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2025年8月

2025年8月31日 (日)

ラテンとエレクトロを融合させた独特のサウンドが魅力

Title:A Tropical Entropy
Musician:Nick León

Atropicalentropy

南アメリカのマイアミ出身のDJ/音楽プロデューサーによる作品。母方にコロンビア系のルーツを持つ彼は、楽曲にラテンミュージックの要素を入れたエレクトロサウンドが特徴的で、このアルバムも随所で高い評価を得ている作品となっているそうです。

本作はまさにそんなラテンの要素の入ったエレクトロサウンドが非常に独自性を持っており、強く耳に残る作品となっています。冒頭を飾る「Entropy」はメランコリックなアンビエント風の作品。続く「Ghost Orchild」もアンビエント風にスタートするなど、最初は静かにスタートするのですが、中盤はラテンの要素の入った強いビートへと展開。複雑な楽曲構成も大きな魅力となっています。

中盤の「Millennium Freak」もまさにNick Leónの魅力が前面に押し出された作品と言えるでしょう。エレクトロのリズムに、ラテンの要素の入った独特のビートが特徴的。疾走感のあるサウンドがとても心地よい作品。この独特のラテン風なビートはベネゼエラのダンスミュージック、 チャンガ・トゥキのリズムだそうです。

この後、後半にかけては「Crush」「R.I.P.Current」とアンビエントテイストのドリーミーな楽曲が並びます。そして「Product of Attracstion」もまた、後半のひとつの核となるナンバー。メロウなソウルテイストのダンスナンバーで、メランコリックなサウンドに、ちょっとはかなげな女性ボーカルが魅力的な楽曲になっています。

そして、おそらくアルバムの最も核となるナンバーが、アルバムのラストを飾る「Bikini」で、メランコリックな女性ボーカルが前面に押し出された歌モノのナンバー。疾走感あるリズミカルなトラックも特徴的で、どこか夏の終りを感じさせるようなメロウなサウンドとダンサナブルなリズムが耳に残ります。

全体的に、どこか気だるさを感じさせるダウナーでアンビエントなサウンドが印象に残るナンバー。ラテンフレーバーなメランコリックなサウンドが耳に残る一方、リズミカルなエレクトロサウンドがアルバムに強いインパクトを与えており、まさに独特のサウンドを作り出している作品となっています。ラテンミュージックが好きな方やエレクトロ、テクノ系が好きな方なら間違いなく気に入る傑作アルバムです。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

I'll Be Waving As You Drive Away/Hayden Pedigo

Hayden_pedigo

アメリカはテキサスのギタリストによる5枚目となるオリジナルアルバム。紹介文によっては「前衛ミュージシャン」という紹介のされ方をしていますが、本作は至ってポップでメロディアスなギターインストを聴かせてくれます。全体的に爽やかでメロディアス。ちょっとフォーキーな雰囲気も加わるギターインストで、日本でいえばDEPAPEPEあたりを彷彿とさせそうな部分も。比較的広い層が楽しめそうなギターインストのアルバムでした。

評価:★★★★

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2025年8月30日 (土)

新たな一歩を踏み出した4枚目

Title:I quit
Musician:HAIM

日本でも高い人気を誇るアメリカの姉妹3人組ガールズロックバンドHAIMの約5年ぶり4枚目となるニューアルバム。今回のアルバムのリリースの前に、彼女たちの永年の共同制作者であり、メンバーのDanielle Haimの元パートナーであったAriel Rechtshaidと別れ、新たな一歩を踏み出した作品だそうで、特に1曲目「Gone」ではジョージ・マイケルの「Freedom! '90」をサンプリングしており、新たな一歩の意思を示しているそうです。

とはいっても、今回のアルバムもいままでのHAIMの作品からそう大きな変化が起きた、という訳ではありません。今回のバリエーションの多いポップソングが楽しめる作品。ギターロックナンバーの「Gone」からスタートし、「Relationships」はメロウさも織り込んだ軽快なポップチューン。「The farm」はアコギで聴かせてくれるフォーキーな作品になっていますし、「Lucky stars」は分厚いギターサウンドにシューゲイザーの影響を感じます。さらに「Spinning」は打ち込みのリズムの軽快なエレクトロポップに仕上がっていますし、「Blood on the street」は力強く聴かせるブルースロック風の楽曲となっています。

ここらへんの楽曲のバリエーションの多さが、彼女たちにとってはひとつの特徴であり魅力である一方、特に初期の作品については軸足の弱さや節操のなさを感じ、ウィークポイントになっていたようにも感じました。ただ、前作「Women in Music Pt. III」から「ロックバンド」により主軸を置いた作品となった結果、全体としてまとまりが生まれてきました。そして今回のアルバムも基本的には前作の路線を引き継ぐような内容となっており、アルバム全体としてのまとまりは前作よりもより強くなったように感じました。

特に冒頭の「Gone」からはじめ、序盤の「All over me」「Down to be wrong」など、ロックテイストの強い作品を並べ、ロックバンドとしてのHAIMの印象を強く受けるような展開に。中盤にも前述の「Lucky stars」のようなロック色の強い曲を配し、終盤もブルースロックの「Blood on the street」から、ラストも強いドラムのビートが印象的な、ロック色の強い「Now it's time」と、全体的に力強いバンドサウンドが耳に残るような構成となっており、結果、アルバム全体としてしっかりとした統一感を持った印象を受けました。

そして何よりも彼女たちの魅力と言えば、ポップでキュートなメロディーラインでしょう。序盤の「Relationships」からスタートし、エレクトロポップ風の「Million years」やエレピで軽快にポップに聴かせる「Try to feel my pain」など、ロックな曲が目立つと同様に、キュートさを感じさせるポップな曲が目立ちます。このポップ路線も以前からのHAIMの方向性でしたが、今回のアルバムでもその路線はしっかりと引き継がれています。

新たな一歩、といっても基本的にいままでのHAIMの魅力はそのままに、ただ、サウンドの統一感が増した点、前作よりもより魅力の増したアルバムに仕上がっていたようにも思います。バンドとしてより成熟してきたという印象も受ける4枚目。新たな一歩を踏み出した彼女たちですが、今後の活躍にもまだまだ期待できそうです。

評価:★★★★★

HAIM 過去の作品
DAYS ARE GONE
Something To Tell You
Women in Music Pt. III


ほかに聴いたアルバム

More/Pulp

日本では残念ながらそれほどではないものの、本国イギリスでは、ブリットポップの代表格として高い人気を誇るロックバンドPulp。2001年に活動を休止し、その後、断続的に再結成を行っているのですが、このたび約24年ぶりとなるニューアルバムがリリースされて話題となっています。その内容は、まさにブリットポップ全盛期を彷彿とさせるような、軽快で明るいポップながら、どこかアイロニックさを感じさせるサウンドが特徴的。復帰作の本作は高い評価を受け、チャートでも1位を獲得したそうですが、それも納得の1枚。ブリットポップが好きだったら、間違いなく大ハマリしそうな作品です。

評価:★★★★★

Young Fashined Ways/Bobby Rush&Kenny Wayne Shepherd

御年、なんと91歳にしてまだまだ現役の、リビングレジェンドとも言うべきブルースミュージシャンBobby Rushが、アメリカのブルースロックギタリストKenny Wayne Shepherdと組んでリリースしたニューアルバム。正直、91歳という年齢を全く感じさせない現役バリバリのBobby Rushのプレイも魅力的。作品的には王道のブルースといった感じで、なんとなくライトニング・ホプキンスを彷彿させるような部分も。目新しさこそありませんが、今なお現役でプレイし続けるというだけでうれしくなってしまうBobby Rushの新作でした。

評価:★★★★

Bobby Rush 過去の作品
All My Love For You

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2025年8月29日 (金)

圧巻のインタビュー集

今日は最近読んだ音楽関連の書籍の感想です。

「supersonic~THE COMPLETE,AUTHORISED AND UNCUT INTERVIEWS」(邦題:「スーパーソニック~完全、公式、ノーカット・インタビュー」。2017年にoasisの結成から1996年に行われたネブワースでのライブまでの模様を追ったドキュメンタリー映画「oasis:supersonic」が公開されましたが、本作はその時に行われたインタビューの完全版。ノエルは16時間以上、リアムは12時間以上に及ぶインタビューを行い、その取材模様をノーカットで収録した、圧倒的なインタビュー集となっています。今年、oasisが再結成されて話題となり、この大ボリュームのインタビューの全貌が解禁された、ということでしょうか。

もともと、映画もリアルタイムで見に行って、その後リリースされたDVDも購入してみているので、本書は映画、DVDに続く3度目のアイテムといった感じでしょうか。インタビューで語られている概ねな内容については既に映画でも取り上げられているため、目新しさというのはありません。ただ、映画で見た時とは印象が若干異なったような部分もチラホラ感じます。例えばノエルがリアムのバンドに加わった場面。映画ではもっとノエルが自信たっぷりにバンドに半ば無理やり参加したように描かれていましたが、インタビューではもうちょっと淡々とした感じで描かれています。また、初期メンバーのトニー・マッキャロルが脱退する時のエピソードでも、映画ではトニーに対するいじめの描写が酷かったのですが、インタビューではいじめに対する言及はあまりありません。

映画の方は、インタビューの中からピックアップし、映像を加えてドラマチックに構成しているのに対して、インタビューの方は当事者本人の証言ということで、もうちょっと淡々と語られている印象を受けます。もちろん、トニーの脱退に関する件については、本人たちがいじめを証言しにくいという事情もあったのでしょう。ただ、ここに限らず、全体的に映画に比べて物語は淡々と進んでいった印象は強く、同じような出来事でも映画とはちょっと違った印象を受けるような場面も多々ありました。

また、今回のインタビューで特徴的なのは、とにかく"fuck""fucking"を会話の中で多数登場してくる点(笑)。彼らが会話の中で、この単語を大量に使うということは認識していましたが、ポジティブな文脈にもネガティブな文脈にも使いすぎていて、読んでいて思わず笑ってしまう場面も。インタビューでは雰囲気を伝えるために、訳者があえて「ファック」「ファッキン」とカタカナでそのまま残しているのですが、この2つの言葉をありとあらゆる意味で使っていて、正直、わけがわかりません。まあ、日本語でいうところの若者が多様している「やばい」と同じような感じでしょうか。ちょっとビックリなのはこの2語、リアム、ノエルだけではなく、他のひとたち・・・ともすれば2人の母親まで多様しており、イギリスの労働者階級の雰囲気が垣間見れるようなインタビューとなっています。

さて、そんな訳で圧巻なインタビュー集とはいえ、基本的には映画で紹介されている内容に沿った内容なのですが、それでもやはり、このインタビュー集であらためて興味深く読むことが出来た発言も何か所もありました(ひょっとしたら映画でも取り上げられていたけど、気が付かなかっただけかもしれませんが)。例えば「第四十一章 兄と弟」では、ノエル、リアムお互いにお互いのことを語っているのですが、特にリアムはストレートにノエルのことを「死ぬほど奴を愛しているよ」と語っており、かなりストレートに兄への愛情を語っています。ノエルにしてもなんだかんだいいつつ弟を思っているような部分は垣間見れて、再結成した今となっては、やはりなんだかんだいっても仲がいい・・・とまではいかなくても家族なんだな、ということを感じてしまいます。

また、最後「第五十五章 後悔はない」では、ノエルが「おれは自分自身がそんなにグレートだとは思っていない。おれは歌を書くが、自分自身が果たす役割ってのはすごく小さい。」と謙虚に語っているのも印象的。基本的にはノエルはインタビュー全体にどこか真面目さを感じますが、ここらへんの発言については意外さも感じました。

本にすると全696ページ。かなりボリュームあって分厚い1冊となっており、そのインタビュー内容も含めて圧巻の1冊となっていました。「ファック」をそのまま残した訳も含めて、インタビューの雰囲気も伝わっており、読み応えのある内容。ファンなら是非読んでおくべき1冊です。

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2025年8月28日 (木)

ミセスまさかの1位陥落

今週のHot Albums

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

しばらくミセスのベストアルバムが1位を独走すると思っていたのですが・・・

今週1位はTENBLANK「Glass Heart」が先週の2位からランクアップ。4週目にして1位獲得となりました。同作はNetflixドラマ「グラスハード」から生まれた4人組バンドで、メンバーは佐藤健、町田啓太、志尊淳、宮崎優の俳優4人組のバンドとなっています。今週、ストリーミング数が見事1位を獲得し、総合順位でも1位となりました。

2位はMrs.GREEN APPLE「10」がワンランクダウン。CD販売数が5位から3位にアップしたものの、ストリーミング数が今週1位から3位にダウンしています。そして3位は先週と変わらずSnow Man「THE BEST 2020-2025」がランクイン。これでベスト10&ベスト3入りは通算21週となりました。

4位以下の初登場盤は韓国の男性アイドルグループStray Kids「KARMA」が6位に初登場。また、今週はベスト10圏外からの返り咲きも多く、ORANGE RANGE「ALL the SINGLES」が12位から8位に、Mrs.GREEN APPLE「Attitude」が11位から9位に、timelesz「Hello! We're timelesz」が16位から10位にそれぞれランクアップ。ORANGE RANGEは2週ぶり、ミセス「Attitude」は3週ぶり、timeleszは6週ぶりのベスト10返り咲きに。「Attitude」は通算35週目、timeleszは通算19週目のベスト10ヒットとなりました。

またロングヒット盤ではMrs.GREEN APPLE「ANTENNA」が先週から同順位の7位をキープ。これで通算49週目のベスト10ヒットを記録しています。


今週のHeatseekers Songs

https://www.billboard-japan.com/charts/detail?a=heat_seekers

今週のHeateekers Songsはブランデー戦記「赤いワインに涙が・・・」が先週に続き1位を獲得。ラジオオンエア数は先週と変わらず3位をキープ。Hot100は47位から50位にダウンしています。


今週のニコニコVOCALOID SONGS

https://www.billboard-japan.com/charts/detail?a=niconico

今週のボカロチャートは、8月21日~25日に行われた「The VOCALOID Collection~2025 Summer~」、通称ボカコレ2025夏の影響で、1位から12位まで初登場が並ぶランキングに。その中で1位を獲得したのはピアニストとしても活躍しているまらしぃ「ヒューマンビーイング」が獲得。ボカコレのTOP100で4位を記録した曲になります。また、2位には、ボカコレで1位を獲得した海茶「幕を下ろそう、パレードへ」が、3位には、ボカコレ5位のぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬ「VOCAEND」が、それぞれ獲得しています。

今週のHot Albums&Heatseekers&ボカロチャートは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2025年8月27日 (水)

初登場は多め

今週のHot100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

今週は新曲が多めのチャートとなりました。

まず1位は今週初登場。韓国の男性アイドルグループBOYNEXTDOOR「Count To Love」が獲得。CD販売数1位、ラジオオンエア数5位。オリコン週間シングルランキングでは同作が収録された「BOYLIFE」が初動売上34万6千枚で1位初登場。前作「AND,」の初動18万6千枚(2位)からアップしています。

2位はMrs.GREEN APPLE「夏の影」が、3位はHANA「Blue Jeans」が、それぞれ先週と同順位をキープ。「Blue Jeans」は、ストリーミング数が6週連続で1位を獲得しています。

ちなみにミセスは「クスシキ」が7位から9位にダウン。「ライラック」が先週と変わらず10位をキープ。「クスシキ」は21週連続、「ライラック」は通算62週目のベスト10ヒットとなりました。一方、先週までベスト10ヒットを続けていた「Carrying Happiness」は今週、14位にダウンしています。また、HANAは「ROSE」が6位から8位にダウン。こちらは21週連続のベスト10ヒットとなっています。

さて、今週は以下3曲の新譜がランクインしている、比較的新譜の多い週に。ただ、いずれもアイドル系となっています。まず4位にLDH所属の男性アイドルグループKID PHENOMENON「Sparkle Summer」がランクイン。CD販売数2位。オリコンでは初動4万3千枚で3位初登場。前作「Unstoppable」の初動5万7千枚(3位)からダウン。

5位にはアソビシステム所属の女性アイドルグループSWEET STEADY「YAKIMOCHI」が初登場。CD販売数3位。オリコンでは初動売上4万5千枚で2位初登場。前作「ぱじゃまぱーてぃー!」の初動2万7千枚(2位)からアップ。

さらに7位にはスターダストプロモーション所属の男性アイドルグループLienel「超絶SUMMERでバカになれ」がランクイン。CD販売数4位。オリコンでは初動売上3万5千枚で4位初登場。前作「Go Around The World」の初動4万7千枚(2位)からダウン。

という訳で、今週は新譜が多かったもののいずれもアイドル系。一方、ロングヒットは前述のミセスとHANAのみ。ロングヒットが期待されたLiSA「残酷な夜に輝け」は今週12位にダウン。来週以降の巻き返しも期待できますが、早々にベスト10から一度姿を消しています。どうも今年に入って、ヒット曲と言えるのが、ミセスとHANA、あとせいぜいサカナクション「怪獣」くらいしか生まれていない状況になっています(今週6位にランクインしているアイナ・ジ・エンド「革命道中」もロングヒットの兆しがありますが・・・)。ここ数年来なかった不作ぶりが気にかかるところです。

今週のHot100は以上。明日はHot Albums&Heatseekers&ボカロチャート!

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2025年8月26日 (火)

2年ぶりのスキヤキナゴヤ!

