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2025年6月

2025年6月30日 (月)

ザ・タイマーズから私たちが引き継ぐこと

今回は最近読んだ音楽関係の書籍の紹介です。

「ザ・タイマーズからのメッセージ」。ザ・タイマーズは、忌野清志郎にとてもよく似ているZERRYなる人物率いるパンクロックバンド。1988年に突如結成され、ライブや学園祭にゲリラ的に登場し、世の話題をさらいました。特に1989年にはフジテレビの音楽番組「ヒットスタジオR&N」で、事前の予定を無視して、いきなりFM東京を罵倒する曲を歌い出した「FM東京事件」や、1994年に行った福岡でのライブでは、ライブがはじまる前に放送された、彼らのライブのお約束だったライブ中止のアナウンスが、当時、福岡市で騒がれていた渇水騒動を取り入れたリアルなものだったため、実際に観客の一部が帰ってしまったというトラブルが発生するなど、いろいろと世間を騒がせるニュースも起こしていました。

私も彼らについては、2016年にリリースした再発版や、昨年リリースされた35周年記念盤を聴いて当サイトでも取り上げてきました。ただ、正直なところザ・タイマーズについては今聴くと、かなりわかりにくい部分も多々ありました。楽曲自体も、その時代をダイレクトに反映した時事ネタ的なものも多く、その点でもわかりにくいという点もありますし、なによりも、忌野清志郎がなぜ、あえてザ・タイマーズというバンドを立ち上げたのか、また、その中でどうしてこのような騒動を起こし続けたのか、疑問に感じる点もありました。

そんな中、35周年記念盤のリリースに合わせるように刊行されたのが本作。音楽ライターの本田隆が、ザ・タイマーズの活動を多面的に分析した1冊となります。本書が非常に興味深かったのは、本田隆によるザ・タイマーズの活動の概略が記載された後、ザ・タイマーズの関係者によるインタビューが行われている点。ZERRY以外のメンバー全員のインタビューが行われているほか、当時の東芝EMIの制作担当、広報担当、ツアーマネージャー、さらには彼らのMVを担当した安齋肇にもインタビューを実施。その中で、ザ・タイマーズの活動、また前述の「事件」(特に「FM東京事件」)が様々な立場から多面的に語られれています。

それぞれの立場から微妙に異なるザ・タイマーズの捉え方もなかなか興味深かったのですが、一方で読んでいてまず感じたのは、みんなカリスマ性ある忌野清志郎というスターに引っ張られる形で巻き込まれ、かつ、このザ・タイマーズの活動を心より楽しんでいたんだな、ということは強く感じます。ザ・タイマーズというバンド自体、忌野清志郎が自分のやりたいことをかなり自由に行っていただけに、前述の事件のようにかなり無茶した感のある活動でしたし、なによりメンバー全員、ザ・タイマーズ以外のバンド活動をやりながらの活動だったようで、ザ・タイマーズの活動によって、寝る時間を惜しんで活動を続けていたようです。その中で、かなり迷惑を受けたような方いるでしょう。しかし、インタビューではそんなことはおくびにも出さず、みんなどこか懐かしく、そして楽しげに当時の活動を振り返って語っているのが印象的でした。

また、忌野清志郎自体、バンドマンと名乗り続け、ザ・タイマーズもあくまでも「バンド」ということを重要視していた点も印象的でした。とはいえ、やはり活動の中心にいたのは忌野清志郎本人。本書についても、ザ・タイマーズとしての活動が語られつつも、全体としてはザ・タイマーズとして活動していた1980年代中盤以降の忌野清志郎の活動や心境にスポットがあてられる結果となっていました。

特に1988年にリリースした「COVERS」が原発反対の楽曲を歌ったことから東芝EMIからの販売が中止となったことからザ・タイマーズとしての活動に繋がってくるのですが、その中で当時、「COVERS」についてはRCサクセションの中でも反対意見があったことや、当時、RCサクセションの活動にも行き詰まりを感じたこと、そしてそのような中で、あえてバンドとしてのもっともシンプルな形を追求したザ・タイマーズというスタイルを立ち上げたことが語られています。ここらへん、あらためてなぜ忌野清志郎がザ・タイマーズというバンドをあのような形で立ち上げたのか、理解することが出来ました。

そんなザ・タイマーズの活動について多面的かつ包括的に記載した本作は、わかりやすそうで実は時代に寄り添っていたためわかりにくい部分も多い、ザ・タイマーズについてより深く知ることが出来る1冊になっていました。ただ一方でちょっと気になったのは、この書籍のタイトルにもなっているメッセージでした。ここでザ・タイマーズからのメッセージとして「リスナーに考え続けること」と指摘しています。このメッセージ、重要なことである一方、玉石混合の情報があふれかえっている現在においては、一歩間違えれば非常に危険性も伴うメッセージにも感じました。

というのもおそらく、情報の取り方や理解を間違えると、この「考える」という行為、一気に陰謀論にはまりかねる危険性も十分にあるからです。現在社会において陰謀論に囚われた人たちは、間違いなく「自分たちはよく考えている」と認識しているでしょう。しかし、情報の取り方を間違えたり、理解があまりに主観的かつ一方的だったであった結果、その「考え」が間違えた方向へ行ってしまい、暴走し、それに自分たちが全く気が付いていないという状況になっています。「考え続けること」というのは、ともすれば自分たちの主観に陥りやすく、一歩間違えると非常にリスクも伴うメッセージのようにも感じました。

ただ一方で、この本で忌野清志郎が私たちに送っているメッセージで、今の時代でも普遍的に通じる重要なものも記載されています。それは彼が楽曲を通じて送っている「ラブアンドピース」のメッセージ。よくよく聴くとザ・タイマーズの楽曲、反権力的な歌詞は多いものの、誰かを傷つけたり、揶揄したりするような楽曲はありません。陰謀論に陥ると、よく自分と考えの異なる人たちを攻撃する傾向が強いのですすが、彼がライブでもよく叫んでいた「愛し合ってるかい」の精神を根本に持ち続けること、これが実は非常に重要な、普遍的なメッセージではないか、ということを感じました。

ザ・タイマーズというバンドのことをよく知るために、さらには忌野清志郎という偉大なスターを知るためにも、最適な1冊だと思います。これを読んで、あらためてザ・タイマーズのアルバムもまた聴いてみたくなりました。この時代に、ザ・タイマーズ、忌野清志郎の不在という事実を残念に感じてしまいますが、ザ・タイマーズのメッセージを私たちが引き続くためにも、音楽と共にお勧めしたい1冊です。

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2025年6月29日 (日)

忌野清志郎の集大成的なライブアルバム

Title:LAST LIVE at 京都会館 2008
Musician:忌野清志郎

今年、RCサクセションとしてデビューして55周年を迎えた忌野清志郎。2009年に58歳という若さで逝去してから、もう16年という月日が流れていますが、いまだに多くのファンやミュージシャンから支持を集めており、現在のミュージックシーンにおいても間違いなく、大きな影響を与えています。

さて、今回リリースされたアルバムは、2008年3月2日に、京都会館第一ホールでのライブの模様を収録したアルバム。2006年に喉頭がんで入院することを発表し、すべての音楽活動を停止した彼ですが、その後、2008年2月10日、日本武道館で「忌野清志郎 完全復活祭」を開催し、本格的に活動を再開。その後、2月24日に大阪フェスティバルホール、3月2日は最終日として京都会館第一ホールでライブを行いました。

しかし、7月14日にがんの転移を発表。ライブ活動を再び休止し、治療に専念。その後、多くのファンの願いもむなしく、2009年5月2日にこの世を去ります。結果として、この3月2日の京都会館第一ホールでのライブが、彼の生涯最後のワンマンライブとなってしまいました。

もちろん、このライブの段階としてこれが最後のワンマンになるということは誰にもわからない事実でした。ただ、結果としてこの日のライブのセットリストを見ると、まさに忌野清志郎の集大成とも言えるセットリストとなっています。イントロから続いて事実上の1曲目となっているのは、忌野清志郎のソロ時代の代表曲「JUMP」からスタート。「ドランジスタ・ラジオ」「雨上がりの夜空に」のようなRC時代の代表曲はもちろん、坂本龍一とのデゥオ曲「い・け・な・いルージュ・マジック」に、さらにはタイマーズの「デイ・ドリーム・ビリーバー」も歌っており、まさに忌野清志郎のオールタイムベストといったようなセットリストとなっています。

この日のメンバーも、盟友の仲井戸"CHABO"麗市に、愛弟子の三宅伸治、おなじくRCのメンバーだった新井田耕造、厚見玲衣など、忌野清志郎にゆかりの人物がズラリと顔をそろえています。CHABOに至っては「チャンスは今夜」ではボーカルとしても参加しており、会場をおおきに盛り上げていました。

肝心のパフォーマンスの方は、正直、最初のうちは若干声が出ていないような部分もあり、本調子ではないのか?とも感じてしまいました。ただ、その懸念はパフォーマンスが進むにつれて徐々に薄れ、途中からは、まさにキヨシローらしい、エンタテイメント性あふれるアグレッシブなパフォーマンスを聴かせてくれます。ステージは、バンドサウンドにホーンセッションも入った賑やかなサウンドも特徴的で、キヨシローらしいロックンロールに、アメリカ南部のソウルやニューオリンズ的な要素も加わった、楽しいステージを聴かせてくれています。

ただ一方、最後の方で盛んに「Mr.完全復活!」と煽り立てるのは、いまから聴くとちょっと悲しくなってきてしまいます・・・さらに最後はキヨシローひとりでギター弾き語りで「LIKE A DREAM」を聴かせてくれるのですが、もちろん当時はそんなつもりはさらさらなかったのでしょうが、今から聴くと、これがまるで辞世のように感じてしまいます。

いろいろな想いを抱きつつも、忌野清志郎の魅力を存分に感じるライブアルバムで、結果としては、これが最後とは到底思えない、素晴らしいパフォーマンスを聴かせてくれる素晴らしいライブアルバムだったと思います。あらためてあまりにも早すぎる忌野清志郎の最期を残念に感じてしまうライブアルバムでした。

評価:★★★★★

忌野清志郎 過去の作品
入門編
忌野清志郎 青山ロックン・ロール・ショー2009.5.9 オリジナルサウンドトラック
Baby#1
sings soul ballads
ベストヒット清志郎
COMPILED EPLP ~ALL TIME SINGLE COLLECTION~
KING Deluxe Edition
GOD Deluxe Edition
ロックン・ロール~Beat, Groove and Alternate~

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2025年6月28日 (土)

1990年代をテーマに

Title:1997
Musician:MUCC

インディーズから、このたび、3度目になるメジャー復帰を果たしたヴィジュアル系ロックバンドMUCC。デビュー28年目を迎える彼らの約1年5か月ぶりとなる最新作はアルバムタイトルに彼らのデビューした年を冠したアルバムに。今回のアルバムは彼らがデビューして、かつもっとも影響を受けた「90年代」をテーマとしたそうで、彼らの原点である90年代をモチーフにした曲が並んでいます。

例えば「桜」は90年代のスカパンクバンドをイメージした曲のようですし、軽快でリズミカルな「B&W」は90年代のブリティッシュロックを意識したそうで、歌い方も、彼らが影響を受けたというThe Smithのモリッシーを意識したそうです。「空っぽの未来」もいかにも90年代風のロックで、なんとなくTHE YELLOW MONKEYっぽさも感じます。

ただ、90年代を意識したアルバムではあるのですが、いままでのMUCCと大きく変わった特別なコンセプトアルバムになっているか、と言われると正直なところそこまで強くは感じません。それは90年代のJ-POPから現在まで、音楽シーン、特にロックというジャンルにおいては、楽曲の構造が大きく変化していないという点も大きいのではないでしょうか。現在でも、いかにも90年代な音を奏でるバンドは新人ベテラン問わず少なくありません。今回のアルバムは、いかにも90年代な曲を並べたアルバムというよりは、MUCCとしての原点回帰を図った作品と感じました。

その上で今回のアルバムに関しては、90年代をいろいろな形で楽曲にしようと意識した点も大きいのでしょうが、MUCCとして非常にバラエティーに富んだ作品になっていたと思います。

ミクスチャーロックの「蜻蛉と時計」、THE MAD CAPSULE MARKETSを意識したデジタルロック「Boys be Vicious」、ハードなギターリフ主導で、プログレからの影響も感じる「△(トライアングル)」、90年代というよりは80年代風のニューウェーヴナンバー「LIP STICK」などバラエティー富んだ作品が並びます。

メロディーラインにしても、シンプルでメロディアス、フォーキーな雰囲気も感じる「October」や、哀愁たっぷりのバリバリの歌謡曲風ナンバー「不死鳥」など、基本的に良くも悪くもいかにもヴィジュアル系的な、耽美的哀愁たっぷりのメロが多いものの、しっかり聴かせる楽曲に。最後を締めくくる「Daydream Believer」も、疾走感あるギターロックで、シューゲイザーからの影響も感じるノイジーなギターや、爽やかながらも微妙にメランコリックなインパクトあるメロも印象的。非常に魅力的な楽曲に仕上がっています。

いままで、MUCCの楽曲は、例えばカップリング曲集や本編から漏れた作品をまとめた企画盤などの方が、シングルやアルバム本編よりもむしろ魅力的というケースが多くありました。それだけシングルやアルバム本編では自由にやれず、彼らの音楽的な魅力を出し切れないという部分もあるのでしょう。今回のアルバムに関しては、いままでカップリング曲などでしか感じられなかったMUCCの魅力まで詰まった作品に仕上がっていたように感じます。1997年デビューですので、28年目というベテランバンドの彼ら。その実力を感じたアルバムでした。

評価:★★★★★

MUCC 過去の作品
志恩
球体
カルマ
シャングリラ
THE END OF THE WORLD
T.R.E.N.D.Y.-Paradise from 1997-
脈拍
BEST OF MUCC II
カップリング・ベストII

壊れたピアノとリビングデッド

新世界
新世界 別巻
Timeless


ほかに聴いたアルバム

星屑冒険王/スターダストレビュー

ライブアルバムは大量にリリースしているものの、オリジナルアルバムとしては「年中模索」以来、約4年半ぶりとなるニューアルバム。NHK「みんなのうた」で採用された「ナントとカナルの物語」のような、前向きのメッセージ性のある曲も多く、全体的に明るくワクワクするようなポップソングが並ぶアルバムとなっています。「やっぱり会いたいよ」のようなコロナ禍を彷彿とさせる曲もあり、こちらについては、ちょっと遅かった感もなきにしもあらずですが(発表は2021年のNHK「ラジオ深夜便」なので、まさにコロナ禍で悩まされていた時期なのですが)、それも含めて、もうああいう経験は嫌だなぁ、ということも感じてしまいます。ベテランバンドらしい、素直に楽しめるポップスアルバムでした。

評価:★★★★

スターダストレビュー 過去の作品
31
ALWAYS
BLUE STARDUST
RED STARDUST

太陽のめぐみ
B.O.N.D
Stage Bright~A Cappella & Acoustic Live~
SHOUT
スタ☆レビ-LIVE&STUDIO-
還暦少年
STARDUST REVUE 楽園音楽祭 2018 in モリコロパーク
スターダスト☆レビュー ライブツアー「還暦少年」
年中模索
STARDUST REVUE「楽園音楽祭 2019 大阪城音楽堂」
Mt.FUJI 楽園音楽祭2021 40th Anniv.スターダスト☆レビュー Singles/62 in ステラシアター
ブギウギ ワンダー☆レビュー
スターダスト☆レビュー TOUR ブギウギ ワンダー☆レビュー 野外編 with んなアホなホーンズ@日比谷公園大音楽堂
ブギウギ ワンダー☆レビュー2024

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2025年6月27日 (金)

上原ひろみ新プロジェクトの2作目

Title:OUT THERE
Musician:上原ひろみHiromi's Sonicwonder

上原ひろみHiromi's Sonicwonder名義となる、約1年半ぶり2枚目となるニューアルバム。このSonicwonderでは、ベースには新進気鋭のジャズベーシスト、アドリアン・フェロー、ドラムには、ラリー・カールトンのツアードラマーとしても活躍しているジーン・コイ、トランペットにキューバを代表する作曲家、チコ・オファーリルの孫、アダム・オファリルを迎えてのカルテットとなっています。

アルバムは、上原ひろみらしい、アグレッシブでアバンギャルドテイストなピアノに引っ張られる形で、疾走感あふれるプレイを聴かせてくれる「XYZ」からスタート。続く2曲目では、ラーメン好きを公言する上原ひろみの趣味が全開した(?)「Yes!Ramen!!」なる曲に。ちょっと中華っぽいシンセやトランペットの音がユーモラスな作品に仕上がっています。

3曲目の「Pendulum」は矢野顕子とのコラボアルバムで発表された楽曲。本作では、現在注目を集めるイギリス生まれカナダ育ちのシンガーソングライター、ミシェル・ウィリスをボーカルとして起用。ムーディーさがあり、なおかつ清涼感あふれる伸びやかなボーカルが特徴的で、矢野顕子とのコラボ版とは異なる雰囲気に仕上がっています。

そして中盤を占めるのは、アルバムのタイトルチューン「OUT THERE」の4部作。タイトルは「知らない世界に飛び出そう」という意味だそうです。ただ、前半3部までは、比較的スタンダードな印象のジャズナンバー。その音色は非常に心地よいものの、「世界に飛び出す」といった感じではありません。ただ、まさに世界に飛び出していきそうなのが4部で、爽やかで勢いのあるエレピの音色が耳に残るナンバー。全体的にはフュージョン風のサウンドに仕上がていますが、外に広がっていくようなスケール感のあるナンバーとなっています。

その後、「Pendulumn」のピアノソロバージョンと続き、ラストの「Balloon Pop」は軽快なトランペットとピアノがかわいらしい、タイトル通りのポップなナンバー。ほどよい心地よさを残しつつ、約1時間に及ぶアルバムは幕を閉じます。

