用いるなど、クラシック的な音楽理論も背景にある作品だそうです。そう言われて詳しくはわかっていないのですが・・・ただ、クラブ志向の凝ったサウンドが用いられつつも、そこに流れるメロディーラインは至ってポップで、彼女のボーカルもキュートで心地よく、素直なポップミュージックとしてしっかりと機能している作品となっています。まだデビューしたての新人ミュージシャンですが、これからの活躍が楽しみです。

評価:★★★★★

Around You Is A Forest/Thomas Morgan

Aroundyouisaforest

こちらも2025年ベストアルバムを後追いで聴いた作品。こちらは「MUSIC MAGAZINE」誌「ジャズ」部門で1位を獲得したアルバム。アメリカのジャズベーシストで作曲家のThomas Morganによる、初のリーダーアルバムになるそうです。このアルバムで特徴的なのは、モーガン自身が考案したという、パソコン上の仮想楽器「WOODS」を用いているという点。西アフリカのリュート、アジアのツィター、チェンバロ、マリンバの特性を併せ持った楽器だそうです。ただ、正直、聴いていてどの音が「WOODS」なのかよくわからないのですが・・・アルバムでメインになっているアコギのような音色の楽器がそれでしょうか?基本的にシンプルでアコースティックテイストの音がメインとなっているのですが、楽曲的には実験テイストの強い作品に。かなりアバンギャルドなサウンドを聴かせる曲もあったりして、独特のサウンドを聴かせてくれています。ちょっと不思議な雰囲気の音の空間は、まさにタイトル通り、幻想的な「森」を彷彿させるような感じも。独自の音世界が楽しめる作品です。

評価:★★★★★

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2026年3月14日 (土)

エチオ・ジャズの魅力が伝わる

Title:Tension
Musician:Mulatu Astatke&Hoodna Orchestra

今回も、2025年の各種メディアでベストアルバムで取り上げられた作品を後追いで聴いた作品。「Music Magazine」誌のワールド・ミュージックで7位にランクインしていたアルバムとなります。本作はエチオピア独自のジャズであるエチオ・ジャズの創始者であるムラトゥ・アスタトケと、イスラエル・テルアビブを拠点に活動するHoodna Orchestraのコラボによる作品となっています。

エチオ・ジャズについては聴いたことある方も少なくないかと思います。彼、ムラトゥ・アスタトケが70年代に確立した作風で、エチオピアの伝統音楽と、ジャズやラテンミュージックを融合させた独特の音楽性が特徴的。特に90年代以降のレア・グルーヴ・ムーブメントの高まりによって再評価され、広く世界中で聴かれることとなったようです。

そんな彼の奏でるエチオ・ジャズの大きな特徴として、独特の旋律があるのですが、これがどこか日本の歌謡曲やさらに演歌すら彷彿とさせるような、日本人にとってノスタルジックあふれる懐かしさを感じるもの。そこにヴィヴラフォンやローズピアノの音色が乗り、ファンキーなリズムでグルーヴィーなサウンドを繰り広げるのた特徴的。今回のアルバム、1曲目のタイトルチューン「Tension」からまさにそれで、ぶっといサックスのフレーズにローズピアノの音色が乗る独特のグルーヴ感をかもしつつ、メロディーラインはどこか懐かしい、レトロで哀愁感たっぷりのメロが大きな魅力となっています。

続く「Major」も、テンポよいラテン風のサウンドやリズムが特徴的。こちらも、途中、ローズピアノの音色でグルーヴを醸し出しています。さらにそこからの「Hatula」「Yashan」「Delilah」はいずれもムード感たっぷりのメロディーラインが魅力的。昭和歌謡どころか、戦前の歌謡曲を彷彿とさせるようなレトロなサウンドもたまりません。個人的には小島麻由美にボーカルとして歌を歌わせたらピッタリマッチするかも・・・。バックで鳴り響くパーカッションのリズムも独特なグルーヴ感を生み出しています。

ラストを飾る「Dung Gate」はこのアルバムで一番「アフリカ的」と言わるかもしれません。特に前半はトライバルなパーカッションが楽曲のメインに。途中から思いっきりブロウするサックスが、非常に怪しげながらもジャズの雰囲気を醸し出しつつ、アルバムのラストは再びトライバルなパーカッションで締めくくり。最後はある意味、アフリカ的に幕を下ろす構成となっていました。

アルバムとしては全6曲、31分という比較的コンパクトな内容。途中「Yashan」が7分に及びますが、他の曲は4分から5分程度の比較的コンパクトにまとまっており、いい意味で聴きやすさを感じます。エチオ・ジャズと言われる音楽をそれほど聴いている訳ではないのですが、エチオ・ジャズのエッセンスがしっかりつまっていると感じられるアルバム。確かに年間ベストとして納得感のある傑作だったと思います。ちなみにムラトゥは現在82歳だそうで、まだまだお元気なのは驚かされます。このアルバムを聴く限りだと、音楽家としての意欲に衰えは感じられません。まだまだ末永く、お元気で!

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

Let God Sort Em Out/Clipse

Clipse

こちらも各種メディアで2025年のベストアルバムとして選ばれていたアルバムを後追いで聴いた1枚。「Music Magazine」誌「ラップ/ヒップホップ」部門で1位を獲得したほか、各種メディアでベスト盤を集計したサイトAOTY2025でも6位にランクインしています。Clipseはノー・マリスとプシャ・Tの兄弟からなるラップデゥオ。2002年のアルバム「Lord Willin'」が全米で100万枚を売る大ヒットを記録したものの、2010年に活動を休止。ただし、2019年には活動を再開。本作は活動再開後初、実に約16年ぶりとなるニューアルバムとなります。

本作は全編、かのファレル・ウィリアムズプロデュースによる作品。全体的にバラエティーに富んだトラックに、リズミカルなラップが特徴的。「Ace Trumpets」では和風なサウンドが登場したり、「Chains&Whips」では太いエレクトロビートが登場したり、比較的バラエティーが豊かで、なおかつしっかりとポップに聴かせる内容になっている点は、ファレルの実力といった感じでしょうか。サウンド的には決して「今風」という感じではないのですが、比較的幅広いリスナー層が楽しめそうなアルバムでした。

評価:★★★★

Canções Que Fiz Pra Quem Me Ama/Paulo Flores

Pauloflores

こちらも同様、2025年ベストアルバムを後追いで聴いた1枚。こちらは同じ「Music Magazine」誌の「ワールドミュージック」部門で4位を獲得した作品。サンバのルーツとも言われているアンゴラのセンバの巨匠によるアルバム。楽曲は、いかにもサンバのルーツらしい、ラテン風のリズムをベースに、アフリカらしいトライバルなリズムが加わった感じ。さらに本作ではジャズやブラジル音楽の要素も感じることが出来る幅広い音楽性も取り入れています。本作のタイトルは「私を愛してくれる人たちのために作った歌」というタイトルだそうで、長年のファンや支えてくれた人々への感謝を込めた内容になっています。そのため、全体的に明るい雰囲気の曲が多く、ポジティブな作風となっています。素直にセンバのリズムが楽しめる作品でした。

評価:★★★★★

Paulo Flores 過去の作品
Independencia

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2026年3月13日 (金)

世界には魅力的な音楽があふれている!

Title:RESPECT! THE WORLD〜30th Anniversary of Respect Record〜

ソニーミュージックでネーネーズの制作や、聖飢魔Ⅱ、スチャダラパーなど数多くのミュージシャンの宣伝を担当していた高橋研一が独立し設立。ソウル・フラワー・モノノケ・サミットをはじめとして、沖縄の伝統音楽やヨーロッパのトラッドなど多くの作品を世に送り出した「リスペクトレコード」。2025年は、その設立30周年ということで、リスペクトレコードでリリースされた曲の数々を収録したオムニバスアルバムがリリースされました。約半分が沖縄の伝統音楽、残り半分が主にヨーロッパのトラッドという、洋邦折衷の、リスペクトレコードらしい内容となっています。

私自身、ソウル・フラワー・モノノケ・サミットのアルバムは聴いていますが、リスペクトレコードについて基本的にはいままであまり認識はしておらず、意識して聴いたのは今回がはじめて。あらためてリスペクトレコードのカタログを見たのですが、沖縄音楽以外はフレンチやヨーロッパのトラッドなどが多く、個人的にここらへんのジャンルはいままであまり幅広くは聴いてこなかったため、正直、私にとってはちょっとなじみは薄いかも、という印象を受けました。

さて、今回のアルバムは全20曲入り。うち半数の10曲は沖縄音楽、残り10曲は海外の音源という構成となっています。まず魅力的なのは、この沖縄音楽。一言で沖縄音楽と言っても、様々なジャンル、地域の曲が収録されています。「ばんがむり」は宮古島の子守唄。三線とアコギの共演で、郷愁感あふれる歌が魅力的。「べーべーぬ草かいが」も沖縄のわらべうただそうですが、沖縄の音楽家、平安隆とスティールギターの第一人者、ボブ・ブロッズマンという組み合わせもユニーク。ボブの奏でるスティールギターのブルージーな音色が沖縄の音楽にピッタリとマッチしています。