スキヤキナゴヤ2025

Monsieur Doumani/UFO et MAYU+武藤祐志/ALKDO

会場 TOKUZO 日時 2025年8月21日(木)19:00~

Sukiyakinagoya2025

毎年8月、富山県南砺市で行われるワールドミュージックのフェス、スキヤキ・ミーツ・ザ・ワールド。そのイベント、スキヤキナゴヤに出かけてきました!毎年行われる訳ではなく、今回は2023年以来、2年ぶりの開催。今回は、キプロス共和国のミュージシャン、Monsieur Doumaniを中心に、日本のUFO et MAYU+武藤祐志とALKDOの3マンのイベントとなりました。

最初はUFO et MAYU+武藤祐志からスタート。UFO et MAYUは、西アフリカの打楽器であるジャンベの奏者、野口UFO義徳と、同じく西アフリカの太鼓、ドゥンドゥン奏者であり、アフリカンダンサーであるMAYUとのユニット。そこにギタリストの武藤祐志が加わった3人組のステージ。前回のスキヤキナゴヤでも、この3人のメンバーにマリのパーカッショニストDramane Diabateを組んだユニットSabalikanで参加していたので、事実上、前回から続いての参加となりました。

基本的には、ジャンベとドゥンドゥンの奏でるパーカッションがこれでもかというほどトライバルなビートを鳴り響かせ、そこに武藤祐志によるギターが乗るスタイル。マリの音楽を奏でているそうで、前半の「ダンサ」という曲は、馬に乗った王子様が迎えに来てくれる・・・という、どこの国でも同じような話があるんだな、と思わせるようなロマンチックな曲ですが、楽曲はやはりアグレッシブなパーカッションが鳴り響く楽曲。さらには現地で子供が成人となる時の割礼の儀式で奏でられるナンバーなんかもあったりして、こちらは男性として大切なところがキュンとなってしまいますが(笑)、そんな恐怖感を紛らわせるような他の曲に増して強いビートを聴かせるナンバー。全40分強、終始、力強いパーカッションの鳴り響くステージでした。

2番手に登場するのはALKDOというユニット。愛知県豊田市で「橋の下世界音楽祭」というイベントを主催していることでも知られるTurtle Islandのフロントマン、アコギの永山愛樹とパーカッションの竹舞による2人組ユニット。最初はアコギと太鼓で、郷愁感たっぷりのエキゾチックなナンバーを聴かせた後、ハープも使った明るく軽快な楽曲。さらに、居酒屋でもあるTOKUZOの雰囲気にもピッタリな、モンゴルの乾杯ソングでも盛り上がります。

その後は、ちょっと重たいMCで、永山愛樹が今年の夏、韓国へ行った話。もともと彼は在日韓国人ということで、自らのルーツを訪ねたそうですが、その中で国家とは何かということを考えたそうです。若干アナーキスト的な考えには同調できない部分もあるのですが、重いながらも考えさせられるMCの後には、有名な「イムジン河」を、彼の訳詞によって、ゆっくりと感情たっぷりに歌い上げて聴かせてくれました。

そして、その後はUFO et MAYU+武藤祐志のメンバーがステージ上へ!最後は全5人という賑やかなメンバー、さらには3つのパーカッションという賑やかなステージでのパフォーマンスを披露。これでもかというほどアグレッシブなビートで、会場全体が盛り上がったステージをみせてくれました。

ここまでで約2時間のパフォーマンス。そして21時過ぎにようやくこの日のメインアクトであるMonsieur Doumaniの登場となりました。男性3人組のグループで、一人はアコギ、もう一人はトロンボーン、そしてもう一人は、ミニギターのような、謎の楽器を抱えての登場となりました。この小さいギターのような楽器は、ツォラスというギリシャやトルコの方の伝統楽器だそうで、電気につながれているスタイルらしく、エレキギターのようなノイジーな音を奏でていました。

最初はアラブ系の妖艶な雰囲気の曲からスタートし、その後はラップみたいなボーカルを取り入れたコミカルな曲や、さらにはこのツォラスが分厚いサウンドを奏でるロック風の曲などと展開していきます。その後のMCは英語でのMCだったのですが、英語が母国語ではないため、簡単な英語のMCで私でも聴き取れました(笑)。富山のスキヤキ・ミーツ・ザ・ワールドでは3回、日本に来ているのですが、名古屋に来るのははじめて、という話をしていました。

その後はトロンボーンをフルートに置き換えて、爽やかに聴かせる楽曲や、力強いビートで聴かせる曲、エキゾチックな歌を力強く歌うナンバーなど、トライバルな要素や、トラッドな要素、さらにはロックや時としてHIP HOP的な要素まで組み込んだ楽曲でユニークに聴かせてくれます。特に、基本的に3人のみのシンプルなサウンドなのですが、非常にエッジを利かせたサウンドが印象的で、音数は決して多くないのですが、しっかりと観客の耳をつかむパフォーマンスを見せてくれました。

この日は時間がちょっと推していたのか、最後はアンコールをやった体で。最後の曲では、途中、メンバー3人でコントみたいなパフォーマンスを繰り広げるシーンもあって、コミカルなパフォーマンスを見せてくれます。最後まで力強いリズムでエキゾチックなサウンドを聴かせてくれるパフォーマンス。キプロスという国は、東地中海に浮かぶ島国で、アラブやトルコとも近く、一方で住民はギリシャ系という国家らしいのですが、まさにそんなお国柄らしい、アラブ系の音楽とヨーロッパ系の音楽が上手く融合されていた、またバンドとしてもエッジの効いたサウンドを聴かせてくれる素晴らしいパフォーマンスでした。約1時間強のステージ。終わったのは22時20分頃と予想していたよりも遅くなってしまったのですが、最後まで時間を忘れて楽しめたパフォーマンスでした。

そんな訳で相変わらずとても素晴らしいステージを見せてくれたスキヤキナゴヤ。スキヤキ・ミーツ・ザ・ワールドになかなか足を運べなくなってしまっただけに、こういうイベントを名古屋でも演ってくれるのはありがたい限り。特にMonsieur Doumaniは、今年のベストライブの候補にも入りそうな素晴らしいパフォーマンスで、非常に満足感を覚えつつ、会場を後にすることが出来ました。

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2025年8月25日 (月)

オリジナルとセルフカバーの2枚組

Title:TWIN-SONGs〜尾崎亜美作品集

シンガーソングライターとして自ら活動しながら、一方作曲家として数多くのシンガーに楽曲を提供。特に松田聖子に提供した「天使のウインク」や、杏里に提供した「オリジアを聴きながら」、観月ありさに提供した「伝説の少女」など数多くのヒット曲を手掛けたシンガーソングライターの尾崎亜美。今回紹介するのはそんな尾崎亜美が楽曲を提供した曲を収録した彼女の作品集となります。

この作品集は全2枚組。1枚目には前述した「天使のウインク」「オリビアを聴きながら」「伝説の少女」などの他、岡田有希子の「Summer Beach」(オリコン最高位5位)、河合奈保子「微風のメロディー」(オリコン最高位7位)、横山知枝「Happy Birthday」(オリコン最高位2位)などといったヒット曲が多く収録されています。さらに本作で特徴的なのが2枚目で、これら提供曲を尾崎亜美自らがセルフカバー。シンガーソングライターとしての矜持を感じさせる構成となっています。トリビュートアルバムでカバーとオリジナルで2枚組という構成は珍しくないのですが、このような他の人に提供した曲と、そのオリジナルという構成の作品集はちょっと珍しいかもしれません。

さて、そんな尾崎亜美がアイドルなどに提供した楽曲ですが、まず大きな特徴として言えるのは「シティポップ」であるという点。まさにシティポップの代表格とも言える杏里の「オリビアを聴きながら」をはじめ、「Summer Beach」や南沙織の「春の予感-I've been mellow-」など、ほどよくR&B的な要素を入れつつ、爽やかなポップソングにまとめあげている、まさに今、シティポップとして注目されているようなタイプの楽曲が並びます。

特にこの傾向は尾崎亜美が自ら歌ったセルフカバーバージョンの方が顕著。例えば金井夕子の「パステルラヴ」などは、金井夕子の楽曲は特にアレンジに時代性が強くあらわれて、シティポップというよりも歌謡曲の要素が強く出てしまっているのですが、尾崎亜美のセルフカバーではアレンジがシンプルになった影響もあり、シティポップ的な雰囲気がより強くあらわれています。

また、彼女の曲の大きな特徴として感じるもうひとつの点としては、都会的な雰囲気を感じられる楽曲の爽やかで今風な要素と、昔ながらの歌謡曲的な要素を感じられるメロディーの哀愁感のバランスが絶妙という点でした。この都会的とも言えるR&B的な要素と歌謡曲的とも言えるメランコリックなな要素の絶妙なバランスこそが、今、和製のシティポップとして国内のみならず海外で評価されている大きな要因なのでしょうが、彼女の楽曲はまさにそのバランス感覚が絶妙。今風なスタイリッシュな要素を感じさせつつ、一方では特に日本人の多くの琴線に触れるようなメロディーラインを書いているがゆえに、特に多くのアイドルへ楽曲の提供を求められた大きな理由だったのでしょう。そんな尾崎亜美の魅力を強く感じることが出来る作品集でした。

オリジナル音源も魅力的ですが、それ以上に尾崎亜美本人歌唱のセルフカバーも魅力的で、シンガーソングライターとしての彼女の魅力も強く感じられるアルバムになっていました。アラフィフ世代以上ならば、おそらく聴いたことある曲も多いはず。シティポップが好きなら文句なしに要チェックのアルバムです。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

至福の楽園〜歌と笑いのパラダイス〜/嘉門タツオ

約6年8ヶ月ぶりとなる嘉門タツオのニューアルバム。2023年に飲酒運転で事故を起こして活動休止に。年齢も年齢なだけに、そのままフェイドアウトしてしまうかも・・・と心配になったのですが、無事復帰。久々にリリースしたニューアルバムが本作となります。「鼻から牛乳」や「ハンバーガーショップ」など現代版にバージョンアップ。どちらかというとコミックソングというよりも漫談という作品が多く、ネタ的には正直、過去のパターンを踏襲した形になっているのですが、それでも十分笑えるネタが多く、66歳にしてまだその才気を感じさせます。

さて、アルバムの中でちょっと気になったのが「インバウンド・ブルー」という楽曲。正直、最初、外国人に対する差別的な内容だったらどうしよう、と心配したのですが、内容的にはインバウンドで感じる日本人としてみじめに感じる気持ちを率直に歌ったもので、歌詞的に差別的な要素はなくバランスの取れた楽曲はさすがです。ただ、一方、こういうインバウンドのオーバーツーリズムによって感じる日本人としてみじめな感情が、昨今の排外主義につながっている部分は否めません。もちろん、差別的な排外主義は許されるものではないものの、「インバウンド・ブルー」で歌われるような感情を政治家がしっかりフォローすれば、差別的主義的・排外主義的な政党が議席を確保するという残念な事態が起きなかっただろうに・・・とも思ってしまいました。

評価:★★★★

嘉門タツオ 過去の作品
祝☆還暦 オールタイム・ベスト~還盤~
祝☆還暦 オールタイム・ベスト~暦盤~

あたしを選んだ君とあたしを選ばなかった君へ/コレサワ

最近、知名度も上がってきて、かなり注目を集めてきているコレサワのニューアルバム。超ときめき宣伝部に提供し、レコード大賞の作詞賞も受賞した「最高級にかわいいの!」のセルフカバーも収録。基本的にギターロックなアレンジを主軸に、女性の本音をストレートに綴った歌詞を聴かせるスタイルというのは変わらず。失恋した時の感情をストレートに綴った「あたしを選ばなかった君へ」なども印象的ですし、心のどこかで思っていても、それを赤裸々に歌詞にしてくる点が彼女らしいとも言える「元彼女のみなさまへ」など、歌詞が印象に残るナンバーが並びます。確かに、この歌詞のインパクトの強さ、注目を集めるのも納得です。

評価:★★★★

コレサワ 過去の作品
コレでしょ
失恋スクラップ
純愛クローゼット
日々愛々

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2025年8月24日 (日)

オフコースに歴史あり

Title:コンプリート・シングル・コレクション
Musician:オフコース

今となっては、「あの小田和正が在籍していた」という形で語られることが多いかもしれません。1967年から1989年まで活動し、「さよなら」「YES-YES-YES」「愛を止めないで」など数多くのヒット曲をリリースしてきたバンド、オフ・コース。2025年は彼らのデビュー55周年ということで、シングル・コレクションがリリース。1970年にリリースされた「群衆の中で」からスタートし、1988年にリリースしたラストシングル「夏の別れ」まで、全シングルをカップリング含めて収録。また、ボーナス・トラックとして1969年11月2日に東京新宿厚生年金会館大ヒールで行われた「第3回全日本ライトミュージック・コンテスト・グランプリ1969」の時の模様を収録した「Jane Jane」「One Boy」の2曲も収録。ボーナストラック2曲を含めて全75曲5枚組というフルボリュームのアルバムとなっています。

このシングルコレクション、非常に面白いのはデビュー作以降のシングルが暦年順で並べられているため、オフコースというバンドの歩みが非常にわかりやすい形で収録されているという点でした。特にデビュー当初の彼らのシングルは完全に四畳半フォークの世界。特にデビューシングル「群衆の中で」と2枚目「夜明けを告げに」は「ジ・オフ・コース」名義でリリースされたそうですが、完全にフォークソングの世界で、後のオフコースの痕跡は小田和正の端正なボーカルくらい。今のオフコースのパブリックイメージからはかなり乖離したような作風となっています。

オフコースらしさをシングルで最初に感じるのは4枚目の「僕の贈りもの」くらいからで、ただ、その後も特に1枚目の頃は少々迷走気味の模索が続いているのがおもしろいところ。初期は必ずしもメンバーが作詞作曲を手掛けていた訳ではないようで、1974年にリリースされた彼ら6枚目のシングル「忘れ雪」「水いらずの午後」は、なんと松本隆/筒美京平というコンビが手掛けた楽曲で、完全に歌謡曲な楽曲。既に小田和正がその才能の片鱗を見せていたにも関わらず、外部から作家を読んでくるあたり、レコード会社側の迷走ぶりが感じられます。

Disc2以降の作品に関しては、基本的にすべてメンバーによる作詞・作曲に固定されていきます。ファンにはおなじみのことかと思うのですが、これ以降のシングルは主に1曲目を小田和正が手掛け、2曲目を他のメンバー、初期は鈴木康博、鈴木康博脱退後は松尾一彦が手掛けていきます。シングルの1曲目をメインライターが手掛け、2曲目を他のメンバーが手掛けるというのはよくある話。ただ、面白かったのは、小田和正が初期に既にそのスタイルを確立させ、完成度は高いものの若干大いなるマンネリ気味になってしまっていたのに対して、鈴木康博や松尾一彦の手掛ける楽曲は、完成度という点では粗削りな部分はあるものの、様々な音楽性に挑戦し、結果、オフコースのシングルにインパクトを与えていたという点でした。バンドの中に複数のライターをかかえるメリットを非常にうまく生かしている、そう感じる内容になっていました。

ちなみにボーナストラックの2曲は、「Jane Jane」はカントリー風、「One Boy」はフォークと、かなろオフコースのイメージから異なるもの。Disc3の最後に入れているあたりちょっとバランスが悪いような感じもする一方、最初期の彼らの音楽的な模索ぶりも感じられて、ファンにとってはかなり貴重な音源かと。まさにバンドに歴史あり、を感じさせるような楽曲でした。

そんな訳で全75曲入り5枚組、かなりボリューミーな内容で、正直、熱心なファン以外にとってはさすがに一気に聴き切るのは大変な作品だと思いますが、一方でオフコースの歴史をしっかりと感じられるアルバムで、ファンにとっては必聴のアルバムでしょう。私自身、熱心なファンとかではないので、このシングルコレクションではじめて知ったことも多かったのですが、非常に聴きごたえのあるアルバムでした。

評価:★★★★★

オフコース 過去の作品
OFF COURSE BEST"ever"
Off Course 1982・6・30 武道館コンサート40th Anniversary


ほかに聴いたアルバム

Seek/Iri

「新たな旅立ち」をテーマに据えた、シンガーソングライターIriの4曲入りのニューアルバム。HIP HOPの要素を強く取り入れたトラックに、スモーキーな雰囲気で、伸びやかに聴かせる彼女のボーカルが魅力的。特に「harunone」では、HIP HOP風のリズミカルなトラックと彼女の伸びやかなボーカルの対比が見事に聴かせてくれます。わずか4曲の内容ながらもIriの魅力をしっかりと捉えた作品でした。

評価:★★★★★

Iri 過去の作品
PRIVATE

1985/ART-SCHOOL

結成25周年を記念するART-SCHOOLの8曲入りのミニアルバム。2003年にリリースされ、名作の呼び名高い「SWAN SONG」を今の感覚とメンバーで作ったらどうなるか、という点をテーマに作成されたアルバム。そのため、初期からのART-SCHOOLの雰囲気も強い作品となっており、シューゲイザーやグランジからの影響もダイレクトに反映された、ある意味、ART-SCHOOLらしいと感じられるアルバム。そのため、目新しさにはちょっと欠ける反面、ファンにとっては満足して楽しめそうな作品となっていました。

評価:★★★★

ART-SCHOOL 過去の作品
Ghosts&Angels
ILLMATIC BABY

14 SOULS
Anesthesia
BABY ACID BABY
The Alchemist
YOU
Hello darkness,my dear friend
Cemetery Gates-B SIDES BEST-
In Colors
Just Kids.ep
luminous

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2025年8月23日 (土)

表現力のある歌声が魅力的

Title:Tether
Musician:Annahstasia

Tether

本作はロサンゼルスを拠点に活動するアメリカの女性シンガーによるデビューアルバム。いままで2枚のEP盤をリリースしており、本作がフルアルバムとして初の作品となるのですが、デビュー作から高い評価を受け、一躍注目のシンガーとなっています。

