Title:あばら
Musician:鈴木実貴子ズ

最近、徐々に注目を集めている、名古屋を拠点として活動する2ピースロックバンド。2012年に活動を開始し、RISING SUN ROCK FESTIVALや、フジロックのROKIE A GO-GOにも出演するなど、徐々に注目をあつめ、昨年、活動開始から12年を経てメジャーデビュー。本作は、そんな彼女たちのメジャーデビューアルバムとなります。
バンドなのか個人名なのか、不思議なタイトルが印象的なバンドですが、メンバーはギターボーカルの鈴木実貴子と、ドラムスの「ズ」の2人。この話をWikipediaで知って、個人的には1分くらい笑い続けてしまいました(笑)。ちなみに本人たちはもともと夫婦だったそうですが、昨年離婚。ただ、バンドのパートナーとしては引き続き活動を続けているようです。ちなみに名古屋市内でライブスペース「鑪ら場」も運営しています。
もともと、メジャーデビューに合わせてメディアなどに取り上げられる機会も増えたことから彼女たちの名前は知っていたのですが、彼女たちの曲をはじめて聴いたのは、GWに参加した今池遊覧音楽祭のステージが最初。その鬼気迫るパフォーマンスに惹かれて、一気にハマり、このデビューアルバムももちろんチェックしてみました。個人的に、現時点で一番注目しているバンドです。
まず彼女たちの最大の魅力と言えるのがなんといってもその歌詞でしょう。上手くいかない現実社会でのもがきを表現した、激白ともいえるストレートな歌詞がまずは耳に残ります。例えば印象的なのが「かかってこいよバッドエンド」で
「正面衝突やったろか
バッドエンドにいったろか
右手にスパナでいったろか
かかってこいよバッドエンド」
(「かかってこいよバッドエンド」より 作詞 鈴木実貴子)
と、上手くいかない現実に対して真っ向から立ち向かっていこうというスタイルを歌い上げていますし、「36℃」でも
「所詮36度人間 もがき回り転がり、行き先はひとつ
行き先はひとつだろ」
(「36℃」より 作詞 鈴木実貴子)
のように、現実の中で苦しむ人へのメッセージとなっています。
彼女たちの歌詞で大きな特徴となっているのは、この現実社会への描写であり、思う通りにはいかない現実を、まずは真正面から捉えて、それでも前に進んでいこうという強いメッセージを感じさせます。その中でも「壊してしまいたい」みたいに、
「1ミリだってない 間違ってなんてない
望めば僕はいるよ 君のそばにいつもいるよ」
(「壊してしまいたい」より 作詞 鈴木実貴子)
と、リスナーに寄り添ったメッセージを届けてくれたりしますし、最後を締めくくる「私、天使だったな」では、そんな厳しい現実の中でも前向きな希望を感じさせるアルバムの締めくくりとなっている構成も魅力的です。
ここ最近のメッセージ性の強い女性ボーカル曲というと、女であることを前に押し出した、時として性的な描写も彷彿とさせるような楽曲がメインでしたが、鈴木実貴子の書く歌詞には、男女を問わない普遍的なメッセージ性を感じさせます。ここらへんの現実社会へのもがきという点では、かつての橘いずみを彷彿とさせる点もあるのですが、彼女の書く歌詞は、ある意味、もっと厳しく社会を描写しつつ、その現実を受け止め、さらには前向きなメッセージ性も感じらる点が大きな特徴。その力強い歌詞は、最初から最後まで聴き入ってしまい、BGMとなることを拒否していました。
さらにもうひとつ、鈴木実貴子ズの大きな魅力なのはそのバンドサウンド。鈴木実貴子のアコギとズのドラムというシンプルな2ピースバンドなだけに、かなりシンプルでタイトなサウンドが大きな魅力。アルバム音源では、サポートにあの田淵ひさ子や、LOSTAGEの五味岳久が参加するなど、バンド形式でのサウンドとなっているのですが、それでも比較的シンプルなバンドサウンドが魅力的で、ジャンル的にはオルタナ系ギターロックとなるのでしょうが、ハードコアやパンクの影響も感じさせる力強いサウンドが、前述の歌詞の世界を見事に支えています。特にアコギとドラムの2ピースなだけに、録音のバランスとして比較的ドラムを前に押し出したサウンドとなっており、それだけに、より迫力あるサウンドを聴かせてくれています。まずはそのストレートなメッセージ性が印象に残るバンドではあるのですが、その力強いメッセージに負けずにしっかりと対峙するバンドサウンドが鳴り響いているからこそ、鈴木実貴子ズの楽曲はより魅力的になっているように感じました。
結成から10年以上を経た、既に中堅バンドであるものの、まだまだ知名度も低い彼女たち。ただ、フジロック等の大きなロックフェスの出演や、メジャーデビューなどによって、今後は知名度をあげていきそう。圧倒的な個性を持ったバンドなだけに、これからの活躍が非常に楽しみです。
評価:★★★★★
ほかに聴いたアルバム
ゴールデン☆ベスト nico/nico

