かつてのファンに今の爆風スランプを伝えたベストアルバム
Title:40th Anniversary BEST ALBUM IKIGAI 2024
Musician:爆風スランプ
80年代から90年代にかけて活躍し、「Runner」をはじめ数多くのヒット曲を世に送り出して一世を風靡したロックバンド、爆風スランプ。1999年に活動休止した後は、単発的にライブなどを行っていたこともあるのですが、昨年3月、デビュー40周年を機に再始動。新曲をリリースし、ライブツアーも実施。さらに40周年のベスト盤もリリースしました。今回紹介するのは、久々の再始動でリリースされた、そのベスト盤です。
今回のベスト盤は、今回はじめて爆風スランプを知ったような、初心者に向けたベスト盤、という感じではありません。例えば彼らの大ヒット曲となった「Runner」は中国語バージョンでの収録となっていますし、「リゾ・ラバ」「月光」「大きなたまねぎの下で~はるかなる想い」「涙2(LOVEバージョン)」といった代表曲は収録されているのですが、彼らの大ヒット曲のひとつである「旅人よ~The Longest Journey」は未収録となっており、必ずしも彼らの代表曲を網羅している感じではありません。
全体的にはどちらかというと、かつてのファンへのご挨拶的なベスト盤という印象が強く、デビューから40年たった今、ファンへ聴いてほしい楽曲を並べたようなアルバム、といった感じがします。例えばユニークなのが「マイ・ラブ」シリーズと言われる、彼らの故郷について歌った曲を今回フル収録している点。特に「流山マイ・ラブ」は今回、初音源化のようで、まさに待望の音源化となっています。
さらに耳を惹くのが「War」で、1992年のアルバム「アジポン」に収録されている、かなりストレートな反戦曲を今回リテイクされています。1992年は当時、日本が戦争に巻き込まれるとして反対意見が根強かったPKO協力法が成立した年ですので、おそらくそれに触発された曲と思われます。今回、原曲で「50年間も あなたの国は/人を殺さずに きたはずだろうに」という歌詞を「80年間」とリメイクして歌っています。特にここ最近、ウクライナやパレスチナなど戦争が激化している今だからこそ、歌わなくてはいけない曲という強い意志を感じます(ただその一方、「人を殺さずに~」の歌詞を「50年間」から「80年間」にアップデートできたということ、日本人として誇れるのかもしれません)。
もうひとつ大きな特徴として、ロックバンドとしての彼らの実力を強く感じさせるアルバムになっていた、という点でした。特に新曲「IKIGAI」では、いきなりギターのチョッパーからスタートし耳を惹きますし、楽曲自体もレッチリばりのファンキーなミクスチャーロック。歌詞はむしろ、今の爆風スランプのファンの世代の心境に沿った歌詞がユニークなのですが、この中高年の心境を呼んだ歌詞とカッコいいバンドサウンドとのギャップがまた、爆風スランプらしいユニークさを感じます。
今回のアルバム、Disc2が原曲をリマスタリングしただけなのに対して、Disc1では今のメンバーによってリテイクしているそうです。そしてこのリテイクされた音源が、よりバンドサウンドを前に押し出したアレンジとなっており、ロックバンドとしての彼らの実力を聴かせるような演奏となっています。例えば前述の「War」もトライバルな力強いドラムとファンキーなベースラインに惹かれますし、「たいやきやいた」もかなりヘヴィーでメタリックなバンドサウンドが印象的となっています。
爆風スランプというと、特に「Runner」のヒット後に関しては、「ポップなヒット曲を歌うバンド」というイメージが強く、一般的にロックバンドとしての印象は薄くなってしまっているのですが、このアルバムを聴くと間違いなくロックバンドとしての実力を実感できる演奏を聴かせてくれています。昨年、私も彼らの再結成ツアーに足を運んだのですが、そのステージでも彼らのバンドとしての実力を強く感じました。今回のベストアルバムでは、そんな彼らのロックバンドとしての矜持を強く感じましたし、今回、あえてこれらの曲をリテイクした意図はそこだったのかもしれません。
そんな訳で、再結成後のベストにありがちな、初心者に向けたベストアルバム、というよりもむしろ、かつてのファンにむけて、今、爆風スランプとして伝えたい曲を収録したベストアルバム。また、ロックバンドとしての爆風スランプの実力も再認識できた作品でした。さて、再結成ツアーも終わった彼ら、今後は本格的に活動を再開するのでしょうか。公式サイトを見ても、現時点では昨年末以来、新たなニュースは出ていないようなので、ちょっと気になるのですが・・・。リテイクの曲を聴く限り、バンドとしての状況は悪くないようですので、次はオリジナルアルバムを期待したいのですが。
評価:★★★★★
ほかに聴いたアルバム
TB DJ REMIXES/tofubeats
tofubeatsの初期の作品から最新のEPの作品まで、広く網羅したリミックス作品集。これらの曲は実際に彼のライブやDJの現場でプレイしていた曲をまとめたそうで、そのため、フロア対応な曲が入っており、ダンサナブルな楽曲を素直に楽しめるような作品が並んでいます。確かに、こういった楽曲がライブやクラブで流れていたら、何も考えず身体が動きそう・・・と思う一方、ポップなメロディーラインやところどころに感じられるユーモアセンスが聴いているだけで楽しくなってしまうような作品に。tofubeatsのライブに足を運びたくなってくるような、そんなアルバムでした。
評価:★★★★★
tofubeats 過去の作品
Don't Stop The Music
ディスコの神様
First Album
STAKEHOLDER
POSITIVE
POSITIVE instrumental
POSITIVE REMIXS
FANTASY CLUB
RUN
TBEP
RUN REMIXES
REFLECTION
NOBODY
For Prayers/ZIGGY
昨年末、ZIGGYに関してはショッキングなニュースが入ってきました。森重樹一が事務所との契約を突然解除。ライブを含めて活動休止という事態になりました。なんでも彼は極度の被害妄想、強迫性障害の状況にあるということで、活動が出来ない状況のよう。過去からアルコール依存であることも告白しており、今後の彼の健康状況が気になるところです。
このニュースが驚いたのは、ZIGGYとしての活動はむしろここ最近、かなり活発な状況だったから。特にここ最近は積極的なリリースも相次いでおり、かつアルバムの内容としても充実した内容となっています。本作も前作からわずか1年というインターバルでリリースされたニューアルバム。内容的にはかなりダイナミックなハードロック。正直、目新しくもなく、ある意味、ベタなハードロックという感もあるのですが、楽曲としては勢いもありインパクトも十分。なによりも森重樹一のロックへの率直な愛情を感じさせる作品になっています。これが健康状況が悪化している中で作られたというのが信じられないくらい・・・。今後の森重樹一の動向には非常に気にかかるところなのですが、適切な治療を受けて、復帰できるように期待したいところ。ただ、無理はしないようにも願いたいところなのですが。
評価:★★★★★
ZIGGY 過去の作品
SINGLE COLLECTION
2017
ROCK SHOW
HOT LIPS
SDR
SO BAD,IT'S REAL
THE LATEST BEST
| 固定リンク
「アルバムレビュー(邦楽)2025年」カテゴリの記事
- カネコアヤノの2つの側面(2025.12.27)
- ミッシェルの最後(2025.12.23)
- 野田洋次郎らしさとRADWIMPSらしさがほどよく調和(2025.12.22)
- 170万枚を売り上げたスピッツの代表作(2025.12.08)
- インディーズ時代の音源を再録(2025.12.07)



コメント