楽曲は基本的にアコースティックギターなどを基調とした非常にシンプルなサウンドをバックにフォーキーに聴かせるスタイル。アルバムの冒頭を飾る「Be Kind」から、まずアコギのアルペジオからスタートし、途中からピアノやフルートの音色が加わるフォーキーな作品。続く「Villain」は、後半、バンドサウンドでスケール感を出した作品になっていますが、前半は基本的にアコースティックギターでシンプルに聴かせるフォーキーな作品が並びます。

中盤はノイジーなギターサウンドも入ってくる「Waiting」やバンドサウンドをバックに力強く聴かせる「Overflow」など、ロック寄りの作品が並びますが、後半は再びアコギでシンプルに聴かせるフォーキーな作品が続きます。ただ、そんな中で雰囲気が異なるのがラストの「Believer」で、こちらは力強いノイジーなギターを前面に押し出したロックな作品に。最後は力強いボーカルでスケール感をもって締めくくられています。

基本的にシンプルでフォーキーな作風な中、バンドサウンドをもってスケール感を覚えるロックな作品があったりと、アルバム全体に起伏を持たせて最後まで惹かせる作風となっています。ただこのアルバム、フォークやロック、あるいはソウル的な要素も感じさせる楽曲も魅力的でしたが、何よりも大きな魅力となっていたのはAnnahstasia自身のボーカルでした。

とにかく1曲目「Be Kind」の冒頭の彼女のブレスからまずはゾクゾクとさせられます。アコースティックギターをバックに歌われる彼女のボーカルは非常にスモーキーでしゃがれた声がまずは強いインパクト。さらに緩急つけて、時にはつぶやくように、時には力強く歌われる歌声に、心を惹きつけられます。

アルバムの前半で特に惹きつけられたのが4曲目「Take Care of Me」でファルセット気味のボーカルで物悲しく歌われるその歌声にゾクゾクさせられます。中盤のバンドサウンドをバックとした作品でも力強いボーカルは負けていません。「Overflow」ではバンドサウンドをバックに歌われるそのボーカルは爽やかで明るさも感じられ、哀愁たっぷりでスモーキーな他の作品とはまた異なる彼女のボーカリストとしての魅力を感じます。

後半では、「All Is.Will Be.As It Was.」ではジャジーな雰囲気のピアノやアコギをバックに、ポエトリーリーディング的に語るようなボーカルスタイルを聴かせてくれ、ここでもまた彼女のボーカリストの異なる側面を聴かせてくれます。ここでの彼女のボーカルは非常に優しい雰囲気であり、しゃがれたスモーキーなボーカルとはまた異なります。

シンプルなアレンジをベースとした楽曲も非常に魅力的でしたが、それ以上にAnnahstasia自身の歌声になによりも惹かれる作品。デビュー作でありつつ、ここまで完成度の高いアルバムを作りあげる点が驚きですし、デビュー作からこれだけ表現力たっぷりのボーカルを聴かせてくれるとは、末恐ろしさすら感じさせます。申し分なく年間ベストクラスの傑作アルバム。彼女のボーカリストとしての表現力がこれからどれだけ進化していくか・・・非常に楽しみです。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

caroline2/caroline

タイトル通り、本作が2作目となるイギリスの8人組バンドのニューアルバム。各種メディアで大絶賛を受けているアルバムで、基本的にアコースティックなサウンドを主軸としてフォーキーな作品となっており、フォーキーでメランコリックなメロが魅力的なのですが、一方では楽曲の中に複雑なリズムを入れてきたり、サイケなギターを入れてきたりと、プログレっぽい雰囲気も混じっている点が非常にユニーク。他にもミニマルやクラシック、エモなどの要素も取り込んでいたりと、複雑な音楽性が魅力的。確かに、要所要所で絶賛されているのもよくわかる傑作アルバムでした。

評価:★★★★★

Big City Life/Smerz

Bigcitylife

ノルウェー出身の2人組エレクトロデゥオの2枚目となるアルバム。ニューヨークや故郷オスロでの経験を元に、「都市」というテーマに基づいて作成されたアルバムだそうで、クラブ感覚に基づく、ジャズやエレクトロ、トリップポップなどの要素を入れつつ、スタイリッシュな感じのあるサウンドが特徴的。一方で、どこか気だるく、ダークな雰囲気を併せ持った作風となっており、都会ならではの孤独さ、暗さなども感じさせる作品になっています。独特なサウンドに終始耳を惹かれる作品でした。

評価:★★★★★

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2025年8月22日 (金)

ハードコアとエレクトロとポップを見事に融合

Title:NEVER ENOUGH
Musician:Turnstile

アメリカ・ボルチモア出身のハードコアバンド、Turnstileの約3年10ヶ月ぶり、4枚目となるニューアルバム。2022年にオリジナルメンバーであるブレイディ・エバートが脱退。その後、ツアーメンバーをつとめていたメグ・ミルズが2025年に正式に加入し、新たなメンバーで踏み出した第1歩のアルバムとなります。

今回のアルバムの大きな特徴として、エレクトロサウンドをふんだんに取り入れた、という点があげられるでしょう。アルバムはタイトルチューンでもある「NEVER ENOUGH」からスタートするのですが、スペーシーなエレクトロサウンドからスタート。その後も「LIGHT DESIGN」では80年代ニューウェーヴから影響を受けたようなサウンドを取り入れていますし、「SEEIN' STARS」も同じく80年代を彷彿させるような4つ打ちのビートを取り入れた作品に仕上がっています。

また、「CEILING」もエレクトロピアノの音色を取り入れたアンビエントな作品となっており、ハードコアパンクの楽曲の中での中休み的な作品となっていますし、何よりラストを締めくくる「MAGIC MAN」もエレクトロサウンドでのアンビエントチューンに。最初と最後がエレクトロのナンバーで締めくくられているため、特にエレクトロ色を強く印象付けられる作品となっています。

そしてこのアルバムのもうひとつ大きな特徴が、前作に比べるとグッとポップに寄ったアルバムという点があげられます。もっとも典型的なのが序盤の「I CARE」で、こちらも軽快な打ち込みのナンバーが入った、完全に80年代風のポップチューンに。ともすれば80年代のアイドルポップ的な雰囲気すら漂うこの楽曲は、アルバムの中でも大きなインパクトとなっています。

もちろん、アルバムの中でも彼ららしいハードコアパンクな楽曲もしっかりと主張しており、中盤の「SUNSHOWER」「BIRDS」などのパンキッシュな楽曲ももちろんアルバムの中で目立ちます。もっとも「SUNSHOWER」は後半、フルートの音色が入り、幻想的な楽曲に姿を変えますし、「BIRDS」もイントロでエレクトロを入れるなど、楽曲の中に一工夫も。ここらへん、アルバムに深みを与える要素になっているようにも感じました。

全体的にポップ寄りになった点は、従来のハードコア路線のファンにとっては賛否ある部分もあるようですが、個人的にはハードコアとエレクトロ、ポップを上手く融合させており、文句なしの傑作アルバムだったと思います。ちなみに本作、ビルボードチャートで最高位9位にランクイン。ロックがチャート上、苦戦している中での快挙とも言える結果ですが、これだけのアルバムを作ってくるのですから、その結果にも納得。今後は日本でも注目度が高まりそう。今後の活躍にも期待です。

評価:★★★★★

Turnstile 過去の作品
GLOW ON


ほかに聴いたアルバム

Bossanova×Trompe Le Monde(Live)/PIXIES

PIXIESを代表する名盤である、1990年にリリースされた「Bossanova」と、1991年にリリースされた「Trompe Le Monde」について、2024年のヨーロッパツアーの中で全曲再現ライブを実施したようで、その模様を収録したライブアルバム。どちらもPIXIESどころか90年代のロックシーンを代表するような名盤であり、名曲も数多く収録されているだけに楽曲的には申し分ありません。2024年のライブということで、現在のメンバーでの演奏ということになるのですが、こちらも、まだまだ現役の彼ららしいアグレッシブな演奏を聴かせてくれており、原曲の魅力をしっかりと伝えてくれます。最近のPIXIESの作品も悪くはないのですが、やはりこの頃の作品は至高だな、ということをあらためて感じさせてくれるライブ盤でした。

評価:★★★★★

PIXIES 過去の作品
EP1
EP2

Indy Cindy
Doolittle25
Head Carrier
Beneath The Eyrie
Doggerel
The Night the Zombies Came

Jellywish/Florist

アメリカはブルックリンを拠点に活動するインディーロックバンド、Floristの約3年ぶりとなるニューアルバム。セルフタイトルだった前作は2022年度の私的年間ベストの7位にランクインさせるほどはまったアルバム。今回のアルバムも、アコースティックなサウンドを主体にしんみりフォーキーに聴かせる作風は前作と一緒。暖かい雰囲気の楽曲が心に染み入ります。ただ、サイケな要素も感じられユニークだった前作に比べると、よりフォーキーな雰囲気が増し、シンプルになった印象も。前作に比べるとパンチはちょっと弱めだったかも。これはこれで傑作だとは思いますが。

評価:★★★★★

Florist 過去の作品
Emily Alone
Florist

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2025年8月21日 (木)

ミセスはこのまま独走か?

今週のHot Albums

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

今週も危うげなく1位獲得です。

Mrs.GREEN APPLE「10」が3週連続の1位獲得。CD販売数は5位までダウンしていますが、ストリーミング数は6週連続の1位。ダウンロード数も先週の3位から2週ぶりの1位返り咲きとなっています。ちなみにミセスは「ANTENNA」が先週の9位から7位にアップ。こちらは通算48週目のベスト10ヒットとなっています。

2位は先週4位にランクインしたTENBLANK「Glass Heart」がランクアップしベスト3入り。一方、3位は先週2位のSnowMan「THE BEST 2020-2025」がワンランクダウン。これでベスト10&ベスト3ヒットは通算20週目となりました。

4位以下初登場は9位に韓国の男性アイドルグループBOYNEXTDOOR「No Genre」が初登場。CD販売数4位。また10位にはYouTuberグループすとぷりのメンバー莉犬「言ノ葉ワンダーランド」がランクイン。CD販売数2位。

また、ベスト10圏外からの返り咲きとしてロックバンドONE OK ROCK「DETOX」が今週16位から8位にアップ。4月9日付チャート以来のベスト10返り咲きで、これで通算8週目のベスト10ヒット。ライブツアーがはじまった影響ではないかと思われます。


今週のHeatseekers Songs

https://www.billboard-japan.com/charts/detail?a=heat_seekers

今週のHeateekers Songsはブランデー戦記「赤いワインに涙が・・・」が1位獲得。ラジオオンエア数で3位を獲得しており、Hot100でも47位にランクインしています。ブランデー戦記は2022年に結成、今年メジャーデビューを果たした3人組ロックバンド。名前からして、もっとヘヴィーなタイプのバンドを想像していたのですが、Saucy Dogあたりを彷彿とさせる、ある意味今どきな、メランコリックに聴かせる楽曲となっていました。


今週のニコニコVOCALOID SONGS

https://www.billboard-japan.com/charts/detail?a=niconico

ボカロチャートはなきそ「いますぐ輪廻」が2週連続の1位を獲得。2位は海茶「弦楽少女は諦めを知らずに」が初登場でランクイン。3位には先週2位のDECO*27「チェリーポップ」がワンランクダウンながらもベスト3をキープしています。

今週のHot Albums&Heatseekers&ボカロチャートは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2025年8月20日 (水)

ミセスの新曲が上位にランクイン

今週のHot100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

今週はミセスの新曲が上位にランクインです。

ただ、1位は男性アイドルグループNumber_i「未確認領域」が獲得。元King&PrinceのメンバーによるTOBE所属のアイドルグループによる配信限定シングル。ダウンロード数、ラジオオンエア数及び動画再生回数でいずれも1位を獲得し、総合順位でも1位獲得となっています。

そして2位にはMrs.GREEN APPLEの新曲「夏の影」がランクイン。「キリン 午後の紅茶」CMソング。ダウンロード数、ストリーミング数で2位、ラジオオンエア数5位、動画再生回数3位と、現時点ではNumber_iの後塵を拝する結果に。今後、ロングヒットとなるのでしょうか。ちなみにミセスは他に7位に「クスシキ」が、9位に「Carrying Happiness」がランクインしているほか、「ライラック」が11位から10位にランクアップし、5週ぶりのベスト10返り咲き。ダウンロード数15位、リカレントルールの影響か、ストリーミング数は20位までダウンしていますが、動画再生数4位、カラオケ歌唱回数1位という結果もあり、総合チャートでベスト10返り咲きを果たしています。「クスシキ」は20週連続のベスト10ヒット、「ライラック」は通算61週目のベスト10ヒットに。一方、「breakfast」は今週12位にダウン。ベスト10ヒットは通算9週で一度ストップとなりました。

3位はHANA「Blue Jeans」が先週の2位からワンランクダウン。ただストリーミング数は5週連続の1位。一方、先週まで4週連続1位だった動画再生回数は今週2位にダウンしています。また「ROSE」は今週4位から6位にダウン。ストリーミング数は3位から4位、動画再生回数も5位から6位にダウン。ただ、これでベスト10ヒットは20週連続となりました。

続いて4位以下の初登場曲ですが、まず4位にAKB48「Oh my pumpkin!」がランクイン。CD販売数1位。オリコン週間シングルランキングでは初動売上35万1千枚で1位初登場。前作「まさかのConfession」の初動37万2千枚からダウン。

8位にはアイナ・ジ・エンド「革命道中」がベスト10初登場。女性アイドルグループBiSHの元メンバー。TBS系アニメ「ダンダダン」の第2期オープニングテーマ。ダウンロード数6位、ストリーミング数7位、動画再生回数5位。同アニメの第1期オープニングはCreepy Nutsの「オトノケ」でロングヒットを記録しましたが、本作はそれに続けるのでしょうか?

今週のHot100は以上。明日はHot Albums&Heat Seekers&ボカロチャート!

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2025年8月19日 (火)

ベテランながらも感じる強い挑戦心

Title:あのみちから遠くはなれて
Musician:GRAPEVINE

前作「Almost There」から約1年8ヶ月ぶりとなるGRAPEVINEのニューアルバム。前作の出来が良かった影響でしょうか、前作から引き続きサポートメンバーである高野勲が全面プロデュースを行った作品となっています。前作「Almost There」は、高野勲プロデュースという影響でしょうか、バリエーションの多い多彩な音楽性が魅力的でしたが、今回のアルバムに関しても前作に続き、多彩なバリエーションを聴かせてくれるアルバムとなっていました。ちなみに今回のアルバム、タイトルが長いため、公式の愛称がついており別名「アミーチ」らしいです。

軽快なシンセとテンポよいギターロックの「どあほう」からスタート。続く「天使ちゃん」はブルースハープからスタートする力強いブルースナンバー。昔を懐かしみつつ、現代を皮肉する歌詞も印象的。ストリングスが入り、切なくメランコリックに聴かせるメロと歌詞が印象的な「わすれもの」と続いていきます。

テンポよいリズムでGRAPEVINE流のダンスポップに仕上がっているのがタイトルもユニークな「NINJA POP CITY」。忍者をイメージさせる歌詞も非常にユニーク。「カラヴィンカ」でグルーヴィーなバンドサウンドを聴かせてくれたかと思えば、「はれのひ」では一転、ピアノでしんみり聴かせるバラードナンバー。そして再びグルーヴィーな「猫行灯」と、実にバラエティー富んだ展開が続いていきます。

来年にはついにメジャーデビュー30周年を迎える彼ら。アルバムにして本作は19作目とすっかりベテランバンドとなっている彼らですが、バラエティー富んだ構成は、「カラヴィンカ」や「猫行灯」のような彼ららしいバンドのグルーヴ感を前に出した楽曲から、ソウルやブルースの影響を強く受けた、彼らしい「天使ちゃん」、あるいはブルースロックの「my love,my guys」のような楽曲があったかと思えば、一方では「NINJA POP CITY」のようなダンスチューンや「はれのひ」のようなピアノバラードがあったりと、30年というキャリアを持ったバンドながらも、今なお続く挑戦心を感じさせます。

また、田中和将の書く歌詞の世界は、また実に意味深で個性的でありつつ、一方では前作同様、比較的わかりやすさも兼ね備えたストレートな歌詞も目立ちます。特に今回は社会派な歌詞が印象に残り、「ドスとF」では大衆を操ろうというような権力に対する皮肉ともとれる歌詞が特徴的。「カラヴィンカ」でも

「闇を覗けばあっちゅう間
カタギには戻れない」
(「カラヴィンカ」より 作詞 田中和将)

と、世間を騒がしている闇バイト問題を彷彿とさせる歌詞で世の中を皮肉っています。

基本的には同じ高野勲プロデュースということで前作の延長線上にあるようにも感じられる本作。デビュー30年を目の前にして、いまだに歩みを止めない彼らの、その挑戦心と魅力をふんだんに詰め込んだ傑作アルバム。あらためてGRAPEVINEのすごさを感じさせるバラエティーに富んだ作品でした。

評価:★★★★★

GRAPEVINE 過去の作品
TWANGS
MALPASO(長田進withGRAPEVINE)
真昼のストレンジランド
MISOGI EP
Best of GRAPEVINE
愚かな者の語ること
Burning Tree
BABEL,BABEL
ROADSIDE PROPHET
ALL THE LIGHT
新しい果実
Almost There


ほかに聴いたアルバム

Whose Blue/TK from 凛として時雨

ベスト盤を挟んで、ソロとして実に約5年ぶりとなる新作。今回のアルバムでは「Scratch」でB'zの稲葉浩志と、「Synchrome」でヨルシカのsuisと、さらには「Microwaver」でケンモチヒデフミとコラボするなど、豪華なゲストの参加が目立つアルバムになっています。ただ一方、楽曲としてはいつもの彼と同様、胸をかきむしりたくなるようなメランコリックなメロとハイトーンボイスが特徴的。ある意味、「大いなるマンネリ」とも言える感じ。それだけに多くのゲストを参加させてマンネリを回避しようとしたのかもしれませんが・・・。

