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2026年1月

2026年1月31日 (土)

エレクトロサウンドが目立つ

Title:Touch
Musician:Tortoise

アメリカのポストロックバンドの重鎮とも言えるTortoiseの、実に9年ぶり、久々となるニューアルバム。かつてはメンバー全員が共同生活を送り、セッションの中であらたなサウンドを作りあげてきた彼らですが、現在、メンバーはロサンゼルス、ポートランド、そして彼らの故郷であるシカゴと別々に居住。そんな別々の場所で録音されたサウンドを統合させたのが、今回のアルバムの特徴となっています。

とはいえ、本作に関しても、様々なサウンドを重層的に取り上げたインストサウンドという点は以前の彼らのスタイルからは大きく変化はありません。ただ、本作に関してまず感じたのは、比較的エレクトロのサウンドが目立ったという点。例えば序盤の「Layered Presence」も、様々な音が重なり合う、ある意味、いかにも「ポストロック」的な作品ですが、楽曲全体としてシンセのエレクトロな音が目立ちますし、続く「Works and Days」も、ちょっとアンビエント的とも言える電子音が楽曲に流れています。特に特徴的だったのがそれに続く「Elka」で、リズミカルな打ち込みのテクノチューンに。その後も「Axial Seamount」では打ち込みのビートが流れていますし、映画的なサウンドでダイナミックに締めくくるラストの「Night Gang」でもシンセが効果的に用いられているなど、アルバム全般としてエレクトロなサウンドが目立つように感じます。

そしてもうひとつの特徴として感じたのは、比較的ポップで聴きやすい、という点。例えば前述の「Layered Presence」にはメロディアスなフレーズが流れていますし、「Axial Seamount」もテンポよい打ち込みのリズムとギターサウンドで聴きやすいポピュラリティーを感じる作風に。「A Title Comes」もストリングスの音色がメロディアスに流れる楽曲となっています。まあ、もっともこの点については、Tortoiseのようなポストロックバンドが数多く出てきた中で、彼らのようなタイプのサウンドにすっかり聴きなれてしまったから、という要素も大きそうですが・・・。

全体的に比較的、耳になじみやすいエレクトロのビートと、ポップなメロディーラインでいい意味で聴きやすいアルバムになった本作。他にも力強いドラムのビートが印象的な「Rated OG」やちょっと怪しげな雰囲気が特徴的な「Oganesson」など、バラエティーもある構成になっており、今回、メンバーが様々な地域に散らばって、様々なエリアで録音した影響を指摘する記事もあったのですが・・・ただ、そう言ってしまうほどバラエティーがあったか、と言われると微妙で・・・この点は全体的にTortoiseらしい楽曲にまとまっていたような印象も受けます。

エレクトロサウンドにメロディアスなフレーズ、ギターやダイナミックなバンドサウンドも加わり、Tortoiseらしい聴きどころも多い傑作アルバム。一方で、かつてのような聴いていて衝撃を感じる独自性があったか、と言われると微妙な感じで、そういう意味では「傑作」であることは間違いないのですが、それなりにベテランバンドらしい、良くも悪くも「まとまり」を感じるような作品になっていました。とはいえ、いいアルバムには間違いありません。ロックリスナーはもちろん、広く音楽好きにお勧めできる1枚です。

評価:★★★★★

TORTOISE 過去の作品
IT'S ALL AROUND YOU
Beacons Of Ancestorship
Why Waste Time?
The Catastrophist


ほかに聴いたアルバム

EP #2/KINGS OF LEON

Ep2kingsofleon

アメリカのロックバンド、KINGS OF LEONの4曲入りとなる、タイトル通りのEP盤。毎回、比較的正統派なロックを聴かせてくれる彼らですが、今回のアルバムもまた同様。4曲のみなので、彼らの本領発揮、といった感じではないのですが、ラストの「The Wolf」ではシンセを入れて、今風のサウンドを取り入れつつも、基本的にシンプルで骨太なロックを聴かせてくれます。ロックが好きならいい意味で安心して聴ける良作です。

評価:★★★★

KINGS OF LEON 過去の作品
Only By The Night
COME AROUND SUNDOWN
WALLS
When You See Yourself
Can We Please Have Fun

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2026年1月30日 (金)

コムアイ時代の曲も収録

Title:日本武道館単独公演~METEOR SHOWER~
Musician:水曜日のカンパネラ

2024年3月16日に行われた、水曜日のカンパネラとしては2回目、ボーカルが詩羽に変わってからははじめてとなる日本武道館ライブの模様を収録したライブ盤。マテリアルとしてはBlu-rayとして映像版でのリリースとなりますが、音源部分だけ配信版としてリリースされていますので今回はそちらで聴いてみました。

ご存知の通り、水曜日のカンパネラは2021年に初代ボーカリストのコムアイが脱退。2代目ボーカリストとして詩羽が引き継ぎました。水カンは3人組のユニットですが、表に出てくるのがボーカルのみであり、事実上、ボーカル単独のユニット的な見方もされることも多い分、そのボーカルが変わるという決断には驚かされましたが、それから5年、もう水カン=詩羽というスタイルが完全に定着してしまいました。

今回のライブ盤で特徴的なのはコムアイ時代の曲も詩羽が歌っているという点。「シャクシャイン」「ラー」「桃太郎」などといったコムアイ時代の人気曲もしっかりとセットリストに加えられています。これらの曲がライブ盤という形で詩羽ボーカルで聴けるというのは興味深い点であり、ある意味、コムアイと詩羽の間のバランスを絶妙に取っているように感じます。というのは、確かにコムアイ時代の曲を詩羽ボーカルで聴くとどうなるのか、というのは興味がある点である一方、水曜日のカンパネラとして、あらためて、これらの曲を詩羽で録り直しリリースする、という話になれば、コムアイの曲を詩羽で塗りつぶしたような印象を受け、まるでコムアイ時代の曲を否定するかのようで、昔からのファンとしては複雑に感じてしまいます。

その点、ライブ盤という形であれば、あくまでもライブという場でのカバーであり、コムアイ時代の曲を詩羽ボーカルで塗りつぶすような感覚もなく、純粋に両者のボーカルの違いによる曲の変化を楽しむことが出来ます。そういう意味でも、こういう方でライブ盤で、コムアイ時代の曲を聴けるというのは非常に興味深い試みにも感じました。

そして、このライブ盤であらためて感じるのは、コムアイと詩羽のボーカルスタイルの違い。比較的、無機質さを感じつつ淡々と歌い上げていたコムアイに対して、詩羽は、キュートだったり、時としてドスを利かせたりことすらあるボーカルスタイルで、感情を込めた歌い方をします。例えば「赤ずきん」などは、まさにこの詩羽のボーカルスタイルだからこそ生きた1曲と言えるでしょう。

しかしおもしろいのは、詩羽ボーカルでもコムアイ時代の曲も難なくマッチした点でした。例えば「シャクシャイン」や「ラー」などはコムアイボーカルのスタイルが生きた、淡々とした楽曲なのですが、これらの曲も詩羽は難なくこなし、一方、「桃太郎」などは、詩羽ボーカルのスタイルを上手く生かして、歌詞の物語性な部分がより強調されたように感じます。なによりも、詩羽時代の楽曲はもちろんのこと、コムアイ時代の曲もしっかり歌いこなせる彼女のボーカリストとしての実力を再認識できるライブ盤となっていました。

収録曲はベスト盤的な選曲になっていますし、コムアイ時代の曲も詩羽ボーカルで文句なしに楽しめる内容になっています。あらためて映像版も見てみたいなぁ・・・とも感じてしまったのですが、なによりもまた、水カンのライブにも足を運びたくなりました。そんな詩羽のボーカリストとしての実力を再認識できるライブ盤でした。

評価:★★★★★

水曜日のカンパネラ 過去の作品
私を鬼ヶ島へ連れてって
ジパング
UMA
SUPERMAN
ガラパゴス
猫は抱くもの(オリジナル・サウンドトラック)
YAKUSHIMA TREASURE(水曜日のカンパネラ&オオルタイチ)
ネオン
RABBIT STAR★
POP DELIVERY
可愛い女子


ほかに聴いたアルバム

愛米 〜FANtachy selection〜/米米CLUB

デビュー40周年を記念してリリースされた米米CLUBのベスト盤。ネット上でのファン投票によって選ばれた20曲と、米米に関わったスタッフによって選ばれた20曲の計40曲を収録したアルバム。ファンや関係者によるセレクトということもあって、「浪漫飛行」「君がいるだけで」のような大ヒットした代表曲から、「Shake Hip!」「FUNK FUJIYAMA」のような、初期米米で多かったファンク系の曲、さらには「そーリーミュージック」と自称していた、おふざけソングまで、幅広く網羅したベスト盤となっており、彼らの様々な側面を知れるベスト盤となっています。ただ、現時点での直近作となる前作もベスト盤でしたし、以前にもファン投票によるベスト盤はリリースしていますし、何枚目のベストだよ?といった印象も。内容的には文句なしに5つですが、そんな点を考慮して、1つマイナスで。

評価:★★★★

米米CLUB 過去の作品
komedia.jp
米米米~SUNRICE~
LAST BEST~豊作参舞~

Long Story Short/古内東子

古内東子の約2年ぶりとなる新作。彼女の代表曲「誰より好きなのに」のアレンジを手掛けた小松秀行が全編アレンジを手掛け、「Long Story Shot=要するに」というアルバムタイトルが示すように、古内東子らしい作品が並ぶアルバムで、全8曲入りという比較的短めな内容も、まさにアルバムタイトルに沿ったものといった感じでしょうか。ピアノを中心にジャジーに、メランコリックに聴かせるスタイルは古内東子らしい作風。一方で、以前に比べるとサウンド面での分厚さが増したのは、今風にアップデートしている部分か?彼女らしい作風はファンなら安心して楽しめる内容である一方、目新しさはちょっと薄かったかも。

評価:★★★★

古内東子 過去の作品
IN LOVE AGAIN
The Singles Sony Music Years 1993~2002
Purple

透明
夢の続き
and then...~20th anniversary BEST~
Toko Furuuchi with 10 legends
After The Rain
誰より好きなのに~25th anniversary BEST~
体温、鼓動
魔法の手 Deluxe Edition
果てしないこと

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2026年1月29日 (木)

今週もアイドル系が上位に並ぶ

今週のHot Albums

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

今週もHot Albumsはアイドル系が上位に並んでいます。

まず今週1位は旧ジャニーズ系アイドルグループSixTONESの初のベスト盤「MILESixTONES-Best Tracks-」が獲得。CD販売数1位。オリコン週間アルバムランキングは初動売上57万7千枚で1位初登場。前作「GOLD」の初動42万2千枚(1位)よりアップしています。

2位は韓国の男性アイドルグループENHYPEN「THE SIN:VANISH」が先週の33位からランクアップし、2週目にしてベスト10入り。CD販売数2位、ダウンロード数6位、ストリーミング数10位。彼ら7枚目となるミニアルバム。オリコンでは初動売上28万9千枚で2位初登場。前作「DESIRE:UNLEASH」の初動30万5千枚(1位)からダウン。

3位は同じく韓国の男性アイドル、SEVENTEENのDKとSEUNGKWANによるユニット、DxSのデビューミニアルバム「Serenade」が獲得。CD販売数3位。オリコンでは先週、ベスト50圏外で初登場。今週は9万8千枚を売り上げて3位にランクインしています。

4位以下の初登場盤ですが、5位に韓国の芸能事務所XGALX種族の日本人女性アイドルグループXG「THE CORE-核」が初登場。8位には2022年に「Overdose」が大ヒットを記録したシンガーソングライターなとりの2枚目のアルバム「深海」がランクインしています。

ロングヒット組は、6位にNumber_i「No.ii」がランクイン。これで18週連続のベスト10ヒット。7位には藤井風「Prema」がランクイン。こちらは21週連続のベスト10ヒット。BE:FIRST「BE:ST」は9位にランクイン。13週連続のベスト10ヒット。そして10位には「Dear Jubilee-RADWIMPS TRIBUTE-」がランクイン。こちらは10週連続のベスト10ヒットとなりました。一方、Mrs.GREEN APPLE「ANTENNA」は13位にランクダウン。ベスト10ヒットは通算62週で再度ストップとなっています。


今週のHeatseekers Songs

https://www.billboard-japan.com/charts/detail?a=heat_seekers

Heatseekers Songsはレトロリロン「リコンティニュー」が2週連続で1位を獲得しています。ラジオオンエア数は先週と変わらず4位。Hot100では53位から51位にアップしています。


今週のニコニコVOCALOID SONGS

https://www.billboard-japan.com/charts/detail?a=niconico

今週のボカロチャート1位はryo(supercell)「メルト CPK Remix!」が獲得。ryoはかなり懐かしい名前で、彼を中心とするクリエイター集団supecellを結成。2000年代後半からボカロシーンで活躍し、2009年にリリースした「君の知らない物語」がオリコンチャートでベスト10入りするなど大ヒット。ボカロがまだほとんど一般的に知られていない中で、最初に一般チャートでヒットを飛ばしたミュージシャンとして、いまのボカロシーン興隆の嚆矢的なミュージシャンと言えるでしょう。久しく名前を聴いておらず、今回これで復活なのか?と思ったのですが、本作はNetflix映画「超かぐや姫!」のためにリミックスした作品のよう。見事1位を獲得したのは、やはり懐かしく思ったリスナーも多かったのでしょうか。ちなみに2位マサラダ「どこにもいかない」3位ピノキオピー「不死身ごっこ」もいずれも初登場。今週はベスト3が入れ替わる結果となっています。

今週のHot Albums&Heatseekers&ボカロチャートは以上。チャート評はまた来週の水曜日!

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2026年1月28日 (水)

2週連続ミセス&米津が1、2フィニッシュ

今週のHot100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

1位2位は先週と変わらず。

1位はMrs.GREEN APPLE「lulu.」が先週に続いて獲得。ただし、ダウンロード数は1位から3位、ストリーミング数は1位から2位、動画再生回数も2位から5位にダウン。一方、ラジオオンエア数は6位から1位にアップしています。一方、「ダーリン」は今週10位から28位に大幅ダウン。チャートイン53週目となりリカレントルールが適用された模様。今週、ミセスは1曲のみのランクインとなっています。

2位も先週から変わらず米津玄師「IRIS OUT」が獲得。これで19週連続のベスト10ヒット&ベスト3ヒット。ストリーミング数は今週再び1位にアップ。動画再生回数も6週連続、カラオケ歌唱回数は4週連続の1位を獲得しています。

3位は初登場。男性アイドルグループSTARGLOW「Star Wish」。CD販売数1位、ダウンロード数5位、ラジオオンエア数2位、動画再生回数8位。SKY-HIが設立したBMSG所属でBE:FIRSTの後輩グループ。本作がデビューシングルとなります。オリコン週間シングルランキングでも初動売上4万2千枚で1位初登場となっています。

続いて4位以下の初登場曲ですが、まず5位にWEST.「愛執」がランクイン。以前、ジャニーズWESTと名乗っていたグループ。テレビ朝日系ドラマ「ぜんぶ、あなたのためだから」主題歌で、配信限定シングル。ダウンロード数で1位を獲得し、総合順位はこの位置となっています。

そして9位にはMr.Children「Again」が初登場でランクイン。TBS系ドラマ「リブート」主題歌で、こちらも配信限定シングル。ダウンロード数2位、ラジオオンエア数6位。

また、今週ベスト10圏外からの返り咲きとして、HANA「NON STOP」が先週の13位から10位にランクアップし、2週ぶりにベスト10返り咲き。ストリーミング数が8位から7位にアップしたほか、動画再生回数が10位から4位に大幅アップ。HANAは今週、「Blue Jeans」が7位、「ROSE」が8位にランクインしており、3曲同時ランクインとなりました。これで「Blue Jeans」は通算26週目、「ROSE」は通算32週目のベスト10ヒットとなります。

ロングヒット曲は、他にはスターダストプロモーション所属の男性アイドルグループM!LK「好きすぎて滅!」が今週6位にランクイン。これで8週連続のベスト10ヒットとなりました。昨年の紅白出場などで徐々に注目を集め、昨年は「イイじゃん」がTikTok動画などでヒット。本作もそれに続くヒットとなっているようです。

今週のHot100は以上。明日はHot Albums&Heatseekers&ボカロチャート!