一方、ラスト前の「アッチャメー小」はライブ音源。軽快なリズムに手拍子も加わり、沖縄音楽の楽しさが伝わってくる楽曲。ラストを締めくくるのはハシケンの「いつも、ありがとう」。こちらは沖縄音楽というよりもフォーキーな楽曲ですが、音楽への感謝を伝える楽曲は、まさにラストにふさわしい選曲となっています。

もちろん、その間に挟まれる海外の音源も魅力的。ジャズバイオリニスト、マティルド・フッブレールによる軽快なバイオリンのインストチューン「Japan Feeling」でウキウキしながら音源を聴き進め、ブラジル音楽とアフリカ北西部に位置する島国、カーボ・ヴェルデの音楽を融合させたナンシー・ヴィエイラ&フレッヂ・マルチンスによる「Proeza(邦題 愛すること)」も、郷愁感あふれるアコギと2人のデゥオが胸に響きます。

ハワイ出身のピアニスト、レネ・パウロの「Waikiki」も、美しいピアノの音色と、ボーカルで参加しているサンディーの歌声に耳を惹かれるナンバー。タイトル通り、ワイキキの静かな夕暮れの波の音をバックにしっとりと聴きたいナンバー。フランスのアコーディオン界の巨匠、ダニエル・コランの「La Pontissalienne」も、フランスらしい、ちょっと洒落た感じのアコーディオンの音色が魅力的で耳を惹きます。

基本的に海外の音源については、ヨーロッパトラッドやフレンチポップ、ブラジル音楽やハワイアンなどの要素を取り込んだ曲が多いのですが、ここに沖縄音楽の楽曲と並べても、あまり違和感なく聴けてしまうのがユニークなところ。場所や人が変わっても、民衆の間で流れる音楽については、どこか共通項がある、ということなのでしょうか。それとも、カーボ・ヴェルデやハワイなどといった、南国の海のある地域の音楽も多く、それが沖縄と共通する部分がある、ということもあるのかもしれません。

沖縄、日本、そして世界の音楽について、非常に魅力的な楽曲が収録されているオムニバスアルバム。沖縄音楽の奥深さ、そして世界には様々な魅力的な音楽があふれているんだな、ということをあらためて実感できたアルバムでした。いままであまりリスペクトレコードは積極的に意識して聴いてこなかったのですが、今後はいろいろと聴いていこうかなぁ。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

ハンバート入門/ハンバート ハンバート

昨年、「笑ったり転んだり」がNHK連続テレビ小説「ばけばけ」主題歌に起用され、なんと年末の紅白初出場を果たしたハンバート ハンバート。一気に知名度をあげた彼女たちですが、本作はそんな「ばけばけ」や紅白ではじめてハンバートを知った人たちに向けてリリースされた、タイトル通りの入門用のベスト盤。と、偉そうなことを書きながらも、実は私も彼女たちをこうやって音源でまとまって聴くのははじめて。何気にデビューから20年以上を経たベテランユニットですし、またもちろん彼女たちの名前は以前から知っていたのですが、いままでアルバム単位で聴く機会はありませんでした。

楽曲は、「笑ったり転んだり」と同様、フォークやカントリーの暖かいポップソングがメイン。ところどころロックの要素も加わって、意外とダイナミックな曲もあったりするのですが、全体的には非常に暖かいポップチューンが並びます。ただ、「国語」のように歌詞にひとひねりあるユニークなポップスもあったりして、一筋縄ではいかない感じもあるのがユニーク。一気に知名度をあげた彼女たちですが、これからの活躍にも期待です。

評価:★★★★★

Blank List/BARBEE BOYS

BARBEE BOYSに関して、先日、ショッキングなニュースが飛び込んできました。ボーカルのKONTAが不慮の事故のため、四肢完全麻痺の状態になってしまったことを公表。ファンに衝撃が走りました。さらに、ドラマーの小沼俊明が脱退。「BARBEE BOYS 4PEACE」として活動を再開したのですが、先日、4人体制での初ライブを行い、KONTAもライブでは元気な姿を見せ、これからの活動への期待を持てる内容となったようです。

そんなBARBEE BOYSは2024年から、デビュー40周年記念プロジェクトとして、過去作のリマスター版をリリースしてきましたが、本作がその締めくくりともいうべきアルバム。メンバー自らが選曲したセレクトアルバムで、40周年に伴うリマスター音源を採用。基本的には40周年記念盤からのセレクトとなっています。代表曲が収録されている一方、2020年のアルバム「MasteBee」から「ぼくらのバックナンバー」「掛んでみせろ」の2025年版も収録。ここらへんは、やはり新生BARBEE BOYSへの決意的なものがあるのでしょうか。これからのBARBEE BOYSがどのような歩みを続けるのか、引き続き見守っていきたいところです。

評価:★★★★★

BARBEE BOYS 過去の作品
Master Bee
1st OPTION
Freebee
3rd.BREAK
LISTEN! BARBEE BOYS 4
JUST TWO OF US(RADIO-K・BARBEE BOYS)
√5デトックス
eeney meeney barbee moe

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2026年3月12日 (木)

見事2週連続の1位!

今週のHot Albums

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

見事、2週連続で1位獲得です。

今週もHANAのデビューアルバム「HANA」が2週連続で1位獲得。CD販売数は6位、ダウンロード数は3位にダウンしましたが、ストリーミング数は先週から続いて1位。今の彼女たちの人気を考えると、今後、かなりのロングヒットになりそうな予感がします。

2位はヨルシカ「二人称」が初登場で獲得。ダウンロード数1位、ストリーミング数2位。アルバム自体は配信限定のアルバムになっていますが、同名の書簡型の小説と一体となったコンセプトアルバムになっているそうです。

3位はスターダストプロモーション所属の女性アイドルグループ超ときめき♡宣伝部「ときめきえがお」が初登場。CD販売数1位。オリコン週間アルバムランキングでは初動売上8万5千枚で同作が1位初登場。前作「ときめきルールブック」の初動5万3千枚(3位)よりアップ。

今週、初登場はこの2作のみで、4位以下の初登場盤はありません。ロングヒット盤は、まずNumber_i「No.Ⅱ」が8位から5位にアップ。これで24週連続のベスト10入り。一方、King&Prince「STARRING」は先週と変わらず6位キープで、11週連続ベスト10ヒットながらも、両者の順位が再度逆転。因縁の2つのグループのデッドヒートが続いています。


今週のHeatseekers Songs

https://www.billboard-japan.com/charts/detail?a=heat_seekers

今週もクレイジーウォウウォ!!「トンツカタンタン」が先週から続き1位を獲得。Hot100でも99位から87位にランクアップしてきています。TikTokの「踊ってみた」動画を中心に注目されている模様。


今週のニコニコVOCALOID SONGS

https://www.billboard-japan.com/charts/detail?a=niconico

ボカロチャートも1位は山本「デロスサントス」が先週に引き続いての1位獲得。こちらも「トンツカタンタン」同様、かなり中毒性の高い曲です。以下、2位は東京真中「ブレインロット」、3位はSohbana「個々々々々々人」といずれも同順位をキープ。ベスト3は先週から全く同じとなっています。

今週のHot Albums&Heatseekers&ボカロチャートは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2026年3月11日 (水)

活動休止前ラストシングルが1位獲得

今週のHot100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

あの人気グループの活動休止前ラストシングルが1位獲得となりました。

今週1位は嵐「Five」が獲得。ダウンロード数、ストリーミング数及び動画再生回数で1位、ラジオオンエア数で11位を獲得。2026年5月末をもって活動を終了する彼らが、約5年4ヶ月ぶりにリリースしたラストシングルが見事1位獲得となります。ちなみにCD販売も5月31日に予定されているそうですが、こちらは通販限定になる模様。

2位はM!LK「爆裂愛してる」が先週と同順位をキープ。ただし、CD販売数は3位から6位、ストリーミング数は2位から3位、2週連続1位だった動画再生回数も3位にダウンしています。ちなみに彼らは「好きすぎて滅!」も先週と変わらず5位をキープ。これで5週連続の5位。カラオケ歌唱回数は今週、ついに1位獲得。これで14週連続のベスト10ヒットとなりました。

3位には米津玄師「IRIS OUT」が先週の4位からランクアップ。3週ぶりのベスト3返り咲き。これで25週連続のベスト10ヒット、通算22週目のベスト3ヒットとなりました。ただし、先週まで6週連続1位だったストリーミング数は嵐に押し出される形で2位に、9週連続1位だったカラオケ歌唱回数はM!LKに押し出される形で3位となっています(ちなみに2位はなんといまだに強いVaundy「怪獣の花唄」!)。

4位以下の初登場曲は、まず4位に秋元康系女性アイドルグループSTU48「好きすぎて泣く」がランクイン。CD販売数で1位を獲得。オリコン週間シングルランキングでは初動売上12万1千枚で1位初登場。前作「傷つくことが青春だ」の初動12万6千枚(1位)からダウン。

6位にはスターダストプロモーション所属の男性アイドルグループSUPER★DRAGON「Break off」が初登場。CD販売数2位。こちらはオリコンでは初動売上6万枚で2位初登場。前作「Concealer」の初動5万7千枚(2位)からアップしています。

さらに8位にはHANA「ALL IN」が先週13位からランクアップし、2週目にして初のベスト10入り。ダウンロード数17位、ストリーミング数9位、動画再生回数2位。初の本人たち作詞作曲によるナンバーで、先日発売されたアルバム「HANA」収録曲。HANAは「Blue Jeans」が先週と変わらず10位をキープ。通算31週目のベスト10ヒットに。一方「ROSE」は今週11位にダウン。ベスト10ヒットは通算37週で再びストップとなりました。

ほかのロングヒットは、まずMrs.GREEN APPLE「lulu.」が今週7位にランクインし、8週目のベスト10ヒットに。ちょっと前までの勢いには欠けるものの、それでもしっかりロングヒットを確保してくるあたりはさすがといった感じ。

King Gnu「AIZO」は2ランクダウンの9位にランクイン。こちらも後がなくなってきているものの9週連続のベスト10ヒットと、ロングヒットを記録しています。

今週のHot100は以上。明日はHot Albums&Heatseekers&ボカロチャート!