評価:★★★★

TK from 凛として時雨 過去の作品
flowering
contrast
Fantastic Magic
Secret Sensation
white noise
彩脳
yesworld
egomaniac feedback

3rd.BREAK/BARBEE BOYS

BARBEE BOYS2025年リマスター復刻版、今回は1986年にリリースされた彼らの3枚目のアルバム。本作は、彼らにとって初のベスト10ヒットを記録し、ブレイク作となった作品。楽曲としても「ショート寸前」「なんだったんだ?7DAYS」などの代表曲が収録されているほか、ほぼ全編に渡り、KONTAと杏子のやり取りがヒリヒリと展開していく構成になっており、BARBEE BOYSとしての壺がしっかりつかまれた感のある作品。ラストの「ラサーラ」はKONTAソロの作品なのですが、こちらも秀逸なバラードとなっており、ブレイク直後らしい、バンドとして脂ののった勢いのある傑作アルバムに仕上がっていました。

評価:★★★★★

BARBEE BOYS 過去の作品
Master Bee
1st OPTION
Freebee

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2025年8月18日 (月)

トラブルを楽曲に転嫁

Title:Lotus
Musician:Little Simz

ロンドン出身の女性ラッパー、Little Simzのニューアルバム。イギリスの公式チャートで自己最高位の3位を記録するなど、売上面でも話題となっているほか、音楽的にも高い評価を受けて注目の1枚となっています。そんな彼女のニューアルバムですが、聴いてまず感じたのは、少々陳腐な表現になるのですが、すごくカッコいいアルバムという点。ロック、ジャズ、ソウル、ファンク、アフロビートを取り入れたトラックに、淡々としつつも力強い彼女のラップが特徴的。独特のグルーヴ感を覚えるサウンドが非常に魅力的かつカッコいい作品となっています。

まず1曲目「Thief」から文句なしにカッコいい。力強いドラムのビートが鳴り響き、独特のグルーヴ感を醸し出している中、ダウナーなラップが淡々と続いていく、哀愁感ある展開にまずは耳を惹きます。続く「Flood」も力強い、トライバルなバスドラのビートが終始鳴り響くちょっと怪しげな雰囲気の楽曲。シンプルなサウンドがゆえに生み出されるグルーヴ感がたまりません。

その後もギターのサウンドにロック的な要素も感じられる「Young」に、一転、ムーディーな雰囲気でメロウに聴かせる「Free」、ちょっとジャジーな雰囲気のサウンドで軽快に聴かせる「Lion」、軽快でファンキーさも感じさせるリズムがどこか楽しい「Enough」など、バラエティーが飛んだ展開が続いていきます。

終盤はピアノをバックにWretch 32やCashhとのやり取りを聴かせるメロウな「Blood」や、6分を超える大作であるタイトルチューンの「Lotus」、さらには悲しげなトラックとラップが印象的な「Lonley」「Blue」など、しんみりと聴かせる楽曲が並び、アルバムは幕を下ろします。最後まで独特のグルーヴ感を覚えるような曲が並び、素直にカッコよさを感じさせる楽曲が並ぶアルバムとなっていました。

また、今回のアルバムに関しての大きなトピックとして、彼女の長年のプロデューサーであり、SaultのメンバーでもあるInfloとの決別があげられます。このアルバム制作の過程において、Infloは、彼女に対する170万ポンド(約2億5,000万円)にも及ぶ債務の支払を滞納させ、彼女がInfloを訴える事態に。その過程において作りあげたアルバムを一度破棄し、再度、アルバムの制作を手掛けたようです。

1曲目のタイトル「Thief」はまさにタイトル通り、そんなInfloに対する楽曲。まさにアルバムの前半はそんな裏切りに対する怒りを描写しています。しかし、その後、「Free」「Peace」という曲が並ぶことからもわかるように、その後については自らの感情に対する治癒も表現。終盤にチルアウト的な聴かせるナンバーが並ぶのも、そんな治癒の表現なのでしょう。内省的でありつつ、ある種の物語的な展開の楽しめるアルバムにもなっていました。

日本円について2億以上という大金の債務が不履行であるという点、彼女にとっては不幸な出来事だったのでしょうが、それをこのように作品に転嫁できるということはさすが。そして、そんな彼女の感情はしっかりと楽曲となって昇華されていたように感じます。文句なしの傑作アルバムで、個人的には年間ベストクラスの傑作かと。グルーヴィーなサウンドに強くひかれる1枚でした。

評価:★★★★★

Little Simz 過去の作品
NO THANK YOU


ほかに聴いたアルバム

Pink Floyd at Pompeii - MCMLXXII/PINK FLOYD

ご存じ、プログレ界のレジェンド、ピンクフロイドのライブアルバム。もともと、1972年にライブドキュメンタリー映画「ピンク・フロイド・ライヴ・アット・ポンペイ」が公開され、この映画で、誰もいないイタリアのポンペイの遺跡、円形劇場で演奏されたもの。今年、オリジナル映像からレストア、新ミックスされ、4月に映画が公開されたのですが、その音源がライブアルバムとしてリリースされました。ライブアルバムということですが、非常にクリアな音質でピンクフロイドの作品を楽しむことが出来、普通のスタジオアルバムを聴く感覚で楽しむことが出来る作品に。それはそれでライブアルバムらしい臨場感が欠けるという指摘もあるようですが、それ以上に力強く、次々と新たな展開を見せるピンクフロイドの作品に聴き入ってしまうアルバムになっていました。映画の方は見損ねたのですが、映画も見ておけばよかったな・・・。

評価:★★★★★

PINK FLOYD 過去の作品
The Endless River(永遠(TOWA))
Live At Knebworth 1990

Saviors (Édition de Luxe)/GREEN DAY

昨年1月にリリースされたアルバムに、7曲のボーナス曲を加えたデラックス版(サブタイトルはフランス語でデラックス・エディションという意味だそうです)。新曲7曲は、新曲5曲と既存曲のアコースティックバージョン2曲という構成で、これだけでミニアルバムになるくらいのボリュームがあります。新曲に関しては疾走感あるパンキッシュな曲となっており、目新しくはありませんが、卒なくGREEN DAYらしさを感じさせる作品に。メランコリックなアコギのナンバーと並んで、追加曲目当てで聴いて損はないアルバムかと思います。本編ももちろん申し分ない傑作。全22曲1時間10分弱のボリュームですが最後まで一気に楽しめるアルバムです。

評価:★★★★★

GREEN DAY 過去の作品
STOP DROP AND FALL!!!(FOXBORO HOTTUBS)
21st Century Breakdown
AWESOME AS F**K(邦題:最強ライヴ!)
UNO!
DOS!

TRE!
爆発ライブ~渋谷編
DEMOLICIOUS
Revolution Radio
Greatest Hits:God's Favorite Band
Father of All Motherfuckers
BBC SESSIONS
SAVIORS

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2025年8月17日 (日)

魅力的なゴスペルがフルボリュームで

Title:West Coast Black Gospel 1940-1973 - Won't Have To Cry No More

Westcoastblackgospel

今回紹介するアルバムは、もともとブルースやソウルの専門誌「BLUES&SOUL RECORDS」で紹介されており、興味を持ち聴いてみたアルバム。タイトル通り、1940年から1973年、戦中から戦前、その後のオイルショックの頃までのアメリカ・ウェスト・コーストのゴスペルシーンの楽曲を集めたコンピレーションアルバム。CDにして3枚組、全75曲というフルボリュームでのゴスペルが収録されている豪華な企画盤となっています。

日本でゴスペルというと、それこそ「天使にラブソングを」でイメージされるような、太ったおばちゃんのボーカルが多く並んで、パワフルに歌い上げる音楽・・・というのが想像されてしまうかもしれません。確かにそんなイメージそのままのパワフルな女性ボーカルを聴かせるような楽曲も少なくありません。ただ、ゴスペルと一言で言っても、そんないかにも日本人が想像しそうなタイプの曲だけではなく、様々なタイプの楽曲があります。

例えばGOSPEL CRUSADERS OF L.A.の「To Be Like Jesus」ではパワフルなシャウト気味のソウルフルなボーカルが特徴的ですし、MARVIN C.HINES&THE RADIO TRIOの「Move Upstairs」も、スタイル的にはゴスペルというよりはブルースに近い感じが。また、MELODY KINGSの「He's All Right」は70年代的な懐かしいレトロなギターサウンドが印象的な哀愁たっぷりのソウルナンバーですし、JAMES WAFER&PILGRIM TRAVELLERSの「Help Me To Carry On」はドゥーワップな楽曲となっています。このようにゴスペルといっても実に様々なタイプの曲が並んでおり、その奥深さをあらためて感じさせます。

そして多種多様なゴスペルが収録されており、実に魅力的な今回のコンピ盤ですが、やはり印象に残ったのはパワフルなボーカルを聴かせるような楽曲でしょう。まずDisc1で印象的だったのがHAROLD BOWEN SINGERSの「One More Time」で、HAROLD BOWENは、メンフィス出身のゴスペルシンガーで名クワイア指導者だそうですが、特にこの曲はこれでもかというほどパワフルに歌い上げる女性ボーカルが強いインパクトを残します。また、前述の「Move Upstairs」もボーカルのしゃがれ声の味のあるボーカルが魅力的。所々歌い上げるボーカルが実に迫力があります。

Disc2ではグラミー賞にも数多く受賞しているMighty Clouds of Joyが10曲も収録されているのが特徴的。軽快でリズミカルなナンバーや、力強いボーカルを目いっぱい聴かせるナンバーなど、楽曲の幅広さを感じます。特に「I'll Go」のこれでもかというほどのパワフルな男性ボーカルが魅力的。そしてDisc3は終盤を締めくくるSONDRA WILLIAMSの楽曲が印象的。「Down By The Riverside」でパワフルなボーカルとコールアンドレスポンスでリズミカルに聴かせる楽曲にテンションが一気にあがる一方、続く「Heartache」では力強くもしんみり感情たっぷりに聴かせるボーカルが実に魅力的で胸に響きます。

最初に書いた通り、3枚組というフルボリューム、すべてゴスペルという構成ながらも非常に魅力的なアルバムで、最後まで飽きることなく楽しめるアルバムでした。ちなみに今回の曲順、なんとABC順だということで、ある意味、非常に公正的な並び方・・・。幅広いゴスペルの楽曲の数々に、ゴスペルという音楽の魅力と奥深さをあらためて認識したアルバムでした。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

Avicii Forever/Avicii

2018年にわずか28歳でこの世を去ったEDMの代表的なミュージシャンAvicii。彼のあまりにも早い逝去から7年、初となるベストアルバムがリリースされました。彼の代表曲19曲に、新曲「Let's Ride Away」が収録されています。全体的にはメランコリックな歌とリズミカルなEDMのリズムが特徴的。ビートとメロは非常に心地よく、どこか陶酔感のあるサウンドが耳に残ります。ただ一方では全体的に似たようなタイプの曲も多く、その点はちょっと物足りなさも感じました。

評価:★★★★

AVICII 過去の作品
True
True:Avicii By Avicii
STORIES
AVICII(01)
TIM

FUNNY little FEARS/Damiano David

Måneskinのボーカリストによるソロデビューアルバム。失恋をした彼が、それを動機としてロサンゼルスで70曲以上も曲を書きあげ、そこから抽出した14曲を収録したアルバム。確かにピアノバラードの「Sick of Myself」のような切なく歌い上げるナンバーがあったり、先行シングルにもなっている「Born with a Broken Heart」のような、明るいリズミカルな楽曲ながらもどこか切なさを感じさせるメロが特徴的な曲があったりと、「失恋」のテーマを感じさせる曲もあったりするのですが、全体的には聴かせるポップな楽曲が並ぶ作品に。バンドサウンドの曲があったり、エレクトロチューンがあったり、前述のようなピアノバラードがあったりとバラエティーは豊富。一方でメロのインパクトもあり、さすが今をときめくMåneskinのボーカリストだけあって、ポップの壺をしっかりと心得ている印象があります。バンドとの違いも明確であり、ある意味、ソロらしいアルバムとも言えるかと。バンドとしてもソロとしても今後の活躍に期待です。

評価:★★★★★

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2025年8月16日 (土)

バンド名義での初となるアルバム

Title:石の糸
Musician:kanekoayano

おそらく、今、もっとも注目を集めている女性シンガーソングライターの一人であり、アルバムをリリースするごとに高い評価を受けているカネコアヤノ。今回はそんな彼女のニューアルバム・・・・・・なのですが、上に書いているとおり、ミュージシャンの名義がローマ字となっています。これは昨年8月に、今後、彼女はバンドでは「kanekoayano」名義で活動を行い、ソロでは従来通り「カネコアヤノ」名義で活動を明言。要するに今回のアルバムは「kanekoayano」というバンドのアルバムということになります。

メンバーは、もともとカネコアヤノのバンドメンバーとして活動していたギターの林宏敏とベースのtakuyaiizukaと彼女の3名。海外ではSantanaとかマリリン・マンソンみたいにボーカリストの名前がそのままバンド名になるケースが少なくありませんが、日本ではそういったケースは比較的レアのような気がします。知る限りでは秀吉というバンドがあるのと、あと、最近私がはまっている鈴木実貴子ズくらいでしょうか。そう考えると、最近、ボーカルの名前=バンド名というグループが日本でも増えてきたような感もあります。

もともとカネコアヤノとして活動しているころから、バンドサウンドを比較的前に押し出した音楽性が特徴的でした。特にカネコアヤノ名義の直近作「タオルケットは穏やかな」では、そんなバンドサウンドをより強調した作品に仕上がっていました。一方で彼女はそんなアルバムをリリースした後、アルバムタイトルに「ひとりでに」をつけたアコースティックなアルバムをリリースしてきました。そんなバンドサウンドを取り入れた作品とひとりで演奏する作品を明確に区別してきた彼女なだけに、その差をより明確にするために、新作はソロではなくバンド名義という形にしたのでしょう。

ただ、そういうこともあるので楽曲としての方向性はいままでのカネコアヤノの曲と大きな差はありません。アルバム1曲目の出だし「noise」も彼女のアコギのストロークからスタートしますし、あくまでも彼女の歌が主眼となった曲作りである点、いままでのアルバムと同様。そういう意味ではkanekoayano名義になったといっても、基本的にはカネコアヤノのニューアルバムとして捉えても、大きな差はないように感じます。

しかし、とはいってもバンド名義となった本作は、前作以上にバンドサウンドを前に押し出したアルバムになっていました。例えば2曲目「太陽を目指してる」はドラムの軽快なリズムにサイケデリックなギターが加わる楽曲となっており、よりバンド色の強いサイケロックの楽曲に仕上がっていますし、「日の出」も軽快なギターロックの作品に。この曲など、彼女らしい楽曲なのですが、ソロ名義だった以前の曲だったら、もっとバンドサウンドの音は控えめだったのではないか、とも想像できます。さらにバンド色が強いのは中盤の「ラッキー」で、歪んだサウンドが前面的に展開されるサイケロックな楽曲。後半も「WALTZ」のような分厚いバンドサウンドに力強いドラムのリズムを前に押し出した楽曲もあったりと、いままでのアルバム以上にサイケ色が強く、バンドサウンドが主体アルバムとなっており、確かにサウンドの面ではソロ名義との違いも感じられます。

そしてその結果、よりユニークになったのはバンドサウンドとカネコアヤノのボーカルの対比でしょう。もともとサイケなサウンドと、フォーキーな雰囲気のカネコアヤノの書くメロディーと彼女の力強い歌声の対比がユニークであり、彼女の大きな特徴だったのですが、バンドサウンドをより前に押し出すことにより、このサウンドと歌の対比がより強調された形となっていました。バンドサウンドを加えることにより、カネコアヤノの魅力がより発揮された1枚と言えるかもしれません。

ちなみに、いつも彼女はバンド形態のアルバムをリリースした後、タイトルに「ひとりでに」と加えた、彼女1人による弾き語りのアルバムをリリースするのですが、この作品も近日中に弾き語りアルバムをリリースするのでしょうか。そうすると、今まで以上に楽曲の差異が際立つため、非常に楽しみなのですが。

バンドとして新たな一歩を踏み出した彼女。このアルバムを聴く限りでは、これからのバンドとしての活躍にもかなり期待できそう。また、ソロとしても新たな展開もありそうで、そちらも楽しみ。カネコアヤノからは、まだまだ目が離せなさそうです。

評価:★★★★★

カネコアヤノ 過去の作品
燦々
燦々 ひとりでに
よすが
タオルケットは穏やかな
カネコアヤノ 単独演奏会 2022 秋 - 9.26 関内ホール
タオルケットは穏やかな ひとりでに
よすが ひとりでに
カネコアヤノ Billboard Live ワンマンショー 2023 - 12.15 Billboard Live OSAKA


ほかに聴いたアルバム

N.I.T.O./KEIJU

Nito

HIP HOPグループKANDYTOWN所属のラッパー、KEIJUによる、前作「T.A.T.O」から約5年ぶりとなるニューアルバム。最近、新しいラッパーがどんどん人気を獲得していますが、本作もいきなりビルボードのHot100でベスト10入りを記録しています。タイトルは"Never Ignore Trust Ourselves"の略だそうで、自分自身の信念と仲間への信頼がテーマだとか。メランコリックなフロウに、自らの生い立ちや今の生活、仲間たちとのことを綴ったラップが印象に残る作品。特にこのフロウとラップが上手くマッチし、グッとくるような部分もチラホラ。ジャケット写真もそうですが、全体的に哀愁ただよう作品となっていました。