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2026年1月27日 (火)

オーケストラと実験的な音楽性とポップを融合

Title:LUX
Musician:ROSALÍA

アルバムをリリースする毎に高い評価を得て、彼女の母国スペインやラテンというジャンルを超えて、今、最も注目されるシンガーソングライターとなったROSALÍAのニューアルバム。前作「MOMOMAMI」も高い評価を得て本国スペインのチャートで1位、ビルボードのTop Latin Albumチャートでも3位を獲得しましたが、本作ではスペインでのチャート1位はもちろん、ついにビルボードのHot200でも4位、イギリスのナショナルチャートでも4位を獲得。まさに人気の面でもラテンという枠組みを超えた大ヒット作となっています。

そんな本作の大きな特徴はオーケストラのアレンジを大胆に導入しているという点でしょう。オープニング的な1曲目「Sexo,Violencia y Llantas」では叙情的なピアノの音色でスタート。静かなストリングスの音色をバックに、彼女が力強く歌い上げるボーカルが印象に残りますし、前半で特に特徴的なのが「Mio Cristo Piange Diamanti」。オーケストラの音色をバックに力強く響くロザリアのボーカルで、実にスケール感のある作品となっています。

ただ、単純にポップスとオーケストラの融合という、よくありがちな単純な組み合わせにはなっていません。例えば「Divinize」ではストリングスのアレンジに加えて、打ち込みのビートやラテン風なリズムを取り入れ、独特の作風に仕上げていますし、「Dios Es Un Stalker」でもベースラインを生かした独特のビート感で、不穏な作風に仕上がています。また「La Rumba Del Perdón」ではルンバのリズムを取り入れるなど、ラテンのモチーフも要所要所に聴くことが出来、本作の音楽性を広げる大きな要素となっています。

そして本作のハイライトとも言えるのが中盤の「Berghain」でしょう。オーケストラに合唱を取り入れた、アルバムを最高潮に盛り上げるダイナミックなナンバー。後半はなんとかのビョークも参加。独特の世界観を繰り広げています。この作品、聴いていてなんかビョークっぽいなぁ、と思ったらビョークでした(笑)。ある意味、ビョークが登場すると、完全にビョークの色に染まっちゃうところがすごいなぁとも感じるのですが。

このダイナミックな「Berghain」から、続く「La Peria」は一転、オーケストラアレンジを取り入れつつも、基本的にシンプルでかわいらしいポップソングに。この振れ幅も大きな魅力ですし、オーケストラや様々な音楽的要素を取り入れた実験的な作風も彼女の魅力ながら、それ以上にそこで聴かせる彼女の歌が、基本的にちゃんとメロディーラインを聴かせるポップソングに仕上がっているという点も大きな魅力。例えば終盤の「Memória」も、まさに「泣きメロ」とも言えるメロディーを聴かせてくれて、グッと心に響くバラードナンバーとなっています。

さらに前作「MOTOMAMI」では日本をイメージさせる曲や、渋谷でPVを撮った曲などが登場しましたが、本作では、「Porcelana」では、なんと日本語が歌詞の中で登場。本作はアメリカのラッパーDougie Fが参加し、HIP HOPを取り入れた楽曲となっていますが、江戸時代の尼僧、了然にインスピレーションを受けて書かれた曲だとか。黄檗宗の禅僧に入門を願ったが、その美貌のため入門を許されず、そのため自ら顔面を焼いて入門を許されるというすさまじいエピソードを持っているそうです。正直、日本人にも知る人ぞ知る的な歴史上の人物を、なぜ彼女が知ることになったのか不思議なのですが・・・。

オーケストラを使ったスケール感ある作風に、そこにエレクトロやHIP HOP、あるいはラテンの要素を取り入れた挑戦的な作風、さらにはポップなメロディーラインと彼女の清涼感あり力強い、美しい歌声というポピュラリティーある側面が上手くバランスし、見事に融合した傑作アルバム。2025年を代表するアルバムとして高い評価を得ている作品ですが、それも納得の文句なしの傑作でした。

評価:★★★★★

ROSALIA 過去の作品
El Mal Querer
MOTOMAMI


ほかに聴いたアルバム

Rhythm Immortal/Carrier

Rhythmimmortalcarrier

イギリスのテクノミュージシャン、ShiftedことGuy BrewerによるプロジェクトCarrierのフルアルバム。かなりダウナーでドローンな雰囲気のエレクトロサウンドが特徴的。アンビエント的な要素も強く、かなり不気味な雰囲気が大きな特徴となっています。派手さやポップスさがほとんどない音楽性なのでちょっと好き嫌いはわかれそうな感じが。独特な音世界は、人によっては癖になるかもしれませんが。

評価:★★★★

Everybody Scream/Florence+The Machine

毎作、独特な音楽性を聴かせてくれる作品で高い評価と人気を確保しているイギリスのロックバンド、Florence+The Machineの約3年ぶりとなるニューアルバム。その荘厳で力強いサウンドが毎作、強い印象を与えてくれるのですが、今回のアルバムはいままでの作品以上に特に荘厳さを感じさせる世界観が特徴的。ただ、その結果、前作では感じた、荘厳さの中で感じられる、いい意味での聴きやすいポップスさがちょっと薄れちゃった感もあります。独特の世界観はもちろん健在なので、好きな方にとってははまりそうな作品ですが。

評価:★★★★

Florence+The Machine 過去の作品
CEREMONIALS
High As Hope
Dance Fever

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2026年1月26日 (月)

独特なセレクションにジャズの「奥深さ」を感じる

今回は、最近読んだ音楽関連の書籍の感想です。

「20世紀ジャズ名盤100」。音楽評論家で、自らもサックス奏者としても活躍する大谷能生による著作。以前紹介した「日本語ラップ名盤100」「ヒップホップ名盤100」と同じシリーズの1冊となります。

本書は21世紀から見た20世紀の100年間のジャズを振り替えるというコンセプトで選ばれた100枚のアルバム。まず、この100枚ですが、非常にユニークなセレクトになっています。この手のジャズの名盤を紹介する本は数多く出ていますが、おそらく、そこで選ばれているアルバムと、本書で紹介されているアルバムは大きく異なります。もちろん、チャーリー・パーカーやマイリス・デイビス、ビル・エバンスやソニー・ロリンズ、ジョン・コルトレーンなど、おなじみのレジェンドたちもしっかりとフォローされています(ただ、そこで紹介されているアルバムは、「名盤ガイド」で紹介されそうなアルバムとちょっとずれていたりもします)。しかし、それ以上に、この手の名盤ガイドであまりピックアップされないような、というか、ジャズ初心者である私にとっては、名前を完全にはじめて聴くようなミュージシャンたちが数多く取り上げられています。

そんなミュージシャンたちが取り上げられている背景として、大谷能生がセレクトするジャズの基準が、ちょっと独特という点があります。まず本書の第1章「ポップスの古層としてのジャズ」では、戦前において、「ジャズ」という音楽がアメリカンポップの代名詞的に用いられていた時代を踏まえた上での「ジャズ」が紹介されています。そのため、一般的に今となっては「ジャズ」というジャンルからちょっと外れそうなミュージシャンも紹介されています。例えばベッシー・スミスやルイ・ジョーダンが紹介されていますが、おそらくこれらのミュージシャンは、今ではジャズではなくブルースの枠組みで紹介されることが多いと思います。ただ、今ではブルースと分化されたジャンルを含めて、当時は「ジャズ」とひとまとまりとなっていた音楽をひとくくりにすることにより、戦前の黒人ポップスの幅広さ、奥深さを浮き上がらせようとしている点が、本書の大きな特徴となっています。

もうひとつの要素が、2章以降で見受けられる、「先駆的、実験的な音楽としてのジャズ」という基準でした。正直、ここで取り上げられているアルバムのほとんどが、私が聴いたことないアルバムばかり。そのため、詳しいことはわかりませんが、解説文を読む限り、結構、フリージャズのミュージシャンが多く取り上げられていたような印象を受けます。フリージャズというジャンルは、今でも賛否あるジャンルであり、そのわかりにくさもあって、この手の「ジャズ名盤」的なアルバムではさほど取り上げられない印象も受けます。ただ、本書ではそんな実験的なジャズも多く取り上げられているような印象を受けます。その結果としておそらく著者としては、ともすれば現在、「大人のムーディーな音楽」と捉えられがちなジャズというジャンルが、実は非常に挑戦的、先駆的なジャンルであるという点を強調しようとしているように感じました。

結果として、この手の名盤ガイドは通常、初心者向けであるケースが多いのですが、正直本書に関しては、決して初心者向けではありません。むしろ、完全にジャズの初心者が、最初に聴くアルバムの参考として本書を選ぶと、若干、困惑しそうな印象も受けます。ある程度、一般的に言われるようなジャズの名盤を一通り聴いた後に、ジャズの他の側面を知るためにチェックすべき次の100枚、そんな印象を受ける1冊でした。

ただ一方で、初心者向けではない1冊ですが、文体については比較的読みやすく、ある程度固有名詞が多く登場してくる点、途中ひっかかる部分はあるものの、ジャズの初心者でも読みやすい内容になっていたように感じます。ここらへんは著者の文才による部分が大きいようにも感じるのですが・・・。

ちなみに本書のもうひとつ大きな特徴として、日本のジャズミュージシャンが多く取り上げられている点があります。戦前はあきれたぼういずという、今となってはあまりジャズというジャンルで取り上げられなさそうなヴォードヴィルグループが取り上げられていますし、戦後も阿部薫や山下洋輔など、日本のジャズシーンを代表するミュージシャンなれど、洋楽メインの名盤ガイドではあまり取り上げられないミュージシャンたちも多く取り上げられています。日本のジャズを紹介する名盤ガイドは正直少ない印象も受けるため、この点はちょうどよい名盤ガイドと言えるかもしれません。

かなり独特なセレクションで、この手の名盤ガイドに飛びつきそうな初心者にとっては必ずしもお勧めできる1冊ではないかもしれませんが、通常の名盤ガイドとはまた異なるジャズの側面を垣間見ることの出来る100枚で、一言で「ジャズ」という名前で括られても、その音楽性には非常に幅広いものがあるというジャズの奥深さを感じられる名盤ガイドになっていました。私も正直、ジャズに関してはあまり詳しくないので、この名盤をもとにいろいろ聴いていこうかどうかはちょっと躊躇するのですが・・・それでもまだ知らない「ジャズ」の奥深さを感じる、非常に興味深い1冊でした。

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2026年1月25日 (日)

21世紀の"ラテン"を聴く その2

前回の更新に続き、「ゼロからわかる!ラテン音楽入門」の「21世紀の"ラテン"を聴く10人の10枚」として紹介されていた作品を聴いてみた感想となります。

Title:Cosa Nuestra
Musician:Rauw Alejandro

プエルトリコ出身のシンガーソングライターによる5枚目のアルバム。高い人気を誇るシンガーで、本作はビルボードのトップ・ラテン・アルバムで1位を獲得しているほか、Billboard 200でも最高位6位を獲得しているなど、その人気ぶりを発揮しています。また本作ではPharrell WilliamsやBad Bunnyなどそうそうたるメンバーもゲストとして参加ている点も注目の作品となっています。

楽曲は基本的にサルサやレゲトンをベースとしつつ、幅広い音楽性を感じられる展開となっており、エレクトロ色が強い「Espresso Martini」やトラップを取り入れた「IL Capo」など、様々な作風を楽曲に取り入れています。ただ、全体を流れるのは、彼のメロウな歌声で聴かせるアーバンな雰囲気の作風。R&B的な要素も強く、ムーディーに聴かせる楽曲も目立ちます。

ただ、いろいろな作風に挑戦している一方で、無難さを感じるアーバンポップも少なくなく、その点には物足りなさも感じます。また全18曲、1時間超えという内容も、ちょっと長さを感じてしまい、マイナス要素。全体的にはビルボードチャートでのヒットを示すように、ラテンコミュニティーにとらわれず広い層が楽しめるアルバムだとは思うのですが、ちょっとマイナス点も感じてしまう作品でした。

評価:★★★★

Title:Cancionera
Musician:Natalia Lafourcade

こちらはメキシコを代表するシンガーソングライターによる最新作。ラテングラミー賞はもちろん、グラミー賞にも何度かノミネートされ、ベスト・ラテン・ポップ・アルバム他、何度かグラミー賞への受賞経験もある、実力人気兼ね備えたミュージシャンだそうです。

まずは全編、ムーディーな作風が目立つ作品に。特に「Cariñito de Acapulco」をはじめ、ジャジーな要素を取り込んだムーディーな曲が目立ちます。ラテンな要素を取り込んだタイトルチューンの「Cancionera」をはじめ、ある意味、ラテンらしいといえるムード感満点な作品が多く、まさに「大人のポップス」という印象がピッタリ来そうなアルバムになっています。

ただ、そんな中に「El Palomo La Negra」のようなパーティーチューンのような、ルンバの楽曲や、フォーキーな雰囲気で、かわいらしいポップという印象を受ける「El Coconito」など、楽曲のバリエーションも。まさに、メキシコを代表するミュージシャンらしい、楽曲の幅を感じさせるような楽曲も並びます。

そんな大人のポップをしっかりと聴かせてくれるアルバムなのですが・・・正直、最後まで聴いてちょっとダレてしまったのは、全編14曲75分強という楽曲の長さ。ちょっと長すぎるかなぁ、と感じてしまいました。その点はマイナス要素。ただ、ムーディーなメロディーラインは日本人の琴線にも触れそうですし、比較的広いリスナー層が楽しめそうな作品でした。

評価:★★★★

Natalia Lafourcade 過去の作品
Natalia Lafourcade

Title:Tropicoqueta
Musician:KAROL G

コロンビア出身のシンガーソングライター KAROL Gの5枚目となるアルバム。ラテンという枠を超えて人気を博しているミュージシャンで、前作「Mañana Será Bonito」ではビルボードチャートでなんと1位を獲得。本作もビルボードで3位を獲得するなど、高い人気を獲得しているミュージシャンです。

ただ、ラテンという枠組みを超えて人気のある彼女ですが、このアルバムタイトルの意味するところは「ラテン全体の音楽文化への旅」だそうで、まさにラテンの様々な伝統音楽を横断するような内容になっているのが大きな特徴。例えば「Papasito」「LATINA FOREVA」ではレゲトンを取り入れていたり、「Cuando Me Muera Te Olvido」はクンビア、「Coleccionando Heridas」はボレロやバチャータ、「Ese Hombre Es Malo」はメキシコの伝統音楽など、ラテンの音楽を横断的に取り入れた展開が特徴となっています。

こういうラテンの伝統的な音楽を積極的に取り入れたアルバムが、ビルボードチャートで上位を獲得するあたり、ラテンというジャンルが、特にアメリカで受け入れられているということがよくわかります。ただ、いろいろなジャンルを取り込んでバリエーションを出した結果、ちょっと統一感が薄くなってしまった感も否めなかったような。アルバムとしては1時間弱という内容なのですが、その結果、ちょっと長く感じてしまったという点はマイナス要素かも。実にラテンらしい1枚である一方、惜しさも感じたアルバムでした。

評価:★★★★

そんな訳で、昨日今日と、「ゼロからわかる!ラテン音楽入門」で取り上げられたアルバムを紹介しました。それ以外にも何枚かアルバムを紹介されていましたが、それはみなさんでお確かめください。ラテンという音楽の魅力に様々な形で触れられたアルバムたちでした。

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2026年1月24日 (土)

21世紀の"ラテン"を聴く その1

今回と次回の更新は、以前当サイトで紹介した書籍「ゼロからわかる!ラテン音楽入門」の中で、「21世紀の"ラテン"を聴く10人の10枚」として紹介されていた作品を聴いてみた感想。いずれも2024年、2025年にリリースされた最近のアルバムとなります。このうちから何枚かを聴いてみたので、ここで紹介したいと思います。

Title:Las Mujeres Ya No Lloran
Musician:Shakira

おそらく、ここで紹介されているミュージシャンの中で、日本において最も知名度が高いのは彼女、シャキーラでしょう。1977年にコロンビアに生まれた彼女は、その後英語圏に進出し、ポップスターとして世界的な成功を収めています。直近でもディズニー映画「ズートピア2」の劇中歌「ZOO」が日本でもヒットを飛ばしています。

本作はそんな彼女が約7年ぶりにリリースしたオリジナルアルバム。2025年にグラミー賞で「ベスト・ラテン・ポップ・アルバム」を受賞するなど、高い評価を得た作品となっています。全体的には軽快なエレクトロポップの作風となっている本作。全編スペイン語で歌われている作品となっており、どちらかというとラテンコミュニティー向けの作品になっているものの、ポップな作風は広いリスナー層にとっていい意味で聴きやすい作品となっています。

楽曲は、「La Fuerte」のようなクラブ寄りのエレクトロポップがあったり、「Cohete」のような、ディスコ風のアイドルポップ色も強い作品もある一方で、「El Jefe」のようなメキシコの伝統音楽を取り入れた曲があったりと、基本的にラテンコミュニティーにとらわれない間口の広い音楽性を展開しつつも、コアなリスナー層に向けた作風もちゃんとフォローしており、こういう音楽性の幅広さ、バランス感覚の良さが、彼女を世界的なスターに押し上げた大きな要因なんだろうなぁ、とも強く感じました。「ラテンを聴く」というテーマの最初の1枚として間違いなくうってつけの1枚です。

