60年代ポップグループの充実ぶりが目立つ
今回は最近読んだ音楽関連の書籍の感想です。
このサイトで何度か紹介しているMUSIC MAGAZINE増刊アルバム・セレクションシリーズ。前回まで、「60年代ブリティッシュ・ロック」、「70年代ブリティッシュ・ロック」、「80年代ブリティッシュ・ロック」とイギリスのロックのシリーズが続いていましたが、今回発売されたは「60年代アメリカン・ロック」。イギリスのロックがひと段落したのは、続いてはアメリカのロックのシリーズが続きそうです。
60年代といえば、いわゆるブリティッシュ・インヴェンションが音楽シーンに吹き荒れた頃。ビートルズをはじめとしたブリティッシュ・ロック勢の影響により、50年代までのアメリカのロック勢が一掃された頃。本書でもTHE 4 SEASONSのアルバムレビューの項に「まったく動じることがなかったのは一連のモータウン勢と、ビーチ・ボーイズと、そしてフォー・シーズンズだけだったとも言われる。」と記載されていますが、まさにブリティッシュ・ロック勢が世界のポップシーンを席巻した時期だったりします。
このアルバム・セレクションシリーズ、構成としては前半は「ARTIST PICKUP」として、この時期の重要なミュージシャンを個別に取り上げ、略歴と代表作の紹介、後半は年代ごとに分けて、その時代のその他のミュージシャンたちのアルバムを、基本1ミュージシャン1アルバムごとに紹介しています。今回、この「60年代アメリカン・ロック」を「60年代ブリティッシュ・ロック」と比較したのですが、その差が如実にあらわれているのが前半の「ARTIST PICKUP」。「60年代ブリティッシュ・ロック」では、実に21組ものミュージシャンたちがこのコーナーで取り上げられていますが、「60年代アメリカン・ロック」で取り上げられているのはわずか10組。それだけ、この時期に大きな影響を与えたミュージシャンたちが、イギリスとアメリカで大きな差があることがわかります。
一方、本書で非常に魅力に感じたのは、後半、年代別のアルバム紹介。前半の「ARTIST PICKUP」のコーナーが薄かった反動という面もありますが、この時期、ブリティッシュ・インヴェンションの中でもアメリカで活躍していたミュージシャンたちが多く取り上げられています。特に60年代前半に活躍したポップグループの紹介の充実ぶりには目を見張るものがありました。
今回、本書を手掛けたのは音楽評論家の萩原健太。もともと彼は、ビートルズ登場以前のポップシーンに関しても深い知見のある評論家で、以前にも、その時代のポップミュージシャンたちを取り上げた彼の著作「グレイト・ソングライター・ファイル 職業音楽家の黄金時代」を紹介したことがありますが、まさにそんな彼の評論家としての知見が反映された1冊となっています。
特にこの時期のアメリカのポップミュージシャンたちは、「ロックの歴史」を語る際に、あまりピックアップされることはありません。冒頭に、ブリティッシュ・インヴェンションの中、アメリカで動じることのなかった数少ないバンドであるフォー・シーズンズでも、今となっては彼らのアルバムが「ロックの名盤」として取り上げられることはあまりないように思います。ただ、本書では、今となってロック、あるいはポップスの歴史の中であまり語られることのないミュージシャンのアルバムについてもしっかりと取り上げられており、ブリティッシュ・インヴェンションの中、アメリカの音楽シーンがイギリス勢に席巻されたと言われても、数多くのアメリカのミュージシャンたちが活躍していたことがわかりました。
これを機に、ブリティッシュ・インヴェンションの影に、なかなか取り上げられる機会の少ない60年代のアメリカのロックシーンについても追いかけてみたくなる1冊。おそらく今後「70年代アメリカン・ロック」「80年代アメリカン・ロック」と発刊されると思うのですが、今後もどんなミュージシャンに出会えるか、楽しみです。
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