評価:★★★★

My G's/AK-69

Mygs

AK-69の実に約3年半ぶりとなる新作は、全編、様々なミュージシャンとのコラボレーションを行ったアルバム。SEEDAやALBA、Theタイマンチーズなど様々なミュージシャンとコラボ。結果、メランコリックなフロウやサウンドをベースとしつつバラエティーに富んだ作風になっているのが特徴的。特に印象的だったのが、かのTHA BLUE HERBのILL-BOSSTINOを迎え、プロデューサーとしてdj hondaとタッグを組んだ「道」で、いままで彼が歩んできた道のりと、これからの決意を語られた力強い前向きなナンバーとなっており、強い印象に残ります。しっかりインパクトのあるバラエティー富んだ展開を聴かせてくれる点、AK-69としての実力も感じさせる作品でした。

評価:★★★★

AK-69 過去の作品
THE CARTEL FROM STREETS
THE RED MAGIC
The Independent King
Road to The Independent King
THE THRONE
DAWN
無双Collaborations -The undefeated-
THE ANTHEM
ハレルヤ-The Final Season-
LIVE:live
The Race
Flying To The Top(AK-69&¥ellow Bucks)

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2025年8月15日 (金)

豪華なミュージシャンが集結したアニメのサントラ盤

最近は、すっかり日本を代表するエンタテイメントとなったアニメですが、そこで起用される音楽も、以前とは比べ物にならないほど豪華なミュージシャンが彩るようになってきました。今回紹介するのは、今年の4月から6月まで、テレビ東京系で放送されたアニメ「LAZARUS ラザロ」。このアニメには、なんと今、もっとも注目を集めているジャズミュージシャンの一人とも言えるサックス奏者Kamasi Washington、イギリスのエレクトロニカのプロデューサーBonobo、さらには同じくイギリスのエレクトロミュージシャンFloating Pointsが楽曲を提供。さらに、彼らのサントラが配信でリリースされ、大きな話題となっています。

Title:Lazarus(Adult Swim Original Series Soundtrack)
Musician:Kamasi Washington

Lazarus_kamashi

まずはKamasi Washingtonのサントラ盤。全11曲1時間20分弱に及ぶボリューム。アルバムはエンディングである「Lazarus」からスタートするのですが、疾走感あふれるサウンドが特徴的なロックテイストも強い力強いナンバーに仕上がっており、迫力あるサウンドが耳に行きます。それに続く「Vortex」は、サックスの音色にストリングスや重厚なコーラスを重ねたスケール感のある作品に。いうまでもなく、カマシの楽曲として非常にクオリティー高い作品に仕上がっています。

特に前半は、エモーショナルなサックスソロも魅力的な「Lie in Momery」や、「Follower's Dream」のような、アグレッシブなサウンドも加わった重厚でダイナミックなサウンドが魅力的。現代ジャズの第一人者として評価されるKamasi Washingtonらしい挑戦的な作風を感じさせる構成が実に魅力的です。

一方後半には、ピアノの音色も軽快な「Cold Slaw」やメロウに聴かせる「Hard Way to Wonder」など、比較的スタンダードなジャズも聴かせてくれたりして、Kamasi Washingtonの魅力を様々に表現している展開になっています。アニメのサントラですが、これはこれで間違いなくKamasi Washingtonのニューアルバムと言っても過言でない内容に。非常に魅力的な現代ジャズの傑作アルバムでした。

評価:★★★★★

Title:Lazarus(Adult Swim Original Series Soundtrack)
Musician:Bonobo

Lazarus_bonobo

こちらはBonoboによるサントラ盤。全体的にはアンビエントなテイストでドリーミーに聴かせる作品が並んでいます。ちょっと気だるい感じもあり、アニメの中での使われ方はわかりませんが、アグレッシブなKamasi Washingtonとも対比的な印象があり、比較的、アニメの中での光景が浮かびやすい楽曲はサントラならでは、といった感じかもしれません。

ただ、こちらもよくあるサントラ盤にように、ワンアイディアのみが流れる「劇伴音楽」的な内容ではなく、1曲1曲がBonoboの作品として楽しめる内容となっています。アルバムとしてもアンビエントに聴かせる前半から、中盤「Beyond the Sky」では女性ミュージシャンのNicole Miglisが参加したメロウな歌モノに、「Babylonia」では4つ打ちのリズミカルなテクノチューンに、さらに「Dark Will Fall」では、こちらもアメリカの男性ミュージシャンJacob Luskがボーカルで参加したムーディーな作品を聴かせてくれます。

その後もリズミカルな「Landfall」や、どこか和風なサウンドを取り入れた幽玄な雰囲気の漂う「Hearts」など、最後までバラエティー豊かな展開に。全15曲45分弱。こちらも間違いなくBonoboの新作として楽しめる傑作アルバムに仕上がっていました。

評価:★★★★★

Title:Lazarus(Adult Swim Original Series Soundtrack)
Musician:Floating Points

Lazarus_floating

そしてこちらがFloating Pointsのサントラ盤。全編、エレクトロの作品なのですが、全6曲入り、疾走感あってリズミカルな「Mirror Pursuit」からスタートするものの、ストリングスの音色が優しく響く、幻想的な「Total Eclipse」、ドラムの力強いリズムの上に伸びやかなストリングスを聴かせる「Wires」と前半は、アンビエント色もある聴かせるエレクトロチューンが並びます。

一方後半は、トライバルなリズムを軽快に聴かせる「Ajar」、アンビエント的な作風ながらも軽快なビートが続く「Topez」、そしてラストはスペーシーなサウンドに四つ打ちのビートが心地よいリズミカルな「Dexion」と続いていきます。全体的に透明感のあるエレクトロサウンドが魅力的で、アンビエント的な曲もあるものの、アルバム全体としてはリズミカルなビートが印象に残る構成となっています。

こちらも他の2作品と同様、Floating Pointsのニューアルバムとして聴ける構成になっており、間違いなく、彼の新作として傑作と言える内容だったと思います。全3作、どれもそれぞれのミュージシャンの個性が存分に発揮された内容となっており、非常に聴きごたえのあるサントラ盤でした。これがアニメの中でどのように使われたのかはアニメを見ていないのでわかりませんが・・・アニメの内容も俄然気になってしまいました。しかし、本当に豪華なサントラだなぁ・・・。

評価:★★★★★

Kamasi Washington 過去の作品
HEAVEN&EARTH
Fareless Movement

Floating Points 過去の作品
Crush
Promises(FLOATING POINTS, PHAROAH SANDERS & THE LONDON SYMPHONY ORCHESTRA)

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2025年8月14日 (木)

2週連続1位

今週のHot Albums

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

このまま独走体制となるのでしょうか?

今週1位はMrs.GREEN APPLE「10」が先週に続いて2週連続の1位獲得。通算4週目の1位獲得となっています。ストリーミング数は5週連続で1位。ただし、ダウンロード数は今週1位から3位にダウンしています。Mrs.GREEN APPLEは他に、「ANTENNA」が7位から9位にダウン。ベスト10ヒットを通算47週に伸ばしています。一方、「Attitude」は9位から11位にダウンし、ついにベスト10ヒット陥落。ベスト10ヒットを通算34週で一度ストップとなりました。

2位はSnowManのベストアルバム「THE BEST 2020-2025」が先週からワンランクアップ。通算19週目のベスト10ヒット&ベスト3ヒットとなります。

3位は同じく旧ジャニーズ系、NEWSのニューアルバム「変身」がランクイン。CD販売数1位、ダウンロード数4位、ストリーミング数17位。オリコン週間アルバムランキングは初動売上8万6千枚で1位初登場。前作「JAPANEWS」の初動10万8千枚(1位)からダウン。

4位以下の初登場盤はまず4位にTENBLANK「Glass Heart」が先週の14位からランクアップし、初登場2週目にしてベスト10入り。Netflixドラマ「グラスハート」の劇中バンドによるアルバム。6位には韓国の男性アイドルグループNCT DREAM「Go Back To The Future」が初登場でランクインしています。


今週のHeatseekers Songs

https://www.billboard-japan.com/charts/detail?a=heat_seekers

今週のHeatseekers Songsは、韓国の女性アイドルグループHearts2Hearts「STYLE」が1位獲得。2月にCDシングル「The Chase」でデビューし、それに続く配信限定でのシングルとなります。Hot100ではベスト50圏外。


今週のニコニコVOCALOID SONGS

https://www.billboard-japan.com/charts/detail?a=niconico

ボカロチャート1位は先週3位にランクインしてきたなきそ「いますぐ輪廻」がランクイン2週目にして1位獲得。2位は先週から変わらずDECO*27「チェリーポップ」がキープ。3位にはサツキ「メズマライザー」が5位からランクアップし、再びベスト3入りしています。

今週のHot Albums&Heatseekers&ボカロチャートは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2025年8月13日 (水)

ディズニーとのコラボ曲が上位に

今週のHot100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

ディズニーとのコラボ曲が上位にランクインです。

今週1位はKing&Prince「What We Got~奇跡をきみと~」がランクイン。CD販売数及びダウンロード数1位、ラジオオンエア数3位。本作は、ミッキーマウスの新オフィシャルテーマソングだそうで、もともと2016年に発表された「What We Got (Mickey's Birthday Song)」の日本語カバー。ミッキーマウススクリーンデビュー100周年に向けての大型キャンペーン「ミッキー&フレンズ・イン・リアル・ライフ」の一環だそうです。

ディズニーとのコラボといえば、8位にも東京ディズニーリゾートのイベントでのコラボ曲、Mrs.GREEN APPLE「Carring Happiness」が8位にランクインしています。ただ、ディズニーがこういう「売れ線」のミュージシャンたちとコラボするケースが増えているような・・・「夢と魔法の世界」であるディズニーが、安易に現実感満載の旧ジャニーズ系や人気ミュージシャンたちとコラボするのは少々違和感がぬぐえないのですが。

ちなみにKing&Princeはオリコン週間シングルランキングでは初動売上32万枚で1位初登場。前作「HEART」の初動31万7千枚から微増。

2位はHANA「Blue Jeans」がワンランクアップ。HANAは「ROSE」も先週の6位から4位にアップ。ベスト10ヒットを19週連続に伸ばしています。

3位は秋元康系の女性アイドルグループ、僕が見たかった青空「視線のラブレター」がランクイン。CD販売数2位、ラジオオンエア数7位。オリコンでは初動売上6万4千枚で2位初登場。前作「恋は倍速」の初動4万7千枚(3位)からアップ。

4位以下の初登場曲は、まず7位にback number「幕が上がる」がランクイン。配信限定シングルで、ダウンロード数7位、ラジオオンエア数1位。劇場版「TOKYO MER~走る緊急救命室~南海ミッション」主題歌。

10位には三代目J Soul Brothersのメンバー、岩田剛典「TORICO」がランクイン。CD販売数3位。オリコンでは初動売上3万7千枚で3位初登場。前作「Phone Number」の初動4万4千枚(1位)からはダウンしています。

他のロングヒット曲では、Mrs.GREEN APPLE「クスシキ」が先週と変わらず5位をキープ。これでベスト10ヒットは連続19週に。また「breakfast」も先週の10位から9位にアップ。これでベスト10ヒットは通算9週目となりました。

今週のHot100は以上。明日はHot Albums&Heatseekers&ボカロチャート!

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2025年8月12日 (火)

現代の視点からクラシックの名盤を紹介

今回は最近読んだ音楽関連の書籍です。ただ、ちょっといつもとは毛色が違うのですが・・・

批評家の本間ひろむによるクラシック音楽のガイド本。「21世紀のクラシック新名盤 革新者たちの絶対必聴アルバム」。クラシック音楽に関しても、以前から手を広げてみたいなぁ、と思いつつ、時々、挑戦したりするのですが、何枚か聴いて結局挫折、ということを何度か繰り返しています。今回も懲りずに挑戦しようと思い読んでみたのが本書。クラシック音楽というと、同じ楽曲でありつつ、演奏者や指揮者、録音時期などでバリエーションがあり、同じ楽曲でもどのアルバムを聴けばよいのか迷うケースが多いのですが、そんな迷いの指標となるような「名盤ガイド」となっています。

本書は、現代の視点からクラシックのアルバムを評価し、巻末に「名盤・新名盤ガイド」として、定番のアルバムとしての名盤21枚と、現代の視点から新たに選定したアルバム19枚が収録されています。ユニークなのが「配信で聴く」と題されており、アルバム毎にSpotify、Amazon Music、Apple MusicのQRコードがついており、このQRコードをスキャンするとすぐにアルバムが聴ける仕組みとなっています。

クラシック音楽というと、既に過去の音楽というイメージが強いのですが、この名盤ガイドではあくまでも現代のクラシック音楽のシーンを追いかけており、クラシック音楽というジャンルでも、現代においても新たな名盤が誕生するような、ちゃんと「生きている」ジャンルであることをあらためて実感しました。クラシック音楽のガイド本というと、どうしても過去の作曲家にスポットをあてた本が多い中、現代の音楽家にしっかりとスポットをあてられているのは、私のようなクラッシックに疎い人にとっては新鮮にも感じました。

ただ、書籍としては率直に言うと読みにくい・・・・・・いや、星海社新書の新書本のため、文章自体は非常に「軽い」です。しかし、登場する人物や固有名詞が、クラシック初心者の私にとってはなじみがなく、かつ、文章中にほとんど詳しい説明がないまま、次々と固有名詞が登場してくるため、正直、かなりわかりにくいです。ただ、こればかりは著者の責任ではなく、単純に私のような完全な初心者向きではなく、ある程度、現代のクラシックシーンを把握している人向けだから、ということなのでしょう。そういう意味で、初心向きとしてはあまりお勧めしがたい1冊だとは思います。

また、これは初心者とか関係なくちょっと残念だった点ですが、後ろの名盤ガイドで登場しているアルバムと、前半の文中のつながりがちょっとわかりにくい。前半の文中に、後半の名盤ガイドで登場するアルバムが紹介されているのですが、特に該当のアルバムが太字になっている訳でも、後ろの名盤ガイドの何番に相当するのかも記載がないために、両者のつながりが非常にわかりにくくなっていました。これは私が初心者とか関係ない話なので、ちょっと残念な感じ。もっと前半の文章と後半の名盤ガイドをちゃんとリンクしておいてくれれば、より参考にしやすかったと思うのですが・・・。

そんな感じで、正直、初心者向きではなく、おそらくクラシックの中上級者向けの名盤ガイドではないかとは思うのですが、それでも、後ろの名盤ガイドはかなり役に立ちそう。興味のあるアルバムから、順に聴いてみて、またクラシック音楽に挑戦してみようかと思います。あと、最近話題のピアニスト、角野隼斗のアルバムも新名盤として載っており、なんとなく話題先行にも思ったのですが、クラシック界でもちゃんと評価されているということですね。手始めに、彼のアルバムから聴いてみようかなぁ・・・。

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2025年8月11日 (月)

複雑な構成はJ-POP的な部分も?

Title:Evangelic Girl Is a Gun
Musician:yeule

アルバムをリリースする毎に大きな注目を集めている、シンガポール出身のシンガーソングライターyeuleのニューアルバム。前作まではアニメのコスプレのようなジャケット写真も印象的でしたが、今回もどこかアニメライクなジャケットに。ただ、非常にダークな雰囲気のジャケット写真はポーランドの画家、ズジスワフ・ベクシンスキーに影響を受けたということ。退廃的な画風が特徴的で、一時期、ネットでも話題となったことがあったそうです。

毎回、ユニークなサウンドのポップスを聴かせてくれる彼女。今回のアルバムもバラエティーに富んだ、非常に凝ったサウンドの構成が魅力的なアルバムになっています。アコギからスタートし、気だるい雰囲気に聴かせる「The Girl Who Sold Her Face」や、ノイジーなサウンドにシューゲイザーからの影響も感じる「1967」、エレクトロサウンドやシンセを取り入れて、ドリーミーでスケール感あるポップを聴かせる「Dudu」、HIP HOPの要素を取り入れた、トリップポップ的な「What3vr」、さらにタイトルチューンの「Evangelic Girl is a Gun」ではエレクトロビートをベースに分厚いサウンド構成で高揚感あふれるポップチューンに仕上げており、アルバムの後半のハイライトとなっています。

基本的に、彼女のいつもの作品と同様、ちょっと気だるげなボーカルで、軽快なポップチューンを聴かせてくれる作品。若干ロック寄りだった前作よりもポップ寄りにシフトした感はあるものの、彼女のスタイルとしては大きく変わっていません。今回も、様々にめくるめく展開していくポップチューンを楽しめるアルバムで、全10曲31分という長さも、一気に楽しむにはちょうど良い長さといった感じもします。

また、yeuleと言えば、彼女の名前自体、ファイナルファンタジーのキャラクターからとられたように、日本とも関係の深いミュージシャン。前々作、前作では日本人ミュージシャンが参加していたり、邦画で使われた楽曲のカバーがあったりと、日本との縁も深かったのですが、残念ながら本作ではそのような日本人ミュージシャンの参加はありません。ただ、1曲「Saiko」という楽曲があり、ひょっとして日本語からとられたのか?また、様々に構成する複雑なポップはどこかJ-POP的でもあり、先行シングルともなっている「Eko」など、わかりやすいメロのポップチューンも多く、J-POPリスナーとの親和性も高いように感じます。日本人にも難なく受け入れられそうに感じられるポップチューンが並んでいました。

個人的には、年間ベストクラスの傑作だった前々作、前作に比べると、ちょっとインパクトの面では劣っていたような感もあります。彼女のアルバムを聴いたのもこれが3作目となり、単純に彼女のスタイルに慣れてきてしまった、という要素も強いような気もします。そういう意味ではそろそろ新たなスタイルを聴きたい感もあるのですが・・・。そんな点は気になりつつも、ただこのアルバム自体、十分傑作と言える内容だったと思います。まだ売上の面では知る人ぞ知る的な面も強い彼女ですが、今後さらなる活躍が期待できそうなアルバムでした。