評価:★★★★★

Title:Nacarile
Musician:iLe

Ile

プエルトリコ出身のシンガーソングライター、iLeことイレアナ・カブラによるアルバム。2023年のラテン・グラミー賞最優秀オルタナティヴアルバムにノミネートしています。「Nacarile」とは、プエルトリコの口語表現で、"nacarile del oriente"に由来し、困難を受け入れて前に進むという態度を意味しているそうです。今回は、ここに留まらない、前に進むという意味でアルバムタイトルに選んだそうです。

そんな「前に進む」というタイトルが象徴的で、実験的な音楽性と伝統的なラテン音楽を共存させたのが本作の特徴。アルゼンチンのラッパーTruenoを迎えた「Ningún Lugar」は幻想的な作風にHIP HOPの要素を取り入れた作品ですし、「En Cantos」はアートポップ寄りの作品。また「ALGO BONITO」ではレゲトンのリズムも取り入れています。一方、「Cuando Te Miro」では、ダークなエレクトロサウンドのトラックを用いつつ、メロディーラインは哀愁たっぷりのフォルクローレ的な作品に。「donde nadie más Raspira」でも哀愁たっぷりの歌をしっかりと聴かせてくれています。

ただ、全体的には実験的なサウンドを取り入れつつもポップで聴きやすくまとめている点も大きな特徴で、例えば「Lo Que Yo Quería」などはフォーキーに聴かせるシンプルなポップチューンとなっており、暖かみを感じられるメロディーが耳を惹きます。実験性とポピュラリティーのバランスを上手く取っている作品となっており、いい意味で広い層が楽しめる、かつラテン音楽の幅広さも感じさせる傑作となっていました。

評価:★★★★★

Title:Mimy&Tony
Musician:Mimy Succar&Tony Succar

Mimytony

現在、注目のミュージシャンのひとり、ペルー系アメリカ人のパーカッショニスト、トニー・スカールが2023年にリリースしたアルバムは、実の母親、ミミー・スカールとの共演盤。トニー・スカールは過去にラテングラミー賞を2度受賞していますが、本作ではグラミー賞の「ベスト・トロピカル・ラテン・アルバム」を受賞。高い評価を得ている作品となります。

さて、このアルバムで何と言っても注目なのは、かの坂本九の大ヒット曲「Sukiyaki」をカバーしていることでしょう。実はミミー・スカールは日系三世だそうで、本作も日本のサルサバンド、オルケスタ・デ・ラ・ルスと共演。冒頭に日本語タイトル「上を向いて歩こう」と紹介し、琴や和太鼓の音色を取り入れるなど、日本の意識した内容に。ミミーも日本語で歌っていますが、発音は結構上手く、おそらく日本語は話せないと思うのですが、ここらへん、日本をルーツに持つ方としての矜持を感じます。

楽曲はサルサで、哀愁たっぷりのメロディーラインとラテンらしい陽度のある軽快なサウンドとリズムが特徴的。おそらく、日本人が一般的に感じそうな「ラテンの楽曲」といった印象で、素直に楽しめる作品となっています。トニーの奏でる軽快なパーカッションのリズムも、大人の女性としての力量をしっかりと感じられるミミーのボーカルも魅力たっぷり。ある意味、典型的なラテンのアルバムといった感じですが、だからこそ、「Sukiyaki」含め、日本人にも文句なしに楽しめるアルバムとなっています。

評価:★★★★★

Title:Autopoiética
Musician:Mon Laferte

チリ出身でメキシコ在住の女性シンガー、Mon Laferteの作品。チリ人の中ではもっともラテングラミー賞へのノミネート回数が多いそうで、2017年にはシングル「Amárrame」がラテングラミー賞の最優秀オルタナティブ楽曲賞を受賞するなど、人気と実力を兼ね備えたシンガーだそうです。

本作は特に前半、ラテン音楽をベースとしつつ、クラブ系、エレクトロ系のサウンドを積極的に取り入れている挑戦的な作風が特徴的で、「NO+SAD」のようなレゲトンの楽曲やハードなテクノチューンを聴かせるタイトル曲の「Autopoíetica」など、クラブ系のビートの強いナンバーが並びます。後半は、このような実験的なサウンドを織り交ぜつつも、基本的には彼女の歌声でムーディーに聴かせるような楽曲がメイン。ギターで哀愁たっぷりに聴かせるフォーキーな「Levítico 20:9」、力強く歌い上げる哀愁たっぷりのボーカルが魅力的な「Pornocracia」、昔ながらのサルサをリズミカルに聴かつつ、メランコリックな歌が印象的な「Amantes suicidas」など、歌をしっかりと聴かせる楽曲が並びます。

彼女の過去の作品の中ではもっとも実験的な作風となっているそうですが、そんなサウンドも楽しめつつ、しっかりと彼女の魅力的な歌も楽しめる作品。全体的にはバラエティーに富んだポップアルバムとなっており、「実験的」でありつつも、幅広く楽しめる傑作に仕上がっていました。

評価:★★★★★

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2026年1月23日 (金)

60年代ポップグループの充実ぶりが目立つ

今回は最近読んだ音楽関連の書籍の感想です。

このサイトで何度か紹介しているMUSIC MAGAZINE増刊アルバム・セレクションシリーズ。前回まで、「60年代ブリティッシュ・ロック」「70年代ブリティッシュ・ロック」「80年代ブリティッシュ・ロック」とイギリスのロックのシリーズが続いていましたが、今回発売されたは「60年代アメリカン・ロック」。イギリスのロックがひと段落したのは、続いてはアメリカのロックのシリーズが続きそうです。

60年代といえば、いわゆるブリティッシュ・インヴェンションが音楽シーンに吹き荒れた頃。ビートルズをはじめとしたブリティッシュ・ロック勢の影響により、50年代までのアメリカのロック勢が一掃された頃。本書でもTHE 4 SEASONSのアルバムレビューの項に「まったく動じることがなかったのは一連のモータウン勢と、ビーチ・ボーイズと、そしてフォー・シーズンズだけだったとも言われる。」と記載されていますが、まさにブリティッシュ・ロック勢が世界のポップシーンを席巻した時期だったりします。

このアルバム・セレクションシリーズ、構成としては前半は「ARTIST PICKUP」として、この時期の重要なミュージシャンを個別に取り上げ、略歴と代表作の紹介、後半は年代ごとに分けて、その時代のその他のミュージシャンたちのアルバムを、基本1ミュージシャン1アルバムごとに紹介しています。今回、この「60年代アメリカン・ロック」を「60年代ブリティッシュ・ロック」と比較したのですが、その差が如実にあらわれているのが前半の「ARTIST PICKUP」。「60年代ブリティッシュ・ロック」では、実に21組ものミュージシャンたちがこのコーナーで取り上げられていますが、「60年代アメリカン・ロック」で取り上げられているのはわずか10組。それだけ、この時期に大きな影響を与えたミュージシャンたちが、イギリスとアメリカで大きな差があることがわかります。

一方、本書で非常に魅力に感じたのは、後半、年代別のアルバム紹介。前半の「ARTIST PICKUP」のコーナーが薄かった反動という面もありますが、この時期、ブリティッシュ・インヴェンションの中でもアメリカで活躍していたミュージシャンたちが多く取り上げられています。特に60年代前半に活躍したポップグループの紹介の充実ぶりには目を見張るものがありました。

今回、本書を手掛けたのは音楽評論家の萩原健太。もともと彼は、ビートルズ登場以前のポップシーンに関しても深い知見のある評論家で、以前にも、その時代のポップミュージシャンたちを取り上げた彼の著作「グレイト・ソングライター・ファイル 職業音楽家の黄金時代」を紹介したことがありますが、まさにそんな彼の評論家としての知見が反映された1冊となっています。

特にこの時期のアメリカのポップミュージシャンたちは、「ロックの歴史」を語る際に、あまりピックアップされることはありません。冒頭に、ブリティッシュ・インヴェンションの中、アメリカで動じることのなかった数少ないバンドであるフォー・シーズンズでも、今となっては彼らのアルバムが「ロックの名盤」として取り上げられることはあまりないように思います。ただ、本書では、今となってロック、あるいはポップスの歴史の中であまり語られることのないミュージシャンのアルバムについてもしっかりと取り上げられており、ブリティッシュ・インヴェンションの中、アメリカの音楽シーンがイギリス勢に席巻されたと言われても、数多くのアメリカのミュージシャンたちが活躍していたことがわかりました。

これを機に、ブリティッシュ・インヴェンションの影に、なかなか取り上げられる機会の少ない60年代のアメリカのロックシーンについても追いかけてみたくなる1冊。おそらく今後「70年代アメリカン・ロック」「80年代アメリカン・ロック」と発刊されると思うのですが、今後もどんなミュージシャンに出会えるか、楽しみです。

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2026年1月22日 (木)

こちらはアイドル系が上位に並ぶ

今週のHot Albums

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

バンド、SSW系が並んだHot100と異なり、Hot Albumsは今週もアイドル系が上位に並びました。

そんな中、1位初登場となったのが秋元康系女性アイドルグループ乃木坂46「My respect」が獲得。CD販売数及びダウンロード数で1位獲得。オリコン週間アルバムランキングでは初動売上19万2千枚で1位初登場。前作「今が思い出になるまで」の初動売上44万7千枚から大きくダウンしています。

2位には先週1位のKing&Prince「STARRING」がワンランクダウンでこの位置に。3位には韓国の男性アイドルグループNCT WISH「WISHLIST」が初登場で獲得。CD販売数2位、ダウンロード数17位。

4位以下の初登場盤では、韓国の男性アイドルグループALPHA DRIVE ONEのデビューアルバム「EUPHORIA」が9位に初登場しています。

以下、今週はロングヒット盤が目立つチャートとなっており、まず4位Number_i「No.Ⅱ」。17週連続のベスト10ヒット。5位藤井風「Prema」。20週連続。7位「Dear Jubilee-RADWIMPS TRIBUTE-」。9週連続。8位BE:FIRST「BE:ST」。12週連続。そして10位Mrs.GREEN APPLE「ANTENNA」。通算62週となっています。一方、Snow Man「THE BEST 2020-2025」は11位にダウン。こちらはベスト10ヒットが通算35週でストップとなっています。


今週のHeatseekers Songs

https://www.billboard-japan.com/charts/detail?a=heat_seekers

今週、Heatseekers Songsで1位を獲得したのはレトロリロン「リコンティニュー」。レトロリロンは2020年に結成し、昨年メジャーデビューしたばかりの男性4人組バンド。徐々に注目を集めているようで、ラジオオンエア数で4位を獲得。Hot100では53位にランクインしています。個人的には、何度見てもレミオロメンと空見してしまうのですが・・・。


今週のニコニコVOCALOID SONGS

https://www.billboard-japan.com/charts/detail?a=niconico

今週のボカロチャートは背面8回宙返り「いろはうた」が初登場で獲得。背面8回宙返りは2023年にボカロPデビューした、比較的若手のボカロP。本作はひらがな46文字をすべて使ったり、様々なギミックを用いた歌詞がユニークな内容になっているようです。2位はサツキ「メズマライザー」が再びアップしてきています。また3位は先週2位のMARETU「ファシネイター」がワンランクダウンながらもベスト3をキープしています。

今週のHot Albums&Heatseekers&ボカロチャートは以上。チャート評はまた来週の水曜日!

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2026年1月21日 (水)

今、人気のバンド、SSWがベスト3に並ぶ

今週のHot100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

最近、上位はアイドル系が目立っていましたが、今週は今をときめくバンド、SSWの楽曲がベスト3に並びました。

まず1位は初登場。Mrs.GREEN APPLEの新曲「lulu.」がランクイン。ダウンロード数及びストリーミング数1位、動画再生回数2位、ラジオオンエア数6位で堂々の初登場1位獲得。日テレ系アニメ「葬送のフリーレン」オープニングテーマ。第1期オープニングのYOASOBI「勇者」はロングヒットを記録しましたが、それに続けるのでしょうか。ちなみにミセスは「ダーリン」が7位からダウンしたものの今週も10位にランクインし、ベスト10ヒットを通算25週に更新。2曲同時ランクインとなっています。

2位は米津玄師「IRIS OUT」。1位は4週連続でストップしましたが、これで18週連続のベスト10&ベスト3ヒットとなりました。ストリーミング数は1位から2位に、ダウンロード数も2位から3位にダウン。ただ動画再生回数は5週連続、カラオケ歌唱回数も3週連続で1位を獲得しています。

さらに3位にはKing Gnu「AIZO」が先週の6位からアップ。TBS系アニメ「呪術廻戦」のオープニングテーマという好タイアップもあり、ロングヒットの予感のする展開となっています。

続いて4位以下の初登場曲ですが、まず4位に旧ジャニーズ系、Hey!Say!JUMPのメンバー、山田涼介ことRyosuke Yamada「Blue Noise」がランクイン。CD販売数1位。オリコン週間シングルランキングでは初動売上9万8千枚で1位初登場。CDシングルとしては2013年の「ミステリーヴァージン」以来となり、初動売上は同作の18万9千枚(1位)からダウンしています。

8位には、日韓合弁の芸能事務所LAPONEエンタテイメントの女性部門LAPONE GIRLS所属の女性アイドルグループIS:SUE「Phase」がランクイン。CD販売数2位。オリコンでは初動売上6万4千枚で2位初登場。前作「EXTREME DIAMOND」の初動5万4千枚(4位)からアップしています。

9位にはふみの「favorite song」が初登場。ラジオオンエア数1位、動画再生回数9位。ちゃんみな主宰のレーベル「NO LABEL ARTISTS」からデビューしたシンガー。ちゃんみなプロデュースのオーディション番組「No No Girls」に参加。合格したメンバーがHANAとしてデビューし、彼女はファイナリストとなったものの落選。ただ、その後、ソロとしてデビューすることとなり、本作はその第1弾。HANAのようなHIP HOP系かと思いきや、正統派のオルタナ系ギターロックとなっています。

そのHANAは、今週「Blue Jeans」が6位、「ROSE」が7位にランクイン。いずれも先週のベスト3ヒットからは陥落したものの、ベスト10をキープ。「Blue Jeans」は通算25週目、「ROSE」は通算31週目のベスト10ヒットとなっています。ただ、先週9位だった「NON STOP」は今週13位にダウン。

また先週までのロングヒット曲ではアイナ・ジ・エンド「革命道中」が11位に、Snow Man「カリスマックス」が12位にそれぞれダウン。ベスト10ヒットはそれぞれ通算17週、通算8週でストップとなっています。

今週のHot100は以上。明日はHot Albums&Heatseekers&ボカロチャート!