今回の作品も、上原ひろみらしい、時にはアグレッシブに、時にはポップに展開されるピアノが楽しめるナンバー。ただ、バンドの一員ということでピアノだけではなく、特にトランペットの音色にも耳惹かれる部分がありましたし、前作以上にバンドとしての一体感を覚える作品に仕上がっていました。

ただ、ある種ロック的なダイナミックなプレイは序盤のみで、中盤以降は比較的フュージョン的な要素の強い作品に。また、前作と同様、比較的聴き覚えのあるような印象を受けるような作品で、目新しさという感は薄かったように思います。タイトルの「知らない世界に飛び出そう」という意味からすると、それほど知らない世界に飛び出して行っていない感も・・・。もっとも、それを差し引いても魅力的なプレイ満載の素晴らしいジャズアルバムだったと思います。ポップなメロはいい意味で聴きやすさもありますし、文句なしにおすすめできるアルバムです。

評価:★★★★★

上原ひろみ 過去の作品
BEYOUND THE STANDARD(HIROMI'S SONICBLOOM)
Duet(Chick&Hiromi)
VOICE(上原ひろみ featuring Anthony Jackson and Simon Phillips)
MOVE(上原ひろみ featuring Anthony Jackson and Simon Phillips)
Get Together~LIVE IN TOKYO~(矢野顕子×上原ひろみ)
ALIVE(上原ひろみ THE TRIO PROJECT)
SPARK(上原ひろみ THE TRIO PROJECT)
ライヴ・イン・モントリオール(上原ひろみ×エドマール・カスタネーダ)
ラーメンな女たち(矢野顕子×上原ひろみ)
Spectrum
Silver Lining Suite(上原ひろみ ザ・ピアノ・クインテット)
BLUE GIANT(オリジナル・サウンドトラック)
Sonicwonderland(上原ひろみ Hiromi's Sonicwonder)
Step Into Paradise -LIVE IN TOKYO-(矢野顕子×上原ひろみ)


ほかに聴いたアルバム

HISTORY of Fishmans/Fishmans

主に90年代前半に活躍。レゲエやダブを基調とした独特のポップミュージックで、日本のみならず海外からも高い支持を得るものの、1999年にボーカルで、ほぼ全ての曲の作詞作曲を担当していた佐藤伸治が急逝。現在も残ったメンバーでライブを中心に活動を続けているものの、佐藤伸治の作品はいまなお高い評価を受け、伝説のバンドとなっているFishmans。本作は、メンバーの茂木欣一が企画・監修した、Fishmansの過去の音源をあつめたアンソロジーアルバム。貴重なデモ音源やライブ音源を3枚組のCDに収録。またDVDでは2005年のエゾロックでのステージを収録されています。

このデモ音源やライブ音源も聴きどころが多いのですが、特に興味深いのが、Disc1に収録されている結成直後、メジャーデビュー前のライブ音源。結成直後からダブやスカの要素も取り入れており、後のFishmansに続くサウンドが既に顔を見せているのですが、一方でかなりパンクロック色が強く、後のイメージとのギャップに驚かされます。楽曲によっては、明確に忌野清志郎フォロワーな曲もあったり。ただ、それ以外にももちろん貴重なライブ音源が多く、それが日程順に並んでいるため、Fishmansの歩みをよく知れるアルバム。最初の1枚としてはベスト盤などの方が良いのでしょうが、Fishmansが好きなら、マストなアルバムだと思います。

評価:★★★★★

Fishmans 過去の作品
LONG SEASON '96~7 96.12.26 赤坂BLITZ
BLUE SUMMER~Selected Tracks 1991-1995~
Night Cruising 2018
若いながらも歴史あり 96.3.2@新宿LIQUID ROOM

Sunset on the Rails 2024.08.18/the HIATUS

タイトル通り、昨年8月18日に行われた、彼ら初の日比谷野音ライブの模様を収録したライブアルバム。the HIATUSの作品は、まずピアノの美しい音色が目立つという特徴があるのですが、本作もやはり、まずはピアノの美しくメランコリックなメロが目立つ作品。その中でもダイナミックなバンドサウンドを入れてきたり、ピアノバックに哀愁たっぷりに聴かせたり、4つ打ちのダンサナブルな曲があったりとバラエティーも豊富。the HIATUSのライブの魅力をしっかりと感じられるライブ盤でした。

評価:★★★★★

the HIATUS 過去の作品
Trash We'd Love
ANOMARY
A World Of Pandemonium
THE AFTERGLOW TOUR 2012
Keeper Of The Flame
Hands of Gravity
Our Secreat Spot

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2025年6月26日 (木)

今週もアイドル勢が上位に

今週のHot Albums

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

今週も上位にアイドル勢が並ぶチャートとなっています。

まず1位初登場は韓国の男性アイドルグループStray Kids「Hollow」。CD販売数及びダウンロード数1位。国内盤3枚目となるミニアルバム。オリコン週間アルバムランキングでは初動売上52万3千枚で1位初登場。前作「HOP」の初動8万7千枚(2位、ただし最高位は1位)よりアップしています。

2位はSnowManのベストアルバム「THE BEST 2020-2025」が4週連続で同順位をキープ。ストリーミング数は11週連続の1位。これで通算12週目のベスト10ヒット&ベスト3ヒットとなります。

そして3位には韓国の女性アイドルグループILLIT「bomb」が初登場でランクイン。CD販売数2位、ダウンロード数7位、ストリーミング数6位。オリコンでは初動売上3万2千枚で2位初登場。前作「I'LL LIKE YOU」の初動2万6千枚(2位)からアップしています。

以下初登場は、4位にSuperfly「Amazing」が初登場。邦楽のカバーアルバム。CD販売数7位、ダウンロード数2位、ストリーミング数8位。10位に清水翔太「Pulsatilla cernua」が初登場でランクイン。11枚目となるフルアルバム。CD販売数は20位、ストリーミング数は12位でしたが、ダウンロード数で9位にランクインし、総合順位でベスト10入り。

一方、ロングヒット盤ではMrs.GREEN APPLE「ANTENNA」が6位から7位にダウンした一方、「Attitude」は9位から8位にアップ。それぞれ通算40週目、通算28週目のベスト10ヒット。timelesz「Hello! We're timelesz」は8位から9位にダウン。こちらは通算15週目のベスト10ヒットとなりました。


今週のHeatseekers Songs

https://www.billboard-japan.com/charts/detail?a=heat_seekers

Heatseekers Songsは今週も離婚伝説「紫陽花」が1位獲得。これで4週連続の1位。特にラジオオンエア数が4位までランクアップしてきています。Hot100でも70位から48位にアップしています。


今週のニコニコVOCALOID SONGS

https://www.billboard-japan.com/charts/detail?a=niconico

今週は吉本おじさん「お返事まだカナ?おじさん構文!」が3週目の1位獲得。今週、動画再生回数で8位にランクインし、Heatseekers Songsでも2位にランクインしています。また、2位はサツキ「メズマライザー」が今週も同順位をキープ。3位にはDECO*27「モニタリング」が再びランクアップしてきています。

今週のHot Albums&Heatseekers&ボカロチャートは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2025年6月25日 (水)

初の1位獲得

今週のHot100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

ランクイン3週目で初の1位獲得となりました。

1位にはMrs.GREEN APPLE「breakfast」が先週の3位からランクアップ。ランクイン3週目にして初の1位獲得となりました。ただし、ストリーミング数は1位から2位、ダウンロード数は3位から5位、動画再生回数も4位から6位と全体的に下落傾向。ラジオオンエア数のみ7位から1位にアップしています。ちなみにMrs.GREEN APPLEは「クスシキ」が先週と変わらず5位をキープ。ストリーミング数は2週ぶりに1位に返り咲き。これで12週連続のベスト10ヒットに。一方、「ダーリン」は12位にダウンし、ベスト10ヒットは通算20週でストップ。今週、Mrs.GREEN APPLEの同時ランクインがついに2曲まで減りました。

2位は旧ジャニーズ系アイドルグループAぇ!group「CHameleon」が獲得。CD販売数1位、その他は圏外。オリコン週間シングルランキングでは初動売上45万5千枚で1位初登場。前作「Gotta Be」の初動39万1千枚よりアップしています。

3位も男性アイドルグループ。こちらはスターダストプロモーション所属のONE N'ONLY「BLAST」が初登場。CD販売数2位、こちらはその他は圏外。オリコンでは初動売上12万2千枚で2位初登場。前作「We'll rise again」の初動1万8千枚(4位)からアップしています。

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2025年6月24日 (火)

ポピュラーミュージックを網羅した圧巻のディスクガイド

今回は最近読んだ音楽関連の書籍の感想です。

MUSIC MAGAZINEから発刊しているディスクガイド「ミュージック・ガイドブック 2010-2024 VOL.1」。もともと伝統あるタイトルだそうで、オールジャンルのディスクガイドとして、この「ミュージック・ガイドブック」、いままで1983年、88年、94年と3回にわたって発刊されてきました。1994年以降、しばらくご無沙汰だったのですが、約30年ぶりとなる発刊。タイトル通り、2010年から2024年までにリリースされたポピュラーミュージックのオールジャンルのアルバムが、ジャンル毎に整理されて掲載されています。B5サイズ全320ページというかなりのボリューム感で、とにかく圧巻のディスクガイドという印象を受けます。

これだけの量にも関わらず、VOL.2が後日リリースされており、本作では、主にエレクトロやルーツミュージック、ロック、ポップスのアルバムが収録。ある意味、ここ15年のうちもっともホットなジャンルと言えるHIP HOPはVOL.2にまわされていますし、ソウル、R&B、ジャズ、ワールドミュージックもVOL.2。ちなみに日本のポップスは対象外となっており、こちらは他にリリースが予定されているようです。

この15年におきたポピュラーミュージックの流れを、それぞれのジャンル毎に解説。そして、それぞれのジャンル毎に代表するアルバムをピックアップする構成となっています。そのため、あらためて2010年以降のポピュラーミュージックの流れについて、非常に勉強となった内容に。ともすれば普段、音楽を聴いていると、気になるアルバムや評判の良いアルバムをピンポイントで聴くケースがほとんど。そのため、点と点では優れたミュージシャンやアルバムを把握していても、そんなアルバム同士が線でつながらないようなケースが少なくありません。

今回、このガイドブックでは、まさに、そんな私が聴いてきたアルバムが、ポピュラーミュージックの流れの中でどのような位置にいるのか、ミュージシャンが作り出したサウンドはどのようなところから影響があり、どんな意味があったのか、あらためて理解できるような内容となっており、また、紹介されている近似のアルバムにも興味が惹かれるような構成になっていました。まさにポピュラーミュージックに興味がある方、特に様々なジャンルを幅広く聴いてみたいと考えている方には最適なガイドブックだったと思います。

一方、このガイドブックを読んで、最近のポピュラーミュージックシーンの中で強く感じたのが、ジャンルの細分化が激しく進んでいるという点でした。エレクトロひとつの中にジューク、フットワーク、グローカルビーツ等々、細かくジャンル分けがされています。よく言えば、様々なミュージシャンたちがシーンに登場し、様々な音楽を作り出しているとも言えるのですが、悪く言えば、これといってシーンを圧倒するようなジャンルがあらわれず、全体的に小物化してしまっている印象も否めませんでした。

また、ミュージック・マガジンらしい悪癖として気になった部分もあり、それが「売れているジャンル」に対する矮小化で、エレクトロやアンビエントなどのジャンルに関しては、ここまで詳しくジャンル分けし、分析しているのに対して、ロックやポップスに関してはジャンル分けが非常に雑。特にメインストリームポップについては「その他大勢」的なまとめ方となっており、AviciiとPharrell WilliamsとテイラースウィフトとAdeleとBring Me The Horizonが同じ項目って、ちょっとありえないような感じもします。

むしろ、他で分析しているアンダーグラウンドやサブカルチャーシーンを含むポピュラーミュージックの流れの中で、メインストリームのポップスたちがどのような影響を受けているのか、あるいは与えているのか、というのは、ポピュラーミュージックを語る中で最も重要な観点だと思いますが、この点が完全に抜け落ちているように感じます。個人的にポピュラーミュージックは大衆音楽である以上、「売れている」というのは非常に重要な要素であると思っているのですが(売れている=優れているではないとは思いますが)、以前からミュージック・マガジンの視点は、この「売れている」という要素を非常に軽視する傾向があることが気にかかっていました。このガイドブックでも残念ながら、そんなミュージック・マガジンの悪い傾向が、強く反映されてしまったように思います。

そんな点、残念な点はありつつも、圧巻のディスクガイドでポピュラーミュージックに関してあらためて新たな視点を得られたガイドブックだったと思います。前述のように、幅広いジャンルでポピュラーミュージックを聴きたいと思う方には、手を取っておきたい1冊です。

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2025年6月23日 (月)

神がかった名曲揃い

Title:Makihara Noriyuki Concert 2024 “TIME TRAVELING TOUR” 2nd Season ~Yesterday Once More~
Musician:槇原敬之

Makihara-noriyuki-time-traveling-tour

昨年開催した、槇原敬之の90年代をテーマに選曲した「“TIME TRAVELING TOUR” 2nd Season 〜Yesterday Once More〜」。本作は、5月23日に東京国際フォーラムホールAで行われたライブの模様をフルで収録した作品。DVDやBlu-rayでリリースされた映像作品を、配信限定でライブアルバムとしてもリリースされましたが、今回紹介するのはそのライブアルバムとなります。

選曲は過去作を収録したものですし、また、ライブ音源として、ロックバンドのように原曲とはガラリと異なるような演奏を聴かせてくれる・・・という訳でもないので「私的年間ベスト」の対象とはならないのですが、純粋に収録曲だけ見ると、間違いなく私的には2025年のベストアルバムだと思います。下手したらぶっちぎりで。

楽曲は90年代に彼が発表した曲のみ。デビュー作「君が笑うとき君の胸が痛まないように」から1999年の「Cicada」までの楽曲からセレクトされています。まあ、ぶっちゃけると最初の覚醒剤所持でつかまるまでの期間の曲でセレクトされています。個人的にも中学生から高校生の頃、槇原敬之を恋愛の教祖的に、文字通り崇め奉って(笑)聴きまくっていた時代で、そういう思い出補正もあるのですが、それを差し引いても、まだ、今聴いても、この頃の楽曲は神がかっていた、という表現せざるを得ないような名曲がつまっています。

なんといっても彼の作品ですごいのは、わずか一言二言の表現で、その後ろに物語が広がってくる、という点だと思います。例えば本作でも収録されている「PENGUIN」という名曲があるのですが、

「今でも時々思い出しては
連れ出さなくてよかった事も
愛していたのも
ホントだったと笑ってる」
(「PENGUIN」より 作詞 槇原敬之)

という一節が出てきます。この作品は、周りに認められなかった恋人同士の物語なのですが、この一言だけで、その時の二人の幸せな想いと、また同時に、別れた後に2人は幸せな人生を歩んできたんだな、という「物語」が広がってきます。

また、個人的に槇原敬之のベストソングと思っていると言っても良い「3月の雪」という名曲があります。これから新たな道を歩みはじめる、学生時代の仲間たちとの卒業後の1日を描いた歌詞なのですが、その1日については直接描かれず、ただ

「油のひいた レーンを最後に
そんな1日も 終わりを告げる」
(「3月の雪」より 作詞 槇原敬之)

という表現だけで、おそらく喫茶店かどこかで駄弁った後に、ボウリングで盛り上がった仲間たちとの1日の風景が浮かんできます(ボウリング、というのがいかにも学生らしくて良い!)。

正直、学生時代にあれだけ聴いたのに、今でも聴いていて新しい発見がありますし、ともすれば、その後、恋愛、結婚、子育てを経た今だからこそ、逆に気が付かされる表現もあったりして、彼の楽曲の奥深さをあらためて感じます。

そして特に今回、あらためて彼の90年代の代表曲を聴いて感じたのは、彼の楽曲は、いわば「禁断の恋」的な曲が目立つな、ということでした。

前述の「PENGUIN」も、2人の恋愛について「誰も許してもらえなかった」と描いていますし、本作にも収録されている「THE END OF THE WORLD」も同じく、禁断の恋愛を描いています(公式的には「不倫の恋」だそうです)。また、本作に未収録ながら、友達の彼女に恋心を抱く「彼女の恋人」という曲もありますし、こちらも本作未収録の名曲「ひまわり」もまた、どこか許されぬ恋を感じさせる歌詞になっています。

このような「許されぬ恋」が多い理由について考えると、やはり勝手な想像ながらも、彼が「同性愛者」であるということがちらついてきます。彼のこの性的嗜好のため「禁断の恋」の歌が多くなるのかどうかは、正直私の勝手な想像に過ぎないのですが、ただ、もしそうであったとしても、それを特定の層だけではなく、広いリスナー層に共感できるような普遍的なラブソングに仕上げているあたりに、彼のその才能がいかんなく発揮されているようにあらためて感じました。

今年リリースされた直近作を収録したベストアルバム「Showcase!」と聴いて、いまでも枯れることのない槇原敬之の才能を感じたのですが、あらためて90年代の彼の曲を聴くと、思い出補正を考慮したとしても、文字通り神懸かっている名曲揃いだったということをあらためて感じます。だって、これだけ名曲揃いなのに「CALLIN'」も「雷が鳴る前に」も「冬がはじまるよ」も「どうしようもない僕に天使が降りてきた」も「LOVE LETTER」も「Such a Lovely Place」も未収録なんですよね・・・。全音楽ファン、いや、全日本人必聴の名曲だらけのライブ盤です。

評価:★★★★★

槇原敬之 過去の作品
悲しみなんて何の役に立たないと思っていた
Personal Soundtracks
Best LOVE
Best LIFE

不安の中に手を突っ込んで
NORIYUKI MAKIHARA SYMPHONY ORCHESTRA CONCERT CELEBRATION 2010~SING OUT GLEEFULLY!~
Heart to Heart
秋うた、冬うた。
Dawn Over the Clover Field

春うた、夏うた。
Listen To The Music 3
Lovable People
Believer
Design&Reason
The Best of Listen To The Music
宜候
Bespoke
Buppu Label 15th Anniversary “Showcase!”


