ポピュラーミュージックを網羅した圧巻のディスクガイド
今回は最近読んだ音楽関連の書籍の感想です。
MUSIC MAGAZINEから発刊しているディスクガイド「ミュージック・ガイドブック 2010-2024 VOL.1」。もともと伝統あるタイトルだそうで、オールジャンルのディスクガイドとして、この「ミュージック・ガイドブック」、いままで1983年、88年、94年と3回にわたって発刊されてきました。1994年以降、しばらくご無沙汰だったのですが、約30年ぶりとなる発刊。タイトル通り、2010年から2024年までにリリースされたポピュラーミュージックのオールジャンルのアルバムが、ジャンル毎に整理されて掲載されています。B5サイズ全320ページというかなりのボリューム感で、とにかく圧巻のディスクガイドという印象を受けます。
これだけの量にも関わらず、VOL.2が後日リリースされており、本作では、主にエレクトロやルーツミュージック、ロック、ポップスのアルバムが収録。ある意味、ここ15年のうちもっともホットなジャンルと言えるHIP HOPはVOL.2にまわされていますし、ソウル、R&B、ジャズ、ワールドミュージックもVOL.2。ちなみに日本のポップスは対象外となっており、こちらは他にリリースが予定されているようです。
この15年におきたポピュラーミュージックの流れを、それぞれのジャンル毎に解説。そして、それぞれのジャンル毎に代表するアルバムをピックアップする構成となっています。そのため、あらためて2010年以降のポピュラーミュージックの流れについて、非常に勉強となった内容に。ともすれば普段、音楽を聴いていると、気になるアルバムや評判の良いアルバムをピンポイントで聴くケースがほとんど。そのため、点と点では優れたミュージシャンやアルバムを把握していても、そんなアルバム同士が線でつながらないようなケースが少なくありません。
今回、このガイドブックでは、まさに、そんな私が聴いてきたアルバムが、ポピュラーミュージックの流れの中でどのような位置にいるのか、ミュージシャンが作り出したサウンドはどのようなところから影響があり、どんな意味があったのか、あらためて理解できるような内容となっており、また、紹介されている近似のアルバムにも興味が惹かれるような構成になっていました。まさにポピュラーミュージックに興味がある方、特に様々なジャンルを幅広く聴いてみたいと考えている方には最適なガイドブックだったと思います。
一方、このガイドブックを読んで、最近のポピュラーミュージックシーンの中で強く感じたのが、ジャンルの細分化が激しく進んでいるという点でした。エレクトロひとつの中にジューク、フットワーク、グローカルビーツ等々、細かくジャンル分けがされています。よく言えば、様々なミュージシャンたちがシーンに登場し、様々な音楽を作り出しているとも言えるのですが、悪く言えば、これといってシーンを圧倒するようなジャンルがあらわれず、全体的に小物化してしまっている印象も否めませんでした。
また、ミュージック・マガジンらしい悪癖として気になった部分もあり、それが「売れているジャンル」に対する矮小化で、エレクトロやアンビエントなどのジャンルに関しては、ここまで詳しくジャンル分けし、分析しているのに対して、ロックやポップスに関してはジャンル分けが非常に雑。特にメインストリームポップについては「その他大勢」的なまとめ方となっており、AviciiとPharrell WilliamsとテイラースウィフトとAdeleとBring Me The Horizonが同じ項目って、ちょっとありえないような感じもします。
むしろ、他で分析しているアンダーグラウンドやサブカルチャーシーンを含むポピュラーミュージックの流れの中で、メインストリームのポップスたちがどのような影響を受けているのか、あるいは与えているのか、というのは、ポピュラーミュージックを語る中で最も重要な観点だと思いますが、この点が完全に抜け落ちているように感じます。個人的にポピュラーミュージックは大衆音楽である以上、「売れている」というのは非常に重要な要素であると思っているのですが(売れている=優れているではないとは思いますが)、以前からミュージック・マガジンの視点は、この「売れている」という要素を非常に軽視する傾向があることが気にかかっていました。このガイドブックでも残念ながら、そんなミュージック・マガジンの悪い傾向が、強く反映されてしまったように思います。
そんな点、残念な点はありつつも、圧巻のディスクガイドでポピュラーミュージックに関してあらためて新たな視点を得られたガイドブックだったと思います。前述のように、幅広いジャンルでポピュラーミュージックを聴きたいと思う方には、手を取っておきたい1冊です。
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