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2026年1月20日 (火)

メロウなR&Bとテクノ/ハウスが上手く融合

Title:THE BPM
Musician:Sudan Archives

Thebpm

アメリカのシンガーソングライターで、バイオリニストとしても活動するスーダン・アーカイヴスことブリトニー・デニス・パークスの3枚目となるアルバム。今回のアルバムは前作「Natural Brown Prom Queen」に続くアルバムという形ですが、前作以上にハウスやテクノ、クラブミュージックの要素が強く、彼女のメロウなR&B的な要素の強い歌とマッチし、非常に心地よくも、同時に高揚感も覚える作品に仕上がっていました。

アルバムは、まず挨拶代わりとも言うべき「DEAD」からスタート。最初はゆっくりメロウな彼女の歌を聴かせつつ、中盤以降、リズミカルなエレクトロビートが入り、徐々にダイナミックに盛り上がっていく構成は、メロウなR&B的な要素とリズミカルなエレクトロ要素を明確に表現しており、このアルバムを象徴するような楽曲と言えるでしょう。

序盤は比較的抑えめのビートで聴かせるようなタイプのナンバーが並びます。アフロビート的な要素を入れつつも抑え気味の「COME AND FIND YOU」、ハイトーンボーカルでメロウに聴かせる「TOUCH ME」など、まずはメロウなR&Bの歌という、彼女のひとつの側面を比較的前に押し出したような曲が並びます。

そして、リズミカルなエレクトロビートを前に押し出して高揚感あふれるのが中盤から。ピアノやバイオリンも取り入れてリズミカルに聴かせるハウスチューン「A BUG'S LIFE」で徐々に盛り上がり、「THE NATURE OF POWER」はリズミカルなテクノチューンで一気に気持ちが高ぶっていきます。エレクトロなトラックにHIP HOP的な要素も入れた「MY TYPE」も、リズミカルな彼女のラップで高揚感を覚えるようなナンバー。この中盤においては、エレクトロなダンスチューンという要素を押し出した曲が並んでおり、アルバムは新たな展開を迎えます。

その後もダウナーなノイズを前に押し出した「DAVID&GOLIATH」のようなナンバーや、リズミカルなテクノチューンであるタイトル曲の「THE BPM」、ちょっとエロティックな雰囲気を醸し出しているメロウなナンバー「MS.PAC MAN」など、硬軟入り混ぜたようなバラエティー富んだ展開となります。ただ、この後半に関しては、リズミカルなテクノチューンに関しても中盤ほどの高揚感はなく、どちらかというと、様々なタイプの曲をしっかりと聴かせているような印象を受けました。

そしてラストは、再びリズミカルなエレクトロトラックが印象的な「NOIRE」から、彼女のメロウな歌を聴かせる「HEAVEN KNOWS」で締めくくり。最終盤の2曲はスーダン・アーカイヴスの2つの側面を再び強調するような作品が並び、アルバムを締めくくります。

このように、彼女の歌声でメロウに聴かせるR&B路線のポップスと、テクノ、ハウスの要素を強く入れたエレクトロ路線をバランスよく両立し、上手く融合させた作品となっています。メロウな歌に耳を傾けたかと思えば、アップテンポなエレクトロチューンに高揚感が高まる、1枚のアルバムで様々に楽しめる傑作だと思います。ちなみに彼女、バイオリニストですが、今回もバイオリンの要素は少な目。ただ、曲によってはバイオリンの音色を上手くつかっている曲もあり、その点はバイオリニストとしての彼女の顔を覗かせるナンバーも。R&B好きやテクノ好きなど幅広い層が楽しめる傑作です。

評価:★★★★★

Sudan Archives 過去の作品
Natural Brown Prom Queen


ほかに聴いたアルバム

Power To The People/John & Yoko, Plastic Ono Band

1972年8月30日に、ニューヨーク、マディソン=スクエア・ガーデンで行われたチャリティーコンサートの模様を収録したライブ盤。昼夜2回公演で、その両方の模様が収録されています。ジョン・レノンにとって、ビートルズ解散後、初となる本格的なライブで、かつこれが最初で最後のライブとなってしまったようです。そういう意味で、非常に貴重なライブの模様を収録したライブ盤となります。

ビートルズ時代の曲も含めて、代表曲が並ぶセットリストで、そのライブ会場の雰囲気も収められており、70年代の空気感を感じられるライブ。その貴重さはもちろん、ライブ会場の雰囲気をパッケージしたドキュメンタリー的な作品にもなっていますし、また、耳なじみある名曲も数多く楽しめるライブ盤ということで、初心者からコアなリスナーまで幅広く楽しめるライブ盤となっています。

ただ一方、正直ちょっと辛いのが、オノヨーコの曲で、彼女に対するネガティブな評価は、少なからず女性差別やアジア人差別の要素も入るのであまり組したくはないのですが、アバンギャルドな作風と彼女のキンキン声は(素人が・・・という意見も見受けられるのですが、あのボーカルはわざとでしょう)、ライブの流れを阻害しており、邪魔に感じてしまいました。もっとも、当時のジョンレノンを理解するには、オノヨーコも含めて、なのでしょうから、仕方ないのかもしれませんが・・・。ただ、この点を差し引いても、素晴らしいライブアルバムなのは間違いないと思います。前述の通り、初心者含め広い層にお勧めできるライブ盤です。

評価:★★★★★

John Lennon 過去の作品
GIMME SOME TRUTH.

Cornucopia Live/Bjork

ビョークが「Cornucopia」ツアーの一環として実施した、2023年9月1日のポルトガル・リスボンのアルティス・アリーナで行われたライブの模様を収録したライブアルバム。様々なサウンドを取り込んだ、ダイナミックでドリーミーなステージになっており、ビョークの音世界を満喫できるライブアルバム。このツアー自体は、映像を交えて、全身で体感するステージだったようで、映像がない分、本来のライブの魅力を発揮できている訳ではないのかもしれませんが、それを差し引いても、ビョークのライブの魅力を十分に感じられる傑作のライブアルバムでした。

評価:★★★★★

Bjrok 過去の作品
biophilia
2012-02-12 NY Hall of Science,Queens,NY
Bastards
Vulnicura
Vulnicura Strings
Biophilia Live

utopia
Fossora

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2026年1月19日 (月)

ベタさと実験性がほどよくバランス

Title:ALL HAZE
Musician:TESTSET

高橋幸宏のバンド、METAFIVEから派生したバンド、TESTSET。そんな彼らの、フルアルバムとしては約2年3か月ぶりとなる新作がリリースされました。ご存じの通り、TESTSETといえば、砂原良徳、LEO今井、GREAT3の白根賢一、相対性理論の永井聖一というそうそうたるメンバーが集ったスーパーグループ。今回のアルバム「ALL HAZE(HAZE=霞)」とは、そんな豪華なメンバーが持つ様々な音楽性が、霞のように溶け合ったということに由来しているとか。全9曲入りとアルバムとしての曲数としては少な目ながらも、そんなTESTSETの特徴が発揮された1枚とあんっています。

まずなんといってもTESTSETの魅力というと、エレクトロとバンドサウンドが溶け合った、未来的なイメージのサウンドに、LEO今井の端正なボーカルが乗ってポップでロックにまとめ上げているスタイルでしょう。まずアルバム1曲目を飾る「Dry Action Pump」はまさにそんなTESTSETらしい作品。テンポよい四つ打ちのリズムにファンキーさも感じるロックなサウンドが重なり、LEO今井のボーカルで歌い上げる、ちょっとベタさを感じつつも非常にカッコいいエレクトロロックチューン。続く「Vapour Cream」は、こちらはもっとニューウェーヴ色が強く押し出された作品なのですが、こちらもLEO今井がロッキンに歌い上げるカッコいいナンバーとなっています。

そこからちょっと雰囲気が変わるのが3曲目「Neuromancer」。リズミカルなテクノポップ的な作品となっており、ボーカルは永井聖一が担当。より機械的、未来的な雰囲気の作品となっています。個人的には曲調が高橋幸宏を彷彿とさせる感じがあり、ひょっとしたら意識したのでしょうか。

その後も「Enso」は、ちょっとインダストリアルの色合いを感じたり、「Copit Feet」では90年代のクラブ系のサウンドを感じられたりと、テンポよいエレクトロサウンドという軸を保ちつつも、楽曲によって音楽性が変化していくのがユニークなところ。ただ、全体的に前半に関してはリズミカルでアップテンポな曲が多く、より「ロッキン」な側面を感じさせる曲が目立つ印象を受けます。

一方後半は、ミディアムテンポで抒情的なナンバーが続きます。ダウナーな雰囲気が漂うミディアムチューンの「Rabbit Hole」や、エレクトロサウンドの中にフォーキーな要素も感じられる「The Haze」など、アグレッシブな前半に対して、比較的しんみりと聴かせるタイプの楽曲が後半には並んでいます。そしてラストにはインスト曲の「Initiation」で締めくくり。砂原良徳によるエレクトロナンバーなのですが、ポップな歌モノの作品に比べると、かなり実験的なナンバーとなっていますが、この振れ幅もまた、TESTSETの大きな魅力と言えるでしょう。

そんなバラエティーに富んだ展開も楽しめる本作。また、TESTSETの大きな魅力と感じるのが、ベタさと先駆性のほどよいバランスで、特に前半はLEO今井ボーカルによるエレクトロロックという、ある意味、「ベタ」なカッコよさを感じる作品が、絶妙に凝ったエレクトロサウンドと上手くバランスが取れた作品が並びます。ただ、文句なしでカッコよかった前半に対して、ミディアムテンポ主導となる後半については、若干ダレたかな?という感じも否めず・・・。この点はちょっと惜しさも感じられました。

とはいえ、それを差し引いても、文句なしに傑作アルバムだったと思いますし、また、年間ベストクラスの作品だったと思います。スーパーグループなだけに、今後もどれだけコンスタントに活動を続けてくれるのかわからない部分もありますが・・・これからも俄然期待したくなる傑作です。

評価:★★★★★

TESTSET 過去の作品
EP1 TSTST
1STST
EP2 TSTST


ほかに聴いたアルバム

The Best of Your Christmas Day I II III & More/佐藤竹善

SING LIKE TALKINGの佐藤竹善が、2013年から発表してきたクリスマスカバーシリーズから楽曲をまとめたベストアルバム。クリスマス楽曲のスタンダードナンバーや、洋楽のカバーが中心に収録されており、彼ならではの清涼感ある伸びやかなボーカルで歌われています。全体的にジャジーに聴かせる楽曲が多く、佐藤竹善らしい大人なカバーアルバムに仕上がっています。良くも悪くも無難な内容といえば無難な内容なのですが、しっかりと期待を裏切らない、比較的万人にお勧めできるクリスマスカバーアルバムになっていました。

評価:★★★★

佐藤竹善 過去の作品
ウタジカラ~CORNER STONE 4~
静夜~オムニバス・ラブソングス~
3 STEPS&MORE~THE SELECTION OF SOLO ORIGINAL&COLLABORATION~
Your Christmas Day III
The Best of Cornerstones 1 to 5 ~The 20th Anniversary~
My Symphonic Visions~CORNERSTONES 6~feat.新日本フィルハーモニー交響楽団

Little Christmas
Don't Stop Me Now~Cornerstones EP~
Rockin’ It Jazz Orchestra Live in 大阪~ Cornerstones 7
radio JAOR ~Cornerstones 8~

Lost God of SASORI/凛として時雨

テレビアニメ「グノーシア」エンディングテーマの「Loo% Who%」を中心に収録された5曲入りのミニアルバム。彼ららしい狂おしいほどメランコリックなメロディーラインとシャウトが特徴的。良くも悪くも大いなるマンネリといった感じはするのですが、凛として時雨らしく、聴いていて素直に心地よさは感じます。あえて言えば、以前よりヘヴィネスさが増した感も?ちゃんと凛として時雨らしさが楽しめるEP盤です。

評価:★★★★

凛として時雨 過去の作品
just A moment
still a Sigure virgin?
i'mperfect
Best of Tornado
es or s
#5
#4 -Retornado-
last aurorally

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2026年1月18日 (日)

人気投票による代表曲が並ぶベスト盤

Title:30周年記念ベストアルバム M30~Your Best~
Musician:坂本真綾

タイトル通り、歌手生活30周年を迎える人気声優の坂本真綾。声優が歌手としてデビューし、人気を博するケースは珍しくありませんが、その中でも彼女は、シンガーとしても声優という枠組みを超えて高い評価を受け、人気を得てきていました。今回のアルバムはタイトル通り、そんな彼女の歌手生活30周年を記念してリリースされたベストアルバム。全2枚組のアルバムで、彼女の代表曲が収録されたオールタイムベストとなっています。

ただ、今回のベスト盤は構成がなかなかユニークで、Disc1はファンの人気投票によるベスト15をそのまま並べた内容。ある意味、何の工夫もないのですが、逆にある種の潔さを感じさせます。一方、Disc2は彼女の音楽仲間たちによるセレクト曲を並べた内容。おなじみ菅野よう子や作詞家の岩里祐穂、Perfumeののっちなど、なかなかそうそうたるメンバーがセレクトに参加しています。

個人的に彼女のアルバムについては、比較的過去の作品から一通りチェックしているのですが、今回、特にこのDisc1の作品についてはあらためて聴いて「彼女の曲って、こんなに素晴らしかったっけ??」と改めて彼女の魅力を再認識させられました。まずはやはり人気No.1となった冒頭を飾る「プラチナ」が絶品。おなじみ菅野よう子の手による楽曲ですが、サビに向かって、絶妙にメジャーコードとマイナーコードを入り混じる転調の連続となるメロが素晴らしく、メジャーコードの爽やかさとマイナーコードによるメランコリックさが微妙にまじりあったメロが強いインパクトを与えます。複雑な構成にも関わらず、ポップに聴かせている点も絶妙で、確かに人気第1位となる結果もよくわかります。

また、同様に、転調を取り込んだ複雑なメロをポップにまとめあげ、効果的に聴かせるのが「マメシバ」で、ネオアコ的な作風で、どんどんと展開していくメロディーラインにグッと惹きつけられる楽曲。こちらもおなじく菅野よう子のメロディーラインがキラリと光る作品となっています。

このベスト15については、やはり菅野よう子作曲による楽曲が多いのですが、一方でそれ以外の作家陣による曲も少なくなく、その結果、楽曲のバリエーションがグッと増している点も特徴的。例えばthe band apart作曲による「Be mine!」は勢いのあるギターロックの作品となっており、ストリングスやシンセも入れた賑やかなサウンド構成も魅力的。また、坂本真綾本人が作詞作曲を手掛けた「これから」も、郷愁感あふれるバラードナンバーとなっており、こちらも決して他の作家陣に負けない魅力的な作品に仕上がています。その他にも菅野よう子作品となるのですが、エレクトロサウンドを取り入れた「blind summer fish」や、エッジの効いたバンドサウンドでリズミカルに聴かせる「coming up」、ピアノとバンドサウンドで分厚く祝祭色を感じるメロとサウンドが特徴的な「eternal return」、ホーンセッションを入れて楽しくわくわくするような、音楽の楽しさをそのまま表現している「シンガーソングライター」など、バリエーションのある音楽性が魅力的となっています。

ただ、それだけ様々なタイプの楽曲、様々な作家陣を起用しつつ、楽曲全体としてちゃんと統一感を覚えるのは、なんといっても清涼感あふれる坂本真綾のボーカルの魅力があるからでしょう。彼女のボーカルは、万人の耳を惹くクリアボーカルを持ちつつも、一方で、変な癖みたいなものはなく、それもまた、広い層から支持される理由でしょうし、また、「声優」という枠組みを超えて評価を受けている理由なのでしょう。今回、彼女の代表作をあらためて聴いて、そんなことを感じました。

また、今回、あらためて彼女の代表曲を聴いて感じた点のひとつが、彼女の曲に「アニソンっぽさ」を感じなかった点。昔、彼女の曲に関しては、「いかにもアニソンっぽいなぁ」と感じていたのですが、このベスト盤の曲に関しては、そんないかにもアニソンといった印象はほとんど抱きませんでした。ひょっとしたら当初聴いた時点で、彼女が声優アイドルということで、そういう偏見があったのかもしれません。また、昨今、アニソン歌手の流行で、アニソンとしての様式化がひょっとしたら進んでしまっているのかもしれません。ただ、今から聴くと彼女の楽曲はシンプルなソフトロックの色合いが強く、むしろアニソンとしての色は薄く感じます。正直、この印象についてはちょっと意外に感じてしまいました。

そんな訳で、ファンの人気投票による代表曲が並んでいるだけに、ファンはもちろん、初心者にとってもうってつけのベストアルバムとなっています。いろいろな点で坂本真綾というシンガーの魅力をあらためて感じたベスト盤でした。

評価:★★★★★

坂本真綾 過去の作品
かぜよみ
everywhere
You can't catch me
Driving in the silence
シングルコレクション+ ミツバチ
シンガーソングライター
FOLLOW ME UP
今日だけの音楽
シングルコレクション+アチコチ
Duets
記憶の図書館

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2026年1月17日 (土)

「光」をテーマに

Title:光学
Musician:ACIDMAN

ACIDMANの約4年ぶりとなるニューアルバム。ちょっと久々となる新作は、わかりやすいコンセプチャルなアルバムに仕上がっています。タイトル通り、テーマは「光」。ACIDMANのリードボーカルでリーダーでもある大木伸夫がいままで表現してきた「生命・宇宙・存在の本質への探求」を、「光」という視点で描いた作品となっています。

まずアルバムの冒頭を飾る「光学(introduction)」は、オープニング的なインスト曲ですが、遥か向こうから光が差し込んでくるようなナンバー。そして、それに続く事実上の1曲目となる「アストロサイト」ではファンキーなリズムも心地よいメランコリックなナンバーですが、オープニングとは対極的に闇を感じさせる雰囲気なのですが、その向こうにあるような希望の光を感じさせるような曲になっています。

さらに映画「ゴールデンカムイ」の主題歌ともなっている「輝けるもの」は、ACIDMANらしい、これでもかというほど狂おしいメランコリックなメロも強いインパクトを受けますが、希望の光を探そうとする歌詞は、まさにアルバムのテーマに沿った内容になっています。

そんな明確に「光」をテーマとした作品となった本作ですが、また、アルバム全体としてバラエティーもあり、聴きどころも多い作品に仕上がっていました。基本となっているのは、ACIDMANらしいメランコリックなメロディーラインとダイナミックなバンドサウンド。「白と黒」ではフリーキーなサウンドを加えたジャズの要素が入り、「feel every love」では合唱も入り、祝祭色の強い楽曲に。また、ダイナミックな前半と比べ、後半は「青い風」「龍」など、しんみり聴かせるナンバーも展開。そしてラストを締めくくる「あらゆるもの」は実に8分にも及ぶナンバー。バンドサウンドを力強くダイナミックに聴かせたかと思いきや、一方では静かに聴かせる展開となったりと、静動あるダイナミックな展開が魅力的なナンバーで、ACIDMANとしての実力をしっかりと聴かせるナンバーを、アルバムの最後に聴かせてくれています。

ある意味、非常にACIDMANらしいアルバムなのですが、「光」というテーマを一本据えることにより、ACIDMANらしさがより魅力的に強調されたアルバムに仕上がっていたように感じました。個人的には、ACIDMANのここ何年かのアルバムの中では間違いなく最高傑作と言える作品でした。

