VOL.2も圧巻の(特にワールド・ミュージック)内容
今回は最近読んだ音楽関連の書籍の感想です。
MUSIC MAGAZINEから発刊しているディスクガイド「ミュージック・ガイドブック 2010-2024 VOL.2」。以前、同作の「VOL.1」を紹介しましたが、その第2弾。その時にも紹介しましたが、この「ミュージック・ガイドブック」シリーズは、もともと伝統あるタイトルということで、過去3回にわかって、同じタイトルのディスク・ガイドがリリースされてきたそうです。今回は、1994年以来、約30年ぶりとなる発刊。タイトル通り、2010年から2024年にかけてのアルバムがジャンル毎にわけて紹介されています。「VOL.1」同様、今回もB5サイズ全344ページという、圧巻の内容となっています。
前回はエレクトロミュージックやロック、メインストリーム・ポップ、東アジアの音楽などが紹介されてきました。今回は、HIP HOPからスタートし、ジャズ、そして後半を占めるのが世界各国のワールド・ミュージックとなります。
今回のディスクガイドでなんといっても真骨頂と言えるのは、本書の後半を占めるワールド・ミュージックのディスクガイドでしょう。アフリカからスタートし、ブラジルをはじめとした南米地域、レゲエをはじめとするカリブ海地域に、中東、東南アジア地域、さらにはギリシャやポルトガルなどのヨーロッパまで、まさに世界中のポピュラーミュージックがズラリと並んでいます。
この世界の音楽を、こうやってディスクガイドとして聴くと、あらためて世界というのはなんと広いのか、ということを感じさせますし、その地域ごとに豊富なポピュラーミュージックの文化が花開いているという事実を感じ、この世界の音楽の幅広さについてあらためて実感させられます。
章毎に、それぞれのジャンルのこの約20年間の歴史が紹介されているのですが、特にワールド・ミュージックの各国のポピュラーミュージックの歴史については勉強になります。どの国も米英のポップスの影響を受けつつ、しっかり独自の音楽文化が培われており、あらためて様々な国独自のポピュラーミュージックへの興味を駆り立てられます。正直、聴きなれない固有名詞も多く、かなり読みにくいのは間違いないのですが、それを差し引いても、知的好奇心を狩り立たせられるような内容と、そしてディスクガイドとなっていました。ワールド・ミュージックに興味がある方にとっては、間違いなく要チェックと言えるでしょう。
ただし、一方でHIP HOPについては正直、ちょっと物足りないのではないか、ということも感じてしまいました。特にこの約20年間、HIP HOPというジャンルは大きく変動し、様々な出来事が起こりましたが、そこを網羅しているとは言い難い内容。私もHIP HOPには詳しくはありませんが、それでもちょっと物足りなさを感じてしまいます。「VOL.1」においてもメインストリームの「売れている」音楽をかなり軽視している傾向がありますが、正直、HIP HOPに関しても、そんなMUSIC MAGAZINEの悪癖を感じてしまいました。
そんな訳で、ワールド・ミュージック好きにはお勧めしたい1冊。一方、HIP HOPに興味があれば、他のディスクガイドをお勧めしたい感もあります・・・。そこらへんの「偏り」もいかにもMUSIC MAGAZINEらしさを感じてしまうのですが・・・。ちなみに、この2冊、今回邦楽は対象外。邦楽については、後日、あらたなディスクガイドがリリースされるのでしょうか。良くも悪くもMUSIC MAGAZINEらしさを感じたディスクガイドでした。
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