ほかに聴いたアルバム

miwa/miwa

デビュー15周年を迎えたmiwaのベストアルバム。アップテンポなナンバーを集めた「mi」と、ミディアムテンポなナンバーを集めた「wa」から構成されています。このうち、特に「mi」については、あらためてこうやって彼女のアップテンポなナンバーを集めるとギターサウンドを前に押し出したロックな曲が多く、意外とアグレッシブなミュージシャンなんだな、ということを感じます。また、以前リリースしたベスト盤でも感じたのですが、こうやって代表曲を並べるとしっかりと耳に残るポップスとしての強度が強い曲が多く、ここらへん、やはり「売れた」ミュージシャンは違うな、と作家としての彼女の実力も感じさせます。正直、売り出し方としてアイドル的な要素も強かったため、結婚後、人気の面ではひと段落してしまった感はあるのですが、今後はそんな「アイドル」的な人気に頼らない、シンガーソングライターとしての実力を見せてほしいところです。

評価:★★★★★

miwa 過去の作品
guitarium
Delight
ONENESS
SPLASH☆WORLD
miwa THE BEST
Sparkle
君に恋したときから
バレンタインが今年もやってくる
月に願いを
7th

新しい季節に聴きたいスピッツ/スピッツ

Atarashiispitz

今年4月5日が、「ロビンソン」リリースからちょうど30年目ということでリリースされたコンピレーションアルバム。「新しい季節に聴きたいスピッツ」をテーマにアンケートを実施し、投票の上位14曲に「ロビンソン」を加えた15曲が収録されています。「若葉」「歩き出せ、クローバー」など、いかにも新しい季節にピッタリな楽曲が並び、特に爽やかなポップスが並ぶこのコンピ盤で、スピッツの美メロが堪能できます。サブスクでの配信限定なのですが、残念ながら夏までの公開予定ということ。ただし、「アルバム」扱いとはいえ、事実上のプレイリストなので、公開終了後も、各自、プレイリストとしてセレクトすれば同じ内容は楽しめそう。一応、その時の備忘のために、収録曲のリストを載せておきます。

1.ロビンソン
2.春の歌
3.若葉
4.ビギナー
5.僕はきっと旅に出る
6.スピカ
7.ヒバリのこころ
8.見っけ
9.魔女旅に出る
10.グリーン
11.歩き出せ、クローバー
12.初恋クレイジー
13.ルキンフォー
14.君と暮らせたら
15.魔法のコトバ

評価:★★★★★

スピッツ 過去の作品
さざなみCD
とげまる
おるたな
小さな生き物
醒めない
CYCLE HIT 2006-2017 Spitz Complete Single Collection
見っけ
花鳥風月+
ひみつスタジオ
劇場版 優しいスピッツ a secret session in Obihiro
空の飛び方 30th Anniversary Edition

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2025年6月22日 (日)

実力派シンガーの初のベスト盤

Title:Adoのベストアドバム
Musician:Ado

2020年に「うっせぇわ」が大ヒットを記録(・・・って、もう5年も前の話になるんだ・・・)。一躍、時の人となったシンガーAdo。その後も「踊」「唱」が大ヒットした他、アニメ映画「ONE PIECE FILM RED」のメインヒロイン、ウタの歌パートに参加した歌った「新時代」もヒット。外見を一切見せないスタンスと相まって、大きな話題となった彼女ですが、このたびリリースされた初のベストアルバム。前述のヒット曲をはじめ、もちろんウタ名義でリリースした「新時代」「私は最強」も収録。CDでは2枚組、全40曲2時間半にも及ぶ内容となっています。

このベストアルバムで彼女の過去の楽曲を網羅的に俯瞰してまず感じるのは、彼女に楽曲を提供している作家陣の多さ、多様さでした。彼女たちへの楽曲提供は、特に初期においてはほとんどがボカロPと言われる、ネット上で活躍するミュージシャンたち。「うっせぇわ」を提供したsyudouや、DECO*27、Mitchie M、ピノキオピーなど、著名なボカロPが名前を連ねます。一方、ブレイク後はJ-POPシーンで活躍するミュージシャンたちも楽曲を提供。Mrs.GREEN APPLEや椎名林檎、B'z、中田ヤスタカ、Vaundyなど、若手からベテランまでかなり豪華なメンバーが名前を連ねています。

ただ、その結果として気になる部分ではあるのですが、ミュージシャンとしてのAdoの軸足がちょっと弱く感じます。いうまでもなく、Adoは非常に高い歌唱力を持ったシンガーで、ピッチの取り方はもちろんですが、声量の大きさ、また楽曲の中でいろいろと表現を変えてくる巧みさなど、非常に高い技術を持っています。一方で、その結果、器用に様々なタイプの楽曲を歌いこなせるため、ベスト盤を聴くと、ひとつの核を持った主張のあるミュージシャンというよりも、昔の歌謡曲の歌手のような、なんでも歌いこなせる上手い歌手、といった印象を受けます。もちろん、シンガーソングライターが全盛の今、彼女のような、あくまでも「歌手」として活動するスタンスはアリなのですが、若干、器用すぎるかな、という印象も抱きました。

また、逆にこのような器用に歌いこなす「歌手」として活動するのならば、「職業作家」的な立ち位置の方に楽曲提供をしてほしいようにも感じました。ボカロP勢はともかく、主に楽曲を提供しているシンガーソングライターの人たちはそれぞれ個性が強すぎて、例えばミセスの曲になったり、椎名林檎の曲になったり、B'zの曲になったりしてしまっています。それよりも、もっと自分たちの色を消せるような、例えば後藤次利とか馬飼野康二とか、シンガーソングライター系にしても、玉置浩二やつんく♂のような、作家陣に楽曲提供をしてほしいなぁ、とも感じました。

さらにもう1点、気になったのは、Adoは非常に力強く、様々なスタイルで歌いこなせるシンガーなのですが、全体的にあまりに「押し」の強すぎる、詰め込みすぎな楽曲が目立ったように思いました。以前、カバーアルバムで「飾りじゃないのよ涙は」をカバーしていましたが、落ち着いた歌い方も、感情たっぷりに聴かせてくれており、むしろ彼女はこういう静かに聴かせるタイプにも、その力を発揮するのではないでしょうか。昨今のJ-POPの悪い傾向ではあるのですが、もっと「引き」を上手く使いこなしたような楽曲を聴かせてほしい、とも感じました。

そこらへん、気になる部分はいろいろあるものの、Adoが非常にポテンシャルのある実力派シンガーであることは間違いありません。その中でいろいろな方向性を模索しているのも事実でしょう。今後、彼女がどういうスタンスで活動を進めていくのか、いろいろな可能性のあるシンガーなだけに大いに期待したいところ。これからの活躍も楽しみです。

評価:★★★★

Ado 過去の作品
狂言
ウタの歌 ONE PIECE FILM RED
Adoの歌ってみたアルバム
残夢
唱LP


ほかに聴いたアルバム

GIRLS and/SOPHIA

2022年に活動を再開したSOPHIA。2025年はデビュー30周年の記念の年となり、昨年は、デビューミニアルバム「BOYS」へのオマージュアルバム「BOYS and」をリリースしましたが、本作はメジャー2枚目のミニアルバム「GIRLS」へのオマージュアルバム。ただ、「GIRLS」のリメイクカバーという形ではなく、「little cloud」「街」など、初期の代表曲をセルフカバーして収録した、初期ベスト的な作品になっています。ここらへんの作品、久しぶりに聴いたのですが、耳を惹かれるポップなメロの魅力は相変わらず。いまひとつ声が出ていないのも相変わらず(笑)。「BOYS and」と合わせて、本格的な活動再開のご挨拶的なアルバムといった感じでしょうか。次はいよいよオリジナルアルバムか?

評価:★★★★

SOPHIA 過去の作品
2007
BAND AGE
15
ALL SINGLES 「A」
ALL-B SIDE 「B」

未来大人宣言
20th ANNIVERSARY BESTI YOUNG <1995-2000>
20th ANNIVERSARY BESTII YOUNG ADULT <2001-2007>
20th ANNIVERSARY BESTIII ADULT <2008-2013>
BOYS and

TRF 30th Anniversary “past and future” Premium Edition/TRF

CD3枚+Blu-ray3枚組からなる、TRFデビュー30周年を記念した豪華記念BOX。CDの方は、新曲やリアレンジが収録されたDisc1は、わずか6曲+同じ曲のインスト版ですし、Disc2、3は既発表曲のDJリミックスなので、正直、目新しさは少ない感じ。ただ、過去のトリビュートをDJミックスで収録したDisc3は、工藤夕貴や岸谷五朗&寺脇康文がカバーしたという、普通のトリビュートではあまりお目にかからない参加者があったりして、いまさらながら元となるトリビュートアルバムが気になったりしました。ファン的にはどちらかというとライブ映像や過去のMVやドキュメンタリー番組を収録した映像作品の方が見ごたえがあるかもしれません。

ただ、CDの方で驚いたのは、Disc1の再録でのYU-KIのボーカル。現在58歳となった彼女ですが、のびやかなハイトーンボイスが全く衰えておらず、かつての曲もキーを変えずに完全に歌いきれるということが驚き。普通、これだけの年齢になるとどうしても歌唱力が落ち、特にピッチについては下がってしまうケースがほとんどなのですが、ボーカリストとしての鍛錬を欠かさない彼女のプロフェッショナルらしさを感じました。

評価:★★★★

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2025年6月21日 (土)

ライブに沿ったコンセプトアルバム

Title:ゴースト
Musician:amazarashi

4月29日に、自身初の横浜アリーナ公演「電脳演奏監視空間 ゴースト」を開催したamazarashi。この横浜アリーナ公演は、全編劇仕立てのライブだったようで、言語を検閲する組織「新言語秩序」の一員として、巨大な実験船オーバーマインド号に乗っている言語研究者のひまわりと、彼と行動をともにするイーアの物語。後半、この「新言語秩序」とオーバーマインド号の機密を暴き、自分自身を生きる手段を見つけ出した彼らの物語という展開だったそうです。

これだけ書くとファンタジックすぎる展開は、好きな人にはかなりはまりそうな反面、抵抗感のある人もありそうな感じもします。この独特の世界観はamazarashiならではで、これはこれでもちろんamazarashiの大きな魅力であることは間違いないでしょう。本作は、そんな横浜アリーナ公演を前提とした作品が収録されているコンセプトアルバム。同公演での物語に沿った展開となった内容となっています。

サウンド的にはいつものamazarashiらしい楽曲がならびます。バンドサウンドに、エレクトロサウンドやピアノの音色を入れてダイナミックに展開する楽曲の数々。冒頭を飾る「君のベストライフ」「ナイトメア」などはまさにそういうスタイルですし、また、「小市民イーア」ではかなりヘヴィーなギターリフを主導のパンキッシュなナンバーに仕上がっています。一方、「おんなじ髑髏」のように、しんみり聴かせるフォーキーな作品も。後半は比較的、メランコリックに聴かせるナンバーが並び、最後を飾る「ゴースト」は静かでドリーミーな雰囲気に聴かせる楽曲に。サウンドの面でも物語に沿ったバラエティー富んだ展開が楽しめます。

そしてやはりamazarashiの歌詞の世界が大きな魅力でしょう。前述の横浜アリーナ公演の物語に沿った内容となっており、この物語については、ファンタジックな世界観は好き嫌いがわかれそうですが、楽曲の歌詞だけをピックアップすると、もう少し普遍的に着地しており、横浜アリーナ公演に沿わなくても、この楽曲だけ単独で十分魅力的な作品に仕上がっています。

とはいえ、アルバム全体としては物語性のある展開となっており、前半は、この現実を悲観的に捉える歌詞の内容に。「誰も信じない 神様もいない 夢もクソもない」と語る「君のベストライフ」からスタート。また、物語の中の舞台となるディストピアは、もちろん空想上の存在であるものの、例えば「小市民イーア」で語られる「冷笑が飽和した街で はみ出したものをリンチして」「焚き付けた自称モラリスト 花を供えてるのうのうと」といった歌詞には、私たちの今の現代社会を皮肉的に描いているようにも感じさせます。

そんな中でもところどころ、このディストピアを抜け出そうとする前向きなメッセージが配置されつつ、ラストの「ゴースト」では「自分勝手が丁度いい 今日が僕のバースディ」と非常に前向きに一歩を踏み出す主人公の姿を描写しており、また同時に、これがリスナーに対する力強いメッセージにも感じされます。

正直、ライブを前提としたコンセプチュアルなアルバムな点、やはりライブでの映像や、それに伴う物語を前提としているためでしょうか、歌詞についてはここ最近のamazarashiの作品の中では若干インパクトが弱いようにも感じられます。そのため、さらっと聴いてしまうと、右から左へ抜けてしまうおそれもあるように感じます。ただ、しっかりと聴くと、その独特の歌詞に徐々にはまっていってしまう点は間違いないでしょう。しっかりと聴けばBGM的に消費されるのを拒否されるような、そんな楽曲なのはamarashiらしいところです。

個人的には、このライブも体験したかったなぁ、と思いつつ、amazarashiの世界観に浸れた今回のアルバム。癖は強い部分もありますが、それはそれで彼の大きな魅力。その世界を堪能できた1枚でした。

評価:★★★★★

amazarashi 過去の作品
千年幸福論
ラブソング
ねえママ あなたの言うとおり
あんたへ
夕日信仰ヒガシズム
あまざらし 千分の一夜物語 スターライト
世界収束二一一六
虚無病
メッセージボトル
地方都市のメメント・モリ
ボイコット
令和二年、雨天決行
七号線ロストボーイズ
永遠市


ほかに聴いたアルバム

ゴールデン☆ベスト 柳ジョージ Warner Works/柳ジョージ

主に1970年代後半に柳ジョージ&レイニーウッドとして活躍。「雨に泣いてる…」「微笑の法則~スマイル・オン・ミー~」が大ヒットを記録。バンド解散後はソロとして活躍してきた柳ジョージのベストアルバム。タイトル通り、ワーナー・パイオニア及びワーナーミュージック・ジャパン所属時代の曲を集めたアルバムで、柳ジョージ&レイニーウッド時代の「青い瞳のステラ、1962年夏…」から、1993年の「愛しき日々(Home Town)」までの曲がシングルを中心にリリース順に並んでいるほか、大ヒットした「雨に泣いてる…」「微笑の法則~スマイル・オン・ミー~」はライブ音源として収録されています。

そういう意味ではほぼオールタイムベスト的な本作。ただ、和製クラプトンとも称された彼、バンド時代の楽曲については洋楽テイストも強いブルースロックとなっているのですが、ソロになった後の曲は急速に「歌謡曲化」してしまっています。本人の希望か周りの方針かはわからないのですが、こういういかにもな「歌謡曲」路線を取らざるを得ない点に、時代を感じてしまうのですが・・・。歌謡曲だから即ダメという訳ではありませんが、やはりバンド時代のブルースロック路線の方が、彼のボーカルやギターには合っていたような気がします。もちろん魅力的な曲も多いのですが、そんな時代性も感じてしまったベスト盤でした。

評価:★★★★

Reconnect/bird

昨年、デビューから25年を迎えたbird。その彼女が25周年プロジェクトの一環してリリースしたのが、彼女12枚目となるオリジナルアルバム。25周年のテーマが「再びつながる」ということで、そのテーマに沿ったアルバムとなっています。特に「つながる」という観点では「再び世界へ」ではレゲエバンドASOUNDのARIWA、「センスとユーモア」ではスチャダラパーがゲストとして参加。あらたなつながりを模索したアルバムとなっています。

全曲プロデュースを富田恵一が手掛けた本作は、アルバムは全体的にフュージョンベースのエレクトロサウンドに、「再び世界へ」などではトライバルな要素も加わった楽曲がユニーク。また、暖かくメロウな歌声も大きな魅力となっており、birdの魅力を感じられる作品となっています。ただ、約5年ぶりとちょっと久しぶりのアルバムの割には、全10曲のうち2曲がインターリュードで1曲がアウトロ。事実上、7曲入りのミニアルバム程度の構成となっているのが気に係るところです。全曲、作曲が富田恵一なのでスランプということはないとは思いますが・・・(とはいえ、彼女が作詞を行っているので、その点でなかなか曲が出来ないのかもしれませんが)。

評価:★★★★

bird 過去の作品
BIRDSONG EP
MY LOVE
NEW BASIC
9
lush
波形
bird 20th Anniversary Best
25th anniv. re-edit best + SOULS 2024

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2025年6月20日 (金)

偉大なプロデューサーのオールタイムベスト

Title:Piece By Piece - Music from the Motion Picture
Musician:Pharrell Williams

先日、娘のピアノ発表会がありました。ピアノの発表会、といっても難しいクラッシックのピアノ曲を奏でるような、本格的なものではなく、軽いポピュラーミュージックのピアノアレンジ曲を披露するような、趣味の発表会的な要素が強く、最近ではYOASOBIやらミセスやらの曲が並んでいたりするのですが、その中で「HAPPY」という曲を弾く子がいました。はて、「HAPPY」なんて最近のヒット曲があったっけ?と思いながら聴き始めると、これがビックリ、ファレル・ウィリアムズの2013年の大ヒットナンバーでおなじみの「HAPPY」だったのです。さすがに元がピアノ曲ではないだけど、正直、ちょっとチグハグさはあったのですが、10年以上の月日を経て、いまだにこのような小学生のピアノの発表会で取り上げられるということに驚かされるとともに、それだけ日本を含め世界で大ヒットしたんだなぁ、という、ファレル・ウィリアムズのすごさを再認識しました(まあ、選曲は親の趣味なんでしょうが)。

さて、そんなファレル・ウィリアムズについて、今年話題になったこと、といえばなんといっても今年4月に公開された、彼の自伝的ドキュメンタリー映画「Piece By Piece」でしょう。彼のいままでの活躍について、なんとレゴをつかったアニメで描くという非常にユーモアな試みの同作。私も映画館に見に行って、当サイトでも取り上げました。そして今回取り上げる本作は、そんな映画のサントラ盤です。

