郷愁感たっぷりの長尺曲が並ぶ
Title:New Threats From the Soul
Musician:Ryan Davis & the Roadhouse Band
今回紹介するアルバムは、ケンタッキー州ルイビル出身のミュージシャン、ライアン・デイビス率いるRyan Davis&the Roadhouse Bandのアルバム。本作が2作目のアルバムとなるのですが、各種メディアなどにも高く評価されているようで、注目を集めるアルバムとなっています。
まず本作で特徴的なのは、約57分という長さのアルバムであるにも関わらず、わずか7曲入りという点。5曲という長さの曲もありますが、ほとんどの曲が7分~9分、さらには「Mutilation Springs」に至っては11分49秒という長さの楽曲となっています。1曲1曲がかなり長く、しっかりと聴かせるという構成になっています。
楽曲はいわゆるアメリカーナといわれるようなジャンル。カントリーやフォークに、ロックの要素も加えたようなポップソングが並んでいます。爽快なサウンドにのせてメランコリックに聴かせるフォーキーなタイトルチューン「New Threats From The Soul」からはじまり、しんみり郷愁感たっぷりの「Mutilation Springs」、おなじく郷愁感あふれるメロディーラインでしっかりと歌い上げる「The Simple Joy」など、基本的にはタイプ的には似たような曲が並ぶのですが、単なるノスタルジックなアメリカーナというだけではなく、曲によってはサイケなギターが加わったり、打ち込みやシンセも取り入れていたりと、現代風に解釈したおもしろさも感じられます。
一方で、本作の大きな魅力なのが歌詞の世界のようで、歌詞の内容としては自らの魂を見つめ、またそれによる不安、あるいは自己破壊衝動などを歌っているそうです。正直、メロディーやサウンドはかなり爽やかな印象ですので、このような歌詞の内容なのは、英語がわからない私からするとかなり意外性があるのですが、それを独特な比喩表現や言い回しなどによって歌っている内容がかなり大きな評価を得ているようです。
そのため、今回、楽曲1曲あたりが長いのですが、長尺曲にありがちな、延々とインプロビゼーションが続く、とか、楽器のソロパートが続き、とかそういった感じではありません。7分なり9分なり、彼が延々と歌い続ける内容となっており、それだけ楽曲の歌詞の世界の深淵さを感じさせる内容となっています。ただ、残念ながらこの歌詞の魅力が、英語が苦手な私にとってはいまひとつ感じれない点が非常に残念な限りなのですが・・・。
また、もうひとつ大きな魅力になっているのが、本作で聴かせてくれる男性ボーカリストと女性ボーカリストのかけ合い。今回、女性ボーカリストとしてWill Lawrenceというミュージシャンが参加しているのですが、彼女の清涼感あるボーカルが、この楽曲の中のちょうどよいインパクトとなっています。この点もまた、本作の大きな魅力に感じました。
長尺曲が多く、楽曲のバリエーションよりも歌詞が大きな魅力、という点で、非英語圏の人間にとっては無条件でおすすめといった感じではない点もあるのですが・・・ただ一方、郷愁感たっぷりの歌はやはり魅力的なのは間違いないでしょう。今後、日本でも徐々に注目を集めていきそうな予感のある1枚でした。
評価:★★★★
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