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2025年3月

2025年3月31日 (月)

サウンド的にはちょっと懐かしさを感じつつもカッコよさは健在

Title:94-Now: Collaborations
Musician:ASIAN DUB FOUNDATION

ロックやダブを基調としつつ、トライバルなサウンドやバングラ、ジャングルなどといったサウンドを取り込んだ無国籍なビートが特徴的なイギリスのバンド、ASIAN DUB FOUNDATION。日本でもフジロックに多く参加していたほか、特に90年代から2000年代にかけて、oasisやblurといった他のイギリスのロックバンドと共に、日本のメディアでもよく紹介されていたことから、高い人気を誇りました。そんな彼らも今年でデビュー30周年。その30周年を記念してリリースされたのが、このコラボレーションアルバムです。

彼らは数多くのミュージシャンたちとコラボを繰り広げており、本作でもIggy PopやPrimal Screamといった大御所ロッカー、Public EnemyのChuck D、Stewart Leeという名前は日本人にとってはなじみがありませんが、イギリスのコメディアンのようですし、他にも日本からDry&HeavyやAudio Activeといった面子このコラボ曲も収録されています。これだけ多くのコラボが行われているのは、やはり彼らの音楽が無国籍であるからゆえに、様々なタイプの人たちともコラボしやすいのかもしれません。

そして、どのコラボもヘヴィーなサウンドや力強いビートに載せた勢いのある楽曲となっており、単純に言ってしまえば非常にカッコいい楽曲になっている点が大きな特徴。冒頭を飾るのはIggy Pop御大とのコラボ「No Fun」。Iggy Popのロッキンなボーカルで、すっかりIggy Pop色に染まっている一方、ダブも取り入れた独特のグルーヴ感はADFならでは。続く「Comin'Over Here」は、前述のコメディアンとのコラボで、彼の語りが入っている形なのですが、エレクトロサウンドを入れたダイナミックなビートが印象的。ビックビートのサウンド、というと、ちょっと懐かしくも感じさせる楽曲になっています。

Primal Screamとのコラボ「Free Satpal」もダイナミックなロックのサウンドが特徴的。こちらはヘヴィーなバンドサウンドにラップが乗ったスタイルの楽曲に仕上がっていますし、Chuck Dとのコラボ曲「Black Steel in the Hour of Chaos」も彼の力強いラップが耳に残る、こちらはよりHIP HOP色の強い楽曲に仕上がっています。

また、日本勢とのコラボ曲も魅力的で、Dry&Heavyとのコラボ「Raj Antique Stone」も、Likkle Maiのメロウで伸びやかなボーカルが印象的なエキゾチックさを感じさせる楽曲。Audio Acticeとのコラボ「Collective Mode」はミディアムチューンで哀愁たっぷりのダブのナンバー。いずれもADFのダブ、レゲエの要素を強調したナンバーに仕上がっています。

このように、コラボ相手によって様々なスタイルを見せつつも、全体的にはダブやレゲエ、さらにはバングラの要素を取り入れた強いビートという共通項もあり、ADFらしくまとめあげているコラボに。また、ロックな楽曲もそうですし、HIP HOPなコラボはさらに顕著なのですが、全体的に90年代や2000年代の雰囲気を感じるようなコラボが主で、ちょっと懐かしさも感じさせます。そういった点を含めて、非常にカッコよく、そして同時に聴きやすさを感じさせる作品となっていました。

ASIAN DUB FOUNDATIONのカッコよさがよく出ていた上に、様々なミュージシャンとのコラボにより楽曲にバリエーションが増していた作品。非常に魅力的なアルバムであり、かつ、ADFの最初の1枚としても最適なアルバムかも。デビュー30周年を迎えた彼ら。正直、一時期に比べて話題になることが少なくなってしまった感は否めませんが、その独自性はいまも健在。これからの活躍にも期待したいところです。

評価:★★★★★

ASIAN DUB FOUNDATION 過去の作品
Time Freeze 1995/2007
PUNKARA
A History Of Now
THE SIGNAL AND THE NOISE
Access Denied

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2025年3月30日 (日)

メンバーがガラリと変わった久々のオリジナルアルバム

Title:The Human Fear
Musician:Franz Ferdinand

2017年に、ツインボーカルをとっていたニック・マッカーシーが脱退。さらに2021年にはドラマーのポール・トムソンが脱退と、メンバーの脱退、一方では新メンバーであるディーノ・バルドー、ジュリアン・コリー、さらにはオードリー・テートと加入が続き、バンドとして大きな変動が起きたフランツ・フェルディナンド。その影響もあって、途中、ベスト盤を挟みつつも、オリジナルアルバムとしては2018年の「Always Ascending」以来、実に約7年ぶりのニューアルバムとなりました。

フランツ・フェルディナンドというバンドは、もともとリズミカルでポップな楽曲が多く、難しいこと抜きで直感的に楽しめる作風が特徴的でした。今回のアルバムに関しては、特にサウンド面に関して、まさに直感的に楽しめる楽曲が多かったように思います。特に前作「Always Ascending」については、ニック脱退後の作品ということもあって、軽快なロックチューンという主軸はそのままであったものの、サウンド面については若干、次を模索しているような側面を感じられました。一方、今回のアルバムのサウンドはより直感的。そういう意味では、初期の作風に近づいた感もある作品でした。

先行シングルともなっている「Hooked」は4つ打ちの打ち込みのリズムこそ目新しい感はあるものの、リズミカルなビートはまさに彼ららしい軽快なポップチューンに。同じく先行シングルの「Night Or Day」はピアノでリズミカルに聴かせるメランコリックなナンバーもまさに彼ららしい作品に感じます。何よりアルバムの冒頭を飾る「Audacious」は軽快なガレージサウンドのギターの出だしが、実に彼ららしい作品。サビの部分はストリングス入って伸びやかでスケール感を覚える作品になっていますが、全体的に軽快でメロディアスなポップナンバーは、フランツ・フェルディナンドらしさを感じさせる楽曲と言えるでしょう。

その他も軽快なリズムでメランコリックなメロを聴かせるガレージ風の「Built It Up」やメランコリックでポップなメロが耳を惹く、疾走感あるギターロックの「Bar Lonely」、レトロな雰囲気のギターリフに彼ららしさを感じる「The Birds」など、メランコリックなメロディーラインに軽快なリズム、ガレージロック風のシンプルなバンドサウンドという、彼ららしさを感じる楽曲が並びます。「The Doctor」のようにシンセのサウンドを入れた曲も耳に残りますが、そういった曲も含めて、全体的に直感的に楽しめるロックチューンが並ぶアルバムになっていました。

メンバーのうち2人が脱退し、入れ替わりに3人が新規加入し、ガラリと様相の変わったフランツ・フェルディナンド。バンドのメンバーは大きく変わりましたが、だからこそ逆に、フランツ・フェルディナンドらしさをさらに追及したアルバムになったのかもしれません。毎回、ポップなギターロックを楽しませてくれる彼らですが、今回も文句なしに楽しいアルバムに仕上がっていたと思います。彼ららしさを満喫できる傑作アルバムでした。

評価:★★★★★

FRANZ FERDINAND 過去の作品
TONIGHT
Right Thoughts,Right Words,Right Action
FFS(FFS)
Always Ascending
Hits To The Head

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2025年3月29日 (土)

ディスコブーム関連3アイテム

今日紹介するのは80年代に流行したディスコについて取り上げたアイテムです。

Title:昭和40年男 presents ミッドナイトステーション~踊れ!ディスコ DE 歌謡曲~

昭和40年代生まれの男性が青春時代を送っていた頃の流行を取り上げるカルチャー誌「昭和40年男」。同誌とコラボしたコンピレーションアルバムが本作で、70年代に大流行したディスコミュージック・・・そのものというよりも、そのディスコミュージックに影響を受けた歌謡曲を取り上げたコンピレーションアルバムとなります。

年代的に、ディスコがブームになった頃は、私がまだ赤ちゃんだった頃の話。そのため、ディスコブームについてはリアルタイムには全くわからないのですが・・・このコンピを聴くにあたって、このディスコブームを特集した雑誌「昭和40年男」も読んでみました。

「昭和40年男 2024年10月号」。特集記事は「魅惑の昭和ディスコナイト」となります。タイトル通り、70年代のディスコブームについて取り上げた特集記事。ただ、読んでみたのですが、取り上げているのは主にディスコブームという現象そのものであり、音楽そのものへの言及はあまりありません。

ただ、このディスコの特集記事を読んでつくづく思うのは、私が生まれた昭和50年代とはたった10年の差しかないのに、文化的にはかなり異なったものを感じます。これは以前もここにチラッと書いたかと思うのですが、ディスコにおいてはみんな同じステップで踊ることを称賛されていたようです。一方、私たちの世代にとって、特にサブカルチャーシーンにおいて、音楽に対してみんな一緒のポーズで踊るのは、ある意味、馬鹿にされる行為となっていました(ヒットチャートの中心にいたミュージシャンたちのライブでは、みんな一緒のポーズで踊っていたので、それに対するカウンターということもあります)。たった10年で、ここらへんの価値観がガラリと変化した、というのは非常に興味深く感じます。

また、特集記事があくまでもディスコブームという現象そのものであり、音楽的にはディスクガイドはあるものの、あまり多くは割かれていません。そのため、残念なことに前述のコンピレーションアルバムとの連携記事もなし。せっかくなんだから、連携記事くらい載せてほしかったのですが・・・コラボ企画でありながら、非常に残念に感じました。

さて、肝心のコンピレーションアルバムの感想に戻るのですが、ディスコという観点からすると、正直言ってちょっと微妙な印象が否めません。というのも、前述の通り、収録されているのはディスコソングそのものではなく、ディスコに影響を受けた歌謡曲。そのため、「これ、本当にディスコの範疇に入れていいの??」といった感じの曲もちらほら見受けられます。

確かに、ラッツ&スターがディスコに挑戦した「夢のディスコティック」という曲や、アメリカの女性ボーカルグループ、スリーディグリーズが日本独自でリリースした「にがい涙」など、聴きどころもあるのですが、ディスコソングというイメージで聴き始めると、少々肩透かしを食らう感じは否めせん。最後を占めるバブルガム・ブラザーズの「WON'T BE LONG」は1991年のヒット曲で、ディスコブームとは直接関係ないと思うのですが、雑誌の中で彼らがディスコブームについて、インタビューを受けていた影響でしょう。唯一、雑誌とリンクした収録曲ではあるのですが。

評価:★★★

特に、同じディスコをテーマとしたコンピレーションアルバムでも、同じ時期に聴いたこちらは、B級的なディスコソングが詰まっており、ある意味、ディスコブームの猥雑さがよくわかる興味深く、そしてとても楽しいコンピレーションアルバムに仕上がっており、こちらの方が、ディスコブームをより反映したコンピレーションとなっていました。

Title:ゴールデン☆ベスト DISCO TRAIN − ワーナー・レア・ディスコ・クラシックス 1976−1979 Selected by T−GROOVE

こちらは、レコード会社を横断してリリースされる同一タイトルの廉価版ベストシリーズ「ゴールデン☆ベスト」でリリースされた1枚なのですが、タイトル通り、1976年から79年のディスコブーム真っただ中でリリースされたディスコソングのうち、「レア音源」とも言える作品をまとめたもの。

これがどの曲も、ブラックミュージックやファンクの影響をダイレクトに受けた曲が並んでおり、どす黒いグルーヴ感あふれる曲になっています。もっとも、とはいうものの基本的にアメリカのファンクやソウルミュージックを見よう見真似で取り入れたもの。そのため、物まね的になっていたり、ちょっとチグハグ感が否めないものとなっていたりもするのですが、そこらへんがまたB級っぽさを醸し出しており、それはそれで非常にユニークかつ独特のグルーヴ感を出していました。

特にB級感が強いのは、当時の流行歌を無理やりディスコ調にアレンジし、カバーした曲で、クレイジーキャッツの「ウンジャラゲ」のカバーや、植木等の「スーダラ節」のカバー「ソウル・スーダラ」など、原曲とソウルミュージックを混ぜ合わないのにむりやり混ぜ合わせた感がB級度合いを増しており、奇妙なグルーヴ感を出しています。

かなりレア感のある楽曲で、癖もつよい曲が並んでいるため、正直万人受けといった感じのコンピではないものの、昭和のレアグルーヴに興味があるのならば、間違いなくお勧めできるアルバムかと思います。そうでなくても、この癖の強いグルーヴ感に意外とはまるかも?B級感がたまらない、コンピ盤でした。

評価:★★★★★

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2025年3月28日 (金)

「祭り」をテーマに複雑な心境を描く

Title:キメラ
Musician:あっこゴリラ

Chimera

フルアルバムとしては約6年ぶりとなるあっこゴリラのニューアルバム。今回のアルバムのテーマは「祭」ということ。そのため、全体的に強いビートを全面的に押し出したリズミカルなトラックが並んでいます。また、その上で特に特徴的だったのが和風なビートやサウンドを感じさせる曲も少なくない点。例えばタイトルチューン「Chimera」ではレゲエ風のリズムの中に、日本の祭囃子がサンプリングされていますし、「逆境天使」でもリズミカルな和太鼓のビートが入っています。

そんな和の部分を感じさせつつ、そんな和のビートも含めて最後までリズミカルなトラックに心躍らせれる今回のアルバム。後半に至っても、軽快でコミカルなエレクトロビートが展開される「ふぉえば」やハイテンポなエレクトロビートで、楽曲タイトル通りのレイヴ感を覚える「magma rave」「あさいゆめ」で聴かせる軽快なビートも、トライバルながらもどこか和風な祭囃子を感じさせるトラックとなっています。

楽曲は全18曲入りとかなりボリューミーな構成となっているのですが、1曲あたり2、3分程度の曲ばかりとなっていることもあり、アルバムの長さ自体は50分弱程度に収まっています。あっこゴリラのアルバムは、リリックの面のかなり強い主張が耳を惹く反面、トラックやフロウの面で少々単調で、インパクトが弱い、というイメージがありました。ただ今回のアルバムは「祭」をテーマに強いビートを前面に押しだした楽曲となっており、祭囃子などを取り入れてバラエティーが増したほか、特に聴いていてダレてくるような後半にはインパクトもあるエレクトロビートの曲を入れてくるなど、しっかりと耳を惹かせる構成になっています。そのため、いままでのアルバムの中では一番インパクトもあり、間違いなくしっかりと聴かせるアルバムになっていたように感じます。

一方、リリックに関して言えば、今回のアルバムは以前の作品にように、どぎついテーマ性で赤裸々に綴るような、そんな楽曲はありません。しかし、それでも強烈なメッセージ性を持ったリリックは今回も健在。特にアルバムタイトルの「キメラ」は生物学上、同一個体内に異なる遺伝情報を持つ遺伝子が混じりあっている状況のことだそうで、人間として複雑な心境を読み込んだようなリリックが目立ちます。

タイトル曲である「Chimera」は、まさにそんな複雑な心境を抱えつつ、前に進もうとするメッセージ性の強い楽曲。「笑う野良犬の冒険」も、社会を皮肉りつつ、厳しい現状の中でなんとか先へ進もうとする心境をつづった作品。「逆境天使」も、タイトル通り、逆境だらけの自分を皮肉りつつ、その中で生きていこうという決意を歌っています。全体的には、そんな複雑な心境をつづった中で、前に進んでいこうという力強さを感じさせるリリックが特徴的。トラックと合わせて、しっかりとインパクトを感じさせる内容に仕上がっていました。

そのため、いままでリリックのテーマ性にインパクトを感じながらも、アルバム全体としてはあと一歩という印象も強かったあっこゴリラの作品の中では、申し分なく傑作と言えるアルバムにようやく出会えた感があります。個人的にはこれまでの作品の中でベストの出来だったように感じます。ちょっと久しぶりのアルバムになりましたが、待ったかいがあったとも言える作品でした。

評価:★★★★★

あっこゴリラ 過去の作品
GRRRLISM
ミラクルミーE.P.
NINGEN GOKAKU


ほかに聴いたアルバム

HIKARU UTADA SCIENCE FICTION TOUR 2024/宇多田ヒカル

昨年、宇多田ヒカルが行った約6年ぶりのライブツアー「HIKARU UTADA SCIENCE FICTIOU TOUR 2024」。その最終日の9月1日に横浜アリーナで行ったライブの模様を収録した映像作品がリリースされました。配信でも音源がリリースされています。基本的には彼女の過去の代表曲をほぼリリース順に並んでおり、ラストはリリース時にセンセーショナルな話題を呼び起こしたデビューシングル「Automatic」を披露しています。過去の代表曲を、今の彼女が歌っているセルフカバーベストアルバムとしても捉えることが出来る内容。デビュー当初もその歌のうまさが話題となりましたが、大人になった今ではそこに大人の色気も加わったボーカルが魅力的になっています。

評価:★★★★★

宇多田ヒカル 過去の作品
HEAT STATION
This Is The One(Utada)
Utada Hikaru SINGLE COLLECTION VOL.2
Fantome
初恋
One Last Kiss
BADモード
Hikaru Utada Live Sessions from Air Studios
SCIENCE FICTION

blue night/Chilli Beans.