ただ、本作、映画音楽を集めたもの・・・というよりは、完全にファレル・ウィリアムズの代表曲を収録した、彼のオールタイムベスト的な内容となっています。N.E.R.D.時代の「Maybe」「Rock Star」などにはじまり、Jay-Zに提供した「I Just Wanna Love U(Give It 2 me)」やNo Doubtに提供した「Hella Good」、さらにはケンドリック・ラマーへ提供した「Alright」まで収録されているほか、もちろん、ダフト・パンクとの共演でおなじみの「Get Lucky」に、大ヒット曲「Happy」も収録。さらに、映画のテーマ曲であり、現時点での最新曲である「Piece By Piece」も収録されています。

ファレル・ウィリアムズの楽曲といえば、サウンド的にもメロディーライン的にも終始ポップで、聴いていて素直にウキウキ楽しくなってくる点が大きな特徴。特にN.E.R.D.時代の楽曲については、ロックを基調としたサウンドになっているため、HIP HOP以上にロックリスナーにも楽しめる作品になっていますし、スヌープ・ドッグに提供した「Drop It Like It's Hot」のように、ギャングスターのラッパーへ提供した曲でもコミカルでポップさあふれる楽曲に仕上がっています。

ただ、ファレルの大きな魅力というのは、楽曲が単純に明るくポップである、というだけではなく、明るくポップでありながら、同時にメランコリズムも同居させている点、それが最大の魅力なのではないでしょうか。例えば冒頭にも紹介したご存じ大ヒット曲「HAPPY」にしても、みんなで歌いだしたくなるような明るいポップスでありつつ、どこかメロディーにはメランコリックさもありますし、「Get Lukcy」についても同様。リズミカルなエレクトロチューンで非常に明るいポップスでありつつ、どこか哀愁も漂わせています。この明るさとメランコリズムのバランスが絶妙で、後者が強くなりすぎるとハッピーな要素が消えてしまうのですが、そこはしっかりと抑制しつつ、一方では明るさだけを前に押し出して、ともすれば「能天気」的にならないように、しっかりとメランコリックな要素も楽曲に加える、このバランスの絶妙さには、今回あらためて彼のヒット曲を聴いていて舌を巻かざるを得ません。

その傾向は最新曲の「Piece By Piece」でも同様。正直、ファレルについては、ここ最近、一時期ほどヒットチャート上、その名前を聞かなくなりましたが、彼らしいハッピーなサウンドと、それでいて楽曲にしっかり同居しているメランコリズムは健在。しっかり、ファレル・ウィリアムズの魅力を感じさせる楽曲に仕上がっていました。

あらためてファレル・ウィリアムズというミュージシャン、プロデューサーのすごさを感じることが出来る作品。なによりも、これだけ素直に聴く人をハッピーに出来る音楽を作ることが出来る点、彼自身も素直に音楽を愛しているんだな、ということを楽曲を通じても感じることが出来ます。全21曲1時間30分弱の内容ですが、最後まで全く飽きさせることはありません。映画を見た方はもちろん、そうでない方も要チェックのアルバムです。

評価:★★★★★

Pharrell Williams 過去の作品
G I R L


ほかに聴いたアルバム

Marvin Gaye Live!/Marvin Gaye

1974年にリリースされたMarvin Gayeのライブアルバム「Marvin Gaye Live!」のリイシュー盤。1974年にオークランド・コロシアムで行われたライブの模様を収録された本作ですが、このたび、「Flying High (In the Friendly Sky)」「Mercy Mercy Me (The Ecology)」「Come Get To This」「Keep Gettin’ It On」の4曲が収録されて完全版としてリリース。リマスターも行われて、新たなアルバムとして生まれ変わっています。今回、このライブ盤はこのリイシュー盤ではじめて聴いたのですが、とにかくその歌声が印象的。非常にパワフルなボーカルで力強く歌い上げたかと思えば、優しくメロウにしんみりと感情たっぷりに歌い上げる曲もあったりと、硬軟使い分けたボーカルが実に魅力的。彼のもっとも売れた代表作「Let's Get It On」リリース後のツアーだっただけに、まさに脂ののりまくった彼のパフォーマンスが楽しめる傑作アルバムとなっていました。

評価:★★★★★

Marvin Gaye 過去の作品
You're The Man
What's Going On Live
What’s Going On: The Detroit Mix
Funky Nation: The Detroit Instrumentals

Sentient/Santana

SantanaのニューアルバムはSantanaが様々なミュージシャンとコラボした楽曲をあつめた企画盤。マイケル・ジャクソンやスモーキー・ロビンソンの楽曲にギターで客演した曲やマイルス・デイヴィスとの共演曲も収録されています。この手のコラボアルバムは少なくありませんが、そのコラボ相手のすごさに目を惹きます。さすがSantana・・・。もっとも、Santana自身もレジェンドなのですが。基本的に哀愁たっぷりのギターを聴かせる点、Santanaらしさを貫きつつ、ラテンやフュージョン、ラップやギターロックなどバラエティー富んだ作風が魅力的なアルバムとなっています。

評価:★★★★★

Santana 過去の作品
Guitar Heaven:The Greatest Guitar Classics Of All Time
POWER OF PEACE(THE ISLEY BROTHERS & SANTANA)
Africa Speaks
BLESSING AND MIRACLES

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2025年6月19日 (木)

今週も男性アイドル勢が目立つ

今週のHot Albums

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

今週もHot Albumsは男性アイドル勢が目立つチャートとなっています。

まず1位はtimelesz「FAM」が獲得。SexyZoneからの改名後、初となるオリジナルフルアルバム。CD販売数1位。オリコン週間アルバムランキングでは初動売上61万8千枚で1位初登場。直近作はtimelesz名義のEP盤「timelesz」で、同作の初動9万9千枚(1位)からはアップ。また、SexyZone名義の前作「ChapterⅡ」の初動15万枚(1位)からもアップしています。

timleszは配信限定のベストアルバム「Hello! We're timelesz」も今週8位にランクイン。こちらは通算14週目のベスト10ヒットとなっています。

2位はSnowManのベストアルバム「THE BEST 2020-2025」が3週連続の2位を獲得。ダウンロード数15位、ストリーミング数は10週連続の1位。これで通算11週目のベスト10ヒット&ベスト3ヒットとなります。

3位も先週から変わらず。SEVENTEEN「HAPPY BURSTDAY」が獲得。4位には先週1位のENHYPEN「DESIRE:UNLEASH」が3ランクダウンながらもランクインしており、これで1位から4位まで男性アイドルグループという結果となっています。

4位以下の初登場盤は7位にヒプノシスマイク-Division Rap Battle-「MIC AS ONE」がランクイン。映画「ヒプノシスマイク -Division Rap Battle-」で使用した楽曲を集めたアルバム。CD販売数4位、ダウンロード数2位、ストリーミング数15位。また、ベスト10返り咲き組としては、男性ラッパーKEIJU「N.I.T.O.」が先週の15位からランクアップし、4週ぶりのベスト10返り咲きを果たしています。

ロングヒット組ではMrs.GREEN APPLE「ANTENNA」が5位から6位、「Attitude」が7位から9位にそれぞれダウン。それぞれ通算39週目、通算27週目のベスト10ヒットになっています。一方、Vaundy「replica」は今週12位に再びダウンし、ベスト10ヒットは通算29週でストップとなっています。


今週のHeatseekers Songs

https://www.billboard-japan.com/charts/detail?a=heat_seekers

Heatseekers Songsは今週も離婚伝説「紫陽花」が1位獲得。これで3週連続の1位。ただし、Hot100は67位から70位にダウンです。


今週のニコニコVOCALOID SONGS

https://www.billboard-japan.com/charts/detail?a=niconico

今週は吉本おじさん「お返事まだカナ?おじさん構文!」が先週に引き続きの1位獲得となっています。一方、2位はサツキ「メズマライザー」がランクインしている他、3位にはロックバンドAoooのメンバーでもあるツミキの「フォニイ」がベスト3にランクアップしてきています。

今週のHot Albums&Heatseekers&ボカロチャートは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2025年6月18日 (水)

一気に1位に返り咲き

今週のHot100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

CD販売数が加わり、一気に1位に返り咲きです。

今週1位には米津玄師「Plazma」がランクイン。ベスト10ヒットは8週ぶり。1月29日付チャート以来の2週目の1位獲得となります。日テレ系アニメ「機動戦士Gundam GQuuuuuuX」主題歌。1月に配信リリースされていましたが、6月11日に「BOW AND ARROW」と両A面シングルとしてCDリリース。見事1位返り咲きとなりました。CD販売数で1位を獲得したほか、ダウンロード数7位、ストリーミング数17位、ラジオオンエア数9位、動画再生回数11位。オリコン週間シングルチャートでは初動売上28万1千枚で1位初登場。前作「地球儀」の初動7万枚(1位)から大きくアップしています。

2位には女性アイドルグループHANA「Burning Flower」が初登場。SKY-HIが代表をつとめる音楽事務所BMSG傘下のB-RAVE所属のグループ。ダウンロード数及び動画再生回数1位、ストリーミング数3位で総合順位はこの位置に。ちなみにHANAは「ROSE」が2ランクダウンながらも今週も7位にランクイン。こちらは11週連続のベスト10ヒット。2曲同時ベスト10入りとなりました。

3位はMrs.GREEN APPLE「breakfast」がワンランクダウンながらもベスト3をキープ。ストリーミング数は先週の2位から1位にアップ。一方、ダウンロード数は1位から3位に、動画再生回数も1位から4位にダウンしています。Mrs.GREEN APPLEは「クスシキ」が今週3位から5位にダウン。ストリーミング数が「breakfast」と入れ替わる形で1位から2位にダウン。これでこちらもベスト10は11週連続に。「ダーリン」は9位から10位にダウンしたもののベスト10はキープ。こちらは通算20週目のベスト10ヒット。一方「天国」は12位にダウンし、今週は3曲同時のベスト10ヒットとなっています。

続いて4位以下の初登場曲ですが、まず4位に≒JOY「ブルーハワイレモン」がランクイン。指原莉乃プロデュースの声優アイドルグループ。CD販売数2位。オリコンでは初動売上16万3千枚で1位初登場。前作「初恋シンデレラ」の初動9万8千枚(1位)からアップしています。

初登場曲もう1曲は、6位に男性アイドルグループaoen「青い太陽(The Blue Sun)」が初登場。CD販売数3位。韓国の芸能事務所、HYBEの日本支社所属のグループ。本作がデビューシングルとなります。オリコンでは初動売上7万4千枚で3位初登場。

ロングヒット曲はサカナクション「怪獣」がワンランクダウンの8位。ストリーミング数は3週連続の7位。ダウンロード数は16位から11位にアップ。一方、動画再生回数は9位から13位にダウン。これで17週連続のベスト10ヒットとなっています。

今週のHot100は以上。明日はHot Albums&Heatseekers&ボカロチャート!

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2025年6月17日 (火)

「老い」を意識しつつ、日常生活を描いたエッセイ集

いきなりプライベートな話題で、なおかつ暗い話からスタートして恐縮ですが、先日、私の義母がなくなりました。74歳。大往生ではないものの、「若すぎる」という年齢でもありません。ただ、彼女を見送って思ったのが、次は私の世代の番だ、ということでした。私の父は私が20代の頃に亡くなりましたが、そういう感情は抱きませんでした。また、8年前に私の祖母が亡くなっているのですが、この時も私の母が健在だったこともあり(ちなみに私の実母はバリバリ元気です)、そういう感情も抱きませんでした。

ただ、義母が亡くなった時にそういう感情を抱いたのは、私自身、50歳を手前にして徐々に「老い」を意識せざるを得ないことが増えたからかもしれません。もちろんまだ40代ですので、老けたなぁ、とまで思ったことはありません。ただ、あきらかに身体が、若い時分とは異なっていることを強く感じます。老眼が酷くなりましたし、腹痛が収まらず、病院で受診したら流動性食道炎と言われました(ガンでなくてよかったのですが・・・)。身体は私たちの魂の乗り物である、ということは時々言われることですが、まさに私が乗っているその乗り物に、いろいろとガタが来はじめている・・・そう感じる経験が徐々に増えてきました。

今回は、最近読んだ書籍の紹介。音楽評論家で、自らも歌手としても活躍していた、2022年に亡くなった松村雄策のエッセイ集「ハウリングの音が聴こえる」。2014年4月から2018年3月まで、4年間にわたって集英社の文芸誌「小説すばる」に連載されていたエッセイをまとめた1冊となります。連載の最後が2018年で、まだ亡くなる4年前ですので、このエッセイ自体、亡くなることを意識したような内容ではないのですが、読んでいて感じたのは、松村雄策自身が感じる「老い」というものが、強くあらわれたエッセイ集となっていました。

松村雄策といえば、ご存じロック雑誌「ロッキンオン」の創設者の1人であって、どちらかというと「ロッキンオン」でのコラムやCD評のイメージが強いかもしれません。彼のコラムのスタイルは非常に独特で、最初は音楽とは全く関係ない、日常のコラムからスタートし、その後、その日常の出来事を「音楽」に結び付けてひとつのコラムとしてまとめるというスタイル。今回、私のプライベートな話からスタートしたもの、そんな氏のスタイルをつたないながらもちょっとだけ真似してみた次第です。

ただ、こちらのエッセイに関しては、連載誌が文芸誌ということもあって、「音楽」の部分よりも、むしろ前半に日常の部分に主眼を置かれたエッセイが目立ちます。基本的に必ず音楽の話に帰結するのですが、エッセイに関してはかなりむりやり結びつけていたり、最後に申し訳程度に、音楽の話題に触れている程度。おそらく「ロッキンオン」のコラムでは、まず音楽のネタありきでコラムを書いているのに対して、こちらはむしろ彼の言いたいことの主眼は「日常の出来事」であり、音楽は最後にむりやり結びつけている程度にも感じました。

そしてこの「日常」に関して言えば、意識の有無にかかわらず、どうしてもやはり「老い」を感じさせる部分が強くあらわれています。昔の思い出話も多いですし、特にエッセイの後半では、昔なじみのミュージシャンや音楽関連の方の逝去の話題がよく出てきています。また、常々、父親の死んだ年齢と母親の死んだ年齢のちょうど真ん中の65歳くらいで自分は死ぬんだろう、という話をしており、多かれ少なかれどこか「死」を意識したような部分も感じさせました。

とはいっても、全体的な文章の基調は決して暗い訳ではありません。むしろ「老い」や「死」を意識して、それを悲観的に捉えているというよりも、文章全体に関してある種の「達観」が感じられます。それはある種の達観もあるでしょうし、彼がそれまでの人生において、やりたいことをやれてきた、ということもあるのかもしれません。そのため、「老い」を感じさせつつ、エッセイ全体としてはほのぼのとした日常風景や彼の趣味の描写がメインとなっており、楽しみながら読める内容となっていました。

また、音楽に限らず趣味の話題が多いのも特徴的で、彼自身、音楽以上にプロレスや落語に詳しいと語っているように、プロレスや落語の話題も出てきますし、また、大相撲や彼の好きなプロ野球のヤクルトスワローズの話題も多く登場します。ここらへんの多趣味さも、「老い」の中にも「生きがい」を感じさせる大きな要素にも感じました。

そんな訳で、「老い」を感じさせるエッセイでありつつも、決して暗くならず、「老い」の中で趣味を楽しんでいる彼の生き様を感じさせるエッセイでした。一応、音楽の話題が多いのですが、内容的には音楽に限らず、日常を描いたエッセイ集として、音楽リスナーに限らず楽しめる内容だったと思います。決して派手な話題はない中で、これだけ読ませる文章を書くのはさすが。素直に、とても楽しめたエッセイ集でした。

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2025年6月16日 (月)

伝説のバンドの1枚目2枚目

2026年にメジャーデビュー30周年を迎えるロックバンドTHEE MICHELLE GUN ELEPHANT。伝説のバンドとして数多くのバンドに影響を与え、今なお語り継がれる彼らですが、2024年末からデビュー30周年プロジェクト「THEE 30TH」として、企画がスタートしています。そのデビュー30周年プロジェクトの一環として、彼らの1996年3月のデビューアルバム「cult grass stars」と、同年11月にリリースされたメジャー2枚目となるアルバム「High Time」がリマスタリングされてリリースされたので、このたびチェックしました。

Title:cult grass stars
Musician:thee michelle gun elephant

まず、こちらが彼らのデビュー作。ちなみに、この前年にインディーズでミニアルバム「wonder style」がリリースされているので、インディー時代を含めると2枚目のアルバムということになります。メジャーデビューアルバムながらも、ラストツアーの1曲目で披露された「トカゲ」が1曲目に収録。さらには彼らの代表曲でもあり、ラストライブの最後に披露された「世界の終わり」も収録されており、彼らにとってはそれだけ重要なアルバムと言えるでしょう。

ただ、楽曲としては、これ以降のアルバムに比べると、サウンドはかなり軽いという印象。ミッシェルを特徴づけるガレージロックというよりは、ロックンロールやロカビリー的な要素、さらにはパンクの要素も強く、音楽的にはバラエティーがある、といった印象も受ける一方、バンドとしての方向性は、まだ確固たるものにはなっていなかったようにも感じます。

もうひとつ大きな特徴はチバユウスケの歌い方。後の彼に通じるしゃがれ声で力強く歌うボーカルスタイルは既に確立している一方、声がかなり若い・・・。後の彼に比べると、かなり初々しさすら感じるボーカルになっているのはデビュー作ならでは・・・とは思うのですが、この時彼は既に28歳。比較的、遅めのデビューだったんですね。チバユウスケのボーカルスタイルが確立された瞬間を閉じ込めた、といった印象も受け、そこらへんもデビューアルバムならでは、といった感もあります。

評価:★★★★★

そして、このメジャーデビュー作からわずか8ヶ月というスパンでリリースされるのがメジャー2枚目となる「High Time」です。

Title:High Time
Musician:thee michelle gun elephant

この1枚目、2枚目を続けて聴くと、一番驚かされるのが、デビュー直後でまだいろいろな意味で曖昧さが残っていたミッシェルの音楽性が、この2枚目では完全に確立されている、という点でしょう。