評価:★★★★★

ACIDMAN 過去の作品
LIFE
A beautiful greed
ALMA
Second line&Acoustic collection
ACIDMAN THE BEST 2002-2012
新世界
有と無
Second line&Acoustic collection II
ACIDMAN 20th Anniversary Fans'Best Selection Album "Your Song"
Λ
INNOCENCE

そして、この「光学」のリリースに合わせて、ACIDMANのトリビュートアルバムもリリースされました。

Title:ACIDMAN Tribute Works

ELLEGARDENやストレイテナー、the band apartといったACIDMANと同世代のバンドやスカパラ、Dragon Ash、BRAHMANのような先輩格のバンド、そしてちょっと意外なのはじんやjon-YAKITORYのようなボカロPもトリビュートアルバムに参加してACIDMANの数々の代表曲をカバーしています。

どのミュージシャンも、基本的にACIDMANの作品を、自らの土俵に持ち込んでカバーしたような作品が多く、ACIDMANの楽曲の良さを生かしつつ、しっかりと自分たちの色も出したカバーに仕上がっています。スカパラがカバーした「to live」は、まさにスカパラらしいスカのカバーになっていますし、the band apartのカバーした「夜のために」も、彼ららしい軽快なギターロックに仕上げています。

downyによる「風、冴ゆる」も全面的にノイズを入れた、まさにdownyらしい曲に仕上げていますし、BRAHMANの「SILENCE」も、こちらも非常に力強いアレンジにBRAHMANらしさを感じます。

それぞれ、自らの色を入れつつも、一方では基本的な軸となる部分はACIDMANの原曲から大きくは乖離しておらず、そういう意味でしっかりACIDMANへのリスペクトも感じさせます。ACIDMANの良さと、カバーしたそれぞれのミュージシャンの良さをほどよくバランスさせた曲が目立ち、理想的とも言えるトリビュートアルバムに仕上がっていました。ACIDMANのオリジナルアルバムともどもチェックしておきたい作品。ACIDMANのファンも、参加しているそれぞれのミュージシャンのファンも、それぞれお勧めしたいアルバムです。

評価:★★★★★

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2026年1月16日 (金)

あらためて感じるその才能と実力

Title:山崎見聞録 〜30th Anniversary All Time Best〜
Musician:山崎まさよし

タイトル通り、山崎まさよしの30周年を記念してリリースされたベスト盤。率直に言うと、彼については以前に比べてちょっと微妙な立ち位置になってしまっている感はあります。きっかけは、2023年10月での水戸でのワンマンライブ。「今日はあまり歌いたくない」という発言の後、ほとんど歌を歌わず、(いまひとつおもしろくない)トークで展開された(らしい)ライブとなってしまい、大炎上を巻き起こしてニュースになってしまいました。ここ最近、以前に比べて大きなヒットもなく、彼についてあまり話題に上ることが少なくなってしまった中、特にこの炎上劇が目立つ結果となってしまっています。

特に、普段から破天荒な発言をするミュージシャンだったり、自由気ままな言動が特徴的なミュージシャンなら、気ままなライブも問題にならない(場合によってはレアなライブとファンは喜ぶくらい)かもしれませんが、山崎まさよしの一般的なイメージとしては、「『大人』な曲をゆっくりと聴かせる『大人』のミュージシャン」というイメージがあるだけに、そのギャップが大きなニュースになってしまったのでしょう。当初は「薬か?」なんてことを邪推する向きもありましたが、その後、そういうニュースはありませんので、変な薬の影響、とかではなかったようで、それはよかったのですが。

そんな大炎上から2年。正直、この間、大きく目立ったような活動も少なかったのですが、冒頭で書いた通り、彼の30周年を記念してオールタイムベストがリリースされました。今回のベストアルバムは、3枚組というフルボリュームの内容に、彼の代表曲が詰め込まれた内容。ほぼ発表順に並んでおり、彼の30年の歩みを追うことのできる内容となっています。

よく知れた楽曲という意味では、例えば「セロリ」「僕はここにいる」など、全盛期の楽曲がDisc1に収録されています。代表曲のひとつ「One more time,One more chance」などが映画主題歌という理由にかこつけて、Disc3の最後に収録されているあたり、よく知られた曲がDisc1のみに固まるのを避けるためバランスを取ったのでしょう。ただ、Disc3でもドラえもん映画の主題歌となった、ちょっとジュブナイルっぽい「空へ」や、哀愁たっぷりに聴かせる「影踏み」、ピアノで軽快に聴かせる最新曲「フリト」など、全盛期に勝るとも劣らない曲もならんでおり、今となってもその才能は衰えていないことを感じます。

また、今回あらためて山崎まさよしの曲を聴くと、ルーツ志向に様々な音楽性を取り入れつつ、あくまでもお茶の間レベルで通用するポップソングに仕上げている点も、彼の才能をあらためて実感しました。例えばSMAPのカバーで大ヒットした「セロリ」にはブルースやボッサの要素が入っていますし、「晴男」はレゲエのリズムを取り入れています。「星空ギター」ではオールディーズの雰囲気を出していたり、「21世紀マン」はダブ、最新シングル「フリト」ではラグタイムなどなど、いろんなジャンルを取り入れています。もちろん、彼の楽曲のベースとなるブルースやフォークの要素もふんだんに入りつつ、ただ、サラッと曲を聴くと、広くお茶の間レベルまで楽しめるポップソングにまとめている点が大きな特徴となっています。

今回のフルボリュームとなるベストアルバムでは、そんな山崎まさよしの魅力と実力をあらためて実感できました。私自身、なにげに山崎まさよしのライブって一度も行ったことないのですが、一度は行ってみたいなぁ。そんなこと思っていた矢先、不整脈が理由でライブツアーが中止となったとか・・・。健康状態にも気にかかりますが、まだまだ多くの名曲を世に出してくれるミュージシャンだと思っています。元気になったら、是非ライブにも足を運びたいです。

評価:★★★★★

山崎まさよし 過去の作品
COVER ALL-YO!
COVER ALL-HO!

IN MY HOUSE
HOBO'S MUSIC
Concert at SUNTORY HALL
The Road to YAMAZAKI~the BEST for beginners~[STANDARDS]
The Road to YAMAZAKI~the BEST for beginners~[SOLO ACOUSTICS]

FLOWERS
HARVEST ~LIVE SEED FOLKS Special in 葛飾 2014~
ROSE PERIOD ~the BEST 2005-2015~
UNDER THE ROSE ~B-sides & Rarities 2005-2015~
FM802 LIVE CLASSICS

LIFE
山崎×映画
Quarter
ONE DAY
山崎×CM
STEREO 3
山崎×CM②
Take me Follow me/記憶にございません/手をつなぎたいんだ(YAMA-KAN)


ほかに聴いたアルバム

たかがパンクロック!/サバシスター

フルアルバムとしては2枚目となる3人組ガールズパンクバンド、サバシスターの新作。パンクを主体としつつ、比較的ギターポップ的な曲が多かった前作に比べると、よりパンキッシュな曲が増え、パンクバンドとしての彼女たちの立ち位置をより明確にした作品に感じます。一方、「春、思い出すこと」「ドゥルーピーアイズ」のような郷愁感あふれる切ない歌詞の曲も書いていたりして、ここらへんは彼女たちの持ち味と言えるでしょう。ただ結果、パンクロックのアルバムとしては、一体感や勢いがちょっとそがれてしまっている点、どうバランスを保っていくのかが課題なような印象も受けました。

評価:★★★★

サバシスター 過去の作品
覚悟を決めろ!
My girlfriend is PIZZA OF DEATH

スキマスイッチ TOUR 2024-2025 “A museMentally”/スキマスイッチ

毎度おなじみのスキマスイッチのライブアルバム。本作はタイトル通り、おととしから昨年にかけて行われた「A museMentally」ツアーの模様を収録したライブアルバム。最新アルバム「A museMentally」からの作品を中心に、過去の代表曲も収録したライブアルバム。文句なしに楽しめる内容の一方、ライブならではの独自性は薄いかも。ちなみにCD限定でMC集は今回も収録。こちらはコミカルな彼らのやり取りが楽しめます。

評価:★★★★

スキマスイッチ 過去の作品
ARENA TOUR'07 "W-ARENA"
ナユタとフカシギ
TOUR2010 "LAGRANGIAN POINT"
musium
DOUBLES BEST
TOUR 2012 "musium"

POP MAN'S WORLD~All Time Best 2003-2013~
スキマスイッチ TOUR 2012-2013"DOUBLES ALL JAPAN"
スキマスイッチ 10th Anniversary Arena Tour 2013“POPMAN'S WORLD"
スキマスイッチ 10th Anniversary“Symphonic Sound of SukimaSwitch"
スキマスイッチ
TOUR 2015 "SUKIMASWITCH" SPECIAL
POPMAN'S ANOTHER WORLD
スキマスイッチTOUR2016"POPMAN'S CARNIVAL"
re:Action
新空間アルゴリズム
スキマノハナタバ~Love Song Selection~
SUKIMASWITCH TOUR 2018"ALGOrhythm"
SUKIMASWITCH 15th Anniversary Special at YOKOHAMA ARENA ~Reversible~
スキマスイッチ TOUR 2019-2020 POPMAN'S CARNIVAL vol.2
スキマノハナタバ ~Smile Song Selection〜
スキマスイッチ TOUR 2020-2021 Smoothie
Hot Milk
Bitter Coffee
スキマスイッチ TOUR 2022 "cafe au lait"
POPMAN'S WORLD -Second-
SUKIMASWITCH 20th Anniversary "POPMAN'S WORLD 2023 Premium"
A museMentally

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2026年1月15日 (木)

男性アイドルグループが並ぶ

今週のHot Albums

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

今週も上位には男性アイドルグループが並んでいます。

まず1位はKing&Prince「STARRING」がこれで3週連続の1位を獲得。CD販売数及びダウンロード数11位、ストリーミング数1位で、総合順位は1位獲得となりました。そして2位にはNumber_i「No.Ⅱ」が先週からワンランクアップで2位を獲得。ストリーミング数で2位。これで16週連続のベスト10ヒット&通算13週目のベスト3ヒットとなります。

さらに3位にはBE:FIRSTのベスト盤「BE:ST」が先週の5位からランクアップし、8週ぶりのベスト3返り咲き。これで11週連続のベスト10ヒット及び通算4週目のベスト3ヒットとなりました。

続いて4位以下ですが、今週はベスト10返り咲きが2作。まず韓国の男性アイドルグループTREASURE「[LOVE PULSE]」が先週のベスト100圏外から一気に5位にランクアップ。特にCD販売数で1位を獲得し、9月24日付チャート以来のベスト10返り咲き。これは現在、ジャパンツアーの最中であり、その影響でしょう。また、旧ジャニーズ系男性アイドルグループTravis Japan「's travelers」も先週の16位から10位にランクアップし、4週ぶりのベスト10返り咲きを果たしています。

ロングヒット盤ではRADWIMPSへのトリビュートアルバム「Dear Jubilee-RADWIMPS TRIBUTE-」が4位にランクインし、これで8週連続のベスト10ヒットに。藤井風「Prema」は先週と変わらず6位をキープ。こちらは19週連続のベスト10ヒット。Snow Man「THE BEST 2020-2025」は10位から9位にアップし、こちらはベスト10ヒットを通算35週に伸ばしています。

また、Mrs.GREEN APPLEは「ANTENNA」が先週と変わらず8位をキープし、ベスト10ヒットを通算61週に伸ばした一方、ベスト盤「10」は今週2位から12位に一気にダウンし、ベスト10ヒットは26週連続でストップ。特にストリーミング数が3位から14位に急落しており、リカレントリール適用によるものと思われます。


今週のHeatseekers Songs

https://www.billboard-japan.com/charts/detail?a=heat_seekers

今週のHeatseekers Songsはハンバート ハンバート「笑ったり転んだり」が2週連続で1位を獲得しています。ただし、Hot100では48位から87位にダウン。残念ながら大きなヒットにはつながらなさそう・・・。


今週のニコニコVOCALOID SONGS

https://www.billboard-japan.com/charts/detail?a=niconico

今週1位はMIMI「トリックハート」が獲得。先週の2位から初登場2週目にして1位獲得。2位は先週1位だったMARETU「ファシネイター」がワンランクダウン。3位には藤原ハガネ「にゅー!支配者のキャロル」が先週と同順位の3位をキープしています。

今週のチャート評は以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2026年1月14日 (水)

HANAが大躍進

今週のHot100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

今週のチャートは、HANAの躍進が目立ちました。

とはいえ、今週も米津玄師「IRIS OUT」が1位をキープ。ダウンロード数は2位にダウンしましたが、ストリーミング数は17週連続、動画再生回数も4週連続で1位獲得。これで4週連続通算14週目の1位獲得。ベスト10ヒット&ベスト3ヒットも17週連続となっています。ただ今週、米津玄師、宇多田ヒカル「JANE DOE」は12位にダウン。ベスト10ヒットは連続15週でストップとなりました。

そして2位から並んだのがHANA。まず「ROSE」が4位から2位にアップ。ベスト10ヒットを通算30週に伸ばすと同時に、昨年7月23日付チャート以来のベスト3返り咲き。通算6週目のベスト3ヒットを記録。ストリーミング数は先週と変わらず3位、ダウンロード数が8位から7位、動画再生回数が7位から3位と大幅にアップ。また「Blue Jeans」も先週から変わらず3位をキープ。こちらはストリーミング数が先週から変わらず2位。ダウンロード数が13位から11位、動画再生回数も9位から8位にアップ。通算24週目のベスト10ヒット&通算12週目のベスト3ヒットとなっています。さらに今週「NON STOP」も先週の11位からランクアップ。こちらは2週ぶりのベスト10返り咲きで、今週HANAはベスト3に2曲ランクインさせた上に、3曲同時ランクインを果たしています。

続いて4位以下初登場は4位にSHOW-WA「東京ジャンクション」がランクイン。昭和歌謡曲をテーマとした秋元康プロデュースの男性アイドルグループ。CD販売数1位。オリコン週間シングルランキングでは、初動売上9万1千枚で1位初登場。前作「僕らの口笛」の初動9万2千枚(3位)より微減。

また6位にはKing Gnu「AIZO」が初登場でランクイン。TBS系アニメ「呪術廻戦」第3期「死滅回游 前編」オープニングテーマ。ダウンロード数1位、ストリーミング数12位を獲得し、総合順位でベスト10入り。同作のオープニングテーマは、過去にEveの「廻廻奇譚」、キタニタツヤ「青のすみか」、さらにKing Gnuの「SPECIALZ」といずれもロングヒットを記録していますが、本作もそれらの楽曲に続けるでしょうか。

他のロングヒット曲は、まずMrs.GREEN APPLE「ダーリン」が先週と変わらず7位をキープ。ベスト10ヒットを通算24週に伸ばしています。

アイナ・ジ・エンド「革命道中」は先週の6位から8位にダウンしていますが、今週もベスト10をキープ。こちらはこれで通算17週目のベスト10ヒット。

さらにSnow Man「カリスマックス」が先週の8位から10位にダウンしていますが、こちらもベスト10をキープ。これで通算8週目のベスト10ヒットとなりました。

一方、先週ベスト10に返り咲いたサカナクション「怪獣」は今週11位にダウン。ベスト10ヒットは通算20週で再びストップとなりました。

今週のHot100は以上。明日はHot Albums&Heatseekers&ボカロチャート!