最近、人気上昇中の女性3人組ロックバンドの新作。いかにもパンクバンド然としたバンド名に反して、バンドサウンドを押し出したような曲もあるものの、ピアノやエレクトロサウンドなどを取り入れてドリーミーなポップな曲がメイン。良くも悪くもよくまとまったポップソングを奏でているという印象で、YUIや絢香、家入レオを輩出した「音楽塾ヴォイス」出身という話から、なんとなく前述のミュージシャンたちと同一系統の匂いは感じます。

評価:★★★★

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2025年3月27日 (木)

さすがの1位獲得

今週のHot Albums

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

今週の1位はあの大御所が堂々の1位獲得です。

今週1位はサザンオールスターズ「THANK YOU SO MUCH」が獲得。CD及びダウンロード数で1位獲得で、総合チャートも堂々の1位獲得となりました。オリコン週間アルバムランキングでは初動売上23万枚で1位初登場。オリジナルアルバムとしては前作となる「葡萄」の初動30万枚(1位)からはダウン。直近作はベスト盤「海のOh,Yeah!!」で同作の初動32万5千枚(1位)からもダウンしています。

2位はMrs.GREEN APPLE「ANTENNA」が先週の3位からアップ。ストリーミング数は4週ぶりの1位返り咲き。ダウンロード数も18位から13位にアップ。これで通算27週目のベスト10ヒット&通算17週目のベスト3ヒットに。また「Attitude」も5位から4位にアップ。ストリーミング数が3週連続3位を獲得。こちらは通算15週目のベスト10ヒットとなりました。

3位は先週2位のtimelesz「Hello!We're timelesz」がワンランクダウンながらもベスト3をキープしています。

続いて4位以下ですが、今週は4位以下に初登場盤はなし。Vaundy「replica」が先週の11位から8位にアップし、2週ぶりのベスト10返り咲きに。ベスト10ヒットは連続18週に。また「strobo」は7位から6位にアップ。こちらは通算15週目のベスト10ヒットとなります。また、Number_i「No.I」も8位から7位にアップ。こちらも通算17週目のベスト10ヒットとなりました。


今週のHeatseekers Songs

https://www.billboard-japan.com/charts/detail?a=heat_seekers

Heatseekers Songsは先週1位を獲得したCANDY TUNE「倍倍FIGHT!」が2週連続の1位獲得。動画再生回数で11位にランクイン。Hot100では58位から61位にダウン。


今週のニコニコVOCALOID SONGS

https://www.billboard-japan.com/charts/detail?a=niconico

なんと今週、柊マグネタイト「テトリス」が先週の2位からランクアップ。2月12日付チャート以来6週ぶりの1位返り咲き。通算11週目の1位獲得となりました。

今週のHot Albums&Heatseeker Songs&ボカロチャートは以上。チャート評はまた来週の水曜日!

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2025年3月26日 (水)

1位返り咲き!

今週のHot100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

ここに来て、5週ぶりの1位返り咲きとなりました。

Lilac

今週1位はMrs.GREEN APPLE「ライラック」が先週の2位からランクアップし、2月19日付チャート以来5週ぶりの1位返り咲き。ストリーミング数は7週連続、カラオケ歌唱回数は11週連続の1位。動画再生回数も3週連続の2位獲得。さらにダウンロード数が8位から3位に大幅アップ。結果、通算7週目の1位獲得となりました。また、これで49週連続のベスト10ヒット&通算35週目のベスト3ヒットとなります。

ただ一方「ダーリン」は5位から6位にダウン。ストリーミング数は4週連続3位、これで9週連続のベスト10ヒットを記録したものの、「ケセラセラ」は8位から11位、「Soranji」は9位から12位にダウン。今週のMrs.GREEN APPLEは2曲同時ランクインとなりました。

2位初登場は旧ジャニーズ系アイドルグループSixTONES「バリア」。映画「お嬢と番犬くん」主題歌。CD販売数1位、動画再生回数7位。オリコン週間シングルランキングでは初動売上36万3千枚で1位初登場。前作「GONG」の初動42万6千枚よりダウンしています。

3位はサカナクション「怪獣」が4位からランクアップ。2週ぶりのベスト3返り咲き。ストリーミング数は4週連続の2位、動画再生回数は今週ついに1位を獲得。ダウンロード数も7位から2位にアップ。まだ5週目の1位ですが、このままロングヒットとなりそうです。

続いて4位以下の初登場曲です。まず4位にロージークロニクル「へいらっしゃい!~ニッポンで会いましょう~」がランクイン。ハロプロ系女性アイドルグループのデビューシングル。CD販売数2位。オリコンでは初動売上5万9千枚で2位初登場。

5位も女性アイドルグループ。こちらは秋元康系。僕が見たかった青空「恋は倍速」が初登場。CD販売数3位、ラジオオンエア数4位。オリコンでは初動売上4万7千枚で3位初登場。前作「好きすぎてUp and down」の初動5万1千枚(5位)からダウン。

そして8位にはサザンオールスターズ「夢の宇宙旅行」が初登場。ダウンロード数11位、ラジオオンエア数1位と、珍しくラジオオンエア数が主要因としてのランクインとなりました。nishikawa[エアー]CMソング。3月19日にリリースされたアルバム「THANK YOU SO MUCH」に収録され、MVが作成された楽曲となります。

また今週、ベスト10返り咲きも。timelesz「Rock this party」が先週の13位から10位にランクアップし、2週ぶりにベスト10返り咲き。ストリーミング数が9位から8位にアップしたほか、動画再生回数がベスト20圏外から4位に大きくランクアップ。

ロングヒット曲は、ロゼ&ブルーノ・マーズ「APT.」が7位から9位にダウン。ストリーミング数は先週と変わらず4位をキープしていますが、動画再生回数が8位から9位にダウン。これでベスト10ヒットは22週連続となります。

今週のHot100は以上。明日はHot Albums&Heatseekers&ボカロチャート!

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2025年3月25日 (火)

「晩餐歌」の大ヒットで話題に

Title:15
Musician:tuki.

昨年、シングル「晩餐歌」が大ヒットを記録したシンガーソングライター。昨年1月に、当時史上最年少という15歳でHot100の1位を獲得した他、年末には紅白歌合戦に出場。顔を見せないスタイルとあわせて、一気にお茶の間レベルにその知名度を広げて話題となりました。本作はそんな彼女のデビューアルバム。15歳までに収録した楽曲を収録されているため、このタイトルを題したそうです。

アルバムでは1曲目に大ヒットした「晩餐歌」からスタートするのですが、確かにこの曲は非常によく出来ている作品になっています。アコースティックベースのサウンドに切ないメロディーラインも耳を惹くのですが、低音部もしっかり聴かせる力強いボーカルに、15歳という年齢を感じさせない大人びた恋愛の歌詞。この歌詞にしてもほどよく韻を踏んでおり、どこかHIP HOP的な部分も感じさせるのも特徴的。15歳という年齢離れした部分と、いわゆる今時っぽい作品の混じった作品となっており、あれだけヒットしたもの納得の出来栄えだったと思います。

ただ、この曲からスタートする本作は、全体的にはアルバムとしてちょっと節操のなさを感じる作品になっていたように思います。続く「月面着陸計画」は、ギターロックというスタイルやファンタジックな歌詞からして、完全にBUMP OF CHICKEN。「ひゅるりらぱっぱ」は和風なサウンドに打ち込みのリズムで疾走感あるサウンドは、ボカロ系にもろに影響を受けた印象。それに続く「地獄恋文」もギターサウンドに打ち込みが入った、こちらもボカロ系でよくありそうな、という印象を受ける楽曲となっています。

それだけ良く言えばバラエティーに富んだ、悪く言えば節操のない楽曲が並んでいるのですが、一方で「晩餐歌」みたいにミディアムテンポで聴かせる楽曲については、どうしてもどれも似ている、といった印象も受けてしまいました。ミディアムテンポで同じ曲調というのもその理由のひとつなのですが、あとひとつ大きな要素だったのが、正直、どれも同じ歌い方。そのため、どのような曲も同じように聴こえてしまいました。

「サクラキミワタシ」のような、いかにも15歳らしい学生の恋愛模様を歌った曲もあったりして、彼女の年齢を生かした作品もある一方、逆にそこらへんの点が良い意味では若さを、悪い意味では未熟さも感じてしまう部分もあったりして。全体的に15歳としては非常に良くできた楽曲を聴かせてくれるという反面、年齢なりの若さ、未熟さを感じた点も否定できませんでした。

楽曲のバリエーションや歌い方、歌詞なども含めて、もうちょっとプロデューサーとかがしっかり関与して交通整理した方がよかったのでは?とも感じてしまいます。ひょっとしたら、ありのままのtuki.を見せた方がよい、という判断だったのかもしれませんが、ちょっと稚拙さも感じてしまいました。

ボーカリストとしてはしっかりと声量もありますし、年齢なりとはいえ表現力もありますし、そういう意味では今後の成長が楽しみではあることは間違いありません。そういう意味ではこれからが勝負とも言えるかも。今後の活躍に期待しましょう。

評価:★★★


ほかに聴いたアルバム

hooray/androp

ミニアルバムの「gravity」を挟みつつ、フルアルバムとしては「effector」以来、約3年ぶりとなるオリジナルフルアルバム。ホーンセッションを入れた陽気なナンバーやバンドサウンドを押し出したロック色の強いナンバー、フォーキーな曲やシティポップ風の曲、さらには爽やかなJ-POPまで、バラエティー富んだ作風は相変わらず魅力的。かなり挑戦的に様々なサウンドに手を出して、結局チグハグな感もあった「effector」に比べると、バラエティーを出しつつ、andropとして、それなりにまとまった感もあるのですが、一方では、爽やか路線の楽曲は、よくも悪くもポップで、売れ線狙いみたいな印象も受けてしまう部分も。ここらへんのバランスは難しい感もあるのですが、ここがキチっとはまれば、また傑作がリリースできると思うのですが。

評価:★★★★

androp 過去の作品
door
relight
one and zero
period
androp
best [and/drop]
blue
cocoon
daily
effector
gravity

Master of Ceremonies/GAKU-MC

ソロデビュー25周年を記念してリリースされたGAKU-MC10枚目のオリジナルアルバム。最近の彼の曲は、あまりにも毒気のなさすぎる、漂白された爽やかなポップスが続いており、さすがに彼ぐらいの年齢でこういう歌を唄うのは・・・と鼻白んでいたのですが、今回のアルバムは、RHYMESTERが参加したりしたりすると、HIP HOPとしてちゃんと引き締まった感も。今回も爽やかなポップチューンが多いものの、とはいえここ最近のアルバムの中では比較的、しっかりと「ラップ」したアルバムになっていたように感じます。もうちょっとこの路線で推し進めてほしい感じはするのですが。

評価:★★★★

GAKU-MC 過去の作品
世界が明日も続くなら
ついてない1日の終わりに
Rappuccino
立ち上がるために人は転ぶ

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2025年3月24日 (月)

「大いなるマンネリ」感も否めないが・・・

Title:The Night the Zombies Came
Musician:Pixies

2003年に再結成を果たし、その後はライブ中心の活動だったものの2014年にアルバム「Indy Cindy」リリース後は、ほぼ2、3年に1枚のアルバムリリースを続けるなど、コンスタントに活動を続けているPixies。本作も、前作「Doggerel」から約2年のインターバルでのリリースとなり、再結成後の精力的な活動ぶりが伺わせます。ただ一方、いまひとつ定まらないのがベーシストの存在で、キム・ディール脱退後は、いわばとっかえひっかえの状況。2014年にバンドメンバーとなったパズ・レンチャンティンも脱退し、新ベーシスト、エマ・リチャードソン加入後、初となるアルバムとなります。キム・ディール脱退後のベーシストは、いずれも解雇による脱退であることを示唆しており、やはりキム・ディールのイメージの幻想を追い求めている感じなのでしょうか?

また、なかなか難しいのが、この再結成後のアルバムの評価で、こちらについてもいずれも大傑作だった、当初の解散前の4枚のオリジナルアルバムとどうしても比較してしまう点は否めません。正直、再結成後のPixiesはどうしても「同窓会」的な側面は否めず、楽曲にしても基本的には解散前の4枚のアルバムの延長線上(もっとも、解散前でも、2枚目の「Dolittle」からPixiesのスタイルは大きく変化はしていないのですが)であり、そうなるとどうしても解散前のアルバムの方が・・・という評価を受けてしまいます。

そんな点を差し引いても、ただ前作「Doggerel」は再結成後のアルバムとしては一番の出来と言える内容で、十分「傑作」の範疇とも言えるアルバムでした。実際、おそらくバンドとしては、特にブラック・フランシスは勢いに乗ってきている感があり、今回のアルバムに関しても間違いなくギターロックのアルバムとしてかなりよく出来た作品に仕上がっていました。

特に印象的だったのは2曲目の「You're So Impatient」で、ドラムスのみの演奏からスタートし、そこにギター、さらにはバンドサウンドと徐々にサウンドが分厚くなり、テンポよくポップなボーカルが加わる展開は聴いていて素直にカッコよさを感じます。「Johnny Good Man」なども、ノイジーなギターの、ちょっと物憂げで気だるいブラック・フランシスのボーカルが、実にPixiesらしい作品。ミディアムテンポの「Kings of the Prairie」も、ちょっとゆがんだサウンドに切ないメロディーラインが、こちらもPixiesらしい作品に仕上がっています。

その他にも「Oyster Beds」も疾走感あるギターロックで、分厚いサウンドのパンキッシュなサウンドが耳を惹かれますし、女性コーラスが入ってムーディーに聴かせる「Mercy Me」も、大人な雰囲気たっぷりで印象に残ります。ほどよくヘヴィーで、ちょっと歪んだサウンドに、メランコリックながらポップなメロディーラインがピッタリとマッチしており、Pixesらしさがしっかりあらわれた作品になっています。

もっとも目新しさという面では皆無で、基本的には解散前のPixiesの楽曲の延長線上にすぎませんし、そういう意味では「大いなるマンネリ」と言えばマンネリかもしれません。ただ、その点を差し引いても、Pixiesの魅力はしっかり発揮されていましたし、凡百のギターロックバンドが足元にも及ばない楽曲を聴かせてくれているのは間違いありません。そういう意味では十分魅力的な傑作と言える作品に仕上がっていたと思います。正直なところ、大いなるマンネリ路線を走っている今のPixiesに関しては複雑な想いを抱いてしまう部分も否定できないのですが・・・なんだかんだ言ってもこれだけの作品をつくっちゃうあたりはやはりすごいよなぁ。

評価:★★★★★

PIXIES 過去の作品
EP1
EP2

Indy Cindy
Doolittle25
Head Carrier
Beneath The Eyrie
Doggerel

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2025年3月23日 (日)

Aphex Twinの頭の中をそのままのぞいたような

Title:Music From The Merch Desk(2016-2023)
Musician:Aphex Twin

Musicfromthemerchdesk

昨年12月にサプライズリリースされたAphex Twinのコンピレーションアルバム。2016年から2023年までの間に彼が出演したライブやDJ会場で限定リリースされたヴァイナルの音源をまとめた作品となっています。全38曲2時間半強にも及びボリューム感あふれる内容となっており、かなり聴きごたえのある作品となっています。

過去に限定リリースされた音源をまとめた作品なだけに、楽曲については統一感なくバラバラ。その場でのAphex Twinの頭の中をそのままぶちまけたような音源ともなっており、雰囲気のバラバラが次々と展開していくアルバムとなっています。アルバムの冒頭を飾る「no stillson 6 cirk」と、その別バージョンである「no stillson 6 cirk」はメタリックなサウンドながらも、軽快なビートがテンポのよいテクノ風のナンバー。かと思えば、それに続く「42DIMENSIT3 e3」はスペーシーで、どこかコミカルさのある楽曲となっていますし、「T18A pole1」もスペーシーな作風で、アバンギャルドなサウンド構成がAphex Twinらしいのですが、一方ではどこかポップスさも感じさせる楽曲となっています。

「em2500 M253X」は鳥の声もサンプリングされたフィールドレコーディング風の楽曲ながらも、そこに流れるエレピのメロディーの不気味さがAphex Twinらしさを感じる作品に。「MT1T2 olpedroom」は四つ打ちのビートに、ちょっとメランコリックさを感じさせるエレピのフレーズも印象的な、この中では比較的「ポップ」に感じさせる聴きやすい楽曲。かと思えば、続く「T47 smodge」は破壊的なビートが展開される楽曲となっており、この落差もまたAphex Twinらしくて楽しいところ。

「T16.5 MADMA with nastya」はスペーシーなサウンドとテンポよいエレクトロビートで、ちょっと不気味な雰囲気ながらも、フロア志向の聴きやすいリズミカルなナンバー。他にも後半には「Nightmail」「Soundlab20」のようなリズミカルなテクノチューンもあり、ポップで聴きやすさを感じさせる楽曲も。かと思えば「T46 se rinseout2」は、ノイズが飛び交うアバンギャルドな楽曲があったり、「korg 1b ru,ec,e」のような、アバンギャルドなナンバーや、「body pads」のような、彼らしいドリルンベースの楽曲もあったりと、比較的ポップな曲からマニアックでアバンギャルドな曲まで並ぶような構成となっています。

そんな訳で、結局、楽曲を羅列するだけの紹介となってしまいましたが、逆に言えば、最初に書いたようにアルバムを通じたコンセプトはなく、ただただ彼が過去に発表してきた作品を並べているだけのコンピレーション。ただ一方、APhex Twinらしさを感じさせつつもポップな曲からマニアックな曲までバラエティー富んだ楽曲が次々と展開される内容だけに、2時間半強というボリューミーな内容ながらも、あまり飽きることなく、最後まで楽しめる内容となっていました。

