プロフェッショナリズムを感じさせる偉大なギタリストのコンピ盤
Title:VINTAGE VIOLENCE~鮎川 誠GUITAR WORKS
Musician:鮎川誠
2023年に74歳でこの世を去ったギタリストの鮎川誠。ご存じシーナ&ザ・ロケッツやサンハウスのメンバーとして活躍し、日本のロックシーンを代表するギタリストとして多くのミュージシャンから敬愛されてきた彼。そのため、様々なミュージシャンとのコラボを行い、ギタリストとしても参加してきたのですが、今回は彼が主にギタリストとして参加してきた楽曲をまとめた、サブタイトル通り、彼のワーク集となります。
コラボ、という話をすると彼のギターがコラボとして向くのかどうか、と言われると微妙な部分があって、鮎川誠のギターは、間違いなく目立ちます。彼のギターは、ブラック・ビューティーという愛称を付けられたギブソン・レスポール・カスタムで、そこから紡ぎだされるサウンドは、ブルースやブリティッシュロックに強い影響を受けたガレージサウンドが特徴的。決して派手なギタープレイを聴かせる訳ではないものの、力強いヘヴィーなサウンドと、絶妙なグルーヴ感が強い魅力となっており、どんな楽曲の中でもしっかりと主張してくるため、曲によっては必ずしもマッチしない場合もあるかもしれません。
それでもこのワーク集では、思った以上に様々なタイプの楽曲と、鮎川誠のギターサウンドがコラボしています。自身のバンド、サンハウスやシーナ&ザ・ロケッツ、また鮎川誠ソロ名義の作品も多いのですが、一方でYMOによるビートルズのカバー曲「Day Tripper」や、高橋幸宏の「Murder By The Music」にも参加。鮎川誠のギターのタイプとはちょっと異なりそうなニューウェーヴの楽曲の中で、しっかりそのギタープレイを主張しながらも、楽曲の中に上手く溶け込ませています。
泉谷しげるの「火の鳥」とのコラボもユニーク。かなりハードロック寄りの楽曲で、力強い泉谷しげるのシャウトに、これでもかというほどの鮎川誠のギタープレイも印象的。コラボの中でもあまり抑制されず、好き勝手に弾きまくっているのが爽快な感じ。ジャズピアニストの佐山雅弘とのコラボ「From Dusk Till Dawn」も印象的で、こちらは軽快なピアノと繰り広げられるブルースのインストナンバーに。シンプルながらもしっかりと主張してくるブルージーな鮎川誠のアコースティックギターが強い印象に残ります。
印象に残るコラボといえば、イジワルケイオールスターズ「Say Good Bye (赤バージョン)」でしょう。アニメから派生されたユニットのようですが、甲本ヒロトやチバユウスケ、さらにルースターズのメンバーから、黒夢の清春、プリプリの中山加奈子、さらには元光GENJIの諸星和己まで参加している、よくこれだけ揃えたな・・・と今から考えると、かなり豪華なユニットの中に参加。ここでも鮎川誠のギターが、しっかりと主張しています。
さらに異色なのが原由子の「ヨコハマ・モガ」で、桑田佳祐らしいムーディーな昭和歌謡曲なのですが、ここではギターだけではなく、なんとボーカルで参加。原由子とムーディーなデゥオを繰り広げられています。
これらのコラボで感じるのは、独特で主張の強いギタープレイと反して、その参加している楽曲については、かなりの柔軟性を感じさせるという点。ある意味、彼のギターが楽曲の中でしっかりと組み込まれるのであれば、どんな楽曲であろうと全力で参加するという、彼のプロフェッショナルな精神性も感じられます。
もちろん、彼自身のバンドや鮎川誠ソロ作で、彼が嗜好する楽曲も存分に味わえる本作。あらためて鮎川誠が意外なギタリストであったことを実感できるコンピレーションアルバムでした。
評価:★★★★★
ほかに聴いたアルバム
CITRUS CURIO CITY/フレデリック
フレデリックの最新作は全8曲入りのミニアルバム。以前からメランコリックなメロとリズミカルでダンサナブルなリズムの組み合わせはインパクトはあるものの、似た曲が多い、という弱点のあった彼ら。今回のミニアルバムも確かに似たタイプの曲は多い反面、ギターサウンドを前に押し出した曲がメインながらも、「Hapiness」のようなシンセを前に押し出した曲や「hitotoki no raspberry」みたいにファンキーさを前に出してきた曲など、それなりにバリエーションを付ける点にもチャレンジしている感も。ただ、その分、インパクトの面では前作より弱かった印象も。
評価:★★★★
フレデリック 過去の作品
フレデリズム
TOGENKYO
フレデリズム2
ASOVIVA
ANSWER(フレデリック×須田景凪)
フレデリズム3
優游涵泳回遊録
GOOD DAY/ハナレグミ
約3年半ぶりのリリースとなるハナレグミの9枚目のオリジナルアルバム。いつもと同様、日常風景を描いた、ほっこりと暖かい雰囲気のポップスが魅力的。基本的にはアコースティックベースのサウンドがメインなのですが、途中からバンドサウンドも入り、スケール感もある「Wide Eyed World」やエレピが入って軽快な「会いにいこう」のような曲も。ただ、前作同様、全体的にほっこりと暖かい雰囲気ながらもインパクト不足が気になるところ。ちょっと無難すぎるという印象も・・・。
評価:★★★★
ハナレグミ 過去の作品
あいのわ
オアシス
だれそかれそ
どこまでいくの実況録音145分(ハナレグミ,So many tears)
What are you looking for
SHINJITERU
Live What are you looking for
発光帯
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