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2026年2月 9日 (月)

喪失と、その向こうの希望を感じる作品

Title:LOST AND FOUND
Musician:ROTH BART BARON

Lostandfound_rothbartbaron

現在、ギターボーカルの三船雅也のソロプロジェクトとなっているROTH BART BARONの約2年ぶりとなるニューアルバム。今回のアルバムのテーマはタイトル通り、「喪失と発見」だそうで、三船は前作「8」の後のツアーで、精神的・身体的な疲労を経験し、それにより失ったもの、そしてそれからの再生をテーマとして込めた作品だとか。実際、その「喪失」を感じさせるメランコリックな作風と、その先の「再生」を感じさせるドリーミーなサウンドが大きな魅力の作品。毎回、傑作アルバムをリリースするROTH BART BARONですが、今回のアルバムもまた、傑作に仕上がってきました。

まずアルバム冒頭を飾る「CRYSTAL」が印象的。羊文学の塩塚モエカが参加した本作は、物悲しいメロディーラインながらも、どこか明るさを感じさせるドリーミーなサウンドが魅力的。まさにアルバムのテーマに沿ったような作風に仕上がっています。続く2曲目「Kitsunebi」も本作で印象的なナンバー。エレクトロサウンドで、どこか和風な雰囲気を醸し出した本作。タイトルはそのまま日本古来の心霊現象である「狐火」に由来しており、現世と来世をゆらぐ雰囲気が、独特の雰囲気を作りあげています。

その後もそんな、「喪失」を象徴するような物悲しげなメロに、「再生」を象徴するようなドリーミーなサウンドの絶妙なバランスが印象的な作品が並びます。「Falling Stars Over Burning City」も、ちょっと憂いを感じるメロディーに、ホーンも入った力強いバンドサウンドに希望の光を感じる楽曲。「S.O.S.(Song of Sinking)」もまた、ダークな雰囲気のノイズとドリーミーなエレクトロサウンドの対比がユニーク。歌詞も「意地悪な 化け物たちの 刃から/逃れましょう」「SOSの 流れる間に/魂を 混ぜましょう」とダウナーな心の闇を描きつつ、その先を感じさせる内容が印象に残ります。

さらに後半に行くにつれて、より希望の光が強くなっていく点も印象的で、終盤の「"You're the Best Person in This World"」は、まさにタイトル通り、ストレートに自己肯定的な内容。楽曲も爽やかなバンドサウンドで明るくまとめ上げられている中、三船のファルセット気味の明るくドリーミーな歌声が印象的。ラストを締めくくる「花吹雪」もタイトル通りの明るさを感じさせる作品。まさに花吹雪を思わせるようなホーンやストリングスの入ったサウンドに美しいファルセットボーカルをバックに、強く前に進みだせるような楽曲で締めくくられています。

そんな喪失感を覚えつつも、その先の希望を感じさせるドリーミーな楽曲、そして最後は希望に向かって歩き出すというアルバムの構成も魅力的。エレクトロサウンドとバンドサウンド、さらにホーンの音色を絶妙にバランスさせたサウンドも大きな魅力。今回のアルバムも文句なしの傑作でしたし、また年間ベストクラスの傑作アルバムだったと思います。聴いていてとても心地よさを感じさせる作品でした。

評価:★★★★★

ROTH BART BARON 過去の作品
無限のHAKU
HOWL
8


ほかに聴いたアルバム

WORLD HAPPINESS

2008年から2019年にかけて行われた(2018年は未開催)高橋幸宏がキューレーターとして開催された都市型音楽フェス「WORLD HAPPINESS」。数多くのミュージシャンが参加したこのフェスのうち、pupa、Yellow Magic Orchestra、HASYMO、METAFIVE、THE BEATNIKS、The おそ松くんズなどといった、高橋幸宏が参加したミュージシャンの演奏を集めたベスト盤的なアルバム。高橋幸宏の誕生日である2025年6月6日にリリースされました。CD全4枚組+Blu-rayというボリューミーなボックスセットで、高橋幸宏の幅広い活動を網羅した内容で、ある意味、2000年代以降の高橋幸宏の歩みを知ることが出来るドキュメンタリーな内容にもなっています。その音楽活動の幅広さと、晩年まで変わらなかった音楽に対する旺盛な好奇心を実感できると共に、どのバンドにも共通する「高橋幸宏らしさ」も強く感じられるボックスセットとなっていました。いまさらながら、「WORLD HAPPINESS」、1回くらい行きたかったなぁ。あらためて、高橋幸宏の魅力を感じることが出来るボリューミーなボックスセットでした。

評価:★★★★★

wonder style/Thee Michelle Gun Elephant

ミッシェルのデビュー30周年を記念したリマスター企画。今回は1995年、彼らのインディーズ時代にリリースされた5曲入りアルバム。1曲目「wonder style」はインストで、ラストの「talkin'bout you」はチャック・ベリーのカバーとなりますが、くすんだ雰囲気のガレージサウンドは、既にこの時期に彼らのスタイルが確立されていたように感じます。むしろメジャーデビュー作「cult grass stars」以上に、その後のミッシェルらしさを感じる内容。メジャーデビューにあたって、この頃のスタイルを貫くのか迷いが出たのでしょうか?ただ、結果として、このアルバムの頃に確立したスタイルが彼らの「正解」だったということなのでしょう。あらためて結成直後からミッシェルはミッシェル以外の何物でもなかったことを実感したアルバムでした。

評価:★★★★★

THEE MICHELLE GUN ELEPHANT 過去の作品
THEE GREATEST HITS
cult grass stars
High Time
Chciken Zombies
GEAR BLUES
カサノバ・スネイク
ロデオ・タンデム・ビート・スペクター
SABRINA HEAVEN
SANBIRNA NO HEAVEN

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