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2026年3月10日 (火)

URCを現代に歌いつぐカバーが秀逸

Title:Timeless URC Classics-時を超える名曲-

1969年に設立され、「日本初のインディーレーベル」と呼ばれ、主にフォーク系ミュージシャンを中心に数多くの名盤をリリースしたアングラ・レコード・クラブ、略称URC。2013年に販売権をソニーミュージックが取得し、その後、「名盤復刻シリーズ」として復刻版が次々とリリースされました。まあ、URCの復刻は、何度も行われており、再発音源自体の希少性はあまりないのですが、そんな「名盤復刻シリーズ」の中で、URCの名曲を企画ごとに集約したオムニバスアルバムがリリースされており、本作はそんなシリーズの1作となります。

今回のオムニバス盤のコンセプトは、「時を超える名曲」と題して、URCの名曲のカバー曲を収録。それに対応するオリジナル音源を収録した2枚組のアルバムとなっています。カバー曲は井上陽水の「サルビアの花」、原田知世の「あなたから遠くへ」など数多くのミュージシャンのカバーを収録。有名どころはもちろん、渋さ知らズの「自衛隊に入ろう」など、ちょっとマニアックなレパートリーも。基本的にURCの名曲ばかりなので、URCのベスト盤的な楽しみ方もできるアルバムとなっています。

そして、このカバーの方がなかなかの秀逸曲揃い。和田アキ子の「悩み多き者よ」では、非常にソウルフルで力強いボーカルを聴かせてくれており、和田アキ子のボーカリストとしての実力をあらためて実感させられる名カバー。CARNATIONの「春よ来い」なども、基本的に原曲準拠ながらも、よりパワフルな演奏を聴かせてくれるカバー。はっぴいえんどの「ロック」な側面をより強調したカバーとなっています。

前述の原田知世の「あなたから遠くへ」も彼女の優しいボーカルを生かした、ほんわか優しい雰囲気のカバーに仕上がっていますし、ラストを締めくくる辻香織の「一本道」も秀逸。彼女の曲はこれがはじめて聴いたのですが、キュートながらも郷愁感のあるボーカルが曲にもマッチし、印象に残ります。

ユニークなところではつじあやのの「プカプカ」のカバーでしょうか。原曲はザ・ディランⅡによるくすんだ雰囲気の楽曲になっているのですが、つじあやののカバーは彼女らしいウクレレによる、いつものつじあやのらしい爽快なポップスに。歌詞の雰囲気とは真逆とも言えるカバーながらも、なぜかちゃんとマッチするのはつじあやのの実力でしょう。

ちなみにカバー曲に関しては基本的に既発音源で、今回新録のものはなく、そういった意味での珍しさはありません。ただ、キリンジの「遠い世界に」はオムニバスアルバム「家族時間〜NHKみんなのうたカバー集〜」のみに収録している曲だったり、カーネーションの「春よ来い」はシングル「恋するためにぼくは生まれてきたんだ」のカップリングだったりと、レア音源も収録されています。もっとも、基本的にサブスクで聴けてしまったりするのですが・・・。まあ、こうやって過去のレア音源がサブスクで簡単に聴けるのはいいことではあるのですが。

オリジナルの方も名曲が揃っていますし、カバーもなかなか秀逸な音源揃い。カバー曲に参加しているミュージシャンのファンはもちろん、URCに興味がある方の入門盤的にもお勧めのアルバムです。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

FYOP/B'z

2024年の紅白でのパフォーマンスが大きな話題を呼んだB'zが、満を持してリリースした約3年ぶりのニューアルバム。紅白でも歌われた「イルミネーション」も収録。ちなみに「FYOP」とは"Follow Your Own Passion(自分自身の情熱に従え)"の略だそうです。ただ、注目の中でのリリースだったのですが、内容的にはかなり肩透かし気味。前作「Highway X」も歌謡曲路線が強く出た曲調でしたが、本作もあまり彼らの持ち味であるハードロック路線は前に押し出されず、全体的に聴かせるタイプの曲がメイン。ただ、それもいまひとつインパクトも薄く、全体的にはかなり物足りない内容になっていました・・・。紅白であれだけのパフォーマンスを見せながら、新曲についてはそれが反映されていないのが残念な感じ。もっとゴリゴリのハードロック路線も聴きたいのですが。

評価:★★★

B'z 過去の作品
ACTION
B'z The Best "ULTRA Pleasure"
B'z The Best "ULTRA Treasure"
MAGIC
C'mon
B'z-EP
B'z The Best XXV 1988-1998
B'z The Best XXV 1999-2012

EPIC DAY
DINOSAUR
NEW LOVE
FRIENDSIII
Highway X

Original/LEX

Lexoriginal

約1年4ヶ月ぶりとなるニューアルバム。今風のトラップなビートにエレクトロサウンドを加えつつ、メロディアスなフロウで歌モノの曲も目立つ作品。「Leave Me Alone」はテクノ風、「普通の人間だって言えないよ」はロック、「昔のように話せるかい?」ではかのイギリスのロックバンドColdplayを彷彿とさせるようなアレンジも。リリックはまさに「Leave Me Alone」「普通の人間だって言えないよ」のように孤独をかかえつつも、「完璧だ」のような、自己を肯定し、自分を鼓舞するようなリリックが目立ちます。どこか自己の弱味も見せたリリックのため、ラッパーによくありがちな、とにかく自分を大きく見せて自慢しようとするような感じでもなく、聴いていて共感できるような内容だったのも印象的でした。

評価:★★★★★

LEX 過去の作品
LOGIC
Logic 2

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2026年3月 9日 (月)

インドネシア音楽と現代の音楽を見事融合

Title:Nusantara Beat
Musician:Nusantara Beat

今回紹介するアルバムは、Music Magazine誌のベストアルバム2025の「ワールド・ミュージック部門」で5位にランクインしていたアルバム。2025年の各種メディアで紹介されたベストアルバムのうち、聴き逃したアルバムを後追いで聴いた1枚となります。Nusantara Beatはオランダ・アムステルダムを拠点とするバンドで、メンバー全員がインドネシアにルーツを持っているそうです。ちなみにNuantaraとはインドネシア語で、インドネシア全島を意味する言葉。タイトル通り、インドネシアの音楽を大胆に取り入れた作風が特徴となっています。

具体的に言えば、インドネシアの伝統音楽であるガムランの音階を基調としつつ、サイケデリック・フォークやロック、ファンクなどの要素を取り入れた独特の曲風が特徴的。冒頭を飾る「Ke Masa Lalu」は、まず清涼感のある女性コーラスからスタートするドリーミーな雰囲気を醸し出しつつ、ガムラン風の独特の曲調が特徴的。特に続く「Kalangkang」は力強いバンドサウンドを入れつつ、ガムランの独特な音階が、エキゾチックで不思議なビートを醸し出しています。

その後も楽曲タイトルを唱えるコーラスも呪術的で妖艶な「Ular Ular」や独特のこぶしを利かせつつ歌い上げる「Hilang Kendali」など、ガムランの要素を取り入れた、エキゾチックで独自の音階が特徴的。「今風」のバンドサウンドにのせて、インドネシア音楽の要素をたっぷりと加えた、独特の音楽を聴かせてくれています。

ただ、私たち日本人にとってユニークなのは、同じアジア系ということがあるのでしょうか、どこかこの節回しに懐かしさを感じる部分があります。特にラストを飾る「Cinta Itu Menyakitkan」は典型的なアジア歌謡といった感じで、歌謡曲や、ともすれば演歌にもつながるような哀愁ただようメロディーラインが特徴的。楽曲全体的に感じるメランコリックな節回しは、郷愁感を覚えるリスナーも多いのではないでしょうか。

そして一方で、彼らの大きな魅力は単純に伝統的なインドネシア音楽を演奏しているだけではなく、インドネシア音楽と現代的な音楽を融合させている点が大きな魅力。例えば「Di Pantai」は伸びやかでメロウなボーカルやギターの音色で、シティポップとカテゴライズされそうな楽曲を聴かせてくれていますし、「Tamat」も力強いギターにバンドサウンドで、ガレージ風の楽曲となっています。さらに「Baker」ではサイケの要素を加えたようなバンドサウンドがグルーヴィーで魅力的。彼らにしかなしえないような、独自のサウンドを聴かせてくれています。