評価:★★★★★

yeule 過去の作品
Glitch Princess
softscars


ほかに聴いたアルバム

GOLLIWOG/Billy Woods

ニューヨークはブルックリンを拠点とするラッパーによる、単独作としては約3年ぶりとなる新作。「ホラーコア」とも呼ばれるダークで怪しげな雰囲気のトラックが特徴的。一方ではジャジーでムーディーなサウンドも取込んだメランコリックなサウンドも魅力的で、しっかりと語るようなラップも耳に残ります。一方、「Corinthians」のように、ガザ虐殺に言及した社会派のリリックも特徴的で、タイトルになっているGOLLIWOGとは、日本ではあまりなじみはありませんが、かつて流行った黒人差別的なキャラクター(昔のダッコちゃん人形みたいな)だそうで、その点でも彼の主張を感じさせます。歌詞の内容はストレートにわからないものの、アルバムで流れる力強い彼のラップは、どこか心に響いてくるような作品でした。

評価:★★★★★

Billy Woods 過去の作品
Maps(billy woods&Kenny Segal)

Come Ahead:The Remixes Vol.2(Dubs)/Primal Scream

Dubprimal

Primal Screamのアルバム「Come Ahead」のリミックスアルバム第2弾。今回はタイトル通り、ダブによるミックスでRadio SlaveやさらにPet Shop Boysといったメンバーが参加しています。ただ今回のアルバム、確かにダブといった感じの曲もありますが、全体的に4つ打ちのテクノのアレンジが目立った感じも。グルーヴィーな横ノリのダブアルバムを期待するとちょっと肩透かしを食らうかも。ただ、それはそれとして、軽快なリズムが心地よいダンサナブルなアルバムで、非常に楽しめる作品でした。

評価:★★★★★

primal scream 過去の作品
Beautiful Future
Screamadelica 20th Anniversary Edition
More Light
Chaosmosis
Give Out But Don't Give Up:The Original Memphis Recordings
MAXIMUM ROCK ‘N’ ROLL: THE SINGLES
Demodelica
Live at Levitation
Come Ahead
Come Ahead: The Remixes Vol 1 (Vocals)

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2025年8月10日 (日)

大衆が歌い継いだ古謡を丹念に収集したSSWによるエッセイ集

今回は最近読んだ音楽関連の書籍の感想です。

シンガーソングライター寺尾紗穂「戦前音楽探訪」。ミュージック・マガジン誌に2019年から2024年にかけて連載していた、タイトル通り、主に戦前の音楽を題材とした彼女のエッセイ集をまとめた1冊です。

彼女はもともと「わたしの好きなわらべうた」と題された、日本各地で伝わるわらべ歌を収集し、自ら歌うアルバムを2枚リリース。今年の6月も、日本各地で伝わる労働歌をカバーした「わたしの好きな労働歌」をリリースするなど、以前から積極的に、日本各地で一般大衆によって歌い継がれてきた、いわゆる「古謡」を収集し、自ら歌い継いできていました。

本書に関しては、まさにそんな彼女が出会った古謡にまつわるエピソードをエッセイという形で綴ったのが本書。この本で取り上げられているのは主に2つのテーマにわかれており、前半が、主に労働歌など、戦前の大衆が、その生活の中で歌ってきた歌に関するエッセイ。そして後半が主に戦時中の音楽に関するエピソードを取り上げています。

まず印象的だったのが彼女が全国各地で埋もれてしまっている古謡を、実に積極的に発掘しているというバイタリティー。ライブなどでいろいろな街に行くと、図書館に足を運び、そこで伝わる古謡を発掘しているそうで、この本を読むと、日本各地にいかに数多く、大衆によって歌い継がれてきた歌があるんだなぁ、ということを強く感じさせます。特に印象に残ったのが、私の地元、愛知県の稲武につたわる民謡「稲武のうた」で、間引きについてストレートに歌った歌詞がかなりのインパクト。昔の大衆の心境が如実に伝わってくる古謡の数々は、今の私たちにも大きなインパクトを与えます。

一方、後半に関しては戦争と音楽に関してのエピソードや歌がまとめられています。戦時下で歌われた曲の中にも様々な人の思いがあり、また、多くの作曲家が戦争に強力し、戦争を鼓舞するような歌詞の曲を書きつつも、その中でも濃淡を感じさせる点も興味深く読むことが出来ます。特に印象的だったのは特攻隊に関する替え歌のエピソードで、特攻隊が出陣前に待機したという浅間温泉で伝わる、特攻隊へ出征する兵士で歌われた替え歌のエピソードは、非常に胸をうつものがあります。

このように、主に戦前、一般大衆の中で歌われた「歌」についてまとめられたエッセイ。そのため、一方では戦前の歌謡曲やヒット曲、また戦前に流行したジャズに関する記載はなく、「戦前音楽」というタイトルから、そのような楽曲に関する記載を期待すると、若干肩透かしを食らうかもしれません。

あと、基本的に本書はエッセイ集。そのため、全体的には著者の雑感などのエピソードがメインとなっています。古謡についてかなり詳しい彼女なだけに、個人的にはこのような雑感集のようなエッセイという形ではなく、古謡や戦前音楽について、体系的にまとめた著作を読んでみたいなぁ、とも感じました。正直言うと、これだけ詳しい知識がありながら、内容的にあまりにあっさりしすぎている感もあったので・・・。彼女はあくまでもシンガーソングライターであって研究者ではないので、そこまでの時間は取れないのかもしれませんが、彼女の持つ知識を体系化した1冊にも期待したくなりました。

そんな訳で、日本には、古謡という形で大衆の声が様々な形で残っているんだな、ということをあらためて実感したのと同時に、それらの古謡を丹念に収集する彼女の活動にあらためて感服したエッセイ集。日本に伝わる大衆音楽に興味がある方にはお勧めしたい1冊でした。

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2025年8月 9日 (土)

レジェンド的なインディーバンドの久々の新譜

Title:Instant Holograms On Metal Film
Musician:Stereolab

主に1990年代から2000年代に活躍したロンドンを拠点に活動したStereolab。インディーロック、あるいはアヴァン・ポップと言われる代表格的なバンドで、大ブレイクこそしませんでしたが、日本でも高い人気を誇ったバンドでした。その後、2009年に活動を休止したものの、2019年に活動を再開。このたび、活動休止前の2010年依頼、実に15年ぶりにリリースされたニューアルバムが本作となります。

まずアルバム全体としてはメロディアスで暖かい、ソフトロック的な楽曲が並ぶ印象を受けます。先行シングルともなっている「Aerial Troubles」は、ちょっと懐かしいレトロ感のあるメランコリックなポップチューンになっていますし、「Immortal Hands」もどこか懐かしいソフトロック的な作風が魅力的。「Transmuted Matter」も女性のハーモニーが美しい、ネオアコ的な楽曲に仕上がっていますし、後半の核とも言える「Flashes From Everywhere」も、フルートの音色も美しい、暖かくメロディアスなソフトロックに仕上がっています。

そんな感じで、全体的にはどこか懐かしさを感じさせるネオアコやギターポップのテイストを感じさせるポップチューンが魅力的なアルバム。ただ、一方、単純に暖かいポップというだけにとどまらないバリエーション豊かな楽曲も魅力的で、例えば特に序盤、楽曲後半がインストになっているような曲が並ぶのですが、「Melodies Is A Wound」もそんな1曲。後半も暖かいサウンドを聴かせてくれるのですが、歪んだホーンのノイズやエレクトロサウンドも加わり、ダイナミックで複雑に展開していく構成も大きな魅力的です。

また、中盤の「Electrified Teenybop!」も実験的な作風で、レトロフューチャー的なエレクトロサウンドが展開されるインストチューン。エレクトロディスコ的なリズムで軽快なナンバーとなっていますし、「Esemplastic Creeping Eruption」も、ソフトロック風な序盤から、後半はノイジーなギターが入り、ロック色の強くなるインストに。この展開もなかなかユニークな楽曲に仕上がっています。

ちなみに彼らの楽曲の特徴として、政治的、哲学的な歌詞の世界も大きな魅力だとか。残念ながら英語は詳しくわからないので、その部分の魅力を直接感じることは出来ないのですが、例えば「Aerial Troubles」では消費社会に対する皮肉を感じさせる歌詞が繰り広げられており、その歌詞の世界も大きな魅力となっています。

約15年ぶり、かなり久々のアルバムだったのですが、Stereolabの魅力をしっかりと伝えてくれているアルバム。良い意味で彼ららしい作品に仕上がっていました。楽曲については、正直最初、ちょっと地味にも感じたのですが、聴けば聴くほどその魅力にはまっていく、そんな傑作に仕上がっていました。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

Make'em Laugh, Make'em Cry, Make'em Wait/Stereophonics

通算9枚目のチャート1位獲得作となったイギリスのロックバンドStereophonicsの新作。相変わらず国民的バンドらしい安定した人気を感じさせる本作は、全8作30分弱という、バンド史上、もっとも短いアルバムにになっています。そのため比較的シンプルで、ある意味王道路線とも言えるロックアルバムとなっていますが、一方では1曲目「Make It On Your Own」ではストリングスを取り入れてスケール感のある作品となっていたり、「Eyes Too Big For My Belly」はハードロック風に仕上げられていたり、ラストの「Feeling Of Falling We Crave」は郷愁感たっぷりのブルースロックに仕上げられていたりと、短い内容の中にバラエティーを感じさせる内容に。目新しさはないものの、しっかりと壺をついた構成にベテランバンドらしい実力も感じさせる内容になっていました。

評価:★★★★

STEREOPHONICS 過去の作品
Decade In The Sun-Best Of Stereophonics
KEEP CALM AND CARRY ON
Graffiti On The Train
Keep The Village Alive
Scream Above The Sounds
Kind
Oochya!

Pink Elephant/Arcade Fire

ある意味、近年まれにみる、わかりやすい転落劇を繰り広げているロックバンドArcade Fireの新作。2010年にリリースされた「The Suburbs」や2013年の「Reflektor」は各種メディアで大絶賛を受け、まさに未来のロックの希望のような扱いを受けていたのですが、2017年の「Everything Now」が酷評を受け、一気に人気がダウン。さらに2022年にメンバー、ウィン・バトラーの性加害疑惑が取りざたされ、完全に人気が失墜してしまいました。前作「We」では最高位6位にランクインしていたビルボードチャートも、なんと本作ではベスト200圏外という結果に。正直、ここまで短期間に人気も評価も失墜してしまったミュージシャンも珍しいかもしれません。

ただ、率直に言うと、このアルバム、そこまで悪いか?というのは正直な感想。確かにシンセを取り入れてエレクトロ感を増やしたサウンドは、若干安易という表現も出来るかもしれませんし、全盛期と比べると、やはり物足りない点は否めないかもしれません。しかし一方、メランコリックなメロディーラインはインパクトもあり、最後までダレることなくしっかり聴かせるメロを楽しませてくれます。性加害疑惑という側面で、確かに安直な絶賛は出来ないかもしれませんが、一時期シーンを席巻したバンドの実力を感じることは出来るかと思います。今後、ここから疑惑も払拭して盛り返すのか、それともこのまま完全に消えて行ってしまうのか。今後の動向が気になるところです。

評価:★★★★

ARCADE FIRE 過去の作品
THE SUBURBS
REFLEKTOR
Everything Now
We

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2025年8月 8日 (金)

2025年上半期 邦楽ベスト5

前回に続き、今回は邦楽の上半期ベスト5です。

5位 あばら/鈴木実貴子ズ

聴いた当時の感想は、こちら

おそらく、ライブではじめて知ってここまではまったミュージシャンは久しぶりかもしれません。ギターボーカルの鈴木実貴子と、ドラムのズによる2人組バンド鈴木実貴子ズのメジャーデビューアルバム。今年のGWのライブサーキットで、はじめてそのステージを目撃し、すっかり気に入ってしまったのですが、現実の厳しさを直視しつつ、それを受け入れ、なおかつ前を向くような歌詞が心に響いてくると同時に、シンプルでエッジの効いたサウンドもカッコいいバンド。徐々に注目を集めているようで、これからの活躍への期待を込めてのランクインです。

4位 音のする部屋/君島大空

聴いた当時の感想は、こちら

新進気鋭のシンガーソングライター、君島大空の6曲入りのEP盤。毎回、実験精神に富んだ挑戦的な作品を作り上げている彼ですが、今回もわずか6曲ながらも、そんな彼を象徴するかの如く、挑戦的な作品がつまっています。否、6曲入りのEP盤だからこそ、逆にその挑戦心がより高まっているように感じる作品。一方で、その中で組み込まれている彼のメロウな歌声は実にポップで心地よく、この両者のギャップがまた、大きな魅力となっている作品でした。

3位 Straβe/折坂悠太

聴いた当時の感想は、こちら

こちらも毎作、傑作をリリースし続ける折坂悠太の6曲入りのEP盤。直近作「呪文」のリリースへ向けて、ベルリンで行われたセッションを収録した作品だそうで、そのため、フォーキーな作風がより強くなったサウンドに、よりバンドサウンドの色合いが強くなったような構成が魅力的。そんな中で、セッションらしい緊迫感のあるサウンドが魅力的で、折坂悠太らしい作品が並びつつも、オリジナルアルバムとはまた異なる彼の魅力を感じさせる、そんなEP盤になっていました。

2位 観天望気/キセル

聴いた当時の感想は、こちら

こちらは実に約7年5か月ぶりとなるキセルのニューアルバム。かなり久々の新譜となったのですが、アコギとピアノというシンプルな構成を軸としつつ、ジャズや民謡、ラテン、さらにはエレクトロの要素までを取り込みつつ、独特の浮遊感を持たせた楽曲の数々が実に魅力的。特にコロナ禍の中で、兄辻村豪文が松本へ引っ越し、民謡を取り入れた宅録プロジェクトを立ち上げたりしたそうですが、そんな影響がアルバムにも強く感じさせる作品に。すっかりベテランバンドの彼らですが、その中でも最高傑作かも、と言えるだけの内容で、あらためてキセルの魅力を確認できた1枚でした。

1位 Gen/星野源

聴いた当時の感想は、こちら

3位に折坂悠太、4位に君島大空がランクインしているように最近、男性シンガーソングライターの活躍が目立ちます。今回、ベスト5入りとはなりませんでしたが、小袋成彬の新譜も候補の1枚でした。彼らはいずれも、ポップなメロを聴かせつつ、実験性を兼ね備えたポップスを聴かせてくれるのですが、彼らと同じ土俵に立ちつつ、しっかり「お茶の間レベル」でも通用する楽曲を書いているのが彼、星野源。実に6年半ぶりとなる新譜では、ただ、そんな「お茶の間レベル」のポップを書きつつも、むしろあえてわかりやすさから距離を置いたような挑戦的な作品が目立ち、彼の本職、シンガーソングライターとしての矜持を感じさせるアルバムとなっていました。文句なしに星野源のすごみを感じさせる傑作でした。

あらためて1位から5位まで並べると・・・

1位 Gen/星野源
2位 観天望気/キセル
3位 Straβe/折坂悠太
4位 音のする部屋/君島大空
5位 あばら/鈴木実貴子ズ

ちなみに上半期、ベスト盤候補の枠外で最もはまったアルバムがあり、それが、「Makihara Noriyuki Concert 2024 “TIME TRAVELING TOUR” 2nd Season ~Yesterday Once More~/槇原敬之」。90年代の彼の曲のみ選曲したライブツアーの模様を収録したライブアルバム。もちろん、過去作のベスト的な選曲ですし、また、ポップミュージシャンの彼は、ライブとはいってもオリジナルと大きく異なるアレンジにもなっていないため、私的ベストの対象外ですが、それを差し引いても、神がかった90年代の彼の名曲の数々に、聴くだけで涙した文句なしの内容。ともすれば、向こう10年で一番はまった・・・といったくらいのレベルかもしれません。そのため、ここであえて備忘的に、特別枠ということで。

ほかのベスト盤候補は・・・

Zatto/小袋成彬
Music For Walking(Out Of The Woods)/ラブリーサマーちゃん
Luminescent Creatures/青葉市子
SOME BUDDY/礼讃
第八作品集『無題』/downy
ファンクザウルスLP/ファンクザウルス

正直、全体的に傑作はさほど多めではなかったようにも思います。一方で、ベスト盤にあがったアルバムについては候補作も含めて、どれもベスト5入りしてもおかしくない傑作ばかりで、そういう意味で濃度が濃かったようにも思います。また、目立つのはシンガーソングライター勢の活躍で、特に男性陣は、ベスト5中3枚まで男性SSWでしたし、さらには小袋成彬も候補作に。女性SSWも、ラブリーサマーちゃんや青葉市子など、バンド勢よりもSSW勢の活躍が目立ちました。下期もこの傾向が続くのか、それとも、バンド勢や、今回、ベスト盤候補も含めて顔をのぞかせなかったHIP HOP勢からも傑作がリリースされるのか・・・下期の動向も注目です。

2007年 年間1 
2008年 年間1  上半期
2009年 年間1  上半期
2010年 年間1  上半期
2011年 年間1  上半期
2012年 年間1  上半期
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2015年 年間1  上半期
2016年 年間1  上半期
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2020年 年間1  
上半期
2021年 年間1  上半期
2022年 年間1  上半期
2023年 年間1  上半期
2024年 年間1  上半期

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2025年8月 7日 (木)

1位返り咲き

今週のHot Albums

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

見事1位に返り咲きです。

今週1位はMrs.GREEN APPLE「10」が先週の2位からランクアップ。2週ぶりの1位返り咲き。ストリーミング数及びダウンロード数は4週連続で1位となっています。ちなみにMrs.GREEN APPLEは他に、「ANTENNA」が6位からワンランクダウンの7位、「Attitude」が10位からワンランクアップの9位にランクインし、今週も3作同時ランクイン。「ANTENNA」は通算46週、「Attitude」は通算34週目のベスト10ヒットとなっています。