ちょっと軽さがあったバンドサウンドもグッと重くなり、ガレージロック、パブロックといった、おそらく今、ミッシェルというバンドにイメージされる音楽性が完全に確立されています。チバユウスケの歌い方についても、完全にその後の彼のスタイルと同様、しゃがれ声で力強く歌い上げるというスタイルを確立。デビューアルバムで感じられる初々しさはうすれ、既に貫禄すら感じさせるボーカルとなっています。

2枚目にして、アルバムとしてのこの完成度にはあらためて驚かされます。このアルバムはオリコンチャート最高位13位。翌年にリリースされる「Chicken Zombies」でチャート最高位5位に入り、一躍ブレイクする訳ですが、確かにこのようなアルバムをリリースすれば、話題になって一気に売れるのは納得です。

評価:★★★★★

さて、このデビュー作と2作目、あらためて聴くと歌詞について感じることがあります。デビューシングル「世界の終わり」が典型的なように、どこか荒廃した虚無的な世界観を感じさせる一方、チバユウスケの書く歌詞にはロマンチックさと、どこか「品の良さ」を感じさせます。例えば「世界の終わり」にしても「世界の終わりが そこで見てるよと/紅茶飲み干して 君は静かに待つ」という歌詞には、一種センスの良さ、品の良さを感じさせますし、「リリィ」に出てくる「あふれかえる パスタの山」という表現にしろ、「キャンディ・ハウス」に出てくる「陽だまりのベランダ にじむオレンジ」という歌詞にしろ、どこかハイセンスな郊外の邸宅を彷彿とさせるような、歌詞に品の良さを感じさせます。

思えば、チバユウスケ自体、Wikipediaによると幼少の頃はヴァイオリン教室に通っており、その後、幼稚園から高校まで一貫校に進学していたようで、完全にお坊ちゃん。そもそもバンド自体、明治学院大学のサークルで結成されていますし、そのヤバそうな雰囲気とは裏腹な、育ちの良さを感じます。ただ、これはもちろん悪いことではなく、こういう品の良さ、いいかえれば「センスの良さ」、楽曲にちょっと加わっているウィットさが作品に奥行きを与えて、楽曲をより魅力的にしているのではないでしょうか。今回、あらためて1作目2作目を聴いて、そう強く感じました。

これから来年にかけて、このリマスター盤のリリースは続くそうで、とても楽しみ。ただ、一方で、このバンドは2度と世に現れないんだな・・・と思ってしまうと、悲しさも感じてしまいます。あらためて、THEE MICHELLE GUN ELEPHANTというバンドのすごさを感じることが出来た2枚のアルバムでした。

THEE MICHELLE GUN ELEPHANT 過去の作品
THEE GREATEST HITS


ほかに聴いたアルバム

B-EACH TIME L-ONG 40th Anniversary Edition/大瀧詠一

1985年にリリースされた大瀧詠一のベストアルバム。CBSソニー移籍後の「A LONG VACATION」「NIAGARA TRIANGLE Vol.2」「EACH TIME」から選曲さら10曲に、当時未発表だった「Bachelor Girl」と、「夢で逢えたら」のインスト版を収録された内容。大瀧詠一のアルバムの中では、いままで唯一、アナログでのリリースはなかったのですが、今回、40周年記念盤ではじめてアナログリリースとなったようです。また、記念盤ではDisc2として1984年6月にプロモーションオンリーでリリースされたカセットテープ「Summertime,Each time '84」の音源も収録されています。

Disc1のベスト盤は爽やかな大瀧詠一らしいポップスが非常に魅力的だった反面、夏向きの楽曲が順番に並べられているというコンセプトゆえに、ちょっと似たようなタイプの曲が多かったような。Disc2はデモ音源的な内容となっており、こちらは完全にファン向けな内容に。個人的には、大瀧詠一の作品としては、ちょっと物足りなさも感じてしまいました・・・。どちらかというと全体的にはファン向けのアルバムかなぁ。

評価:★★★★

大滝詠一 過去の作品
EACH TIME 30th Anniversary Edition
Best Always
NIAGARA MOON -40th Anniversary Edition-
DEBUT AGAIN
NIAGARA CONCERT '83
Happy Ending
A LONG VACATION 40th Anniversary Edition
大瀧詠一 乗合馬車 (Omnibus) 50th Anniversary Edition
大滝詠一 NOVELTY SONG BOOK/NIAGARA ONDO BOOK
暑さのせいEP
EACH TIME 40th Anniversary Edition

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2025年6月15日 (日)

「関係」の中でブラック・カルチャーを描く

今回も、最近読んだ音楽関連の書籍の紹介です。

岩波新書から発刊された「ブラック・カルチャー 大西洋を旅する声と音」。フランス語圏文学、環大西洋文化研究を専攻する早稲田大学法学学術院教授の中村隆之による著書です。タイトルの通り、「ブラック・カルチャーとは何か」をテーマとし、主にアフリカ由来で、奴隷貿易により南北アメリカ大陸へ浸透していった文化について研究した1冊となります。

本書では、全12章のうち特に前半、6章にわたってアフリカの文化が奴隷制度によっていかにアメリカ大陸へと渡っていったか、さらにその後、アメリカではブラック・ミュージックがどのように成立していったか、という歴史が綴られています。このブラック・ミュージックの歴史自体は、概観的な記載であり、ある程度、ブラック・ミュージックに詳しい方、その歴史に興味がある方にとっては、あらためてその歩みを確認するような内容になっていたかとは思いますが、ユニークなのは環大西洋的な視点での記載になっているという点。特に、北米のソウルミュージックやジャズのような、いわゆるブラック・ミュージックに限らず、レゲエやブラジル音楽など、同じアフリカからの奴隷制度が期限となっている音楽に対しても同じように取り扱っている点に、より広い視座を感じさせます。

また、既存のブラック・ミュージックの歴史について記載されている本と比べてユニークに感じたのはブラック・カルチャーという視点から、ラップ及びヒップホップという文化を高く評価している点でした。ともすれば、特にソウルミュージックの愛好家からは、ラップやヒップホップはともすればあまり興味を惹かれない分野でありがちなのですが、本書ではラップを「じつにブラック・ミュージックらしい音楽」と語り、ヒップホップを含めて「ブラック・ミュージックの歴史を未来に向けて再構築していく重要な音楽文化」と高く評価しています。

このヒップホップを高く評価するひとつの要因として、ヒップホップで多用されるサンプリングという文化。本書ではブラックカルチャーの重要的な考えとして「未来は過去から生み出される」という考えを指摘しています。ヒップホップという音楽では、過去の要素である、既存のサウンドをサンプリングという手法で再構築している点を、実にブラックミュージックらしいと評価しています。この「未来は過去から生み出される」という考え方は、非常に重要な考え方に感じます。私たちの未来はいずれも過去の積み重ねであるという事実。読んでいて、非常に共感させられるブラックカルチャーの「教え」でした。

後半では、音楽に限らず、文字世界なども含め、もっと広くブラック・カルチャーについて紹介し、視点を広げています。本書でもエクスキューズを入れていますが、基本的にブラックミュージックへの興味から読みだした自分に関してはあまりなじみのない固有名詞が多く登場し、若干なじみにくい章ではありましたが、前半を含めて比較的、平易な文章で書かれているため、本書全体として読みやすい構成になっており、興味深く読み進むことが出来ました。

そして、本書でもっとも重要なテーマとして挙げられていたのが「私たちが『関係』のなかに生きているという素朴な事実」。本書では、ブラック・カルチャーという文化が様々な関係性の中で構築されてきたことを触れられています。その中で、私たちが「関係」のなかで他社や外部の影響を受けながら存在していることをブラック・カルチャーの成り立ちを通じて描き出しています。

ただ、この事実は、特に現代社会にとっては非常に重要なテーマに感じます。アメリカのトランプ大統領が典型例ですが、現在、露骨な自国中心主義がまかり通ろうとしています。しかし、そのような中、私たちはあくまでも世界の中で様々な人との関係の中に生きているということを忘れてはいけないことを、この著作を通じて強く感じさせられます。ブラック・ミュージックの歴史、さらにはそこからブラック・カルチャーの歴史を学ぶことにより、そんな現代社会の課題ともいうべきことを気づかさせてくれるそんな1冊でした。

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2025年6月14日 (土)

コロナ禍での活動がいい影響を及ぼした傑作

Title:観天望気
Musician:キセル

辻村文、友晴兄弟によるユニット、キセルの、途中ベスト盤などを挟みつつ、実に約7年5か月ぶりとなるオリジナルアルバム。タイトルの観天望気とは、自然現象や生物の行動の様子から天気の変化を予測することのことで、ある意味、キセルのイメージにもピッタリマッチするようなアルバムタイトルとなっている印象があります。キセルは兄弟のユニットということもあるのか、比較的マイペースな活動が続いていたため、「満を持して」という言葉はちょっと不自然な感じもするのですが、ただ、今回のアルバム、キセルのミュージシャンとしての実力を再認識される傑作アルバムとなっており、まさに「満を持して」という表現がピッタリくるような作品となっていました。

虫の音を取り入れつつ、アコギとピアノのシンプルなサウンドで暖かく聴かせる「偶々」からスタートする本作。曲名からしてとても素敵なワードセンスを感じさせる「春隣」はちょっとジャジーなピアノに、ゆっくりとしたドラムスのリズムやサックスの音色が魅力的ですし、民謡的な要素を取り入れつつ、郷愁感たっぷりに歌い上げる「卯月の夜半」、ラテン風なリズムが軽快で、ちょっとユニークな「楽しい明日」、エレクトロサウンドも取り入れた「たくさんのふしぎ」、さらに民謡の要素を前面に押し出してメランコリックに聴かせるタイトルチューン「観天望気」、アコギ、フルート、ピアノというアコースティックな楽器をバックに郷愁感あふれる和風なメロでゆっくり聴かせる「縁歌」と、ジャズやラテン、さらには民謡の要素を取り入れつつ、独特な浮遊感のあるキセルならではのサウンドと郷愁感あふれるメロディーラインが実に魅力的な楽曲が並んでいます。

今回のアルバムの大きな特徴のひとつとして、共同プロデューサーとしてグッドラックヘイワの野村卓史を迎えた点。兄弟2人だけのユニットの中で、ともすれば煮詰まってしまう可能性も高い中、今回のアルバムはキセルらしい魅力を前面に出しつつ、しっかりポップなアルバムに仕上がっている点、やはりこの第3者を共同プロデューサーとして迎えた点が大きいのではないでしょうか。コロナ禍の中で、キセルの二人に、野村卓史、さらにYOUR SONG IS GOODの吉澤"maurice"成友と一緒にyamomoというバンドを結成したとか。残念ながら現時点で、このyamomoの音は聴いたことないのですが、こういう新たな活動が、キセルのアルバムにとっても大きな刺激となったことは間違いなさそうです。

また、このyamomoとしての活動もそうなのですが、コロナ禍における活動もこのアルバムに大きな影響を与えており、特に兄、辻村豪文がコロナ禍において松本に引っ越した点も大きそう。冒頭の虫の音も含めて、どこか自然を思わせる音作りも、自然豊かな松本の地ならでは、といった印象も受けますし、また、コロナ禍の中で民謡を取り入れた宅録ソロプロジェクトThe Instant Obonを立ち上げており、この影響が今回のアルバムに大きな影響を与えていることは間違いないでしょう。

間違いなく年間ベストクラスの傑作だと思いますし、いままでのキセルのアルバムの中でも指折りの(ひょっとしたら最高)傑作だったと思います。久しぶりのオリジナルアルバムで、あらためてキセルの魅力を感じられた1枚となっていました。なにげに結成から27年を経たベテランバンドの彼ら。その間、正直、大きなヒットを出している訳ではないのですが、人気の面でも評価の面でも、間違いなくもっともっと高い評価を得ても間違いないと思うんですけどね。多くの音楽ファンにぜひとも聴いてほしい傑作アルバムでした。

評価:★★★★★

キセル 過去の作品
magic hour

SUKIMA MUSICS
明るい幻
The Blue Hour
Kicell's Best 2008-2019


ほかに聴いたアルバム

Ambitious/Little Glee Monster

新メンバーになって2枚目となるニューアルバム。基本的には、いままでの彼女たちの楽曲と同様、のびやかな歌声で美しい歌声を聴かせてくれるポップミュージック中心の構成。初回盤のDisc2には、いままでの彼女たちの曲を新メンバーで歌いなおしたセルフカバーも収録されています。ある意味、新メンバーになっても、良くも悪くも方向性は同じといった感じ。個人的には、このメンバーのまま、もっと大人な、ソウルやR&B系の方向に進んでいってほしい感じもするのですが。

評価:★★★★

Little Glee Monster 過去の作品
Joyful Monster
juice
FLAVA
I Feel The Light
BRIGHT NEW WORLD
GRADTI∞N
Journey
Fanfare
UNLOCK!

わびさび/ROTTENGRAFFTY

約2年半ぶりとなるROTTENGRAFFTYの新作は、2枚組のアルバム。純粋なニューアルバムの7曲入りの「わび」盤と、既存曲をリアレンジし、ROTTENGRAFFTYと縁のあるミュージシャンたちをふゅーちゃリングした「さび」盤の2枚組。Disc2は野生爆弾のくっきー!がユーモラスにラップする「夕映え雨アガレ」や大森靖子のボーカルがいいインパクトとなっている「ASIAN MARKET」など、フューチャリングならではの曲も目立つ一方、全体的にはヘヴィーなバンドサウンドに、ポップなメロというロットンらしい曲が並びます。「さび」盤含めて、フューチャリングゲストで新たなロットン、というよりもいつもの彼ららしいアルバムに仕上がっていました。

評価:★★★★

ROTTENGRAFFTY 過去の作品
LIFE is BEAUTIFUL
PLAY
You are ROTTENGRAFFTY
HELLO

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2025年6月13日 (金)

苦難の先の、静かで未知の場所を描く

Title:Glory
Musician:Perfume Genius

アメリカのシンガーソングライター、マイク・ハドレアスのソロプロジェクトPerfume Geniusの約2年9ヶ月ぶりとなるニューアルバム。わきを固める豪華なミュージシャン陣にも注目が集まっており、今回のアルバムでもプロデューサーには盟友、Blake Millsを起用。ジョン・レノンやエリック・クラプトンをはじめ数多くの大物ミュージシャンと共演してきたドラマーのジム・ケルトナーやハンド・ハピッツとしての活動で知られるギタリストのメグ・ダフィー、スパークスやセイント・ヴィンセントの作品にも参加したベーシストのパット・ケリーが参加。また、世界的な注目を集めるニュージーランドのシンガーソングライター、Aldous Hardingもゲストで参加しています。

そのAldous Hardingが参加しているのがアルバム2曲目の「No Front Teeth」。楽曲はアコースティックギターで静かにフォーキーな感じでスタートするのですが、中盤からはバンドサウンドが入り、ロックテイストのアレンジに。さらに後半に至るにつれて、徐々にダイナミックでサイケなアレンジへと変化するのですが、その中でゆっくり歌われるPerfume Geniusのハイトーン気味のメランコリックな歌が魅力的。さらにAldous Hardingはドリーミーなコーラスで参加。その清涼感あふれる美しい歌声が、楽曲の魅力の大きなポイントとなっています。

基本的に、このようにハイトーン気味で歌われるPerfume Geniusのメランコリックでドリーミーな歌がアルバムの中で大きな魅力になっています。その中でもアコースティックな楽器を用いてフォークやブルースなどの要素も感じさせる楽曲もあれば、一方ではノイジーでダイナミックなバンドサウンドを前面に押し出したサイケな作品もあります。前作もそうでしたが、このように「静」と「動」を行き来するような音楽性も大きな魅力に感じます。

アルバムの1曲目「It's a Mirror」は、まずカントリーやブルースの要素の強いナンバー。最初はアコースティックにスタートするのですが、後半に行くにつれて、徐々にバンドサウンドでダイナミックに展開していきます。また、前半の「Clean Heart」はドリーミーながらも比較的シンプルなバンドサウンドでメランコリックな歌を前に押し出した作風。さらにそれに続く「Me&Angel」はピアノの弾き語りによるナンバーで、彼の歌を存分に堪能できる内容になっています。

中盤の「Left For Tomorrow」も、ピアノやストリングスで彼の歌の魅力を引き出したドリーミーなナンバーですし、特に「Full On」はフォーキーな楽曲なのですが、ハープのような音色を奏でるギターをバックに、彼のファルセットボーカルでこれでもかというほど幻想的な作風に仕上げている楽曲になっており、その美しく幻想的なPerfume Geniusの楽曲の世界に惹きつけられる内容となっています。

特に中盤にはアコースティックテイストの楽曲が並び、後半もピアノで荘厳な雰囲気を醸し出す「Dion」のような曲が並ぶ一方、終盤はミディアムチューンでダウナーな雰囲気ながらも後半にサイケなサウンドを聴かせる「In a Row」や、不気味な空気の流れるダウナーなサイケチューン「Hanging Out」と、不穏なナンバーが続きます。しかし最後のタイトルチューン「Glory」は、その先の安らぎを感じさせる、Perfume Geniusのファルセットボーカルで静かに聴かせる美しい楽曲で締めくくり。このアルバムを聴いた後も心地よく終われるような作品に仕上がっていました。

アルバムの解説によると彼のアルバムでのテーマ「身体とその崩壊、家庭生活と愛、逃れられない歴史と傷」を描きつつ「苦難を越えた先で、過去に起きたすべてと向き合いながらも、静かで未知の場所で生きることを学ばなければならないという」新しい視点が描かれているということ。確かにアルバムの最後では、そんな不穏な場所をくぐりぬけ、さらにその先での静かな環境が描かれているように、楽曲からも感じることが出来ました。