ボーカルは爽やかな女性ボーカルで、どこかレトロな雰囲気も。この点も楽曲に独自の雰囲気を与えていますし、また同時にポップスさを与える要素にもなっています。インドネシアの伝統音楽と現代の音楽を見事に融合させて、ポップスさを加え、独自のグルーヴ感を加味した傑作アルバム。年間ベストの上位にランクインされるのも納得の作品でした。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

Tranquilizer/Oneohtrix Point Never

アメリカのエレクトロミュージシャンによる11枚目のアルバム。本作は、インターネット上のアーカイブで、一度は削除されながら、その後復活したサンプル音源を元にして制作されたそうで、本人は「あらゆるものがアーカイブされながらも、絶えず失われていく時代の感情の響きを捉えたかった」そうです。非常に現代らしいコンセプトによるアルバムですが、全編メランコリックでドリーミーなエレクトロサウンドで構築されており、美しくもどこか儚げな雰囲気を醸し出している点は、まさにアルバムのコンセプトをあらわしているのでしょうか?比較的、実験性が強い作風なので万人受けといった感じではありませんが、儚く消えゆく現実に思いをはせつつ聴きたいアルバムです。

評価:★★★★

Oneohtrix Point Never 過去の作品
Age of
Magic Oneohtrix Point Never
Again

Beloved/Givéon

こちらも2025年ベストアルバムを後追いで聴いた1枚。Music Magazine誌「R&B/ソウル/ブルース」部門で1位を獲得した、アメリカのR&BシンガーGivéonの2枚目となるアルバムです。ジャケット写真も、いかにもオールドスタイルな雰囲気が漂う作品ですが、内容的にも70年代のクラシックなソウル/R&Bの影響を強く受けた、ある意味「王道」なソウル路線の1枚。ちなみに全米ビルボードチャートでも8位にランクインし、名実共に人気を確保しているようです。正直、目新しさは少ないものの、ゆっくりとメロウなボーカルをしっかりと聴かせるソウルチューンに心惹かれる1枚。ある意味、この手のアルバムがミューマガで1位ってちょっとわかりやすすぎる感はあるのですが、いいアルバムなのは間違いありません。

評価:★★★★★

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2026年3月 8日 (日)

バンドサウンドがより前面に

Title:physical mind
Musician:マカロニえんぴつ

個人的に、ここ最近のミュージシャンで、ポップなメロで比較的、広いリスナー層に最も薦められるミュージシャンといったら、彼らマカロニえんぴつをあげます。例えば私と同世代くらいの友人にこのような質問をされた場合、いまさら米津玄師や藤井風あたりはさすがにみんな知っていますし、かといって最近はまっている鈴木実貴子ズだと人を選びそう。あえて言えば、水曜日のカンパネラあたりも比較的広い層に薦められそうなミュージシャンでもあるのですが・・・いい意味で、万人受けしそうな癖のないポップスを奏でる、という観点では、やはりマカロニえんぴつが、まずはお勧めの候補としてあげられるミュージシャンとなりそうです。

特にフルアルバムとしては前作となる「大人の涙」では、まさに脂ののったバンドが一番勢いのある時期にリリースしそうな、彼らの持ち味がピッタリとはまった傑作に仕上がっていました。その傑作から約2年4ヶ月ぶりとなる新作。今回も当然、彼ららしいポップスアルバムを聴かせてくれるものと、非常に期待した作品となります。

そんな彼らの新作は、「physical mind」というタイトルの通り、フィジカル色が強い、要するにバンドサウンドを前に押し出したサウンドが特徴的でした。アルバムの冒頭を飾る「パープルスカイ」もいきなりヘヴィーなギターノイズからスタート。力強いバンドサウンドが特徴的な作品になっています。映画「FLY!」日本版の主題歌となっている「月へ行こう」も、途中からバンドサウンドが主導する作品となっています。

ここ最近のシングル曲でも、アニメ「忘却バッテリー」主題歌となっている「忘レナ唄」も、ちょっと郷愁感あるインパクトあるポップなメロが彼ららしい一方、しっかりと力強く聴かせるバンドサウンドが特徴的。同じくアニメ「アオのハコ」オープニングテーマとなっている「然らば」も、ちょっと切ないメロが印象的ながらも、分厚いバンドサウンドにも耳の行く楽曲となっています。

ちょっとユニークなのが中盤の「NEVERMIND」で最初、四つ打ちのリズムのエレクトロチューンからスタート。ただ途中からヘヴィーでダイナミックなギターリフが登場。なかなか挑戦的でユニークな作品に仕上がっています。

もちろん、マカロニえんぴつらしいポップなメロも健在。「ロング・グッドバイ」ではメランコリックなメロが印象的な作品なのですが、こちら作曲は田辺由明が担当。はっとり以外のメンバーもしっかりとマカロニえんぴつらしいポップチューンを書けることが主張されています。また終盤の「NOW LOADING」も印象的。ポップなメロを聴かせるオルタナ系のギターロックチューンとなっていますが、微妙にピアノのサウンドが隠し味的に入っており、ポップな作品の中でも一ひねりを感じさせる作品となっています。

正直言って、全体的なアルバムのインパクトという点では前作「大人の涙」の方が強かったような印象を受けます。いまなお勢いがあることは間違いないかとは思いますが、脂ののりまくっていた前作と比べると、ちょっとインパクトという面では弱くなってしまった感も否めません。ただ、それでも本作も彼ららしいポップなメロは健在。加えて、力強いバンドサウンドがよりアルバムに勢いを加えており、ちょっと弱くなってしまったメロディーのインパクトを補完しているように思います。前作ほどではなかったのですが、本作も十分傑作と言えるアルバムに。ロックバンドとしてのマカロえんぴつの魅力をより感じたアルバムでした。

評価:★★★★★

マカロニえんぴつ 過去の作品
season
hope
愛を知らずに魔法は使えない
ハッピーエンドへの期待は
wheel of life
大人の涙
ぼくらの涙なら空に埋めよう
いま抱きしめる 足りないだけを


ほかに聴いたアルバム

Mine or Yours/宇多田ヒカル

6曲入りのEP盤である本作は、基本的にタイトルチューン「Mine or Yours」と、そのリミックスバージョン、THE FIRST TAKEでのバージョン及びインスト版の計6トラックが収録されている内容。タイトルチューンはメロウな作風の、宇多田ヒカルらしい作品になっているのですが、「多様性」をテーマとした内容が特徴的。「令和何年になったらこの国で/夫婦別姓OKされるんだろう」というストレートな歌詞も話題となりました。この手の「価値観が異なるカップル」というテーマは、ドリカムの「go for it」を個人的には思い出したのですが・・・。ちなみに、リミックスは全体的にエレクトロのトラックがメイン。当サイトでも紹介したことのあるYaejiがリミキサーとして参加しています。楽曲的にはメロウな、比較的、彼女にとっては王道的なスタイルで目新しさはありません。ただ、今、あえてこういう歌詞の曲をリリースするあたりに彼女の主張も感じ取れる1曲になっていました。

評価:★★★★

宇多田ヒカル 過去の作品
HEAT STATION
This Is The One(Utada)
Utada Hikaru SINGLE COLLECTION VOL.2
Fantome
初恋
One Last Kiss
BADモード
Hikaru Utada Live Sessions from Air Studios
SCIENCE FICTION
HIKARU UTADA SCIENCE FICTION TOUR 2024
Electricity Remixes

After All,All Mine/大比良瑞希

シンガーソングライター大比良瑞希の5枚目となるアルバム。彼女は2015年デビューというから、既に中堅の域となるシンガーソングライター。デビューした年にはフジロックにも出演経験があるそうです。今回、ミュージック・マガジン誌の年間ベストアルバム「J-POP/歌謡曲」部門で1位となっていたので後追いで聴いてみた作品。彼女の音源を聴くのは今回はじめてとなります。アコースティックな楽器をメインとしたサウンドに、ちょっと気だるさのあるボーカルが特徴的。暖かみがありつつ、ちょっと鼻にかかったようなボーカルはBonnie Pinkっぽい感じも?ただ、ダウナーなボーカルとサウンドには、どこかHIP HOPからの影響を感じつつも、独特の浮遊感もあり、非常に個性的にも感じます。後半は、よりメロウに、R&Bからの影響も強い作風に。決して派手ではないものの、独自の音楽性が耳に残る、確かに年間1位というのも納得が出来るような傑作でした。

評価:★★★★★

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2026年3月 7日 (土)

懐かしい90年代J-POPシーン

今日は最近読んだ音楽関連の書籍の感想です。

今回紹介するのは、ラジオ構成作家やDJとしても活躍しているミラッキこと大村綾人によるJ-POPの評論本「90年代J-POP なぜあの名曲は『2位』だったのか」。タイトル通り、オリコンチャートで最高位2位だった50曲を紹介。その背景から時代性や音楽性を読み解くという評論本となっています。ここで紹介されている90年代というのは(ここでも何度か言及していますが)私にとってもちょうど中学生から大学生にあたる時期で、もっともヒットシーンの曲を聴きまくり、想い出のある頃。そんな時期の曲をどのように分析しているのか、興味を惹かれて読んでみました。

