伝説のバンドのデビュー前の貴重な音源
Title:The First Family: Live At The Winchester Cathedral 1967
Musician:Sly&the Family Stone
今年、間違いなく大きな音楽ニュースのひとつが、スライ・ストーンの訃報でしょう。82歳。大往生とまではいかないものの、十分「長生きした」と言える年齢ではないでしょうか。訃報自体はもちろん非常に残念なニュースではあるものの、あのスライ・ストーンが80歳過ぎまで存命であったということ自体には、ある意味、少々驚かされます。というのもスライ・ストーンは80年代以降、酷い薬物中毒と精神的なストレスもあって事実上の引退状態となり、音楽業界から姿を消したという、健康状態に非常に難のあるような状況だったからです。2010年代以降、音楽活動を再開させていましたが、正直、若い時分、肉体的にも精神的にもあれだけ不健康だった彼が、82歳という年齢まで生き延びたというのは、非常に意外に感じます。
ただ、この「寿命」というのはよくわからないもので、同じように若い時分に無茶苦茶やってきたミック・ジャガーもキース・リチャーズも、80歳過ぎてもバリバリの現役ですし、かと思えば、音楽業界の話ではないものの、菜食主義で健康に気を使ってきたスティーブ・ジョブスやら、晩年は食生活に気を使ってきたという坂本龍一とかが、あっさりと比較的若くこの世を去ってしまうあたり、巷では長生きするためには、やれ肉を食べるな、だとか、やれタバコは吸うな、だとか、いろいろな健康法が述べられていますが、長生きできるかどうか、というのは食事法やらタバコやらは微々たる要素にすぎる、結局「運」ではないか、と考えてしまいます。そう思いながらも、私のような凡人は健康のために食事に気を使ったりしてしまうのですが・・・。
本題から話が大きくそれてしまいましたが、今回紹介するのはそんなスライ・ストーン率いる伝説のバンド、スライ&ザ・ファミリーストーンの未発表のライブ音源を収録したライブアルバム。1967年3月26日にカリフォルニア州レッドウッドシティのウィンチェスター大聖堂で行なったライブの模様を収録した作品で、彼らがエピック・レコードと契約する直前のステージ。もちろん伝説ともなったウッドストックでのステージからも、名盤と名高い「Stand!」や「暴動」がリリースされる、はるか前のステージとなっています。
そんな未発表のライブ音源のため、正直言って音はさほどよくありません。バンドの演奏がちょっと後ろにこもった感じもあり、どちらかというとライブ会場での客席の音をそのまま拾ったような印象があります。ただ一方で、ノイズなどはきれいに消されており、そういう点では非常に聴きやすいライブ音源とも言えるかもしれません。
そして、スライのライブの魅力に感じるのは、とにかくいろいろなジャンルの音を取り入れたステージになっているという点。ソウルやファンク、ジャズ的な側面も感じますし、またロック的な部分も。スライ&ザ・ファミリーストーンといったら人種や性別を混合したバンドということで当時も話題になったそうですが、音楽のジャンル的にもソウルをベースとしつつ、様々な音を取り入れた楽曲に惹かれるものがありますし、そういう自由さが、彼らが活躍した60年代を象徴するものであったのでしょう。
またパフォーマンスも非常に若々しく、勢いがあるという点も特徴的。音の悪さもあって、演奏に良くも悪くも粗さみたいなものも感じるのですが、その点も含めて、ある意味、緊迫感があってリアリティーすら感じられます。デビュー前ということでまだまだこれからという部分も大きいのでしょうが、そんな点も含めて、スライ&ザ・ファミリーストーンの魅力を感じることが出来るライブアルバムとなっています。
ちなみに収録曲にはオーティス・レディングの「I Can't Turn You Loose」、ウィルソン・ピケットの「Funky Broadway」、オーティス・レディングの「Try a Little Tenderness」などソウルのカバー曲も多く、オリジナルだけでライブを埋められないという点もデビュー前のバンドならでは。また、貴重なカバー音源という意味でも意義深いライブアルバムになっていました。
スライ&ザ・ファミリーストーンの最初の1枚・・・といった感じではないのかもしれませんが、それでも決してコアなファン向けのレア音源といった感じではなく、スライ&ザ・ファミリーストーンが好きならば要チェックのライブアルバムだと思います。あらためて、スライ・ストーンのご冥福を祈りつつ、彼らが活躍していたあの頃に思いをはせたいところです。
評価:★★★★★
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