バラエティー富んだ作品をそのままぶっちゃけたような構成は、最初に書いたようにAPhex Twinの頭の中をそのままのぞいたような楽しさがあります。ファンはもちろん、APhex Twinになんとなく興味があるような層まで、比較的幅広く楽しめるコンピレーションアルバムでした。

評価:★★★★★

Aphex Twin 過去の作品
Syro
Computer Controlled Acoustic Instruments pt2 EP
orphaned deejay selek 2006-2008(AFX)
Cheetah EP
Collapse EP
Blackbox Life Recorder 21f / In A Room7 F760
Selected Ambient Works Volume II (Expanded Edition)


ほかに聴いたアルバム

Welcome To Shepherds Bush/The Rolling Stones

The Rolling Stonesのあらたなライブアルバムは、1999年6月8日にロンドンのシェパーズ・ブッシュ・エンパイアで行われたライブの模様を収録したもの。ウェンブリースタジアムでのライブを前に、キャパ1,800人という小規模な会場でシークレット的に行われたライブの模様を収録したアルバムです。小規模のステージでのパフォーマンスということもあって、全体的に和気あいあいとした雰囲気を感じさせ、肩の力の抜けた明るい雰囲気のパフォーマンスを感じさせます。等身大のストーンズのパフォーマンスが楽しめる貴重なライブ音源でした。

評価:★★★★★

The Rolling Stones 過去の作品
Shine a Light: Original Soundtrack
Some Girls LIVE IN TEXAS '78
CHECKERBOAD LOUNGE LIVE CHICAGO 1981(邦題 ライヴ・アット・ザ・チェッカーボード・ラウンジ・シカゴ1981)
(MUDDY WATERS&THE ROLLING STONES
GRRR!
HYDE PARK LIVE
Sweet Summer Sun-Hyde Park Live
Sticky Fingers Live
Blue&Lonesome
Ladies & Gentlemen
ON AIR
Voodoo Lounge Uncut
Honk
The Rolling Stones Rock and Roll Circus
A Little Bang (Bigger Bang Tour EP)
GRRR Live!
Licked Live In NYC
Hackney Diamonds
Hackney Diamonds(Live Edition)
Live At The Wiltern

Chain Of Light/Nusrat Fateh Ali Khan

Nusrat-fateh-ali-khan

こちらは2024年に各種メディアでベストアルバムとして紹介された作品で、未聴だった作品を後追いで聴いた1枚。こちらはミュージック・マガジン誌のワールドミュージック部門で第9位にランクインしていたアルバム。イスラムの宗教音楽であるカッワーリーの代表的なミュージシャン、Nusrat Fateh Ali Khan(ヌスラット・ファテ・アリ・ハーン)によるアルバム。彼は1997年に48歳という若さでこの世を去るのですが、本作は1990年に録音された音源で、その後、行方不明となっていたものが2021年に発見され、このたびリリースとなった作品だそうです。

楽曲は4曲のみ。ただ、1曲あたり10分程度の長さの作品となっており、全40分強の内容となっています。楽曲はヌスラットの力強くこぶしを聴いたボーカルと、彼のボーカルに呼応したコールアンドレスポンスを中心に、力強いタブラ、そしてオルガンのみというシンプルなサウンド。酩酊感もあるボーカルとコーラスのやり取りと、シンプルなタブラのリズムとどことなく妖艶さもあるオルガンで、いかにも呪術的な、宗教音楽的な要素も感じます。ただ、力強いボーカルと、私たちにとってはエキゾチムズを感じさせるサウンドが魅力的。気が付いたら、陶酔感ある楽曲に聴き入ってしまうような、そんな作品でした。

評価:★★★★★

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2025年3月22日 (土)

4人組のBUCK-TICKでの新作

Title:スブロサ SUBROSA
Musician:BUCK-TICK

2023年にボーカル櫻井敦司が急逝。バンドの顔であるボーカリストの突然の死というのはショックが大きく、特にBUCK-TICKのような、デビュー以来、メンバーの変更もなく続けていたバンドにとっては、非常にショッキングな出来事でした。彼の急逝後のメンバーのコメントとして、その後もバンド活動を続けていく旨のアナウンスはされていたものの、実際問題、櫻井がいなくなった状況でどれだけ活動を続けるのか、少々訝しげに見ていた点は否定できません。ただ、それから約1年、バンドは本格的に活動を再開し、4名体制でのシングルをリリース。そして前作から約1年8ヶ月という、結果として通常のリリースペースでのニューアルバムがリリースされました。

4人組となった彼らは、今井寿が主にボーカルを取り、従来からの作曲に加えて作詞も彼がメインとなっています。そして、予想はしていたのですが、今井寿の色がより強くなったアルバムに仕上がっていました。

もともとインダストリアルやニューウェーヴ、エレクトロの色合いが強い作品が、最近のBUCK-TICKの方向性でしたが、今回のアルバムに関しても基本的にはその方向性を継ぐもの。もっと言えば、櫻井のボーカルがなくなったことによって、よりサウンドの側面が強調されたアルバムに仕上がっていました。タイトル曲「スブロサ SUBROSA」はエレクトロトラックのラップ風のナンバーなのですが、今井寿のボーカルは非常に淡々としており、サウンドの一部のように構成されていますし、続く「夢遊猫 SLEEP WALK」も、インダストリアル風の楽曲ながらも、ボーカルはサウンドの背景となっているように聴こえる楽曲になっています。

中盤以降は「神経質な階段」「ストレリチア」「海月」とインスト曲を3曲も収録されており、特に「神経質な階段」「海月」はエレクトロサウンドでポストロック色も強い実験的なナンバー。比較的、地味に感じされるインスト曲ながらも、アルバム全体の方向性を指し示す羅針盤のような役割を感じさせます。

もちろん歌メインのポップ色の強い曲も少なくありません。「雷神 風神 - レゾナンス#rising」「paradeno mori」などは軽快なギターロックのナンバーなのですが、ここらへんの曲に関しても、シンセのサウンドも入れており、ニューウェーヴ風の作品にまとまっています。基本的にアルバム全編、インダストリアルやニューウェーヴ、エレクトロのサウンドが特に耳に残るような作品に仕上がっていました。

この方向性については、前述のようにここ最近のアルバムに見られた傾向なので、そういう意味では櫻井の急逝後もその方向性は変わらず、いままでのBUCK-TICKが続いている、とみることが出来るかもしれません。しかし一方、どうしても厳しくなってしまっているのがボーカルの部分。正直、独特の世界観でカリスマ的な人気を博していた櫻井敦司のボーカルと比べてしまうと、本作はかなり見劣りがしてしまうのは否めません。

実際、サウンドの側面を強調したのは、それを本人たちも理解しているからこそ、あえてボーカルを後ろに下げ、バンドサウンドを前に押し出した構成にしたのでしょう。それでもやはりボーカルを前に出した歌モノの曲については、BUCK-TICKらしい個性は薄く、BUCK-TICKらしさを感じることはあまりできません。もちろん、サウンド的には一級品なのは間違いないとは思うのですが、以前の独特の世界観を確立していたBUCK-TICKの楽曲から比べると、かなり物足りなさは感じてしまいます。

そういう意味でも本作の評価はどうしても辛くなってしまう点は否めませんが・・・。ただ、この点については正直、さほど悲観はしていません。おそらく今は櫻井敦司の影を残しているからこそ物足りなさを感じてしまうのですが、今後は徐々に今のメンバーにフィットしたスタイルに修正し、今のメンバーでのBUCK-TICKらしさを構築していくのではないでしょうか。少なくともボーカル以外の点については、勢いすら感じさせる彼らなだけに、次回作以降、どのように変化していくのか、楽しみですらあります。そう感じさせてくれる1枚でした。

評価:★★★★

BUCK-TICK 過去の作品
memento mori
RAZZLE DAZZLE
夢見る宇宙
或るいはアナーキー
アトム 未来派 No.9
CATALOGUE 1987-2016
No.0
ABRACADABRA
異空-IZORA-


ほかに聴いたアルバム

MarginaliaⅥ/高木正勝

兵庫の山村の自宅で、自然の音をそのまま取り込んで作品をつくりあげる、彼のライフワークとも言える作品「Marginalia」シリーズの最新作。基本的にピアノの静かな音色に自然の音が流れてくるスタイルは以前と同じ。そういう意味では目新しさはありません。ただ、前作で「はじめての子育て」と書いてあったように、おそらく子供が誕生したのでしょうか。途中入る赤ちゃんの声は、彼の子供の声かな?そう考えると、ほほえましさも覚える作品でした。

評価:★★★★

高木正勝 過去の作品
Tai Rei Tei Rio
TO NA RI(原田郁子+高木正勝)
おむすひ
かがやき
Marginalia
MarginaliaⅡ
MarginaliaⅢ
MarginaliaⅣ
MarginaliaⅤ

CLOSE A CHAPTER/Nulbarich

Closeachapter

2024年いっぱいでの活動休止を発表したNulbarichが、昨年12月5日の活動休止前最後の日本武道館ライブでサプライズとして公表した、活動休止前ラストとなるアルバム。基本的にメランコリックなメロディーラインをハイトーン気味のボーカルでメロディアスに聴かせるシティーポップ的な楽曲が並びます。メロディーラインについてはいい意味で聴きやすい、ちょっと良くも悪くも万人受け的な部分が特徴的。ボーカルJQの歌い方やサウンドを含めて、ちょっとドリーミーなのも魅力的。活動休止前ラストということで、肩ひじはらないポップに仕上げたような印象があります。あくまでも「章を閉じる」というタイトルといい、活動休止という言い方といい、今後の活動再開を前提としているようなので、とりあえずは一度休憩して、その後の再度の活動も期待したいところです。

評価:★★★★★

Nulbarich 過去の作品
Who We Are
Long Long Time Ago
H.O.T
The Remixies
Blank Envelope
2ND GALAXY
NEW GRAVITY
The Roller Skating Tour

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2025年3月21日 (金)

2つの異なる伝統芸能に挑戦!

今日紹介するのは、いつものロック、ポップスとはちょっと異なる、伝統音楽のアルバムです。東京を中心に活躍する女性浪曲師、瑞姫(「たまき」と読むようです)が、同じ伝統芸能ながらもジャンルの異なる2つのアルバムを同時リリースするということで話題となり、私も興味があったので聴いてみました。

Title:TAMAKI
Musician:瑞姫

まず彼女が河内音頭に挑戦した、「TAMAKI」という作品

Title:瑞姫 浪曲集
Musician:瑞姫

もう1枚は、CDでのリリースでは浪曲のアルバム「浪曲鰍沢」となるのですが、今回、サブスクでは「浪曲集」ということで、以前リリースされていた「浪曲狸」とセットになっていたので、今回は両作とも聴いてみました。

この「TAMAKI」の方は河内音頭の大御所、山中一平の「河内音頭河内十人斬り」のカバー、そしてもう1曲は、浪曲と河内音頭を合体させた「河内音頭櫻川と黒鷲」となります。一方、浪曲集に収録されて「浪曲狸」は、こちらは狸の恩返しのお話。「浪曲鰍沢」は古典落語の定番、「鰍沢」を浪曲としたもの。落語は、「材木(題目)のおかげで助かった」というオチで終わりますが、この浪曲ではその後の後日談もちょっとだけ入るオリジナルな後日談が入る展開となっています。

さて、この日本の伝統芸能のひとつ、浪曲のアルバムについては、以前一度、天中軒景友のアルバム「ギター古事談」を取り上げました。ただ、「ギター古事談」の方は、取り上げるテーマも、そしてなによりギターを取り入れたサウンドも、今風にアップデートされていた浪曲でしたが、一方、彼女の浪曲については、昔ながらの王道なもの。三味線を取り入れて、力いっぱいこぶしを聴かせた浪曲を歌い上げています。

とはいえ、とりあげる題材自体は、「浪曲狸」にしても義理人情の話ではあるものの、恩返しをするのは狸で、いわゆる「男の世界」「女の世界」のような、昨今の風潮では認められなさそうな世界観ではありませんし、「浪曲鰍沢」についても、基本的にホラーサスペンス的な内容なので、今の感覚でも違和感なく楽しめます。

そしてやはり魅力的なのは彼女の歌声で、女性の浪曲師の場合、男性のパートをいかに迫力もって演じられるかにかかっているかがポイントになってくるように思います。彼女の場合、ちょっとどすの効いた歌い方が迫力があり、魅力的でした。ただ、それ以上に魅力的だったのは女性のパート、特に「鰍沢」に登場する、元遊女で、主人公を殺そうとする悪女、お熊では、元遊女らしい色っぽさを感じせつつ、金に目がくらんだ女性の怖さを見事演じています。ここらへんは浪曲師としての彼女の実力を強く感じさせます。

一方「TAMAKI」では、浪曲の物語性と河内音頭のリズムを同時に楽しめる点がお得な感じ。実際、グルーヴィーな河内音頭のリズムは非常に魅力的でした。ただ反面、浪曲部分については・・・率直に言うと、いまひとつ物語が聴き取れない・・・。これは純粋に慣れの問題なのかもしれませんが、正直、こぶしを聴かせて一語一語、非常に間延びして聴かせる歌い方をされると、歌詞が耳に入ってきません・・・。ある世代以上の方は、最近の曲はテンポが早すぎて歌詞が聴き取れない、なんと話をよく聴きますが、早いテンポに慣れた耳だと、逆の現象が起きるんですね・・・(?)。

「TAMAKI」の方は、河内音頭と浪曲、その両者を融合させるという挑戦心や意欲を感じさせつつ、またグルーヴィーなリズムは魅力的だったのですが、率直に両者別々の方がよかったような・・・。一方、「浪曲集」の方は、基本的に王道路線の浪曲で、おそらく目新しさという点では薄いのでしょうが、しっかりと彼女の実力も感じることが出来ました。日本三大話芸のひとつと言われる浪曲。他の落語、講談と比べると、最近は耳にする機会も薄れた感は否めませんが、その魅力をしっかりと感じられるアルバムでした。

評価:
TAMAKI ★★★
浪曲集 ★★★★


ほかに聴いたアルバム

タニヤマヒロコノピアノアルバム/谷山浩子

タイトル通り、谷山浩子の楽曲を、彼女がピアノで演奏したセルフカバーのインストアルバム。もともと90年代半ばからコンサートの開演前のBGMとして彼女本人演奏のピアノ音源を流していたところ、ファンの間で好評となり、2004年にピアノアルバム「Mezzo Piano」をリリースしたところ、1万枚のセールスとして異例のヒットを果たしたそうで、本作はその第2弾。2枚組で、Disc2はその「Mezzo Piano」のリマスターとなります。

基本的に彼女の楽曲をピアノで美しくメロディアスに聴かせる内容なのですが、ファンタジックさの強い彼女の曲のメロディーラインの部分だけをシンプルに楽しめるアルバムともなっており、あらためて谷山浩子の楽曲のメロディーの良さを感じられるアルバムとなっています。ただ一方、あくまでもシンプルなピアノインストのため、やはり全体的にはBGM的な内容。そこらへんは良くも悪くもといった印象。どっちかというとファンズアイテムに近いかな?いいアルバムだとは思うのですが。

評価:★★★★

谷山浩子 過去の作品
ひろコーダー☆栗コーダー(谷山浩子と栗コーダーカルテット)
HIROKO TANIYAMA 45th シングルコレクション
谷山浩子ベスト ネコとコバン
谷山浩子50周年イヤーフィナーレ ~コンサート2023~

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2025年3月20日 (木)

旧ジャニーズ系が1位2位で並ぶ

今週のHot Albums

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

今週は1位2位に旧ジャニーズ系男性アイドルのアルバムが並んでいます。

まず1位に初登場したのが旧ジャニーズWESTことWEST.のニューアルバム「A.H.O.-Audio Hang Out-」。CD販売数で1位を獲得し、総合チャートでも初登場1位に。オリコン週間アルバムランキングでは初動売上18万3千枚で1位初登場。前作「POWER」の初動24万9千枚(1位)からダウンしています。

2位は同じく旧ジャニーズ系アイドルグループ、こちらはSexyZoneの解明後のグループtimelesz「Hello!We're timelez」がワンランクダウン。ストリーミング数は3週連続1位、ダウンロード数は2位から8位にダウン。

3位はMrs.GREEN APPLE「ANTENNA」がこちらもワンランクダウン。ストリーミング数は3週連続の2位。これで通算26週目のベスト10ヒット&通算16週目のベスト3ヒットに。一方「Attitude」は今週5位にダウン。こちらは通算14週目のベスト10ヒットとなります。

続いて4位以下ですが、今週は初登場盤が2枚ランクイン。まずは4位に韓国の男性アイドルグループTREASUREのミニアルバム「PLEASURE」がランクイン。また、こちらも韓国の女性アイドルグループLE SSERAFIMのミニアルバム「HOT」が6位に初登場しています。

他のロングヒット盤だとVaundy「strobo」が5位から7位にダウン。これで通算14週目のベスト10ヒット。一方、先週までロングヒットを続けていた「replica」は11位にダウン。ベスト10ヒットは通算17週で一度ストップ。またNumber_i「No.I」は7位から9位にダウン。こちらは通算16週目のベスト10ヒットを記録しています。

なお、米津玄師「LOST CORNER」も今週13位にダウン。こちらもベスト10ヒットは通算18週でストップとなりました。


今週のHeatseekers Songs

https://www.billboard-japan.com/charts/detail?a=heat_seekers

Heatseekers Songsは先週まで12週連続で柊マグネタイト「テトリス」が1位をキープしてきましたが、今週はついに1位が入れ替わり。CANDY TUNE「倍倍FIGHT!」が先週の2位よりランクアップし、1位獲得となりました。CANDY TUNEはアソビシステムのアイドルプロジェクト「KAWAII LAB.」から誕生したアイドルグループで、FRUITS ZIPPERの後輩グループ。TikTokを中心にダンス動画が話題を集めて、徐々にランクを上げたようです。Hot100では今週58位にランクインしています。