ただ、ちょっと残念なのは、この本、厳密には詳細なチャート分析の本ではありません。確かに、最高位2位というのは、単なる「運」による要素も強く、ここで取り上げられている曲が最高位2位だったのはやはり偶然という要素が強くなってしまいます。そういう意味で、著者はJ-POP評のとっかかりとして「最高位2位」という事象を使ったのでしょう。

もっとも一方、90年代に最高位2位というのは意味もあります。80年代までヒット曲というのは音楽番組や口コミを通じて、徐々に順位をあげてヒットする、という形態が多かったのに対して、90年代に入ると、ドラマタイアップなどで耳になじませつつ、販売日にあわせた音楽番組への出演やCMなどによる大量の露出により、大量の広告宣伝費を投入し、初動売上に絞った販売戦略が一般的となります。この方式が最終的には「握手券商法」やAKB48の「投票券商法」につながり、オリコンチャートの信頼性の失墜へとつながる訳。

そうすると、初登場で2位に終わるというのは、初動売上に頼れないような、例えばアイドル性が低いミュージシャンのヒット曲や、口コミにより徐々にチャートをあげていった曲、あるいは1位を目指しながら思わぬ伏兵で1位を獲得できなかった曲というようにパターンが出てきます。そういうったことを前提にチャート分析するのもおもしろかったとは思うのですが・・・まあ、あくまでもJ-POP評が主眼ということなのでしょう。

さて、そんなJ-POP評ですが、非常によく分析されており、興味深い記述も多くみられ、私もはじめて知ったような事実も少なくなかった反面、もうちょっと突っ込んでほしかったなぁ、と思うような分析もあり、ムラが見られてしまったのはちょっと残念に感じました。

例えば楽曲の制作過程や背景についてのエピソードを、過去の雑誌記事やXなどのコメントから丹念に拾ってきており、丁寧な記事づくりをしている印象を受けます。個人的にはELTが「ジェネリックZARD」と表現されていたのははじめて知りましたし、SHAZNAのブレイク後の苦労談などもはじめてしった事実でした。ここらへん、当事者本人のコメントなどを丁寧にひろいあげており、納得感のある分析が行われているように感じました。

しかし一方で、もうちょっと突っ込んでほしかったかも、と思うような記事もあり、例えば川本真琴の「1/2」の分析では、岡村靖幸プロデュースのデビュー曲「愛の才能」について触れられているのですが、岡村靖幸について著者はほとんど思い入れがないようで、名前だけ出してほとんどスルーされています。また、大滝詠一の「幸せな結末」については、このヒットの時に著者は既に大滝詠一を聴いていた、という自慢話のようなエピソードが入っているのですが、肝心の大滝詠一の音楽性についてはほとんど掘り下げられていません。この点も少々残念に感じました。

また、これは仕方ないことかもしれませんが、やはりこの段階の年齢や立ち位置により、同じシーンでも感じ方が違う場合があり、その点は、「なるほど」と感じる部分もありつつも「そうか?」と思う部分もチラホラ。特に音楽シーンの動向をまとめた途中のコラムでは、そのようなことを思うような点も少なくなく、例えば小室系の失速の理由について、安室奈美恵の活動休止を挙げており、これについては「なるほど」と思う反面、小室系が一気に失速した1998年頃には、彼のR&Bやクラブミュージックの趣味性を押し出したような曲が目立つようになり、かつ単純に小室系のメロディーが飽きられた、という要素が強いのではないかとも感じます。

ここらへん、どうしても年齢的なものや当時聴いていた音楽、シーンへの思い入れの違いなどで、感じ方が違ってしまうのは仕方ないのですが、この点、もうちょっと自説を補強するような当時の雑誌記事や関係者のコメントなどがあれば納得感が出ていたのかな、という感じがします。その点は惜しかったようにも思います。

ただし、1点だけ疑問に感じた記述として、浜崎あゆみの「appears」の音楽評の中で、30万枚限定シングルため、1位の宇多田ヒカルの「Addicted To You」に次ぐ2位に終わったのですが、これに関して「上下をつけないことで、音楽界全体の盛り上がり、嗜好の多様性を消さなかった」と評しているのですが、この後、2001年に宇多田ヒカルの「Distance」に浜崎あゆみのベストアルバム「A BEST」を同一発売日にぶつけてきたんだから、それはないだろう、と思ってしまいます。そもそもアルバム同時発売のシングルなので、宇多田ヒカルとどちらが上下か、なんて意識は、スタッフになかったと思うのですが・・・。

そんな訳で、非常に興味深い分析も多くみられた反面、ちょっと分析が浅いように感じたり、「そうか?」と思うような記述も少なくなかった1冊になっていました。ただ、全体的に、疑問に感じた浜崎あゆみの1点を除き「大外し」はないと思うので、90年代のJ-POPを後追いで聴こうという方には参考にある1冊かと思います。また、リアルタイムにこれらの曲を聴いていた世代には、「なるほど、そうだったのか」「そうそう、そうだった!」と懐かしく感じつつ、「そうだっけ?」と所々で突っ込みを入れながら読むのも楽しいかも。マニアックなチャート分析を期待すると、ちょっと期待外れかもしれませんが、懐かしいあの頃のJ-POPを追体験するのは、読んで損のない1冊かと思います。

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2026年3月 6日 (金)

カップリングも名曲だらけ!

Title:KAN B面 Collection
Musician:KAN

2023年にこの世を去った稀代のシンガーソングライターKAN。1年目の命日に、シングル曲を集めた「KAN A面 Collection」がリリースされましたが、本作はそれに続く第2弾。シングルのカップリング曲を集めた、いわゆるB面ベストとなります。「A面 Collection」同様、レコード会社側が勝手にリリースした非公認のベストとなります。ただ、同じような非公認ベストの「A面 Collection」と比べると、アルバム未収録曲も多く含まれているため、レビューなどでは否定的な意見が多かった「A面 Collection」と比べると、ポジティブな意見が目立ち、ファン必聴のアルバムとなっています。

一般的にシングルのカップリングというのは、シングル曲にはできず、アルバムにも収録できなかった、ちょっと異色な曲が少なくありません。実力のあるミュージシャンはえてしてこのカップリングに名曲が収録されているケースが多いのですが、KANについても間違いなく、そんな事例のひとつと言えるでしょう。個人的にKANの曲で一番好きな曲は何か、と言われたら、おそらく「ときどき雲と話をしよう」をあげると思うのですが、この曲はもともとシングル「イン・ザ・ネイム・オブ・ラブ」のカップリング。その後のアルバム「ゆっくり風呂につかりたい」にも収録されており、おなじみのナンバーではあるのですが、KANを代表する名曲のひとつが最初、シングルのカップリングとしてリリースされたというのは驚きです(正式には「両A面扱い」ではありますが・・・)。

さらに今回のアルバムの聴きどころとして、シングル「Superfaker」のカップリングとして、この「ときどき雲と話をしよう」のライブ音源が収録されていること。これが単なるライブ音源ではなく、一部歌詞の変更が加わっており、ここでしか聴けないバージョンとなっています。いままでアルバム未収録。20年以上前のシングル収録曲で、サブスク未開放なので、本作以外に聴くことは非常に困難な貴重な音源となっています。

他にもカップリング曲にはちょっとコミカルに挑戦(?)した曲も収録されており、特にユニークなのは「女神~VENUS~」「天使~ANGEL~」「迷宮~LABYRINTH~」の3曲。ツアーメンバーと結成したヴィジュアル系バンド、Bon Marché名義の曲で、完全にヴィジュアル系バンドを意識した、巻き舌の歌い方にマイナーコード主体の耽美的なメロディーラインが特徴的。彼らしいユニークな曲に仕上がっています。また「ライバル」と、その続編(もしくはアナザーストーリー)を描いた「続ライバル」もユニーク(若干、ユニコーンの「人生は上々だ」も彷彿とさせる内容ですが)。最後のどんでん返しがかなりコミカルな内容になっています。

また、スピッツの「チェリー」やギルバートオサリバンの「Christmas Song」のカバーも聴きどころ。こちらもアルバム初収録となる音源(ただし、こちらはサブスクで聴けます)。他のミュージシャンのカバーはあまり多くないだけに、ちょっと珍しい、カップリング曲ならではの挑戦といった感じ。KANとスピッツはあまりつながりのない感もあるので、この組み合わせはちょっと意外な感じも。基本的に原曲に愚直な感じのカバーとなっており、正直、草野マサムネの声の方が合っているかも・・・とは思ってしまったのですが・・・。

そんなファンとしては聴きどころたくさんのB面Collection。他にも「小羊」「カラス」のような、代表曲と言ってもよいような名曲も収録されていますし、間違いなくお勧めしたいアルバム。もちろんカップリング曲集ですので、初心者の最初の1枚としては、既存のベスト盤「IDEAS」あたりからまずはチェックして欲しいのですが、ある程度KANの曲を聴いたら、こちらもマニア向けのカップリング曲集としてスルーしないで是非ともチェックしてほしい作品です。本当に彼は名曲を数多く作ってきたなぁ・・・とあらためて早すぎる彼の逝去を惜しむアルバムとなっていました。