2位は韓国の女性アイドルグループIVE「Be Alright」が初登場。日本盤としては3作目となるEP。CD販売数1位、ダウンロード数3位。オリコン週間アルバムランキングでは初動売上16万5千枚で1位初登場。直近作の韓国盤EP「IVE EMPATHY」の初動5千枚(10位)よりアップ。

3位はSnow Man「THE BEST 2020-2025」が先週から同順位をキープ。これで通算18週目のベスト10ヒット&ベスト3ヒットとなります。

今週、4位以下には初登場盤はなし。また、ロングヒット盤もMrs.GREEN APPLEの2作のみとなります。


今週のHeatseekers Songs

https://www.billboard-japan.com/charts/detail?a=heat_seekers

今週のHeatseekers Songsは、先週までのONE OR EIGHT「365」に代わり、HALVES「嫌々」が1位獲得。Halvesは英語で双子のことですが、HALVESはその名の通り、男性の双子兄弟によるユニット。TikTokを中心に活動しているそうで、兄が油絵を書き、弟が楽曲を制作しているユニットだそうです。本作がTikTokで話題となり、見事、Heatseekersで1位獲得となりました。


今週のニコニコVOCALOID SONGS

https://www.billboard-japan.com/charts/detail?a=niconico

ボカロチャートは先週に引き続き、今週も山本「乳首なぞなぞ」が1位獲得。2位もDECO*27「チェリーポップ」が先週に引き続きランクイン。3位はなぎそ「いますぐ輪廻」が初登場でベスト3入りとなっています。

今週のHot Albums&Heatseekers&ボカロチャートは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2025年8月 6日 (水)

上位にはまたアイドル系が並ぶ

今週のHot100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

今週、また上位にはアイドル系がならぶチャートとなりました。

まず1位には秋元康系女性アイドルグループ乃木坂46「Same numbers」が初登場。CD販売数1位、ダウンロード数10位、ラジオオンエア数6位。オリコン週間シングルランキングでは初動売上59万5千枚で1位初登場。前作「ネープルオレンジ」の初動48万4千枚(1位)からアップしています。

2位は韓国の男性アイドルグループENHYPEN「Shine On Me」がランクイン。CD販売数2位、ダウンロード数18位、ラジオオンエア数1位。オリコンは同曲も収録されたシングル「宵-YOI-」が初動売上45万枚で2位初登場。前作「結-YOU-」の初動37万枚(2位)からアップしています。

3位は先週2位のHANA「Blue Jeans」がワンランクダウンながらもベスト3をキープ。特にストリーミング数、動画再生回数共に3週連続の1位となっています。HANAは「Rose」も今週9位から6位にアップ。こちらは18週連続のベスト10ヒットを記録しています。

続いて4位以下の初登場曲ですが、今週8位に男性アイドルグループ7m!n「JOY!」がランクイン。CD販売数3位。本作がデビューシングルとなります。オリコンでは初動売上1万3千枚で8位に初登場しています。

またベスト10圏外からの返り咲きとして今週、Mrs.GREEN APPLE「breakfast」が先週の13位から10位にアップ。2週ぶりのベスト10返り咲きとなり、またベスト10ヒットを通算8週としています。Mrs.GREEN APPLEは、他に「クスシキ」が10位から5位にアップ。一方「Carrying Happiness」が4位から9位にダウン。今週は3曲同時ランクインとなっています。ちなみに「クスシキ」は18週連続のベスト10ヒットになりました。

なお、先週2曲同時にランクインしてきた映画「鬼滅の刃」主題歌ですが、今週、LiSA「残酷な夜に輝け」が5位から4位にアップした一方、Aimer「太陽が昇らない世界」は11位にダウンと、わずか1週でベスト10圏外となってしまいました。ただ、「残酷な夜に輝け」もダウンロード数が2位となっている一方、ストリーミング数9位、動画再生回数11位と伸び悩んでおり、以前ほどのヒットは見込めないかも?今後の動向に注目されます。

今週のHot100は以上。明日はHot Albums&Heatseekers&ボカロチャート!

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2025年8月 5日 (火)

2025年上半期 洋楽ベスト5

例年より発表が少し遅くなってしまいましたが、上半期の私的アルバムベスト5。まずは洋楽編です。

5位 Cowards/Squid

聴いた当時の感想は、こちら

イギリスのポストロックバンドによる新作は、「悪」をテーマとした作品。ニューウェーヴやレトロなギターロック、サイケなどの要素を取り入れ、凝ったサウンドを展開しつつも、全体的にはポップに聴かせるスタイルは、「悪」をテーマにしつつ、どこか「暗いおとぎ話」のようなファンタジックさも。ポストロックらしい複雑さを持ちつつ、一方で聴きやすいポップスさも持ち合わせ、さらにロックバンドらしいダイナミズムも持ち合わせた傑作アルバムでした。

4位 Glory/Perfume Genius

聴いた当時の感想は、こちら

リリースするアルバムが、毎作、年間ベストクラスの傑作となっているPerfume Geniusの新作が、またもや上半期ベストにランクイン!今回のアルバムは彼のアルバムでのテーマ「身体とその崩壊、家庭生活と愛、逃れられない歴史と傷」を描きつつ「苦難を越えた先で、過去に起きたすべてと向き合いながらも、静かで未知の場所で生きることを学ばなければならないという」新しい視点が描かれているということですが、静と動をダイナミックに行き来するようなサウンドに、美しい歌声、メロディーが大きな魅力。今回もグッと聴き入ってしまう作品でした。

3位 45 Pounds/YHWH Nailgun

45pounds

聴いた当時の感想は、こちら

HIP HOP隆盛の中、すっかり元気をなくしているアメリカのロックシーンですが、そんな中、今年、俄然注目をあつめたのが彼ら。メタリックさを感じるエッジの効いたサウンドに、トライバルの要素を取り入れつつ、複雑さも感じさせるリズム、ドローン的でもあり、ハードコアの要素もあるヘヴィーなボーカルスタイルながらも、非常に凝ったサウンドメイキングが魅力的な、独特な楽曲を聴かせてくれています。アルバム全10曲入り21分という短さながらも、複雑に展開される構成が魅力的な作品。こういうバンドが出てくるあたり、アメリカのミュージックシーンの奥深さを感じてしまいます。

2位 Sinister Grift/Panda Bear

聴いた当時の感想は、こちら

Animal Collectiveのメンバーによるソロアルバム。いままでも何作かアルバムをリリースしており、いずれも傑作アルバムでしたが、そんな中でも特に最高傑作とも言えるのが今回の作品。基本的に懐かしさを感じさせるポップスを軸にしつつも、美しいコーラスラインとメロディーが絶妙に絡み合ったドリーミーなポップやサイケなサウンド、さらにはレゲエの要素を取り入れた曲などバラエティーに展開。いつまでも聴き続けたいと思わせてくれるような、そんな傑作アルバムでした。

1位 EUSEXUA/FKA Twigs

聴いた当時の感想は、こちら

こちらもアルバムをリリースする毎に、ベストアルバムに顔を覗かせるFKA Twigsの新作。傑作揃いのアルバムの中でも今回は特に、彼女の最高傑作ともいえる内容だったと思います。四つ打ちのダンスビートを軸として、UKガラージやトランス、メタリックなサウンドなどエッジの効いた疾走感あるサウンドを聴かせてくれたかと思えば、一方では幻想的なナンバーやキュートともとれるポップな曲、さらには日本語のラップまで登場してきます。そしてラストはスケール感あるR&Bの楽曲をしっかりと歌い上げるという構成も見事。ポップと挑戦心をしっかりと両立させた傑作アルバムとなっていました。

そんな訳で上半期ベスト5を並べると

1位 EUSEXUA/FKA Twigs
2位 Sinister Grift/Panda Bear
3位 45 Pounds/YHWH Nailgun
4位 Glory/Perfume Genius
5位 Cowards/Squid

ほかのベスト5候補を並べると

The Human Fear/Franz Ferdinand
CRITICAL THINKING/MANIC STREET PREACHERS
Constellations For The Lonely/Doves
For Melancholy Brunettes(& sad women)/Japanese Breakfast
Radio DDR/Sharp Pins
SABLE,fABLE/Bon Iver
Lucro Sucio; Los Ojos del Vacio/The Mars Volta
hexed!/aya
10/SAULT
Tall Tales/Mark Pritchard&Thom Yorke

昨年は、全体的に傑作が少なかった1年でしたが、今年上半期は、かなり傑作のリリースが多かったように思います。もっとも、昨年も上半期の段階では傑作が多い・・・といった印象を受けていたので、年間を通じては、まだどうなるかわからないのですが・・・。ただ、昨年は、上期の段階で頭ひとつぬけた傑作はなかった一方、今回は、特に1位から3位のアルバムは明らかに頭ひとつとびぬけた傑作だったと思います。下期もどんな傑作が出てくるのか、楽しみです。

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2025年8月 4日 (月)

奇妙な楽器で楽しいパフォーマンス

全国47都道府県ひとりコンサート 明和電機★UMEツアー2025

会場 大垣市スイトピアセンター 音楽堂 日時 2025年7月24日(木) 18:30~

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中小企業に擬態したスタイルで、「電気」で動くユニークでアバンギャルドな楽器を生み出し、自らのパフォーマンスを行うユニット、明和電機。今回、そのライブツアーに足を運んできました。今回のコンサートツアーは、タイトルの通り、明和電機の社長ひとりが、トランクにおさまるよう、コンパクトにまとめ上げた楽器一セットを、スズキアルトラパンにつめこみ、ひとりだけで全47都道府県を回りライブを行う、というスタイルでのライブ。ちなみにタイトルの「UME」とは、松竹梅の「梅」で、ゲストも参加して大規模に行うライブが「松」、数人のサポートだけで行う中規模なライブが「竹」、社長一人だけで行うライブが「梅」という分類だそうで、今回は社長一人だけでライブを行うライブツアーなので「UMEツアー」という名前だそうです。

会場には6時に入りましたが、ステージ上では楽器の調整を行っている人が・・・よく見ると、社長自ら、客入れを行いつつ楽器の調整を行っていました。客入れの最中にミュージシャン本人がステージ上で準備を行っているって、昔のKANちゃんのピアノ弾き語りライブ以来です(笑)。

時間となり、社長が一度舞台袖に引っ込んだ後、すぐに再び登場してライブスタートとなりました。最初のアナウンスで、この日の写真・動画撮影は自由で、SNSなどで自由に拡散してください、というアナウンスが。ということで、写真もこの日は撮りまくりました。

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まず最初はパチモクを背中にセットしての登場。指パッチをしながら木魚がビートを刻むという、明和電機らしいシュールなオープニングからライブはスタートします。

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基本的に明和電機は、ユニークな楽器制作が活動の主体、ということで、まずはこの日持ち込まれたユニークな楽器の紹介からスタート。社長自ら、楽器を説明していきます。

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また、その後は社長が作成し、「おもちゃ」として販売されている楽器の紹介。いわばプロモーションとなります。まずは明和電機の楽器で一番有名(?)なオタマトーンの紹介。オタマトーンを使ってラピュタでおなじみの「君をのせて」を聴かせてくれます。

続くSUSHI BEATの紹介の時にはなんと電池切れというトラブルが。ここらへんのトラブルもこのUMEツアーならではな感じ。急いで電池を補充し、「SUSHI GO!」が披露されました。

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次はゴムベースの紹介。ゴムを筐体に巻き付けただけのシンプルな楽器ですが、アンプも内蔵されており、馬鹿にできない本格的な音が出てくるのがおもしろいところ。このゴム1本でYouTubeにアップした映像が話題となり全米を制覇し、さらに日本に凱旋して武道館ライブ・・・・・・・という体で「ゴムベースの歌」へ。ジミヘンばりのゴリゴリのベースサウンドで、会場からは(社長が促した)大歓声があがり、この瞬間、会場は1万人収容の武道館と化しました(笑)。

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続いてはサバオの登場。もともとはかなりシュールな外見だったのですが、トランクに詰め込まれて四角くなり、かなりかわいい姿となりました。

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さらにこのサバオに髪と耳をつけたサバオのママが登場。マとミとモだけを使って曲を作ったという実験的な「ママミミモミモミ」を裏声で歌い上げます。その後は一度、社長は舞台袖へ。ここで機械だけの演奏によるインスト曲「獏の歌」が流れます。地球から人間が滅びた後の風景をモチーフにしたシュールなステージとなりますが、ある意味、明和電機らしいパフォーマンスとなりました。

そしてここからは後半戦。シンガーソングライターとしての側面も持つ明和電機ですが、このたび三協アルミのCMソングを手掛けたそうで、三協アルミのCMソングも聴かせてくれます。途中、「アルミのドア!窓!車庫!」という歌詞を、みんなで歌ってくださいという呼びかけも。ただ、歌いにくいので「ド!マ!シャ!」でいいですよ、という話から、富山公演のエピソードへ。富山は三協アルミの本社があり、三協アルミの社員が最前列に駆け付けたそうですが、「ド!マ!シャ!」でいいですよ、といったら、社員みんなから「そこはちゃんと歌ってください」というクレームが入ったとか(笑)。愛社精神を感じます。そのCMソングで盛り上がった後は、「白い乾電池」でしんみり聴かせ、シンガーソングライターとしての本領を発揮してくれます。

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さらにこのツアーのテーマ曲である「ジョリジョリジャーニー」へ。この日のライブアイテムである電球型ペンライトをみんなで振り回し、社長自らも振り回します。この電球型のライト、5年くらい前までは実現不可能だったらしいですが、LEDが普及して、球の部分がプラスチックで安価に作れるようになったため、ライブグッズにも出来るようになったそうです。私も買って、電球を振り回しました。

この日は「乾電池」を演って、電球ときて、この2つを結びつける電線が必要、ということで「結線のトレイン」へ。ここでトラブル発生。社長の前に設置されている、各楽器を手動で演奏するコントローラーが上手く作動しなくなってしまいます。このまま楽器の演奏なしで・・・と思いきや、なんとかトラブルは解決。途中、観客席から「社長、がんばれ!」の合唱も起こりつつ、無事、演奏はスタートしました。

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そしてラストは「明和電機社歌」へ。この日、公式グッズである工員服を買ったファンはステージ上に上がって一緒に踊れるという特典があり、この日も何人もの工員服を着たファンがステージ上にあがっていました。みんなで「社歌」の振り付けで踊りながら、大盛り上がりでライブは幕を下ろしました。

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通常は90分のセットでしたが、途中トラブルがあった影響か、100分強程度でのステージとなりました。この後、社長はそのまま撤収作業。撤収作業中は撮影も自由、社長をバックに撮影して、ツーショットもOK、ということで、みんなステージ上に集まってきました。撤収作業もそのまま眺めていたかったのですが、この日のライブは大垣。かなり遠い場所ということで、最初だけちょっと見て、そのまま会場を後にしました。

明和電機のライブは、こういうホールでのライブを見たのは今回はじめてだったのですが、楽しかった!!この奇妙な楽器で奏でられる音色も楽しいですし、なによりも社長のパフォーマンスも最高に楽しいステージでした!難しいこと抜きに笑顔になれる、そんなステージ。あまりしょっちゅうライブを行うミュージシャンではないので、次は何時見れるのかわかりませんが・・・また是非ともライブは足を運びたいなぁ!とても満足した心持ちで会場を後にすることが出来ました。

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2025年8月 3日 (日)

バンド色が濃くなった区切りのアルバム

Title:スペシャル
Musician:スカート

デビュー15周年を迎えた澤部渡のソロプロジェクト、スカートがリリースする、メジャーでは5枚目、インディーズを含めると10枚目となるニューアルバム。いろいろな観点からも区切りのアルバムといっていい作品。もともと、決して派手さはないものの、聴いているうちに心に染み入ってくるような良質なポップスを書き続けている彼ですが、今回のアルバムもそんな非常に良質なポップソングが並ぶアルバムに仕上がっていました。

作品は非常に力強いバンドサウンドが特徴的の「ぼくは変わってしまった」からスタート。変わっていく自分を認識しながら前に進んでいこうとする、区切りのアルバムの1曲目にふさわしい楽曲なのですが、もともとこの曲は同窓会に出席した時に思いついた歌詞だとか・・・確かに、こういう気持ちになる理由はわかるような気がします・・・。その後もギターロック色の強い「緑と名付けて」へと続きます。今回のアルバム、インタビューによるとバンドメンバー全員がアイディアを出し合って作ったアルバムだそうで、澤部渡のソロプロジェクトながらも、バンドとしての色合いを強く感じさせる内容となっています。

その後も、このギターサウンドを主軸としながらもバラエティー富んだ音楽性が特徴的。ワウワウギターが入ってソウル風のサウンドが魅力的な「遠くへ行きたい」やアコギの弾き語りでフォーキーに聴かせる「トゥー・ドゥリフターズ」、ファンキーなギターが特徴的な「期待と予感」、メロウなギターが印象に残る「四月怪談」、ラストのタイトルチューン「スペシャル」はちょっと懐かしいネオアコ的なギターポップの作品となっています。

全体的には前述の通り、バンドメンバー全体で作り上げたということもあって、バンドサウンドが比較的、前に押し出されたような構成となっており、確かにこの手のソロ作にありがちな「宅録」的な要素は薄く、バンド色の強い作風に仕上がっています。オルタナティブ系ロックのギターサウンドがメインとなっている中、ソウルやファンク、フォークやネオアコなど多彩な音楽性を垣間見せており、この点、澤部渡の幅広い音楽的素養を感じさせる内容にもなっていました。