今週のニコニコVOCALOID SONGS

https://www.billboard-japan.com/charts/detail?a=niconico

今週1位は、柊マグネタイト「雑魚」が初登場で獲得しました。この曲、もともとは歌愛ユキというボーカロイドが歌う「ざぁこ」という曲だったのですが、扇情的な歌詞が、使用していたボーカロイドの歌愛ユキのガイドライン違反ではないか、という声が一部に上がり、オリジナル音源は公開を取りやめ。再度リリースされたリメイク版となります。そんな話題性もあってか、見事1位獲得。ちなみに柊マグネタイトは「テトリス」が今週2位にランクイン。1、2フィニッシュという結果となっています。

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2025年3月19日 (水)

上位はアイドル系が・・・

今週のHot100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

今週も上位にはアイドル系の初登場が並んでいます。

 まず1位初登場は元ジャニーズ系アイドルグループKing&Prince「HEART」がランクイン。CD販売数及びダウンロード数1位、ストリーミング数14位、動画再生回数3位。フジテレビ系ドラマ「御曹司に恋はムズすぎる」主題歌。オリコン週間シングルランキングでも初動売上31万7千枚で1位初登場。前作「halfmoon」の初動30万5千枚(1位)からアップしています。

また、3位にも秋元康系女性アイドルグループSKE48「Tick tack zack」が初登場。CD販売数2位。オリコンでは初動売上19万1千枚で2位初登場。前作「告白心拍数」の初動20万2千枚(2位)からダウンしています。

その間に割って入ったのがMrs.GREEN APPLE「ライラック」で先週と変わらず2位をキープ。ストリーミング数は7週連続、カラオケ歌唱回数は10週連続の1位。動画再生回数は2週連続の2位、動画再生回数は7位から8位にダウン。これで48週連続のベスト10ヒット&通算34週目のベスト3ヒットとなります。

Mrs.GREEN APPLEは「ダーリン」が4位から5位のワンランクダウンながらもベスト10をキープ。同作は今週で8週連続のベスト10ヒットとなったほか、「ケセラセラ」が10位から8位にアップ。さらには「Soranji」が先週の12位から9位にアップし、3週ぶりのベスト10返り咲きを果たし、これで4曲同時ランクインとなっています。「ケセラセラ」はこれで通算38週目のベスト10ヒット。「Soranji」もこれで通算8週目のベスト10ヒットとなっています。

4位以下に今週、初登場曲はゼロでしたが、返り咲き組があと1曲。女性アイドルグループCUTIE STREET「かわいいだけじゃだめですか?」が先週の13位から10位にアップ。こちらは4週ぶりのベスト10返り咲きを果たしています。

他のロングヒット曲ではロゼ&ブルーノ・マーズ「APT.」が8位から7位にアップ。ストリーミング数が5位から4位にアップ。一方、動画再生回数は3位から8位にダウン。こちらは21週連続のベスト10ヒットとなっています。

今週のHot100は以上。明日はHot Albums&Heetseekers&ボカロチャート!

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2025年3月18日 (火)

シンプルなロックのステージ

JACK WHITE No Name Tour

会場 ダイアモンドホール 日時 2025年3月13日(木) 19:00~

Jackwhitelive

昨年、傑作アルバム「No Name」をリリースしたJack White。そのアルバムを引っ提げてのライブツアーが行われ、名古屋でのライブが行われる、ということで足を運んできました!上の写真の通り、この日のライブはソールドアウト。そのため、会場は大満員。また、外タレということもあって、満員のホールの中には外国人の姿もチラホラ。

ライブは、ほぼ定時にスタート。メンバーはJack White以下、キーボード、ベース、ドラムスというシンプルな4人編成。ライブはいきなりヘヴィーなギターリフからスタート。ライブ会場には爆音が鳴り響きます。まずは最新アルバムから「Old Scratch Blues」。タイトル通り、ゴリゴリのギターリフを聴かせるブルースロックのナンバーに、会場はいきなり盛り上がります。そのまま同じく最新アルバムから「That's How I'm Feeling」へ。ヘヴィーなギターリフと轟音のフィードバックノイズが会場に鳴り響きます。

さらには、ホワイト・ストライプス時代のナンバー「Dead Leaves and the Dirty Ground」から、再び最新アルバム「It's Rough on Rats(If You're Asking)」へと続き、その後はホワイト・ストライプスの楽曲を挟みつつ、過去のJack Whiteソロのナンバーをメインに。さらにはThe Racouteursの曲まで加わり、さながらJack Whiteのオールキャリアベスト的な選曲で会場を沸かせます。

途中、MCは基本的になく、次々とギターの轟音とヘヴィーでダイナミックなバンドサウンドをゴリゴリと聴かせてくるパターンのステージ。ただ、中盤にはホワイト・ストライプスの「Hotel Yorba」へ。軽快なカントリー風のナンバーで、爽やかな空気が流れ、ちょうどよいインパクトとなっています。

その後もエルヴィス・プレスリーの「Heartbreak Hotel」をちょっとだけ挟んだり、スタンダードナンバー「Susie-Q」などのカバーを聴かせたり、ミディアムチューンの「Why Walk a Dog?」をしんみり聴かせたりと、それなりにバリエーションは持たせつつ、ただ基本的にはシンプルな4ピースのバンドサウンドに、ヘヴィーなギターリフやフィードバックノイズが乗る、非常にシンプルなロックのステージ。MCもなく、次々と楽曲が展開し、一気に聴かせるスタイルで、正味1時間で本編が終了。ラストはThe Dead Weatherの「I Cut Like a Buffalo」でとりあえずの締めくくりとなります。

もちろん会場から盛大なアンコールが。特にホワイト・ストライプスの代表的なナンバー「Seven Nation Army」の合唱が会場から巻き織り込ます。やがてメンバーが再度登場しアンコールがスタート。最初はホワイト・ストライプスの「The Hardest Button to Button」からスタートします。

さらには最新アルバムから「Archbishop Harold Holmes」なども披露しつつ、そして最後はおまちかね、ホワイト・ストライプスの「Seven Nation Army」で締めくくり。もちろんライブ会場のテンションは最高潮となります。アンコールもしっかり聴かせてくれて、アンコールだけで正味30分。ただ、全体としては1時間半という、比較的短めのステージで会場は幕を下ろしました。

まさにヘヴィーな轟音とダイナミックなサウンドが終始会場を支配するようなステージ。非常にシンプルながらも、シンプルだからこそ、ロックのカッコよさを実感でき、ヘヴィーなサウンドにテンションがあがりまくるステージとなっていました。今回、本編1時間、アンコール30分という比較的短めなステージでしたが、一方、パフォーマンス自体はヘヴィーなサウンドをとにかく押しまくるというシンプルなもの。正直、バリエーションという意味では乏しく、一本調子な部分はありました。ただ、だからこそ、1時間半という短めのステージで一気に押し切るようなスタイルだったのでしょう。これだけ短めのステージだっただけに、最後までテンションが切れることのなく、ワクワクしながら楽しめるパフォーマンスとなっていました。ロックというジャンルのカッコよさ、楽しさをあらためて提示してくれた素晴らしいステージ。Jack Whiteのすごさ、すばらしさをあらためて認識できた1時間半でした。

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2025年3月17日 (月)

韓国と台湾の実力派バンドによるコラボ作

Title:AAA
Musician:HYUKOH&Sunset Rollercoaster

今回も2024年の各種メディアでベストアルバムとして取り上げられたアルバムのうち、まだ聴いていなかった作品を後追いで聴いた1枚。今回はミュージック・マガジン誌ロック【アジア】部門で1位を獲得したアルバムです。韓国のロックバンド、HYUKOH(これでヒョゴと読むそうです)と、日本でも来日公演を実施し、ミツメやYogee New Waveといったバンドと共演したSunset Rollercoaster(落日飛車)とのコラボアルバムとなります。

HYUKOHの作品を聴くのは今回はじめて。Sunset Rollercoasterの作品を聴くのは、以前、コンピレーションアルバムのうちの1曲として聴いたことはあるのですが、このような形でまとめて聴くのは今回がはじめてとなります。そしてリリースされた今回のアルバムですが、これがバラエティーに富んだ作風を聴かせつつ、とても暖かい雰囲気のサウンドとメロディーが素晴らしい傑作アルバムに仕上がっていました。

今回、このアルバムレビューを書くにあたり、はじめてHYUKOHとSunset Rollercoasterの作品をチェックしてみました。音楽のタイプとしては、HYUKOHがフォークロック、Sunset RollercoasterはAORやシティポップの楽曲を聴かせてくれています。このように両者、微妙に方向が異なるのですが、一方、温もりを感じさせるメロディーラインを書いてくるという点では両者共通。この共通点を上手く生かしつつ、両者の音楽的なギャップがアルバムのバリエーションとして上手く機能した作品となっています。

アルバムはゆっくりとしたギターサウンドからスタート。冒頭の「Kite War」はブルースロックの色合いの強い楽曲で、どちらかというとHYUKOH寄りといった感じでしょうか。一方、続く「Y」は、今度はファルセットボーカルも入って、AORの色合いの強いナンバー。こちらはSunset Rollercoasterの色合いを強く感じます。ただし、どちらもミディアムテンポの暖かさを感じるメロディーラインは共通。このように、お互いの相違点と共通点を上手く生かした理想的なコラボとなっています。

他にもメロウなドリームポップの「Antenna」やシンセのサウンドにノイジーなギターサウンドが加わり、ちょっとシューゲイザーっぽさも感じるギターポップの「Young Man」、ちょっとポストロックの雰囲気も感じさせるギターインストの「 Aaaannnnteeeeennnaaaaaa」、最後の「2F annual driver」はラフなアコギの音源となっており、デモ音源的な楽曲なのですが、メンバー全員で楽しく集っている楽曲となっており、このコラボのラストにふさわしい曲となっています。このように最後までバラエティー富んだ展開の楽しめるアルバムとなっていました。

さらにこの暖かみを感じる、フォーキーなメロディーラインには、どこか私たちにもなじみを感じさせるのも特徴的。決して和風という感じでも歌謡曲といった感じでもないのですが、どこか日本人にとって琴線に触れるメロディーラインは、アジア圏のミュージシャンゆえの、欧米のミュージシャンとはちょっと違う、日本人とも共通する音楽センスがあるから、ということもあるのでしょうか?非常になじみのあるポップソングで、前述のSunset Rollercoasterと共演したミツメや、サニーデイ・サービス、スカートあたりが好きな方も気に入りそうな感じ。年間ベストも納得の文句なしの傑作でした。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

DIMA LIBRE/LABESS

Dimalibre

こちらも2024年のベストアルバムを後追いで聴いた1枚。ミュージックマガジン誌のワールドミュージック部門で第8位にランクインした作品。アルジェリア出身で現在はフランスで活動を行っているマグリブ人のミュージシャン、ナジム・ビズルの5枚目となるアルバム。彼のルーツであるアルジェリアのシャアビを意識したフラメンコ、ルンバの楽曲がおさめられているとか。基本的には哀愁たっぷりのラテンミュージックが魅力的な作品。郷愁感たっぷりの楽曲の中で、どこか加わるトライバル的な要素が魅力的な作品になっていました。

評価:★★★★

Lungu Boy/Asake

こちらも同じく、2024年ベストアルバムを後追いで聴いた1枚。ミュージックマガジン誌のワールドミュージック部門で、こちらは第7位にランクインした作品。ナイジェリアのミュージシャンによる3枚目のアルバムなのですが、前作「Work of Art」ではアメリカビルボードチャートで20位にランクイン。本作はついにビルボードで最高位15位を記録するなど、ワールドミュージックの範疇に留まらない人気を見せています。

楽曲的にはHIP HOP的な要素を取り入れつつ、メロウに聴かせるあか抜けたAOR的なサウンドが魅力的。ただ、その中にトライバルなサウンドも組み込んでいたりして、独特のサウンドを作り出しています。ちなみに「Active」ではTravis Scottが、「Suru」ではStormzyが、と、人気ラッパーが参加しているあたり、彼の人気の高さをうかがわせます。いい意味で広い層が楽しめそうな作風ですし、今後、さらに人気は高まりそう。

評価:★★★★★

Asake 過去の作品
Work of Art

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2025年3月16日 (日)

御年85歳になっても絶えぬ探求心

 Title:Pick-Up
Musician:Brigitte Fontaine

Pickup

今回も、2024年のベストアルバムとして選ばれた作品のうち、聴き逃していたものを後追いで聴いた1枚。ミュージック・マガジン誌ロック(ヨーロッパほか)部門で1位を獲得したブリジット・フォンテーヌのニューアルバムです。

ブリジット・フォンテーヌは、フランスのシャンソンのミュージシャンなのですが、過去からロックやジャズなどの様々なミュージシャンとのコラボにより新たな音楽性を広げているミュージシャンで、過去にはステレオラブやソニックユースともコラボをしています。特に1969年にリリースされた「ラジオのように」は名盤の誉れ高く、名盤ガイドなどでもその名前はよく見かけます。そんな彼女も御年85歳!普通に考えれば、既に引退していたり、懐メロ歌手として昔の名前で糊口をしのぐ程度の活動に留めているのが普通だと思うのですが、ところが彼女は今なおバリバリの現役のようで、この作品も非常に挑戦的でアグレッシブなものとなっていました。

楽曲は基本的に力強いバンドサウンドに、彼女のスポークン・ワードが乗るというスタイル。このサウンドがとてもユニークかつバラエティーに富んでいて耳を惹きます。アルバム冒頭を飾る「Neuf trois」はアラビアンな雰囲気でちょっと妖艶さを醸し出しつつ、続く「Mariage(1)」は打ち込みのビートが入りつつ、疾走感あるオルタナ系のギターサウンドがインパクトに。かと思えば「Cantilène」はピアノで哀愁感ただようサウンドが耳を惹きますし、「Sac d'os」は重厚で力強いビートに迫力を感じさせます。

そして、このアルバムで強く印象に残るのは、ブリジット・フォンテーヌの声ではないでしょうか。はっきり言えば、完全におばあさんです。ただ、この老女の声がアルバムに個性を持たせており、特に「Neuf trois」や同じくアラビアンな雰囲気の「Les animaux」ではサウンドの妖艶さに磨きをかけていますし、力強いロックな演奏をバックしたスポークン・ワードでは、しわがれた声が、一種のデスボイス(?)的な効果を作り出しています。

後半ではスポークン・ワードに加えて歌も加わるのですが、この歌に関しても、完全におばあさんのそれで、年齢なりの声量とピッチとなっています。ただ、それでもサウンドやメロディーにピッタリマッチしており、例えば「Mary Poppins」など、シャンソンの影響も感じられる哀愁感ある歌が印象に残ります。

彼女のこのおばあさんの声が楽曲にもピッタリマッチしており、一方でサウンドに関しては完全に全く年齢を感じさせない挑戦心と若々しさを感じます。正直、若手のポストロック系のミュージシャンが、老女の声をサンプリングして作りあげたアルバム、と言われても全く違和感のない内容。また、おばあさんの声についても、悪い意味でのノイズになっておらず楽曲に上手く溶け込んでおり、意外とポップに聴かせるバックのサウンドが加わり、全体的に聴きやすいポピュラリティーもしっかり確立されています。年間1位も納得の傑作アルバムだったと思います。

85歳という年齢でありながら、ここまでのアルバムをリリースしてくるあたりに驚きを感じさせます。年齢をとっても絶えることのない音楽への探求心は、私も見習いたいところ。挑戦的なアルバムではありますが、聴きやすさもあり、ロックリスナー含めて広い層におすすめしたい1枚です。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

O Amor e Suas Variáveis/Agnes Nunes

Agnes

こちらも2024年のベストアルバムを後追いで聴いた1枚。同じくミュージック・マガジン誌の、こちらはブラジル部門で1位を獲得した楽曲。現在22歳の、ブラジルのシンガーによる新作。R&Bを軸としたメロウな楽曲を聴かせつつ、ボッサな雰囲気も取り入れた楽曲が魅力的。メロウでソウルな作風な中、時折入るラテンな作風が耳に残る楽曲となり、独特な雰囲気を醸し出していました。

評価:★★★★

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2025年3月15日 (土)

両者の良さを上手く融合

Title:Step Into Paradise -LIVE IN TOKYO-
Musician:矢野顕子×上原ひろみ

ご存じ、日本を代表するシンガーソングライターの一人として数多くの名曲を世に生み出してきた矢野顕子と、同じく日本を代表するジャズピアニストとして、日本のみならず世界を股にかけて活躍を続ける上原ひろみ。もともと2004年にテレビの音楽番組での共演を通じて意気投合。いままで2枚のコラボアルバムをリリースしてきましたが、このたび、その第3弾がリリースされました。今回は2024年9月24日25日の2日間、東京オペラシティコンサートホールにて行われたレコーディングライブの模様を収録したもの。レコーディングライブということで音源リリースを前提としたパフォーマンスながらも、ライブとして臨場感あふれる演奏を聴かせてくれています。

