HIP HOPへの思いを綴る久々の日本語詞アルバム
Title:抒情詩歌/JOJŌSHĪKA
Musician:Shing02
独特のポエトリーリーディング的なラップが独自の世界を切り開き注目を集めるラッパー、Shing02の、実に約6年ぶりとなるニューアルバム。さらに最近は様々なミュージシャンとのコラボ作が続いていたので、純粋にShing02単独名義で、かつ日本語詞のオリジナルアルバムとしては、実に2008年の「歪曲」以来になるのでは?
そんな久しぶりとなる、Shing02らしさのつまったHIP HOPのアルバムなのですが、久々がゆえにShing02の思いのつまった傑作に仕上がっていました。まず、アルバム全体を流れるトラックが耳を惹きます。岡山を拠点に活動するJO-JAYがサウンドプロデュースを手掛けたのですが、全編、ジャジーな雰囲気を漂わせるトラックが魅力的。アルバムとしてはもちろん主軸になるのはShing02のラップなのですが、必要上に前に出ることはなく、しかししっかりと主張するトラックが耳を惹きます。「燻銀/IBUSHIGIN」や「柘榴/ZAKURO」などジャジーなトラックが続いたかと思うと、「摩天牢/MATENRŌ」ではサンプリングを上手く使った、ムーディーでソウルなトラックが魅力的。後半では、「私小説/SHISŌSETSU」のような、哀愁たっぷりの泣きのギターを聴かせるトラックなどもあり、ムーディーな作風の中にバラエティーも備えたトラックが並びます。
そして、なんといってもアルバムの中で最大の魅力と言えば、Shing02の綴るラップでしょう。今回のアルバムでもまた、淡々としたポエトリーリーディングのようなラップで、しっかりとそのメッセージをリスナーの耳に届けてくれます。
今回の歌詞で特徴的なのは、その内省的な歌詞。特に、ラッパーとしてHIP HOPに対する想いを綴ったリリックが目立ちます。「舞台に立つ渋さはいぶき銀」と自らを鼓舞する「燻銀/IBUSHIGIN」から、「テクニクス二台こそ聖なる祭壇」と、まさにストレートにラップへの思いを綴った「聖/HIJIRI」、「何小節書いても書き足らん」とリリックへの意欲を綴った「私小説/SHISHŌSETU」に、そのままストレートにHIP HOPについてラップした「摩天牢/MATENRŌ」や「回想録/KAISŌROKU」など、内省的なリリックの中で、自らのHIP HOP、ラップにかける思いを感じさせるリリックが目立ちます。
また、そんな中でも印象に残ったのが「聖/HIJIRI」の中への一節
「この洋上に国境は見当たらず
人種と性、年齢の差別もなく」
(「聖/HIJIRI」より 作詞 Shingo Annen)
HIP HOPというジャンルの特徴を綴ったこの一節ですが、特に排外主義はびこる現在の世界の中だからこそ、グッと心に響くものがあります。特に昨今、日本において一部ラッパーが排外主義的な作品を発表し物議をかもしたことがありましたが、こういうHIP HOPの本質を誤ったような一部ラッパーの言動には非常に残念に感じる部分がありますし、そんな思いがこのリリックでより強くなりました。
久しぶりの日本語詞のアルバムがゆえに、Shing02の思いを強く感じさせる傑作アルバム。ムーディーでジャジーなトラックとのバランスも絶妙で絶品でしたし、HIP HOPリスナーのみならずチェックしてほしい傑作でした。
評価:★★★★★
Shing02 過去の作品
歪曲
SURDOS SESSIONS: Nike+ Training Run
1200Ways(Shing02+DJ $HIN)
S8102(Sauce81&Shing02)
246911(SPIN MASTER A-1&Shing02)
ほかに聴いたアルバム
Running Through the Fire/MONOEYES
細美武士率いるMONOEYESの約5年ぶりとなるニューアルバム。ELLEGARDENやthe HIATUSも同時並行で稼働する中、さすがに全バンドをフルに回転させるのは難しいようで、前作からちょっとインターバルのあるリリースとなりました。ただ、楽曲的には英語詞の曲がメインの中、日本語詞の曲がちょうどよいアクセントとなっているほか、肩の力が抜けたような、ポップで疾走感あるギターロックのナンバーが並んでいます。楽曲的には目新しさはないのですが、バンドサウンドの力強さや、全12曲入り35分程度という短さもあって非常に聴きやすい内容に。ファンにとっては待ったかいのある1枚と言えるのではないでしょうか。
評価:★★★★★
MONOEYES 過去の作品
A Mirage In The Sun
Dim the Lights
Between the Black and Gray
OWARI DIARY/SIRUP
途中、EPのリリースはあったものの、純然たるオリジナルアルバムとしては約4年半ぶりとなる新作。今回は「終わりの始まり」がテーマで、「終わりを受け入れつつ、新たな希望に向かう」というテーマ性のある作品に。基本的に以前のSIRUP同様、ソウル、R&Bの要素の強いメロウなポップチューンがメインの反面、リズミカルなダンスミュージックの要素を取り入れた新たな試みも感じられ、まさにテーマ設定に沿った、どこか明るい希望も感じさせる作風となっています。
評価:★★★★
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