Bruce Springsteenの決意
Title:Land Of Hope&Dreams EP
Musician:Bruce Springsteen
今、世界の民主主義が危機に陥っています。排外主義的で、反知性的かつ反科学的な大統領が世界に混乱を巻き起こしています。もちろんアメリカのトランプ大統領のことですが、日本においても先日の参議院選挙で同じく排外主義的で反知性、反科学的な政党が多数の議席を確保するなど、非常に危うい状況に陥っています。
トランプについては、選挙の時、アメリカでは多くのミュージシャンが反トランプを唱えていました。ただ、残念なことに正直、トランプが大統領に就任した後は、その政策についてのミュージシャンからの批判はあまり多くないように感じます。ひょっとしてまだ就任直後なので、マナー的に批判は控えているのかもしれませんし、なんだかんだいってもアメリカの大統領である以上、公での批判は控えているのかもしれません。ただ、トランプは大統領就任後、自分に批判的な人物に対して、厳しい処置を行っており、そういうことを恐れているのならば、情けなく感じてしまいます。
しかし、そんな中、アメリカを代表するロックミュージシャン、Bruce Springsteenがライブにおいてトランプの批判を行ったということで大きな話題となりました。今年5月14日にイギリスマンチェスターで行われたライブツアー「Land of Hopes and Dream Tour」初日。ライブのMCにおいて、痛烈なトランプ批判を行い大きな話題となりました。それに対してトランプは彼に対して批判だけではなく、捜査をちらつかせる、権力者として非常に危険な発言を行っています。もちろん、そんなことに怯むボスではなく、その後、このMCを含んだライブEPをデジタル配信。その主張をより広くアピールしています。そのライブEPが今回紹介する本作です。
該当するMCは、「Land of Hope and Dreams(Introduction)」と「My City of Ruins(Introduction)」として収録されています。そのMCについて、オリジナルはこちらに、また和訳はこちらに掲載されていました。その演説はゆっくりと、そして力強く語りかけるように話されています。ゆっくりかみしめるような演説のため、比較的聴き取りやすい演説とはいえ、さすがに英語を聴いただけですべて理解できるような英語力は私はないのですが、ただ、非常に感情のこもった演説であり、聴いているだけでその言葉が胸にうつような、感動的ですらある演説となっていました。
そしてこのライブEPで選ばれた曲もまた、非常にメッセージ性の強い楽曲が並んでいます。タイトルともなっている「Land of Hope and Dream」は彼の代表曲のひとつなのですが「この列車は聖人も罪びとも、勝者も敗者も運んでいる」と歌われるこの曲は、まさに白人男性のみを優遇しようとするトランプに対する力強い反論となっていますし、「Long Walk Home」もブッシュ政権下のアメリカについて歌った曲で、まさにその当時と、今のトランプ政権下を重ね合わせた選曲と言えるでしょう。どちらもバンドサウンドをバックに力強く歌い上げています。
しんみりと歌い上げるソウル風バラードの「My City of Ruins」も、2001年9月11日の同時多発テロの後に、祈りの歌として歌われるようになった楽曲で、こちらも今のアメリカへの祈りをささげた曲ということでしょうか。最後にはボブ・ディランの「Chimes of Freedom」のカバーも収録されており、終始、トランプによって酷いことになろうとしているアメリカに対する力強いボスのメッセージを感じさせる選曲となっています。
演説に楽曲も含めて感動的とも言える内容。ボスのアメリカに対する深い愛情と、危機感、それと同時に人々に対する希望も綴っており、我々にとっても深く心に響いてくるライブEPとなっていました。我々日本人にとっても、全く他人事とは言えなくなってきた今の憂うべき事態。反知性・反科学的に走ってしまうのは、現代の民主主義の限界なのか、それとも、民主主義がより深化するために必要な「犠牲」なのかわかりません。ただ、ボスの言う通り、希望を失わず、乗り切っていければと思います。
これは余談ですが、トランプは大統領令を連発して、問題ある政策を実施していますが、あんなに簡単に大統領がいろいろなことが出来てしまうのって、どう考えてもアメリカの政治システムの「バグ」だと思うんですよね。今はトランプ支持者にとっては、「リベラルの連中、ざまぁ」的な感覚かもしれませんが、これ、一歩間違えて、共産主義的な人物が大統領になった場合、一気にアメリカが共産主義国家になる危険性もあると思うんですよね。実際、2016年の大統領選挙ではバーニー・サンダースみたいな社会主義的な大統領候補が一定の支持を集めたこともありましたし、決して「ありえないこと」ではないと思うのですが・・・。民主的に選ばれた大統領に間違えはないという、楽観的な今のシステムは、修正した方がいいような気がするのですが・・・。
評価:★★★★★
BRUCE SPRINGSTEEN 過去の作品
Working On A Dream
WRECKING BALL
High Hopes
1980/11/05 Tempe,AZ
Western Stars
Letter to You
Only The Strong Survive
Best of Bruce Springsteen
Japanese Singles Collection - GREATEST HITS -
ほかに聴いたアルバム
Under Tangled Silence/DjRUM
イギリスを拠点に活動をしている音楽プロデューサー、DjRUMことFelix Manuelのニューアルバム。クラシカルなピアノやストリングスに、ジャズの要素も加えて、エレクトロサウンドと融合させたサウンドが特徴的。全体的にはアンビエント色の強い作風となっていますが、終盤の「Out Of Dust」や「Sycame」などはブレイクビーツを取り入れたリズミカルな楽曲もあり、バラエティーのある構成も特徴的。ゆっくり聴ける曲から、フロア志向のナンバーまで、じっくりと楽しめるアルバムになっていました。
評価:★★★★★
DjRUM 過去の作品
Meaning's Edge
Radio Free Europe 2025/R.E.M.
2011年に解散したロックバンドR.E.M.が突如リリースした5曲入りのEPは、彼らが1981年にリリースした「Radio Free Europe」を中心に、同作のリミックスに「Sitting Still」「Wh.Tornado」のデモバージョンが収録された作品となっています。ラジオ・フリー・ヨーロッパ/ラジオ・リバティの放送開始75周年と5月3日の「世界報道自由デー」を記念してリリースされたそうですが、このラジオ・フリー・ヨーロッパ/ラジオ・リバティは、東ヨーロッパからロシアを主に対象として、西側の民主主義、自由思想を伝えるために放送されるものだそうです。「Radio Free Europe」は軽快なギターロックなのですが、アレンジによって雰囲気が大きく異なり、その聴き比べも楽しいEPとなっています。
ちなみにこのラジオ・フリー・ヨーロッパ/ラジオ・リバティですが、出資元のアメリカが、トランプの指示で出資引き上げを言い出しているそうで、ヨーロッパ諸国が対応を模索しているとか。こちらもトランプの政策に翻弄されているようです。今後のラジオ・フリー・ヨーロッパ/ラジオ・リバティーの行く末が気になります。こんなことに屈せず、頑張ってほしいところですが・・・。
評価:★★★★★
R.E.M. 過去の作品
Accelerate
COLLAPSE INTO NOW
PART LIES,PART HEART,PART TRUTH,PART GARBAGE,1982-2011(グレイテスト・ヒッツ~パート・ライズ、パート・ハート、パート・トゥルース、パート・ガービッジ、1982-2011)
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