KANちゃんの人柄がよくあらわれた1冊
今日は最近読んだ音楽関連の書籍の紹介です。
音楽ライターの森田恭子が編集・発行を行っていた音楽カルチャー誌「Lucky Raccoon」の中から、KANのコラムやインタビュー記事を抜粋して1冊にまとめた著書「KAN in the Lucky Raccoon」。基本的には書店等での取り扱いはなく、下記サイトからの通販のみのようです。この本の発行については公式サイトで知り、さっそく通販で取り寄せて読んでみました。
生前のKANのコラムやインタビュー記事などの載ったA5サイズの書籍。全191ページとなかなかなボリューム量なのですが、掲載内容もかなり豪華。2003年から2022年までの記事から抜粋されたそうで、アルバムリリース時のインタビュー記事もさることながら、ライブイベント開催時には、共演者のミスチル桜井和寿や和田唱、KANが組んだバンド、カブレルズのメンバーとのインタビューや、藤井フミヤとのインタビュー記事も。どれも貴重な記事なのですが、特に藤井フミヤとのインタビューは、同じ福岡出身で、かつ同じ年。他では、この2人がからんで、という記事はあまり見かけたことはなく、そういう意味でも貴重なインタビュー記事だったように思います。
さらに本作が非常にユニークなのは、最初、いきなりKANによる料理のレシピからスタートすること。音楽関連の書籍で、いきなり料理のレシピからスタートするなんて、はじめて見ましたが、これもまたKANちゃんらしさを感じます。このレシピも読んでみると、しっかりKANの生い立ちやら考え方やらを反映した、列記としたコラム記事となっており、料理関係なく読み応えがあります。
特にこの冒頭の料理コラムでも強く感じたのは、KANという人は非常に拘りがつよい性格だったということで、最初に紹介されている「スパゲティ・アラ・カルボナーラ」でも、特に粒の黒胡椒の使用を指定したり、「グリル千のシャリアピン・ステーキ」では、彼の生まれ故郷の近所にあった洋食レストラン「グリル千」のレシピを完全再現しようとしたり、強いこだわりをかんじます。このこだわりは編集後記でも、記事のレイアウトに細かくこだわったエピソードも載せられており、KANらしいなぁ、ということを感じます。
ただ、このこだわりの強さというのは一歩間違えれば、人間的に嫌われたり敬遠されたりすることにもなりかねませんが、KANちゃんに関しては、このこだわりも含めて多くの人たちに愛されていたようで、それはおそらくそんなこだわりが、あくまでも他の人を楽しませようとする心遣いに通じていたからでしょう。実際に、この本を読んでいても、そんなこだわりの強さは嫌味に感じることはなく、ユーモラスな記述も多く、読んでいて楽しめる本書からは、そのとにかく人に楽しんでもらおうというエンタテイナーであるKANの人柄の素晴らしさがにじみでてきているように感じました。
インタビュー記事にしても、そんなKANちゃんの人柄がとても出ている自然体のインタビューになっており、この点は、おそらく著書の森田恭子氏との関係性もあったように感じます。本書全体を通じて、KANがどんな人物だったのか、どんなミュージシャンだったのか、とてもよくわかる記事にまとまっていたように感じました。特に、この著者との関係性については、最後の編集後記に強くあらわれており、ファンとしては読んでいて胸が熱くなるような記載に。あらためてあまりに早かったKANの最期を残念に感じてしまいました。
上記通販からの申し込みのみなのですが、KANのファンならば要チェックの1冊。本編はKANの人柄があらわれた、要所要所に読んでいて思わず笑ってしまうような記載もある、とても楽しいコラムやインタビュー記事ばかり。あらためてKANというミュージシャンの魅力を遅ればせながら強く感じることの出来た1冊でした。
| 固定リンク
「書籍・雑誌」カテゴリの記事
- HIP HOPシーンの「今」を考える(2025.03.14)
- 懐かしさがあふれ出す短冊CDのディスクガイド(2025.03.11)
- 邦楽界のレジェンドによる貴重な証言集(2025.03.02)
- 百花繚乱の70年代ブリティッシュ・ロック(2025.03.01)
コメント