毎回傑作アルバムをリリースし続ける彼ですが、今回のアルバムもPerfume Geniusの魅力にあふれた傑作アルバムに仕上がっていましたし、また今回も年間ベストアルバムの候補になりそうな傑作だったと思います。その魅力的な歌の世界に酔いしれた1枚でした。

評価:★★★★★

Perfume Genius 過去の作品
Set My Heart On Fire Immediately
Ugly Season


ほかに聴いたアルバム

MUSIC - SORRY 4 DA WAIT/Playboi Carti

Music-playboi

アメリカで絶大な人気を誇るラッパー、Playboi Cardiのアルバム「MUSIC」の、こちらはボーナストラック4曲をついたしたデラックスエディション。リズミカルな強いビートを前面に押し出した序盤は文句なくカッコよく、さすがアメリカで絶大な人気を誇るラッパーらしくグッと心をつかまされたのですが、途中からはトラップビートでメランコリックなフロウを前面に押し出した楽曲が並び、さらにデラックス盤だと全34曲89分というかなりボリューミーな内容で、途中から飽きが来てしまいました・・・。もうちょっとシンプルにまとめた方がよかったと思うのですが・・・。

評価:★★★

Playboi Carti 過去の作品
Whole Lotta Red

Come Ahead: The Remixes Vol 1 (Vocals)/Primal Scream

Comeaheadremixes1

昨年リリースされたPrimal Screamのアルバム「Come Ahead」のリミックスアルバム。同作に収録された楽曲を、Tim Goldsworthy、Lovefingers、Radio Slaveといったミュージシャンたちがリミックスを手掛けています。もともとグルーヴィーな作品でしたが、ここにエレクトロビーツやファンクの要素を加えて、よりグルーヴ感を増した12曲が収録。オリジナルにも劣らないリミックス作で聴いていて非常に心地よくなるアルバムでした。

評価:★★★★★

primal scream 過去の作品
Beautiful Future
Screamadelica 20th Anniversary Edition
More Light
Chaosmosis
Give Out But Don't Give Up:The Original Memphis Recordings
MAXIMUM ROCK ‘N’ ROLL: THE SINGLES
Demodelica
Live at Levitation
Come Ahead

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2025年6月12日 (木)

ベスト3はアイドル系が並ぶ

今週のHot Albums

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

Hot Albumsのベスト3はアイドル系が並びました。

今週1位は韓国の男性アイドルグループENHYPENのEP「DESIRE:UNLEASH」が獲得。CD販売数及びダウンロード数で1位、ストリーミング数で13位獲得。オリコン週間アルバムランキングでは初動売上30万5千枚で1位初登場。前作「ROMANCE:UNTOLD」の初動28万9千枚(1位)からアップしています。

2位はSnowManのベストアルバム「THE BEST 2020-2025」が先週と同順位をキープ。ストリーミング数は9週連続の1位、ダウンロード数は20位から12位にアップ。これで通算10週目のベスト10ヒット&ベスト3ヒットとなっています。

3位は先週1位のSEVENTEEN「HAPPY BURSTDAY」が2ランクダウンながらもベスト3をキープしています。

4位以下での初登場盤は今週は1枚のみ。8位に女性ラッパーLANAのデビューアルバム「20」が先週の11位からランクアップし、ベスト10初登場。ダウンロード数が7位にランクインしています。

また、先週ベスト10圏外にランクダウンしたVaundy「replica」は17位から10位に再度アップ。2週ぶりのベスト10返り咲きとなりました。これで通算28週目のベスト10ヒットに。

ロングヒット盤ではMrs.GREEN APPLE「ANTENNA」が6位から5位、「Attitude」が9位から7位にアップ。それぞれ通算38週目、通算26週目のベスト10ヒット。timelesz「Hello! We're timelesz」も7位から6位にアップ。こちらは通算13週目のベスト10ヒットとなっています。

リカレントルール適用の2週目なのですが、思ったよりリカレントルールの影響が少ないような・・・。Number_iだけがチャート上位から去ってしまいましたが、ここらへん、どうやった調整が入っているのか不透明なだけに気になります。


今週のHeatseekers Songs

https://www.billboard-japan.com/charts/detail?a=heat_seekers

Heatseekers Songsは、離婚伝説「紫陽花」が2週連続の1位獲得。Hot100でも67位にランクアップしています。


今週のニコニコVOCALOID SONGS

https://www.billboard-japan.com/charts/detail?a=niconico

今週1位初登場は吉本おじさん「お返事まだカナ?おじさん構文!」が初登場で1位獲得。ネットミーム的に流行っているいわゆる「おじさん構文」についてネタとした曲。SNS上では賛否両論あるようですが、ただ、この手の商業ベースに絶対のってこないような自由なネタ曲こそが、ボカロ曲のだいご味だと思うので、個人的にはかなり肯定的です。

今週のHot Albums&Heatseekers&ボカロチャートは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2025年6月11日 (水)

それでも強いMrs.GREEN APPLE

今週のHot100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

先週のHot100から、リカレントルールを適用。長期間、チャートインしている曲をランクダウンさせる処理を加えたHot100。その影響で、長らくベスト10上位にランクインしてきたMrs.GREEN APPLE「ライラック」がベスト10から陥落しました。しかし、それでもなお強いのが現在のMrs.GREEN APPLE。まず今週は2位に「breakfast」が初登場でランクイン。ダウンロード数及び動画再生回数1位、ストリーミング数2位、ラジオオンエア数18位。また「クスシキ」も先週から変わらず1位をキープ。ストリーミング数は3週連続1位、動画再生回数は5位から4位、ダウンロード数は7位から6位にアップしています。こちらは10週連続ベスト10ヒット&通算8週目のベスト3ヒット。「ダーリン」も10位から9位にランクアップ。ストリーミング数は6位から4位にアップ。これで通算19週目のベスト10ヒットに。「天国」も6位から10位にダウンしたもののベスト10をキープ。これで4曲同時ランクインとなり、リカレントルール関係なく、その強さを見せつける結果となりました。

ただし、1位は初登場。SixTONES「BOYZ」が獲得。TBS系アニメ「WIND BREAKER Season 2」オープニングテーマ。CD販売数1位、ダウンロード数5位、ラジオオンエア数17位。オリコン週間シングルランキングでは初動売上35万6千枚で1位初登場。前作「バリア」の初動36万3千枚からダウンしています。

続いて4位以下の初登場曲です。まず4位にハロプロ系女性アイドルグループ、つばきファクトリー「My Days for You」がランクイン。オリコンでは初動売上6万1千枚で2位初登場。CD販売数2位。前作「ベイビースパイダー」の初動5万9千枚からアップしています。

今週の初登場曲はこの2曲のみ。ロングヒット曲では、まずHANA「ROSE」が先週と変わらず5位をキープ。ストリーミング数は先週と変わらず3位、動画再生回数も先週から変わらず6位をキープ。これでベスト10ヒットは10週連続となりました。

またサカナクション「怪獣」も先週から変わらず7位をキープ。ストリーミング数は先週と変わらず7位、動画再生回数も先週と変わらず9位。これで16週連続のベスト10ヒットとなっています。

今週のHot100は以上。明日はHot Albums&Heatseekers&ボカロチャート!

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2025年6月10日 (火)

ジャニーズ問題での発言が話題ですが

今回も最近読んだ音楽関連の書籍の感想です。

音楽プロデューサーとしてEXILEや平井堅、CHEMISTRYなど数多くのミュージシャンたちの作詞作曲プロデュースを手掛けてきた音楽プロデューサー、松尾潔による著作「おれの歌を止めるな ジャニーズ問題とエンターテインメントの未来」。松尾潔といえば、ジャニーズ問題についてラジオ番組で発言したことをきっかけに、山下達郎が所属する音楽事務所、スマイルカンパニーとの契約が切られたということが大きな話題となりました。今回の著書はそれをきっかけに出版されたコラム集で、第1章ではジャニーズ問題に関する評論や、スマイルカンパニーとの契約解除に至った経緯が記されています。

ただ、表題とは異なり、この著作はジャニーズ問題ばかりを語った本ではありません。第2章、第4章は彼の日刊ゲンダイでのコラム「メロウな木曜日」をまとめたものですし、第3章は彼のラジオでの発言をまとめたもの。また、第5章ではサンデー毎日に掲載された、ジャニーズ問題について、田中康夫と近田春夫との鼎談が載っています。コラムでもジャニーズ問題について取り上げた会もありますが、それ以外のコラムについても多く、ジャニーズ問題が占める割合は多くありません。ちょっと口悪く言ってしまうと、ジャニーズ問題で話題となったことに、これを前面に押し出した売り出した、松尾潔のコラム集、といった内容になっています。

また、ジャニーズ問題についても特別、彼ならではの深い考察があるわけではありません。確かに彼自身、芸能界の内側の人間ですし、過去にジャニーズとも一緒に仕事してきた人物ですが、だからといってジャニーズの内情について詳しく知っている訳でもありません。ジャニーズ問題については厳しい糾弾を行っているものの、真新しい発言といった感じではありませんし、必要以上に過激な発言をしている訳でもありまえん。スマイルカンパニーとの契約打ち切りの過程についても、日刊ゲンダイに既に掲載されていた内容なだけに、ネット情報で事前に知っていましたし、この著書であらたに知ったような事実はほとんどありません。

そういう意味ではこの本でジャニーズ問題についてゴシップ的に新たな事実が知れる、ということはなく、あくまでも松尾潔のコラム集として読むのが正しい読み方のように感じます。そういった前提のもとに彼のコラムを読むと、彼は何気に文章が非常に上手いなぁ、ということを感じます。彼自身、もともと文学の道を志していた文学青年だったようで、大学でも文学について学んでいたようですが、数多くの作詞を手掛け、小説を発表したこともあるだけに、非常に読ませる文章を書いています。

日刊ゲンダイでのコラムということもあって、政治的な発言も多く、それも彼自身が自称するように、左寄りの政治的スタンスによる記載も少なくありません。あまり左翼的な過激な議論はないのですが、一方では左翼的な紋切り型的な論調は少なくなく、ここらへんは立場的に好き嫌いがかなり別れそうな感じもします。個人的には左寄りの立場なので、彼の発言を呼んで腹が立つとか嫌になるとかいったことはなかったのですが、一方ではこれといって斬新な視点や解釈もなかったので、政治的なコラムよりも日常生活や音楽業界の中の人の立場で書かれたコラムの方が断然おもしろく感じられました。むしろ、前述のように読ませる文章を書いてくる方であるだけに、この日常系のコラムや音楽プロデューサーとしての立場から書かれた映画や演劇などの感想の方が非常におもしろく、むしろこの手のコラムをもっと読みたかったな、とも感じたのも事実です。

さて、一方でジャニーズ問題、特にスマイルカンパニーとの業務提携解消についての記載についてあらためて感じるのは、山下達郎は松尾潔への反論としてジャニーズの藤島家との「義理人情」を語っていたのですが、この「義理人情」という抽象的な理由についての違和感でした。本書を読む限り、松尾潔と山下達郎の付き合いも25年に及んでいるようで、決して昨日今日の一時的な付き合いではないようです。藤島家との「義理人情」という話をするのならば、じゃあ松尾潔との間の「義理人情」はどうなるのか?ということは強く感じました。よく、「義理人情」やら「優しさ」やら「笑顔」やら、抽象的なもの大切と語っている会社の社長に限って、ブラック企業であるケースが多々あるのですが、「義理人情が大事」と語っているくせに、山下達郎は松尾潔との人間関係を非常に軽視しており、はっきり言ってしまえば、非常に「冷たい人」という印象をまずは抱いてしまいます。

そもそも「義理人情」なんて抽象的な物言いをするよりも、「当社の最大の取引先であるジャニーズ事務所との関係を悪化させるような発言は認められない」とビジネス上の理由とした方が、よっぽど筋が通っているし、また松尾潔に対しても誠実に感じます。今回の松尾潔からの「真相」を呼んで感じるのは、ジャニーズ問題以前の話として、こういうビジネスの話の中で、「義理人情」なる言葉を持ち出してくるスマイルカンパニーあるいは山下達郎の、不誠実さと人間としての冷たさでした。

そんな訳で、ジャニーズ問題を知るためのだとか、ゴシップ的な要素を期待して読むと期待外れの1冊だったと思います。ただ、一方、松尾潔のコラムとして読むと、思った以上に「読ませる」内容のコラムで、政治的な部分の好き嫌いはあるかと思いますが、非常に楽しめる内容でした。ここらへんの音楽プロデューサーとしての立場のコラム、もっと読んてみたいなぁ。

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2025年6月 9日 (月)

職業音楽家への敬意と愛情を感じる1冊

今回は最近読んだ音楽関連の書籍の紹介です。

今回読んだのは、音楽評論家、萩原健太による著書「グレイト・ソングライター・ファイル 職業音楽家の黄金時代」。現在では、シンガーが作詞作曲まで行うというのが当たり前の時代になりましたが、もともとビートルズが登場する60年代まで、ポップスシーンではプロデューサー、ソングライター、アレンジャー、シンガーが別々の人が担うというシステムが確立されており、まさにその時代には多くのすぐれた職業音楽家が世に登場していました。本作は、そんな黄金時代を彩った職業音楽家たちにスポットをあえた1冊。「スタンド・バイ・ミー」や「監獄ロック」などを手掛けたジェリー・リーバー&マイク・ストーラー、数多くのエルヴィス・プレスリーのヒット曲を手掛けたシド・テッパー&ロイ・C・ベネット、数多くのヒット曲を手掛け、日本でも知名度の高いバート・バカラック&ハル・デヴィッドやキャロル・キング&ジェリー・ゴフィン、さらにはリチャード・カーペンターやABBAのベニー・アンダーソンなど、シンガーソングライターとしての知名度が高いミュージシャンたちや、最後には日本から、村井邦彦、筒美京平も登場しています。

本書は、もともと電子書籍「ERIS」に掲載されたコラムを加筆修正してまとめた1冊となります。職業音楽家たちの生い立ちや仕事ぶりが紹介され、その偉大な業績が語られています。萩原健太は、ご存じの通り、既に音楽評論家の大ベテランでもあるのですが、有数のオールディーズコレクターとしても知られるそうで、その知識量は相当なもの。それに加えてこの本書を読んでまずは強く感じらえるのは、それらのポップソングに対する愛情の高さ。行間からは率直な職業音楽家たちに対する敬意やあこがれを感じることが出来るため、読んでいてこちらも素直に音楽家たちへの敬意を払うことが出来ますし、なによりも登場する曲の数々も聴いてみたいな、と感じさせる内容となっています。

もうひとつ大きな特徴として、萩原健太によるコラムだけではなく、間の本人たちのインタビュー記事も含まれているという点。かなり貴重なインタビューも少なくなく、特に自らの業績について、本人の口から聞けるというのは非常に貴重。こういうインタビュー記事をのせられるあたり、さすが数多くの人脈を持つベテラン評論家・・・という印象を受けます。

どうしても、特に海外のミュージシャンの場合、シンガーに対して注目が集まり、それこそバート・バカラックやキャロル・キング、あるいはフィル・スペクターのようなよっぽどの有名どころを除いて、作家やプロデューサーに注目があつまるケースは多くありません。私も正直、初耳の音楽家も少なくなく、その上で、「あの曲は、この人たちがつくっていたんだ・・・」と思った曲も少なくありません。この本を読んで、遅ればせながら、もっと作家陣やプロデューサーの名前にも注目したいな、と強く感じるようになりました。海外のポップミュージック、特にオールディーズを聴く際には、是非とも読んでおきたい1冊かと思います。

ちなみにあとがきでも記載されていますが、本書で取り上げられていない音楽家たちはまだ多く、特にギャンブル&ハフや、ホーランド=ドジャー=ホーランドのようにな、ここに登場してくる音楽家よりも知名度が高いんじゃないか?と思われるような人たちもまだたくさんいます。音楽雑誌「ERIS」ではまだ連載が続いているようなにですが、是非とも第2弾、第3弾も期待したいところ。非常に勉強になりましたし、また、著者のポップミュージックに対する愛情を感じられて、読んでいて楽しくなるような1冊でした。

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2025年6月 8日 (日)

年を経ても変わらぬ挑戦心

今回は佐野元春が最近リリースしたアルバム2作の感想です。

Title:HAYABUSA JET Ⅰ
Musician:佐野元春&THE COYOTE BAND

佐野元春のデビュー45周年を記念してリリースされたカバーアルバム。過去の彼の代表曲が再レコーディングされて収録された1枚。タイトルである「HAYABUSA JET」は、もともと以前、テレビのバラエティー番組で「隼ジェットに改名したい」という話をして、ちょっと話題になったそうですが、今回、その名前をアルバムタイトルとして使用。この「隼ジェット」とは、彼のアバターだとか。彼の分身が、佐野元春の曲を歌いなおした1枚、そんなアルバムとなっています。

佐野元春というと、現在69歳。キャリア的にも年齢的にもすっかり大ベテランのミュージシャンです。普通、ここまでのキャリアになると基本的には過去の代表曲を、原曲のアレンジに忠実に、懐メロ的に歌いつぐ、そんなミュージシャンがほとんどです。しかし、こと佐野元春に関しては自分の曲を「懐メロ」的にする姿勢を一切拒否しています。今回のアルバムにしても、セルフカバーといっても過去の作品をビックリするほど大きく変化させてきています。通常、彼くらいの年になると「変化」に対して大きな拒否感を抱く人がほとんどの中、彼の年齢を経ても変わらない柔軟なスタンスには驚かされます。

1曲目「Youngbloods」からいきなりストリングスのインストからスタート。原曲に比べてより明るく優しい雰囲気になっています。「だいじょうぶ、と彼女は言った」ではエレクトロサウンドを大胆に導入し、こちらも雰囲気がグッと変わっています。「約束の橋」でも、アレンジに大きな変化はないものの、キーが変わり、より歌詞を聴かせる包容力を感じさせる楽曲に仕上がっています。