ちなみに今回のアルバムではコーラスとして「トゥー・ドゥリフターズ」ではSmooth Aceの重住ひろこ、「ひとつ欠けただけ」ではHomecomingsの畳野彩加、さらに「スペシャル」では柴田聡子がコーラスとして参加。多彩なゲストもアルバムのひとつの魅力となっています。

ただ・・・確かに良質なポップソングが並んでいるアルバムであるには間違いないのですが、全体的にどうしても地味という印象は否めず。ここらへん、女性ボーカルをゲストとして参加させたのも、少しでも華を持たせるためだったのかなぁ、と感じなくもないのですが・・・。傑作であることは間違いないと思うのですが、もうちょっと楽曲としてインパクトが欲しいかなぁ・・・とも感じてしまいました。まあ、この地味さもひとつの彼の味ではあるのかもしれませんが。

評価:★★★★★

スカート 過去の作品
CALL
20/20
トワイライト
アナザー・ストーリー
SONGS
Extended Vol.1


ほかに聴いたアルバム

jaguar hard pain(1944-1994)/THE YELLOW MONKEY

本作は、1994年にリリースされた彼ら3枚目のアルバムを、リリース30周年記念としてリマスターされたもの。Disc2として当時のツアー音源が、Disc3にはBlu-rayとして1994年7月17日に日比谷野外大音楽堂で行われた「JAGUAR HARD PAIN ENCORE TOUR'94 ~つわものどもの熱帯夜~」のライブ映像が収録されています。本作ではオリコン最高位28位を記録。次作「smile」が初のベスト10ヒットを記録し、まさにバンドとしてブレイク寸前だった時期にリリースされた本作。ちなみに内容はコンセプトアルバムになっており、吉井和哉も公言しているそうですが、デヴィット・ボウイの「ジギー・スターダスト」からの影響の強いアルバムとなっています。

ただ、そんなバンドとして勢いの出てきた時期の曲だけに、楽曲としてはかなり完成度の高く、彼らの脂ののった状況を感じさせます。非常にムーディーでエロチックな雰囲気を漂わせながらも、歌謡曲の要素を入れつつ、しっかりとロックとして成立させているその内容は、その後のTHE YELLOW MONKEYとしてのスタイルを完成させていることを感じます。ブレイク前夜らしい、バンドとしての上り調子を強く感じさせる傑作アルバムでした。

評価:★★★★★

THE YELLOW MONKEY 過去の作品
COMPLETE SICKS
イエモン-FAN'S BEST SELECTION-
砂の塔
THE YELLOW MONKEY IS HERE.NEW BEST
9999
Live Loud
30Years 30Hits
THE NIGHT SNAILS AND PLASTIC BOOGIE(夜行性のかたつむり達とプラスチックのブギー)
Sparkle X

WHO IS BENZIE?/浅井健一

ご存じ、元Blankey Jet Cityのボーカリスト、ベンジーこと浅井健一のベストアルバム。ソロでのベストは2011年にリリースした「CORKSCREW WORLD -best of Kenichi Asai-」以来のアルバムとなります。Blankey Jet Cityの「2人の旅」やAJICOの「キティ」のセルフカバーも収録した本作。彼自身がセレクトしたベスト盤だそうで、初心者向けにも代表曲をほどよく網羅した構成になっています。確かに、独特のくすんだ世界観に色気を感じさせるボーカル、そしてヘヴィーなバンドサウンドは非常にカッコいいものを感じます。ただその反面、哀愁たっぷりのメロは良くも悪くも似たようなタイプの曲が多く感じてしまいますし、ベスト盤の割りにはインパクトもちょっと弱い感じも・・・。ソロ活動後、あと一歩惜しいといった感じのアルバムが目立つ彼ですが、ベスト盤に関しても同様の印象を抱いてしまいました。

評価:★★★★

浅井健一 過去の作品
Sphinx Rose
PIL
Nancy
METRO(浅井健一&THE INTERCHANGE KILLS)
Sugar(浅井健一&THE INTERCHANGE KILLS)
BLOOD SHIFT
Caramel Guerrilla
Mellow Party -LIVE in TOKYO-(浅井健一&THE INTERCHANGE KILLS)
OVER HEAD POP

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2025年8月 2日 (土)

最も勢いにのる彼らの最高傑作

Title:LEGION
Musician:Creepy Nuts

2024年、最も話題となったミュージシャンの一組といったら、間違いなくCreepy Nutsでしょう。シングル「Bling-Bang-Bang-Born」がアニメ主題歌にもなって大ヒットを記録。続くシングル「オトノケ」も同じく大ヒットを記録。それまでも一定以上の人気のあったミュージシャンでしたが、この2曲はお茶の間レベルの大ヒットを記録。Creepy Nutsという名前が全国的に知れ渡る結果となりました。

本作はそれに続くオリジナルアルバム。大ヒットした2曲のシングルはもちろん、こちらも2024年に大きな話題となったドラマ「不適切にもほどがある!」主題歌にもなった「二度寝」も収録。まさに勢いにのりまくる彼らですが、アルバムの内容も、まさにそんな勢いのあるミュージシャンにピッタリの、脂ののったという表現がピッタリくる彼らの代表作になること間違いなしの作品となっていました。

まずDJ松永の書くビートが非常に凝った内容となっていて耳を惹きます。彼らの今の立ち位置を綴った「中学22年生」は音をそぎまくったシンプルなビートからスタート。先行シングルとなっている「doppelganger」も疾走感あるテクノ風のビートが耳を惹きます。日本風なサウンドを取り入れているタイトルそのまま「japanese」に、「エマニエル」はタイトル通り、どこかエロチックなサウンドが耳を惹きます。

大ヒットした「オトノケ」はまさにそんな複雑に展開するビートが魅力的なナンバー。一方では声色を巧みにかえてドラマチックに展開していくR-指定のラップも楽曲の中で大きな魅力となっており、バラエティーに富んだラップがあるからこそ、最後まで全く飽きさせず楽曲は展開していきます。そんなラップについてラストナンバーでタイトル曲の「LEGION」で自慢気に語っていますが、その自負心も十二分に納得できる内容と言えるでしょう。

ただ、全体的な楽曲のバリエーションという意味では前作の方が上だったかもしれません。楽曲は基本的にテンポのよいエレクトロビートが主体であり、ある意味、一本調子とも言える内容。DJ松永の書く凝ったビートと、R-指定のバラエティーあるラップのおかげで決して中だるみとかにはなっていないものの、よくよく聴くとあまりバラエティーに富んだ構成といった感じにはなっていません。

もっとも、本作に関してはそれをはるかに上回る楽曲の勢いがあり、そんなことは全く気にならず一気にアルバムを楽しむことが出来る内容になっていたと思います。まさにミュージシャンとして脂にのっている、向かうところ敵なしという状況がピッタリくるようなアルバムと言えるでしょう。文句なしの彼らの最高傑作と言える作品に仕上がっていました。

ちなみに彼ら、いつも「ラジオ盤」と称して、楽曲の間にトークを入れてくるCDをリリースしてくるのですが、今回は収録曲が多くなったということもあり(とはいえトータル40分程度なのですが)、ラジオ盤は2枚組の構成になって、Disc2は70分にも及ぶラジオトークが収録されています。ただ・・・このラジオトークの方はどうにもつまんない・・・楽曲の間に短いトークを展開するから楽しめるのであって、決して上手い話術を持っている訳でもない彼らのトークを70分以上聴かされるのはファンじゃないとちょっと厳しいかもしれません・・・。本人たちもちょっとラジオトークについてはいまひとつと思ったのか、「もうやらない」と最後に言っていたので、ひょっとしたらラジオ盤は今回が最後になる、かも・・・?

評価:★★★★★

Creepy Nuts 過去の作品
クリープショー
かつて天才だった俺たちへ
Case
アンサンブル・プレイ


ほかに聴いたアルバム

Ken Hirai 10th Anniversary Tour Final at Saitama Super Arena/平井堅

Kenhirai10live

2021年のアルバムリリースから、本人の活動がほとんどなく、事実上の活動休止状態だった平井堅。ただデビュー30周年となる今年、5月にライブ「Ken's Bar」を開催し、久しぶりに公の場に姿をあらわしました。その久々のライブに先立ち、配信でリリースされたのが本作。2005年7月17日にさいたまスーパーアリーナで行われたライブの模様を収録したアルバム。もともと映像作品としてリリースされていましたが、久々のライブ開催に合わせて、配信での音源リリースとなりました。デビュー10周年の記念ライブということで、当時のベスト盤的なセレクトでのライブとなっています。ただ、残念なことにこれ以降、大きなヒット曲があまりないだけに、この選曲が今でもほぼベストに近いのが残念なのですが・・・。伸びやかで色気のある歌声はやはり魅力的で、ベスト盤的に楽しめるアルバムになっています。ちなみに当時、「愛・地球博」開催中で、なぜか、「Love Love Love」の途中でモリゾーとキッコロがゲスト出演(!)。個人的にかなり懐かしさを感じてしまいました・・・。

評価:★★★★★

平井堅 過去の作品
FAKIN' POP
Ken's Bar II
Ken Hirai 15th Anniversary c/w Collection '95-'10 ”裏 歌バカ”
JAPANESE SINGER
Ken's Bar III
THE STILL LIFE
Ken Hirai 20th Anniversary Special!! Live Tour 2016
Ken Hirai Singles Best Collection 歌バカ2
あなたになりたかった

†/ドレスコーズ

10枚目となるドレスコーズのニューアルバム。タイトルは十字架の記号ですが、読み方は自由とか。ちなみに志磨遼平自身は「テン」と読むそうです。昨年、自叙伝「ぼくだけはブルー」を発売した彼ですが、本作はその執筆をきっかけに再燃したロックンロールへの熱を詰め込んだ作品だとか。確かに前半に関してはガレージサウンドを前面に押し出したロックンロールな作品が並びます。一方、中盤以降は、彼らしいレトロポップを嗜好するキュートなポップチューンの並ぶ作品に。途中、軽快なロックンロールを入れつつも、全体を通してみると、やはりポップス色も強いアルバムに仕上がっていました。全体的にはシンプルな楽曲が多く、志磨遼平らしいアルバムとも言えるのですが、ただ一方、それだけにちょっと目新しさには欠けて、核となるような楽曲がなかったような印象も受けます。最近のアルバムの中ではちょっと印象が薄く感じてしまったアルバムでした。

評価:★★★★

ドレスコーズ 過去の作品
the dresscodes
バンド・デ・シネ
Hippies.E.P.

オーディション
平凡
ジャズ
バイエル(Ⅰ.)
バイエル(Ⅱ.)
バイエル
ドレスコーズの音楽劇《海王星》
戀愛大全
式日散歌

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2025年8月 1日 (金)

Bruce Springsteenの決意

Title:Land Of Hope&Dreams EP
Musician:Bruce Springsteen

Landofhopedremas

今、世界の民主主義が危機に陥っています。排外主義的で、反知性的かつ反科学的な大統領が世界に混乱を巻き起こしています。もちろんアメリカのトランプ大統領のことですが、日本においても先日の参議院選挙で同じく排外主義的で反知性、反科学的な政党が多数の議席を確保するなど、非常に危うい状況に陥っています。

トランプについては、選挙の時、アメリカでは多くのミュージシャンが反トランプを唱えていました。ただ、残念なことに正直、トランプが大統領に就任した後は、その政策についてのミュージシャンからの批判はあまり多くないように感じます。ひょっとしてまだ就任直後なので、マナー的に批判は控えているのかもしれませんし、なんだかんだいってもアメリカの大統領である以上、公での批判は控えているのかもしれません。ただ、トランプは大統領就任後、自分に批判的な人物に対して、厳しい処置を行っており、そういうことを恐れているのならば、情けなく感じてしまいます。

しかし、そんな中、アメリカを代表するロックミュージシャン、Bruce Springsteenがライブにおいてトランプの批判を行ったということで大きな話題となりました。今年5月14日にイギリスマンチェスターで行われたライブツアー「Land of Hopes and Dream Tour」初日。ライブのMCにおいて、痛烈なトランプ批判を行い大きな話題となりました。それに対してトランプは彼に対して批判だけではなく、捜査をちらつかせる、権力者として非常に危険な発言を行っています。もちろん、そんなことに怯むボスではなく、その後、このMCを含んだライブEPをデジタル配信。その主張をより広くアピールしています。そのライブEPが今回紹介する本作です。

該当するMCは、「Land of Hope and Dreams(Introduction)」「My City of Ruins(Introduction)」として収録されています。そのMCについて、オリジナルはこちらに、また和訳はこちらに掲載されていました。その演説はゆっくりと、そして力強く語りかけるように話されています。ゆっくりかみしめるような演説のため、比較的聴き取りやすい演説とはいえ、さすがに英語を聴いただけですべて理解できるような英語力は私はないのですが、ただ、非常に感情のこもった演説であり、聴いているだけでその言葉が胸にうつような、感動的ですらある演説となっていました。

そしてこのライブEPで選ばれた曲もまた、非常にメッセージ性の強い楽曲が並んでいます。タイトルともなっている「Land of Hope and Dream」は彼の代表曲のひとつなのですが「この列車は聖人も罪びとも、勝者も敗者も運んでいる」と歌われるこの曲は、まさに白人男性のみを優遇しようとするトランプに対する力強い反論となっていますし、「Long Walk Home」もブッシュ政権下のアメリカについて歌った曲で、まさにその当時と、今のトランプ政権下を重ね合わせた選曲と言えるでしょう。どちらもバンドサウンドをバックに力強く歌い上げています。

しんみりと歌い上げるソウル風バラードの「My City of Ruins」も、2001年9月11日の同時多発テロの後に、祈りの歌として歌われるようになった楽曲で、こちらも今のアメリカへの祈りをささげた曲ということでしょうか。最後にはボブ・ディランの「Chimes of Freedom」のカバーも収録されており、終始、トランプによって酷いことになろうとしているアメリカに対する力強いボスのメッセージを感じさせる選曲となっています。

演説に楽曲も含めて感動的とも言える内容。ボスのアメリカに対する深い愛情と、危機感、それと同時に人々に対する希望も綴っており、我々にとっても深く心に響いてくるライブEPとなっていました。我々日本人にとっても、全く他人事とは言えなくなってきた今の憂うべき事態。反知性・反科学的に走ってしまうのは、現代の民主主義の限界なのか、それとも、民主主義がより深化するために必要な「犠牲」なのかわかりません。ただ、ボスの言う通り、希望を失わず、乗り切っていければと思います。

これは余談ですが、トランプは大統領令を連発して、問題ある政策を実施していますが、あんなに簡単に大統領がいろいろなことが出来てしまうのって、どう考えてもアメリカの政治システムの「バグ」だと思うんですよね。今はトランプ支持者にとっては、「リベラルの連中、ざまぁ」的な感覚かもしれませんが、これ、一歩間違えて、共産主義的な人物が大統領になった場合、一気にアメリカが共産主義国家になる危険性もあると思うんですよね。実際、2016年の大統領選挙ではバーニー・サンダースみたいな社会主義的な大統領候補が一定の支持を集めたこともありましたし、決して「ありえないこと」ではないと思うのですが・・・。民主的に選ばれた大統領に間違えはないという、楽観的な今のシステムは、修正した方がいいような気がするのですが・・・。

評価:★★★★★

BRUCE SPRINGSTEEN 過去の作品
Working On A Dream
WRECKING BALL
High Hopes
1980/11/05 Tempe,AZ
Western Stars
Letter to You
Only The Strong Survive
Best of Bruce Springsteen
Japanese Singles Collection - GREATEST HITS -


ほかに聴いたアルバム

Under Tangled Silence/DjRUM

イギリスを拠点に活動をしている音楽プロデューサー、DjRUMことFelix Manuelのニューアルバム。クラシカルなピアノやストリングスに、ジャズの要素も加えて、エレクトロサウンドと融合させたサウンドが特徴的。全体的にはアンビエント色の強い作風となっていますが、終盤の「Out Of Dust」「Sycame」などはブレイクビーツを取り入れたリズミカルな楽曲もあり、バラエティーのある構成も特徴的。ゆっくり聴ける曲から、フロア志向のナンバーまで、じっくりと楽しめるアルバムになっていました。

評価:★★★★★

DjRUM 過去の作品
Meaning's Edge

Radio Free Europe 2025/R.E.M.

Radiofeerem

2011年に解散したロックバンドR.E.M.が突如リリースした5曲入りのEPは、彼らが1981年にリリースした「Radio Free Europe」を中心に、同作のリミックスに「Sitting Still」「Wh.Tornado」のデモバージョンが収録された作品となっています。ラジオ・フリー・ヨーロッパ/ラジオ・リバティの放送開始75周年と5月3日の「世界報道自由デー」を記念してリリースされたそうですが、このラジオ・フリー・ヨーロッパ/ラジオ・リバティは、東ヨーロッパからロシアを主に対象として、西側の民主主義、自由思想を伝えるために放送されるものだそうです。「Radio Free Europe」は軽快なギターロックなのですが、アレンジによって雰囲気が大きく異なり、その聴き比べも楽しいEPとなっています。

ちなみにこのラジオ・フリー・ヨーロッパ/ラジオ・リバティですが、出資元のアメリカが、トランプの指示で出資引き上げを言い出しているそうで、ヨーロッパ諸国が対応を模索しているとか。こちらもトランプの政策に翻弄されているようです。今後のラジオ・フリー・ヨーロッパ/ラジオ・リバティーの行く末が気になります。こんなことに屈せず、頑張ってほしいところですが・・・。

評価:★★★★★

R.E.M. 過去の作品
Accelerate
COLLAPSE INTO NOW
PART LIES,PART HEART,PART TRUTH,PART GARBAGE,1982-2011(グレイテスト・ヒッツ~パート・ライズ、パート・ハート、パート・トゥルース、パート・ガービッジ、1982-2011)

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