アバンギャルドでありつつ、ポップスさも
Title:Getting Killed
Musician:Geese
アメリカのインディーロックバンド、Geeseの4枚目となるアルバム。以前、バンドのフロントマン、Cameron Winterのアルバム「Heavy Metal」が注目を集めて、本サイトでも取り上げたことがありますが、Geeseのアルバムを聴くのは今回が初めて。本作は各メディアでも高い評価を受け絶賛されていますが、そんな評判もあり、今回はじめてGeeseのアルバムを聴いてみました。
Geese自体はアートロックやエクスペリメンタルロックにカテゴライズされるように、基本的には実験性の高い音楽性が特徴的のバンド。実際、このアルバムでも実験的な要素は随所に見受けられます。まず冒頭の「Trinidad」から、最初、落ち着いた出だしから、途中、いきなりシャウトするボーカルや、ホーンも入ったアバンギャルドなサウンドに変化。複雑に展開する実験的な作品となっています。また、タイトルチューンである「Getting Killed」でも、ウクライナの合唱団の歌声がループしてサンプリングされているほか、トライバルなリズムが加えられていたり、ポストロック的なダイナミックなロックサウンドを聴かせてくれていたりと、かなり実験的な作風が特徴的となっています。
ただ、そんな挑戦的な作風を垣間見せつつ、アルバム全体としては、むしろどこか懐かしさや暖かみを感じさせる、広いリスナー層が楽しめるようなポップスさを兼ね備えた作品になっていたように感じました。
そんな暖かみを感じさせる大きな要素としては、分厚いバンドサウンドに加えて、トロンボーンやバイオリン、パーカッションのリズムを加えることにより、サウンドに暖かみを感じさせる点ではないでしょうか。例えば「100 Horses」では、分厚いバンドサウンドにアバンギャルドさを感じる一方、ピアノやトロンボーンの音色が加わることによって、どこか郷愁感も感じさせます。歌詞は戦争による死の恐怖をテーマとしたかなり重い題材のようですが、そんなテーマ性でありつつも聴きやすさも同時に感じさせる楽曲になっています。
ラストを飾る「Long Island City Here I Come」も印象的。バンドサウンドの構成の複雑さは、彼らのサウンドの実験的な側面を感じさせつつ、力強いトライバルなドラムのビートを前に押し出して、サウンドのにぎやかさとダンサナブルなビートによって、楽曲がその複雑さと反して、聴きやすさを感じさせる内容となっています。
また、楽曲の軸となる「歌」についてもポップでメランコリック。郷愁感ただようメロディーもまた、アルバムに聴きやすさを与えています。例えば「Half Real」もフォーキーな歌が印象的。ピアノを軸に置いたサウンドもあって、暖かみある聴きやすい作品と仕上がっています。まあ、歌詞の内容は自己の精神の不安定さを表現した内容ということなので、歌詞がわかる人にとっては、歌詞とメロのアンバランスさもユニークな要素なのでしょうが・・・。「Au Pays du Cocaine」も、フランス語で「コカインの国から」というタイトル通り、ちょっと幻想的な作風となっているのですが、こちらもメロディーラインについては、フォーキーで聴きやすいポップな曲調に仕上がっています。
このように、実験的な音楽性を構築しつつ、一方では賑やかなサウンドや郷愁感ただようメロディーラインでポップスさも確立しているバランス感覚は見事。歌詞の世界観も、死や精神世界などダークなものを題材としつつ、一方ではメロやサウンドは比較的明るさを感じさせる、このバランスの妙もまた魅力的に感じます。来年には来日公演も予定されていますが、チケットは売り切れ、追加公演も決定。日本でも徐々に注目を集めてきています。高い評価も納得の傑作アルバムで、年間ベストクラスの傑作です。
評価:★★★★★
ほかに聴いたアルバム
TRON:Ares(Original Motion Picture Soundtrack)/NINE INCH NAILS
いままでNINのメンバーであるトレント・レズナーとアティカス・ロスの連名名義では映画のサントラ盤をリリースしてきましたが、NIN名義では初となるサントラ盤。映画のサントラということで、あくまでも劇伴らしい、ワンアイディア的な短い曲も収められている一方、アルバム全体としては、楽曲単独でも楽しめるような作品が目立ち、特にNINらしいインダストリアルの作品もありつつ、全体的には彼らとしては軽く、ただしっかりしたビートで楽しめるエレクトロチューンが並ぶアルバムとなっています。NINの新作としても十分楽しめる1枚でした。
評価:★★★★★
NINE INCH NAILS 過去の作品
GhostI-IV
THE SLIP
Hesitation Marks
Not The Actual Events
Add Violence
Bad Witch
Ghosts V:Together
Ghosts VI:Locusts
Takk...20the Anniversary Remaster/Sigur Rós
日本でも高い人気を誇るアイスランドのポストロックバンド、シガー・ロス。本作は、その彼らが2005年にリリースしたアルバム「Takk...」の20周年記念盤。同作のリマスターに、LP版と配信版では2005年にリリースされたEP「Sæglópur」収録曲と未発表曲を加えた、LPでは全3枚組というボリューミーな内容に仕上がっています。
同作はリアルタイムでも大きな評判を呼び、私もリアルタイムで聴いた1枚ですが、あらためて聴くと、独特の世界が今なお魅力的。ピアノやストリングスにバンドサウンドなどを加えた分厚いサウンドがドリーミーに展開し、静動メリハリのあるダイナミックなサウンドが大きな魅力。メランコリックなメロディーラインは郷愁感もあり胸をうつものもあります。20年前の作品ですが、今なお色あせない傑作。是非ともチェックしてほしい名盤です。
評価:★★★★★
Sigur Ros 過去の作品
Með Suð Í Eyrum Við Spilum Endalaust(残響)
valtari(ヴァルタリ~遠い鼓動)
KVEIKUR
Átta
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