20年にもわたって共演を続けているあたり、二人の相性の良さを感じるのですが、確かにこの演奏を聴いても2人の相性の良さが感じられます。大きな特徴として、2人ともフリーキーな演奏に共通項があります。上原ひろみも、もちろんジャズピアニストとして自由に鍵盤の上を行き来する自由な演奏が特徴的ですし、矢野顕子もまた、ピアノの演奏以上にその歌のスタイルはかなり自由度が高く、これでもかというほどフェイクを取り入れた歌を聴かせてくれています。

ある意味、同じ方向性のミュージシャンなのですが、一方で主戦場は上原ひろみはピアノ、矢野顕子はボーカルということで微妙に異なっているあたり、両者が激突しないで、お互い尊重しつつ曲を作り上げているという点でも相性がいいのでしょう。今回のアルバムでも、1曲目は矢野顕子の「変わるし」のカバーですが、矢野顕子のボーカルと、それと同じくらい主張する上原ひろみのピアノがしっかりとマッチしたコラボらしい曲に仕上がっています。

両者のコラボという意味でピッタリなのがそれに続く「げんこつアイランド」で、前半は、童謡「げんこつ山のたぬきさん」を矢野顕子流のアレンジで歌い上げており、一方、ハービー・ハンコックの「カンタロープ・アイランド」を取り入れ、こちらでは上原ひろみがフリーキーなピアノを力強く聴かせてくれています。ジャズと童謡というユニークな組み合わせもまた、このコラボならでは、といった感じでしょう。

「Just the Two of Us」のカバーもまた魅力的。こちらに関してはメロウな矢野顕子のボーカルも魅力的ですが、それ以上に上原ひろみが力強く美しいピアノプレイを聴かせてくれます。序盤の美しく歌うように聴かせるピアノも印象的ですが、特に後半に行くにつれて徐々に力強くなっていくピアノが印象的。彼女のピアノの魅力を存分に聴かせてくれます。

また終盤の「ラッパとあの娘」も印象的。朝ドラで話題となった笠置シヅ子のカバーで、おそらく朝ドラでの話題を意識した選曲と思います。矢野顕子のボーカルは、笠置シヅ子みたいに力強く歌い上げるタイプではないのですが、軽快にスウィングするそのスタイルは、笠置シヅ子とはまた異なる魅力がありますし、上原ひろみのスウィングするピアノも迫力たっぷり。矢野顕子と上原ひろみ流のカバーも笠置シヅ子に決して負けていません。

今回もまた相性の良さを感じさせる作品になっていましたし、さらにコラボが進むにつれて、より矢野顕子と上原ひろみのそれぞれの良さを上手く引き出したカバーに仕上がて来ているように感じます。今後もこのコラボは数多くの名演奏を聴かせてくれそう。これからの活躍も楽しみです。

評価:★★★★★

矢野顕子 過去の作品
akiko
音楽堂
荒野の呼び声-東京録音-
Get Together~LIVE IN TOKYO~(矢野顕子×上原ひろみ)
矢野顕子、忌野清志郎を歌う
飛ばしていくよ
JAPANESE GIRL - Piano Solo Live 2008 -
さとがえるコンサート(矢野顕子+ TIN PAN)
Welcome to Jupiter
矢野顕子+TIN PAN PARTⅡ さとがえるコンサート
(矢野顕子+ TIN PAN)
矢野山脈
Soft Landing
ラーメンな女たち
矢野顕子×上原ひろみ)
ふたりぼっちで行こう
音楽はおくりもの
君に会いたいんだ、とても
矢野顕子・野口聡一)

上原ひろみ 過去の作品
BEYOUND THE STANDARD(HIROMI'S SONICBLOOM)
Duet(Chick&Hiromi)
VOICE(上原ひろみ featuring Anthony Jackson and Simon Phillips)
MOVE(上原ひろみ featuring Anthony Jackson and Simon Phillips)
Get Together~LIVE IN TOKYO~(矢野顕子×上原ひろみ)
ALIVE(上原ひろみ THE TRIO PROJECT)
SPARK(上原ひろみ THE TRIO PROJECT)
ライヴ・イン・モントリオール(上原ひろみ×エドマール・カスタネーダ)
ラーメンな女たち(矢野顕子×上原ひろみ)
Spectrum
Silver Lining Suite(上原ひろみ ザ・ピアノ・クインテット)
BLUE GIANT(オリジナル・サウンドトラック)
Sonicwonderland(上原ひろみ Hiromi's Sonicwonder)


ほかに聴いたアルバム

こんなところに居たのかやっと見つけたよ/クリープハイプ

怖い怖い怖い怖い怖い・・・・・・このアルバムタイトルにジャケットのイラスト、完全にホラーかサスペンスで、主人公(もしくはヒロイン)が、敵から逃げ回り、なんとか物陰に隠れたところに敵がやってきて、敵が言うセリフとその時の「絵」ですよね、完全に。狙ったのかわかりませんが、どう考えてもこのアルバムタイトルとジャケットはホラーだ・・・。

といっても内容的にはいつものクリープハイプ。切なくも、現実を見据えたようなラブソングや、かなり皮肉めいた歌詞を尾崎世界観の一度聴いたら忘れられないハイトーンボイスで聴かせるギターロックというスタイル。良くも悪くもいつものクリープハイプといった感じで、いい意味で安定感はありますし、ちゃんとメロもインパクトを抑えています。ある意味、このジャケットとタイトルも彼ららしいといった感じもしますが。

評価:★★★★

クリープハイプ 過去の作品
吹き零れる程のI、哀、愛
クリープハイプ名作選
一つになれないなら、せめて二つだけでいよう
世界観
もうすぐ着くから待っててね
泣きたくなるほど嬉しい日々に
どうにかなる日々
夜にしがみついて、朝で溶かして
だからそれは真実

生きるとは/熊木杏里

ちょうど2年ぶりとなる熊木杏里のニューアルバム。メランコリックで爽やかなポップソングを聴かせるスタイルはいつも通り。今回の作品は、特にアレンジにシンセを入れたサウンドが特徴的で、ちょっといままでのフォーキーさは薄れた感もあります。一方、今回の大きな特徴は、タイトル通り「生きるとは」をテーマとしたちょっと重めの作風で、タイトル曲の「生きるとは」「一度死んだぼくら」では、まさに「生」をテーマとした曲に。「地球から愛はなくならない」では「愛」をテーマにするなど、ちょっと重めな作風となっています。かと思えば、ちょっとコミカルさもある牛乳讃歌「牛乳サンキュー」なんかが飛び込んできたりして、アルバム全体が重くなりすぎないようにバランスを保っている感もあるのですが。しっかりと強いテーマ性を感じさせるアルバムでした。

評価:★★★★★

熊木杏里 過去の作品
ひとヒナタ
はなよりほかに
風と凪
and...life
光の通り道

飾りのない明日
群青の日々
殺風景~15th Anniversary Edition~
人と時
熊木杏里 LIVE “ホントのライブベスト版 15th篇" ~An's Choice~
なにが心にあればいい?
風色のしおり

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2025年3月14日 (金)

HIP HOPシーンの「今」を考える

今回もまた、最近読んだ音楽関連の書籍の紹介です。

「ele-king presents HIP HOP 2024-25」。もともとはテクノ専門誌として発刊し、現在はクラブカルチャーに関連するジャンルを中心に、様々な音楽関連の書籍を発行しているele-kingが手掛けた1冊。「書籍」ではなく「雑誌」という扱いであり、それも「年刊誌」ということ。今後は、毎年、同じようなスタイルの雑誌を同じような時期に発刊する、ということなのでしょうか。

ここでもHIP HOPのアルバムをよく取り上げているように、個人的に音楽ファンとしての立ち位置から、話題となったHIP HOPのアルバムについては、なるべくチェックしようとしています。ただ、そういった中で感じるのはHIP HOPシーンというのは非常にわかりにくいという点。以前、ここでも紹介し、その後も何度か引用している「文科系のためのヒップホップ入門」の中で「ヒップホップとは『場』を楽しむものである」という指摘がありました。それだけにHIP HOPという「場」を常に追いかけている訳ではない自分にとっては、HIP HOPシーンというのはわかりにくさがあり、それを少しでも理解するためには最適な1冊として本書を読んでみました。

そんな本書はHIP HOPの現状について、端的にわかりやすくまとめられていました。ライターの池城美菜子と渡辺志保による対談形式で、HIP HOPシーンの今について大まかに概観したあとで、様々なライターがいろいろな視点からコラムとしてHIP HOPシーンの現状を取り上げ、またチェックすべきHIP HOPアルバムの指針として、2024年の年間ベストアルバムも紹介されています。特に年間ベストアルバムの上位については、既に聴いているアルバムも少なくありませんが、やはり聴いていないアルバムも多く、何枚か、これを機に聴いてみたいと思いました(後日、同サイトでも取り上げたいと思います)。

まさに私のようなHIP HOPに興味はあるものの、熱心に追いかけている訳ではないようなライトリスナーにとっては、ほどよくシーンをまとめている最適な1冊とも言える本書。ただ、読んてみて感じてしまったのは、やはりHIP HOPシーンというのは、どこか内輪向けであり、そして外部の人間からするとわかりにくい、という点でした。

典型的なのはそのリリックであり、この中のコラムとしてもリリックを詳しく解説したコラムがあります。様々な事象を重層的に組み合わせ、英語のたとえなどもふんだんに入れて、その当時、起こった社会的ネタやゴシップもうまく取り入れたリリックは非常に興味深く、奥深さを感じさせる反面、コミュニティーの外側の人間からすると非常にわかりにくく、特に英語の壁がある私たち日本人にとっては、それを読み解くのは容易でないものを感じます。特に昨今ではCDが、それも邦訳付きの国内盤がリリースされるHIP HOPのアルバムは皆無に近い状況になってきており、私たち日本人にとっては、詳しい人の解説抜きでリリックを読み取るのは、ほぼ不可能という状況になってしまっています。

昨今、若者の「洋楽離れ」が叫ばれ、かつ、同書の中でも「若いラッパーやリスナーの子でアメリカのヒップホップを聴いていない子が多い」という指摘もされているのですが、やはり現在、特にアメリカのヒットシーンの主流を占めているHIP HOPシーン全体が限られたコミュニティー向けであり、外部から理解するのが困難という点が、大きな理由ではないか、ということも感じてしまいました。

また、HIP HOPシーンの内向性からもうひとつ気になった点があります。それは先日行われたアメリカ大統領選との関係。本書でもHIP HOPとアメリカの大統領選との関係についてのコラムもありますが、ポップフィールドのミュージシャンがほぼ全員、民主党のカマラ・ハリス陣営についたのに対して、HIP HOPのミュージシャンは、ハリスとトランプと、ほぼ半々にわかれたそうです。

ただ、保守とリベラルの嗜好を考えた時、(以前、ネットでこの点を指摘した書き込みがあり、ハッと気が付かされたのですが)保守は得てして自分たちの身内を一番大切に考える一方、リベラルは身内に限らず、全世界のあらゆる人を大切にしていこうという傾向にあります。いままでは(そしてある意味現状でも)HIP HOPコミュニティーの中心であるアメリカ黒人層はマイノリティーであるがゆえに、リベラルと親和性が強かったのですが、ただ、自分たちのコミュニティーを大切にしようとするHIP HOPシーンの嗜好性は、本質的にはむしろ、保守系と親和性が強い傾向にあるように感じます。だからこそ、今回の大統領選においても、HIP HOPのミュージシャンたちは、右と左にほぼ半々にわかれてしまったのではないでしょうか。

アメリカのトランプは極端にしろ、現在、世界中ではどちらかというと身内を守ろうとする保守の方向が目立つように感じます。現在、世界的にロックが退潮傾向にあり、変わってHIP HOPがシーンの中心になってきています。もちろん、リベラル寄りのHIP HOPミュージシャンも少なくありませんし、ロック=左でHIP HOP=右というのは少々乱暴な切り口かもしれません。とはいえ、HIP HOPミュージシャンのアメリカ大統領選の動向を見る限り、ひょっとしたら、HIP HOPの躍進は、そんな保守化する世界の傾向とリンクするものではないだろうか、そんなことも感じてしまいました。

そんなことは気になりつつも、ただとはいえ、勢いのあり、次々と新しいジャンルや音が登場してくるHIP HOPシーンは音楽的には非常に魅力的であることは間違いありません。個人的にも、そういう意味でも今後も出来るだけシーンの動向を追いかけていきたいのですが・・・。そんな中、この冊子はシーンについてよくまとまっており、非常によくできた雑誌だったと思います。年刊誌ということで、おそらく今後も、毎年、同じ時期に年間のシーンをまとめた1冊がリリースされるのでしょう。発売間隔が長く、かつ雑誌業界は非常に厳しい状況であるだけに、今後、どれだけ続けられるのか、不安な部分もあるのですが・・・今後にとても期待したい雑誌でした。

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2025年3月13日 (木)

1、2位は先週と変わらず

今週のHot Albums

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

今週の1位2位は先週と変わりませんでした。

Timlesz

今週1位は元ジャニーズ系アイドルグループ、SexyZoneの改名後のグループtimelesz「Hello! We're timelesz」が2週連続で1位を獲得。ストリーミング数は先週と変わらず1位。ダウンロード数は1位から2位にダウンし、総合チャートでは2週連続の1位となりました。

2位も先週から変わらずMrs.GREEN APPLE「ANTENNA」が獲得。ストリーミング数は先週から変わらず2位。これで通算25週目のベスト10ヒット&通算15週目のベスト3ヒットとなっています。さらに「Attitude」が先週の4位から3位にランクアップしベスト3返り咲き。こちらは通算13週目のベスト10ヒット&通算9週目のベスト3ヒットとなりました。

続いて4位以下ですが、初登場盤は1枚のみ。スターダストプロモーション所属の男性アイドルグループM!LK「M!X」が10位初登場。CDランキングで1位を獲得し、総合チャートもベスト10入りとなりました。

ロングヒット盤ではVaundy「strobo」「replica」は先週から変わらず、それぞれ5位6位をキープ。「strobo」は通算13週目、「replica」は通算17週目のベスト10ヒットに。Number_i「No.I」は8位から7位にアップ。こちらは通算15週目のベスト10ヒット。米津玄師「LOST CORNER」は逆に7位から8位にダウン。こちらは通算18週目のベスト10ヒットとなっています。


今週のHeatseekers Songs

https://www.billboard-japan.com/charts/detail?a=heat_seekers

Heatseekers Songsは今週も柊マグネタイト「テトリス」が獲得。これで12週連続の1位となりました。動画再生回数は8位から7位に再びアップ。Hot100も55位から51位に若干アップしています。


今週のニコニコVOCALOID SONGS

今週1位はDECO*27「テレパシ」が先週の3位からランクアップ。チャートイン3週目にして初の1位獲得となりました。ちなみにDECO*27は「モニタリング」も2位にランクインしており、1、2フィニッシュという結果となっています。

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2025年3月12日 (水)

今週もアイドル系が1位に

今週のHot100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

Hot100は今週もアイドル系が1位を獲得です。

まず1位は旧ジャニーズ系男性アイドルグループTravis Japan「Say I do」が獲得。CD販売数及びダウンロード数で1位を獲得。テレビ朝日系ドラマ「ホンノウスイッチ」主題歌。CDシングルとしては、これが初のリリースとなります。オリコン週間シングルランキングでは初動売上14万3千枚で1位初登場。

2位はMrs. GREEN APPLE「ライラック」が先週と変わらず2位を獲得。ストリーミング数は5週連続、カラオケ歌唱回数は9週連続の1位。ただ、動画再生回数は1位から2位にダウンしています。これで47週連続ベスト10ヒット&通算33週目のベスト3ヒットに。

3位もサカナクション「怪獣」が先週から同順位をキープ。ダウンロード数は3位から4位、ラジオオンエア数も1位から4位にダウンしたものの、ストリーミング数は先週から変わらず2位をキープ。ロングヒットになるそうな予感がします。

続いて4位以下初登場曲ですが、今週は初登場曲は1曲のみ。7位にあいみょん「スケッチ」が初登場。CD販売数5位、ダウンロード数13位、ラジオオンエア数1位。映画「ドラえもん のび太の絵世界物語」主題歌。オリコンでは初動売上9千枚で5位初登場。前作「会いに行くのに」の初動7千枚(14位)からアップ。

今週、初登場曲はこの1曲のみでしたが、先週、新譜ラッシュだった反動で、ベスト10からの返り咲き曲も。まず米津玄師「BOW AND ARROW」が先週の19位から6位にランクアップ。2週ぶりのベスト10返り咲き。ストリーミング数が13位から9位、ダウンロード数も10位から3位とアップしていますが、特に動画再生回数が先週のベスト20圏外から一気に1位にランクアップし、ベスト10返り咲きの主要因となっています。

また、Mrs.GREEN APPLE「ケセラセラ」も11位から10位にアップ。2週ぶりのベスト10返り咲きを果たしています。これで通算37週目のベスト10ヒットに。また、「ダーリン」も6位から4位にアップ。ストリーミング数は先週と変わらず3位をキープ。これで今週、Mrs.GREEN APPLEは3曲同時ランクインとなっています。

他のロングヒット曲は、ロゼ&ブルーノ・マーズ「APT.」が10位から8位にランクアップ。ストリーミング数は4位から5位にダウンしていますが、動画再生回数は6位から3位にアップ。ダウンロード数も20位から15位にアップしています。これでベスト10ヒットは連続20週に。

今週のHot100は以上。明日はHot Albums&Heat Seekers&ボカロチャート!

