美しいハーモニーが魅力的なスーパーグループ
Title:Wild and Clear and Blue
Musician:I'm With Her
ヴァイオリン、ギター、ウクレレを担当するSara Watkins、バンジョーやマンドリンを担当するSarah Jarosz、そしてキーボード担当のAoife O'Donovanの女性3人からなるアメリカのフォークバンド、I'm With Her。もともとメンバーそれぞれソロミュージシャンとして活動しており、特にSarah Jaroszはソロとしてグラミー賞受賞の経験もあるような実力派ミュージシャン同士の組んだスーパーグループ。2020年には彼女たちの曲「Call My Name」がグラミー賞の最優秀アメリカン・ルーツ・ソング賞を受賞するなど、このバンドとしてもその実力を遺憾なく発揮しています。
そんな彼女たちの楽曲は前述の通り、ギターやヴァイオリンを中心とした非常にシンプルなサウンドで奏でる、フォークソングやカントリーソングが特徴的。いわゆる典型的なアメリカーナのミュージシャンとなるのでしょうが、シンプルなアレンジでしっかりと「歌」を聴かせるスタイルという点が最大の特徴と言えるでしょう。ちなみにシンプルながらもシンセやオルガン、ハーモニウムなど、意外と多彩なサウンドを取り入れており、この点はもっとシンプルにアコギメインのアレンジだった前作「See You Around」に比べて、グッと音数が増したそうです。ただ、それでも聴いていて「シンプル」という印象を抱くのですが。
それだけに正直言えば目新しさという点はあまりありません。ただし、そんなマイナス点を十分に克服できるだけの、メロディーラインの素晴らしさがある点が本作の大きな魅力と言えるでしょう。タイトルチューンでもある「Wild and Clear and Blue」の切なさを感じさせるメロディーラインも非常に魅力的ですし、終盤の「Year After Year」の力強さと切なさを同居したメロディーラインも実に魅力的です。
そしてなによりも本作の大きな魅力となっているのは、メンバー3人による美しいハーモニーでしょう。冒頭を飾る「Ancient Light」から、そのハーモニーの美しさが遺憾なく発揮されていますし、なによりもそのハーモニーが引き立っているのが、先行シングルでもある「Standing on the Fault Line」。見事な3人のハーモニーの美しさにしばし聴き惚れてしまう、切ないメロディーラインが特徴的です。
前述の通り、彼女たちの楽曲、スタイルに目新しさは感じません。しかし、目新しくないシンプルなスタイルだからこそ、美しいメロディーラインやハーモニーが際立ったアルバムになっていたのではないでしょうか。シンプルながらも、いやシンプルだからこそ、非常に魅力的な傑作アルバムでした。
評価:★★★★★
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