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2025年10月 5日 (日)

過去の作品を再解釈

Title:Hail to the Thief(Live Recordings 2003-2009)
Musician:RADIOHEAD

2018年以来、活動休止状態となっていたRADIOHEAD。しかし、11月からは約7年ぶりとなるライブツアーのスタートが予定されるなど、ここに来て再び動き出す様相を呈しています。その嚆矢的にリリースされたのがこのライブアルバム。2003年にリリースされた彼らの6枚目となるアルバム「Hail to the Theif」の曲をライブで演奏した時の音源を集めたライブアルバムで、2003年から2009年に、ロンドンやアムステルダムなど、複数の都市のライブ音源を収録した作品となっています。

もともと、アルバム「Hail to the Theif」は、彼らのアルバムとしては若干、中途半端な位置づけのアルバムでした。2000年にリリースした「Kid A」、2001年リリースの「Amnesiac」の後にリリースされた本作は、前2作がエレクトロニカを大胆に取り入れた、問題作であると同時に、彼らを代表する作品ともなりました。それに続く本作は、前2作を引き継ぐエレクトロニカ的路線を残しつつ、一方では「Kid A」以前のギターロック路線にも回帰したアルバムとなり、若干中途半端な印象も否めず。また、曲数の多さを批判するような声もあり、トム・ヨーク自身もネガティブに評価してきたようです。

今回のライブアルバムは、そのアルバム「Hail to the Thief」を再解釈する意味もあるアルバム。オリジナルアルバムの音源をオリジナルの曲順に並べており、ほぼオリジナルと対比する形で聴けるような作品となっています。その中で大きな特徴と言えるのは、ライブ音源だから、ということもあるのでしょうが、オリジナルに比べて、よりバンドサウンドを前に押し出したダイナミックな演奏を聴かせてくれる、という点でした。

アルバムの冒頭を飾る「2+2=5」は、「Amnesiac」までの雰囲気を引き継ぐような、鬱々とした雰囲気の楽曲でしたが、バンドサウンドでよりダイナミックなサウンドに仕上がっており、高揚感のある展開がオリジナルよりもより強まった印象に。続く「Sit Down.Stand Up」も、エレクトロニカの要素が強かったオリジナルに比べて、バンドサウンドを前に押し出したアレンジとなり、こちらもロックテイストが強くなった印象を受けます。

その後も「The Gloaming」もエレクトロニカのアレンジを残しつつ、バンドサウンドの色合いをより強めていますし、オリジナルでもロック色が強くダイナミックなアレンジだった「There,There」も、より力強さが増したアレンジに。ラストの「A Wolf At the Door」もよりロック色を強めたアレンジに仕上げています。

全体的にアレンジをガラリと変えるというよりも、オリジナルのアレンジを生かしつつ、バンドサウンドを前に押し出し、よりロックテイストを強めた作風に仕上げた構成に仕上げており、エレクトロニカとロックのバランスが若干中途半端という印象のあったオリジナルに比べると、ギターロックの方向性がより明確になった印象を受けます。バンドサウンドを強くしたという点は、ライブという特性によるものも強いのでしょうが、結果として「Hail to the Thief」というアルバムを再解釈し、全体に統一感を与える結果となっています。

また、今回のアルバムではオリジナルに収録されていた「Backdrifts」と「A Punch Up At A Wedding」は未収録。オリジナルでは14曲入り56分という長さでしたが、本作では12曲入り47分と、比較的コンパクトに収まっています。この点も「曲数が多すぎる」というオリジナルの批判に答えたものでしょう。結果、よりアルバムとしてタイトにまとまっていたように思います。

ライブ音源という形で「Hail to the Thief」を再解釈したこのアルバムは、活動を再開するにあたって、RADIOHEADのいままでの活動の中での心残りを解消するためにリリースされたアルバムと言えるかもしれません。個人的にオリジナルアルバムの方も、エレクトロニカ路線を経て、あらたな方向性を模索するアルバムとしていいアルバムだと思うのですが、こちらもこちらでより方向性が定まったアルバムとして魅力的。オリジナルを聴いたことない方が、最初にどちらを聴くべきか悩むところですが・・・。ただ、ライブ盤としてスルーするのではなく、こちらのアルバムも要チェックな1枚であることは間違いないでしょう。ついに活動再開するRADIOHEAD。次のオリジナルアルバムも楽しみです。

評価:★★★★★

RADIOHEAD 過去の作品
In Rainbows
The Best Of
ROCKS:Live In Germ
THE KING OF LIMBS
TKOL RMX 1234567
Radiohead Live at Tramps June 1,1995
A MOON SHAPED POOL
OK COMPUTER OKNOTOK 1997 2017
KID A MNESIA

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