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2025年3月11日 (火)

懐かしさがあふれ出す短冊CDのディスクガイド

今回は最近読んだ音楽関連の書籍の感想です。

「短冊CDディスクガイド 8cmCDマニアックスー渋谷系、レア・グルーヴ、アイドル、アニメ、テレビ番組、企業ノベルティまで」。本屋で立ち読みしていたのですが、個人的に非常におもしろい内容だったため、買って読んでみた1冊です。ディスク百合おんという、ナードコアテクノのミュージシャンであり、8cmCDのみをまわすDJである方による監修で、同じく、90年代J-POPや8cm CDに興味のあるようなDJ、ライターが執筆する形でのディスクガイドとなります。

短冊CDとは、主に90年代に一世を風靡したCDシングルの形。短冊のような縦長のケースに収められていたことから「短冊CD」と呼ばれています。90年代に、メディアがレコードからCDに変わった頃に登場し、2000年代にはシングルも通常の12cmCDで収録された「マキシシングル」が主流になるため、主に流通したのはわずか10年程度という短い期間でしたが、一方で時代はJ-POP全盛期。ミリオンセラーどころかダブルミリオンのシングルが連発されていた時期なだけに、その流通量は相当の程度だったと思います。

個人的にこの90年代というのは、ちょうど中学から大学に至る時期であって、音楽をいろいろと聴きはじめた頃。そういうこともあって、短冊CDはたくさん買いましたし、やはり思い入れもあります。そのため、本書を読んてみて、非常に懐かしく感じる部分も強く、衝動買いに近い感じで買ってみた訳ですが、おそらく私と同じくらいの30歳後半から50歳初頭あたりの世代にとっては同じように感じる方も少なくないのでしょう。この短冊CDをあえて愛好している方も少なくないみたいですし、本書では、そういった方が執筆陣として加わっており、また、同じく短冊CDで多くの作品を発表していたようなミュージシャンたちへのインタビュー記事も収録されています。

そんな訳で本書は、そんな好事家たちが取り上げた多くの短冊CDが収録されています。フルカラーでのジャケット写真の紹介と、それに関する短い説明文が並び、間にはインタビューやコラムが挟まれているスタイル。この紹介されている短冊CDが非常に面白く、興味深く一気に読み進むことが出来ました。

ただちょっと気を付けなくてはいけないのはここで紹介されている短冊CD、決してその時代を代表する作品ではありません。選曲の基準はおそらくクラブ映えするような、「レアグルーヴ」感のあるCDがメイン。そこにユニークな珍盤奇盤が加わるスタイルで、一世を風靡したビーイング系や小室系、または渋谷系などのCDは、何枚かは紹介されているのですが、有名なヒット曲はほとんど紹介されていません。

とはいえ、非常におもしろいのがこの珍盤奇盤の数々。この短冊CDは、販売価格が500円~1000円程度と安価だった上に、薄っぺらくかさばらないものであったために、おそらくノベルティーグッズなどとして相性がよかったのでしょう。かつ、時代的にも音楽業界に活気がある時期だっただけに、「よくこんなCD販売しようと思ったな」的なCDが数多く紹介されており、この点では非常に90年代という時代を反映されたラインナップとなっています。

個人的には、リアルタイムに知っている世代とはいえ、もちろん知らない曲も多く、「こんなCDもあったんだ」と興味深く読みすすんだ一方、やはり読んでいて一番楽しかったのは「あったあった、こんなCD!」と当時を懐かしく思い出した瞬間でした。すっかりと記憶の片隅に追いやられていた思い出が引っ張り出されてくる快感がとても心地よく、あの頃を思い出しつつ、本書を読み進めることが出来ました。

またおもしろかったのが、「あの人がこんなことをやっていたんだ」とか「あの人がこんなCDを出していたんだ」といったことを知れたことも。例えば本書であのダンス☆マンがもともと別のバンドをやっていたことをはじめて知りましたし、他にも知られざる有名人の前歴もチラホラ。また、今となってはコンプライアンス的に厳しそうな内容のCDがあったり、またジャケット写真でもアイドルの写真に目を惹かれたり、楽しい体験をすることが出来た本書。CDの解説については、スペースの関係上、最低限であるため、気になったミュージシャンについてはスマホで調べつつ読むのもおもしろいかも。ただ、ネット上でほとんど情報のないCDやミュージシャンも少なくないのですが。

すっかり時代のあだ花的に追いやられていた短冊CDが、このように珍重されているというのが興味深く感じられ、また同時代を生きた世代としては気持ちは非常にわかる気がします。いままで、昔のレコードを並べて紹介しただけの本は数多く出版されていたのですが、そのような本を懐かしく楽しむ世代が、私たちの世代にも降りてきたということなのでしょう。ただ一方でちょっと気になるのが短冊CDが事実上流通していたのは10年程度という短い期間だったという点。いまでも愛好家の多いSPなどに比べると、あまりにも短い期間です。そういう意味で、この短冊CDが、今後より大きなブームとなるのか、やはり一部の好事家だけが楽しんで、あっという間に時代の彼方に忘れ去られてしまうのか・・・今後どうなっていくのか気になってしまいます。

個人的には非常に楽しめた1冊で、一気に読むことができましたし、久しぶりに実家で眠っている短冊CDをあらためて取り出してみようかなぁ、という思いにも至りました。おそらく実家にも珍盤奇盤とされそうな短冊CDが何枚か転がっているはず・・・。一方でただ本書、万人におすすめできるかと言われると微妙な部分があり、前述の通り、90年代J-POPの代表曲が紹介されている訳でもありませんし、90年代をリアルタイムに経験していなかった世代が読んだとしても、よっぽどの好事家以外は面白いと感じられないように思います。そういう意味では、読み手を選ぶ本ではあると思うのですが、一方で私のように世代的に壺にはまる方にとっては、非常に興味深くおもしろい1冊だと思います。おそらく30代後半から50代初頭くらいの世代の方で、青春時代に音楽にはまっていて、かつ、それなりにマイナーな曲まで手を伸ばしていたような方にとっては、かなりたまらない1冊かと。あの頃をあらためて思い出しつつ、90年代J-POPの奥深さを感じる1冊でした。

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2025年3月10日 (月)

重いメッセージ性をつめた作品

Title:“NO TITLE AS OF 13 FEBRUARY 2024 28,340 DEAD”
Musician:Godspeed You! Black Emperor

カナダのポストロックバンド、GODSPEED YOU!BLACK EMPERORのニューアルバム。今回のアルバムは非常に重い、社会派的なテーマを扱っています。まずこのアルバムタイトル。直訳すれば「2024年12月13日現在、タイトルなし。28,340人が死亡」ことになります。これは現在も進行しているイスラエル・ガザ地区におけるイスラエル軍とアラブ人勢力ハマスとの戦闘における、パレスチナ人の死者数を表しています。かなりストレートなタイトルが示すように、このイスラエルで今もなお起こっている戦争をテーマとしたアルバムで、不安定になりつつある現状に対しての警鐘を鳴らしています。今回、バンドはこのアルバムリリースに際して、次のようなメッセージを出しているようです。

”小さな死体が落ちてくる間どんなジェスチャーが意味をなすのか? どんな文脈があるのか? どんな壊れたメロディがあるのか? 負のプロセス、増え続ける山を示すただの数字と日付。かつての世界秩序はかろうじて気にかけるふりをしていた。しかしこの新世紀はもっと残酷になるだろう。戦争がやってくる。あきらめないで、どちらか一方を選んで、しがみついて、愛して。 “

アルバムは不気味なギターノイズを静かに聴かせる「SUN IS A HOLE SUN IS VAPORS」というナンバーでスタートします。このどこか不安気になるスタートに、暗雲を感じるのですが、後半になると徐々に伸びやかで優しいサウンドになってくるのが特徴的。続く「BABYS IN A THUNDERCLOUD」は、直訳すると「カミナリ雲の中の赤ちゃん」となるのでしょうが、これは戦争状態の中でも生まれてくる、あらたな生命の芽吹きをあらわしているのでしょうか。実際、ダイナミックでノイジーなバンドサウンドの中、途中にはストリングスなどの音色で、どこか明るさも感じさせるような作品になっています。

3曲目「RAINDROPS CAST IN LEAD」も、最初は静寂の中からスタートし、徐々にサウンドが分厚くなり、ダイナミックに展開していくGYBEらしい複雑な構成の楽曲。どこか優しくメロディアスなメロディーが流れる楽曲で、直訳すると「鉛で鋳造された雨しずく」と、どこか鉄砲の玉を彷彿とさせる表現ながらも、希望も感じさせる楽曲となっています。

ただ、非常に不気味なのが後半の「PALE SPECTATOR TAKES PHOTOGRAPHES」で、ゆっくりヘヴィーなギターサウンドがダウナーに、地を這うように展開していく楽曲は、まさに戦争の悲劇性を感じさせるような作品。直訳すると「青白い観客が写真を撮る」というタイトルになるのですが、何かのメタファーなのでしょうか。ひょっとしたら、安全な地域から、テレビやネットの画像で戦争を傍観している私たちを皮肉っているのかもしれません。

この不気味な雰囲気は最後の「GREY RUBBLE-GREEN SHOOTS」まで続きます。分厚いストリングスでダイナミックにスタートするこの曲は、最初、非常に悲しいメロディーラインでスタートします。いわばこの戦争の死者に対する鎮魂歌のよう。しかし、中盤からは徐々に切なさの中にやさしさを感じられるメロディーに。最後はストリングスと静かなギターで優しく幕を閉じます。この曲のタイトルを訳すると「灰色の瓦礫-緑の芽」・・・まさに戦争の悲劇と、そしてその先にある希望を綴ったような曲になっていました。

基本的にヘヴィーでノイジーなギターサウンドにストリングスを加えて、ミニマル的なフレーズをダイナミックに展開していくスタイルは、いつものGYBEと同様。そういう意味では大きな変化はありません。ただ今回のアルバムは、そんなダイナミックで、時には物悲しく、時には優しく聴かせてくれる彼らの楽曲を、戦争というテーマにリンクさせ、戦争の悲劇性と、それでも乗り越えていかなくてはいけない人類の希望を奏でているように感じました。まさに今の時代だからこそ、そして彼らだからこそ、聴かせてくれる、傑作アルバムに仕上がっていたと思います。あらためてこのアルバムで、イスラエルで行っている戦争について考えさせられる1枚でした。

評価:★★★★★

Godspeed You! Black Emperor 過去の作品
'Allelujah! Don't Bend! Ascend!
Asunder, Sweet and Other Distress
Luciferian Towers
G_d's Pee AT STATE'S END!


ほかに聴いたアルバム

Gente/Nanvy Vieira

こちらは2024年の各種メディアでベストアルバムとしてあげられた作品のうち、聴き逃していた作品を後追いで聴いた作品。こちらはミュージック・マガジン誌ワールドミュージック部門で第2位にあげられていたカーボベルデを代表する歌手の新作。カーボベルデはアフリカの西部に位置する島国で、その場所がら、ポルトガル、ブラジル、アフリカといった様々な地域の音楽の影響を受けており、本作もそのためポルトガルのファドやアフリカの音楽、さらにはブラジル音楽の影響も垣間見れる、文化の交差点的な楽曲がユニーク。ムーディーにしっかりと聴かせる彼女の歌声も魅力的なアルバムに仕上がっていました。

評価:★★★★

Vacilón Santiaguero/Kiki Valera

こちらも同じく、2024年ベストアルバムを後追いで聴いた1枚。こちらはミュージック・マガジン誌ラテン部門で第1位を獲得したアルバム。キューバの伝統的なバンド、ファミリア・バレラ・ミランダ出身のミュージシャンによるソロ作。楽曲は典型的なラテン、キューバ音楽といったイメージで、ホーンセッションやパーカッションを入れつつ、軽快なリズムとメランコリックなメロが楽しめる作品に仕上がっています。

評価:★★★★

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2025年3月 9日 (日)

明るく楽しいセンバを聴かせる

Title:Kamu'Ndongo O Príncipe do Semba
Musician:Eddy Tussa

Eddytussa

今回も、2024年で各種メディアでベストアルバムとして取り上げたアルバムのうち、まだ聴いていなかった作品を後追いで聴いた1枚。今回はミュージック・マガジン誌ワールドミュージック部門で6位を獲得したミュージシャン。アンゴラの国民的音楽であるセンバを、新しい世代に引き継ぐ元ラッパーによるアルバムだそうです。

アンゴラは中部アフリカのうち大西洋に面した国。日本人にとってはあまりなじみのない国で、アンゴラウサギが思いおこされますが、このアンゴラ(angora)は国名のAngolaとは綴りが異なり、直接の関係はないようです(ちなみに某芸人はこのウサギの方が由来らしい・・・)。ただ、このセンバという音楽は、音楽的にはなかなか興味深い音楽のジャンルのようで、このセンバにカリブ海の音楽の影響が加わったのがルンバだそうで、さらにはブラジルのサンバも一説にはこのセンバの影響を受けた音楽だとか。特に中南米の音楽シーンには幅広い影響を与えた音楽のジャンルのようです。

実際、かなりラテンの要素の強い作品で、1曲目「Bessangana」も親指ピアノとパーカッションで奏でるラテンなリズムが軽快なナンバー。続く「Kaçule Kamy」もイントロのリズムは典型的なラテンの陽気なリズム。こちらはしんみりと哀愁たっぷりに歌い上げるメロディーラインが完全に歌謡曲といった感じで、メロディーの面でも強いインパクトを感じます。もっとも、「ラテンのリズム」と言っても、こちらの方が本家本元なんですが。

アルバム全体として、この南国の海辺を彷彿とさせるような陽気なリズムが大きな魅力で、アルバム全体として明るい雰囲気が漂っています。トライバルなリズムが軽快なのですが、ここらへんの陽気な空気感はまさにラテン系のノリ。アンゴラのお隣の国はアフリカ音楽ファンにはおなじみのコンゴで、トライバルやリズムなどにはお隣らしいどこか似たような雰囲気はあるのですが、この太陽の陽の光の下で奏でられる音楽を彷彿とさせる突き抜けた陽気は、コンゴの音楽とはまた異なるものを感じます。

また、もうひとつ特徴的なのは、特にアルバム前半について、アレンジの中にチープなシンセが入って、これがちょっとしたレトロ感を醸し出している点。「Pra te agradar」のサウンドなんかは、まさに80年代あたりを彷彿させるシンセの音が鳴っていて、ひと昔前のAOR風な曲調となっていますし、続く「Fala comigo」も軽快なホーンセッションの中、エレピの音がどこかひと昔前の雰囲気を醸し出しています。こういうチープなエレクトロサウンドは、アフリカの音楽を聴くとよく聴くことが出来て、アフリカの音楽制作環境が影響しているのかもしれませんが、ただ、こういう系統の音が好まれるのでしょうか。どこか感じるレトロな雰囲気がまた、ノスタルジックな要素を醸しだしておりとても魅力的でした。

一方後半は、トライバルなビートやコールアンドレスポンスを押し出したような曲が多く、「Ka ki Banga」や、ラストの「Ubeka」などは、こちらはむしろアフロビートからの流れも感じさせる楽曲になっており、ラテン風だった前半から一転、ある意味、一般的にイメージする「アフリカ」っぽさを感じる作品に。ここらへんのバラエティー富んだ展開もとても楽しい1枚でした。

全体的には明るい雰囲気の作風が楽しい本作。野外ライブで聴くと、みんなで踊って楽しそうだなぁ、ということを感じさせてくれるアルバムでした。ちょっと懐かしく、時には歌謡曲的ですらある哀愁あるメロディーも大きな魅力。年間ベストの上位にランクインされるのも納得の傑作アルバムでした。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

Tchopo/Kate Griffin&Matchume Zango

Tchopo 

こちらも同じく、2024年ベストアルバムを後追いで聴いた作品で、ミュージックマガジン誌ワールドミュージック部門で、こちらは5位を獲得した作品。イギリスのバンジョー奏者、Kate Griffinと、モザンビークのチョピ人で、伝統楽器のティンビラ奏者であるMatchume Zangoのユニット。Kate Griffinの爽快で西洋的なバンジョーの音色と、Matchume Zangoが奏でるトライバルなサウンドのギャップが非常におもしろく、西洋的なサウンドとアフリカ的なサウンドが融合した独特の音色を生み出しています。異色な楽器同士の組み合わせに、微妙な違和感もあるのですが、その違和感も含めて非常にユニークな作品でした。

評価:★★★★★

Prelude to Ecstasy/The Last Dinner Party

こちらも2024年のベストアルバムを後追いで聴いた1枚。昨年、本作でデビューし話題となったロンドン出身の5人組バンド。「rockin'on」誌の年間ベストで2位に入っていた他、各種メディアのベストアルバムを集計したAOTYでも21位にランクインしていました。ピアノやストリングスを入れて荘厳さを増したサウンドながらもメロディーラインはポップにまとめている点が特徴的。ただ、この荘厳さにしてもポップスさにしても、若干中途半端な印象も。どうせ仰々しくするのならMUSEくらい振り切れて欲しかった感も。良くも悪くもこれからが勝負といった感も。

評価:★★★★

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2025年3月 8日 (土)

アヴちゃんの妖艶なパフォーマンスと力強い演奏が魅力的

女王蜂 全国ホールツアー2025「狂詩曲~ギャル爆誕~」

会場 Niterra日本特殊陶業市民会館 フォレストホール 日時 2025年2月28日(金)19:00~

Jooubachilive

今回は、独特なルックスの奇抜なファッションが特徴的のロックバンド、女王蜂のワンマンライブに足を運びました。女王蜂は、もちろん音源は聴いているのですが、ライブを見るのはイベントライブ等を含めて今回がはじめて。どんなステージになるのか楽しみにしつつ、会場に足を運びました。

この日のファン層は、7割程度が20代~30代の女性といった印象で、予想していたよりもファン層は低く、女性割合が多かった印象が・・・。チケットは比較的容易に入手できたのですが、この日は4階席までビッシリとファンで詰まっており、ほぼ満員といった感じ。その人気の高さをうかがわせます。

ライブは定時を5分すぎた頃にスタート。メンバーの3人+サポートのドラムス+キーボードの5人編成でのスタート。最初はボーカルのアヴちゃん除いた4人での演奏からスタートし、ウェディングドレス風の白いドレスに身を包んだアヴちゃんが登場し、会場から大きな歓声が起こります。最初は「もう一度欲しがって」からスタートです。

で、彼らのライブの定番グッズが、派手な羽根のついた扇子、いわゆる「ジュリ扇」だそうで、この日も会場にはこのジュリ扇を持った人たちが詰めかけ、観客席は派手なジュリ扇を振り回して踊っていました。かなり派手な雰囲気なのですが、これが女王蜂の雰囲気ともピタリとマッチしていました。

そして2曲目はアニメ「【推しの子】」のエンディングにもなった「メフィスト」で、これまた会場は大盛り上がり。ここでアヴちゃんはロングスカートを投げ捨て、動き回りやすい短いスカートにチェンジ。その後も「MYSTERIOUS」「首のない天使」「失楽園」などで会場を沸かせます。

ライブは特に妖艶さもあるアヴちゃんのボーカルが目を惹きますが、それと同じくらい耳を惹いたのがロックバンドとしての彼らの演奏。かなりヘヴィーな力強い演奏が耳を惹き、ロックバンドとして、しっかりした足腰の強さを感じさせますし、奇抜なルックスや衣装というギミック的な部分を差し引いても、しっかりとした実力を持ったバンドであるという点を、今回初となるライブで強く感じることが出来ました。特に「バイオレンス」ではヘヴィーなギターリフからスタート。さらに中盤の「BL」でも同様の非常に重厚なバンドサウンドで迫力たっぷりのパフォーマンスを聴かせてくれるなど、ロックバンドとしての実力をこれでもかというほど前面に押し出したステージとなっていました。

ライブは基本的にMCは一切なし。妖艶さを感じさせるアヴちゃんのパフォーマンスを見せながら、比較的淡々と進むステージ。中盤の「火炎」ではステージ前方に薄い幕が張られ、そのバックで演奏しつつ、バンド前方のスクリーンにライトが投影されます。ここらへんはタイトルの「火炎」をイメージしたのでしょうか?