レコード会社共通の廉価版ベスト盤シリーズ「ゴールデン☆ベスト」。今回、ワーナーミュージックからリリースされたのは、嶋田衛と嶋田繁の双子2人組ユニット、nico。1982年にデビューし、1992年にはGARDENと改名。2000年代中盤まではコンスタントに活動を続けていたようですが、現在は事実上の活動休止状態のようです。ユニット自体は、知る人ぞ知る的なグループかもしれませんが、GARDENとしては2003年にアニメ「ポケットモンスター アドバンスジェネレーション」のオープニング「アドバンス・アドベンチャー 〜Advance Adventure〜」がスマッシュヒットを記録しているほか、なんといっても「踊る大捜査線」の主題歌「Love Somebody」への楽曲提供が有名でしょう。というか、この2曲だけで、一生、食うに困らないような気がする・・・。
そんな彼らのnico時代のベスト盤となるのですが、基本的には歌謡曲テイストが強く、いかにも時代を感じさせるシンセのアレンジも特徴的な80年代AOR。正直言って、これといった特色はない反面、楽曲としてはインパクトもあり、メランコリックなメロディーラインはしっかりと壺を抑えたものとなっています。ここらへんの癖は強くないものの、一方ではインパクトを持った王道路線の曲を書けるからこそ、ポケモン主題歌を歌ったり、あるいは大ヒットドラマ主題歌への楽曲提供へとつながったのかもしれません。良くも悪くも卒がないアルバム、という印象を受けるベストアルバムでした。
評価:★★★★
中島みゆき コンサート「歌会 VOL.1」/中島みゆき

中島みゆきが、昨年1月から5月にかけて、東京国際フォーラム ホールAと大阪・フェスティバルホールで行われたコンサートの模様から、彼女自ら11曲をセレクトしたライブアルバム。ベスト盤的なセレクトになっているほか、力強い安定したボーカルをしっかりと聴かせてくれる内容なので、ライブアルバムという以上にベスト盤的な楽しみ方が出来るアルバム。現在、既にライブツアーからは引退した彼女ですが、こういう形での単発でのライブは実施するようで、次は名古屋にも来ないかなぁ、とも思ってしまいます。チケットは争奪戦になりそうですが・・・。
評価:★★★★
中島みゆき 過去の作品
DRAMA!
真夜中の動物園
荒野より
常夜灯
十二単~Singles4~
問題集
組曲(Suite)
中島みゆき・21世紀ベストセレクション『前途』
中島みゆきConcert「一会」(いちえ)2015~2016-LIVE SELECTION-
相聞
中島みゆき ライブ リクエスト -歌旅・縁会・一会-
CONTRALTO
ここにいるよ
中島みゆき 2020 ラスト・ツアー「結果オーライ」
世界が違って見える日
Singles
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