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2026年1月13日 (火)

珠玉のポップソングが並ぶ

Title:The Roger Nichols Songbook

主に60年代から70年代にかけて活躍。カーペンターズの「Rainy Days and Mondays(雨の日と月曜日は)」や「We've Only Just Begun(愛のプレリュード)」などのヒットで知られ、自らも「Roger Nichols & The Small Circle of Friends」というアルバムをリリースしたことでも知らエル作曲家、ロジャー・ニコルス。昨年5月、84歳でこの世を去りましたが、そんな彼の作品を集めた「ソングブック」がリリースされました。

ロジャー・ニコルスは、特に日本で高い人気と評価を受けており、「ロジャニコ」の愛称で知られ、本作も日本独自企画のアルバムとなります。リリース時期は彼への追悼のような形となってしまいましたが、もともとはロジャー・ニコルスの生前から、生誕85周年の記念の企画として進められていたそうで、企画は、ロジャー・ニコルスとも公私ともに親交のある音楽ライターの濱田高志が手掛け、選曲にはロジャー・ニコルス本人も関与。初となる「公認の」ソングブックとなるそうです。

ロジャー・ニコルスについては、もちろんカーペンターズのヒット曲は知っていますし、アルバム「Roger Nichols & The Small Circle of Friends」についても聴いた事があります。ただ、こうやってロジャー・ニコルスの楽曲と認識した上で彼の楽曲をまとめて聴いてみるのははじめて。あらためて、その甘く美しいメロディーラインに魅了されました。

メロディアスでキュート、爽やかながらもちょっとメランコリックさを織り込んだメロディーラインが実に秀逸。今となってはちょっとレトロさを感じさせる曲も少なくありませんが、そこに感じる郷愁感もまた、メロディーの大きな魅力となっています。今回の収録曲の中で、特に気に入ったのが、例えばクロディーヌ・ロンジェの「It's Hard To Say Goodbye (さよならはつらいもの) 」で、ロジャニコの書く優しくメランコリックなメロと、クロディーヌの、切なさを感じる優しいボーカルがマッチし、切なく、心に響いてくる名曲に仕上がっています。それに続く The Sand Pipersの「To Put Up With You (可愛いおまえ) 」も、郷愁感のあるメロが魅力的。抑えめで、ささやくようなコーラスラインにもよくマッチしています。

ちなみにNina Showの「Love So Fine」は軽快なリズムのアレンジが完全にピチカート・ファイヴで、小西康陽の元ネタはここだったのか・・・と感じてしまいます。また、カーペンターズの提供したヒット曲「Rainy Days and Mondays(雨の日と月曜日は)」「We've Only Just Begun(愛のプレリュード)」も収録されていますが、歌うのはカーペンターズではなく、「愛のプレリュード」はオリジナルの方なのですが「雨の日と月曜日は」はカバーバージョンを収録。カーペンターズの曲が収録されなかったのは、許諾が得られなかったからでしょうか。カーペンターズの曲がこの手のオムニバスに入っているケースはかなりレアなので。

全2枚組のアルバムで、基本的にDisc1は60年代、Disc2は70年代の楽曲が収録されています。もちろんどちらも珠玉のポップスが詰まっていますが、個人的にはDisc1収録曲の方が、よりキュートでポップで印象に残ったようにも思います。ちなみに日本独自企画ということで、森山良子が歌う「変わらぬ心」や、トワ・エ・モワが歌う「そよ風と私」のような日本人ミュージシャンが歌う曲も収録。ロジャニコの日本での人気の高さも伺わせます。

本当に珠玉のポップソングがつまったソングブックで、全ポップリスナー必聴のアルバムだと思います。転調を自然に取り入れたメロディーラインもまた、J-POPへの影響も感じられ、日本人の琴線に触れる部分なのかもしれません。あらためて、ロジャー・ニコルスの才能を感じさせる作品集でした。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

From The Pyre/The Last Dinner Party

前作「Prelude to Ecstasy」が日本でも話題となったロンドン出身の5人組バンド、The Last Dinner Partyの2枚目となるアルバム。ピアノやストリングスを入れて荘厳な雰囲気を醸し出したゴシック風のポップが特徴的なバンド。今回のアルバムについても同様に、ゴシックな雰囲気のサウンドとポップなメロが特徴的。基本的には1枚目の延長線上の作品となっていますが、個人的には前作よりも聴きやすくなったような印象があります。

評価:★★★★

The Last Dinner Party 過去の作品
Prelude to Ecstasy

JAPANESE SINGLES COLLECTION-GREATEST HITS-/THE BANGLES

ここでも何度か紹介している、主に80年代に人気のあった海外のミュージシャンの、日本でのシングル曲をまとめたシリーズ「JAPANESE SINGLES COLLECTION」。今回は89年にヒットした「胸いっぱいの愛」で知られる、アメリカの4人組ガールズロックバンド、THE BANGLESのシングル集。彼女たちの曲をまとめて聴いた事はないのですが、「胸いっぱいの愛」は私も聴き覚えのあるヒット曲。楽曲も、いかにも90年代初頭あたりのJ-POPが強く影響を受けたようなポップスが並んでおり、日本人にも耳なじみやすそうな楽曲が並びます。プリプリやレベッカ、LINDBERGあたりが好きならかなりお勧めできそうなシングルコレクションです。

評価:★★★★

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2026年1月12日 (月)

oasisの前座抜擢が話題に

今回紹介するのは、海外でも高い評価を受ける女性4人組パンクロックバンドおとぼけビ~バ~が2枚同時にリリースしたライブアルバムです。

Title:ライヴ・アット・磔磔
Musician:おとぼけビ~バ~

まずこちらは京都の老舗ライブハウス、磔磔での模様を収録したライブアルバム。

Title:ライヴ・アット・FANDANGO
Musician:おとぼけビ~バ~

そしてこちらが大阪のライブハウスFANDANGOで収録された音源を収録したライブアルバムとなります。

おとぼけビ~バ~と言えば、昨年、ちょっとしたニュースになりました。昨年10月に来日して大きな話題となったoasisの来日公演の前座に選ばれたというニュースです。ただ、一般的な知名度の低い彼女たちが前座に選ばれたという点は賛否両論を呼び起こし、この「賛否両論」ということ自体が、ひとつのニュースとして取り上げられました。

この大物外タレミュージシャンの前座が物議をかもすことは以前からよくありました。というか、こういうネタがニュースになること自体、ちょっと久しぶりのようにも思います。確かに否定的な方の気持ちもわかることはわかります。私も海外のミュージシャンのライブで前座を見たことはよくあります。大抵、登場する前座もよく知っているミュージシャンなのですが、前座はいいから、その分、お目当てのミュージシャンのライブを長くやってほしい、と思うのは率直な気持ちです。

そんな中、おとぼけビ~バ~の前座に対して否定的な意見に対する批判も少なくなかったのですが、この前座に対する否定的な意見も個人的には悪くなかったのかな、と思います。ともすれば最近、音楽に関しては「アイドルだろうがJ-POPだろうが洋楽だろうが、どんな音楽もアリ」という意見が少なくありません。そういう寛容な意見ももちろん否定すべき話ではないのですが、一方では「洋楽ロックが至高。J-POPは認めない」的な一種のこだわりの強いリスナーがいても悪くないように思います。そういう偏屈なリスナーに対して「ナニクソ」的な反抗心が、バンドにとってはひとつの原動力になりますし、そんなこだわりの中、新たな文化も登場してくるのではないでしょうか。個人的には、久々に表にあらわれた偏屈な洋楽リスナーの意見も、たまにはアリではないかな、とすら思っています。

とはいえ、間違いなくおとぼけビ~バ~のステージは、そんな偏屈な洋楽リスナーをノックダウンするのに十分なパフォーマンスだったと思います。正直、東京ドームという大箱に彼女たちがマッチしていたのかは微妙なのですが(逆に見てみたかった気もするのですが)、このタイミングでリリースされた2枚のおとぼけビ~バ~のアルバムには、そんな彼女たちの迫力あるパフォーマンスがそのままつめこまれています。

「磔磔」は全30曲42分(CD盤では33曲)、「FANDANGO」は全20曲31分(CD盤では18曲)。要するに、1曲あたり2分に満たない楽曲を次から次への繰り広げてくるパフォーマンス。全編、荒々しい演奏の連続で、息つく暇のないパフォーマンスとなっています。楽曲のタイプとしてはパンクやコアの影響を受けたヘヴィーなサウンドですが、そんな中に、意外とポップなメロディーラインや、なによりも女性の本音を読み込んだコミカルな歌詞も魅力的。激しいだけではなく、どこかコミカルで楽しい雰囲気も味わえるパフォーマンスとなっています。

京都と大阪、どちらも彼女たちのホームグラウンドでのステージということで、アットホームな雰囲気も感じられるパフォーマンス・・・と言いたいところですが、おそらくどこで演っても彼女たちのこの雰囲気は変わらなさそう。おとぼけビ~バ~の話は、oasisの前座というニュースで知った方も少なくないかと思いますが、彼女たちがどんなミュージシャンなのか知るには最適とも言えるライブ盤。どちらもおすすめです。

評価:どちらも★★★★★

おとぼけビ~バ~ 過去の作品
SUPER CHAMPON


ほかに聴いたアルバム

Don’t Laugh It Off/羊文学

約2年10ヶ月ぶりとなる羊文学のニューアルバム。ここ最近、人気を確固たるものにした結果、このアルバムでもアニメ「推しの子」のエンディング「Burning」や映画「かくしごと」主題歌「tears」など、多くのタイアップ曲が含まれています。全体的にはロックバンドとしての分厚いサウンドを前に押し出した曲が前作以上に目立つ反面、タイアップ曲が多かった影響か、メロディーラインについては良くも悪くもちょっとベタさを感じ、売れ線志向になった感じも。バンドとしての勢いは本作でも感じるのですが。

評価:★★★★

羊文学 過去の作品
our hope
12 hugs(like butterflies)

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2026年1月11日 (日)

今の視点から見た名盤100枚

今回は最近読んだ音楽関連の書籍の紹介です。

イースト・プレスから発刊された、タイトル通り、HIP HOPの名盤100枚を紹介する「ヒップホップ名盤100」。「ミックステープ文化論」や「誰がラッパーを殺したのか?」などの著書でも知られる小林雅明による著書。以前も紹介した「日本語ラップ名盤100」と同じシリーズの名盤ガイドということになります。

この手の名盤ガイド、いろいろとリリースされていますが、ヒップホップというジャンルを区切って紹介する書籍は、まだそれほど多くないように感じます。というのも、最大の要因が、ヒップホップというジャンルが、今なお進化を続けている現在進行形のジャンルであり、その都度、過去のアルバムについても評価が変化し、なかなか「名盤」という評価が固まらないから、ではないでしょうか。ロックだと、60年代や70年代あたりの名盤の評価はほぼ固まっていますが、ヒップホップではまだ流動的な側面があります。

そのため、このディスクガイドについてもあくまでも現在の視点を軸としたセレクトになっているそうで、特徴的なのは評価が固まりつつある黎明期のアルバムだけではなく、最近のアルバムについても積極的に取り上げられている点。2000年以降にリリースされたアルバムが42枚、010年以降にリリースされたアルバムが、21枚も収録されています。ここらへん、同じ「名盤ガイド」をリリースしても、2010年代以降はおろか、1990年代以降からも、ほとんど選ばれないロックと対照的な感があります。

そういう意味では非常に「現役感」のあるリストになっており、今のヒップホップリスナーにとっても、過去の歴史を巡ろうと考えた時に、比較的受け入れられやすい100枚という印象を受けます。それこそ、今を輝くケンドリックラマーもタイラー・ザ・クリエイターもしっかりと選ばれています。ちなみにトラヴィス・スコットは100枚の中では選ばれていませんが、「プラス1枚」的なコーナーで紹介されています。

もちろん、そんな大物ラッパーはしっかり捉えつつ、一方では最近ではNo NameやBilly Woodsといった売上面よりもコアなリスナーからの評価が高いミュージシャンたちもしっかりと紹介されています。メジャーどころからサブカル系まで、網羅的に収められた名盤集となっており、これをディスクガイドとしてヒップホップの歴史を学ぶにはピッタリではないでしょうか。

また、本書のもうひとつの特徴としてはアルバム評の中でリリックやライムを取り上げている点でしょう。英語話者ではない私たちにとって、リリックはまだしも、ライムについては、ヒップホップの中で非常に重要な要素であるにも関わらず、なかなか取り上げにくい分野だったりします。ただ本書では、しっかりとリリックを英語で取り上げ、その中でどのようにライムを踏んでいるのかを具体的に紹介しています。この点、非常に勉強になりましたし、あらためて、このリリックやライムの奥深さも感じることが出来ました。

ただ一方、本書を純粋なヒップホップ初心者にお勧めできるか、と言われると正直、ちょっと微妙な部分があります。というのも、アルバムの紹介の中でヒップホップの歴史について綴ってはいるのですが、体系的な解説ではないためわかりにくく、かつ固有名詞が何の紹介もなしにどんとん飛び込んでくるため、読みにくさも感じます。私も、ヒップホップの初心者ではないものの、正直なところ、ちょっと読みにくさを感じてしまいました。ヒップホップの歴史をある程度知っている人向けの1冊のようにも感じます。もしくは、ヒップホップの歴史など関係なく、単純に名盤のディスクガイドとして片っ端から聴いてやろう、という方向けかもしれません。

そんな訳で、盤のセレクトやリリック・ライムの記載にいろいろと参考になった一方、若干読む人を選ぶような1冊だったように思います。前述のように、純粋なディスクガイドとして使うか、ある程度ヒップホップの歴史を学んだあとに読むにはちょうどよい1冊かもしれません。ただ、今なおどんどん新たなミュージシャン、名盤が登場してくるヒップホップという分野。また10年くらいしたら、新たな名盤集も出してほしいなぁ。

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2026年1月10日 (土)

今週も因縁のグループ対決?

今週(2026年1月7日付)のHot Albums

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今週も因縁のグループが上位にランクインしています。

まず1位はKing&Prince「STARRING」が2週連続で1位を獲得。CD販売数は1位から5位、ダウンロード数も1位から8位にダウンしていますが、ストリーミング数は先週と変わらず1位をキープ。2週連続の1位獲得となっています。

一方、先週2位だったNumber_i「No.Ⅱ」は今週2位にダウン。ただしベスト10ヒットは15週連続、ベスト3ヒットも通算12週となりました。さらに今週7位にNumber_i「DAiLY&LOVE」がランクイン。ダウンロード数1位、ストリーミング数20位。これはメンバー本人がナビゲートするプレイリストだそうで、これで2枚同時ランクインとなっています。

その間を縫うように2位にランクアップしてきたのがMrs.GREEN APPLEのベスト盤「10」。これで26週連続のベスト10ヒット&通算13週目のベスト3ヒットとなりました。また「ANTENNA」は先週と変わらず8位をキープ。こちらは通算60週目のベスト10ヒットとなっています。

4位以下ですが、今週の初登場は前述のNumber_iのみ。一方でベスト10返り咲きも1枚。ディズニー映画「ズートピア2」のサントラ盤「ズートピア2(オリジナル・サウンドトラック)」が先週の11位から9位にランクアップ。2週ぶりのベスト10返り咲きとなっています。

先週今週と新譜は少な目だったのでロングヒット盤もズラリ。BE:FIRST「BE:ST」は先週と変わらず5位をキープ。これで10週連続のベスト10ヒット。藤井風「Prema」も同様に6位をキープ。こちらは18週連続のベスト10ヒット。Snow Man「THE BEST 2020-2025」は9位から10位にダウン。こちらは通算34週目のベスト10ヒットとなりました。


今週(2026年1月7日付)のHeatseekers Songs

https://www.billboard-japan.com/charts/detail?a=heat_seekers

2026年1月7日付Heatseekers Songsで1位を獲得したのはハンバート ハンバート「笑ったり転んだり」。ご存じNHK連続テレビ小説「ばけばけ」主題歌で、昨年の紅白でも歌われた曲。ラジオオンエア数で6位を獲得し、Heatseekers Songsで見事1位獲得となりました。ちなみにHot100でも今週48位にランクイン。紅白効果でもっと上位に食い込んでくるのでしょうか?