次の曲がはじまるとアヴちゃんは一度ステージから去り、最初は他のメンバーだけのインストからスタート。しばらくしてアヴちゃんが戻って来るとオレンジのドレスに衣装替えし、「つづら折り」へと進みます。

その後の「空中戦」の後の「杜若」では、最初、バンドメンバーが去り、アヴちゃんのアカペラからスタート。今度はアヴちゃんのボーカリストとしての実力を見せつけます。一方、途中からバンドメンバーが戻り、そのアヴちゃんに負けないダイナミックなパフォーマンスを。楽曲の最後の歌詞「ほんとよ」を叫んだあと、一気にバンドの演奏がストップし、ライブ会場が一瞬静寂に。そこから次の「Q」への展開にはゾクゾクっと来るものがありました。

ライブの終盤は「十」の後、はじめて簡単にアヴちゃんが「ありがとう」の一言。その後の「聖戦」の後にも「ありがとう」の一言のあと、ファルセットで思いっきり「行くよ!!」と観客をあおり、一気に「HALF」「金星」と続き、ライブはファイナルへ。最後はアヴちゃん一人がステージに残り、お辞儀、そしてみんなを抱きしめるように両腕を包み込むようなポーズを見せ、会場を去っていきました。

途中のMCはほとんどなし。次々と楽曲を展開していくパフォーマンスで、20曲近い曲を演奏しつつ、ライブ時間はわずか1時間10分程度という予想以上の短さでした。ただ一方、力強い迫力ある演奏にロックバンドとしての実力を感じさせ、さらにはアヴちゃんのパフォーマンスにも惹かれるものがあり、短い時間とはいえ非常に充実度のあるステージで、おなか一杯になるライブだったと思います。個人的には予想以上に満足度の高いステージで、非常に楽しめ、ほどよい余韻のもと、ライブ会場を後にすることが出来ました。

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2025年3月 7日 (金)

10周年の初のベスト盤

Title:All the Greatest Dudes
Musician:GLIM SPANKY

松尾レミと亀本寛貴による男女2人組ロックデュオ、GLIM SPANKY。ゴリゴリのギターサウンドでヘヴィーに聴かせる、ルーツ志向のロックンロール路線に定評があり、音楽ファンのみならずミュージシャンたちにも高い評価を得てきました。そんな彼女たちも2014年にシングル「焦燥」でデビューしてから早10年。今回、メジャーデビュー10周年を記念して初のベストアルバムがリリースされました。ファンからのリクエストを中心にセレクトした全28曲が収録された、2枚組のベストアルバムとなります。

ただ、過去のレビューを遡って読んでもらえばわかるとは思うのですが、私自身、どこか彼女たちをもろ手あげて絶賛することが出来ず、微妙な評価を続けていました。その理由としてこのベスト盤を聴いて感じるのですが、まず全体的にどこか似たタイプの曲が多いという点。ヘヴィーなブルース基調のガレージサウンドでゴリゴリに聴かせるというスタイルはシンプルではあるのですが、バリエーションという観点でどうしても難ありとなってしまいます。また、メロディーがベタで歌謡曲っぽすぎるというのもマイナスポイントのように思います。かといって、同じルーツ志向のロックを演りながら、J-POP寄りにシフトしたSuperflyみたいに、ベタなダイナミックさを出す訳でもなく、ちょっと中途半端さも否めません。

とはいえ、そんなマイナスポイントを抱えつつも、こうやってベストアルバムで彼女たちの代表曲を並べて聴くと、やはり素直にカッコいいロックバンド(ロックユニット?)ということを強く感じます。これでもかというほどゴリゴリにヘヴィーに聴かせるギターサウンドと、力強いボーカルで歌い上げる歌。ルーツ志向のガレージロックというよりも、70年代のツェッペリンやハードロックに通じるようなサウンドだと思うのですが、ロックのダイナミックを魅力的に感じられる曲が並んでいます。

個人的に今回のベスト盤で注目したいのは、このベスト盤の先行シングルとしてリリースされた「愛が満ちるまで」で、本作はなんとLOVE PSYCHEDELICOとコラボ。GLIM SPANKYの路線って、遡ると、Superfly、さらにはLOVE PSYCHEDELICOと同じ路線で遡っていくのですが、そのGLIM SPANKLYの先輩格ともいえるLOVE PSYCHEDELICOとのコラボはちょっとビックリ。楽曲的にはデリコとSLIM SPANKYの中間を行くようなタイプのロックになっているのですが、やはり両者、非常に相性はよく、魅力的なコラボに仕上がっています。

また、今回のベスト盤であらためて感じたのは、GLIM SPANKYを支える大きな魅力というのが間違いなく松尾レミのボーカルという点でしょう。ヴィジュアル面では、いかにも今風の美女といった感じの彼女ですが、ボーカリストとしてはしゃがれ声を前面に押し出したパワフルなボーカルが実に魅力的。ともすればこの手のしゃがれ声のパワフルなボーカリストというと、大柄のシンガーが多い中、スタイル的には華奢な彼女がこんな声を出して、あれだけパワフルなボーカルを聴かせてくれるというのは驚かされます。間違いなく、彼女のボーカルはGLIM SPANKYの個性を形作っていますし、また大きな魅力となっています。

そんな訳で、個人的にはもろ手あげて絶賛は出来ないような引っ掛かる部分はあるものの、ベスト盤として彼女たちの代表曲を聴くと、やはりロックの魅力、ダイナミズムを体現化している、実に魅力的なミュージシャンということを改めて認識しました。メジャーデビューから10年を迎えた彼女たち。これからの活躍も楽しみです。

評価:★★★★★

GLIM SPANKY 過去の作品
ワイルド・サイドを行け
Next One
I STAND ALONE
BIZARRE CARNIVAL
LOOKING FOR THE MAGIC
Walking On Fire
Into The Time Hole
The Goldmine


ほかに聴いたアルバム

Re:Born Tape/MIKADO

Mikado

本作は2024年度のベストアルバムとして各種メディアが取り上げているアルバムのうち、まだ聴いていないアルバムを後追いでチェックした作品。本作は「ミュージック・マガジン」誌「ラップ/ヒップホップ【日本】」部門で1位を獲得したアルバム。和歌山出身のラッパーによる初のソロ・ミックステープ。基本的には今どきのトラップベースのサウンドで、ダウナーに刻むラップが印象的。「これから」と「これまで」をつめたミックステープに自身を取り巻く環境や心境をつづったミックステープだそうで、彼の出身地である和歌山市築港をそのまま歌った「築港」なんで曲もあったり、最後の「Legends」ではラッパーとしてのこれからをラップしたりと、身の回りのことや自らの心境を綴ったラップが印象に残ります。これからの活躍にも期待のラッパーです。

評価:★★★★

ほろよい小唄/うめ吉

俗曲師として、寄席などを中心に活躍するうめ吉のニューアルバムは、ある意味、彼女の王道、本家本元ともいえる江戸の小唄をあつめたアルバム。基本的に1曲1分程度の短い曲が並び、歌詞もフレーズもワンアイディアといった感じの、まさに「小さい唄」と書いて「小唄」と呼ぶにふさわしい内容になっていますが、江戸時代の歌詞でありつつも、現代の私たちにも共感できる内容や、コミカルな内容もあり、小唄に親しみのないような方でも十分楽しめそうな感じが。また、東京に行った時には、彼女の出演する寄席にも足を運んでみたいです。

評価:★★★★

うめ吉 過去の作品
お国めぐり 其の二
うめ吉玉手箱~寄席うた俗曲集
ALL ABOUT UMEKICHI
うめ吉の唄う 童謡・唱歌 其の二
明治大正はやりうた 其の二

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2025年3月 6日 (木)

Hot Albumsも1位はアイドル系

今週のHot Albums

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

アイドル系が大量にランクインしてきた今週のHot100でしたが、Hot Albumsも1位はアイドル系がランクインしています。

Timlesz

1位初登場は元ジャニーズ系アイドルグループ、SexyZoneの改名後のグループtimelesz「Hello! We're timelesz」がランクイン。彼らの代表曲を収録した12曲入りのプレイリストで、配信限定でのリリースとなります。ダウンロード数及びストリーミング数で1位を獲得し、総合チャートでも1位となりました。

2位は先週3位だったMrs.GREEN APPLE「ANTENNA」がワンランクアップ。これで通算24週目のベスト10ヒット&通算14週目のベスト3ヒットとなります。ただし、先週まで10週連続1位だったストリーミング数は、timeleszに1位を奪われる形で2位にダウンしています。一方、「Attitude」は先週から変わらず4位をキープ。ただし、こちらもストリーミング数は2位から4位にダウン。これで通算12週目のベスト10ヒットとなりました。

そして3位はONE OK ROCK「DETOX」がワンランクダウン。ストリーミング数は先週と変わらず3位なのですが、先週から「Attitude」と順位を入れ替わる形となっています。

4位以下の初登場盤では、9位に韓国のアイドルグループPLAVE「Caligo Pt.1」がランクイン。CD販売数では本作が1位を獲得しています。

ロングヒット盤ではVaundy「strobo」5位「replica」6位は先週から変わらず。これで「strobo」は通算12週目、「replica」は通算16週目のベスト10ヒットに。米津玄師「LOST CORNER」は9位から7位にアップ。これで通算17週目のベスト10ヒット。Number_i「No.I」は先週から変わらず8位をキープ。通算14週目のベスト10ヒットとなりました。


今週のHeatseekers Songs

https://www.billboard-japan.com/charts/detail?a=heat_seekers

Heatseekers Songsは今週も柊マグネタイト「テトリス」が獲得。これで11週連続の1位となりました。ただし、動画再生回数は7位から8位にダウン。Hot100も36位から55位と大幅にダウンしています。


今週のニコニコVOCALOID SONGS

https://www.billboard-japan.com/charts/detail?a=niconico

先週、いわゆる「ボカコレ」参加曲が一気にランクインしてきたボカロチャートですが、今週も先週に引き続き、「ボカコレ2025冬」TOP100ランキング優勝作あばらや「花弁、それにまつわる音声」が2週連続で1位を獲得しています。2位もTOP100で2位だったr-906「匙ノ咒」が2週連続で獲得しています。

今週のHot Albums&Heatseekers&ボカロチャートは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2025年3月 5日 (水)

アイドル系の新譜ラッシュ

今週のHot100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

今週はアイドル系の新譜が重なり、Hot100では珍しい新譜ラッシュに。ベスト10のうち5曲までが新譜で占められるチャートとなりました。

まず1位初登場は旧ジャニーズ系。なにわ男子「Doki it」がランクイン。AOKI「フレッシャーズフェア」CMソング。CD販売数1位、ダウンロード数4位、ラジオオンエア数9位。オリコン週間シングルランキングでは初動売上32万4千枚で1位初登場。前作「コイスルヒカリ」の初動40万枚(1位)からはダウンしています。

一方、2位はMrs.GREEN APPLE「ライラック」が3位からワンランクアップで獲得。ストリーミング数は4週連続、動画再生回数は3週連続、カラオケ歌唱回数は8週連続で1位を獲得。これで46週連続ベスト10ヒット&通算32週のベスト3ヒットとなりました。

3位はサカナクション「怪獣」がワンランクダウンながらもベスト3をキープ。ダウンロード数は1位から3位にダウンしたものの、ストリーミング数が3位から2位に、ラジオオンエア数は4位から1位にランクアップしています。

さて、そんな訳で4位以下も初登場曲が並びます。まず4位に女性声優アイドルグループ=LOVE「とくベチュ、して」が初登場。CD販売数2位。オリコンでは初動売上24万8千枚で2位初登場。前作「絶対アイドル辞めないで」の初動20万6千枚(2位)からアップ。

5位には旧ジャニーズ系男性アイドルグループtimelesz「Rock this Party」がランクイン。元SexyZoneの改名後のグループ。配信限定のシングルとなり、ダウンロード数で1位、ストリーミング数で8位を獲得しています。

7位にはハロプロ系女性アイドルグループJuice=Juice「初恋の亡霊」がランクイン。CD販売数5位。オリコンでは初動売上5万3千枚で4位初登場。前作「トウキョウ・ブラー」の初動4万7千枚(2位)からアップ。

もう1曲。9位にはICEx「理想郷」が初登場。スターダストプロモーション所属の男性アイドルグループ。CD販売数4位。オリコンでは初動売上4万9千枚で5位初登場。前作「ビリミ」の初動3万7千枚(4位)からアップしています。

さらに今週はベスト10返り咲きがあと1曲。韓国の男性アイドルグループSEVENTEEN「消費期限」がベスト100圏外からランクアップし、8位にランクイン。昨年12月11日付チャート以来のベスト10返り咲きになります。このチャート返り咲きの理由がかなり不明で、各種ニュースサイトでも言及していませんし、公式サイトでも特にイベント等のアナウンスはありませんし、Twitterでも言及するポストは皆無。かなり謎です。何か理由があるとは思うのですが・・・。

そんな訳で、ベスト10のうち5曲が新譜、さらに1曲がベスト10返り咲きとなった結果、特に先週まで5曲同時ランクインしていたMrs.GREEN APPLEの曲が軒並みダウン。唯一「ダーリン」が4位から6位へのダウンに留め、ベスト10に残りましたが、「ケセラセラ」は11位に、「Soranji」は12位に、「ビターバカンス」は15位にダウン。Mrs.GREEN APPLEは今週は2曲同時ランクインに留めています。

一方で、ロゼ&ブルーノ・マーズ「APT.」は5位から10位にダウンするも、なんとかベスト10はキープ。ストリーミング数は5位から4位、動画再生回数も12位から6位にアップし、まだまだ巻き返しはありそう。これで19週連続のベスト10ヒットとなりました。

今週のHot100は以上。明日はHot Albums&Heat Seekers&ボカロチャート!