さらに今回のセルフカバーでは楽曲タイトルまで変わってしまった曲もあります。「インディビジュアリスト」が「自立主義者たち」と変わったほか、「ダウンタウンボーイ」が「街の少年」と変更。「ダウンタウンボーイ」は、どちらかというと当事者としての主張を感じさせた一方、今回の「街の少年」は、どちらかというと視点が俯瞰的に変化し、そんな「街の少年」たちを見守る視点を感じさせるような歌い方となっています。

そしてなによりもタイトル変更にインパクトがあったのが彼の代表曲「ガラスのジェネレーション」を「つまらない大人にはなりたくない」と、この曲でもっとも印象的なフレーズを曲のタイトルにもってきた点。楽曲的にも焦燥感あふれる原曲に比べると、どこか落ち着いたサウンドには内省的な雰囲気を感じさせます。「つまらない大人になりたくない」と歌ったこの曲ですが、70歳近くなった佐野元春が、「つまらない大人になっていないか?」と問いかけるような楽曲に大きく変化しているように感じます。

確かにアルバム全体には、若さゆえの焦燥感みたいなものは薄れて、大人らしい包容力を感じさせるアレンジになっていたように感じます。ただ、それは決して保守的になった訳ではなく、70歳近くになった今でもなお、新しいサウンドに挑戦しようとする佐野元春の進化を感じさせます。「つまらない大人にはなりたくない」と歌った彼ですが、間違いなく、「つまらない大人」になることを拒否し続ける彼の姿がここにはあります。いまなお歩みつづけるロッカーの佐野元春の「今」がつまった、彼らしいセルフカバーアルバムでした。

評価:★★★★★

Title:The Circle 30th Anniversary Edition
Musician:佐野元春

そしてこちらは、1993年にリリースされた彼の9枚目のアルバム「The Circle」の30周年記念盤。CD2枚組+ブルーレイ2枚で、CDにはオリジナル音源のほか、リミックス盤やライブ音源が収録されたレア音源集、ブルーレイには1994年4月に行われた武道館ライブのライブ映像や当時のインタビュー映像、ミュージッククリップ集が収録。さらには楽曲紹介などをのせたブックレットや復刻パンフレットなどが同封された豪華な内容となっています。

このアルバムに関して言えば、実は私、この30周年記念盤ではじめて聴きました。リアルタイムでも既に日本のポップスアルバムはいろいろと聴いていた時期だったのですが、このアルバムについてはスルーしていました。というのも、佐野元春というと、1993年の段階では自分たちより前の世代のベテランミュージシャン、というイメージを持っていたからです。今から考えると、この時の彼はまだ30代でしたし、デビュー13年というのは、今で言えばまだまだ中堅の枠組みのミュージシャンになるのでしょうが、ヒットシーンの入れ替わりの激しかったあの頃、デビュー13年というのは既に大ベテランの域に入れられていました。

ただ、今から聴いても、まだ高校生だったあの頃、このアルバムを聴いてどこまで気に入ったのかはかなり微妙です。というのも、今から聴いてもこのアルバム、語弊を恐れずにいえば非常に地味に聴こえるからです。このアルバムに関しては、「成熟」「完成度の高い」というキーワードで語られることが多いアルバムのようですが、楽曲は佐野元春らしい力強いロックナンバーが並ぶのですが、わかりやすいフックの効いたメロディーラインの曲はありません。シングル曲は「彼女の隣人」1曲のみで、ミディアムチューンで切ないメロが印象的なこのナンバー、正直、ミスチルや小室系を好んで聴いていたような高校時代の私が聴いても、おそらくピンと来なかったのではないでしょうか。

「成熟」という意味では歌詞にも顕著にみられます。この頃の彼の歌詞は非常にシンプルで、今から聴いても必要最低限の言葉で綴られています。彼の歌詞の特徴である、比較的平易な歌詞が並びつつも、どこか都会的なスタイリッシュさと、内面を描いた歌詞はいろいろと深読みも可能な奥深さを感じます。特にこの時期の曲は、初期の作品のようなティーンエイジャーの焦燥を歌ったというよりも、愛する人への思いを綴った曲が目立ち、その点も成熟さを覚えてますし、おそらく高校生だった自分が聴いても、こちらの面もピンと来なかっただろうなぁ、ということは感じます。

そういう意味ではあらためて感じるのは30代の彼らしさを感じる「大人のアルバム」。決して派手な曲はない1枚ですが、聴きこめば聴きこむほど味わい深さを感じられる傑作だったと思います。さらにレア音源集をおさめたDisc2には、よりソウルに寄った作品があったり、さらには当時、イギリスにおいて流行していたマンチェスタームーブメントの影響を受けたと思われるような楽曲も。この頃でも、新たなサウンドを取り込んでいこうという彼の挑戦心を感じる内容になっていました。

評価:★★★★★

佐野元春 過去の作品
ベリー・ベスト・オブ・佐野元春 ソウルボーイへの伝言
月と専制君主
ZOOEY
BLOOD MOON
MANIJU
自由の岸辺(佐野元春&THE HOBO KING BAND)
或る秋の日
MOTOHARU SANO GREATEST SONGS COLLECTION 1980-2004
THE ESSENTIAL TRACKS MOTOHARU SANO & THE COYOTE BAND 2005 - 2020(佐野元春&THE COYOTE BAND)
ENTERTAINMENT!(佐野元春&THE COYOTE BAND)
今、何処(佐野元春&THE COYOTE BAND)
2022 LIVE AT SENDAI,FUKUOKA,OSAKA(佐野元春&THE COYOTE BAND)
「今、何処」東京国際フォーラム 2023 (LIVE)(佐野元春&THE COYOTE BAND)


ほかに聴いたアルバム

玉置浩二の音楽世界

ご存じ安全地帯のボーカリストで、自身のソロでも活躍している玉置浩二。その彼が他のシンガーに提供した楽曲を収録した作品集。玉置浩二がいろいろな歌手に楽曲を提供していたことは知っていたのですが、あらためてこうやって並べると、数多くのヒット曲を生み出していたことにあらためて驚かされます。また、それらの曲を聴くと、幅広い層が素直に楽しめそうな、日本人の琴線に触れる歌謡曲テイストの楽曲が多いというのは、安全地帯や彼のソロ作とも共通する部分ですが、玉置浩二としての手癖は少なく、「職業作曲家」的な側面を感じさせます。バンドとしてのメロディーメイカーとしても一流ならば、職業作曲家としての一流で、さらにはボーカリストとしてもおそらく日本で指折り(個人的には余裕でベスト3に入る実力だと思っています)。どれだけ音楽の神様に愛されたんだ、と感じてしまうような作品集でした。

評価:★★★★

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2025年6月 7日 (土)

全く新しい刺激的な傑作

Title:45 Pounds
Musician:YHWH Nailgun

45pounds

今、注目をあつめているニューヨークの4人組ロックバンド、YHWH Nailgunのデビューアルバム。彼らの音楽は、ひとことで言うと「エクスペリメンタル・ロック」と題されています。ただ、彼らの音楽性を一言で表現するのは非常に難しいのではないでしょうか。ひとつの楽曲の中で、様々な音楽性を内包しつつ、一種独特の音楽を作り出している彼ら。このアルバムで大きな注目を集めましたが、その注目度は今後、さらに高まっていくのではないでしょうか。

アルバムの冒頭を飾る「Penetrator」。最初はシンセの音色にパーカッションが重なる形でスタートします。シンセの音色はどこかフュージョン的である一方、パーカッションのリズムはトライバルで勢いのあるもの。さらに途中から加わるボーカルパートはデス声気味で、ハードコア的な要素も感じさせます。ベースレスなサウンドで、音数も絞ってあるため、全体的にスカスカな感じはするのですが、ひとつひとつの音がエッジの効いた尖った刃物のようにリスナーの耳に飛び込んでくるような感触もあります。

続く「Castrato Raw(Fullback)」ではループするトライバルなリズムにはファンクの要素も感じさせますし、「Pain Fountain」はノイジーなサウンドにデス声が前に出た構成に、ハードコア的な要素がより強く感じさせます。4曲目の「Animal Death Already Breathing」は、コールアンドレスポンスのスタイルに、トライバルな要素がより強まった作品に。タイトルに沿ったかのような動物の咆哮もサンプリングされています。

中盤の細かく刻むリズムにメタリックなサウンドが重なる「Iron Feet」の不気味さも耳を惹きますし、後半の「Blackout」では力強いバンドサウンドでよりダイナミックさが増した作品に。最後までなんともジャンル分けしがたい、独特の音楽性を貫きつつ、アルバムは幕を下ろします。

アルバムは10曲入り全21分という内容。単純計算で1曲あたり2分程度という長さで、かなり短い内容となっています。ただ、楽曲はテンションの高いアグレッシブな内容。正直、決して「ポップ」と言える内容ではないため、テンションを保つためにも、このくらいの長さがちょうどよいのかもしれません。また、楽曲に関しても、そのスタイル自体は非常に独特なものの、同じようなスタイルの曲が並んでおり、バリエーションとしても決して大きい訳ではありません。その点からもこのアルバムの短さはちょうど良いものだったと思いますし、また、次回作以降、バンドの楽曲がどのように展開していくのか、この真新しさは維持できるのか、ちょっと心配になる要素でもあったりします。

ただ、その点を差し引いても、少なくとも本作に関しては、非常に刺激的で、かつ挑戦的な傑作アルバムであったことは間違いありません。ロックバンドがこの時代においても新たなサウンドを作り出せるという点においても、新たな可能性すら感じさせるアルバムだったと思います。間違いなく、今年のベスト盤候補ですし、是非ともチェックしてほしい1枚。前述のように気になる部分はあるのですが、彼らのこれからがどうなっていくのか・・・とりあえずは注目していきたいと思います。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

From The Private Collection Of Saba And No ID/Saba&No ID

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ビヨンセなども手掛けてグラミー賞受賞経験もあるプロデューサーNo IDと、シカゴ出身のラッパー、Sabaによるコラボアルバム。ジャズやレトロなポップスを基調としたムーディーでメランコリックなトラックが心地よいナンバー。歯切れのよい軽快でテンポのよいラップも耳に残ります。時折入る、メロウな歌モノのナンバーも心地よく、ムーディーなトラックと共に楽しむことが出来ます。特にトラップビート全盛の中、似たようなビートのアルバムが多い中、非常に楽しむことが出来たアルバムでした。

評価:★★★★★

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2025年6月 6日 (金)

ギタポ好きには壺にはまりまくり

Title:Radio DDR
Musician:Sharp Pins

今回紹介するのは、アメリカはシカゴで活動するインディーロックバンド、LIFEGUARDのメンバー、Kai Slaterのソロプロジェクト、Sharp Pinsの新作。彼自身はもちろん、LIFEGUARDというバンドも知る人ぞ知る的なミュージシャンですが、LIFEGUARDはベルセバやMOGWAIも契約していたアメリカのインディーレーベル、マタドール・レコード所属のバンド。マタドールといと、一時期はピチカート・ファイヴやコーネリアスも契約していたことで日本でも知られているレコード会社です。Sharp Pinsは2023年にも「Turtle Rock」というアルバムをリリースしていますので、おそらくこれが2作目となるアルバムのようです。

そんな彼のニューアルバムは、まさに胸がキュンとなるようなキュートなポップソングが流れる、暖かくも懐かしさを感じさせるギターポップの世界。1曲目「Every Time I Hear」で流れ出すノイジーなギターのインストからして、グッとハートをつかまれる人も多いのではないでしょうか。ガレージロック風でローファイなギターのエフェクトは、まさに80年代や90年代のギターポップバンドそのまま。ある種のなつかしさを感じさせます。

「You Don't Live Here Anymore」もアコギ弾き語りで聴かせるフォーキーで切ないメロディーラインが魅力的なギターポップ。シンプルなアコギのサウンドに対して、力強さを感じるドラムのリズムも、あの頃のギタポらしさを感じますし、間奏に流れる分厚く甘いギターの音色にも心を奪われるでしょう。

その後もそんなキュートなギターポップのナンバーが続きます。アコギ弾き語りでフォーク色の強い「Sycophant」や、ダイナミックなバンドサウンドを聴かせる「You Have a Way」、バンドサウンドにガレージ色が強く、60年代の色合いすら感じられる「Is It Better」、ギターサウンドを含めて、TEENAGE FANCLUB直系の「Race for the Audience」など、魅力的なナンバーが続いていきます。

また、サウンドの録音状況も非常に魅力的。かなり荒く、ローファイ気味のサウンドとなっており、ちょっとチープな感じがするのが、逆に楽曲の暖かさをより引き出している感じがします。このローファイなサウンドメイキングもまた、心に響きまくってきます。

もともと彼の母体、LIFEGUARDの所属しているマタドール自体、渋谷系やギターポップという印象の強いレコード会社なのですが、まさに、海外で言えば、ベルセバやTEENAGE FANCLUB、国内で言えば、advantageLucyあたりのネオアコ、ギタポバンドが好きならば、壺にはまりまくりそうなアルバム。個人的にもかなりはまったアルバムで、年間ベスト候補のアルバムがまた出てきた、といった印象を受ける傑作でした。LIFEGUARDというバンドも、こういう音を出すのならば、聴いてみたいなぁ。ギタポ好きには要チェックの1枚です。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

$ome $exy $ongs 4 U/PARTYNEXTDOOR&DRAKE

カナダの人気シンガーソングライターPARTYNEXTDOORが、ラッパーDRAKEと組んでリリースしたコラボアルバム。ご存じの通り、DRAKEもカナダ出身のラッパーですので、カナダ人の人気ミュージシャン同士のコラボとなっています。DRAKEというと昨年はケンドリック・ラマーとのビーフが大きな注目を集め、ケンドリック・ラマーの勝利ということが概ねの理解なのですが、DRAKEも本作ではしっかりとヒットを記録。もともとメランコリックなフロウのラップが多かったDRAKEなだけに、PARTYNEXTDOORとのコラボも相性ピッタリで、哀愁たっぷりの歌モノがメインとなる本作。幅広いリスナー層にアピールできそうな、彼ららしいアルバムとなっていました。

評価:★★★★

DRAKE 過去の作品
Thank Me Later
TAKE CARE
Nothing Was The Same
If You're Reading This It's Too Late
VIEWS
More Life
SCORPION
Care Package
Dark Lane Demo Tapes
Certified Lover Boy
Honestly, Nevermind
For All The Dogs

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2025年6月 5日 (木)

アルバムチャートも大きな変動が

今週のHot Albums

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

リカレントルールが適用されて激変したヒットチャートですが、Hot Albumsでも大きな変化がありました。特に、長くチャート上位にランクインしていたアルバムが軒並みランクダウン。Vaundyの「strobo」が8位から15位、「replica」も9位から17位にダウン。Number_iの「No.I」も10位から24位にランクダウンと、軒並みベスト10から去りました。

一方、思ったほど変化がなかったのがMrs.GREEN APPLEで、「ANTENNA」は6位、「Attitude」は9位にランクイン。それぞれ4位、6位からのダウン、ストリーミング数も「ANTENNA」が2位から5位、「Attitude」が4位から7位にダウンと、リカレントルールの影響は感じさせますが、ベスト10にとどまりました。これで「ANTENNA」は通算37週目、「Attitude」は通算25週目のベスト10ヒットとなりました。

一方1位は、韓国の男性アイドルグループSEVENTEEN「HAPPY BURSTDAY」が獲得。CD販売数及びダウンロード数1位、ストリーミング数2位。オリコン週間アルバムランキングでも初動売上45万6千枚で1位初登場。直近作はベスト盤「17 IS RIGHT HERE」で同作の初動33万3千枚(1位)からアップしています。

2位はSnow Man「THE BEST 2020-2025」が先週の3位からランクアップ。ダウンロード数20位、ストリーミング数は8週連続の1位となっています。これで通算9週目のベスト10ヒットに。

3位には、ちゃんみな「Never Grow Up」が先週の7位からランクアップ。ストリーミング数は5位から3位にアップ。自己最高位を更新しています。

続いて4位以下の初登場盤ですが、LDH所属の男性アイドルグループTHE JET BOY BANGERZ「まさか泣くとは思わなかった」が5位に初登場しています。

また、今週はベスト10返り咲きも。timelsz「Hello!We're timelesz」が14位から7位にアップし、3週ぶりのベスト10返り咲き。ベスト10ヒットを通算12週に伸ばしています。またサザンオールスターズ「THANK YOU SO MUCH」も先週の39位から8位に、JENNIE「ルビー」も24位から10位に、ぞれぞれ大幅に順位を伸ばしています。ここらへんはリカレントルールによりランクダウンしたアルバムの代わりに、ランクアップした模様です。


今週のHeatseekers Songs

https://www.billboard-japan.com/charts/detail?a=heat_seekers

Heatseekers Songsでは、離婚伝説「紫陽花」が初の1位獲得。かなりインパクトのある名前ですが、以前の当サイトで紹介した通り、現在、注目を集める男性2人組のR&Bユニット。本作はTBS系ドラマ「対岸の家事~これが、私の生きる道!~」主題歌に起用され、注目を集めています。Hot100では79位にランクインしています。


今週のニコニコVOCALOID SONGS

https://www.billboard-japan.com/charts/detail?a=niconico

今週はDECO*27「モニタリング」が先週から1位をキープ。これで通算6週目の1位獲得に。ちなみに2位はサツキ「メズマライザー」、さらに3位には柊マグネタイト「テトリス」がランクアップしてきており、若干、代わり映えのしないチャートとなってしまっています。

今週のHot Albums&Heatseekers&ボカロチャートは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2025年6月 4日 (水)

激変したヒットチャート

今週、ビルボードチャートを激変させるような、かなり大きなニュースが飛び込んできました。

Billboard JAPANチャート、リカレントルールを2025年度下半期チャートより導入

このリカレントルールとは、一定の週、チャートインした曲に関して、ストリーミングのポイントを一定の割合で減算するルール。既に本国アメリカでは導入されているようで、日本でも一部ではこのルールの導入について要望されていたようです。確かに、ストリーミングについては、例えば一度プレイリストに組み込むと、特に積極的に聴こうという姿勢がなくても、延々と流し続けてしまう傾向にあります。そういった、ただ漫然と聴かれているだけの曲をヒットとして取り扱っていいのかは難しいところ。音楽を聴くという環境が大きく変化する中、「ヒットとは何か」という模索はまだまだ続きそうです。