今週(2026年1月7日付)のニコニコVOCALOID SONGS

https://www.billboard-japan.com/charts/detail?a=niconico

今週ボカロチャートではMARETU「ファシネイター」が初登場で1位を獲得。MARETUは2011年から活動を行っているということなので、ベテランのボカロPとなります。2位はMIMI「トリックハート」がこちらも初登場。3位には先週まで1位だった藤原ハガネ「にゅー!支配者のキャロル」が2ランクダウンながらもベスト3をキープしています。

4日連続更新となった年末年始のチャート評はこれで以上。来週水曜日からは、また、水・木更新の通常のチャート評の更新パターンに戻ります。

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2026年1月 9日 (金)

因縁のグループが1位2位

今週(2025年12月31日付)のHot Albums

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1位2位は因縁のグループ対決となっています。

まず1位は旧ジャニーズ系アイドルグループKing&Prince「STARRING」が獲得。CD販売数、ダウンロード数及びストリーミング数でいずれも1位を獲得しています。オリコン週間アルバムランキングでも初動売上25万枚で1位獲得。前作「Re:ERA」の初動23万3千枚(1位)からアップしています。

そして2位には先週1位だったNumber_i「No.Ⅱ」がランクイン。ストリーミング数2位。これで14週連続のベスト10ヒット及び通算11週目のベスト3ヒットに。ご存じの通り、ジャニーズ系を脱退した元King&Princeのメンバーが結成したアイドルグループ。そういう訳で、今週は1位2位因縁のグループが並ぶ結果となっています。

3位はMrs.GREEN APPLE「10」が先週の4位からアップ。昨年10月1日付チャート以来のベスト3返り咲きとなっています。これで25週連続のベスト10ヒット&通算12週目のベスト3ヒット。ちなみにミセスは「ANTENNA」も先週の9位から8位にアップ。これでベスト10ヒットは通算59週となりました。

続いて4位以下の初登場盤ですが、まず7位にMariah Carey「Merry Christmas」がランクイン。ご存じ「恋人たちのメリークリスマス」も収録されているクリスマスアルバムで、1994年にリリースされ、日本でもオリコンチャートで1位を獲得し、200万枚以上の売上を記録したアルバムとなります。ただし、その当時はBillboard Japanのチャートは開始されていなかったため、Hot Albumsでは今回がベスト10初登場という扱いになりました。ストリーミング数で6位をランクインし、総合順位でもベスト10入りしています。

また、10位にはTHE ALFEE「君が生きる意味」がランクイン。CD販売数2位。オリコンでも初動売上4万5千枚で2位初登場。直近作はシングルコレクション「SINGLE CONNECTION & AGR - Metal & Acoustic -」で、同作の初動1万7千枚(6位)からアップ。また、直近作のオリジナルアルバム「天地創造」の初動3万5千枚(2位)もアップしています。

さらにベスト10返り咲き組としてSnow Man「THE BEST 2020-2025」が先週の11位から9位にアップし、2週ぶりのベスト10返り咲き。ベスト10記録を通算33週に伸ばしています。

ロングヒット組ではBE:FIRST「BE:ST」は先週と同順位の5位をキープ。9週連続のベスト10ヒットに。藤井風「Prema」は7位から6位にアップ。これでベスト10は17週連続に。一方、「KPOPガールズ! デーモン・ハンターズ (Soundtrack from the Netflix Film)」は今週一気に25位にダウンし、ベスト10ヒットは連続25週でストップ。リカレントルール適用によるランクダウンと思われます。


今週(2025年12月31日付)のHeatseekers Songs

https://www.billboard-japan.com/charts/detail?a=heat_seekers

2025年12月31日付Heatseekers Songs1位はAki「これも愛としよう」が獲得。Akiは日本コロンビアの新人発掘プロジェクト「Filter Project」で注目された女性シンガーソングライター。本作は全国13局のラジオ局でパワープレイに選ばれ、ラジオオンエア数で9位を獲得。見事、Heatseekers Songsで1位を獲得しています。楽曲はメロディアスなオルタナ系のギターロック路線の楽曲。Akiともども、徐々に注目を集めていきそうです。


今週(2025年12月31日付)のニコニコVOCALOID SONGS

https://www.billboard-japan.com/charts/detail?a=niconico

今週も1位は藤原ハガネ「にゅー!支配者のキャロル」がこれで3週連続で1位を獲得。2位はr-906「シリーテラー」が初登場で獲得。また、サツキ「メズマライザー」が先週の2位からワンランクダウンながらもベスト3をキープしています。

2025年12月31日付Hot Albums&Heatseekers&ボカロチャートは以上。明日は2026年1月7日付のHot Albums&Heatseekers&ボカロチャートの紹介となります。

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2026年1月 8日 (木)

紅白・レコ大の影響?

今週(2026年1月7日付)のHot100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

昨日に引き続きHot100の紹介。今回は2026年1月7日付チャート。対象期間は12月29日から1月4日となるので、例年、レコード大賞や紅白歌合戦の影響を受け、昨年のヒット曲が多くランクアップしてくる週となります。

そんな中、今週も1位をキープしたのが米津玄師「IRIS OUT」。こちらはやはり紅白のパフォーマンスの影響も大きいのでしょうか。ストリーミング数は16週連続、動画再生回数も3週連続で1位獲得したほか、ダウンロード数も10週ぶりに1位返り咲き。さらにCD販売数も9位に上がってきています。これで3週連続の1位獲得で、通算13週目の1位獲得。また、ベスト10ヒット&ベスト3ヒットはこれで16週連続になりました。一方、米津玄師、宇多田ヒカル「JANE DOE」は5位から9位にダウン。ただ、ベスト10ヒットを連続15週に伸ばしています。

2位は今週唯一の初登場、旧ジャニーズ系男性アイドルグループKis-My-Ft2「&Joy」が初登場。CD販売数のみ1位獲得。オリコン週間シングルランキングでも初動売上9万1千枚で1位初登場。前作「Curtain call」の初動11万7千枚(1位)からダウンしています。

そして3位には、こちらは紅白出場組、HANA「Blue Jeans」が先週の6位からアップし、8週ぶりにベスト3返り咲き。通算23週目のベスト10ヒット&通算11週目のベスト3ヒットとなります。HANAはさらに「ROSE」が9位から4位にアップ。こちらは通算29週目のベスト10ヒットに。ただ、先週までベスト10ヒットを続けていた「NON STOP」は11位にダウンし、今週は2曲同時ランクインに留まりました。

また、4位以下では紅白出場組のベスト10返り咲きが並びました。まず6位にアイナ・ジ・エンド「革命道中」が11位からアップ。5週ぶりのベスト10返り咲き。ストリーミング数が11位から8位にアップしているほか、ダウンロード数が16位から4位にアップしています。通算16週目のベスト10ヒット。

さらに年末のレコード大賞受賞曲、Mrs.GREEN APPLE「ダーリン」が先週の12位から7位にアップ。こちらは昨年7月23日付チャート以来のベスト10返り咲き。ストリーミング数が12位から5位、ダウンロード数が30位から6位にアップしており、明らかにレコ大効果でしょう。通算23週目のベスト10ヒットとなります。

最後に、こちらも紅白出場組。サカナクション「怪獣」も19位から10位にアップ。こちらも昨年7月2日付チャート以来のベスト10返り咲き。通算20週目のベスト10ヒット。ダウンロード数が15位から5位、ストリーミング数が18位から12位、動画再生回数も圏外から11位にアップと、いずれも大きくランクアップしています。

2026年1月7日付Hot100は以上。明日は2025年12月31日付のHot Albums&Heatseekers&ボカロチャート!

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2026年1月 7日 (水)

チャート評更新第1弾

今週(2025年12月31日付)のHot100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

お正月休みが終わり、各チャートも通常更新が開始されました。まずは2025年12月31日付のチャートの紹介。ランキング対象期間は2025年12月22日~28日となります。

さて、まずこの週はクリスマスが重なる時期ということで注目されるのがクリスマスソングの動向。今週7位に、ここ最近のクリスマスソングの定番、back number「クリスマスソング」がランクインしてきました。動画再生回数5位、ラジオオンエア数8位。ちなみにちょうど1年前、2025年1月1日付チャート以来のベスト10返り咲きで、通算17週目のベスト10ヒットとなります。

ちなみにベスト10以下は、マライア・キャリー「恋人たちのクリスマス」が25位、山下達郎「クリスマス・イブ」が26位、アリアナ・グランデ「サンタ・テル・ミー」が27位、BoA「メリクリ」が31位、桑田佳祐「白い恋人達」が39位、ワム!「ラスト・クリスマス」が49位と定番どころが並んでいます。ただ、昨年も書いたのですが、バクナンの「クリスマスソング」ももう10年前の曲で、ここ最近、クリスマスの新定番が登場していないところが気になります。

さて、そんな中、今週も1位となったのが米津玄師「IRIS OUT」。2週連続の1位獲得で、通算12週目の1位獲得。ストリーミング数は15週連続、動画再生回数も2週連続で1位獲得。ベスト10ヒットはベスト3ヒットと共に15週連続。先日の紅白でのパフォーマンスも話題になりましたし、まだまだこのヒットは続きそうです。ちなみに、「ひょっとして紅白で歌われるのか?」という期待もあったのですが、残念ながら電話越しに少し曲が流れただけだった米津玄師、宇多田ヒカル「JANE DOE」は今週7位から5位にアップ。こちらもベスト10ヒットを連続14週に伸ばしています。

2位は、今週唯一の初登場曲、旧ジャニーズ系アイドルグループKing&Prince「Theater」がランクイン。ダウンロード数2位、ストリーミング数3位、ラジオオンエア数1位、動画再生回数4位。3位には、男性アイドルグループM!LK「好きすぎて滅!」が先週の8位からランクアップ。初のベスト3ヒットとなりました。

一方、今週はベスト10返り咲き曲が、前述のバクナン「クリスマスソング」含め3曲ありました。まずHANA「ROSE」が13位から9位にランクアップ。10月8日付チャート以来のベスト10返り咲き。通算28週目のベスト10ヒットとなります。またHANAは「Blue Jeans」が10位から6位にアップ、「NON STOP」が5位から8位にダウンながらもベスト10にランクインしており、3曲同時のランクインとなりました。「Blue Jeans」は通算22週目のベスト10ヒット。先日の紅白ではHANA以上に、プロデューサーちゃんみなのパフォーマンスが話題となりましたが、来週からのHANAのランキングにも影響してくるのでしょうか。

またアニメ映画「KPOPガールズ! デーモン・ハンターズ」に登場するグループHUNTR/X「Golden」が12位から10位にランクアップし、こちらは6週ぶりのベスト10返り咲き。アメリカほどではないのですが、サントラ盤もアルバムチャートで上位をキープしており、日本でも根強い人気を感じさせます。

2025年12月31日付のHot100は以上。明日は翌週、2026年1月7日付Hot100のチャート評を更新予定です。

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2026年1月 6日 (火)

the pillows解散後、最初の一歩

Title:Be Greatest Hits
Musician:山中さわお

Begreatesthits

2025年1月に飛び込んできたthe pillows解散のニュース。個人的にはかなり驚いてしまいました。デビューから36年、初期のメンバーの脱退はありつつも、その後は基本的に変わらないメンバーで、途中活動休止を挟みつつマイペースで活動を続けてきた彼ら。これだけ長く、同じメンバーで活動を続けたバンドが、「解散」という形で明確に活動を終わらせるケースは、ちょっと珍しいように感じます。それだけに、解散というニュースは驚きと共にショックを受けました。

本作は、the pillowsのギターボーカルで、作詞作曲を手掛けてきた山中さわおのソロベストアルバム。2010年からthe pillowsの活動と並行してソロでの活動を続けてきたましたが、そんな彼のこれまでの活動をまとめたベスト盤となります。the pillows解散後にはじめてリリースされた山中さわおソロ作品となりますので、おそらく、the pillows解散によってはじめて山中さわおのソロ活動にも目を向けたようなthe pillowsのファンに向けてリリースされた作品といった感じでしょうか。全17曲収録なのですが、そのうち2010年にリリースされたソロデビュー作から2013年にリリースされた3rdアルバムまでの初期楽曲については、今回のアルバム収録に際して再録されています。

この再録音源に関して感じるのは、かなりthe pillowsらしい音に寄せてきているという点でした。山中さわおのソロ初期の作品については、やはりthe pillowsが活動中だったということもあり、楽曲的には同じバンドサウンドでも、若干the pillowsとは別の雰囲気を感じさせる曲作りをしています。しかし、the pillowsとの比較というくさびが外れた今、むしろソロでも特にサウンド的にはthe pillowsの延長線上のような楽曲が目立っています。例えば「Answer」は、原曲はより重い雰囲気のサウンドになっているのに対して、今回のバージョンではギターのサウンドがより軽くなっており、the pillowsっぽさを感じます。

もともと山中さわおのソロ作品については、歌詞の面でも彼のパーソナルな部分がより前に押し出された作風の曲が多く、the pillowsとの違いが明確になっていました。ただ、それが最近の曲になればなるほど、山中さわおの内省的な部分が描かれつつも、より広い層に受け入れられそうな表現が増えてきており、軽快になったバンドサウンドも合わせて、いい意味で「ポップ」さが前に押し出されてきたように感じます。

要するに、the pillowsが解散したことにより、the pillowsとの差を気にすることがなくなり、よりソロでの活動も自由さが増した、という感じでしょうか。結果として、the pillowsの楽曲とソロとしての楽曲が近づいた感があります。個人的には、2000年代前後あたりの頃のthe pillowsを彷彿するような感じもあり、ある意味、一番やりたい彼のスタイルがここだったんだろうなぁ、ということを感じます。

そう考えると、the pillowsがここに至って解散してしまった理由もなんとなく理解できるような気もします。90年代は「知る人ぞ知る」的バンドだったthe pillowsですが、2000年代くらいから(昔からのファンにとってはかなり意外だったのですが)売れるようになり、シングルでもアルバムでもベスト10ヒットを飛ばすようになりました。ただ、それに伴い徐々に山中さわおの演りたい音楽とギャップが生じてきたのでしょうね。その結果がソロでの活動であり、その集大成としてのこのベスト盤でしょう。

そんなアルバムですので、いままでソロをチェックしてこなかったthe pillowsのファンは、マストなアルバム。また、90年代くらいのthe pillowsのファンで、ここ最近はちょっと離れてしまった・・・という方も要チェックなベスト盤だと思います。ただ、こういうソロ作も作り、the pillowsも明確に「解散」という形になってしまったので、今後、おそらくthe pillows復活は難しいんでしょうね。それは残念ですが、the pillows時代と変わらない名曲を作り続ける山中さわおの今後に期待したいところです。

評価:★★★★★

山中さわお 過去の作品
DISCHARGE
退屈な男
破壊的イノヴェーション
Nonocular violet
Muddy Comedy


ほかに聴いたアルバム

How Do You Crash It?/TM NETWORK

Howdoyocrashlive

TM NETWORKの再始動後にリリースされたライブ映像作品について、今年10月から7カ月連続でサブスク解禁されています。本作はその第1弾。2021年10月から隔月で行われた配信ライブの模様を収録したもの。全体的にスペーシーなアレンジで統一されており、また、比較的再始動後の作品が多いのも特徴的。正直、アレンジもオリジナルの方が良かったかも、と思いましたし、もっと昔の曲を聴きたい、という気持ちも強かったのですが、ただ、これはこれで「今の」TM NETWORKを表現したかったんだろうなぁ、という印象も受けた作品でした。

評価:★★★★

TM NETWORK 過去の作品
SPEEDWAY
TM NETWORK THE SINGLES 1
TM NETWORK THE SINGLES 2
TM NETWORK ORIGINAL SINGLES 1984-1999
DRESS2
QUIT30
GET WILD SONG MAFIA
GET WILD 30th Anniversary Collection - avex Edition
Gift from Fanks T
Gift from Fanks M
LIVE HISTORIA T 〜TM NETWORK Live Sound Collection 1984-2015〜
LIVE HISTORIA M〜TM NETWORK Live Sound Collection 1984-2015〜
DEVOTION
40+ ~Thanks to CITY HUNTER~

bouquet/おいしくるメロンパン

ちょっと意外なことに、結成10年目にして初のメジャーデビュー作となる5曲入りのミニアルバム。結成10年目というのも意外でしたが、いままでインディーズだったというのもちょっと意外な感も。哀愁たっぷりのメロを聴かせる「群青逃避行」、ヘヴィーなバンドサウンドを前に出した「誰もが密室にて息をする」や軽快なポップチューン「未完成に瞬いて」など、5曲入りながらも比較的振れ幅の多い音楽性が特徴的。ラストの「クリームソーダ」も軽快なポップチューンかと思いきや、アシッドジャズ的な要素も感じれます。ただ、ポテンシャルのあるバンドだとは思うのですが、あと一歩のインパクトがちょっと足りないような感もするのが残念なところ・・・。

評価:★★★★

おいしくるメロンパン 過去の作品
indoor
hameln
flask
theory
cubism
answer
eyes
antique

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2026年1月 5日 (月)

全シングルを網羅した40周年のベスト盤

今回紹介するのは、デビュー40周年を記念してリリースされたTUBEのシングルコレクションです。

Title:All Singles TUBEst -Blue-
Musician:TUBE

まずこちらが前期の作品集。1985年のデビュー作「ベストセラー・サマー」から、1999年の「IN MY DREAM」までの作品が収録されています。彼らのブレイク作となった「シーズン・イン・ザ・サン」や彼らの代表曲としてあげられることの多い「あー夏休み」、初の1位獲得作「夏を待ちきれなくて」や彼ら最大のヒット曲となった「夏を抱きしめて」など、いわば全盛期の作品がズラリと並んでいるシングル集となっています。

Title:All Singles TUBEst -White-
Musician:TUBE

こちらが2000年の「Truth of Time」から昨年9月にリリースした配信シングル「PERFECT SMILE」までシングルを網羅。ちなみにどちらのアルバムでもDisc3として、DJ和によるシングル曲をつなげたノンストップMixが収録されていますが、現時点での最新シングル「同じ空の下で」は、フルバージョンでは収録されず、ノンストップMixの1曲として収録されています。

ちなみに彼らのシングルを網羅的に収録されていますが、昨年から今年にかけて、様々なシンガーとコラボしたシングルや、2005年にDVDビデオシングルとしてリリースした「ジラされて熱帯」は未収録となっているようです。

さて、今回のシングルコレクションでTUBEのシングルを網羅的に聴いてみたのですが、まず感じるのは、良くも悪くも彼らの楽曲は大いなるマンネリだな、という点でした。はっきり言ってしまえば、彼らのシングルのパターンはほぼ3つのみ。「夏を待ちきれなくて」や「夏を抱きしめて」みたいな爽やかなロックチューン、「あー夏休み」や「さよならイエスタデイ」のようなラテンを取り入れた曲、「湘南My Love」「Melodies&Memories」のようなバラードナンバー。アルバム収録曲はわかりませんが、シングル曲については概ねこの3パターンしかありません。