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2025年3月 4日 (火)

様々な自然の音をユニークにサンプリング

Title:Desde los oídos de un sapo
Musician:Lechuga Zafiro

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今回も、2024年のベストアルバムとして各種メディアに取り上げられたアルバムのうち、未聴だった作品。今回はミュージック・マガジン誌エレクトロニック・ミュージック部門で1位を獲得した作品となります。

Lechunga Zafiroは南米・ウルグアイの電子音楽家だそうで、Wikipediaなども作られていなかったため詳細は情報は不明なのですが、TraTraTrax!!!という、主に前衛的なワールドミュージックのミュージシャンが集まっているコロンビアのレーベルからリリースされた作品のようで、本作がアルバムとしてはデビュー作になるようです。もちろん、今回音源を聴くのもはじめてなら、名前を聞くのもはじめてなミュージシャンです。

彼もそんな「前衛的な」ミュージシャンの一人ということになるそうですが、ただ、基本的には強いビートのエレクトロミュージックが軸となった作品であり、テンポよいリズムの曲がメインであり、決して「わかりにくい前衛的な楽曲」というイメージはありません。1曲目を飾る「Oreja Ácida」もメタリックながらもテンポよいビートは、どこかコミカルでいい意味での聴きやすさもありますし、続く「Botellharpa」も、スペーシーな雰囲気のビートには、こちらもコミカルさも感じられる、ある種のポピュラリティーがあります。

ただ、今回のアルバムでおもしろい点は、この作品、楽曲の中に様々な自然の音がサンプリングされている点でしょう。彼自身がウルグアイ、エルサルバドル、チリ、中国、アルゼンチン、ポルトガルといった様々な地域を巡って、その現地の音を集め、楽曲の中でサンプリングして使用しています。例えば前述の「Botellharpa」は獣の鳴き声からスタートしますし、「Encauce Destellante」では波の音がサンプリング。「Agua de Vidrio」では、水の音をサンプリングして作られたビートが印象的ですし(余談ですが、この丸みを帯びた音は、どこかレイハラカミに通じるものも・・・)、もっとも顕著だったのが「Cama Rota」は動物や鳥の声がサンプリングされて使用されています。

この手の自然素材をサンプリングして楽曲に取り込むエレクトロミュージシャン自体は、正直なところ決して珍しい訳ではありません。ただ、彼自身ユニークなのは、自然の音をサンプリングさせながらも、楽曲自体は「自然」な部分をあまり感じさせないメタリックなサウンドで、この相反する方向性のサウンドのバランスが実に絶妙でなおかつユニークに感じました。

また、様々な自然の音をサンプリングさせた結果、楽曲にバラエティーを持たせることにも成功しており、波や水の音を取り入れた「Encauce Destellante」や「Agua de Vidrio」はドリーミーな雰囲気の曲となっていますし、「Tero Sex (Danza para piedra volcánica y tero)」はトライバルな楽曲に、同じく動物の音をサンプリングさせた「Cama Rota」は、同じくトライバルなビートでどこか野性味を感じさせる作風に仕上がっているなど、全7曲、そこに組み込まれたサウンドと共にバラエティーに富んだ作風が楽しめるエレクトロアルバムとなっていました。

全体的にはトライバルな雰囲気の楽曲が多く、ワールドミュージックとエレクトロを足して2で割ったような作風。ただ、サウンドの使い方にはどこかコミカルさがあって、最初にも書いた通り、ポップにまとまっているだけに、今後もさらに注目を集めそうな予感もあります。エレクトロが好きな方はもちろん、ワールドミュージック好きにとってもチェックしてみて損はない傑作でした。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

TIDET/Amaka Jaji

Tidet

こちらも2024年各種メディアのベストアルバムで聴いていなかった作品を後追いで聴いた1枚。こちらも「ミュージック・マガジン誌」の、こちらは「ワールドミュージック」部門で4位に選ばれた作品。Amaka Jajiは、北アフリカのリビアで育ったトゥアレグ族のミュージシャン。トゥアレグ族といえば、ワールドミュージック、特にアフリカ音楽を聴く方にはおなじみの名前で、ご存じ「砂漠のブルース」を奏でて世界的にも人気を集めているバンドTinariwenはトゥアレグ族のバンド。Amaka JajiもTinariwen同様、砂漠のブルース的な要素を感じさせる曲もありつつ、シンセのサウンドを前面に押し出し、エキゾチックさや曲によっては、よりアラブ音楽の影響を強く感じさせる曲調に。Tinariwenはじめ「砂漠のブルース」が好きならひっかかりそうな音楽である一方、「砂漠のブルース」とは一線を画するようなサウンドもまた魅力に感じさせるミュージシャンでした。

評価:★★★★★

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2025年3月 3日 (月)

ムーディーな曲とダイナミックな曲のバランスがおもしろい

Title:Odyssey
Musician:Nubya Garcia

本作もまた、2024年に各種メディアでベストアルバムとして紹介された作品のうち、まだ聴いていなかった作品を後追いで聴いた1枚。今回はミュージックマガジン誌ジャズ部門で年間1位を獲得した作品。Nubya Garciaはイギリスの現代ジャズを代表するサックスプレイヤー。前作「Source」はこちらも非常に高い評価を受け、注目を集めました。昨年は日本にも来日し、日本でも人気を博しているようです。

楽曲としては、基本的にNubya Garciaのサックスを中心に、ピアノ、ドラム、ベースという4ピースが基本構成。これに楽曲によってはストリングスの音色が加わる形となります。まずは注目したいのはNubya Garciaのサックスでしょう。まあ、彼女のアルバムなので当たり前ですが・・・。彼女のサックスは伸びやかで力強く、どこか郷愁感を覚えるフレーズが印象的。分厚い音色を聴かせてくれるサックスではあるのですが、高音部で音が割れんばかりの爆音を出そうとするブロウ奏法はほとんど用いず、メロディアスなサックスをしっかりと聴かせてくれます。このメロには一種のやさしさや包容力も感じられ、この点が大きな彼女のサックスの魅力のひとつなのでしょう。

そして、もうひとつ大きな魅力なのは、彼女の、というよりも彼女を中心としたバンドの演奏が非常にアグレッシブである、という点でしょう。この傾向は特に本作では前半の楽曲に顕著で、2曲のタイトルチューン「Odyssey」も、ミディアムテンポでサックスのフレーズをしっかり聴かせる演奏ながらも、バンド演奏には力強さを感じますし、「Solstice」も伸びやかなサックスと相反するような、アップテンポでアグレッシブなドラムのリズムが印象的。「The Seer」も疾走感ある力強いドラムがまずは印象的ですし、この力強いドラムに負けないようにアグレッシブに展開するサックスとピアノのプレイも耳に残ります。

前作「Source」でもこの傾向は同じで、かなりパワフルな演奏はロックの要素も感じました。また、ジャズながらもロック的なダイナミックスさを感じる点、上原ひろみとの共通項を感じたのですが、今回のアルバムにも同じような部分は感じました。ただ、上原ひろみのピアノは非常に自由度の高い演奏であるのに対して、彼女のサックスは、比較的スタンダードに、メロディーをしっかり聴かせるスタイルという点、相違するのですが。

ただ、今回の作品でおもしろいのは、この傾向が後半、グッと変化する点でしょう。後半はストリングスが入って、雰囲気的にはロックというよりもむしろクラシカルな路線に変化します。まず「Water's Path」は、サックスの音色すらなく、完全に弦楽四重奏のような楽曲に。続く「Clarity」も、ムーディーなサックスとピアノにストリングスが重なるクラシカル的な雰囲気すら漂う作品に。「In Other Words,Living」も同じくストリングスとムーディーなサックスとピアノを聴かせる作品に。アグレッシブな前半とは異なり、ストリングスの音色が加わる、ムーディーで、むしろクラッシックの要素すら感じる作品に変化しています。

思えばアルバムの冒頭を飾る「Dawn」も、最初、ストリングスが顔を覗かせ、ムーディーに聴かせる楽曲となっていますので、この後半の展開につながる構成だったのかもしれません。また、前半と後半の間にちょうど配置された「We Walk In Gold」も、ダイナミックスなドラムとサックスを聴かせつつ、ゲストボーカルとしてGeoria Anne Muldrowを迎えて、彼女のスモーキーなボーカルが耳を惹くムーディーな曲が配されており、前半と後半の架け橋的な曲に。さらにラストを締めくくる「Triumphance」も、怪しげに響かせるサックスと、力強いドラムが印象的な、また前半につながるような作品となっており、ダイナミックな作品とムーディーな作品が上手く配された構成も非常のおもしろいアルバムに仕上がっていたように感じます。

ジャズリスナーに限らず、幅広いリスナー層を魅了できそうな作品に仕上がっていた本作。前半のダイナミックな作風はロックリスナーにも楽しめそうですし、哀愁たっぷりのメランコリックなサックスのフレーズは、ポップ的に広いリスナー層が楽しめそう。高い評価も納得の文句なしの傑作アルバムでした。

評価:★★★★★

Nubya Garcia 過去の作品
Source


ほかに聴いたアルバム

Bazaari/Arash Sarkechik

Bazaari

こちらも2024年のベストアルバムで聴き逃した作品を後追いで聴いたもの。こちらは同じくミュージック・マガジン誌のワールドミュージック部門で3位にランクインしていたアルバム。イラン革命による混乱からフランスに逃れた両親の下で育ったイラン人ミュージシャンによる作品。在仏イラン人としてのアイデンティティを模索するかのような、アラビアンな楽曲を哀愁たっぷりに聴かせる一方、バンドサウンドなどを取り入れた、時としてはロックの雰囲気すら感じられるダイナミックなサウンドが魅力的。ここらへんはアラビアと西洋社会の融合といった印象も受ける1枚で、そのため、いい意味で聴きやすさも感じられる作品に仕上がっていました。

評価:★★★★★

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2025年3月 2日 (日)

邦楽界のレジェンドによる貴重な証言集

前日に引き続き、今日も音楽関連の書籍の紹介です。

ザ・フォーク・クルセイダーズとしてデビューし、その後、サディスティック・ミカ・バンドなどで活躍。「帰って来たヨッパライ」や「あの素晴らしい愛をもう一度」など数多くの名曲を世に生み出していたミュージシャンであり作曲家である加藤和彦。昨年、彼の生涯を追ったドキュメンタリー映画「トノバン 音楽家 加藤和彦とその時代」が公開された話題を呼びました。私もその映画をリアルタイムで見て、こちらでも紹介しましたし、また、それに関連して発売された、彼の作品を集めたオムニバスアルバム「The Works Of TONOBAN~加藤和彦作品集~」や、再販された「バハマ・ベルリン・パリ〜加藤和彦ヨーロッパ3部作」も紹介しましたが、そんな関連商品の中で、唯一、いままでチェックしてこなかったのが、加藤和彦本人が彼のこれまでの生涯について語ったインタビュー集「あの素晴らしい日々 加藤和彦、「加藤和彦」を語る」でしたが、このたび、おくればせながら同書をようやく読むことが出来ました。

本書は、ライターの前田祥丈が1993年に行ったインタビューをまとめたもの。その当時は発表されなかったものの、2013年に「エゴ 加藤和彦、加藤和彦を語る」と題されて出版されました。同書が映画公開にあたり、タイトルも変わり再発されたのが本書で、そのため内容的には2013年にリリースされた本と全く同じ内容だそうです。ただし、当時同封されていた未発表音源のCDは本書では付属されていません。

さて、前述の通り、本書は加藤和彦本人が、それまでの人生を語る形式でのインタビュー集。映画「トノバン~」は、基本的に加藤和彦本人はインタビュー等で登場せず、周りの人間が加藤和彦について語った内容ですので、本書は、映画で描かれた加藤和彦本人の生涯を本人の側から語られているという意味でも、非常に興味深い内容となっていました。

特に映画では、スタートが「帰って来たヨッパライ」のヒットからで、それ以前の彼については語られていないのですが、本書では彼の原点とも言うべき子供時代から語られている点が興味深いところ。子供の頃から、いい意味で王道を行かないような性格には彼らしさを感じさせましたが、ただ、ハヤカワミステリーを読破した、というエピソードには、個人的にも中学生の頃、アガサ・クリスティーにはまって、彼女の本をほぼ読破したという経験があるだけに、(ハヤカワミステリー全部とアガサ・クリスティーだけでは、冊数に大きな開きはあるとはいえ)ちょっとだけ親近感も覚えてしまいました。

一方、このインタビューならではの話として興味深かったのは、有名なエピソードである「イムジン河」が発売中止となってしまったあたりのエピソードで、この発売中止に関してほとんど何も思わなかったという話は、彼らしさを感じます。インタビュー記事を読んでいても、全体的に職人気質といった感じで、ビジネス面や政治面ではあまり関心を抱かなかったようで、その点、ザ・フォーク・クルセイダーズの盟友、北川修とは対照的だったよう。ここらへんの天才肌の職人気質という側面は、映画からでも感じられたのですが、このインタビュー記事では、そんな彼の側面をより強く感じさせました。

また、ちょっと気になってしまったのが、インタビューの最後に、彼の音楽観や人生観などを語られているのですが、この音楽観がちょっと口悪く言ってしまえば若干「老害気味」で、今の(といっても当時なので1993年の頃の、ですが)音楽に対して全く評価していない下りなどは、天才肌の職人気質という彼らしいとも感じる反面、時代についていけなくなっている、とも感じてしまいました。例えば彼の昔からの盟友である高橋幸宏にしても細野晴臣にしても矢野顕子にしても、最近まで今時のミュージシャンたちとも積極的に交わってきましたが、そんな彼らとは真逆のようなスタンスにも感じます。ただ、このインタビューからも垣間見れてしまった「時代についていけなくなってしまっている」という側面が、最期の悲劇にもつながってしまったのかなぁ・・・とも感じてしまいました。

さらにもうひとつ注意しなくてはいけないのが、本人によるインタビューだからといって事実を語っているとは限らない、という点。例えばさぃでスティック・ミカ・バンドのミカとの離婚の一件について、さすがに本人へのインタビューなので深くは聴かれていません。ただ、本人は既にバンドとしては崩壊寸前であり、ミカとの離婚だけがバンド解散の原因ではない、とサラッと語っていますが、映画ではやはりミカとの離婚がかなり大きな要因として語られていました。この点、やはり周りの証言の方が事実だったのではないか、ということは感じてしまいます。

ただ一点、気にかかったのは同書中の注釈について、本の中では記載がなく、なんと出版社のサイト上で注釈についての解説がなされていたという点。おそらく、本自体は、もし廃版となったとしても古本や図書館等で、長らく読み継がれると思うのですが、一方、ネット上の注釈についてはおそらくどこかに時点で消えてしまうでしょう。こういうことはやらない方がよいのでは・・・?その点だけ強く気になってしまいました。

そんな感じで、加藤和彦の証言がすべて事実、とは限らないとはいえ、非常に貴重な証言の連続で、映画と合わせてみることにより、加藤和彦というミュージシャンの実像に、より深く迫れる一冊だったと思います。音楽や映画で彼について興味を持った方はもちろん、日本の邦楽史に偉大な足跡を残したレジェンドである彼だけに、音楽に興味がある方ならば、興味深く読めるお勧めの1冊だったと思います。

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2025年3月 1日 (土)

百花繚乱の70年代ブリティッシュ・ロック

今回は最近読んだ音楽関連の書籍の紹介です。

MUSIC MAGAZINE増刊のアルバム・セレクションシリーズの最新作「70年代ブリティッシュ・ロック」。昨年8月に同シリーズの「60年代ブリティッシュ・ロック」がリリースされていますので、それに続きということになります。

前作「60年代ブリティッシュ・ロック」はロック評論家の大鷹俊一が監修という形で、複数のライターがレビューを書き分ける構成となっていましたが、今回の書作では大鷹俊一が著者という形で関与しており、基本的にすべてのCD評を彼一人が手掛けた形でのディスクガイドとなっています。

基本的にこのシリーズ自体、比較的王道的に名盤を紹介するディスクガイドですが、本作の構成や選んだ作品についても非常にオーソドックス。前半はARTIST PICK UPと題して、ミュージシャン毎にアルバム紹介、後半は時代毎に、前半でピックアップされなかったミュージシャンたちのアルバムを紹介する形となっています。前半で選び出されたミュージシャンたちについても非常にオーソドックス。ローリング・ストーンズやレッド・ツェッペリンにはじまり、ヘヴィーメタルのブラックサバス、プログレのキング・クリムゾンやピンク・フロイド、QUEENやボブ・マーリー、さらにはパンクからピストルズやクラッシュなどなど。

あえて言えば、監修から著者になったことにより、大鷹俊一の好みがより押し出されていた感もあって、DR.FEELGOODや、本人も「最も知名度が低い」と語っているスロッビング・グリッスルなど、おそらく彼の趣味が反映された選択となっており、逆に後半にのみ紹介するT.REXなどは単独で取り上げてもよかったのでは?とも思ってしまいます。ただ、そんな彼の趣味性も垣間見れる部分もあるものの、基本的には彼個人の好みは最低限に抑えて、非常にスタンダードで、おそらく誰が選んでも選ばれるであろう、名盤中の名盤をちゃんと取り上げています。

ただ、そんな70年代のブリティッシュ・ロックの代表的なミュージシャンやアルバムをあらためて見てみると、まさに70年代という時代はロックが大きく花開いた自体、まさに百花繚乱の時代だったということを強く感じます。

まさにツェッペリンのようなハードロックがブラック・サバスのようなヘヴィーメタルへの変化し、プログレも登場し、レゲエがロックシーンに姿を見せ、さらにはグラムロックなども登場。多種多彩なロックがその姿を見せます。ただ、それ故にどんどんと複雑になっていくロックという音楽に対して、一気にロックンロールの本質へと引きずり戻したパンクというジャンルの登場もまた、70年代ロックの象徴的な流れであるとも言えるでしょう。本著の冒頭に、レコードコレクター誌でかつて実施した「70年代ロック・アルバム・ベスト100」の1位にピストルズの「勝手にしやがれ」が選ばれ、大きな話題となったニュースが記載されているのですが、ただ、この百花繚乱の70年代ロックシーンの中で、ロックンロールの原点を提示したパンクというムーブメントのアルバムが1位を取るというのは、ある意味、象徴的であり、必然だったようにも感じます。

そんな70年代のロック、特にイギリスのロックシーンを一望するのはうってつけのディスクガイド。これを参考にしながら聴いていえば、70年代のブリティッシュ・ロックを理解できること間違いなしの1冊だと思います。これからいろいろと聴いていこうとする初心者から、ロックのベテラン勢までお勧めできるディスクガイドです。

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