今週のHot100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

そして、今週のHot100で非常に大きな影響が出ています。先週まで長らくベスト10上位をキープしてきたMrs.GREEN APPLE「ライラック」が今週一気に14位にランクダウン。特にストリーミング数は2位から19位まで大きくダウンしており、リカレントルールの適用をストレートに受けた結果となっています。ベスト10ヒットは連続58週でストップとなりました。

一方、「ライラック」と入れ替わる形で、「ダーリン」が13位から10位にアップ。2週ぶりのベスト10返り咲き。通算18週目のベスト10ヒットとなっています。他にも「クスシキ」が4位から3位にアップ。こちらは9週連続のベスト10ヒット。「天国」も7位から6位にアップ。今週も3曲同時ランクインとなっています。ちなみにリカレントルールはHot100では通算52週チャートインした曲が対象だそうで、「ライラック」を狙い撃ちにされたのでは?という疑惑も抱いてしまいますし、52週=1年というのはちょっと長すぎるんじゃないか、とも思ってしまうのですが・・・今後の動向も見守りたいところです。

このリカレントルール適用と直接関係があるかどうかは不明ですが、今週も新譜が多いチャートに。まず1位にはBE:FIRST「GRIT」がランクイン。ダウンロード数、ラジオオンエア数、動画再生回数で1位獲得。CD販売数2位、ストリーミング数4位で総合順位は1位獲得。オリコン週間シングルランキングでは初動売上10万枚で2位初登場。前作「Spacecraft」(1位)から横バイとなっています。また、本作のカップリング曲である「夢中」も今週8位にランクイン。ダウンロード数3位、ストリーミング数9位、動画再生回数7位。フジテレビ系ドラマ「波うららかに、めおと日和」主題歌。これで2曲同時ランクインとなっています。

2位は旧ジャニーズ系、Hey!Say!JUMP「encore」がランクイン。フジテレビ系ドラマ「パラレル夫婦 死んだ"僕と妻"の真実」主題歌。CD販売数1位、ダウンロード数16位。オリコンでは初動売上20万4千枚で1位初登場。前作「UMP」の初動21万7千枚(1位)からダウン。

次に4位以下の初登場曲ですが、まず4位に吉本興業所属の男性アイドルグループOCTPATH「また夏に帰ろう」がランクイン。CD販売数3位。作詞作曲はケツメイシのRYOJIが担当しています。オリコンでは初動売上4万5千枚で3位初登場。前作「FUN」の初動5万5千枚(2位)からダウン。

また、先週、新譜ラッシュだった影響もあり、今週はベスト10返り咲きがもう1曲あり、back number「ブルーアンバー」が先週の12位から9位にランクアップ。2週ぶりのベスト10返り咲きを果たしています。

ロングヒット曲ではHANA「ROSE」が6位から5位にアップ。これで9週連続のベスト10ヒットに。ストリーミング数が5位から3位にアップ。一方、動画再生回数は2位から6位にダウンしています。

サカナクション「怪獣」は10位から7位に再びアップ。ただストリーミング数は6位から7位、動画再生回数も6位から9位にダウン。これで15週連続のベスト10ヒットとなりました。

今週のHot100は以上。明日はHot Albums&Heatseekers&ボカロチャートなのですが、リカレントルールはアルバムチャートの方をさらに強く直撃しそう・・・。チャートがどう変化するのか、注目です。

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2025年6月 3日 (火)

藤巻亮太の良さがつまったバランスよいアルバム

Title:儚く脆いもの
Musician:藤巻亮太

ご存じ、現在活動休止中のレミオロメンのギターボーカル、藤巻亮太の約2年2か月ぶりとなるニューアルバム。レミオロメン自体は、メインライターとして数多くのヒット曲を送り出した彼ですが、ソロになって以降、以前と同様の積極的な活動は目立つものの、レミオロメン自体ほどの目だったヒット曲もなければ、正直言って、レミオロメン自体に比べると、ちょっと物足りない感のある作品が続いていたように思います。(もっとも、活動休止前のレミオロメンに関しては、失速気味だったのは否めませんが。

ただ、藤巻亮太のソロとして5作目となる本作、ようやくレミオロメン時代から追い続けているリスナーとしては、これはといったアルバムに出会えたように思います。彼らしい暖かくメロディアスなポップソングが並んだ今回のアルバム。アルバムは、いきなりウォール・オブ・サウンド風のイントロからスタート。1曲目を飾る「桜の花が咲く頃」は、タイトルからしてちょっとベタさも感じさせるシンプルさが魅力的ですが、楽曲自体も春の爽やかな風景を描写したシンプルなポップソングで、レミオロメン時代を彷彿とさせます。

特に印象的だったのは中盤の「愛の風」で、シンプルなアコギのイントロがまずは往年のレミオロメンを彷彿とさせますし、シンプルな日々の描写もまた、レミオロメンらしさを感じます。「真っ白な街」も別れた恋人との思い出が雪の中に消えてしまうように感じる切ないラブソングで、こちらも心に響いてきます。そしてアコギとピアノというシンプルなサウンドで郷愁感たっぷりに聴かせるラブソング「ハマユウ」も印象的。ちょっとスパイス的に入る三線の音色で、ちょっとエキゾチックな雰囲気を醸し出しています。

ここまでどうしてもレミオロメン時代の藤巻亮太を思い起こすような曲ばかりを並べてきましたが、今回ちょっとユニークなのがラスト前の「メテオ」という曲。ヘヴィーなサウンドに、藤巻亮太の闇の部分を描くような歌詞も印象的。ここらへんの自分の内面をさらけ出している歌詞は、レミオロメンではなく、藤巻亮太のソロだからこそと言えるのかもしれません。

サウンド的には基本的にアコースティックな楽曲も顔を覗かせつつも、全体的にはバンドサウンドがメイン。ただ、活動休止前のレミオロメンあたりから、ちょっと無駄に音の多いサウンドが気になってきたのですが、今回のアルバムに関しては、バンドサウンドと歌のバランスもちょうど良く、不必要に分厚すぎる・・・という印象は受けません。

レミオロメン時代を彷彿とさせつつ、ソロとしての藤巻亮太もしっかりと聴かせる、ソロとなってからはもっともよくできたアルバムだったと思いますし、歌詞にしろメロディーにしろ藤巻亮太の魅力がしっかりつまった作品になっていたと思います。ただ一方、ちょっと気になるのが、サウンド的には至ってバンド志向であるという点。このアルバムを聴いていると、サウンド的にはあまりソロアルバムという印象を受けず、おそらく彼自身も、ソロよりもおそらくバンドの方が水が合うのではないでしょうか。事実上の解散状態で活動再開という話は全く聞こえてきませんが、レミオロメンの活動を再開してほしいなぁ。そう思って調べてみると、今年1月にメンバー3人だけで新年会を行っていたりして、メンバーの仲は至って良好な模様。藤巻亮太のソロとして傑作なのは間違いないのですが、是非、そろそろレミオロメンの活動再開を!

評価:★★★★★

藤巻亮太 過去の作品
オオカミ青年
旅立ちの日
日日是好日
北極星
RYOTA FUJIMAKI Acoustic Recordings 2000-2010
Sunshine


ほかに聴いたアルバム

XV e.p./MAN WITH A MISSION

miletと組んだ「絆ノ奇跡」がアニメ「鬼滅の刃」オープニング曲に起用され大ヒットを記録。紅白への初出場も果たしたものの、それと逆行するかのように、しばらく新曲のリリースのなかったMAN WITH A MISSION。約2年9ヶ月ぶりとなる新作は4曲入りのEP盤。ただ、その後に2024年にメキシコで行ったライブ音源がついており、全12曲入りのアルバムに。ちなみに「絆ノ奇跡」はライブ音源として収録されています。

新曲4曲は、ヘヴィーなバンドサウンドを前に出した「Vertigo」「Circles」に日本語詞が入りJ-POP色の強い「REACHING FOR THE SKY」、さらにアコギで軽快なカントリーテイストの「whispers of the fake」と、MAN WITH A MISSIONのある意味、別々の4つの方向性を示した曲が並んでいます。ただ、久しぶりの新譜で楽曲としてもちろんそれなりに期待に沿ったものではあるものの、目新しさも薄い印象。リリース間隔があいていて、久々の新譜の4曲入りというあたり、若干スランプ気味なのか?そろそろフルアルバムのリリースを期待したいところなのですが。

評価:★★★★

MAN WITH A MISSION 過去の作品
Trick or Treat e.p.
MASH UP THE WORLD
Beef Chicken Pork
Tales of Purefly

5 Years 5 Wolves 5 Souls
The World's on Fire
Out of Control(MAN WITH A MISSION x Zebrahead)
Dead End in Tokyo European Edition
Chasing the Horizon
MAN WITH A "B-SIDES & COVERS" MISSION
MAN WITH A "REMIX" MISSION
MAN WITH A "BEST" MISSION
ONE WISH e.p.
Break and Cross the Walls Ⅰ
Break and Cross the Walls II

億万長者/千葉雄喜

千葉雄喜の最新作は、タイトル通り、億万長者になった彼のお金持ち自慢のみが綴られたアルバム。確かにHIP HOPで「お金持ち自慢」なリリックは多いものの、それはアメリカでは黒人差別の中で自分が稼いでいることを差別を行っている白人に見せつけるという意味があるから意味があるのであって、こういう文化を無批判で取り入れるスタイルというのは、日本のHIP HOP黎明期ならともかく、今となって正直どうなの?と思ってしまいます。このアルバムに限りませんが、千葉雄喜のアルバムは、トラックは一本調子の作風となっており(おそらくワザとでしょうが)、ここまで露骨で何のひねりもないお金持ち自慢は正直、聴いていてつまんないです。ただ、確かに彼が客演したメーガン・ザ・スタリオンの楽曲がビルボードチャートにランクインするなど、注目を集めた彼ですが、とはいえ客演クラスで億単位で稼げるほどHIP HOP界隈は景気がいいんでしょうか?というか、単なるノンフィクションなのかもしれませんが。ただ、それを差し引いてもテーマ的にも何も面白くなく、かなり厳しい内容のアルバムでした。

評価:★★

千葉雄喜(KOHH) 過去の作品
UNTITLED
worst
STAR

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2025年6月 2日 (月)

ちょっと地味なアルバムですが

Title:Streetlife Serenade 50th Anniversary Deluxe Edition
Musician:Billy Joel

昨年、Billy Joelは日本に来日公演を行い大きな話題となりました。また、彼のコロンビア・レコードでのデビュー作「Piano Man」の50周年記念盤がリリースされ、こちらも大きな評判に。いずれも、今なお変わらない、日本におけるBilly Joelの人気を実感させる結果となっています。そして今回リリースされたのが、その「Piano Man」に続く50周年記念盤の第2弾。1974年にリリースされた「Streetlife Serenade」の50周年記念盤がリリースされました。

今回もかなり豪華な内容で、Disc1は最新のマスタリング音源によるSA-CD、CDのマルチ・ハイブリッド盤。さらにライブ音源が4曲、ボーナストラックとして収録されています。一方、Disc2には1975年6月にサンフランシスコのグレート・アメリカン・ミュージック・ホールで行われたライブ音源を収録。さらに前回と同様、今回も当時のレコードジャケットや帯なども再現したアイテムも同封。当時のメディア配布用プレス・キットなども再現され、かなりボリューミーなのですが、ファンにとってはたまらない内容となっています。

正直言うと、このアルバム自体は非常に地味な印象は否めない1枚です。事実上のデビュー作であり、「Piano Man」などのBilly Joelの代表曲が収録されている前作と、彼のブレイク作となったこの2作後の「The Stranger」に挟まれて、本作と、次作「Turnstiles(邦題 ニューヨーク物語)」は、Billy Joelのアルバムとして語られることもあまり多くありません。実際、2004年にリリースされたベストアルバム「Piano Man:The Very Best of Billy Joel」にも本作の曲は1曲も収録されていません。

しかし、とはいってもこのアルバムにも非常に魅力的な楽曲は少なくありません。街の人たちを描写した美しいピアノバラードであるタイトル曲的な「Streetlife Serenader」からブルースロック的な「Los Angelenos」、さらに序盤で印象的なのは郷愁感あふれる「The Great Suburban Showdown」で、都会で生きていこうと決めた自分が、ふるさとの田舎に別れを告げにかえるナンバー。この手のテーマの歌詞を歌うシンガーは少なくありませんが(槇原敬之の「遠く遠く」など)、やはり心にグッと来るものがあります。

また、アルバムの核となっているのが中盤の「The Entertainer」。タイトル通り、エンタテイナーの悲哀を歌った楽曲なのですが、歌詞と裏腹にメロディーラインは軽快。ピアノを軽快に弾きつつ、バンジョーのリズムも入ったカントリー風の軽快なナンバーで、メロのインパクトも十分。ちなみに本作はシングルとして当時、全米34位を記録。彼のシングルでは初のベスト40入りを果たした曲でもあります。あと、KANちゃんの名曲「Songwriter」の元ネタですね。

確かにアルバム全体として地味なのは間違いありませんし、基本的にどの曲に関しても、他のアルバムに似たような曲でもっと優れた曲があるよな・・・と思ってしまうのも事実。そういう意味でも目立たないアルバムなのは仕方ないかもしれません。ただ、その点を差し引いても前述のように、このアルバムでも数多く魅力的な楽曲が収録されているのは事実。特に、街に普通に生きる人たちを描写した歌詞は見事で、このアルバムの大きな魅力となっています。Billy Joel初心者の最初の1枚としては微妙なところですが・・・チェックして間違いなく損のないアルバムです。

そしてDisc2の方は、このアルバムをリリースした直後のステージ。MCも入っているのですが、これがまた若々しい。アグレッシブなピアノの演奏を含めて、若いBilly Joelの演奏を楽しむことが出来ます。特に選曲は本作だけではなく、「Piano Man」からの曲もありますし(肝心な「Piano Man」は残念ながら演奏されなかったようですが)、次回作に収録される楽曲も歌っています。こちらはファンなら間違いなく要チェックのライブ音源でしょう。

前作に引き続き、非常に魅力的なコンテンツとなっていた50周年記念盤。前作同様、どちらかというとファンズアイテム的なものではあるのですが、Billy Joelの魅力に様々な形で触れられる作品でした。これに続いて次回作「Turnstiles」、さらには「The Stranger」と50周年記念盤が続いていくのでしょうか?でも、これから先、名盤が続いていくから、「50周年記念盤」も続いていきそうだなぁ。

評価:★★★★★

BILLY JOEL 過去の作品
LIVE AT SHEA STADIUM
She's Always a Woman to Me:Lovesongs
A Matter of Trust: The Bridge to Russia
Live Through the Years
JAPANSESE SINGLES COLLECTION-GREATEST HITS-
Live At Yankee Stadium
Live Through The Years -Japan Edition-(ビリー・ザ・ベスト:ライヴ!)
Piano Man 50th Anniversary Deluxe Edition

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2025年6月 1日 (日)

フォークに寄った新作

Title:For Melancholy Brunettes(& sad women)
Musician:Japanese Breakfast

前作「Jubilee」が高い評価を受け、グラミー賞にまでノミネートされたJapanese Breakfast。リトル・ビッグ・リーグというバンドで活動していた女性ボーカリスト、ミシェル・ザウナーによるソロプロジェクトなのですが、そんな彼女の約3年9ヶ月ぶりのニューアルバムとなります。ちなみに前作でも書いたのですが、残念ながらミュージシャン名にも関わらず、日本とは直接的な関係はないようです・・・。

前作「Jubilee」はタイトル通り、エレクトロサウンドを中心とした様々なサウンドを取り入れ、祝祭色あふれる明るいポップアルバムに仕上がっていました。その前作と比べると、今回のアルバムはちょっと色合いが異なってきます。アルバムの冒頭「Here is Someone」でまずは流れ出すのは美しいアコギのアルペジオの音色。清涼感あるボーカルとサウンドの美しいドリームポップなのですが、フォークの色合いが強い作品となっています。さらに続く「Orlando in Love」ではストリングスが加わり、よりフォーク色の強いポップソングに仕上がっています。

ちょっと雰囲気が変わるのが3曲目「Honey Water」。分厚くノイジーなギターサウンドが特徴的。ちょっと気だるくダウナーなボーカルに、微妙にゆがんだギターノイズが加わり、完全にシューゲイザーからの影響を感じさせるような楽曲に。シューゲイザー好きの自分としては、かなりツボにはまるポップスでした。

中盤もギターアルペジオで聴かせる「Little Girl」「Leda」のようなフォーキーな楽曲も。清涼感ある美しい歌声とメロディーラインが魅力的。終盤にはジェフ・ブリッジーズをゲストに迎えたブルージーな「Men in Bars」や、郷愁感あふれるカントリー色も強い「Winter in LA」など聴かせつつ、最後はアコギをかき鳴らし、フォーキーに聴かせる「Magic Mountain」で締めくくります。

エレクトロサウンドを積極的に取り入れ、明るくポップ色の強かった前作とは変わり、フォークやカントリー、ブルースの色合いが強くなってオーガニックな色が強まり、雰囲気がちょっと変化したアルバムに仕上がっています。ただ一方、清涼感ある歌声やメロディーラインはそのままですし、全体的に明るさを感じさせる点はそのまま。そういう意味では根本の部分は前作同様ですし、この点がJapanese Breakfastのコアな部分と言えるのかもしれません。おそらく、前作が気に入った方なら、本作も問題なく気に入るのではないでしょうか。

個人的にも前作同様、この明るくポップなメロディーラインにかなりはまった作品。シューゲイザー色の強い作品はもちろんツボにはまりましたし、それ以外にもとても心地よく楽しめることが出来ました。正直、全体的な出来で言えば前作の方が上だったかなぁ、とも思うのですが、こちらも文句なしの年間ベストクラスの傑作アルバムです。

評価:★★★★★

Japanese Breakfast 過去の作品
Jubilee

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