評価:★★★★★

KAN 過去の作品
IDEAS~the very best of KAN~
LIVE弾き語りばったり#7~ウルトラタブン~
カンチガイもハナハダしい私の人生
Songs Out of Bounds
何の変哲もないLove Songs(木村和)
Think Your Cool Kick Yell Demo!
6×9=53
弾き語りばったり #19 今ここでエンジンさえ掛かれば
la RINASCENTE
la RiSCOPERTA
23歳
IDEASⅢ~the very best of KAN~
KAN A面 Collection


ほかに聴いたアルバム

MAGIC TIME/T字路s

伊東妙子、篠田智仁による2人組ブルースデゥオ、T字路s。ちょっとビックリしたのは今回、メジャーデビューが決まり、本作がメジャーデビュー作になるということ。どちらかというとマニアックなジャンルというで、決して派手なグループではない彼らがメジャーデビューというのはちょっと驚きです。メジャーデビューして最大の違いはバンドサウンドを取り入れたこと。いままで基本的に2人のみの演奏だったのに対して、サウンドの分厚さがグッと増しています。ただ、とはいえ基本的な楽曲の方向性はインディーズ時代と同様。ドスの利いた伊東のボーカルは分厚いバンドサウンドにも全く負けていません。バンドサウンドを取り入れて音楽的にも幅が出てきたT字路s。これからの活躍にも期待したいところです。

評価:★★★★

T字路s 過去の作品
PIT VIPER BLUES
BRAND NEW CARAVAN
COVER JUNGLE 1
COVER JUNGLE 2
THE BEST OF T字路s

岸田繁 弦楽四重奏作品集 第1巻/岸田繁・Style KYOTO管弦楽団弦楽四重奏

Kishidagengaku

以前、交響曲や管弦楽に挑んだこともあるくるり岸田繁の最新作は、弦楽四重奏曲。昨年6月に京都芸術センターで行われた「岸田繁×Style KYOTO管弦楽団~個展~」の実況録音盤。正直、クラシック愛好家がどのように評価するのかよくわからない部分もあるのですが、率直に言って、一番よかったのはくるりの「奇跡」を弦楽風にアレンジした「岸田繁『奇跡』の主題による12の変奏曲」で、まずはメロディーラインが耳を惹きました。それ以外の曲については、あまり印象に残らず。弦楽曲を作るぞ、という形で気負い過ぎで、岸田繁の良さであるメロディーメイカーとしての側面があまりあらわれていないような感じがします。クラシックを聴くと、なんだかんだいって後世に残る作品というのは、やはり主題のメロディーの良さが際立っているように思いますが、岸田繁もメロディーメイカーとしての才を持っているのだから、ともすれば「ベタ」でもいいから、弦楽曲についてももっとポップに仕上げればいいのに・・・とも思った作品でした。

評価:★★★

岸田繁 過去の作品
まほろ駅前多田便利軒 ORIGINAL SOUNDTRACK
岸田 繁のまほろ劇伴音楽全集
岸田繁「交響曲第一番」初演(指揮 広上純一 演奏 京都市交響楽団)
岸田繁「交響曲第二番」初演(指揮 広上純一 演奏 京都市交響楽団)
岸田繁「フォークロア・プレイリスト I」(指揮 広上純一 演奏 京都市交響楽団)
リラックマとカオルさん オリジナル・サウンドトラック
リラックマと遊園地 オリジナル・サウンドトラック

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2026年3月 5日 (木)

今、もっとも話題のグループが1位獲得

今週のHot Albums

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

2025年、もっともブレイクしたグループが1位獲得です。

今週1位はHANAのデビューアルバム「HANA」が1位獲得。CD販売数及びダウンロード数2位、ストリーミング数1位。ご存知のとおり、ラッパーのちゃんみながプロデューサー、SKY-HIがエグゼクティブプロデューサーとして結成された7人組アイドルグループで、昨年リリースされた「ROSE」「Blue Jeans」が現在でもヒットを続けています。本作はそんな彼女たちのデビューアルバムで、見事初登場1位を獲得しました。ちなみにオリコン週間アルバムランキングでは初動売上12万枚で2位にランクインです。

2位は旧ジャニーズ系男性アイドルグループAぇ!group「Runway」が獲得。CD販売数で1位。オリコンでは初動売上32万枚で1位初登場。前作「D.N.A」の初動24万7千枚(1位)からアップしています。

3位は大森元貴「OITOMA」が初登場。ご存知Mrs.GREEN APPLEのボーカリストによるソロデビュー作。配信限定のアルバムで、ダウンロード数で1位を獲得し、ベスト3入りとなりました。

4位以下の初登場盤は、7位に韓国の女性アイドルグループIVE「REVIVE+」が初登場。ダウンロード数7位、ストリーミング数6位。9位にはラッパーのWatson「Soul Quake 3」が初登場でランクイン。ストリーミング数7位。さらに10位にはBruno Mars「The Romanstic」がランクイン。世界的な人気を誇るアメリカのシンガーソングライターの4枚目のアルバム。おととしから昨年にかけて、ROSEと組んだ「APT.」が日本でも大ヒットを記録しました。

ロングヒット盤ではKing&Prince「STARRING」が4位から6位にダウン。ただ、これで10週連続のベスト10ヒット。Number_i「No.Ⅱ」は5位から8位にダウン。こちらは23週連続のベスト10ヒットとなります。一方今週、Mrs.GREEN APPLE「ANTENNA」が7位から13位、藤井風「Prema」が9位から12位にダウンと、いずれもベスト10陥落。それぞれベスト10ヒットは通算66週及び25週連続でストップとなりました。


今週のHeatseekers Songs

https://www.billboard-japan.com/charts/detail?a=heat_seekers

今週1位はクレイジーウォウウォ!!「トンツカタンタン」が獲得。かなりユニークな名前と曲名ですが、SNSを中心に話題となっている4人組ポップスバンド。ハイテンポでユニークな中毒性の高いポップソングになっています。Hot100では99位にランクイン。


今週のニコニコVOCALOID SONGS

https://www.billboard-japan.com/charts/detail?a=niconico

今週1位は山本「デロスサントス」が先週の2位からランクアップし、初の1位獲得。ボカコレ2026冬で1位を獲得した楽曲。山本は「乳首なぞなぞ」「三不粘をエロい目で見るな」がヒットした、シュールなコミックソングが特徴的なボカロP。純粋に音楽的な出来としては、先週1位の「ブレインロット」の方が上だと思うのですが、やはりこういう曲がみなさん好きなんですね(笑)。ある意味、ボカロらしいヒット曲といった感じが。ちなみに、その先週1位だった東京真中「ブレインロット」はワンランクダウンの2位、先週4位だったSohbana「個々々々々々人」が3位にランクアップし、初のベスト3入りとなっています。

今週のHot Albums&Heatseekers&ボカロチャートは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2026年3月 4日 (水)

今週もアイドル系が目立つチャートに

今週のHot100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

今週もアイドル系の新譜が上位に並んでいます。

まず1位初登場は旧ジャニーズ系。Snow Man「オドロウぜ!」がランクイン。配信限定シングルで、ダウンロード数1位、動画再生回数で2位を獲得。映画「スペシャルズ」主題歌。

2位は先週1位のM!LK「爆裂愛してる」がワンランクダウンながらも今週もベスト3をキープ。CD販売数は2位から3位、ダウンロード数が5位から7位にダウンしている一方、動画再生回数は2週連続の1位、ストリーミング数も3位から2位にアップしています。また、彼らは「好きすぎて滅!」も先週と変わらず5位をキープ。これで4週連続の5位で、13週連続のベスト10ヒット。ストリーミング数は4週連続の4位、カラオケ歌唱回数も3位から2位にアップ。ただ、動画再生回数は2位から3位にダウンしています。

3位にはAKB48「名残り桜」がランクイン。CD販売数1位。オリコン週間シングルランキングは初動売上44万6千枚で1位初登場。前作「Oh my pumpkin!」の初動35万1千枚(1位)からアップ。

今週、初登場は1位3位の2曲のみ。また、今週は返り咲きが1曲。HANA「Blue Jeans」が先週の11位から10位にアップ。2週ぶりのベスト10返り咲き。特にストリーミング数が6位から5位にアップ。これで通算30週目のベスト10ヒットとなりました。また「ROSE」も今週10位から9位にアップ。こちらもストリーミング数が7位から6位にアップ。また動画再生回数も3週連続の7位。こちらは通算37週目のベスト10ヒット。

また今週はHANAのアルバム「HANA」がリリースされた影響で、ベスト20にはHANAの曲が並んでいます。11位は「Cold Night」、13位に「ALL IN」、15位に「NON STOP」、16位に「Bloom」とベスト20のうち6曲をHANAの曲が占め、その人気の高さをうかがわせます。

ロングヒット曲となりますが、まず米津玄師「IRIS OUT」は先週と変わらず4位をキープ。ストリーミング数は6週連続通算23週目、カラオケ歌唱回数は9週連続通算18週目の1位。ただ、動画再生回数は3位から4位にダウン。これでベスト10ヒットを24週連続に伸ばしています。

King Gnu「AIZO」は先週と変わらず7位にランクインし、これでベスト10ヒットを連続8週に伸ばしています。テレビアニメ「呪術廻戦」第3期「死滅回游 前編」オープニングテーマ。同じ「呪術廻戦」関連では「SPECIALZ」「一途」「逆夢」に続くロングヒットとなっています。

今週のHot100は以上。明日はHot Albums&Heatseekers&ボカロチャート!