あえて言えば「Touch Happy!」のようなディスコ風のナンバーもあるにはあるのですが、挑戦したようなシングルはこの曲くらいで、かつこの曲はベスト10入りが出来ず、アルバム未収録となっており、人気面でも今一つだった模様。正直、最近のシングルに至るまで、良くも悪くも似たようなパターンの曲が並ぶ、大いなるマンネリ路線が続いています。

ただ一方で、メロディーラインについてはインパクトの強さ、楽曲の強度の強さについては特筆すべきものを感じます。正直、TUBEの楽曲については、ここ数年どころか、「White」の頃に入ってからは、これといったヒット曲はありません。実際、Spotifyの再生回数でも、2025年12月現在、「Blue」の収録曲は「あー夏休み」の1千8百万回を筆頭に、500万回以上再生された曲が並ぶのに対して、「White」の収録曲は最高200万回程度の再生回数の曲が数曲並ぶだけに留まります。

ただ、そのような状況にも関わらず、例えば「プロポーズ」「夏が来る!」など、タイアップ曲になっていておそらく数回聴いた程度の曲でありながらも、「どこかで聴いたことある」という感覚になるのは、やはり彼らの(というか春畑道哉の)書くメロディーラインのインパクトの強さによるのでしょう。大いなるマンネリとなっていながらも、デビュー40年たった今でも一定以上の人気を保ち続けるのは、やはりそういったメロディーラインのインパクトの強さが大きな要因であり、そして彼らの実力であることを感じさせます。

シングル曲が発表順に並んでいるので、彼らの進化、成長ぶりを感じる・・・というのが一般的なコメントになりそうですが、彼らに関しては、良くも悪くもデビュー当初から楽曲がほとんど変わっていません。おそらく最近の曲でも、もし95年あたりにリリースされたら、大ヒットになっていたんだろうなぁ、と思わせます。それだけに、今後も末永く、このスタンスで活動していくんだろうなぁ、とも感じるベストアルバム。夏と言えばTUBEという風物詩は、まだまだ続きそうです。

評価:どちらも★★★★

TUBE 過去の作品
BEST of TUBEst~All Time Best~


ほかに聴いたアルバム

knot of meanings(意味のたま)/竹村延和

実に約11年半ぶりとなる竹村延和のニューアルバム。エレクトロサウンドを中心に、ピアノや管楽器なども取り入れた、シンプルなサウンドで空間を聴かせるような、なおかつアバンギャルドなサウンドを聴かせるスタイル。所々に取り入れられているチャイルディッシュな女性ボーカルも印象的。実験的な要素が強く、万人受けといった感じではないものの、久々のアルバムながらもまだまだ衰えない彼の創作意欲も感じさせる作品でした。

評価:★★★★

竹村延和 過去の作品
Zeitraum

 

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2026年1月 4日 (日)

クラブミュージックを取り入れた作品

Title:Deadbeat
Musician:Tame Impala

オーストラリアのミュージシャン、ケヴィン・パーカーによるソロプロジェクト、Tame Impalaによる約5年ぶりのニューアルバム。毎作、傑作をリリースし、大きな評価を集めていますが、人気の面でもイギリス、アメリカ共にチャートの上位にランクインするなど注目を集めています。そしてちょっと久々となった今回のアルバムですが、また傑作に仕上がっていました。

今回のアルバムに関して大きな特徴となるのはダンスミュージックの要素が強く表に出ていた作品という点でしょう。ハウス風の「My Old Ways」からスタートし、先行シングルともなっていた「Dracula」はドリーミーなディスコチューン。「Not My World」もリズミカルなビートを前に押し出したテクノ風のナンバーに仕上がっています。

後半も、7分以上に及ぶ長尺のナンバー「Ehereal Connection」はドリーミーなトランス風のナンバー。かなりクラブサウンドを意識したような作りとなっており、ライブでも軽くトリップできそうなナンバーに。さらにラストを締める「End of Summer」も心地よくリズミカルなトランシーなダンスチューンとなっており、ちょっとアンビエント感のある作風が、タイトル通り、夏の終わりを感じさせ、かつアルバムの締めくくりにふさわしい雰囲気の楽曲に仕上がっています。

このリズミカルな4つ打ちのビートが心地よく、いい意味での聴きやすさを感じさせる楽曲が並びます。クラブ志向のサウンドはライブでも盛り上がりそうですし、いままでの彼らの作品の中でも、特にインパクトのあるアルバムに仕上がっているようにも感じました。

一方でTame Impalaの作品の魅力というと、今回の作品で聴かせてくれたエレクトロサウンドと、そしてちょっと懐かしい80年代の香りも感じさせてくれるメランコリックなメロディーラインですが、今回のアルバムもそんな方向性はもちろん健在です。

まずそんなTame Impalaらしさを強く感じるのは先行シングルともなっている「Loser」で、80年代を通り越して70年代の雰囲気すら感じるレトロな曲調で、哀愁たっぷりに聴かせるメロディーが魅力的。ファルセットで聴かせるボーカルも楽曲のレトロ感、メランコリックさを誇張しており耳に残ります。

ラスト前の「Afterthought」も印象的。こちらもスペーシーでドリーミーな打ち込みのリズムがダンサナブルで心地よいのですが、メロディーラインもインパクトあるポップチューンとなっており、メランコリックなメロディーラインとファルセット気味のボーカルと合わせて耳に残るナンバーに。こちらもTame Impalaのポップな側面の魅力が発揮された1曲となっています。

このようにTame Impalaの魅力もしっかりと発揮しながらも、ダンサナブルな楽曲でよりインパクトを増したアルバムで、今回も間違いなく傑作と言える内容に仕上がっていました。これはライブでも盛り上がりそうなだぁ。ポップ好きはもちろん、ダンスミュージックが好きならば要チェックの作品です。

評価:★★★★★

Tame Impala 過去の作品
LONERISM
Currents
The Slow Rush

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2026年1月 3日 (土)

サウンドと歌声の対比が美しく

Title:Godness
Musician:feeo

Godnessfeeo

ロンドンを拠点に活動するエクスペリメンタルミュージシャン、Theodora Lairdのソロプロジェクト、feeoのニューアルバム。ドローンやアンビエント、実験音楽などを交差させた実験的な音楽性が特徴的なミュージシャンで、このアルバムも高い評価を受けているようです。

私自体、彼女のアルバムを聴くのは今回がはじめてですし、彼女の名前自体を聞くのもはじめて。前情報ほとんどなしにこのアルバムを聴いたのですが、まずこの作品で印象に残ったのは、サウンド部分とボーカル部分の対比。具体的に言えば、ドローンやアンビエント的に展開し、時にはノイジーなサウンドを繰り広げるサウンドと、ウィスパー気味の清涼感ある歌声で静かに聴かせる彼女のボーカルの対比でした。

まずアルバムは、全体的に彼女のボーカルを前に押し出したような楽曲で、静かな雰囲気の中スタートします。タイトル通り、自然の中にいるような、静かなドローン的なサウンドが印象的な「The Mountain」に、アンビエント的な「Requiem」、さらには高揚感あるタイトルとは裏腹に、静かなアンビエント的なサウンドをバックに、ハーモニーやファルセットも用いたボーカルで静かな歌を聴かせる「Win!」へと展開していきます。

特に中盤の「Sandpit」「Here」では静かなサウンドをバックに彼女の歌を前に押し出した「歌モノ」の楽曲となっており、彼女の歌声にしばし聴き惚れるような作品に。特に「Here」では、アンビエント的なサウンドの中、途中からゆっくりと聴かせるギターのノイズとボーカルとの対比が印象的で、このアルバムの中でも特にインパクトを覚えるような作品となっています。

一方、1曲目の「Days pt.1」と対比し、インターリュード的な役割のある「Days pt.2」以降は、アルバムの中でも第2部という感じなのでしょう。ラスト3曲は彼女の歌声以上にサウンドが印象に残る作品が並びます。「The Hammer Strikes The Bell」ではループするシンセのサウンドを聴かせる中、後半からはドラムやサックスも登場。フリーキーなサウンドを聴かせてくれ、緊迫感のあるセッションを聴かせてくれます。続く「Night Forgives Those Black As Her」も、メタリックでドローンなサウンドが楽曲に独特の不気味な雰囲気を与える作品。ラストを締めくくる「There is No.Ⅰ」は、最後に彼女の歌を静かに聴かせる作品ながらも、微妙に歪んだギターの音が不気味な余韻を残しつつ、アルバムは幕を下ろします。

このアンビエント的で、ドローンも用いた独特で不気味な感じのするトラックと清涼感ある歌声の対比が独特で、また見事。わかりやすいポップなメロが流れるわけではありませんし、ある意味、彼女の持つ音のアイディアが散らばって展開されるような構成なのですが、彼女の歌声もあり、最後まで心惹かれるアルバムに仕上がっていました。リスナーを選びそうなアルバムではあるのですが・・・それでもお勧めの1枚です。

評価:★★★★★

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2026年1月 2日 (金)

まだまだ若い世代には負けない!

Title:Lovin' You
Musician:Richard Ashcroft

今年、音楽業界をもっとも賑わせニュースのひとつが、間違いなくoasis再結成のニュースでしょう。10月には満を持して日本にも来日。大きな話題となりました。そんなoasisと関係が深いミュージシャンの一人と言えば、間違いなく彼、リチャード・アッシュクロフト。ご存じthe verveのボーカリストとして90年代のブリット・ポップシーンで活躍したミュージシャンの一人です。ソロとしても積極的な活動が目立つ彼ですが、このたびニューアルバムをリリース。ただ、直近作が過去作のセルフカバーアルバムでしたので純粋なオリジナルアルバムとしては2018年の「Natural Rebel」以来、約7年ぶりの新作となります。

そんなoasisの再結成で盛り上がっているイギリスのロックシーン。他にも今年はPULPが約24年ぶりにニューアルバムをリリースしたり、suedeもアルバムをリリースしたりと、特にブリットポップとカテゴライズされたようなバンドが、この2020年代中盤に来て盛り上がりを見せています。そして、リチャード・アッシュクロフトも負けてはいません。久しぶりとなるアルバムではその健在ぶりを見せつけています。

アルバムは、祝祭色を感じさせる華やかなポップチューン「Lover」でスタート。まさにこれからはじまるアルバムに、ワクワクさせてくれるようなスタートとなっています。続く「Out Of These Blues」は、渋めのブルージーな楽曲で、大人の魅力をしっかりと感じさせてくれた後、真骨頂とも言えるのが続く「Heavy News」で、分厚いバンドサウンドでグルーヴィーに聴かせるロックチューン。まさに待ってました感のある1曲となっています。

今回のアルバム、その後の展開はバリエーションに富んでいる点が大きな特徴になっています。中盤の「I'm A Rebel」はエレクトロサウンドを取り入れたディスコチューンに。ここまでの展開と全く異なった曲調となっており、リスナーを驚かせます。かと思えば続く「Find Another Reason」はアコギでしんみり郷愁感たっぷりに聴かせるフォーキーなナンバー。タイトル曲である「Lovin' You」はストリングスにエレクトロサウンドも入れて分厚いサウンドでスケール感を聴かせる楽曲と、まさに様々なタイプの楽曲を聴かせてくれる構成となっています。

ここらへんの展開については賛否もあるようで、確かに若干、全体を通じての主軸がないような構成にも感じられます。ただ、どの曲もリチャード・アッシュクロフトらしいメロディアスでグルーヴ感も覚えるメロをしっかりと聴かせてくれることは間違いなく、彼のファンはもちろん、あの頃のギターロック好きなら間違いなく気に入りそうな傑作に仕上がっていたと思います。まさに彼の健在ぶりを知らしめる作品。再結成したoasisにPULP、suedeもそうですが、90年代に活躍したミュージシャンたちも、まだまだ若い世代に負けてない、そんな気概を感じさせる1枚でした。

評価:★★★★★

RICHARD ASHCROFT 過去の作品
THE UNITED NATIONS OF SOUND(RPA&THE UNITED NATIONS OF SOUND)
THESE PEOPLE
Natural Rebel


ほかに聴いたアルバム

Liminal/Brian Eno&Beatie Wolfe

アンビエント界の巨匠、ブライアン・イーノとコンセプチュアル・アーティストのビーティー・ウルフのコラボアルバム第3弾。以前リリースした2枚のアルバム「Luminal」がドリーム・ミュージック、「Lateral」はスペースミュージックというコンセプトだったのに対して、本作はダークマターミュージックがコンセプトだとか。宇宙全体の物質の2割強を占め、ただ人類にはまだ謎の物体とされるダークマター。その音楽というコンセプトは正直、かなり謎なのですが、ただ楽曲としては、郷愁感あるビーティー・ウルフのボーカルに、分厚くドリーミーなサウンドが重なるという比較的シンプルな内容。アンビエントらしく、ゆっくりと聴かせる作品となっています。ドリーミーで、かつポップでいい意味で聴きやすさを感じるアルバム。難しいこと抜きに、広いリスナー層が楽しめるアルバムでした。

評価:★★★★★

Brian Eno&Beatie Wolf 過去の作品
Luminal
Lateral

Veronica Electronica/MADONNA

MADONNAが1998年にリリースしたアルバム「Ray of Light」のリミックス盤。もともとオリジナルアルバムリリース直後にリリースする予定だったそうですが、オリジナルアルバムの予想以上の成功によりプロジェクトはお蔵入り。25年以上の月日を経て、今回、7月にアナログ盤としてリリース。その後、CD及び配信でのリリースとなりました。

本作ではMADONNAの作品をWilliam OrbitやSashaといったミュージシャンたちがリミックス。もともと90年代にリミックスされていた作品といったこともあり、今となってはちょっと古い、というよりは「王道」といった感じのするテクノのリミックスが並びます。そのため、今となっては目新しさはないのですが、ただ、かなり素直に楽しめるアレンジの曲が並んでおり、耳なじみやすく、素直に楽しめるアルバムとなっていました。MADONNA好きはもちろん、テクノやエレクトロが好きなら要チェックのアルバムです。

評価:★★★★★

MADONNA 過去の作品
Hard Candy
Celebration
MDNA
Rebel Heart
Madame X

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2026年1月 1日 (木)

謹賀新年

新年、明けましておめでとうございます。本年も当「ゆういちの音楽研究所」をよろしくお願いします。


正直、2025年は、目立ったヒット曲が少ない1年でした。ほとんど1年間、目立ったヒット曲はミセスだけで、その他ではサカナクションの「怪獣」が奮闘したくらい。ようやく下期にHANAがヒットを飛ばし、年末に米津玄師の「IRIS OUT」が、2025年を代表するヒット曲となったくらい。全体的に残念ながら音楽シーン全体が低迷していまったような印象を受けます。

そんな中でのレコード大賞、大賞はミセス、新人賞はHANAというのは、レコ大としては珍しく(?)、まあ妥当な結果といった感じでしょうか。特に新人賞って、いつもいかにも事務所の力で無理やり取らせたような、私でも「誰?」と思うような人が取っていくケースが少なくないのですが、今回のHANAは妥当中の妥当といった感じ。他に新人賞を取れそうな新人が今年は出なかった、ということもありますが・・・。


今年もまた、大みそかの夜は家でまったりと紅白を見ていました。

個人的には例年、紅白は「肯定派」で、あれだけ価値観が多様化して、家で家族そろってテレビを見るという習慣が薄れつつある中、よくぞあれだけ、いろいろな世代が楽しめるような、様々なミュージシャンたちを集めつつ、ちゃんとその1年に活躍したミュージシャンたちも選んでいるな、と感心しています。

先に書いた通り、いまひとつヒット曲不在だった2025年の中で、いろいろ苦心しつつも、よくあれだけ豪華なメンバーを集められたな、とは思うのですが・・・ただ、結構批判は多かったようですが、やはり特別企画枠が多すぎるようには感じました。あと、全体的にその特別企画も含めて全体的にマンネリ気味で・・・矢沢永吉のサプライズ出演も、昨年のB'zの2匹目のどじょうといった感じで、正直、あまり驚かず・・・。いろいろと見せ方に苦心しているのはわかるのですが、このマンネリ気味な演出がかなり気になりました。

まあ、それだけ昨年は、これといった注目を集めるような新しいミュージシャンに乏しかった、ということなんでしょうね。確かにそんな中、ちゃんみなのパフォーマンスはいろいろな意味で目を惹いてすごかったなぁ、と感じました。間違いなく昨年の紅白のNo.1のパフォーマンスだったかも。あと、何気にハンバートハンバートのほっこりした演奏にも心を惹かれるものもありましたし、もちろん星野源や米津玄師のパフォーマンスもとてもよかったです。何気に今回も紅白の各ミュージシャンのパフォーマンスには楽しませてもらえました。

そんな訳で、今年はミセスを超えるくらいの、人気ミュージシャンの登場を願って。1年のポップスシーンが栄えあるものでありますように。

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