前作とはまた異なるミッシェルの魅力
Title:カサノバ・スネイク
Musician:thee michelle gun elephant
現在、デビュー30周年のプロジェクトとして、過去作のリマスター音源を、LP及び配信でリリースしているTHEE MICHELLE GUN ELEPHANT。本作は2000年にリリースされた彼らのメジャー5枚目となるアルバム。2000年といえば、この年のフジロックで、彼らが日本人としてはじめて2日目のトリをつとめ、3日目のトリをつとめたBLANKEY JET CITYと合わせて大きな話題となった年。一方では、この事実を当時のロックファンはすんなりと受け止めていたので、それだけこの頃、彼らが海外勢に負けない日本のロックバンドの代表格として認識されていたということになります。
売上的にもオリコンチャートで最高位7位を獲得し、名実ともに日本のロックバンドの顔となっていた彼ら。ちなみに私は前作「ギア・ブルース」に続いてこのアルバムもリアルタイムで聴いていたアルバムとなりますが、このアルバムを聴いた当時、正直、かなりの違和感を持って迎え入れたのを覚えています。というのも、ヘヴィーなバンドサウンドで怪しげにパンクロックを聴かせてくれた前作に比べると、このアルバムかなり爽やかな雰囲気で、なおかつポップにまとまってきたからです。
冒頭を飾る「デッド・スター・エンド」も、チバユウスケのシャウトも印象的な、疾走感あるパンキッシュなナンバーですが、バンドサウンドは重低音を生かしてた前作と比べると、かなり軽いという印象を受けます。「プラズマ・ダイブ」も、ダンサナブルな楽曲で、ポップな聴きやすさがありますし、当時、MVも作られた「リボルバー・ジャンキーズ」は今聴いても、ポップという印象を受けるメロディーラインとなっています。
その後も先行シングルとなった「GT400」も、やはりメロディーラインは至ってポップにまとまっていますし、タイトル通り、ダンサナブルな「ピストル・ディスコ」という楽曲もあります。当時もそのように感じていましたが、やはり今聴いても、特に前作「ギア・ブルース」と比べると、軽くて、そしてポップという印象を受ける作品となっています。
ただ、リアルタイムで聴いた当時はちょっと物足りなさも感じたこの路線ですが、今からあらためて聴くと、本作は前作「ギア・ブルース」に勝るとも劣らない傑作だったと感じます。特にヘヴィーだった前作に比べると軽さを感じるバンドサウンドについても、軽快なロックンロールの色合いが強くなったように感じますし、魅力的なチバユウスケのシャウトや疾走感あるバンドサウンドに対して、ポップなメロディーラインもちょうどよくバランスしており、いい意味での聴きやすさも感じさせます。もともと初期の作品からメロディーラインに関しては意外とポップな側面を持っていたバンドなだけに、特にこのデビュー30周年のプロジェクトとして過去の作品から続けて聴くと、今回のアルバムでもさほど違和感はありません。
また一方で今回のアルバムでも「ラプソディ-」や「シルク」みたいな、ヘヴィーなバンドサウンドでグルーヴィーに聴かせてくれる曲も少なくなく、あらためて聴くと、思ったよりもしっかりバンドとしてのグルーヴ感やヘヴィネスさも出していたように感じます。ここらへんの点もアルバム全体としてバランスが取れているようにも感じました。
そもそも、重低音を押し出した「ギア・ブルース」の後に、サウンド的にはもうちょっと軽い路線を狙った本作という、バンドとして様々なバリエーションを提示した、という意味でも本作は間違いなく前述の通り、前作に勝るとも劣らない傑作アルバムである、ということを今回再認識しました。本作のリリースから既に25年を経過した、というのは驚くべきことなのですが、今でも間違いなく魅力的なロックの名盤だと思います。あらためて彼らのすごさを実感させられる1枚でした。
評価:★★★★★
THEE MICHELLE GUN ELEPHANT 過去の作品
THEE GREATEST HITS
cult grass stars
High Time
Chciken Zombies
GEAR BLUES
ほかに聴いたアルバム
青春謳歌 カバーアルバム/ガガガSP
本作はガガガSPが青春パンクブームから共に切磋琢磨した、彼らが愛してやまないバンドの曲をカバーしたカバーアルバム。今年2月、ベースの桑原康伸が44歳という若さでこの世を去るというショッキングなニュースが飛び込んできた彼らですが、ジャケット写真のメンバーは変わらず4人。改めてバンドとしての原点を探ったアルバムなのかもしれません。楽曲は、いかにも青春パンクバンドらしい楽曲から、ちょっと意外なところではマキシマム・ザ・ホルモンの「アナル・ウイスキー・ポンセ」も、ちゃんとデス声ふくめてしっかりとカバー。B-DASHの「愛するPOW」も「適当アドリブめちゃくちゃ語」でちゃんとカバー。非常にシンプルなパンクバンドである彼らですが、タイプの異なるバンドの曲も、ちょっとチグハグ感を残しつつ、愛情たっぷりにカバーしています。ちなみにBivattchee「はんぶんこ」は、桑原が生前、カバーを強く希望していた楽曲だそうで、バンドとしての思いを感じさせます。彼らがカバーしやすい楽曲というよりも、愛してやまないバンドの曲を選んでいるということもあって、カバーとしてはどこかぎこちなさが残ってしまっているのですが、その分、バンドへの愛情を感じられるカバーアルバムでした。
評価:★★★★
ガガガSP 過去の作品
くだまき男の飽き足らん生活
自信満々良曲集
ガガガを聴いたらサヨウナラ
ミッドナイト in ジャパン
ガガガSPオールタイムベスト~勘違いで20年!~
ストレンジピッチャー
THEガガガSP
Electricity Remixes/宇多田ヒカル
ベストアルバム「SCIENCE FICTION」に新録として収録された「Electricity」を、様々なプロデューサーによってリミックスされたEP盤。ロンドンを拠点に活動するDJ/プロデューサーのKaren Nyame KGや、マンチェスター在住のDJ/プロデューサーsaluteによるリミックスもカッコいいのですが、何よりやはり耳を惹くのはビョークなどとの仕事でもおなじみのArcaによるリミックス。Arcaらしい複雑かつ独特なサウンドが耳を惹きつけるアレンジになっています。いずれの曲も、よりエレクトロ色が濃くなった作品に。ファンならチェックしたいリミックス盤です。
評価:★★★★
宇多田ヒカル 過去の作品
HEAT STATION
This Is The One(Utada)
Utada Hikaru SINGLE COLLECTION VOL.2
Fantome
初恋
One Last Kiss
BADモード
Hikaru Utada Live Sessions from Air Studios
SCIENCE FICTION
HIKARU UTADA SCIENCE FICTION TOUR 2024
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