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2026年3月 3日 (火)

現地の人々の感情がそのまま詰め込まれたパンキッシュなコンピレーション

Title:TSAPIKY! MODERN MUSIC FROM SOUTHWEST MADAGASCAR

今回紹介するアルバムも(既に年間ベストで簡単に紹介済ですが)各種メディアの年間ベストを後追いで聴いた1枚。「ミュージック・マガジン誌」のワールドミュージック部門で3位にランクインしたアルバム。アフリカ大陸の南東沖に浮かぶ島国、マダガスカル。そのマダガスカルの南西部で演奏される伝統音楽「ツァピキー(Tsapiky)」を収録したコンピレーションアルバム。現地のお祭りや葬式、結婚式、成人の儀式といった場所で演奏される音楽なのですが、その現場で流されている音楽をそのまま収録したのが本作となるそうです。

このツァピキーという音楽の特徴は、歪んだ音色を出すギターの大音量とそれに呼応してパワフルに歌い上げる女性ボーカルというのが特徴的で、現地ではタマリンドの木から吊り下げたスピーカーとホーンスピーカーから大音量で音楽を流し、何キロも離れた場所まで響かせるそうです。現地の儀式は通常、何日も行われ、その際にタバコやお酒を片手にこの音楽を楽しむのが特徴的だそうです。

そんなマダガスカルの現地の人々のパワーがそのまま注入されたこのツァピキーという音楽。その迫力にまずは驚かされます。アルバムの冒頭を飾るのがMAMEHYというミュージシャンの「Je mitsiko ro mokotse」という曲ですが、これでもかというほど歪みまくった大音量のギターに、ポリリズムで激しくなりまくるパーカッションのリズム、さらにそれに呼応して高らかに歌い上げる女性ボーカルと、これでもかというほど荒々しくパンキッシュな楽曲を聴かせてくれています。

続く「Sinjake Panambola」も疾走感あるギターサウンドにリズミカルなパーカッション、さらには男女のかけ合いというスタイルで軽快にダンサナブルな楽曲に。その後も基本的なスタイルである荒々しい歪んだギターと女性ボーカルというスタイルの曲が目立ち、その後も「Marolinta」「Eka ndao」「Fanoigna」など、このスタイルの楽曲が荒々しく響きまくります。特にラストの「Bleu bleu」はハイテンポなギターとパーカッションのビートをバックに歌う、ハイテンポでちょっとコミカルさもある女性ボーカルが耳を惹きます。流れるメロディーラインは意外とポップでもあり、ハイテンポなビートで押すだけではなくツァピキーという音楽の魅力も感じられます。

楽曲的にはもちろん、この歪んだギター+女性ボーカルというスタイルだけではありません。「Tany be maneky」は横笛の爽快感ある音色と、力強いパーカッションの組み合わせのインスト曲。「Arodarodao」はアコーディオンと女性ボーカルというスタイル。アコーディオンの軽快な音色が軸となっており、ちょっとヨーロッパトラッド的な雰囲気もあります。さらには「Ka tseriky iha」は女性ボーカルメインのアカペラという楽曲。ミディアムテンポで聴かせる楽曲となっており、こちらはチルアウトなナンバーといったところでしょうか。

とにかく全体的に荒々しくパンキッシュな楽曲が並んでいます。「パンキッシュ」という表現を使っていますが、それこそ一般的なパンクミュージックとは異なる、現地の庶民の精神がそのまま音楽に注入されているような、リアルで荒々しい音楽表現が印象的。ある意味「激しい」音楽を私たちはいろいろと聴くことが出来ますが、まだこんなに荒々しく激しい音楽が世界にはあったんだ、ということを実感した作品ともいえます。世界にはまだまだ魅力的な音楽があふれていることを、あらためて感じられたコンピレーションでした。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

EURO-COUNTRY/CMAT

こちらも2025年度のベストアルバムのうち、聴き逃していたアルバムを後追いでチェックした1枚。本作は、各種メディアの年間ランキングをまとめたサイトAOTY2025で4位にランクインしていた、アイルランドのシンガーソングライターによる3枚目のアルバム。全英チャートで2位にランクインしており、大きくブレイクした作品になっています。楽曲は全体的にシンプルなポップソング。バンドサウンドを取り入れたり、アコースティックなアレンジにしたり、バリエーションあるサウンドをバックに、基本的にはフォークやカントリーの影響を受けたポップスがメイン。爽やかで耳なじみのよいポップチューンを聴かせてくれています。ただ一方で、タイトルチューンの「EURO-COUNTRY」は2008年の金融危機後、母国アイルランドで起きた経済危機のことを歌っていますし、「The Jamie Oliver Petrol Station」では資本主義への皮肉を歌ったりと、パッと聴いた感じのポップなメロとは裏腹な、結構骨太で社会的な歌詞も特徴的。単なる耳障りのよいポップとは一線を画する魅力を感じる作品でした。

評価:★★★★★

 

Yanbett/Noura Mint Seymari

こちらも同じく、2025年度ベストアルバムを後追いで聴いた1枚。Music Magazine誌のベストアルバム2025の「ワールド・ミュージック部門」で、2位にランクインした作品。モーリタニア出身のグリオ(吟遊詩人)、ノウラ・ミント・セイマリの3枚目となるアルバム。いわゆる「砂漠のブルース」の要素を感じさせるギターサウンドと、こぶしの効いたボーカルでグルーヴィーに聴かせる楽曲が強いインパクト。インターリュード的なインストと歌モノが交互に配置されており、渋みのあるボーカルを力強く聴かせる楽曲や、比較的明るく、ダンサナブルな楽曲も配置されており、バリエーションも感じさせます。前述の通り「砂漠のブルース」近辺が好きならお勧めできるアルバムです。

評価:★★★★★

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2026年3月 2日 (月)

アンソロジーシリーズまさかの第4弾!

Title:Anthology 4
Musician:The Beatles

ポピュラーミュージックシーンを代表する偉大なるロックバンド、The Beatles。いまなお高い人気を誇るバンドであることは間違いありませんが、一時期は毎年のようにビートルズ関連アイテムがリリースされ、市場を賑わせてきました。若干、露骨とも言える版権ビジネスに眉をしかめる向きもあることはあったのですが、概ね、次々と出てくるまだ見ぬビートルズ関連の音源に、多くのファンが夢中になりました。

そんな「ビートルズ商法」の嚆矢となったのは、アンソロジーシリーズだったのではないでしょうか。1995年から1996年にかけて「Anthology」と名付けられた、未発表音源を多く含む3組のアルバムがリリースされたほか、公式の自伝に、さらにはドキュメンタリー番組も制作。このドキュメンタリー番組は、当時日本でも放送され、なんと紅白の裏番組としてぶつけてきたあたり、ビートルズ人気のほどをうかがわせます。このアンソロジーシリーズに合わせて、未完成音源を残ったメンバーで完成させた新曲「Free as a Bird」もリリースされ大ヒットを記録。大きな話題にもなりました。

その当時、私は高校生。「ビートルズ」という名前に惹かれて、このアンソロジーシリーズのアルバムはリアルタイムで聴いてみました。ただ、正直、その当時はこのアンソロジーシリーズの意味がよくわかっておらず、有名な曲のアウトテイク集もいまひとつ何のための音源なのかピンと来ておらず、ただただ、なんとなくビートルズの有名な曲が聴けた・・・という程度の感触だったように記憶しています。

さて、そんなアンソロジーシリーズのリリースから20年の月日を経てリリースされたのは、このアンソロジーシリーズの第4弾。もともとは旧来のアンソロジーシリーズ3組に本作を加えたボックスセットのみのリリースが予定されていたそうですが、第4弾部分のみで別途リリースされることになったそうです。全36曲2枚組からなるアルバム。ラストには2023年にリリースされ、AI技術を使用しての27年ぶりの新曲として話題となった「Now and Then」も収録されています。

その新曲を除くと楽曲は、基本的に彼らの既発表曲のアウトテイク集。オリジナルとの聴き比べも楽しく、楽曲によってはまだインスト段階のテイクも収録されているため、まさに曲が最初に生み出された瞬間を聴いているような、そんな楽しさもあります。ただ、それ以上にこのアルバムを聴いて魅力的だったのは、リハーサル風景をそのまま収録したようなトラック。例えば冒頭を飾る「I Saw Her Standing There(Take2)」ではメンバーの簡単な会話が収録されていますし、Disc1の「This Boy(Takes 12&13)」では、曲の途中でメンバーが笑い出して演奏がストップする風景が収録されており、おだやかなレコーディングの情景が浮かんできます。既にメンバーのうち2人はこの世にいないバンドなだけに、現役時代のこのメンバー同士の会話を聴くだけで、ファンとしてはうれしくなってきてしまうのではないでしょうか。

その他にもプレスリーのカバー「(You're So Square)Baby I Don't Care」から一気に「Helter Skelter(Take 17)」に流れ込む構成もユニーク。景気づけのカバーのせいか、オリジナル以上に荒々しい演奏になっています。「Octopus's Garden(Rehearsal)」もリハーサル風景ならではのおだやかな雰囲気が流れていますし、オーケストラのみのインスト「Something(Take 39)」もオーケストラ部分のみの収録だからゆえに、スコアのより精密さが際立って聴こえます。

