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2025年8月 9日 (土)

レジェンド的なインディーバンドの久々の新譜

Title:Instant Holograms On Metal Film
Musician:Stereolab

主に1990年代から2000年代に活躍したロンドンを拠点に活動したStereolab。インディーロック、あるいはアヴァン・ポップと言われる代表格的なバンドで、大ブレイクこそしませんでしたが、日本でも高い人気を誇ったバンドでした。その後、2009年に活動を休止したものの、2019年に活動を再開。このたび、活動休止前の2010年依頼、実に15年ぶりにリリースされたニューアルバムが本作となります。

まずアルバム全体としてはメロディアスで暖かい、ソフトロック的な楽曲が並ぶ印象を受けます。先行シングルともなっている「Aerial Troubles」は、ちょっと懐かしいレトロ感のあるメランコリックなポップチューンになっていますし、「Immortal Hands」もどこか懐かしいソフトロック的な作風が魅力的。「Transmuted Matter」も女性のハーモニーが美しい、ネオアコ的な楽曲に仕上がっていますし、後半の核とも言える「Flashes From Everywhere」も、フルートの音色も美しい、暖かくメロディアスなソフトロックに仕上がっています。

そんな感じで、全体的にはどこか懐かしさを感じさせるネオアコやギターポップのテイストを感じさせるポップチューンが魅力的なアルバム。ただ、一方、単純に暖かいポップというだけにとどまらないバリエーション豊かな楽曲も魅力的で、例えば特に序盤、楽曲後半がインストになっているような曲が並ぶのですが、「Melodies Is A Wound」もそんな1曲。後半も暖かいサウンドを聴かせてくれるのですが、歪んだホーンのノイズやエレクトロサウンドも加わり、ダイナミックで複雑に展開していく構成も大きな魅力的です。

また、中盤の「Electrified Teenybop!」も実験的な作風で、レトロフューチャー的なエレクトロサウンドが展開されるインストチューン。エレクトロディスコ的なリズムで軽快なナンバーとなっていますし、「Esemplastic Creeping Eruption」も、ソフトロック風な序盤から、後半はノイジーなギターが入り、ロック色の強くなるインストに。この展開もなかなかユニークな楽曲に仕上がっています。

ちなみに彼らの楽曲の特徴として、政治的、哲学的な歌詞の世界も大きな魅力だとか。残念ながら英語は詳しくわからないので、その部分の魅力を直接感じることは出来ないのですが、例えば「Aerial Troubles」では消費社会に対する皮肉を感じさせる歌詞が繰り広げられており、その歌詞の世界も大きな魅力となっています。

約15年ぶり、かなり久々のアルバムだったのですが、Stereolabの魅力をしっかりと伝えてくれているアルバム。良い意味で彼ららしい作品に仕上がっていました。楽曲については、正直最初、ちょっと地味にも感じたのですが、聴けば聴くほどその魅力にはまっていく、そんな傑作に仕上がっていました。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

Make'em Laugh, Make'em Cry, Make'em Wait/Stereophonics

通算9枚目のチャート1位獲得作となったイギリスのロックバンドStereophonicsの新作。相変わらず国民的バンドらしい安定した人気を感じさせる本作は、全8作30分弱という、バンド史上、もっとも短いアルバムにになっています。そのため比較的シンプルで、ある意味王道路線とも言えるロックアルバムとなっていますが、一方では1曲目「Make It On Your Own」ではストリングスを取り入れてスケール感のある作品となっていたり、「Eyes Too Big For My Belly」はハードロック風に仕上げられていたり、ラストの「Feeling Of Falling We Crave」は郷愁感たっぷりのブルースロックに仕上げられていたりと、短い内容の中にバラエティーを感じさせる内容に。目新しさはないものの、しっかりと壺をついた構成にベテランバンドらしい実力も感じさせる内容になっていました。

評価:★★★★

STEREOPHONICS 過去の作品
Decade In The Sun-Best Of Stereophonics
KEEP CALM AND CARRY ON
Graffiti On The Train
Keep The Village Alive
Scream Above The Sounds
Kind
Oochya!

Pink Elephant/Arcade Fire

ある意味、近年まれにみる、わかりやすい転落劇を繰り広げているロックバンドArcade Fireの新作。2010年にリリースされた「The Suburbs」や2013年の「Reflektor」は各種メディアで大絶賛を受け、まさに未来のロックの希望のような扱いを受けていたのですが、2017年の「Everything Now」が酷評を受け、一気に人気がダウン。さらに2022年にメンバー、ウィン・バトラーの性加害疑惑が取りざたされ、完全に人気が失墜してしまいました。前作「We」では最高位6位にランクインしていたビルボードチャートも、なんと本作ではベスト200圏外という結果に。正直、ここまで短期間に人気も評価も失墜してしまったミュージシャンも珍しいかもしれません。

ただ、率直に言うと、このアルバム、そこまで悪いか?というのは正直な感想。確かにシンセを取り入れてエレクトロ感を増やしたサウンドは、若干安易という表現も出来るかもしれませんし、全盛期と比べると、やはり物足りない点は否めないかもしれません。しかし一方、メランコリックなメロディーラインはインパクトもあり、最後までダレることなくしっかり聴かせるメロを楽しませてくれます。性加害疑惑という側面で、確かに安直な絶賛は出来ないかもしれませんが、一時期シーンを席巻したバンドの実力を感じることは出来るかと思います。今後、ここから疑惑も払拭して盛り返すのか、それともこのまま完全に消えて行ってしまうのか。今後の動向が気になるところです。

評価:★★★★

ARCADE FIRE 過去の作品
THE SUBURBS
REFLEKTOR
Everything Now
We

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アルバムレビュー(洋楽)2025年」カテゴリの記事

コメント

《Margerine Eclipse》(Elektra 2004)で、「we will love you till the end」 と追悼してから20年以上経っても、Mary Hansenの不在を埋められなかった?
バック・ヴォーカルにMarie Merlet(Monade)、彼女の姪Molly Read Hansenを起用していることからも、彼ら(Stereolab)の真摯さが窺えます。
プロフィール写真(bandcamp)には目頭が熱くなっちゃった。
(https://f4.bcbits.com/img/0014068201_10.jpg)

投稿: sknys | 2025年8月21日 (木) 12時30分

>sknysさん
情報ありがとうございます。メアリーの存在はやはりバンドにとってかなり大きかったのですね・・・。

投稿: ゆういち | 2025年11月20日 (木) 08時27分

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