ただ今回のアルバム、全36曲中、未発表音源は13曲のみ。それ以外は主に、2017年以降リリースされてきたオリジナルアルバムの「Super Deluxe」シリーズの中で収録したものを選曲したものとなっており、熱心なファンにとっては若干物足りなさを感じてしまう構成になっていたようで、全体的には賛否のわかれる構成になっていたようです。とはいえ、少ないとはいえ未発表曲はファンにとっては素直にうれしい内容になっているのではないでしょうか。そこまで熱心なファンでない私にとっても聴きどころも多いアルバム。当時の雰囲気がそのまま伝わってくる音源ともども、とても楽しめたアルバムでした。

評価:★★★★★

The Beatles 過去の作品
LOVE
On Air~Live At The BBC Volume2
1+ (邦題 ザ・ビートルズ 1+)
LIVE AT THE HOLLYWOOD BOWL
Get Back (Rooftop Performance)
The Beatles 1962-1966(2023 Edition)
The Beatles 1967-1970(2023 Edition)


ほかに聴いたアルバム

One More Time/Aerosmith&Yungblud

実に約13年ぶりとなるエアロスミスの新作を収録した作品は、5曲入りのEP盤。さらにイギリスのシンガー、Yungbludとのコラボ作。エアロスミスはスティーヴン・タイラーの体調不良により、活動停止状態でしたが、「One More Time」というタイトルに象徴されるように、今一度、活動を再開するという意気込みでしょうか。実際、体調不良だったことを感じさせないスティーヴン・タイラーの力強いボーカルを聴かせてくれています。また、エアロスミスといえば80年代に一時期低迷したいたものの、「Walk This Way」でRun-D.M.C.とコラボしたことにより見事復活を果たしましたが、今回、あえて若手ミュージシャンとのコラボで活動再開したのも、ひょっとしたらこの事実を意識したのかもしれません。楽曲的にはエアロスミス的なハードロックを維持しつつも、Yungbludが加わることにより、現代的なロックの要素を取り込んだ作品に。間違いなく「One More Time」というタイトル通り、再び動き出そうとする強い意志を感じさせる作品でした。

評価:★★★★

AEROSMITH 過去の作品
Devil's Got A New Disguise(エアロスミス濃縮極極ベスト)
Music From Another Dimension!
Greatest Hits

TOUMARO/Hawa & Kassé Mady Diabaté

本作はマリの伝統音楽を代表するミュージシャンHawa Kassé Mady Diabatéと、その父、Kassé Mady Diabatéによるアルバム。Kassé Mady Diabatéは、「マリの黄金の声」とも称される伝統的なグリオ(西アフリカの伝統的な吟遊詩人)の巨匠なのですが、2018年に急逝したそうです。その残された音源を元に、娘のHawaが遺志を引き継ぎ完成させたのが本作。ミュージック・マガジン誌の2025年年間ベスト「ワールドミュージック」部門1位だったので、今回、後追いで聴いてみた作品となります。

パーカッションをベースとしたシンプルな演奏をバックに、渋みがありつつ、同時に清涼感も持ち合わせたような父、Kasséの伸びやかな歌声が耳に残ります。娘Hawaも非常に力強く伸びやかな歌声を聴かせてくれており、「黄金の声」に引けを取らない歌声を聴かせてくれます。シンプルながらも哀愁感たっぷりの力強い楽曲が並びます。特に最後のタイトルチューン「TOUMARO」は、力強く感情たっぷりに歌いあげるHawaのボーカルが印象的。まさに天国にいる父親に届けるように・・・といったら感傷的すぎるのでしょうか。年間1位も納得の傑作でした。

評価:★★★★★

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2026年3月 1日 (日)

今なお、圧倒的な独自性

Title:小島麻由美グラフィティ~30th Anniversary Best~
Musician:小島麻由美

シンガーソングライター小島麻由美の、タイトル通りデビュー30周年を記念したベストアルバム。小島麻由美というと、特に1990年代にはサブカルチャー界隈ではかなり評判となった女性シンガーソングライター。ジャズやフレンチポップ、ブルースやロックなどの要素をごちゃ混ぜにしつつ、昭和歌謡曲の雰囲気で味付けしたレトロなポップは当時、唯一無二の音楽性を誇っていました。特にこのレトロポップや昭和歌謡の路線については彼女が活動をはじめた頃、ほとんど奏でているミュージシャンはおらず、彼女が注目を集めたおかげで、レトロポップや昭和歌謡の良さが徐々に広がっていったように感じます。特にこの後、椎名林檎やクレイジーケンバンドなどがブレイクしたルーツとしては、やはり彼女の活動があったようにも思います。

彼女自身もその後徐々に人気を集め、2001年にリリースされたアルバム「My name is blue」がオリコン最高位14位を記録するなど、一定以上の人気を確保していきます。ただ、結婚・出産の影響で活動休止。2014年あたりにはアルバムのリリースなどがあり、活動を再開したものの、2016年にリリースしたシングルを最後に再び活動を休止。今回のアルバムも2015年にリリースしたカバーアルバム「Cover Songs」以来、実に約10年ぶり。かなり久々となるニューアルバムとなりました。

そんなこともあって、今回、久々に聴いてみた小島麻由美の楽曲。ここ10年でも、特に昭和歌謡やレトロポップをめぐる状況も変化し、昭和歌謡やレトロポップを標ぼうするミュージシャンも多くなりました。それだけに久しぶりに聴いた小島麻由美が、どのように響いてくるのか気になっていたのですが、今の時点で聴いても小島麻由美の音楽性は唯一無二。今聴いても圧倒的に独特の音楽性を持っているミュージシャンであるということに、あらためて気が付かされました。

特に昨今のレトロ系を嗜好するミュージシャンは基本的に昭和歌謡という方向に走りがちなのですが、彼女の場合、ジャズやブルース、さらにはロックにガレージ、スカやロックスタディなどの洋楽的な要素も強く、昭和歌謡にありがちなウェットな要素があまりなく、バタ臭さが強いのも大きな独自性で魅力と言えるでしょう。他の昭和歌謡やレトロ系のミュージシャンたちと大きく違うのはこういった点かもしれません。

また、小島麻由美の魅力として、歌詞の世界やサウンドを加えて、いい意味で小さくまとまっている、という点があることを今回感じました。要するに、サウンド的にはシンプルなアコースティック主体のサウンドであり、無駄なストリングスやシンセなども入っておらず、あくまでもシンプルにまとまっています。歌詞の世界についても基本的にシンプルなラブソングがメイン。例えばデビューシングルある「結婚相談所」もシンプルに、街にある小さな結婚相談所を舞台とした曲ですし、「おしゃべり!おしゃべり!」にしても、恋人同士がおしゃべりするだけのシンプルな内容。変にサウンド的にスケール感を出したり、下手に歌詞の世界を広げたりと、無理なことをせず、しっかり小島麻由美の世界を守っているという点も大きな魅力に感じました。

久しぶりに小島麻由美の曲を聴いて、久しぶりに小島麻由美の魅力にはまってしまったベスト盤。令和の時代となっても彼女が唯一無二のミュージシャンであることをあらためて強く感じた1枚。CDもしくはLP1枚のベスト盤ですので、文句なしに初心者にもお勧めできるベストアルバムです。これを機に、小島麻由美の世界にはまってください!

評価:★★★★★

小島麻由美 過去の作品
a musical biography KOJIMA MAYUMI 2001-2007
ブルーロンド
渚にて
路上
With Boom Pam
セシルの季節 La saison de Cecile 1995-1999
Cover Songs


オリジナルとしてはちょっと久々に聴いてみた森山直太朗のニューアルバム。2枚同時リリースの作品となっています。

Yeeeehaaaaw/森山直太朗

まずは1枚目。全体的にアップテンポで軽快な作品。ブルーグラスやカントリーの影響が強く、カントリー色の強い作品となっています。

弓弦葉/森山直太朗

そしてもう1枚。こちらはアンビエントの色合いの強いアルバムとなっています。

・・・・・・・と聴いていたのですが、正直言うと、予想していたよりもこの両者に大きな差はありませんでした。いや、確かに「Yeeeehaaaaw」はブルーグラスやカントリー色が強い、明るい作品ですし、「弓弦葉」はアンビエント風の作品です。ただ、特に「弓弦葉」はアンビエント以上にフォーキーな作風が多く、結果としてカントリー色の強い「Yeeeehaaaw」と比べてガラッと雰囲気が変わる、森山直太朗としては異色作・・・といった感じにはなっていませんでした。

で、基本的にどちらも森山直太朗らしい作品。独特の死生観を文学的な歌詞で表現、というと言い方がいいのですが、妙に理屈っぽくて、変に狙ったような歌詞がどうも個人的には壺にはまりません。メロディーラインは悪くないと思うのですが、全体的に似ているような印象も・・・。あと、ちょっと気になったのですが、「森の小さなレストラン」は「マイウェイ」に、「さりとて商店街」はビートルズの「イエローサブマリン」に、メロディーがそっくりなのですが、クレジットは森山直太朗作曲に。これ、大丈夫?バレたら問題になるのでは??

評価:どちらも★★★

森山直太朗 過去の作品
大傑作撰
822

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